説明

床板の施工方法

【課題】 先に施工した床板に次に施工すべき床板を雌雄実によって順次接続しながら床を施工する際に、互いに嵌合した雌雄実を接着剤を介して強固に接着固定して雌雄実間に目隙や幅反りが生じ難い床施工を提供する。
【解決手段】 施工すべき床板2Bの雄実4の先端部下面に接着剤5を盛り上げ状に塗布したのち、この床板2Bの雄実4を先に施工した床板の雌実3に対向させて、まず、上記接着剤5の一部を雌実3の近傍部の床下地1に後方に向かって擦りつけると共に、その擦り付けによって残余の接着剤5を雄実4の先端面から上面にかけて移行、付着させた状態にし、次いで、雄実4を雌実3に嵌合させることにより上記残余の接着剤を展延させて雌雄実間を略全面的に接着した接着剤層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅や集合住宅等の建築物の床下地に接着剤を用いて床板を施工する床板施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の床根太や床下地合板などの床下地に木質化粧床板等の床板を施工するには、隣接する床板の対向端面に形成している雌雄実を嵌合させながら接着剤を用いて順次床下地上に敷設、固着したり、或いは、床板同士をその互いに嵌合する雌雄実を接着剤によって接着しながら床下地上に敷設、施工することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には従来技術として、床下地面にエポキシ樹脂接着剤のような樹脂系接着剤を塗布した後、複数枚の床板を順次、互いにその対向端面に形成している雌雄実同士を嵌合させながら敷設することにより床施工を行うことが記載されている。また、床下地面に接着剤を塗布することに代えて床板の裏面に接着剤を塗布しておき、この床板を床下地面に接着、施工することが記載されている。
【0004】
そして、このような床板の施工方法によれば、床板の敷設施工に手間と熟練を要するばかりでなく、床板はその裏面全体が床下地面に対して接着剤により貼着されているので、床板の張り替えを行いたい場合には、床板を床下地面から剥離除去することが困難である上に、剥離後の床下地面には接着剤や床板基材の破片等が残滓物として付着した状態となって、これらの残滓物の剥離、除去に著しい手間と労力を要するといった問題点があるので、このような問題点を解消するための床板施工方法として、床下地面及び床板裏面のいずれにも接着剤を塗布せずに、互いに嵌合すべき床板の雌雄実の部分にのみ、好ましくは先に施工する床板の雌実の下辺表面にのみ接着剤を塗布しておき、この接着剤を介して床板同士を順次結合させることにより床板を施工する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−331994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような床板施工方法では、先に施工した前列の床板の雌実における下辺表面に接着剤の塗布層を設けておくので、この床板の雌実に次に施工すべき次列の床板の雄実を嵌合させた時に、これらの雌雄実によって上記接着剤の塗布層が挟圧されて雌雄実の対向端面間から上方に絞り出される事態が発生し、この絞り出された接着剤を拭き取る作業を必要として床板の施工作業に多くの時間と労力がかかるといった問題点があった。
【0007】
このため、先に施工した前列の床板における雌実の下辺表面に接着剤を塗布する代わりに、この雌実の先端近傍部における床下地面に接着剤を盛り上げた状態に塗布しておき、しかるのち、次列の床板の雄実を上記前列の床板の雌実に嵌合させる際に、該次列の床板の雄実先端部によって上記盛り上げ接着剤の上部を掻き取るようにしてこの接着剤を延伸させながら前列の床板の雌実内に押し込むことにより、床板同士の実嵌合部を接着固定することも考えられる。
【0008】
しかしながら、このような床板の施工方法では、次列の床板の雄実先端部によって掻き取られて雄実先端部における下面から先端面に付着する接着剤の量が極めて少なくて図5に示すように、これらの床板11、12の雌雄実13、14の嵌合状態において、接着剤10を雌雄実13、14の嵌合部の下半部、即ち、前列の床板11の雌実13における下側突部13b の上面と次列の床板12の雄実14における下面からこれらの雌雄実13、14の接合端面15に至る接合部分まではどうにか延伸させて該接着剤により雌雄実13、14を接着させることができても、雌雄実13、14の嵌合部の上半部、即ち、前列の床板11の雌実13における上側突部13a の下面と次列の床板12の雄実14における上面からこれらの床下地の上部対向端面16に至る接合部分まで、特に、この上部対向端面16については接着剤を殆ど展延させることがことができない状態となる。
【0009】
このため、上記床板を暖房床板として用いたり、床板上に電気カーペットを敷いて使用した場合には、床板が暖房熱によって乾燥し、同図に示すように、隣接する床板11、12における上部対向端面16間に目隙や幅反り17が生じて外観を損するばかりでなく、耐用年数が短くなる。このような問題は、例えば、上記床板11、12をその基板が合板でこの合板表面に木質繊維板を積層してなる複合床板から形成している場合には、合板と木質繊維板との収縮挙動の相違によって上記目隙や幅反りが特に生じ易くなる。また、床下地上に接着剤を盛り上げ塗布しておくので、次列の床板を施工する際に、誤ってこの接着剤に該床板等が接触したりこの床板の下面によって接着剤が圧縮されたりして、床板の施工性を損なうといった問題点があった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、先に施工した前列の床板に次に施工する次列の床板を、これらの床板の対向端面に形成している雌雄実を接着剤を介して嵌合接着する際に、雌雄実の対向端面間に介在させた接着剤が雌雄実同士の嵌合時における挟圧にもかかわらず床板の上面側に絞り出されることなく床板同士を簡単且つ確実に接着固定させることができると共に、これらの雌雄実の対向端面を略全面的に接着させることができて施工後に互いに嵌合した雌雄実間に目隙や幅反りが発生し難い床板の施工方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載した床板の施工方法は、先に施工した前列の床板の端面に形成している雌実に次に施工すべき次列の床板の端面に形成している雄実を嵌合させることによって床下地上に床板を順次施工する床板の施工方法において、まず、次列の床板の雄実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雄実の先端部を前列の床板の雌実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設け、次いで、この次列の床板の雄実先端部を床板下地面から前列の床板の端面に沿って擦り上げてこの床板の雌実に上記残余の接着剤を展延付着させながら該雌実に次列の床板の雄実を嵌合させることにより、これらの雌雄実間で上記展延した接着剤を挟圧して雌雄実を一体に接着固定させる接着剤層を設けることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載した発明は、先に施工した前列の床板の端面に形成している雄実に次に施工すべき次列の床板の端面に形成している雌実を嵌合させることによって床下地上に床板を順次施工する床板の施工方法において、まず、次列の床板の雌実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雌実の先端部を前列の床板の雄実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設け、次いで、この次列の床板の雌実先端部で残余の接着剤を掬い取るようにしながら上記前列の床板の雄実に次列の雌実を嵌合させることによって上記残余の接着剤を雄実と雌実との対向面間に展延付着させ、この展延した接着剤層によって雌雄実同士を一体に接着固定させることを特徴とする。
【0013】
さらに、上記請求項1又は請求項2に記載の床板施工方法において、請求項3に係る発明は、前列の床板と次列の床板との雌雄実同士を接着固定させる接着剤を雌雄実の嵌合部の上部対向面間にまで展延させていることを特徴とし、請求項4に係る発明は、床下地上に擦りつけた接着剤層によって床下地に床板の下面を接着固定させることを特徴とし、請求項5に係る発明は、前列の床板の雌実又は雄実に嵌合させる次列の床板の雄実又は雌実の下面に盛り上げ塗布された接着剤と共に床板の下面に床板接着剤を塗布しておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、先に施工した前列の床板の端面に形成している雌実に次に施工すべき次列の床板の端面に形成している雄実を嵌合させることによって床下地上に床板を順次施工する床板の施工方法において、まず、次列の床板の雄実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雄実の先端部を前列の床板の雌実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設け、次いで、この次列の床板の雄実先端部を床板下地面から前列の床板の端面に沿って擦り上げてこの床板の雌実に上記残余の接着剤を展延付着させながら該雌実に次列の床板の雄実を嵌合させるので、これらの雌雄実を嵌合させた際に、床板の対向端面から該床板表面側に接着剤が絞り出される虞れがなく、且つ、雌雄実の嵌合部の上端に到るまで接着剤層を設けることができる量の接着剤を前列の床板の実部に容易に展延、付着させることができ、施工後において、床板が床暖房等によって乾燥しても、床板の対向端面間に目隙や幅反りが発生する虞れが殆ど生じない床を能率よく施工することができる。
【0015】
さらに、前列の床板と次列の床板の雌雄実同士を嵌合させる前に、次列の床板の雄実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雄実の先端部を前列の床板の雌実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設けておくので、この接着剤層によって床板同士の下端部を床下地に一体的に強固に接着固定することができ、強度的にも優れた床を施工することができる。
【0016】
同様に、請求項2に係る発明においても、先に施工した前列の床板の端面に形成している雄実に次に施工すべき次列の床板の端面に形成している雌実を嵌合させることによって床下地上に床板を順次施工する床板の施工方法において、まず、次列の床板の雌実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雌実の先端部を前列の床板の雄実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設け、次いで、この次列の床板の雌実先端部で残余の接着剤を掬い取るようにしながら上記前列の床板の雄実に次列の雌実を嵌合させることによって上記残余の接着剤を雄実と雌実との対向面間に展延付着させるので、これらの雌雄実を嵌合させた際に、床板の対向端面から該床板表面側に接着剤が絞り出される虞れがなく、且つ、雌雄実の嵌合部の上端に到るまで接着剤層を設けることができる量の接着剤を前列の床板の実部に容易に展延、付着させることができ、施工後において、床板が床暖房等によって乾燥しても、床板の対向端面間に目隙や幅反りが発生する虞れが殆ど生じない床を能率よく施工することができる。その上、床下地面に擦り付けている接着剤層によって、床板同士の下端部を床下地に一体的に強固に接着固定することができる。
【0017】
その上、上記請求項1、請求項2のいずれの床板施工方法においても、次列の床板の実の先端部下面に盛り上げ状態に塗布している接着剤の一部を、床下地上に擦り付けることによって床下地面に接着剤層を設ける際に、該床板の実先端部を前列の床板の雌実近傍部の床下地上に押し付けた状態から床下地に沿って手前に摺動させることにより、その接着剤の一部を床板の実部の下面から先端面に転移させることができ、この先端面に転移付着した接着剤がこの床板の実部を上記前列の床板の実部に嵌合させた際の嵌合部に全面に亘って介在する接着剤層となる。従って、その転移付着する接着剤の量を作業時に目視しながら調整することによって、上述したように、床板同士の対向する雌雄実を嵌合させた際に、床板の対向端面から該床板表面側に接着剤が絞り出される虞れがなく、且つ、雌雄実の嵌合部の上端に到るまで接着剤層を設けることができる量に容易に設定することができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、前列の床板と次列の床板との雌雄実同士を接着固定させる接着剤を雌雄実の嵌合部の上部対向面間にまで展延させているので、前列の床板と次列の床板との雌雄実同士を嵌合させた際に、この展延接着剤層によって雌雄実の対向面を下端から上端に亘って略全面的に一体に接着させることができ、従って、床板の対向端面間に目隙や幅反りなどの不具合が生じるのを確実に防止することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、床下地上に擦りつけた上記接着剤層によって床下地に床板の下面を接着固定させるので、全ての床板を床下地に強固に接着固定することができるばかりでなく、床下地面に接着剤を直接、塗布する場合に比べて、塗布された接着剤に誤って接触したりすることなく、作業性良く床板を施工することができる。
【0020】
さらに、請求項5に係る発明によれば、前列の床板の雌実又は雄実に嵌合させる次列の床板の雄実又は雌実の下面に盛り上げ塗布された上記接着剤と共に床板の下面に床板接着剤を塗布しておくので、床板と床下地とを一層強固に接着固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は、合板よりなる床下地1上に接着剤と釘とを併用して先に施工された前列の床板2Aに、次に施工すべき次列の床板2Bを対向させている状態の簡略斜視図、図2は床板施工工程を示す簡略縦断側面図であって、床板2A、2Bは同大、同形に形成されていて、例えば、合板よりなる基材表面に木質繊維板を一体に層着してなる平面長方形状の複合床板からなり、直角に隣接する一方の端面に雌実3を形成し、直角に隣接する他方の端面に雄実4を形成している。
【0022】
雌実3は、床板2A、2Bの端面において、これらの床板2A、2Bの厚み方向の中央部に一定の上下開口幅を有する水平な溝3aを設けることによって断面コ字状に形成されていて、この溝3aを中央にしてその上下に水平突条部3b、3cを設けてあり、さらに、溝3aの奥底面から上側の水平突条部3bの突出幅よりも下側水平突条部3cの突出幅を大きくしている。一方、雄実4は床板2A、2Bの端面におけるこれらの床板2A、2Bの厚み方向の中央部に上記雌実3の溝3aに嵌入可能な厚みと突出幅でもって突設してなり、この雄実4の上面に、上記雌実3における上側水平突条部3bと略同一幅で同一深さの側面L字状の上側段部4aを形成していると共に下面に、上記雌実3における下側水平突条部3cの突出幅よりも幅広く且つこの下側水平突条部3cの厚みに略等しい上下空間幅を有する側面L字状の下側段部4bを形成している。
【0023】
次に、このように構成した床板の施工方法を述べると、図1及び図2(a)は、床下地1上に先に施工した前列の床板2Aの雌実3に次に施工すべき次列の床板2Bの雄実4を対向させた状態を示すもので、この床板2Bの雄実4の先端部下面、即ち、下側段部4bの水平面先端部に、該雄実4の先端面に平行するように、予め、一定量の接着剤5を盛り上げ状態に塗布しておく。使用可能な接着剤5としてとしては特に限定されないが、床板接着用として通常使用されている接着剤、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、酢酸ビニル樹脂系等の粘性のある接着剤を用いることができる。
【0024】
このような接着剤はカートリッジやチューブに充填してなるものをカートリッジガン(図示せず)等に装着し、このカートリッドガン等のノズルから押し出すことによって上記施工すべき床板2Bの雄実4の先端部下面、即ち、下側段部4bにおける下向き水平面の先端部下面に一定高さを有する断面山形の突条形状となるように全長に亘って盛り上げ塗布する。なお、この接着剤5の塗布パターンは、床板2Bの雄実4の先端部下面に、先端面に沿って連続的に直線状に塗布することが好ましいが、断続的に塗布しておいてもよい。
【0025】
このように施工すべき床板2Bの雄実4の先端部下面に接着剤5を盛り上げ状に塗布したのち、この床板2Bの雄実4を図1及び図2(a)に示すように、先に施工した前列の床板2Aの雌実3と対峙させたのち、図2(b)に示すように、その雄実4を斜め下方に向けてその先端部における下側角部の下面を先に施工した前列の床板2Aの雌実先端面近傍部における床下地1上に押し付けることにより接着剤5を床下地1に付着させ、この状態から雄実4の傾斜度をさらに大きくさせながら僅かに後退させることによって床下地1上に該接着剤5の一部を擦り付けて接着剤層5aを設けると共に、残余の接着剤5bを床下地1上に対して雄実先端を上記のように擦り付けながら後退させることにより、該雄実4の下面から先端面側に向かって粘性移動させて該先端面から雄実4の先端部上面、即ち、上側段部4aの上向き水平面における先端部に亘って付着させる。
【0026】
次いで、この状態から直ちに上記次列の床板2Bの雄実4を既に施工している上記前列の床板2Aの雌実端面に向かって押し進めながら、床下地1の面に対するその傾斜度が小さくなる方向に伏動させることにより、該雄実先端部を床板下地面から前列の床板2Aの雌実3における下側水平突条部3cの先端面に沿って擦り上げてこの下側水平突条部3cの先端面に雄実4の先端面に付着している上記接着剤5aの一部を展延付着させながらさらに雄実4を伏動させて図2(c)に示すように上記下側水平突条部3c上に乗り上げさせ、この下側水平突条部3c上を図2(d)に示すように該雄実4を水平状態にしてその下面を雌実3の溝3aに向かって摺動させ、図2(d)に示すように該雄実4を雌実3の溝3aに嵌合させる。
【0027】
この際、雄実4の下面、即ち、下側段部4bの下向き水平面を雌実3の溝3aに向かって摺動させることにより、雄実4の先端部に付着している上記接着剤5bの一部が雌実3の下側水平突条部3cの上面に薄く転着、展延されてこの薄い接着剤層5cを介して雌実3の下側水平突条部3cの上面と雄実4の下側段部4bの下向き水平面とが一体に接着すると共に雄実4の先端面と雌実3の溝3aの垂直な奥底面とで雄実4の先端面に付着している接着剤が挟着されて薄く展延し、この薄い接着剤層5dによって雄実4の先端面と溝3aの奥底面とが一体に接着する。
【0028】
さらに、雌実3と雄実4との嵌合時に、雄実4の先端部上面に付着している接着剤が雌実3の溝3aの下向き上面、即ち、上側水平突条部3bの下面と雄実4の上面、即ち、上側段部4aの上向き水平面との間で薄く展延されて溝3aの下向き上面と雄実4の上面とを接着させる接着剤層5eを形成すると共にこの接着剤層5eの極く一部が雌実3の上側水平突条部3bの垂直な先端面とこの先端面に突き合わせ状に接合する雄実4の上側段部4aにおける垂直な端面との間に展延してこれらの対向端面同士を接着させる接着剤層5fを形成する。この場合、雄実4の上面先端部のみに上述したように極く少量の接着剤が付着していてこの接着剤を雌実3の上側水平突条部3bの下面から垂直な端面に亘って展延させるものであるから、接着剤層5fが該垂直な端面の上端近傍部にまで達することがあっても、上端から床板上に絞り出される虞れは殆ど生じない。
【0029】
こうして、前列の床板2Aの雌実3とこの雌実3に嵌合した次列の床板2Bの雄実4とが上記接着剤層5c〜5fによって床下地1上で一体に接合、接着すると共に、雌実3の下側水平突条部3cの突出幅が雄実4の下側段部4bの幅よりも短くなっているから、雌雄実3、4が嵌合した状態においては下側水平突条部3cの突出端面と下側段部4bの垂直面との間に隙間6が形成され、この隙間6内に床下地1上に擦り付けられている上記一部の接着剤層5aが図2(e)に示すように充填状態に収容された状態となり、この接着剤層5aを介して雌実3における上記下側水平突条部3cの突出端面と雄実4における下側段部4bとが床下地1に一体的に接着固定される。
【0030】
さらに、次列の床板2Bを施工する際に、その雄実4の先端部下面に塗布している接着剤5の一部を上述したように床下地1の上面に擦り付けて接着剤層5aを設けているので、次列の床板2Bの雄実4を前列の床板2Aの雌実に嵌合させた時において、その接着剤層5aを雄実4の下側段部4bから後方側の床板2Bの下面に達する部分にまで展延させておくことにより、この接着剤層5aで次列の床板2Bの下面を床下地1上に接着固定させることができる。このように、先に床下地1上に施工した前列の床板2Aの雌実3に次に施工すべき床板2Bの雄実4を嵌合させながら該床板2Bを床下地1に施工する作業を順次、繰り返し行って床下地1上にフローリング床を構成するものである。なお、床下地1上に対する床板の固定は上記接着剤と共にその雌実3における下側水平突条部3cを公知のように釘(図示せず)によって固着しておくことが望ましい。
【0031】
上記実施の形態においては、床下地1上に先に施工した前列の床板2Aの雌実3に次に施工すべき次列の床板2Bの雄実4を嵌合させているが、図3に示すように、床下地1上に先に施工した前列の床板2Aの雄実4に次に施工すべき次列の床板2Bの雌実3を順次、嵌合させながら床板の施工を行ってもよい。
【0032】
図3(a)は、床下地1上に先に施工した前列の床板2Aの雄実4に次に施工すべき次列の床板2Bの雌実4を対向させた状態を示すもので、雌実3は、床板の端面における厚さ方向の中央部に一定の上下開口幅を有する水平な溝3aを設けることによって断面コ字状に形成されていて、この溝3aを中央にしてその上下に水平突条部3b、3cを設けている。なお、この雌実3においては、上下水平突条部3b、3cの突出幅(突出長)を略同一幅に形成しているが、上記実施の形態と同様に下側水平突条部3cを上側水平突条部3bよりも幅広く形成しておいてもよい。一方、雄実4は、上記実施の形態で述べたように、床板の端面における厚み方向の中央部に上記雌実3の溝3aに嵌入可能な厚みと突出幅でもって突設してなり、この雄実4の上面に、上記雌実3における上側水平突条部3bと略同一幅で同一深さの側面L字状の上側段部4aを形成していると共に下面に、上記雌実3における下側水平突条部3cの突出幅よりも幅広く且つこの下側水平突条部3cの厚みに略等しい上下空間幅を有する側面L字状の下側段部4bを形成している。
【0033】
次に、このように構成した床板の施工方法を述べると、先に施工した前列の床板2Aの雄実4に嵌合させる次列の床板2Bの雌実3の先端部下面、即ち、下側水平突条部3cの下面先端部に、該雌実3の先端面に平行するように、予め、上記実施の形態で述べた接着剤と同じ接着剤5を一定量、カートリッジガンを使用して一定高さを有する断面山形の突条形状となるように全長に亘って盛り上げ塗布する。
【0034】
このように施工すべき床板2Bの雌実3の先端部下面に接着剤5を盛り上げ状に塗布したのち、この床板2Bの雌実4を図3(a)に示すように、先に施工した前列の床板2Aの雄実4と対峙させたのち、図3(b)に示すように、その雌実3を斜め下方に向けてその下側水平突条部3cの先端部における下側角部下面を先に施工した前列の床板2Aの雄実先端面近傍部における床下地1上に押し付けることにより接着剤5を床下地1に付着させ、この状態から雌実3の傾斜度をさらに大きくさせながら僅かに後退させることによって床下地1上に該接着剤5の一部を擦り付けて接着剤層5aを設けると共に、残余の接着剤5bを該雌実3の下側水平突条部3cの下面から先端面に向かって粘性移動させて該先端面から上記溝3aの先端部上面に亘って付着させる。
【0035】
次いで、この状態から直ちに上記次列の床板2Bの雌実3を既に施工している上記前列の床板2Aの雄実端面に向かって押し進めながら図3(c)に示すように床下地1の面に対するその傾斜度が小さくなる方向に伏動させることにより、雌実先端部で残余の接着剤を掬い取るようにしながらこの床板2Bを床下地1上に配設し、この状態から図3(d)(e)に示すように該床板2Bを前列の床板2Aに向かって床下地1上を摺動させることにより、前列の床板2Aの雄実4に次列の床板2Bの雌実3を嵌合させる。
【0036】
この際、次列の床板2Bの雌実3における溝3aの開口端が前列の床板2Aの雄実4の先端面に達した状態から次列の床板2Bをさらに前列の床板2Aに向かって水平移動させていくと、前列の床板2Aの雄実4の先端下側角部によって次列の床板2Bの溝3aの先端部上面に付着されている接着剤5bが該溝3a内への雄実4の嵌合に従って該雄実4の下面、即ち、下側段部4bの水平面と、溝3aの下側水平面、即ち、下側水平突条部3cの上面との対向面間で挟圧、展延されてその対向面間に薄い接着剤層5cを形成していくと共に残余の接着剤が雄実4の先端面に付着した状態となる。
【0037】
そして、この状態からさらに雌実3の溝3aの奥底にまで雄実4が進入すると、この雄実4の先端面に付着している接着剤が該先端面と溝3aの奥底面とで挟圧されて両者の対向面間に薄い接着剤層5dが展延形成されると共に、残余の接着剤が雄実4の上面、即ち、上側段部4aの水平面と、溝3aの上側水平面、即ち、上側水平突条部3bの下面との間に展延しながら押し出されてこれらの対向面間に薄い接着剤層5eが形成され、さらに、残りの極く少量の接着剤が雌実3の上側水平突条部3bの垂直な先端面とこの先端面に突き合わせ状に接合する雄実4の上側段部4aにおける垂直な端面との間に展延しながら回り込んで、床板上面側に絞りだされることなくこれらの対向端面間に薄い接着剤層5fが形成され、上記接着剤層5c〜5fによって雌雄実3、4が強固に接着固定される。
【0038】
さらに、上記図1、2で示した実施の形態と同様に、雌実3の下側水平突条部3cの突出幅が雄実4の下側段部4bの幅よりも短くなっているから、雌雄実3、4が嵌合した状態においては下側水平突条部3cの突出端面と下側段部4bの垂直面との間に隙間6が形成され、この隙間6内に床下地1上に擦り付けられている上記一部の接着剤層5aが充填状態に収容された状態となり、この接着剤層5aを介して雌実3における上記下側水平突条部3cの突出端面と雄実4が床下地1に一体的に接着固定される。
【0039】
さらに、次列の床板2Bを施工する際に、その雌実4の先端部下面に塗布している接着剤5の一部を上述したように床下地1の上面に擦り付けて接着剤層5aを設けているので、次列の床板2Bの雌実4を前列の床板2Aの雌実に嵌合させた時において、その接着剤層5aを雌実3の下側水平突条部3cから後方側の該床板2Bの下面に達する部分にまで展延させておくことにより、この接着剤層5aで次列の床板2Bの下面を床下地1上に接着固定させることができる。このように、先に床下地1上に施工した前列の床板2Aの雌実3に次に施工すべき床板2Bの雄実4を嵌合させながら該床板2Bを床下地1に施工する作業を順次、繰り返し行って床下地1上にフローリング床を構成するものである。
【0040】
なお、上記図1〜図3で示したいずれの床板の施工方法においても、床板2A、2Bの裏面には、図4(a)〜(c)に例示するように、予め、接着剤5'を盛り上げ状に塗布してしておき、この接着剤5'によって床板2A、2Bを床下地1上に接着固定させてもよい。このよに、床板2A、2Bの裏面に接着剤5'を塗布しておくので、床下地1上に接着剤を塗布する場合に比べて、床板2A、2B同士を床下地1上に作業性よく強固に接着固定させることができる。なお、接着剤5'の塗布形態としては、図4(a)(b)に示すように、直状の突条形態でもって接着剤を複数条、塗布したり、図4(c)に示すように、接着剤を連続波形状に屈曲させながら塗布してもよく、その他の塗布形態を採用してもよい。
【0041】
また、床下地1として合板製床下地板からなるものを採用し、この床下地1上に接着剤と釘によって床板を固定する例を示したが、これに限らず、根太組の床下地やコンクリートスラブの床下地に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】床板施工状態を示す簡略斜視図。
【図2】床板の施工手順を示す縦断側面図。
【図3】別な床板の施工手順を示す縦断側面図。
【図4】裏面に塗布形態の異なる接着剤層を設けた3枚の床板の裏面図。
【図5】従来例を説明するための縦断側面図。
【符号の説明】
【0043】
1 床下地
2A 先に施工した床板
2B 次に施工すべき床板
3 雌実
3a 溝
3b 上側水平突条部
3c 下側水平突条部
4 雄実
4a 上側段部
4b 下側段部
5 接着剤
6 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先に施工した前列の床板の端面に形成している雌実に次に施工すべき次列の床板の端面に形成している雄実を嵌合させることによって床下地上に床板を順次施工する床板の施工方法において、まず、次列の床板の雄実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雄実の先端部を前列の床板の雌実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設け、次いで、この次列の床板の雄実先端部を床板下地面から前列の床板の端面に沿って擦り上げてこの床板の雌実に上記残余の接着剤を展延付着させながら該雌実に次列の床板の雄実を嵌合させることにより、これらの雌雄実間で上記展延した接着剤を挟圧して雌雄実を一体に接着固定させる接着剤層を設けることを特徴とする床板の施工方法。
【請求項2】
先に施工した前列の床板の端面に形成している雄実に次に施工すべき次列の床板の端面に形成している雌実を嵌合させることによって床下地上に床板を順次施工する床板の施工方法において、まず、次列の床板の雌実の先端部下面に接着剤を盛り上げ状態に塗布したのち、該雌実の先端部を前列の床板の雄実近傍部の床下地上に押し付けてその接着剤の一部を擦り付けることにより床下地面に接着剤層を設け、次いで、この次列の床板の雌実先端部で残余の接着剤を掬い取るようにしながら上記前列の床板の雄実に次列の雌実を嵌合させることによって上記残余の接着剤を雄実と雌実との対向面間に展延付着させ、この展延した接着剤層によって雌雄実同士を一体に接着固定させることを特徴とする床板の施工方法。
【請求項3】
前列の床板と次列の床板との雌雄実同士を接着固定させる接着剤を雌雄実の嵌合部の上部対向面間にまで展延させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床板の施工方法。
【請求項4】
床下地上に擦りつけた接着剤層によって床下地に床板の下面を接着固定させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床板の施工方法。
【請求項5】
前列の床板の雌実又は雄実に嵌合させる次列の床板の雄実又は雌実の下面に盛り上げ塗布された接着剤と共に床板の下面に床板接着剤を塗布しておくことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の床板の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−174238(P2009−174238A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16031(P2008−16031)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】