説明

床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材

【課題】 研削機器による研削性を損なうことなく、段差や突起物に対する引っ掛かり現象を効果的に解消し、研削機器本体にも負担が係らずに操作性を向上ならしめた床面用横回転研削機器における研削工具引っ掛かり防止部材を提供する。
【解決手段】 研削盤に付設してなる研削工具に対して機器動作時に該研削工具の進行方向位置に段差等の障害物を乗り越え得る傾斜形状の乗り越え面を有してなる部材を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面用横回転研削機器による研削時において、研削工具が床面の段差や突起分などの障害物に対して引っ掛かってしまう事を防止するものであり、作業中に機器本体が振り回されてしまうといった危険性を回避し、さらに機器本体に係る負荷を軽減させることの出来る床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、横回転研削機器はタイヤ接地タイプとタイヤ非接地タイプがあり、また研削盤に研削工具を固定状態に複数枚取り付けて研削盤の横回転運動によって該研削工具により床面を研削するもの、各研削工具を軸回動自在な如く遊星的に取り付けて研削盤の横回転とは別に各研削工具自体も横回転する構造としたもの等がある。研削工具は研削用ダイヤ材や砥石であり、コンクリート床やプラスチック床などの研削に使用されるもので、用途に応じて使い分けされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の研削機器は研削床面に段差や突起物といった障害物がある場合、研削工具がすぐに引っ掛かってしまい、段差等に対して大きく反発し、バランスを失って失速することで周囲を破損させてしまったり、周囲にいる作業者を傷つけてしまうといった問題が生じていた。
【0004】
無論、研削工具の引っ掛かりにより機器操作者にも大きな負荷が係るので、非常に危険な研削作業を強いることになっている。特にタイヤ非接地タイプの研削機器の場合、機器の傾きでバランスを取って進行方向などをコントロールしているためタイヤ接地タイプに比して、その影響は深刻である。機器本体についてもモーターやエンジン、ギア、ベアリング、研削工具取り付け部に大きな負荷が係るので設計強度を上げる必要があり、そのために高コストになってしまう問題があった。実際に、研削工具の引っ掛かりが故障の大きな原因になっているのも事実である。尚、改修塗り床工事などで既存の浮き部分を除去した後の研削では、既存の塗り床の厚み分だけの段差が存在してしまうので、当該段差部分に大きな衝撃が係ることで、新たな浮きが発生することが多々あり、大きな障害になっている。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、研削機器による研削性を損なうことなく、段差や突起物に対する引っ掛かり現象を効果的に解消し、研削機器本体にも負担が係らずに操作性を向上ならしめた床面用横回転研削機器における研削工具引っ掛かり防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の床面用構回転研削機器における研削工具引っ掛かり防止部材は、研削盤に付設してなる研削工具に対して機器動作時に該研削工具の進行方向位置に段差等の障害物を乗り越え得る傾斜形状の乗り越え面を有してなる部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、従来であれば研削盤に付設した研削工具が障害物に当たって反発してしまうといった引っ掛かりの問題を解消出来るものである。具体的には障害物に対して引っ掛かり防止部材である板状やブロック状部材の乗り越え面が最初に当たり、そのまま傾斜に沿って研削盤が上がるため、従来の如く研削工具が直接的に障害物に当たって大きく反発してしまうことが無くなるものである。よって、従来の作業時に起こり得る危険な状態は回避出来るものとなり、引っ掛かった時の衝撃による負荷が少なくなり機器の傷みも減少され、省エネでの研削作業も期待出来るものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
研削盤の研削工具の進行方向位置(回転方向側)に設けた引っ掛かり防止部材により、段差や突起等の障害物があった場合に研削工具が当該障害物に当接する前に引っ掛かり防止部材が常に先に当接するものであり、且つ引っ掛かり防止部材は傾斜形状の乗り越え面を有してなる板状部材やブロック状部材であるから障害物に対して引っ掛かり無くスムーズに進行することになり、その後方に位置する研削工具も同時に進行していくので、障害物に対して研削工具が引っ掛かってしまうことを防止する構造となっている
【0009】
図1は本発明の一実施例を示す概略平面図、図2は床面段差に引っ掛かり防止部材が当たった状態を示す側面図、図3は引っ掛かり防止部材の一例を示す平面図、図4はブロック状引っ掛かり防止部材を示す側面図、図5は引っ掛かり防止部材を研削工具に一体的に形成した一例を示す側面図である。
【0010】
図面において、図1〜3は板状の引っ掛かり防止部材Aを示したものであり、研削工具Cを取り付けた研削盤Bを回転させた時に当該研削工具Cが進む方向側にそれぞれ設けることで、段差等の障害物Dがあった際に直接的に研削工具Cが障害物に当たらないようにしている。すなわち板状部材からなる引っ掛かり防止部材Aは傾斜形状の乗り越え面1が形成される如く基端部2側に近い位置で緩やかに曲げ加工を施したものであって、基端部2側を研削盤Bにネジ固定する事で先端部3の先端辺が研削工具Cに隣接し且つ研削工具ヘッドと同レベルとなるよう設けられたものである。板状部材による引っ掛かり防止部材Aの幅及び形状は、研削能力の点だけを考慮すると可能な限り小さくする方が良いが、先端部3の幅を研削工具Cの直径よりも小さくすると引っ掛かってしまう部分が出来てしまうので好ましくなく、研削工具直径と同長さ若しくは若干長い幅とする。外径辺4は基端部2位置で研削盤B上に位置するように円弧状を形成するが、好ましくは中程部分で若干外側に突き出た円弧形状に形成することで、障害物Dに対する乗り上げをより効果的に実施し得るものとなる。つまり、外径辺4にやや突き出た部分があることで障害物に対する拾い上げが確実に出来て、研削工具Cに障害物が当たる面に乗り越え面1で随時乗り上げる構造となっている。内径辺5は研削盤Bの同心円に沿った円弧状で良いが、同心円形状よりも基端部2側で内側(研磨盤の中心側)に寄った形状にすることで内側からの乗り越え面1での乗り上げをより効果的なものにすることが出来る。
【0011】
板状部材による引っ掛かり防止部材Aの材質は、研削工具ヘッドの磨耗と同時に磨耗し、研削機本体の重量に負けない材質であれば良く、特定するものではないが、例えばジュラルミン系のアルミ材が適している。板厚について例えば研削機重量50キロの場合であれば3ミリ程度の厚みで対応可能である。板状引っ掛かり防止部材の場合、後述するブロック状引っ掛かり防止部材Aと異なり、磨耗していっても先端部3における床材との接地面積は殆ど変わらないために研削能力は低下するものではないが、先端部3の磨耗によって研削工具Cとの間に隙間が生じて来るので、その時には板状引っ掛かり防止部材Aをずらして再度研削工具との隙間を無くす必要がある。その為に研磨盤側のネジ孔6を長孔若しくはU字孔にして板状の引っ掛かり防止部材Aが適宜位置でネジ7止め固定出来る構造とする。
【0012】
遊星タイプの研削工具の場合、上記の板状の引っ掛かり防止部材Aを研削盤の主回転方向即ち研削工具の進行方向側に設けることで十分に対応し得るものであるが、研削工具自身の遊星回転方向に対して各研削工具ヘッドに隣接する如く乗り越え面1を有する引っ掛かり防止部材を個々に付設する手段(図示せず)を講じる事も考えられるので、その方法については特に限定するものではないが、前者の方が部材の枚数(研削工具の数となる)が少なくて済み、コスト面でも低下に供することが出来る。
【0013】
尚、図5で示した如く、研削工具Cに引っ掛かり防止部材防止部材Aを直接的に付設して一体とする事も可能であり、これであれば研削工具Cを研削盤Bに取り付けることで同時に引っ掛かり防止部材Aの取り付けが出来ることになり前述のようなネジ止め作業などの手間を省くことが出来る。本図では板状の引っ掛かり防止部材を示したがブロック状のものであっても良く、また付設位置も研削工具の軸部分でなくてもヘッド部分であっても何ら構わない。
【0014】
図4はブロック状部材からなる引っ掛かり防止部材Aの一例を示したものであり、傾斜形状の乗り越え面1を有する如く形成した厚みのあるブロック体であり、基本的には前述した板状の引っ掛かり防止部材とほぼ同様の構成であって、所謂、板状の先端部側に向かって厚みを順次増やしていって乗り越え面1を形成ならしめた構造である。尚、当該ブロック状の引っ掛かり防止部材Aの場合、磨耗に伴って研削工具Cとの間に隙間が生じることはないので通常のネジ止め固定のみで事足りるものであって、材質や形状については特に限定されるべきものではない。但し、ブロックの場合、先端部が磨耗していくと床との接地面積が増大していき研削能力の低下を招くので、出来れば乗り越え面1である表層部を磨耗に対して影響が少ない強度を有してなる材質とし、一方それ以外の部分である内層部分を比較的磨耗し易い程度の材質として、研磨能力の低下を最小限度に抑える工夫が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は床面段差や突起物といった障害物に対する引っ掛かりを防止し、作業の安全性が図れるだけでなく、機器の損傷も軽減され、駆動源への負荷も係らないので駆動源も小さくする事が出来てコスト削減、省エネが図れるものであって、且つ大きな改造を加える必要がないため、これまで使用していた機器にも簡単に取り付け可能であり、様々な床面横回転研削機器に汎用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の一実施例を示す概略平面図。
【図2】 床面段差に引っ掛かり防止部材が当たった状態を示す概略側面図。
【図3】 引っ掛かり防止部材の一例を示す平面図。
【図4】 ブロック状の引っ掛かり防止部材を示す側面図。
【図5】 引っ掛かり防止部材を研削工具に一体的に形成した一例を示す側面図。
【符号の説明】
【0017】
A 引っ掛かり防止部材
B 研削盤
C 研削工具
1 乗り越え面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削盤に付設してなる研削工具に対して機器動作時に該研削工具の進行方向位置に段差等の障害物を乗り越え得る傾斜形状の乗り越え面を有してなる部材を設けて引っ掛かりを防止することを特徴とする床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材。
【請求項2】
傾斜形状の乗り越え面を有した部材を研削機器重量にへたらない強度を有してなる板状部材としたことを特徴とする請求項1の床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材。
【請求項3】
傾斜形状の乗り越え面を有した部材をブロック状部材としたことを特徴とする請求項1の床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材。
【請求項4】
板状部材の材質を先端部が研削工具ヘッドの磨耗に追随して磨耗していくような材質であることを特徴とする請求項2の床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材。
【請求項5】
板状部材をネジ止め固定に際してスライド移動可能な構造としたことを特徴とする請求項2の床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材。
【請求項6】
傾斜形状の乗り越え面を有した部材を研削工具に一体的に設けたことを特徴とする請求項1の床面用横回転研削機器における研削工具の引っ掛かり防止部材。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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