説明

床材の製造方法

【課題】本発明は、基材の搬送方向と平行でない面に対しても、基材の向きを変えることなく、化粧シートを圧着させることができる、作業効率の良い、床材の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明では、ローラ10で基材1に化粧シート2を圧着して床材Aを製造する方法であって、前記基材1の表面3には、予め溝が形成されており、前記ローラ10の外周面11には、位置決め部12と、前記溝に対応する凸部13が形成されており、前記位置決め部12に基材1を当接させることによって、基材1とローラ10との位置合わせをした後、ローラ10と基材1を相対移動させながら、前記凸部13を化粧シート2を介して溝に嵌合させることによって、溝への化粧シート2の圧着を行うことができることを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に模様溝が形成された基材に化粧シートを貼付して製造される床材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の床材において、基材の表面に縦溝及び横溝からなる模様溝を形成し、その上から木目模様の化粧シートを貼付することによって、床材の立体感や木の質感を強調し、複数の床材を組み合わせて床を構成した場合に、フローリング調の美しい仕上がりとすることができる床材が採用され、実用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、床材用基材の上面から、その全外周における側面にかけて連続して、熱可塑性樹脂製の化粧シートを貼付することにより、木質系フローリング材と同等の意匠性を有し、床材同士の継ぎ目部分においても、優れた耐水性を有する床材及びその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−49530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、基材への化粧シートの貼付は、ラミネータと呼ばれる装置によって行われている。ラミネータは、ロール状に巻いた化粧シートを引き出す供給部と、供給部から引き出された化粧シートに接着剤を塗布する塗布部と、接着剤を塗布した化粧シートを基材上に配置し、ローラで押さえ付けることにより、化粧シートを基材に圧着する圧着部とを有する。ラミネータでの化粧シートの貼付の際、基材は、搬送ローラによってラミネータ内を移動する。
【0005】
ラミネータは、基材の搬送方向に平行な面に対しては、ローラの大きさや角度を変えることにより、化粧シートを基材に対して圧着することができる。しかし、基材の搬送方向と平行でない面に対しては、基材の進行中にローラを当接させることが困難である。このため、そのような面に対して、化粧シートを圧着するため、基材の向きを変えて、当該面を基材の搬送方向と平行にする必要があり、作業の効率が悪かった。
【0006】
そこで本発明は、基材の搬送方向と平行でない面に対しても、基材の向きを変えることなく、化粧シートを圧着させることができる、作業効率の良い、床材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、ローラで基材に化粧シートを圧着して床材を製造する方法であって、前記基材の表面には、予め溝が形成されており、前記ローラの外周面には、位置決め部と、前記溝に対応する凸部が形成されており、前記位置決め部に基材を当接させることによって、基材とローラとの位置合わせをした後、ローラと基材を相対移動させながら、前記凸部を化粧シートを介して溝に嵌合させることによって、溝への化粧シートの圧着を行うことができることを特徴とした。
【0008】
これにより、基材の向きを変えることなく、基材の搬送方向に平行でない面に対しても化粧シートを貼付することができる。なお、基材を位置決め部に当接させる前に、基材上面には、化粧シートを配置するのは言うまでもない。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、化粧シートの圧着後、ローラの位置決め部が所定の位置にくると、ローラが一時停止することを特徴とした。
【0010】
これにより、基材を所定の場所に搬送すれば、基材とローラとの位置合わせを迅速に行うことができるため、効率よく床材を製造することができる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1又は請求項2の発明において、ローラの外周面を基材の表面形状に対応させたものに交換できることを特徴とした。
【0012】
これにより、床材の寸法及び表面形状に合わせて、ローラの外周部を交換することができるので、床材の種類によって、いちいちローラ全体を交換する手間がかからず、作業の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ラミネータ内を搬送される基材の向きを変えることなく、床材表面の溝に化粧シートを圧着させることができるため、作業効率の良い床材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明により製造される床材Aの斜視図である。床材Aを構成する基材1の表面3(図1では、図示の都合上、表面3は、化粧シート2に隠れて見えないので、符合2にかっこ書で符号3を併記した。)には模様溝として縦溝5及び横溝6が形成され、木目模様の化粧シート2が貼付されている。これにより、床材Aの立体感や木の質感が強調され、使用の際には、フローリング調の美しい仕上がりとすることができる。
【0015】
床材Aは、基材1の表面3に化粧シート2が貼付されて構成される。基材1としては、およそ平面的なものであればどのような物でもよい。例えば、合板、木質繊維板(MDF等)、パーティクルボード、単板積層板等の木質系の材料が望ましいが、スチロール樹脂板、塩化ビニル樹脂板、強化プラスチック板、発泡スチロール樹脂板、発泡ウレタン樹脂板等の合成樹脂系の材料、あるいは、木質系材料や合成樹脂系材料の複合積層板等を使用することができる。基材1の厚みは、床材Aの用途や施工条件等により任意に選定可能であるが、例えば、5〜20mm程度の範囲とすることができる。
【0016】
以下、前記床材Aの製造方法について説明する。所定の寸法に切断された基材1の表面3には、模様溝が切削される。模様溝としては、基材1の長手方向と平行に縦溝5が、基材1の長手方向と垂直に横溝6が、それぞれ所定の深さ及び幅で断面V字状に形成される。なお、基材1の側面には、切削により図示していない雄実及び雌実が形成される。
【0017】
そして、このようにして形成された基材1には、化粧シート2が貼付される。好適な化粧シート2としては、例えば、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を含む合成樹脂シートが挙げられる。また、これらの化粧シート2に上塗りを施してもよい。化粧シート2の厚みは、例えば、0.05〜1mm程度の範囲とすることができる。
【0018】
通常、床材Aを構成する基材1への化粧シート2の貼付は、ラミネータ(図示せず)と呼ばれる装置によって行われる。ラミネータは、ロール状に巻いた化粧シート2を引き出す供給部と、供給部から引き出された化粧シート2に接着剤を塗布する塗布部と、接着剤を塗布した化粧シート2を基材1上に配置し、化粧シート2を基材1に圧着する圧着部(ローラ10)とを有する。
【0019】
本発明に係る製造方法は、模様溝への化粧シート2の圧着において、外周面11に特別な形状を備えたローラ10を使用する点に特徴がある。図2は、本発明に使用されるローラ10の斜視図である。ローラ10の大きさは、化粧シート2を圧着する基材1の寸法によって任意に選定される。ただし、ローラ10の幅は、基材1の幅よりも大きいことが望ましく、また、ローラ10の円周の長さは、基材1の搬送方向の長さよりも長くなければならない。図2に示すように、ローラ10の外周面11には、基材1の表面3形状に合わせて、位置決め部12及び凸部13が形成されている。
【0020】
位置決め部12の形状は、搬送された基材1の端面を当接できるものであればよい。例えば、ローラ10の回転軸17と平行な方向に、位置決め部12を突状に形成することができる。凸部13は、基材1の模様溝に対応しており、断面形状が山型で、縦溝押圧部15及び横溝押圧部16から構成される。縦溝押圧部15は、基材1の縦溝5に対応した間隔及び数で、周方向に沿って形成される。横溝押圧部16は、縦溝押圧部15間の基材1の横溝6に対応した位置に形成される。すなわち、位置決め部12から横溝押圧部16までの円周の長さが、ローラ10の位置決め部12に当接する基材1の側面から横溝6までの長さと同一となるよう形成される。また、見方を変えれば、上記構成は、ローラ10の外周部18の展開形状は、基材1の模様溝と略同一であると見ることもできる。
【0021】
本実施形態において、外周面11を含む外周部18は、ローラ本体20と別体となっており、例えば、図示しないフックにより、ローラ本体20に固定されている。このため、外周部18は取り外しが可能であり、基材1の寸法及び表面3の模様溝に合わせて交換することができる。外周部18は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)やシリコーンゴム等で形成することができる。また、外周部18は、ローラ10の全周に亘って存在する必要はなく、基材1の搬送方向の長さに対応する分だけ存在すればよい。
【0022】
基材1は、ラミネータ内を搬送され、既知の方法で、接着剤を塗布した化粧シート2を基材1上に配置し、基材1の表面3に化粧シート2を圧着する。図3(a)〜(c)は、基材1に化粧シート2を圧着する状態を示す断面図である。表面3に化粧シート2を圧着した後、図3(a)に示すように、基材1は、装置(ラミネータの圧着部)内を搬送されて、上記ローラ10の位置決め部12に当接する。ローラ10は、所定の位置で固定されており、位置決め部12が真下となる状態で、回転は一時停止している。基材1が位置決め部12に当接した後、ローラ10は回転を始める。
【0023】
その後、基材1は、縦溝5の延長方向に沿って、図示しない搬送用ローラにより搬送され、ローラ10も同期的に回転する。ローラ10の縦溝押圧部15は、基材1の縦溝5に対応した間隔及び数で形成されており、縦溝押圧部15で縦溝5に化粧シート2を押圧しながらローラ10は回転する。また、上記ローラ10において横溝押圧部16は、位置決め部12から横溝押圧部16までの円周の長さが、ローラ10の位置決め部12に当接する基材1の側面から横溝6までの長さと同一となるよう形成されている。そのため、ローラ10が回転すると、図3(b)に示すように、横溝押圧部16が基材1の横溝6に嵌合する。これにより、横溝6は横溝押圧部16により押圧されるため、横溝6に対して化粧シート2を圧着させることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、一旦、基材1の表面3に化粧シート2を圧着した後に、縦溝5及び横溝6への化粧シート2の圧着を行ったが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、表面3への化粧シート2の圧着を、縦溝5及び横溝6への化粧シート2の圧着と同時に、図2に示すローラ10の外周面11の凹部14によって行ってもよい。また、本実施形態でローラ10は、所定の位置に固定され、基材1を搬送しているが、固定された基材1に対してローラ10を移動させてもよい。
【0025】
また、図3(c)に示すように、ローラ10は、一回転するとブレーキがかかり、回転が一時停止する。本実施形態では、ローラ10の円周の長さと基材1の搬送方向の長さとの関係で、ローラ10が一回転すると一時停止することとしたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、基材1の搬送方向の長さが、ローラ10の円周の長さの半分以下ならば、半回転毎に一時停止することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明により製造される床材の斜視図である。
【図2】本発明に使用されるローラの斜視図である。
【図3】(a)は、搬送された基材の端面がローラの位置決め部に当接した状態を示すローラ及び床材の断面図であり、(b)は、ローラの横溝押圧部が化粧シートを介して基材の横溝を押圧する状態を示すローラ及び床材の断面図であり、(c)は、化粧シートの圧着後、回転を一時停止したローラ及び化粧シートが圧着された床材の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 基材
2 化粧シート
3 表面
5 縦溝
6 横溝
10 ローラ
12 位置決め部
13 凸部
15 縦溝押圧部
16 横溝押圧部
18 外周部
20 ローラ本体
A 床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラで基材に化粧シートを圧着して床材を製造する方法であって、
前記基材の表面には、予め溝が形成されており、
前記ローラの外周面には、位置決め部と、前記溝に対応する凸部が形成されており、
前記位置決め部に基材を当接させることによって、基材とローラとの位置合わせをした後、
ローラと基材を相対移動させながら、前記凸部を化粧シートを介して溝に嵌合させることによって、溝への化粧シートの圧着を行うことができることを特徴とする床材の製造方法。
【請求項2】
化粧シートの圧着後、ローラの位置決め部が所定の位置にくると、ローラを一時停止させることを特徴とする請求項1に記載の床材の製造方法。
【請求項3】
ローラの外周面を基材の表面形状に対応させたものに交換できることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−168286(P2007−168286A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369782(P2005−369782)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】