説明

底質改善方法

【課題】海や河川等の水底に堆積した有害土壌の拡散を防止するとともに、必要な水深を確保でき、快適な環境を形成することが可能な底質改善方法を提供する。
【解決手段】水底13に堆積した有害土壌を覆土8で覆った後に、有害土壌に固化材Sを注入混合して固化処理土壌11に改質し、この固化処理土壌11を削孔して形成した貫通孔12に管体6を挿通させて立設し、サンドポンプ7によって管体6を通じて固化処理土壌11の下方の非有害土壌10を揚送して、固化処理土壌11の上方の水底13を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底質改善方法に関し、さらに詳しくは、海や河川等の水底に堆積した有害土壌の拡散を確実に防止するとともに、必要な水深を確保でき、快適な環境を形成することが可能な底質改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオキシン等の有害物質を含んだ水底の汚染土壌(有害土壌)等の拡散を防止する方法が種々提案されている。例えば、汚染土壌に固化材を注入混合して固化させて、汚染物質の拡散を防止する工法が提案されている(特許文献1参照)。この提案のように水底を固化処理すると、水底表層が生物の生息しにくい環境となり、良好な生息環境が形成されるまでには、長い期間が必要となる。また、固化処理された水底表層は、船のアンカー等が係止しにくくなる。このように、生息生物や利用者にとって、快適な環境を形成することが困難であるという問題があった。
【0003】
別途用意した良質な砂質土(非有害土壌)によって、単純に汚泥等の汚染土壌を覆う覆砂工法では、水深が浅くなる等の問題がある。そこで、地盤内部に堆積する土砂を高圧のジェット水流で流動化させて水底に噴出させ、この土砂で水底表層を覆う工法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、この工法では、汚染土壌が固化されないので流動性が高く、拡散防止の確実性に欠け、また、施工時のジェット水流によって汚染土壌が拡散する可能性があり、安全な工法とは言えなかった。
【特許文献1】特開2003−94023号公報
【特許文献2】特開2002−220821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、海や河川等の水底に堆積した有害土壌の拡散を確実に防止するとともに、必要な水深を確保でき、快適な環境を形成することが可能な底質改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の底質改善方法は、有害物質を含んだ水底の有害土壌の拡散を防止する底質改善方法において、前記有害土壌に固化材を注入して固化処理土壌に改質し、該固化処理土壌を削孔して上下に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔を通じて前記固化処理土壌の下方の非有害土壌を揚送し、前記固化処理土壌の上方の水底を新たに非有害土壌で覆うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の底質改善方法によれば、有害物質を含んだ水底の有害土壌に固化材を注入して固化処理土壌に改質するので、有害土壌が固化して水底に封じ込められ、確実に有害土壌の拡散防止ができる。
【0008】
この固化処理土壌を削孔して上下に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を通じて固化処理土壌の下方の非有害土壌を揚送し、固化処理土壌の上方の水底を新たに非有害土壌で覆うことで、水底表層に生息生物にとって良好な環境が形成され易くなり、また、水底表層に船のアンカー等を係止することも可能となり、生息生物や利用者にとって快適な環境を形成できる。
【0009】
また、非有害土壌を揚送するに連れて固化処理土壌が地盤沈下するので、固化処理土壌の上方の水底を新たに非有害土壌で覆っても水深がほとんど変わらず、必要な水深を確保することができる。有害土壌を移動させることがないので、作業に伴って有害土壌が拡散することもなく、安全性も確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の底質改善方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。図1に示すように、水底13にはダイオキシン、重金属、汚泥等の有害物質を含んだ有害土壌9が非有害土壌10の上に堆積している。作業に際して、予め、有害土壌9の分布(範囲、深さ等)を調査し、この調査結果に基づいて底質改善を行なう。
【0011】
底質改善方法の第1工程として、覆土8で水底13を覆う。この覆土8は、作業に伴って有害土壌9が拡散しないようにする拡散防止の被覆材として機能する。覆土8の種類、被覆厚さ等は先の調査結果等によって決定し、例えば、山砂、水砕スラグ等を覆土8とする。
【0012】
第2工程では図2に示すように、固化材注入装置1によって、有害土壌9に固化材Sを注入する。固化材Sとしては、一般的なセメント、石灰等を用いればよい。固化材注入装置1は、固化材Sが供給される固化材注入管2の先端部に噴出孔4を有する攪拌翼3を備えている。攪拌翼3は固化材注入管2を中心にして回転しつつ、噴出孔4から固化材Sを噴出して、有害土壌9に固化材Sを注入混合する。固化材Sが注入された有害土壌9は、次第に固化して固化処理土壌11に改質される。有害土壌9に隣接する周辺の覆土8および非有害土壌10を一緒に改質すると、より確実に有害土壌9の拡散を防止できる。
【0013】
固化材Sを有害土壌9に注入する手段は、実施形態に示したものに限定されず、その他の一般的な方法を採用することができる。攪拌せずに固化が可能な有害土壌9であれば、単に固化材Sを注入するだけでもよい。
【0014】
第3工程では、図3に示すように、固化処理土壌11を削孔して上下に貫通する貫通孔12を形成し、この貫通孔12に管体6を挿通させる。管体6は下端部が固化処理土壌11から突出し、上端部が覆土8から突出して立設される。固化処理土壌11が固化した後に削孔することで、安定して管体6を立設させることができる。
【0015】
管体6の下端部にはサンドポンプ7が内設され、固化処理土壌11の下方にある非有害土壌10が、サンドポンプ7によって管体6を通じて揚送される。揚送された非有害土壌10は、管体6の上端部から排出され、固化処理土壌11の上方の水底13が新たに、この非有害土壌10で覆われる。非有害土壌10が揚送されるに連れて、固化処理土壌11は地盤沈下することになる。
【0016】
揚送された非有害土壌10は、他の場所に仮置きした後で、水底13に投入してもよい。また、揚送された非有害土壌10が細粒分が多い等、水底13を新たに覆うのに好ましくない場合は、他の場所から搬送してきた非有害土壌10を投入して水底13を覆うようにしてもよい。
【0017】
非有害土壌10を揚送する手段は、サンドポンプ7に限らず、例えば、螺旋状のスクリューコンベヤ、バケット等、その他の揚送手段を用いることができる。
【0018】
水底13を所定厚さの非有害土壌10で覆った後に、管体6を引抜いて、この引抜いた跡を非有害土壌10等で埋めると、図4に示すように、すべての工程が完了した状態となる。
【0019】
以上の工程によって、有害土壌9を固化処理土壌11に改質して水底13に封じ込めることができ、有害土壌9の拡散を確実に防止することができる。固化処理土壌11の上方の水底13は、揚送した非有害土壌10で新たに覆われるので、水底表層に生息生物にとって良好な環境が形成され易くなり、また、船のアンカー等を係止することも可能となる。このように、生息生物や利用者にとって快適な環境を形成できる。
【0020】
揚送された非有害土壌10で水底13が覆われるが、その揚送量に応じて固化処理土壌11は地盤沈下するので、水深がほとんど変わることがない。したがって、航路水深、泊地水深等の所定の水深を確保しなければならない場所では、本発明の底質改善方法は好適である。
【0021】
また、水底13の非有害土壌10を固化処理土壌11の下方から上方に置き換えるだけで、有害土壌9を移動させる必要がないので、作業に伴って有害土壌9が拡散する危険がない。
【0022】
実施形態では、有害土壌9のすべてを固化処理土壌11に改質しているが、有害土壌9の表層部を固化することによって、水底13に封じ込めることが可能であれば、有害土壌9の表層部のみを改質するようにしてもよい。
【0023】
図5に、他の実施形態を例示する。この水底13には、非有害土壌10の上に有害土壌9が堆積し、さらにその上に非有害土壌10aが堆積した状態となっている。このような水底13では、最上層の非有害土壌10aが、図1で例示した覆土8の機能を果たすので、既述した第1工程を省略することができる。
【0024】
また、図1に示した覆土8に替えて、固化材注入装置1の攪拌翼3の上方に下端部を開口した拡散防止カバー5を設けるようにしてもよい。この拡散防止カバー5が、作業に伴う有害土壌9の拡散防止の被覆材として機能する。このように、被覆材として拡散防止カバー5のような加工物や図1に示した覆土8等の非加工物を用いることができる。
【0025】
次いで、図6に示すように、固化処理土壌11を削孔して形成された上下に貫通する貫通孔12を通じて、固化処理土壌11の下方にある非有害土壌10が浚渫バケット14によって揚送される。揚送された非有害土壌10によって、固化処理土壌11の上方の水底13が覆われる。このように、固化した固化処理土壌11の貫通孔12が、崩壊する等のおそれがない場合は、管体6を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の底質改善方法の第1工程を例示する説明図である。
【図2】本発明の底質改善方法の第2工程を例示する説明図である。
【図3】本発明の底質改善方法の第3工程を例示する説明図である。
【図4】すべての工程が完了した後の水底の状態を例示する説明図である。
【図5】本発明の底質改善方法において、固化材を注入する他の例を示す説明図である。
【図6】本発明の底質改善方法において、非有害土壌を揚送する他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 固化材注入装置
2 固化材注入管
3 攪拌翼
4 噴出孔
5 拡散防止カバー
6 管体
7 サンドポンプ
8 覆土
9 有害土壌
10、10a 非有害土壌
11 固化処理土壌
12 貫通孔
13 水底
14 浚渫バケット
S 固化材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含んだ水底の有害土壌の拡散を防止する底質改善方法において、前記有害土壌に固化材を注入して固化処理土壌に改質し、該固化処理土壌を削孔して上下に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔を通じて前記固化処理土壌の下方の非有害土壌を揚送し、前記固化処理土壌の上方の水底を新たに非有害土壌で覆うことを特徴とする底質改善方法。
【請求項2】
前記貫通孔に管体を挿通させて立設し、該管体の内部を通じて前記非有害土壌を揚送する請求項1に記載の底質改善方法。
【請求項3】
前記固化処理土壌の上方の水底を新たに覆う非有害土壌を、前記固化処理土壌の下方から揚送した非有害土壌とする請求項1または2に記載の底質改善方法。
【請求項4】
前記水底を、前記有害土壌の拡散防止可能な被覆材によって被覆した後に、前記有害土壌に固化材を注入する請求項1〜3のいずれかに記載の底質改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−32024(P2007−32024A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214584(P2005−214584)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】