説明

底構造に中心ハブを有する液化ガスタンク

本発明は、タンク底構造(10)および前記タンク底構造(10)の外周の周囲に配置されたタンク壁構造(11)を有する液化ガス用タンク、または、いわゆる極低温タンク(1)を含んでいる。前記タンク底構造(10)には、タンク支持構造床(23)上の底ハブリテーナ(20)によって保持されるように適合されたタンク底ハブ(2)が設けられている。このタンクは、設置が簡単で、製造費が安く、かつ改良された方法によって、タンクに作用する力に対処することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エネルギーの世界的な窮乏から、大量の燃料がその産出地域から消費者に輸送されることが必要とされている。今日、実用化される最もクリーンでかつ最も豊富なエネルギー形態の1つは、天然ガスである。主なガス産出地帯は、通常、主な消費マーケットから遠く離れて位置しているので、該産出地帯から消費者にガスを輸送する必要がある。パイプライン輸送は、考えられる可能性の1つであるが、配管に極めて費用が掛るので、長距離輸送を実現することができない。このような理由から、ガス輸送用途、特に、液化ガスの輸送の実際的な解決策として、船舶輸送が依然として存続している。
【0002】
本発明は、一般的に、LNGタンクまたはLPGタンクのような液化ガスタンクに関しているが、この明細書では、極低温タンクという用語が一般的に用いられている。LNGは、タンク内において、通常、大気圧で約−163℃の沸点に保たれている。この状態では、メタンが常に気化している。この気化を低減させるために、絶縁層をタンク壁の周囲に配置することによって、タンク壁を通る熱流入を低減させることが意図されている。タンク壁は、構造的に支持され、かつ安定化されねばならないが、このような構造的な支持部分は、いずれも、熱をタンク内に伝達させ、従って、望ましくない気化をもたらす可能性がある。すなわち、熱流入を低減させるために、絶縁層を貫通する構造的な支持部分の全断面を低減させることが望ましい。LNGタンクおよび他の極低温タンクに関する一般的な問題は、タンクの最初の冷却および充填中に生じる熱収縮、あるいは蒸発によってまたはタンクを空にすることによって、LNGがタンクから除去される場合に生じる熱膨張である。
【0003】
LNGタンクは、多くの場合、すでに建造されている船またはタンカーから改造されているが、浮体式生産貯蔵ユニット(FPSO)および浮体式貯蔵再ガス化ユニット(FSRU)のような設備に直接設置されてもよい。これらの用途では、コストを低減させるために、例えば、デッキ空間を利用するなど、設置の簡素化が重要である。さらに、工業的に用いられる多数の陸上における極低温タンクの用途もある。種々の用途には、解決されるべき種々の課題が見られるが、主要な問題のいくつかとして、ガスの温度、揮発性、および毒性が挙げられる。これらの用途に対して、多くのタンクの設計が提案されているが、それらの全てが、利点と欠点とを有している。
【0004】
極低温貯蔵作業を行う場合、タンクが大気温度から冷却されるときに、タンクの底プレート構造およびタンク壁構造が収縮することになる。底プレート構造およびタンク壁構造の外周の下側部分が、最初に収縮し、次いで、タンクが液状天然ガスによって充填される間、熱伝導によって、およびタンク壁への液体および気化ガスの直接接触によって、タンク壁が冷却され、かつ収縮することになる。特に、LNG船タンクのみならず一部の陸上タンクでも、冷却中、基体に対するタンクの水平方向の移動を阻止することが必要とされている。船タンクの場合、航行中のこの水平方向の安定化が、重要である。極低温内部タンクは、支持体に対するタンクの熱収縮を許容するように設計されている必要がある。この熱収縮は、極低温流体の低温度に起因している。すなわち、極低温流体は、タンクおよびタンクが固定されている支持体の温度を必然的に低下させることになる。タンクが極低温流体によって充填される最中に生じる収縮に加えて、タンクを空にするとき、タンクの対応する膨張が生じることになる。
【0005】
熱収縮差が、タンク壁のライナープレート、タンク壁の桁構造、および支持区画構造に歪を引き起こすことがある。LNGタンクのライナープレートの歪は、亀裂をもたらすことがあり、その結果として、LNGの漏れを生じさせることがある。この漏れは、火災および爆発のおそれまたはメタンの毒性の理由から、危険である。容器内のタンクの破損およびその結果としての極低温ガスの漏れは、さらに容器の壊滅的な損失を招く可能性がある。何故なら、このような容器の構造用鋼は、このような低温に晒されるように設計されていないからである。
【0006】
船または他の容器の場合、容器への波の作用または容器自体の運動によって生じるLNGのスロッシング(sloshing,ばしゃばしゃと飛び散ること)に関連する大きな問題に直面することになる。スロッシングは、タンクの欠損をもたらす可能性があるので、タンクは、スロッシング効果に耐えるように設計されていなければならない。本発明は、前述の課題のいくつかに対する実際的な解決策について、述べるものである。
【背景技術】
【0007】
特許文献1は、船体内に配置されるように構成された安定化タンクシステムを形成する初期の試みを示している。このタンクシステムは、温度変化に応じるタンクの収縮および膨張を許容しながら、船内において動かないようになっている。タンクの下方において、ガイドが船床に配置されている。このガイドは、船の長さ方向に延在する縦方向長孔から構成されている。さらに、タンクの底プレートに固定される対応キーを有しているタンクは、タンクのキーを長孔内に嵌合させて、船床上に配置されるように構成されている。
【0008】
特許文献2は、前述の特許文献1に示されている原理のさらなる発展形態を提供している。キー、キー溝、および梁支持体が容器の底に配置されており、キーは、タンクの縦方向中心線および横方向中心線に主に対応する線上に位置している。
【0009】
Staffordに付与された「LNG船タンク用支持体」という表題の特許文献3は、タンクの円形水平区域の周囲に配置されたタンク支持システムを記載している。この支持システムは、タンクの円形水平区域の周囲に互いに離間した多数の同一支持ユニットを備えている。支持ユニットの各々は、タンクおよび基部の両方に接合されている。各支持ユニットは、対応する円筒スリーブ上に載置された底ハブを有している。スリーブは、船の基礎構造上に配置されており、タンクに対して半径方向に移動することは許容されているが、タンクに対して横方向に移動することは阻止されるようになっている。これによって、タンクは、横方向への全体としての移動が阻止されながら、収縮および膨張することが可能になる。
【0010】
Abeらに付与された「液化ガス運搬船の自立貯蔵タンク用支持構造」という表題の特許文献4は、液化ガス用の角柱タンクを記載している。前記タンクは、タンクの下方に位置する底支持体が設けられているタンク区画内に配置されている。この底支持体は、タンクが横方向に膨張および収縮することを可能にするものである。該支持構造には、タンクの全体が船の前後方向に移動するのを阻止するために横断線に沿って配置された縦方向運動拘束体、およびタンクが右舷−左舷方向に移動するのを阻止するために船の中心線に沿って配置された横方向運動拘束体が設けられている。タンクを支持するために、多数の支持点が配置されている。この設計は、一般的に、タンクの設置を複雑にしている。支持体は、設計重量を増し、さらに、非対称的に配置されているようである。この対称性の欠如によって、冷却中に不均一な応力分布が生じる可能性がある。また、この設計は、モーメント負荷を船構造に伝達することになる。
【0011】
特許文献5は、セミメンブレン式タンク壁用支持装置を記載している。支持アセンブリは、水平方向の相対運動を可能としながら、タンク壁に対して垂直支持力をもたらしている。この設計では、かなりの点負荷がタンク壁の全体に生じることになるが、これは、望ましくない。この設計は、複雑でかつ高価であり、設置時間および設置コストが嵩み、旧式の容器をLNGタンクに変換する上での困難さが増すことになる。
【0012】
特許文献6は、LNGを輸送する方法を記載している。ここでは、多数のタンクが、船体内に単一ユニットとして配置されている。前記ユニットは、複数の柱状基部によって支持されている。これらの柱状基部のいくつかは、タンクの外周の周囲に配置されており、少なくとも1つの中心柱状基部が設けられている。この設計は、タンクの上端において横揺れ負荷に対処することができる船の横方向に配置された隔壁を必要としている。これによって、重量およびコストが増し、タンクの建造が複雑になる。
【0013】
「液化ガスを輸送するためのタンカー」という表題の特許文献7は、同様に、角柱タンク用の支持構造を記載している。タンクの縦方向運動拘束体が、タンクの中心の下方に配置されており、横方向運動拘束体が、タンクの前後中心部分の下方に配置されている。拘束体の支持構造部分と拘束体のタンク底構造部との間の空間は、液化ガスによって充填されるときの冷却過程中にタンクが収縮している間、適所に係止されるようになっている係止パッドを受け入れるように適合されている。また、タンク区画の右舷側および左舷側に沿って、横方向運動拘束体には、冷却しているときにタンクを支持構造に係合させる係止パッドが設けられている。これは、極めて複雑な設計であり、必要とされる許容誤差を達成するために、極めて正確な機械加工を必要とする。従って、このタンクは、極めて高価である。さらに、この設計は、負荷をタンクから船構造に伝達させるようになっているが、この負荷は、制御不能であり、予測することがかなり困難である。もし意図しているタンクの冷却操作温度を超えて加熱された場合、係止パッドが離脱し、タンクは、タンク区画内において制御不能に転動する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2,905,352号明細書
【特許文献2】米国特許第3,612,333号明細書
【特許文献3】米国特許第4,013030号明細書
【特許文献4】米国特許第5,531,178号明細書
【特許文献5】米国特許第6,971,537号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第1506761号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第1781041号明細書
【発明の概要】
【0015】
本発明は、前述の技術的な問題の少なくともいくつかを解消しようとするものであり、タンク底構造であって、前記タンク底構造の外周の周囲に配置されたタンク壁構造を支持している、タンク底構造を有する液化ガス用タンクを含んでいる。前記底構造には、タンク支持構造床上の底ハブリテーナによって保持されるように適合された中心タンク底ハブが設けられている。前記中心タンク底ハブは、半径方向支持力を前記タンク底構造と平行の方向にもたらすように、構成されている。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の利点は、液化ガスタンクの水平方向における支持力の全てが中心ハブによって案内されるようになっているので、極低温タンクのどのような水平方向支持体も設ける必要がなく、その結果、タンク壁を包囲する絶縁層を貫通するどのような「冷橋(cold bridge)」も形成されることがなく、これによって、絶縁物が、より連続的となり、より容易に設置されることにある。さらに、絶縁物は、必要に応じて、例えば、タンクまたはタンク区画の検査のために、またはタンクの修理または変更のために、より容易に取り外されることになる。
【0018】
本発明の第2の利点は、タンクが中心ハブを介して単一基点に固定されているので、極低温タンクの冷却中のタンク区画に対するタンクの全ての収縮が、この単一ハブに対して略半径方向に生じることにある。半径方向の膨張または収縮は、タンク底構造に対して配置された垂直方向リテーナによって、許容されるようになっているが、これによって、極低温タンクをタンク区画に機械的に適合させることが容易になり、極低温タンクを大気温度まで加熱することも容易になる。水平方向支持体を極低温タンクの壁に沿って適合させるどのような特別の検討も必要ではない。これは、先行技術による極低温タンクに反するものである。
【0019】
タンク底構造の外周に沿って配置される垂直方向リテーナによる本発明の第3の利点は、積荷のスロッシング、船の横揺れ、縦揺れ、さらに座礁または衝突によるタンク壁からの垂直力が、壁構造の下側部分から、底プレート構造のリムを介して略真っ直ぐに下方に向かい、次いで、船のタンク支持基礎構造に固定された垂直方向リテーナ内に下向きに伝達されることにある。従って、先行技術によるタンクでは生じることになる、タンク底構造(および壁構造)内の望ましくない、せん断力が、大幅に排除されることになる。
【0020】
タンク底構造の梁の外端の周囲に配置された垂直方向リテーナを有している実施形態による本発明の第4の利点は、タンク底構造が、底ライナープレートの上に配置された梁構造を有しており、これによって、船内の極低温タンクの重心を下げることができ、さらに、外部梁構造を有しているタンクと比較して、タンク容量を大きくすることができるという事実である。
【0021】
本発明による角柱タンクのさらに他の利点は、タンク容量が、垂直円筒タンクと比較して、著しく大きくなるという事実である。典型的な円筒タンクは、18000立方メートルの容積を有しており、その一方、角柱タンクは、船の断面を活用するように設計することができると共に、船の主軸に沿ってより大きい部分を配置させるように建造することができるので、典型的には、船の同一断面に対して、約35000立方メートルの容積を得るように建造することができる。
【0022】
本発明は、添付の図面に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】以後、極低温タンクと呼ぶ、本発明による液化ガス用タンクの円筒実施形態の概略図であって、タンクをタンクのいくらか側方からおよびタンク底構造の下方から見た図である。
【図1b】本発明による極低温タンクの角柱実施形態の斜視図であって、タンクを船の縦軸に沿っていくらか上方からおよびタンクの側方から見た図である。
【図1c】本発明による極低温タンクの角柱実施形態の簡略化した図であって、このような角柱タンクの底プレート構造の主要要素を示すために、タンクをいくらか下方から等角投影で見た図である。
【図2a】本発明によるタンクの底構造の簡略化した縦断面図であって、タンクがタンク区画内のタンク支持構造上に載置されており、この実施形態では、底タンク構造が底構造の梁の上に配置された底ライナープレートを有している、所謂、外部機械的構造であることを示す図である。
【図3a】図2aと同様の本発明のタンクの簡略化した縦断面図であって、円筒状の壁ライナープレートがタンク底構造の半径方向梁の端に配置された垂直方向桁によって支持されており、円筒状の壁構造および底壁構造がタンク区画の底および壁から絶縁されていることを示す図である。
【図3b】所謂、外部構造であるタンク底構造上に直立した内部梁壁構造を示す、図2に対応する斜視図である。
【図4】本発明による簡素化したタンクの下側部分の縦断面図であって、タンク底構造の外周がタンク区画の底をなすタンク支持構造から持ち上がるのを阻止するように構成された半径方向に配置された垂直方向リテーナを示す図である。
【図5a】底構造の半径方向梁の下側フランジの周囲を保持するように構成されたアームを有している例示的な垂直方向リテーナの斜視図である。
【図5b】逆U字状の頭絡クランプ式垂直方向支持体をなす例示的な垂直方向リテーナの対応する斜視図であって、該支持体は、タンク支持構造に取り付けられており、タンク底構造の水平方向梁の外端部分を覆って配置されており、梁の端部分が、タンク壁の外周を超えて延在していることを示す図である。
【図6a】タンクの半径方向梁構造用の回転止めリテーナを有している本発明によるタンクの実施形態を水平面の下方から見た斜視図であって、ここでは、回転止めリテーナが円筒状タンクの中心から半径方向において略半分の位置に配置されていることを示す図である。
【図6b】円筒状タンクの中心から半径方向に梁の全長分だけ離れた位置の近くに配置された回転止めリテーナを有している本発明による他の実施形態を水平面の下方から見た同様の斜視図である。
【図7a】中央の縦方向隔壁を中心として配置された垂直円筒状タンク区画と本発明による絶縁された極低温円筒状タンクの一部とを有している船体の斜視図で断面図である。
【図7b】船の中心線に沿った一連の角柱タンク区画と本発明による絶縁された極低温角柱タンクとを有している船体の斜視図で断面図である。
【図8】底構造が該底構造に沿った任意の箇所で固定されているときに梁の端に直立している壁に作用する非補償力を受けた場合の先行技術によるタンク底構造の水平方向梁に生じるせん断力を示す図であって、タンク底構造のこのような非補償せん断力は、本発明によって大幅に低減されることを示す図である。
【図9a】図5aのアーム式垂直方向リテーナに対応する、梁用のアーム式垂直方向リテーナ(但し、梁は、その下側フランジの一部のみしか、示されていない)の拡大図である。
【図9b】図5bの逆U字状の頭絡クランプ式垂直方向リテーナに対応する、梁用のアーム式垂直方向リテーナであって、梁の外部分が実線で示されており、残りの部分の一部が破線で示されている図である。
【図10】半径方向梁の回転止め支持体を示す図である。
【図11a】本発明の実施形態による円筒状タンクの底構造の簡略化した設計図であって、タンク底構造の中心ハブ、タンクの底ライナープレートを支持する半径方向H型梁、および底構造の半径方向梁の外端の近くから上方に延在する円筒状壁構造を示し、また略周方向に延在するH型梁が半径方向梁間に跨っており、アーム式垂直方向リテーナが水平方向梁の外端の近くに配置されて該水平方向梁を保持しており、短半径位置の一連のこのようなアーム式垂直方向リテーナが中心ハブのより近くに配置されていることを示す図である。
【図11b】タンク底構造の梁の外端を保持するのに逆U字状の頭絡クランプ式垂直方向リテーナのみを用いている、本発明の実施形態による円筒タンクの底構造の殆ど同様の設計図であって、この設計は、図4および図5bに示されているものに対応する本発明のより簡単でかつ明瞭な実施形態であり、図11a,11bの垂直方向リテーナは、中心ハブまたはタンクを通る垂直軸を中心とする回転モーメントに対する回転止めリテーナとしても機能することができることを示す図である。
【図11c】本発明による極低温タンクの底構造のいくらか下方から中央の半径梁に沿って見た斜視図であって、タンクは、角柱になっているが、タンク底梁構造および垂直方向リテーナは、図11aに示されているタンク底構造に概して対応していることを示す図である。
【図12a.12b】タンクからの作用力(白矢印)およびタンク支持システムからの対応する作用力を示す斜視図であって、中心ハブが作用力をタンク底構造の梁に沿って伝達しており、回転止めリテーナが回転モーメントを伝達しており、垂直方向リテーナが垂直力を伝達していることを示す図である。
【図13】海上容器の種々の並進運動および回転運動を示す図である。
【図14a】アーム式周辺垂直方向支持体を示す、本発明の実施形態の底面図および拡大側面図である。
【図14b】逆U字状頭絡クランプ式周辺垂直方向支持体を示す、本発明の実施形態の底面図および拡大側面図である。
【図15a】半径方向梁の内端間に溶接された雌型の中心ハブを有している本発明の好ましい実施形態によるタンク底構造の簡略化した断面図であって、タンクを保持するために、中心ハブが支持梁基礎構造の骨組み内に固定された雄型の中心ハブリテーナの周囲に挿入されていることを示す図である。
【図15b】半径方向梁の内端間に溶接された雄型の中心ハブを有している本発明の代替的な実施形態のタンク底構造の簡略化した断面図であって、タンクを保持するために、中心ハブが支持梁基礎構造の骨組み内に固定された雌型の中心ハブリテーナ内に挿入されていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、液化ガス、例えば、液化メタン(LNG)、液化エタン、液化プロパン(LPG)、または他の液化ガス用のタンク(1)を含んでいる。本発明によるタンク(1)は、船または他の海上容器に用いられるものである。本明細書において用いられる「船または海上容器」という用語は、浮体式および半潜水式の石油生産容器または石油貯蔵容器をさらに含んでいる。さらに、本発明によるタンクは、固定式の海上構造上に配置されてもよい。ここに述べるタンクは、大気圧下で用いられるように設計されているが、加圧タンクも想定されている。本発明によるタンクは、以後、一般的に極低温タンク(1)と呼ばれることになるが、本発明は、極低温域用のタンクに制限されるものではなく、前述したガスのような液化ガス用のタンクに制限されるものである。液化ガス用タンク(1)には、タンク底構造(10)および前記タンク底構造(10)の外周(15)の周囲に配置されたタンク壁構造(11)が設けられている。タンク壁構造(11)の一部をなす壁柱梁(12)が配置されている。タンク壁構造(11)は、通常、タンク頂板を支持するようになっている。タンク底構造(10)には、その略中心に配置されたタンク底ハブ(2)が設けられている。前記底ハブ(2)は、タンク支持構造床(23)上の底ハブリテーナ(20)によって保持されるように、適合されている。図1,2,7を参照されたい。タンクハブ(20)は、一般的に、支持力を前記タンク底構造(10)の面と平行の方向にもたらすようになっているとよい。
【0025】
本発明によるタンク(1)は、該タンクがタンク底構造(10)の単一点ハブ(2)を介して保持されることを可能とし、前記ハブ(2)は、タンク底支持構造(23)上のハブリテーナ(20)によって保持されている。
【0026】
周囲温度から極低温に至る間の大型船タンクの熱収縮運動は、かなり大きくなる可能性がある。1つの中心ハブを介して水平方向に対して固定されていることによって水平方向の運動が阻止されているタンクの極めて重要な利点は、タンクを最初に液化ガスによって充填している間の冷却中に、熱歪が殆どまたは全く蓄積されないという事実にある。この熱歪みが蓄積されない理由は、タンクが一点のみで拘束されており、タンク底構造(10)の残りの構造物、例えば、梁(3)は、この中心ハブ(2)を貫通する方向に拡張および収縮するからである。
【0027】
船は、6つの並進および回転自由度、すなわち、回転運動としての横揺れ(roll)、縦揺れ(pitch)、および偏揺れ(yaw)と、並進運動としての垂直方向波動(heave)、縦方向波動(surge)、および横断方向波動(gear)と、によって影響を受けることになる。図13を参照されたい。
【0028】
このように、本発明によれば、ハブ(2)は、タンクの水平面に作用する力に対して支持力をもたらすようになっている。具体的には、前記ハブ(2)だけが、必要な水平面力をタンク支持構造(23)上のタンクハブリテーナ(20)にもたらすことになる。これは、先行技術による設計、すなわち、複数のキー、長孔、などを有しており、各キーまたは長孔が、単一方向にのみ支持力をもたらすように配置されている、設計に対する改良点である。ハブ(2)は、該ハブの不均衡をなくすために、タンク底構造(10)の中心に略近接して配置されるべきである。この設計の他の利点は、熱膨張/熱収縮による並進運動が、タンク底構造の全長または全直径に沿って生じるのではなく、タンク底構造の直径の最大でも半分に沿ってのみ生じることにある。タンク底構造(10)は、コンクリートのような1つの緻密材料片によって構成されていてもよいが、好ましくは、以下に述べるように、半径方向梁(3)を用いて構成されているとよい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、梁(3)は、中心ハブ(2)から半径方向に沿って水平に延在しており、タンク(1)の流体非透過性底ライナープレート(113)を支持または保持している。垂直方向桁(12)が、半径方向梁(3)の外端の近くから立ち上がっており、タンク(1)のタンク壁構造(11)のライナープレート(111)を支持している。半径方向梁(3)は、タンク床に支持力をもたらすと共に、タンクに作用する力をタンク容器の全体にわたって分布させるものである。これは、もしタンクが部分的な充填状態にある場合、重要である。何故なら、この状態では、横揺れおよび縦揺れのようなタンク(1)に作用する力によって、著しいスロッシング(sloshing)が生じる可能性があるからである。このスロッシングは、タンク(1)がFPSOまたはFSRUのような浮体式容器またはLNGタンカーに搭載されている場合、特に問題である。スロッシングは、陸上極低温タンクにおいても、地震によって生じることがある。従って、陸上タンクにとっても、地震によって誘発される力(水平方向に約1gの地震加速度によって生じる力)およびその結果として生じるスロッシングに耐えることができるタンクを設けることが、極めて重要である。
【0030】
横揺れ、縦揺れ、縦方向波動、および横断方向波動によって、海上容器(30)のタンク支持床(23)とLNG流体積荷との間に、相対的な加速度が生じるが、この相対的な加速度に起因する水平方向の力は、特にタンク壁構造(11)内に伝達され、スロッシングおよび横揺れおよび縦揺れの加速度によるLNG積荷からの対応力が生じることになる。前述したように、これは、海上容器にとって特有の問題をもたらすことになる。広い範囲に及ぶこのような横揺れ、縦揺れ、縦方向波動、および横断方向波動に対して、タンク支持構造(23)上のハブリテーナ(20)によって保持されている底ハブ(2)は、タンク(1)を適所に維持することができる。これとは別に、タンク底構造(10)は、タンクの下方の一般的な基礎構造、すなわち、タンク支持底(23)によって、垂直方向に支持されるようになっている。支持底(23)は、多数の横断方向隔壁フレームと連携する、中心に配置された1つの船体縦方向フレーム隔壁および横方向に配置された多数の船体縦方向フレームによって構成されているとよい。区画底(23)には、前記タンクハブリテーナ(20)が設けられている。また、区画底(23)は、骨組み上に底ライナープレートを備えている。底ライナープレートは、LNGタンクの下方の底絶縁層を支持するものであり、この絶縁層は、ハブリテーナ(20)および中心ハブ(2)と、場合によっては、以下に述べる他の種類のリテーナと、さらに場合によっては、配管と、によって貫通されている。
【0031】
図1a,1bに示されているように、極低温タンク(1)は、壁(24)を有するタンク長孔区画内に配置されるようになっている。円筒状タンク(1)が図1aに示されているが、本発明の範囲内において、他の形状、例えば、どのような種類の角柱形状、特に図1b,1cおよび図11cに示されているような矩形形状も考慮されるべきである。形状の選択は、設計の課題である。すなわち、形状の選択は、船自体の設計の中核を成しているが、本発明の中核を成すものではない。例えば、球形タンクが考えられてもよい。この場合、タンク壁構造の底部分が取り外され、準備された主に平面をなすタンク底構造に取り換えられることになる。このタンク底構造(10)上に、本発明の実施形態による中心ハブ(2)および(場合によっては)半径方向梁(3)が配置されることになる。海上容器内に配置される極低温タンク(1)の構成の詳細は、図2a,図7a,7b、および図11a,11b,11cに示されている。図2aは、図1に示されている細部のいくつか、例えば、船のタンク長孔内の船タンク底(23)上の船のタンクハブリテーナ(20)をさらに示している。図3は、さらなる細部、例えば、底絶縁物(8)、円筒壁絶縁物(18)、およびタンク垂直軸(9)を示している。船のタンク長孔底(23)は、種々の目的を果たすようになっているが、このシステムを用いる主な利点の1つは、タンクを陸上で予め作製することができ、単純な一工程によって、簡単に、該タンクを持ち上げ、船のタンク長孔内のハブリテーナ(20)上に下ろすことができることである。これによって、船内への極低温タンクの設置が著しく容易になる。これは、多くのFPSU容器およびFSRU容器が改造水上容器である点を考慮した場合、著しい利点をもたらすことになる。すなわち、船の改造と極低温タンクの建造とを順を追って行う代わりに、同時に行うことができる。同様に、もしタンクを保守のために取り外す必要がある場合、極低温タンクを簡単に容器から外に持ち上げることができる。これは、背景技術において述べた周知の高価でかつ保守が困難なLNGタンクと極めて対照的である。
【0032】
図1bに示されているようなタンク底構造の内部梁構造の著しい利点は、底ライナープレートがより下方に位置しているので、タンクの重心を下げると共にタンク容積を増大させることができ、これによって、経済的および安定性の両方の有利性を得ることができる点にある。
【0033】
船と液化ガスとの間の水平方向力は、本発明によれば、中心ハブ(2)を通って、底構造(10)の全体にわたって、水平方向に伝達されることになる。具体的には、この水平方向力は、圧縮力および/または引張力として、底プレート構造内に伝達され、さらに、せん断力として、タンク底構造(10)から(底プレート構造(10)の外周の周囲から直立している)タンク壁構造(11)内に伝達されることになる。本発明によるタンク構造における力の伝達は、タンク構造の全体にわたって良好に分布されるので、特に、タンク底ライナープレート(113)とタンク壁ライナープレート(111)との間の下側周辺遷移部において、亀裂生成が阻止されることが想定される。すなわち、本発明によるタンクでは、先行技術と比較して、特に、横揺れ、縦揺れ、およびその結果として生じるスロッシングによる歪みが、軽減されることになる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、タンク底構造(10)は、少なくとも3つ、好ましくは、4つ以上の半径方向梁(3)を備えており、これらの半径方向梁(3)の半径方向内端が前記中心ハブ(2)に取り付けられている。本発明の好ましい実施形態では、半径方向梁(3)は、その外端の近くから延在している垂直方向桁(12)を支持している。好ましくは、非透過性ライナープレート(131,111)が、タンク底構造(10)およびタンク壁構造(11)の非透過性タンクライナーを成している。これらのライナープレートは、梁構造(3)および桁構造(12)に取り付けられている。タンク壁構造(11,12)は、ロッド、バンド、またはワイヤなどによって周方向において補強されていてもよいし、ワイヤまたはガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などの輪状巻線を備えていてもよい。また、タンクは、底外周に対応する外周を有する頂板を備えていてもよい。本発明によるタンクの頂板は、どのような水平方向リテーナも必要としていない。何故なら、全ての並進および回転の作用力―反作用力の伝達は、底プレート構造を介して生じるからである。
【0035】
中心ハブ(2)は、本質的に、タンク(1)が垂直軸方向に移動しないように保持するように構成されていない。中心ハブ(2)を介するこのような垂直方向保持機能を、例えば、図8に示されているように、想定することも可能である。しかし、このような保持機能は、タンク壁構造(11)から真っ直ぐに力を受けるようになっていないので、底プレート構造(11)の梁(3)の望ましくない垂直方向のせん断力としてタンク壁構造(11)に伝達される垂直力を受けることになる。
【0036】
中心タンクハブ(2)およびその対応するタンクハブリテーナ(20)は、好ましくは、船の中立位置における水平面内の力のみに応じるようになっている。本発明の実施形態によれば、船のタンク凹部底(23)に対するタンク壁構造(11,12)の上向き力は、垂直力リテーナ(4)を介して伝達されるようになっており、この垂直力リテーナ(4)は、タンク凹部の底支持構造(23)とタンク底構造の外周(15)、好ましくは、タンク底構造(10)の梁(3)の外部分(35)との間に配置されている。本発明の実施形態では、垂直力リテーナ(4)は、溶接またはそれ以外の手段によって基礎構造(23)に取り付けられたベースプレートを備えており、直立支持プレートが、このベースプレートに溶接されている。前記直立支持プレートには、前記半径方向梁(3)の平らに置かれたH型梁断面の下側の水平方向フランジを取り囲むアーム(41)が設けられている。これは、図5a,9a,11a,11c,12a,14aに示されている。アーム(41)を有するプレートは、タンクが区画内のハブリテーナ(20)上の正確な位置に下ろされた後、そこで溶接されるとよい。H型梁が図示されているが、明らかなように、どのような他の適切な梁構造が用いられてもよい。
【0037】
本発明の他の実施形態では、垂直力リテーナ(4)は、溶接またはそれ以外の手段によって基礎構造(23)に取り付けられたベースプレートを備えており、直立支持プレートがこのベースプレートに溶接されている。前記直立支持プレートは、水平方向の半径方向梁(3)の外部分(35)を取り囲む逆U字状の頭絡(bridle)またはアーク(arcs,弧状部)(42)を備えている。これは、図5b、9b,11b,12b,14bに示されている。逆U字状の垂直リテーナプレート(42)も、タンクが区画内のハブリテーナ(20)上の正確な位置に下ろされた後、そこで溶接されるとよい。
【0038】
図5a,5bは、タンク壁構造(11,12)に生じた垂直方向の持上げ力が、タンク壁構造(11)の直下に配置された垂直力リテーナ(4)によって相殺され、その反力が船の支持基礎構造(23)内に導かれていることを示している。従って、スロッシング力、横揺れ力、および横揺れ加速度は、高潮状態において、または積荷のずれによる傾斜または事故によって、過酷になるが、このような力は、少なくとも所定の静止角度、例えば、タンクが満タンの場合、左舷または右舷に対して30°以下の傾斜角度で相殺されるようになっている。
【0039】
これまでの説明に基づくと、本発明によるタンクは、底プレート構造の中心ハブを用いることによって、水平方向における適所に保持されるようになっており、かつ図4に示されているように、円筒状タンク壁の下側リムを下方のタンク支持構造に押さえる垂直力リテーナによって、基礎構造からの離脱、さらには転倒が阻止されるようになっている、とごく単純化して述べることができる。これによって、衝突および座礁による作用力および反作用力を含む船の横揺れ、縦揺れ、縦方向波動、横断方向波動に起因するタンクの損傷が阻止されることになる。
【0040】
図9に略示されている特定の設計は、梁(3)の半径方向の熱収縮による梁の長手方向の運動を可能にすると共に、下方の支持構造(23)に対するタンク底構造(10)の望ましくない相対的な回転運動を阻止するのにも用いられるようになっている。このような回転加速度は、船の転回、および偏揺れ(すなわち、垂直軸を中心とする船の回転)をもたらす波動の両方によって、生じるものである。船に対するタンク(1)のこのような回転運動は、回転止めリテーナ(16)を用いることによって、妨げられるようになっていてもよい。図6,図10(および図11a,11b,11c)を参照されたい。海上容器に作用するこれらの種々の力は、図13に示されている。反力のみならずタンクがいかに機能するかという原理も、図12に示されている。
【0041】
回転止めリテーナ(16)は、半径方向梁(3)と平行に延在している垂直に配置された(横方向保持板としての)表面プレート(17)を備えている。前記表面プレートは、半径方向梁(3)の横面に寄り掛かるためのものであり、梁(3)の下側フランジ(14)を垂直方向に支持するための底スライド支持体(28)を有している。このスライド支持体(28)は、熱絶縁特性をさらに有しているべきである。
【0042】
図6aに示されている実施形態の利点は、回転止めリテーナ(16)がタンクハブ(2)から離れている点にある。これらの回転止めリテーナは、個別の役割、すなわち、タンク(1)と船の構造的なタンク支持床(23)上のハブリテーナ(20)との間のどのような並進運動もタンクハブ(2)に作用しないように阻止する役割と、タンクが船に対して回転しないように阻止する役割を有している。このような回転力は、船の転回、波動によって生じる偏揺れ運動による船の間欠的な転回、またはスロッシングによる船の間欠的な転回によって、引き起こされる可能性がある。
【0043】
図6bに示されている本発明の実施形態の利点は、図6aに示されているような回転止めリテーナ(16)の位置が、タンク底プレート(13)の下側リム(15)を超えた箇所に移設されている点にある。この場合、梁構造は、回転止めリテーナの内側に位置することになるので、底プレートを水平梁(3)の下側部分に溶接によって取り付けるように配置することができ、これによって、底プレートには、タンクハブ(2)用の切込みしか形成されないことになる。
【0044】
さらに、図6bに示されるように配置された回転止めリテーナ(16)は、2つの付加的な利点をもたらしている。第1に、これらのリテーナは、タンクの最大半径の箇所に配置されているので、利用可能な最大回転止め運動をもたらすことができ、ほぼ半分の回転止め運動しかもたらさない図6aに示されているような剛性体として設計される必要がないことである。第2に、これらのリテーナは、(タンクの中心からほぼ同一の長半径距離(Rmaj)だけ離れて、垂直方向梁(12)を備えているタンク壁(11)の直下に位置している)半径方向梁の端の近くの構造点に配置されているので、タンクの回転モーメントの大部分を受けることである。従って、図6bに示されているような半径方向梁(3)の半径方向端の近傍に位置する回転止めリテーナ(16)による回転モーメントの保持によれば、図6aに示されているような半径方向梁(3)の中央の近くの短半径距離(Rmin)の箇所に配置された回転止めリテーナ(16)よりも、半径方向梁(3)に与える曲げモーメントが小さくなる。同じことが、図11bに示されている垂直方向リテーナ(4,42)にも当てはまる。これらの垂直方向リテーナ(4,42)は、タンク底構造の中心(すなわち、タンクハブ(2))から最大半径距離の位置に配置されている場合、タンク中心の近くに配置された他のタンク支持体またはリテーナ構造と比べて、特に船の縦軸を中心とする大きな回転モーメントに耐えることができる。従って、図11bに示されているこのような垂直方向タンクリテーナは、タンク壁からより遠くの側に配置されているタンクリテーナと比べて、タンクの同一の力モーメントを受けることができるが、機械的および熱的に、壁からより遠い箇所に配置されているこのようなリテーナの欠点を有しないことになる。
【0045】
一般的に、タンク壁(11)およびタンク底(13)を超える半径方向距離(Rmaj)の位置に回転止めリテーナ(16)を配置することによって、中心ハブ(2)に向かってより遠くの箇所に配置した回転止めリテーナよりも、タンク底プレート構造を下方に配置することができ、これによって、大きなタンク容量、低い重心、および良好な回転止め力モーメントを得ることができると共に、タンク底の下方の絶縁層の構造的な貫通を少なくすることができる。一般的に、回転止めリテーナ(16)は、図6bに示されるように、半径方向において互いに向き合った対から構成されているので、タンクハブ(2,20)にモーメントを生じさせることがない。図11bの逆U字状垂直方向リテーナの場合、タンク底ライナープレート(113)をさらに下げることができ、これによって、内側の底プレート構造(10)も下げることができ、その結果、前述したように、タンク容積を大きくすることができる。
【0046】
図8は、なぜ垂直方向リテーナをタンクの外周の近くに配置し、タンク壁からの垂直力と底構造に作用する保持垂直力との間のモーメントアームを短くする必要があるのかを示している。もし望ましくない例として、タンク壁を介してタンク底構造に作用するモーメントアームが、図示されているように、大きい場合、せん断力によるタンク底構造の欠陥、例えば、亀裂形成、その結果として、場合によっては、漏れが生じる可能性がある。
【0047】
本発明による前述のタンクは、海上運転上の利点を有しているべきである。これらのタンクでは、どのような支持ブロックまたはリテーナもタンクの底プレートの周囲にしか設ける必要がなく、どのような構造部品もタンクの底プレートの上方において絶縁層を横断することがないので、壁構造(11)の全体を囲む絶縁層を連続させることができるという事実によって、熱伝達を低く保つことができる。これによっても、極低温タンクの構造設計が簡素化されることになる。
【0048】
前述したように、本発明による1つまたは複数のタンクは、本発明によるタンクを受け入れるように構成された区画凹部を備える船の建造と同時に建造することができるという事実から、付加的な物流上の利点が生じることになる。本発明によるタンク(1)は、中心ハブ(2)をハブリテーナ(20)に挿入するように、該凹部内に下ろされることになる。半径方向梁(3)を受け入れるための垂直力リテーナ(4)および(場合によっては)回転止めリテーナ(16)を準備し、半径方向梁(3)を取り囲むようにして、アーム(41)または逆U字状頭絡を溶接することによって、仕上げられることになる。
【0049】
垂直力リテーナ(4)によって半径方向梁(3)の外部分を取り囲む方法の代替案として、底プレート構造(10)および梁(3)は、垂直方向リテーナ(4)と係合した半径方向に配向したレール(19)によって取り囲まれるようになっていてもよい。このような構成によって、極低温タンクの相対的な回転運動が可能となる。有力な一構成が、図4に示されている。
【0050】
本発明の実施形態によれば、垂直方向リテーナ(4)は、(図4に示されている)タンク区画(25)の壁(24)内に配置された楔(42)の形態で配置されていてもよい。楔(43)は、タンク(1)が適所に置かれると、区画壁(24)の内外に旋回運動し、タンク底構造(10)の梁(3)の外端(35)を固定するようになっている。このような楔(42)は、タンク区画(25)の周囲の外部空間から制御することができ、これによって、船内へのタンクの設置および船内からのタンクの取出しが容易になる。これによって、タンク壁構造(11)およびタンク底構造(10)の外周の周りの空間要件がさらに低減し、船内のタンク長孔内に下ろされた内部構造タンクの利用可能なタンク容積が改良されることになる。
【0051】
本発明の利点は、タンクの中心ハブ(2)の大きさが、タンク底構造(10)の大きさと比較して、小さいことにある。従って、タンクが冷却または加熱されるとき、中心ハブ(2)の熱収縮または熱膨張の総量は、タンク底構造の全体に生じる区画底に対する大きな収縮または膨張と比較して、冷却または加熱中に比較的無視することができる。タンクハブ(2)の大きさが小さいことによって、タンクハブは、加熱されたときも、単一点リテーナ(20)内に保持されることが可能であり、これによって、船は、タンクが空の状態で航海することができる。このような運転は、独国特許第1781041号明細書による極低温タンクの場合には、不可能である。
【0052】
このように、本発明によるタンクは、熱収縮、横方向保持、縦方向保持、スロッシング負荷力、横揺れによる力の分布、および極低温タンクの安定化に関連する問題のいくつかを解消するものである。
【0053】
通常、内部タワーが極低温タンク内に配置されている。このタワーは、内部ポンプおよび弁を用いることによってLNGまたは他の流体をタンクに対して充填および排出するための垂直方向パイプを保持している。このような他の流体として、窒素、二酸化炭素、LPG、およびガスの凝縮物が挙げられる。本発明の実施形態では、底ハブ(2)およびハブリテーナ(20)は、それら自体が、極低温流体の入口および/または出口用の通路をもたらすことができ、これによって、タンクを充填または空になる作業を容易にすることができる。
【0054】
図14a,14bは、拡大された周辺垂直方向支持体(4)を示す、本発明の実施形態の底面図および拡大正面図である。支持体(4)は、半径方向梁(3)の下側フランジを取り囲むためのものであり、タンクの周囲に沿って配置されている。この支持体(4)は、それ自体、前述した回転止めリテーナ(16)を兼ねることができる。このような構成によって、製造、検査、および設置が容易になり、タンク区画の底を平坦にすることができる。
【0055】
図15aは、本発明の好ましい実施形態によるタンク底構造の簡略化した断面を示している。この構造では、雌型の中心ハブ(20)が半径方向梁(3)の内端間に溶接されている。この中心ハブは、タンク(1)を保持するために、支持梁基礎構造(23)の骨組み内に固定された雄型中心ハブリテーナ(20)の周囲に挿入されている。図15aの雌型中心ハブ(2)の利点は、以下の図15bに示されている代替的な雄型中心ハブ(2’)よりも、タンク底構造(10)内に生じる曲げモーメントが小さいことである。
【0056】
図15bは、本発明の代替的な実施形態によるタンク底構造の簡略化した断面を示している。この構造では、雄型の中心ハブ(2’)が半径方向梁(3)の内端間に溶接されている。この中心ハブ(2’)は、タンク(1)を支持するために、支持梁基礎構造(23)の骨組み内に固定された雌型中心ハブリテーナ(20’)内に挿入されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク壁構造(11)を支持するタンク底構造(10)を有している液化ガス用タンク(1)において、
前記タンク底構造(10)における中心ハブ(2)であって、前記中心ハブ(2)は、タンク支持構造床(23)上の対応するハブリテーナ(20)によって保持されるように適合されており、前記ハブリテーナ(20)は、概して、前記タンク底構造(10)の面内において、半径方向の保持力を前記中心ハブ(2)にもたらすようになっている、中心ハブ(2)を備えていることを特徴とする液化ガス用タンク(1)。
【請求項2】
前記中心ハブ(2)は、前記タンク壁構造(11)を支持するためにさらに配置された半径方向構造梁(3)に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項3】
前記半径方向梁(3)は、垂直方向リテーナ(4)によって、垂直方向の運動が阻止されていることを特徴とする請求項2に記載のタンク(1)。
【請求項4】
前記タンク壁構造(11)は、前記半径方向梁(3)の外端の近くから延在している桁(12)を備えており、前記桁(12)は、タンク垂直軸(9)と略平行に配向されていることを特徴とする請求項2に記載のタンク(1)。
【請求項5】
前記梁(3)は、タンク底ライナー(131)を支持していることを特徴とする請求項4に記載のタンク(1)。
【請求項6】
前記タンク壁構造(11)は、前記タンク底構造(10)の外周(15)の周囲から延在しており、前記タンク壁構造(11)は、前記タンク支持構造床(23)上に配置された垂直方向リテーナ(4)によって、前記タンク支持構造床(23)から離れる方向に横揺れ運動および/または縦揺れ運動によって持ち上がらないように保持されるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項7】
前記垂直方向リテーナ(4)は、前記中心ハブ(2)を中心とする前記タンク(1)の回転運動を阻止するように、さらに構成されていることを特徴とする請求項3に記載のタンク(1)。
【請求項8】
前記極低温タンク(1)は、タンク区画(25)内に包まれており、前記タンク区画(25)は、前記タンク底構造(10)と前記第1の区画底(23)との間および前記タンク壁構造(11)と前記区画壁(24)との間に配置された絶縁材料の層(8,18)を有していることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項9】
前記タンク支持構造床(23)は、タンク区画(25)内にあることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項10】
前記タンク支持構造床(23)は、海上容器(30)内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項11】
前記タンク支持構造床(23)は、前記海上容器(30)のデッキであることを特徴とする請求項10に記載のタンク(1)。
【請求項12】
前記ハブリテーナ(20)は、水平方向に配向されている船タンク支持構造床(23)に固定されていることを特徴とする請求項10または11に記載のタンク(1)。
【請求項13】
前記タンク壁構造(11)は、円筒状であり、前記タンク底構造(10)は、概して、円形面を形成していることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項14】
前記タンク(1)は、角柱であることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項15】
前記極低温タンクは、LNG、LPG、または低温度の任意の流体を含むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項16】
前記タンク底構造(10)には、底ライナープレート(131)が設けられており、前記タンク壁構造(11)には、壁ライナープレート(111)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項17】
LNGの生産および貯蔵用の海上容器であって、タンク壁構造(11)を支持するタンク底構造(10)を有している前記LNG用のタンク(1)を備えている、海上容器において、
前記タンク底構造(10)は、前記タンク壁構造(11)を支持するためにさらに配置された半径方向構造梁(3)に連結された中心ハブ(2)を有しており、
前記中心ハブ(2)は、前記船内のタンク支持構造床(23)上の対応するハブリテーナ(20)によって保持されるように、適合されており、前記ハブリテーナ(20)は、概して、前記タンク底構造(10)の面内において、半径方向の保持力を前記中心ハブ(2)にもたらすようになっている、ことを特徴とする海上容器。
【請求項18】
LNGの貯蔵および再ガス化用の海上容器であって、タンク底構造(10)および前記タンク底構造(10)上に配置されたタンク壁構造(11)を有している前記LNG用のタンク(1)を備えている、海上容器において、
前記タンク底構造(10)は、前記タンク壁構造(11)を支持するためにさらに配置された半径方向構造梁(3)に連結された中心ハブ(2)を有しており、
前記中心ハブ(2)は、前記船内のタンク支持構造床(23)上の対応するハブリテーナ(20)によって保持されるように、適合されており、前記ハブリテーナ(20)は、概して、前記タンク底構造(10)の面内において、半径方向の保持力を前記中心ハブ(2)にもたらすようになっている、ことを特徴とする海上容器。
【請求項19】
LNGの輸送用の船舶であって、略垂直方向のタンク軸(9)、タンク底構造(10)、および前記タンク底構造(10)上に配置されたタンク壁構造(11)を有している前記LNG用のタンク(1)を備えている、船舶において、
前記タンク底構造(10)は、前記タンク壁構造(11)を支持するためにさらに配置された半径方向構造梁(3)に連結された中心ハブ(2)を有しており、
前記中心ハブ(2)は、前記船舶内のタンク支持構造床(23)上の対応するハブリテーナ(20)によって保持されるように、適合されており、前記ハブリテーナ(20)は、概して、前記タンク底構造(10)の面内において、半径方向の保持力を前記中心ハブ(2)にもたらすようになっている、ことを特徴とする船舶。
【請求項20】
前記タンク底ハブ(2)には、タンクを極低温流体によって充填させるかまたは該タンクを空にするための1つまたは複数の通路が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク(1)。
【請求項21】
液化ガス用タンク(1)を容器内に設置する方法であって、前記タンク(1)は、タンク底構造(10)および前記タンク底構造(10)の外周上のタンク壁構造(11)を備えている、方法において、
前記底構造(10)には、タンク支持構造床(23)上の底ハブリテーナ(20)によって保持されるように適合された略中心タンク底ハブ(2)が設けられており、前記方法は、前記タンク(1)を持ち上げ、前記タンク(1)を前記底ハブリテーナ(20)上に直接下ろすことを含んでいることを特徴とする方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【公表番号】特表2011−506164(P2011−506164A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536871(P2010−536871)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/NO2008/000431
【国際公開番号】WO2009/072897
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510155058)エヌエルアイ・イノヴェイション・アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】