説明

床板固定具

【課題】床板の幅方向,長さ方向いずれの方向における膨張等による変形によっても破損等することなく,強固に床板を固定する。
【解決手段】側面にスリット41が連続して形成された床板4を対象とし,隣接する床板4のスリット41に挿入され,2つのスリット41間に架設される架設片3と,前記架設片3の裏面32より直交方向に突設された中間片2とを可撓性を有する合成樹脂材料により一体的に形成し,前記架設片3の中央に該架設片3を肉厚方向に貫通する孔31を設けると共に,前記孔31の形成位置における前記架設片3の裏面32から中間片2の端縁迄の長さHを,固定する床板4の裏面42からスリット41の裏面側内壁41a迄の長さhに対して短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ウッドデッキやフローリングの床板を,根太等の支持材上に固定するための床板固定具に関し,より詳細には,幅方向両端を成す側壁に床板の長さ方向に連続してスリットが形成された床板を固定対象とし,この床板を前記支持材上に固定するための床板固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
ウッドデッキを例として説明すると,このウッドデッキの施工は,一例として図11に示すように地表等に必要に応じて基礎を打設する等して形成した設置面(図示せず)上に束柱6を立設し,この束柱6上に根太等の支持材5を架設し,この支持材5上に床板4であるデッキパネルを所定間隔を介して一定方向に並行に並べて載置すると共に,この床板4を,前記支持材5に固定することにより行われる。
【0003】
支持材5に対して床板4を固定する最も簡単な方法としては,床板4の表面から支持材5に至る釘やネジ釘を打ち込み,この釘やネジ釘によって床板4を支持材5に直接止め付ける方法がある。
【0004】
しかし,この方法による場合,床板4の表面に釘やネジ釘の頭部が露出するために見栄えが悪く,また,経時により釘やネジ釘の頭部が床板4の表面より突出した場合には,床板上を歩行等するに際して危険を伴う。
【0005】
さらに,一旦施工された床板4は,これを取り外した際,床板4の表面に釘やネジ釘によって穿たれた孔が残ることから,例えば解体された家屋等より回収した使用済みの床板を再利用しようとすれば,この孔を埋める等の煩雑な作業が必要となる。
【0006】
そこで,釘やネジ釘を床板4の表面に直接打ち込むことなく,床板固定具1を使用して支持材5に床板4を取り付ける方法も提案されており,このような床板固定具1による取り付けを可能とするために,床板4の幅方向における両端を成す側面43に,床板4の長さ方向に連続したスリット41を形成し,このスリット41の長さ方向に所定間隔で嵌合させた床板固定具1を支持材5上に固定することが行われている。
【0007】
このように,床板4を支持材5に固定するための床板固定具1の一例として,図11に示した床板固定具1は,上下二枚の横板7,8と,前記横板7,8間を垂直方向に連結する縦板9とによって形成された,幅方向の断面において略横向きH状を成す金属製の床板固定具であり(特許文献1参照),上側の横板7の端縁を,床板4,4の側面43,43に形成されたスリット41,41内に挿入すると共に,下側の横板8を支持材5上に載置した状態でネジ釘により固定して,床板4を支持材5に固定している。
【0008】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開平2006−177066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように構成された床板固定具1にあっては,上側の横板7の端縁を,床板4の側面43に形成したスリット41内に挿入した状態で,下側の横板8に形成された孔81を介して支持材5にネジ釘等を打ち込んで固定すると,床板4は,支持材5より離間する方向への移動(上方への移動)が規制される。
【0010】
しかし,図11に示す床板固定具1にあっては,下側横板8を支持材5に固定しても,床板4は,その裏面42とスリット41の裏面側内壁41a間を,前記床板固定具1の上下の横板7,8間に挿入されているだけの状態であるために,床板4の長さ方向の移動(例えば図11中の紙面手前側,又は奥側への移動)に対してはこれを規制する手段を備えていない。
【0011】
そのため,上記特許文献1に記載の床板固定具1にあっては,縦板9にも孔91を形成し,この孔91を介して床板4のスリット41が形成されている側面43にネジ釘を打ち込むことで床板4に床板固定具1を固定することで,床板4の長さ方向への移動を規制しており,その結果,床板4の取付に際し,縦,横二方向でのネジ釘の打ち込みが必要となる。
【0012】
また,このような床板4の側面43に対する床板固定具1の固定には,ネジ釘を打ち込むための作業スペースが必要であるために,隣接して取り付けられる床板4の対向する側面43の一方(図11中,紙面左側の床板4の側面43)に対して床板固定具1を取り付けると,この側面43と対向する側面43(図11中,紙面右側の床板4の側面43)に対しては共通の床板固定具1をネジ釘などによって固定することはできない。
【0013】
そのため,このような床板固定具1を使用する場合,床板4と床板固定具1間の固定は床板4の幅方向の一方側においてのみ行われることとなるために,床板固定具1の上下の横板7,8間と,この上下の横板7,8間に対する床板4の挿入部分間に設けられている遊びにより,床板4にがたつきが生じ,床板4上を歩行等した際に床板4と床板固定具1,又は床板4と支持材5とが接触,衝突して騒音等が生じることとなる。
【0014】
また,前述したように,床板4の側面43に対して床板固定具1を取り付けるためには,これを行うための作業スペースが必要となることから,これにより支持材5に対する床板4の取り付け,施工方法にも制約が加わる。
【0015】
すなわち,前記床板固定具1によって床板4の取り付けを行おうとすれば,先ず,床板4の幅方向の一方側の側面に床板固定具1を取り付け,このようにして床板固定具1を取り付けた床板4を支持材5上に載置すると共に,床板固定具1の下側の横板8を支持材5上にネジ釘等によって固定し,次いでこの床板4に隣接して配置する床板4の,床板固定具1の取り付けが行われていない側面43に形成されたスリット41内に,前記取り付けが完了した床板固定具1の上側の横板7が挿入されるようにこの床板4を支持材5上に載置し,他方の側壁43に固定した床板固定具1の下側の横板8を支持材5上に固定し,この作業を繰り返しながら必要数の床板4の取り付けが行われる。
【0016】
また,床板4を取り外す場合には取り付けの際の手順とは逆に,施工順位が後の床板4の床板固定具1を支持材5より外してこの床板4を取り除いた後,隣接する床板4を外していく必要があり,例えば床面の中央付近に配置された床板4を1枚だけ交換するような場合においても,端から交換が必要な床板4迄の全ての床板4を取り外す必要があり煩雑である。
【0017】
なお,特許文献1に記載の床板固定具1にあっては,床板4に膨張等が生じた際,床板固定具1の全体が破損することを防止するために,上側の横板7の一部に薄肉部を形成する等してこの部分を変形させることで膨張時における寸法の増加を吸収する構成が採用されているが(例えば,特許文献1の図1,2参照),この方法では,床板4の幅方向の膨張に対する手当はされているものの,膨張,収縮の際により大きな寸法変化が生じ得る長さ方向の変形に対しては何等の考慮もされておらず,床板固定具1は床板4にネジ釘によって固定されていることから,床板4が長さ方向に膨張,収縮すれば,これにより床板固定具1は破損するおそれがある。
【0018】
また,床板4の膨張,収縮に伴って床板4に生じ得る反りや歪みに伴う床板固定具1の破損を防止しようとすれば,固定対象とする床板4の裏面42からスリット41の裏面側内壁41a間の長さhに対し,上下の横板7,8間の間隔H’を広く取る等して遊びを大きくして対処する必要があり,また,床板4の幅方向の膨張による破損を防止するために設けた前述の薄肉部は,一旦変形すると元の形状には復元しないことから,気温や湿度の低下等によって床板4が再度収縮すると,この収縮分,床板4との間に大きな遊びが生じることになる。
【0019】
このように,床板4と床板固定具1間の遊びによる床板4のがたつきにより,床板4上を歩行等した際に床板4と支持材5が衝突する等して生じる騒音が比較的大きなものとなる。
【0020】
そこで本発明は,上記従来技術が持つ種々の欠点を解消するためになされたものであり,床板固定具をネジ釘などによって床板に固定することなしに,支持材に対して固定するのみで,支持材5より離間する方向,床板の上方ないし表面方向,及び床板の長さ方向のいずれの方向への移動を共に規制することができ,従って取り付け,取り外しの際の施工手順等に自由度が増すと共に,床板の幅方向の膨張,収縮だけでなく,長さ方向への膨張,収縮や反りに対しても床板固定具の破損を防止でき,更に,前述のように膨張,収縮等に対応するものでありながら,床板を支持材に遊びなく固定することができ,従って歩行時等における騒音の発生等についても最小限に止めることができる床板固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために,本発明の床板固定具1は,幅方向の両端を成す側面43のそれぞれに,長さ方向に連続してスリット41が形成された床板4を固定対象とする床板固定具1において,
例えば水平に配置された支持材5上に,隣接配置された床板4の,相互に対向する側面43のそれぞれに形成された前記スリット41の双方に挿入されて前記スリット41間に架設される架設片3と,前記架設片3の裏面32側で長さ方向の中心線より前記架設片3に対して直交方向に突設する中間片2を,熱可塑性樹脂例えばABS樹脂,ポリプロピレン,ポリエチレン,塩化ビニル,ナイロン等の可撓性を有する合成樹脂材料により一体的に形成し,
前記架設片3の中央に該架設片3を肉厚方向に貫通する例えばねじ釘を挿着する孔31を設けると共に,前記孔31の形成位置における前記架設片3の裏面32から前記中間片2の端縁迄の長さHを,固定する床板4の裏面42からスリット41の裏面側内壁41a迄の長さhに対して短く(H=0を含む)形成し,
更に前記中間片2の長さ方向両端であって,前記架設片3の表面33よりも低い位置に,前記床板4の側面43間の間隔の変化に応じて変形する変形部22,23を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0022】
前記構成の床板固定具1において,前記孔31の形成位置における前記架設片3の裏面32側における前記中間片2の突出長さHを,固定する床板4の裏面42からスリット41の裏面側内壁41a迄の長さhに対して短く形成するために,
前記中間片2の最端縁部から前記架設片3の裏面32迄の高さ全体を,前記床板裏面42からスリット41の裏面側内壁41a迄の長さhに対して短く形成しても良く(請求項2;図7参照),又は
前記ネジ孔31の形成位置における前記架設片3の裏面32側における前記中間片2に,該中間片の端縁から前記架設片3の裏面側に向かう切欠24を形成して,この部分における架設片3からの中間片2の突出長さHをゼロ,又は他の部分に比較して短く形成しても良い(請求項3;図8,9参照)。
【0023】
なお,前記変形部22,23は,高さ方向を長さ方向とした円筒状に形成しても良く(請求項4;図1,2参照),または,前記中間片2の両端を肉厚方向に分岐して形成した平面視略V字状に形成しても良い(請求項5;図2中の変更例参照)。
【0024】
さらに,前記架設片3の裏面32には,その周縁に周縁厚肉部34を形成すると共に,該架設片3の長さ方向の一端3a側における前記中間片2の前記架設片側端縁から前記架設片3の幅方向の一端3c側にかけて形成され,前記周縁厚肉部34と連通する第1の幅方向厚肉部35と,
前記架設片3の長さ方向の他端側3bにおける前記中間片2の前記架設片側端縁から前記架設片3の幅方向の他端側3dにかけて形成され,前記周縁厚肉部34と連通する第2の幅方向厚肉部36をそれぞれ設けることができる(請求項6,図2,図5参照)。
【0025】
この場合,前記架設片3に設けた第1及び第2の幅方向厚肉部35,36と連通する前記中間片2の前記架設片側端縁位置から対向方向端縁位置にかけて,前記中間片2の肉厚を相対的に薄く形成した薄肉部28a,28bを設けても良い(請求項7,図2,図5参照)。
【発明の効果】
【0026】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の床板固定具1によれば,以下の顕著な効果を有する。
【0027】
(1)孔31の形成位置における中間片2の端縁から架設片3の裏面32迄の長さHを,固定する床板4の裏面42からスリット41の裏面側内壁41a間の長さhに対して短く形成したことにより,ネジ釘の締め込みにより架設片3の裏面32を,スリット41の裏面側内壁41aに強力に押圧することが可能となり,これにより床板4を支持材5に対して押圧して,床板固定具1を支持材5に固定するだけで,床板4に対してネジ釘等による固定を行うことなしに,床板4の支持材5より離間する方向,図示では,上方側への移動を規制することができると共に,長さ方向に対する移動についても規制することができた。
【0028】
このように,床板固定具1を床板4に対して固定せず,支持材5に対してのみ固定する構成としたことから,床板4の取り付け作業が比較的容易であると共に,施工手順の自由度が増し,また,例えば床面の中央に取り付けられた床板4の1枚のみを取り外すことも容易である。
【0029】
また,床板固定具1は,床板4に強固に押圧されてはいるものの,固定されておらず,しかも床板固定具1を可撓性を有する材料で構成しているために,床板4が長さ方向に膨張,収縮する等して必要以上に大きな力が加わった場合には,床板固定具1は破断等する前に床板4の長さ方向への移動を許容して,床板固定具1の破断等を原因とした床板の剥離等を防止できた。
【0030】
しかも,本発明の床板固定具1では,このような床板4の長さ方向への膨張等に伴うサイズ変化を,固定時の遊びによって吸収するものではなく,床板4は遊び無く支持材5に押圧されていることから,遊びが生じている場合に歩行時等に床板4と床板固定具1や支持材5が衝突する等して生じる騒音等の発生を解消することができた。
【0031】
(2)また,可撓性の樹脂材料によって形成されていると共に,変形部22,23を設けたことから,床板4の幅方向に膨張,収縮が生じた場合であっても,床板固定具1全体の変形のみならず,この変形部22,23が潰れ,又は回復することによっても対応することとなるために,比較的大きな寸法変化に対しても対応することが可能である。
【0032】
(3)さらに,可撓性を有する樹脂材料によって形成すると共に,架設片3の中央部に設けた孔31一箇所で固定する構成としたことから,この孔31を中心として床板固定具1の両端は上下に撓み,これにより例えば架設片3がスリット41内に斜めに配置されることで,スリット41の裏面側内壁41aのみならず表面側内壁41bにも接触乃至は押圧されて,床板4の長さ方向の移動をより強固に規制することができた。
【0033】
また,このような床板固定具1の変形により,床板4に長さ方向の反りが生じた場合であっても,これに追従して床板固定具1が変形し,床板固定具1の破断を防止でき,支持材5に対して床板4を固定した状態を維持することができた。
【0034】
(4)孔31の形成位置における架設片3の裏面32側において中間片2に切欠24を設けたことにより,孔31位置を中心として床板固定具1の架設片3が長さ方向に撓み易く,これによりネジ釘の締め付けによって床板に加えられる押圧力を増強することができると共に,床板4の長さ方向への移動に対する規制をより強固に行うことができた。
【0035】
また,床板4に反り等が生じた場合であってもこの様な床板4の変形を吸収し得ると共に,床板固定具1が破断し難いものとなった。
【0036】
(5)架設片に周縁厚肉部34と,第1及び第2の幅方向厚肉部35,36を形成したことにより,床板固定具1の強度を保ちながら使用する樹脂材料の量を減らすことができた。
【0037】
また,これらの厚肉部34,35,36が形成された高剛性の部分と,その他の部分との間に強度差が生じた結果,ネジ釘の締め込みにより架設片3が床板4のスリット41内の裏面側内壁41aに押圧されると,架設片3は剛性の高い部分と低い部分とで異なる変形をして歪み,この歪みによって架設片3は,床板4のスリット41の底側内壁41aに押圧されるだけでなく,上側41bに対しても接触,押圧されて床板4の長さ方向に対する移動を規制する力を増大させることができた。
【0038】
(6)特に,中間片2に薄肉部28a,28bを設け,この薄肉部28a,28bと前記架設片3の第1及び第2の幅方向厚肉部35,36とを連続する構成とした場合には,前述した架設片3の変形がより一層助長されて,床板4の長さ方向に対する移動をより一層良好に規制することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に本発明の実施例を,添付図面を参照しながら以下に説明する。
【0040】
〔床板固定具の構成〕
本発明の床板固定具1は,例えばABS樹脂等の適度な剛性と可撓性とを兼ね備えた合成樹脂材料によって一体的に形成されたもので,隣接配置する床板4,4の,相互に対向する側面43,43に形成された前記スリット41,41の双方に挿入されて前記スリット41,41間に架設される架設片3と,前記架設片3の裏面32における長さ方向の中心線より前記架設片3に対して直交方向に突設し,隣接する前記床板4,4の側面43,43間に配置される中間片2とを備え(図7参照),幅方向の断面形状において全体として略T字状に形成されている(図6参照)。
【0041】
この架設片3の中央部には,この架設片3の肉厚を貫通する孔31が形成されており(図1〜3,6参照),この孔31内にネジ釘を挿入すると共に,根太等によって構成される支持材5にネジ釘の先端を打ち込む(ねじ込む)ことにより,床板固定具1を支持材5上に取り付け可能に構成されている。
【0042】
架設片3の裏面32より突出する前記中間片2を,図3に示すように全体として矩形状に形成した本実施形態の床板固定具1にあっては,架設片3に形成した孔31の形成位置の裏面32側に設けた中間片2に,その肉厚内を高さ方向に貫通する開孔25を形成して孔31を延長し,孔31内に挿入されたネジ釘の先端が,前記開孔25を介して支持材5上に到達することができるように構成している。
【0043】
この床板固定具1の,前記架設片3の裏面迄の高さ,従って中間片2の高さは,この床板固定具1によって固定する床板4の裏面42から,スリット41の裏面側の内壁41a間の長さhに対して僅かに短く形成されており(図7参照),本実施形態の床板固定具1にあっては,中間片2全体の高さを短くすることで,孔31の形成位置における前記架設片3の裏面32から中間片2の端縁迄の長さHが,床板4の裏面42からスリット41の裏面側の内壁41a間の長さhに対して短く形成している。
【0044】
中間片2の高さを,床板4の裏面42からスリット41の裏面側の内壁41a間の長さhと同等以上の高さに形成する場合には,架設片3の裏面32がスリットの裏面側内壁41aと接触すると同時に,又は接触する前に中間片2の端縁が支持材5と接触して床板固定具1の床板裏面方向への移動は規制されることとなるが,前述のように中間片2を所定の短い長さとしたことにより,孔31を介してネジ釘によって床板固定具1を支持材5上に固定する際,架設片3の裏面32がスリット41の裏面側内壁41aに接触した後においてもさらにネジ釘の締め込みが可能であり,これにより架設片3の裏面32を,床板4のスリット41の裏面側内壁41aに強力に押圧されて,床板4を支持材5上に強固に押圧して固定することができる。
【0045】
そのため,例えば従来技術として説明した床板固定具1のように,中間片2を床板4の長さ方向の側面43にネジ釘等によって固定することなく,床板4の長さ方向の移動を規制することが可能である。
【0046】
この中間片2の長さ方向の両端には,架設片3の表面33よりも低い位置に変形部22,23が設けられ,図示の実施形態にあっては一例としてこの変形部22,23を前記中間片2の高さ方向を長さ方向とし,かつ,前記中間片2の他の部分の肉厚に対して外周の直径が大きく形成された円筒状に形成している。
【0047】
もっとも,この変形部22,23の形状は,前述したような円筒状に限定されるものではなく,一例として図2中に変更例として示すように,中間片2の肉厚を分岐して,平面視においてV字状に形成したものとしても良く,床板4,4が例えば幅方向に膨張,収縮する等して生じた寸法変化に伴う,床板4,4の側面43,43間の間隔の変化に応じて,この変形部22,23が潰れ,又は復元して,前記寸法変化を吸収することができるものであれば,その構成は限定されない。
【0048】
図1〜7を参照して説明した床板固定具1にあっては,中間片2の突出長さを全体として短くすることで,孔31の形成位置における架設片3の裏面32と中間片2の端縁間の長さHを,床板4の裏面42からスリット41の底側内壁41a迄の長さhに対して短く形成していたが,この構成に代え,図8,図9に示すように,孔31の形成位置における架設片3の裏面側において,中間片2に端縁側から架設片3に向かう切欠24を形成して,孔31の形成位置における架設片3の裏面32と中間片2の端縁間の長さHをゼロとし(図8参照),又は架設片3の裏面32と中間片2の端縁間の長さHを他の部分に比較して短くすることで(図9参照),孔31の形成位置における架設片3の裏面32と中間片2の端縁間の長さHを,床板4の裏面42からスリット41の底側内壁41a迄の長さhに対して短くしても良い。
【0049】
幅方向の断面形状においてT字状をなす本発明の床板固定具1において,図1〜7を参照して説明した実施例のように矩形状の中間片2を設ける場合には,この中間片2によって補強された架設片3は反りや撓みを生じ難いものとなっているが,前述のように孔31の形成位置において架設片3の裏面側に中間片2を設けず,又は中間片2に切欠24を設けることにより,中間片2の架設片3の補強材としての機能が低下し,架設片3はこの孔31を中心に変形し易くなり,これにより後述するように床板4を支持材5に固定する能力が増強される。
【0050】
なお,この床板固定具1の架設片3及び中間片2には,好ましくは図2に示すように相対的に肉厚が厚い厚肉部と,肉厚が薄い薄肉部とを形成し,これにより架設片3の剛性を維持しつつ,樹脂材料の使用量の減少を実現すると共に,ネジ釘を締め付けて床板4のスリット41の底側内壁41aに架設片3を押圧し,また,中間片2の端縁部を支持材5上に押圧した際に,架設片3及び中間片2に所望の歪みが生じるように構成している。
【0051】
本実施形態にあっては,このような歪みを生じさせるために,架設片3の裏面32における周縁部の肉厚を相対的に厚くして周縁厚肉部34を形成すると共に,架設片3の長さ方向の一端3a側において中間片2の前記架設片側端縁から架設片3の幅方向における一端3c側にかけて形成され,前記周縁厚肉部34と連通する第1の幅方向厚肉部35と,架設片3の長さ方向の他端3b側ににおいて中間片2の前記架設片側端縁から架設片3の幅方向における他端3d側において形成され,前記周縁厚肉部34と連通する第2の幅方向厚肉部36を設けている。
【0052】
また,架設片3に形成した前記第1及び第2の幅方向厚肉部35,36の形成位置に対応した部分の中間片2に,高さ方向に肉厚が相対的に薄い薄肉部28a,28bを形成し,これらにより前記架設片3の歪みがより一層助長されるようにしている。
【0053】
図2及び図5に示す実施形態にあっては,中間片2の長さ方向両端側に端部厚肉部26a,26bをそれぞれ形成すると共に,長さ方向の中央部分に中央厚肉部27を形成し,前記2つの端部厚肉部26a,26bと,前記中央厚肉部27間における中間片2の肉厚を相対的に薄肉として前述の薄肉部28a,28bとし,この薄肉部28a,28bと,前述した第1及び第2の幅方向厚肉部35,36を連続形成している。
【0054】
〔使用方法及び作用〕
以上のように構成された本発明の床板固定具1は,隣接して支持材5に取り付けられる床板4の,相互に対向する側面間に配置され,中間片2を下向きとした状態で,架設片3の両端をそれぞれ床板4の側面43に形成されたスリット41に挿入して,スリット41間に架設された状態に配置する。
【0055】
このとき,図1〜7を参照して説明した床板固定具1では,中間片2の端縁から架設片3の裏面32迄の長さHは,固定する床板4の裏面42からスリット41の裏面側内壁41a迄の長さhに対して僅かに短く形成されていることから,中間片2の端縁は,支持材5より僅かに離間した,浮いた状態にある(図7参照)。
【0056】
このような床板固定具1の配置状態において,架設片3の中央部に形成された孔31に,ネジ釘等を挿入してその先端を支持材5にねじ込む。
【0057】
前述のように中間片2の端縁は,支持材5より離間して浮いた状態にあることから,ネジ釘の頭部が,孔31に形成されたすり割り31a内に収容される迄締め込んでも,中間片2の端縁は支持材5に到達せず,床板固定具1の床板裏面方向(同図下方)への移動に対する規制が行われない。
【0058】
その結果,更にネジ釘をこの状態から更に締め込むと,床板固定具1は架設片3を撓ませながらさらに床板裏面方向に移動しようとするために,この締め込み量に応じて架設片3の裏面32がスリット41の裏面側内壁41aを押圧する力を高めることができる。
【0059】
その結果,床板固定具1を床板4に固定しない構成でありながら,床板4の支持材5より離間する方向へ対する移動の規制のみならず,長さ方向に対する移動についても強固に規制することができる。
【0060】
孔31の形成位置における架設片3の裏面32側に切欠24を設けた構成(図8,図9参照)にあっては,ネジ釘の締め込みによって中間片2の端縁が支持材5上に接触した後にあっても,さらにネジ釘を締め込むことにより中間片の端縁が切欠24を中心に紙面左右に開き,架設片3が孔31の形成位置を中心として床板裏面方向(同図下方)に向かって膨出するように変形することにより更にネジ釘を締め込むことができ〔図10(A),(B)参照〕,これにより更に強い押圧力で床板4を支持材5に対して押圧することができる。
【0061】
しかも,このようにして床板固定具1が変形することにより,架設片3はスリット41の長さ方向に対して角度を以て配置され〔図10(B)参照〕,孔31寄りの位置において架設片3の裏面32がスリット41の裏面側内壁41aに押圧されるのみならず,架設片3の長さ方向両端部側の表面33がスリット41の表面側内壁41bに対して押圧されることから〔図10(B)中の×印部分〕,床板4の長さ方向に対する移動の規制がより一層強固に行われる。
【0062】
なお,架設片3に前述した通りのパターンで厚肉部34,35,36(薄肉部)を形成した図2及び図5に示す構成にあっては,厚肉部34,35,36において架設片3の剛性が高く,薄肉部において架設片3に変形が生じ易いものとなっている。
【0063】
そして,架設片3の長さ方向一端3a側における第1の幅方向厚肉部35の形成方向と,架設片3の長さ方向における他端3b側に設けた第2の幅方向厚肉部36の形成方向とを,幅方向において逆向きに形成したことから,このように構成された床板固定具1の架設片3を床板4のスリット41内に挿入すると共に,ネジ釘の締め込みによって架設片3の裏面32をスリットの裏面側内壁41aに強い力で押圧すると,架設片3は長さ方向の中心線を中心として全体的に捩れるように歪められる。
【0064】
その結果,この歪みによって架設片3は,その裏面32がスリットの裏面側内壁41aに押圧されるのみならず,架設片3の表面33がスリット41の表面側内壁41bに押圧,接触されるために,床板4はその長さ方向への移動が規制される。
【0065】
しかも,中間片2に前述したパターンの薄肉部28a,28bを形成する場合には,中間片2は薄肉部28a,28bで変形が生じやすくなるために架設片3のこのような歪みがより一層助長されて,床板4の長さ方向の移動に対する規制がより一層強固に行われる。
【0066】
なお,床板4の取り付けに際し,隣接する床板4間には床板固定具1の中間片2が挟持されることから,隣接する床板4間にはこの中間片2の肉厚,特に変形部22,23の厚さによって規定される間隔が設けられる。
【0067】
以上のようにして,本発明の床板固定具1を床板4の長さ方向に一例として600mm程度の間隔で取り付け,床面に対して必要数の床板4の取り付けを行うと,本発明の床板固定具1により固定された床板4が,例えば気温や湿度の変化等によって,膨張,収縮等の変形が生じた場合,このような変形が床板4の幅方向において生じたものである場合には,この変形による寸法変化は,床板固定具1が全体として変形することにより吸収されると共に,前述した変形部22,23が潰れ,又は復元することにより吸収される。
【0068】
また,前述のように床板固定具1はネジ釘等によって床板4に『固定』するものではなく,架設片3の裏面32側をスリット41の裏面側内壁41aに強力に『押圧』された状態で接触されているものであることから,床板4上を人が歩行,走行した程度の力によって移動することはないが,熱や湿度等に伴う膨張や収縮により長さ方向に対して床板を移動させようとする強固な力が生じると,床板固定具1の弾性変形とも相俟って床板の長さ方向の移動を許容する。
【0069】
従って,このようにして床板4の長さ方向の移動が許容されることにより,床板4の長さ方向に対する膨張,収縮によっても床板固定具1に破損等が生じず,従って支持材5に対する床板4の取り付け状態を維持することができる。
【0070】
また,床板4の長さ方向での反りや歪みに対しても,床板固定具1が長さ方向に変形して破損が生じることを防止することができるようになっている。
【0071】
しかも,床板4は遊び無く支持材5に押圧された状態で取り付けられているために,床板4上を歩行等した際に,遊びによって床板4が床板固定具1や支持材5に衝突等することにより生じる騒音を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の床板固定具の斜視図。
【図2】本発明の床板固定具の平面図。
【図3】本発明の床板固定具の正面図。
【図4】本発明の床板固定具の右側面図。
【図5】本発明の床板固定具の裏面図。
【図6】図2のVI-VI線断面図。
【図7】床板固定具と床板との位置関係を示す説明図。
【図8】本発明の別の床板固定具の正面図。
【図9】本発明の更に別の床板固定具の正面図。
【図10】床板固定具の取付状態を示す説明図であり,(A)は架設片の未変形状態,(B)は変形状態を示す。
【図11】従来の床板固定具の取り付け状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0073】
1 床板固定具
2 中間片
21 開孔
22,23 変形部
24 切欠
25 開孔
26a,b 端部厚肉部
27 中央厚肉部
28a,b 薄肉部
3 架設片
3a 一端(架設片の長さ方向)
3b 他端(架設片の長さ方向)
3c 一端(架設片の幅方向)
3d 他端(架設片の幅方向)
31 孔
31a すり割り
32 裏面(架設片の)
33 表面(架設片の)
34 周縁厚肉部
35 第1の幅方向厚肉部
36 第2の幅方向厚肉部
4 床板
41 スリット
41a 裏面側内壁(スリットの)
41b 表面側内壁(スリットの)
42 裏面(床板の)
43 側面
5 支持材
6 束柱
7 横板(上側)
8 横板(下側)
81 孔
9 縦板
91 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両端を成す側面のそれぞれに,長さ方向に連続してスリットが形成された床板を固定対象とする床板固定具において,
隣接配置された床板の,相互に対向する側面のそれぞれに形成された前記スリットの双方に挿入されて前記スリット間に架設される架設片と,前記架設片の裏面側で長さ方向の中心線より前記架設片に対して直交方向に突設する中間片を,可撓性を有する合成樹脂材料により一体的に形成し,
前記架設片の中央に該架設片を肉厚方向に貫通する孔を設けると共に,前記孔の形成位置における前記架設片の裏面から前記中間片の端縁迄の長さを,固定する床板の裏面からスリットの裏面側内壁迄の長さに対して短く形成し,
更に前記中間片の長さ方向両端であって,前記架設片の表面よりも低い位置に,前記床板の側面間の間隔の変化に応じて変形する変形部を設けたことを特徴とする床板固定具。
【請求項2】
前記中間片の最端縁部から前記架設片の裏面迄の高さを,固定する床板の裏面からスリットの裏面側内壁迄の長さに対して短く形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の床板固定具。
【請求項3】
前記ネジ孔の形成位置における前記架設片の裏面側における前記中間片に,該中間片の端縁から前記架設片の裏面側に向かう切欠を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の床板固定具。
【請求項4】
前記変形部が,高さ方向を長さ方向とした円筒状であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の床板固定具。
【請求項5】
前記変形部が,前記中間片の両端を肉厚方向に分岐して形成した平面視略V字状であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の床板固定具。
【請求項6】
前記架設片の裏面周縁に形成された周縁厚肉部と,
該架設片の長さ方向の一端側における前記中間片の前記架設片側端縁から前記架設片の幅方向の一端側にかけて形成され,前記周縁厚肉部と連通する第1の幅方向厚肉部と,
前記架設片の長さ方向の他端側における前記中間片の前記架設片側端縁から前記架設片の幅方向の他端側にかけて形成され,前記周縁厚肉部と連通する第2の幅方向厚肉部をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の床板固定具。
【請求項7】
前記架設片に設けた第1及び第2の幅方向厚肉部と連通する前記中間片の前記架設片側端縁位置から対向方向端縁位置にかけて,前記中間片の肉厚を相対的に薄く形成した薄肉部を設けたことを特徴とする請求項6記載の床板固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−285929(P2008−285929A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133139(P2007−133139)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506007046)WPCコーポレーション株式会社 (8)
【Fターム(参考)】