説明

座屈拘束ブレース、座屈拘束ブレースを用いた耐力フレーム、及び座屈拘束ブレースの製造方法

【課題】構造がシンプル化でき、軽量で機能的な座屈拘束ブレース、この座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレーム、及び前記座屈拘束ブレースの製造方法を提供する。
【解決手段】構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同長の筒状をなすとともに前記ブレース芯材に外挿し、かつ金属を用いて形成された外補剛材とを具え、前記外補剛材は、ブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、この変形部によって、外補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁などの垂直構面、及び床などの水平構面の内側に架け渡されて、水平力に対する建築物の変形を有効に防止できる座屈拘束ブレースと、この座屈拘束ブレースを用いた耐力フレーム、及び座屈拘束ブレースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の座屈拘束ブレースは、鋼板等を用いたブレース本体としてのブレース芯材を、鋼管等を用いた補剛材の内側に挿入し、これらブレース芯材と補剛材との隙間に、モルタル、合成樹脂等硬化性の材料を充填した構造が多く採用されている。
【0003】
このように構成された座屈拘束ブレースでは、圧縮荷重を受ける際に発生するブレース芯材の座屈が、補剛材の曲げ剛性によって拘束されることから、比較的小さな断面のブレース芯材で、引張力及び圧縮力の両方に充分抵抗して、ブレースとして必要な補強効果を得ることができる。その結果、地震発生時など建築物に大きな水平力が発生すると、小断面のブレース芯材はこれらの外力に応じて柔軟に弾性伸縮できることから、エネルギー吸収効果の高い紡錘型の復元力特性を生じて、建築物の接合部、周辺の構造材の強度を高めることなく、優れた耐震性を発揮できる。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−220637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブレース芯材が座屈しようとする力を補剛材に確実に伝達するためには、モルタル等を隙間を生じることなく充填することが要求される。更にはブレース芯材が自由に伸縮できるようにするため、ブレース芯材に絶縁材を被覆して、ブレース芯材と充填材とを縁切りする処置が必要となるなど、高いレベルの品質管理が必要となる。その結果、工程が煩雑となって充填作業自体に手間がかかる。
【0006】
しかもブレース芯材に、充填剤の重さが加わることから、部材の全体重量が大きく増加する。その結果、部材製造・物流の作業性が低下するとともにスペースの狭い施工現場での荷扱いが特にやり難く、更には上階への部材搬入の際、荷役機械の設置が必要となるため能率が低下し、他方作業者の負荷が大きく労働障害を発生する恐れもある。
【0007】
本発明は、外補剛材に設けられた変形部によって、外補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを基本とし、構造がシンプル化でき、軽量で機能的な座屈拘束ブレース、この座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレーム、及び前記座屈拘束ブレースの製造方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る座屈拘束ブレースでは、構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同長の筒状をなすとともに前記ブレース芯材に外挿し、かつ金属を用いて形成された外補剛材とを具え、前記外補剛材は、ブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、この変形部によって、外補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする。
【0009】
請求項2では、外補剛材の内部空間で、ブレース芯材との間に挿入される内補剛材を更に有し、この内補剛材は、外補剛材の変形部とブレース芯材との間で挟着され、請求項3では、前記外補剛材は角筒状をなすとともに、前記ブレース芯材は、外補剛材の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置され、前記内補剛材は、一対の断面コ字状の溝形材によって構成され、この各々の溝形材は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材に向けてウェブを当接して配置され、前記変形部が、溝形材のフランジ先端に当接することにより、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着することを特徴とし、請求項4では、前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の耐力フレームは、請求項1〜4のいずれかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであるとともに、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートとを有し、座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする。
【0011】
本発明の座屈拘束ブレースの製造方法では、構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同長の筒状をなすとともに前記ブレース芯材に外挿し、かつ金属を用いて形成された外補剛材とを具えた座屈拘束ブレース材の製法であって、ブレース芯材を外補剛材の内部に挿入するとともに、外補剛材内部の所定位置に配置するブレース組立工程と、プレス装置により、外補剛材を外側から内側へ向けて押圧することにより変形部を形成し、外補剛材をブレース芯材に圧着する圧着工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る座屈拘束ブレースにおいては、ブレース芯材に外挿した外補剛材の内側へ向けた変形部により、外補剛材をブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することから、座屈防止に直接必要なもの以外は、何ら部品を用いることがないため、構造がシンプル化でき、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。
【0013】
また金属を用いた外補剛材に対する外側からの加圧力によって形成される変形部で、外補剛材をブレース芯材に圧着して座屈拘束ブレースを構成している。従って、外補剛材に使用される金属の種類、厚さに応じて加圧力を管理するだけで、必要な大きさの変形部を設けることができ、ブレース芯材の伸縮を許容しつつ、座屈変形が確実に抑止できる外補剛材の適正な圧着が得られる。
【0014】
請求項2に係る発明のように、外補剛材の変形部とブレース芯材との間で、挟着される内補剛材を更に設けると、外補剛材及び内補剛材の組み合わせにより合成される大きな剛性にで、ブレース芯材の座屈を確実に支持することができる。また構造設計上から、ブレース芯材として特殊な断面形状が採用されても、内補剛材の大きさ、形状を適宜、変更選択することにより、変形部でブレース芯材を確実に圧着できる。
【0015】
請求項3に係る発明のように、角筒状の外補剛材内部空間を二分割する位置に配置したブレース芯材によって二分割された矩形分割空間に、断面コ字状の内補剛材を収容すると、ブレース芯材がウェブに挟着されることから、伸縮にともなう長さ方向のズレを許容しつつ、座屈を安定して支持できる。また変形部は、溝形材のフランジ先端に当接した状態で形成されることから、外側からの加圧力によって形成された変形部は、溝形材の双方フランジ間に膨出して形成されるため、ブレース芯材を確実に圧着できる。
【0016】
請求項4に係る発明のように、メッキ仕上げしたブレース芯材を用いると、ブレース芯材の伸縮時に、外補剛材、内補剛材との間に滑らかなズレを確実に生じることから、ブレース芯材の地震エネルギー吸収効果が充分に発揮される。
【0017】
本発明の耐力フレームは、矩形状の外周枠の内側に張り出して設けた取付プレートに、前記座屈拘束ブレースのブレース芯材の両端部を固着していることから、外周枠に負荷する地震時の水平力が、ブレース芯材によって確実に支持されるとともに、ブレース芯材が伸縮することにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて有効に減衰する。従って、耐力フレームを組み入れた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。
【0018】
本発明の座屈拘束ブレースの製造方法は、軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材に外挿するとともに金属を用いて形成された外補剛材を一体化するため、ブレース芯材を外補剛材の内部に挿入、配置するブレース組立工程と、外補剛材を外側から内側へ押圧して変形部を形成することによって外補剛材をブレース芯材に圧着する圧着工程とを含み構成される。従って、熟練を要することがない単純作業によって製造できるため、生産性が高いとともに、品質のバラツキを生じることがない。しかも、従来のような硬化性の充填剤を含まないことから、座屈拘束ブレース全体の重量が軽減され、製造工場、及び施工現場での作業性、安全性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、座屈拘束ブレース1は、構造用部材として長手方向に作用する引張、圧縮両方向の軸力を支持するブレース芯材2と、このブレース芯材2に外挿する外補剛材3とを具える。更に本形態では、前記外補剛材3の内部空間において、ブレース芯材2との間に挿入される内補剛材5とを含み構成したものを例示している。
【0020】
前記ブレース芯材2は、長尺板状をなし、幅寸法が例えば、20〜100mm程度、本形態では43mmとし、厚さ寸法が例えば、3〜15mm程度、本形態では6mmに形成されている。長さ寸法はブレース芯材2を取付ける構造体のサイズに応じて適宜設定されるが、本形態では1300mmのものが例示される。
【0021】
ブレース芯材2は、通常炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの鉄鋼材料が好適に用いられる。さらに本形態では、ブレース芯材2には、メッキ仕上げが施されている。メッキ仕上げは、0.1〜5μ程度の金属被膜を設けたもので、金属として亜鉛、錫、鉛など防食メッキの他、硬質クロムメッキが好適に採用される。メッキ手段としては、電気メッキ、化学変化による化学メッキ、溶融メッキ、蒸着メッキなどから基材、目的によって選ぶことができる。このようにブレース芯材2をメッキ仕上げすると、ブレース芯材2が伸縮する際、接触する相手方の外補剛材3、内補剛材5との間で滑らかなズレを生じることから、ブレース芯材2がフリーに伸縮できて地震エネルギーの吸収効果を損なうことがない点で好ましい。
【0022】
前記外補剛材3は、前記ブレース芯材2と略同じ長さの筒状をなし、本形態では互いに直行する4つの面板部に囲まれて断面が正方形をなす角筒体を用いている。外補剛材3としては、このほか断面形状が長矩形、三角形、正多角形などの角筒体、或るいは円筒体などを用いることができる。外補剛材3は、塑性加工が容易に行なえる金属を用いて形成され、ブレース芯材2と同様、炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼を含む鉄鋼材料が好適に用いられる。
【0023】
そして外補剛材3は、ブレース芯材2に外挿して座屈拘束ブレース1を組み立てる。そのため外補剛材3は、ブレース芯材2が挿入しうる大きさに形成される。即ちブレース芯材2の幅寸法は、外補剛材3の互いに平行に向き合う面板部相互の間隔よりも、例えば0.5〜6mm程度小さな寸法に形成される。さらに本形態では、ブレース芯材2が外補剛材3の正方形状の内部空間を、同じ大きさの矩形分割空間に二分割する位置に配置される。さらにこの二つの矩形分割空間の中には、断面コ字状の溝形材6からなる内補剛材5が各々挿入される。しかも図2に示すように、各溝形材6は、そのウェブ6Wがブレース芯材2に重なる方向に配置され、従って各々のフランジ6Fは前記4つの面板部の中で、ブレース芯材2に平行な面板部(以下、平行面板部21という)の両側部寄りの領域に向き合って配される。
【0024】
さらに外補剛材3の前記平行面板部21は、ブレース芯材2に向けて外側から加圧することにより内側へ向けて滑らかに湾曲した変形部4が形成される。本形態の変形部4は
、外補剛材3の全長に亘って連続しているが、一定長さで独立して形成される変形部4を間隔を隔てて複数個隔設してもよい。このような変形部4によって、外補剛材3及び内補剛材5がブレース芯材2に圧着して一体化され、その結果長尺板状のブレース芯材2に圧縮荷重が掛かった際、ブレース芯材2に発生しがちな座屈を抑制している。しかし変形部4による圧着は、金属の塑性変形により得られることから、ブレース芯材2の伸縮変形は許容される。なおこの変形部4の凹み深さDは、例えば、0.03〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜2.2mm、本形態では1.4mmとしている。
【0025】
本形態では前記の如く、外補剛材3の内部空間で、ブレース芯材2との間に挿入された内補剛材5が、外補剛材3の変形部4とブレース芯材2との間で挟着されることから、外補剛材3と内補剛材5とを組み合わせることで更に高い剛性が得られ、ブレース芯材2の座屈を確実に抑制することができる。しかもブレース芯材2が構造上の必要性などから特殊な断面形状となっても、適宜これに対応して内補剛材5の大きさ、形状を変更選択することにより、変形部4でブレース芯材2を確実に圧着することができる。
【0026】
本形態の内補剛材5は、一対の断面コ字状の溝形材6によって構成され、各々の溝形材6は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材2に向けてウェブ6Wを当接して配置されることから、ブレース芯材2に荷重が働いて伸縮しても、当接面において長さ方向のズレが許容され、しかも座屈を安定的に支持できる。
【0027】
さらに変形部4は、外側からの加圧力によって形成され、本形態では溝形材6の一対のフランジ6F、6F間に膨出して形成された変形部4が溝形材6の一対のフランジ6F、6F先端に当接して外補剛材3、内補剛材5がブレース芯材2に圧着するため、ブレース芯材2を確実に圧着できる点で好ましい。
【0028】
前記の実施形態では、外補剛材3の内部空間で、ブレース芯材2との間に内補剛材5を挿入しているが、内補剛材5を挿入することなく、外補剛材3の変形部4でブレース芯材2を直接挟着して、外補剛材3が直接ブレース芯材2に圧着してもよい。
【0029】
このように外補剛材3が、その変形部4でブレース芯材2に圧着して座屈を防止することから、座屈防止のため直接補強材となるもの以外は、何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。しかもこの変形部4は、金属製の外補剛材3を外側から加圧して形成するため、外補剛材3に用いる金属の種類、厚さに応じた加圧力を管理して、適正な大きさの変形部4を設けることで、外補剛材3をブレース芯材2に適正に圧着し、ブレース芯材2の座屈変形を確実に抑止することができる。
【0030】
本発明の座屈拘束ブレースの製法は、図9(B)に示すように、ブレース芯材2を外補剛材3の内部に挿入するとともに、外補剛材3を所定位置に配置するブレース組立工程と、図9(C)に示すように、プレス装置を用いて、外補剛材3を外側から内側へ向けて押圧することにより変形部4を形成し、かつ外補剛材3をブレース芯材2に圧着する圧着工程とを含んで構成される。
【0031】
本形態では図9(A)に示すように、断面コ字状をなすとともにブレース芯材2と略同じ長さを有し、ウェブの外面がブレース芯材2に向き合って配される一対の内補剛材5が用いられる。そして図9(B)に示すようにブレース組立工程において、ブレース芯材2及びこれを挟む一対の内補剛材5、5をサンドイッチ状に揃えて、角筒状の外補剛材3の内部へ向けて端部から挿入し、ブレース芯材2及び内補剛材5を外補剛材3内部の所定位置に配置する。このとき図(C)に示すように、ブレース芯材2の厚さ寸法、及び2つの内補剛材5のフランジ長さを足した寸法は、外補剛材3の前記平行面板部21の間隔よりも、例えば0.5〜5mm程度小さく形成されている。しかも前記の如く、ブレース芯材2の幅寸法は、外補剛材3の互いに平行に向き合う面板部相互の間隔よりも少し小さな寸法に形成され、また内補剛材5のフランジの間隔は更に小さく形成されている。従ってブレース芯材2及び内補剛材5は、外補剛材3の内部にスムースに挿入することができる。
【0032】
次いで前記圧着工程では図(C)に示すように、プレス装置の上、下のポンチ22U、22Dにより、前記外補剛材3の2つの平行面板部21を外側から内側へ向けて、各々直角に押圧することにより、図1に示すように、前記平行面板部21に内側へ湾曲して緩やかに凹んだ変形部4を形成する。このように形成された変形部4によって、外補剛材3は内補剛材5を介してブレース芯材2に圧着される。その結果ブレース芯材2が圧縮力を受けても、外補剛材3及び内補剛材5によって座屈発生が阻止されることから、圧縮力を支持することができる。しかもブレース組立工程において、内補剛材5を外補剛材3内に挿入し、圧着工程においては、プレス装置を用いて加圧するだけの操作で座屈拘束ブレース1を形成出来ることから、何ら熟練を要することなく単純作業で座屈拘束ブレース1が製造できる。従って、高い生産性が得られるとともに、座屈拘束ブレース1の品質バラツキを生じることがない。しかも硬化性の充填剤を使用しないことから、座屈拘束ブレース1全体が軽量化できるとともに、製造工場、及び施工現場での作業性、安全性が向上する。
【0033】
本発明の耐力フレームは、前記の如く形成され、製造された座屈拘束ブレース1を構成部材として含むものであり、建築架構体に取付けることにより、水平耐力を負担して耐震強度を向上する。また耐力フレームは図3に示すように矩形状の外周枠7と、この外周枠7の内側に張り出して設けられた取付プレート8とを含み構成される。
【0034】
前記外周枠7は上、下に水平に配される上枠7U、下枠7D及び、この上枠7U、下枠7Dの左右両端部間を繋ぐ垂直な竪枠7V、7Vとからなり、各枠材端部相互が固着され、縦長の矩形状をなす。各々の枠材は断面正方形の角筒状をなし、本形態では50mm角の鋼管を用いている。
【0035】
図4に示すように、竪枠7Vの上端部と上枠7Uの側端部は、双方の枠材端部に形成したスリットに上プレート23を嵌合するとともに溶接して固着している。同様に図6に示すように、竪枠7Vの下端部と下枠7Dの側端部は下プレート24を介して固着している。更に前記上プレート23の上側端部には、水平な上取付板25を固着している。また竪枠7V下部に設けた下開口のコ字材26及び下プレート24下部は、水平な下取付板27を固着している。尚上取付板25にはネジ孔28が穿設され、梁(図示せず)に挿通された取付ボルト29をこのネジ孔28に螺着して、耐力フレームの上部を固着できる。他方下取板27には挿通孔30が穿設され、この挿通孔30に挿通する取付ボルト(図示せず)を用いて耐力フレームの下部を土台、梁などに固着できる。
【0036】
更に図3、5に示すように、一方の竪枠7Vの略中間高さ位置に、内側に向いた縦長の中間プレート31が溶着される。
【0037】
耐力フレームに使用される座屈拘束ブレースは図1に示すように、外補剛材3の両端部から内補剛材5の両端部が各々20〜100mm程度食み出す程度、内補剛材5が外補剛材3よりも長く形成されている。同様に内補剛材5の両端部からブレース芯材2の両端部が各々20〜100mm程度食み出す程度、ブレース芯材2が内補剛材5よりも長く形成されている。更に内補剛材5のウェブ両端部には、U字状に切欠した回避部32が形成される。
【0038】
本形態では、外周枠7の内側に、くの字状に一対の座屈拘束ブレースが配置され、前記上プレート23と中間プレート31との間、及び中間プレート31と下プレート24との間に各々が架け渡される。そして上、下のプレート23、24及び中間プレート31に斜め方向に線状に形成された切込みに、ブレース芯材2の端部を嵌合するとともに溶接してブレース芯材2の両端を固着している。従って建築架構体に取付けられることにより外周枠7に掛かる地震時の水平力を、ブレース芯材2によって確実に支持することができる。更にはブレース芯材2が外補剛材3及び内補剛材5に支持されることから座屈を生じることなく伸縮するため、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて効果的に減衰する。このように、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。
【0039】
なお本形態では、前記上、下のプレート23、24の外周枠7の内側の領域、及び中間プレート31が、ブレース芯材2の端部を固着する取付プレート8を構成している。更に前記内補剛材5の回避部32によって、座屈拘束ブレースと取付プレート8との干渉を回避している。
【0040】
図7、8は耐力フレームの他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本形態ではブレース芯材2を取付プレート8を構成する上、下のプレート23、24及び中間プレート31と同じ面方向に配置し、従って上、下のプレート23、24及び中間プレート31に斜めに形成された矩形状の切欠部33にブレース芯材2の端部を嵌合溶着することにより座屈拘束ブレースを取付けている。このようにブレース芯材2と取付プレート8とが連続した面を構成しつつ座屈拘束ブレースを取付けていることから、耐力フレームに負荷する水平力がより確実にブレース芯材2に伝達されて、耐変形強度が更に向上する点で好ましい。
【0041】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の座屈拘束ブレースの一実施の形態を例示する斜視図である。
【図2】その断面図である。
【図3】本発明の耐力フレームの一実施の形態を例示する斜視図である。
【図4】その要部拡大斜視図である。
【図5】異なる要部の拡大斜視図である。
【図6】更に異なる要部の拡大斜視図である。
【図7】耐力フレームの他の実施形態を例示する斜視図である。
【図8】その要部拡大斜視図である。
【図9】(A)(B)(C)は本発明の座屈拘束ブレースの製造方法を順次説明する略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 座屈拘束ブレース
2 ブレース芯材
3 外補剛材
4 変形部
5 内補剛材
6 溝形材
6F フランジ
6W ウェブ
7 外周枠
8 取付プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同長の筒状をなすとともに前記ブレース芯材に外挿し、かつ金属を用いて形成された外補剛材とを具え、
前記外補剛材は、ブレース芯材に向けた外側からの加圧力によって内側へ向けて変形した変形部を有し、
この変形部によって、外補剛材がブレース芯材に圧着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
外補剛材の内部空間で、ブレース芯材との間に挿入される内補剛材を更に有し、
この内補剛材は、外補剛材の変形部とブレース芯材との間で挟着されることを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記外補剛材は角筒状をなすとともに、前記ブレース芯材は、外補剛材の内部空間を同大の矩形分割空間に二分割する位置に配置され、
前記内補剛材は、一対の断面コ字状の溝形材によって構成され、この各々の溝形材は、各矩形分割空間内において、前記ブレース芯材に向けてウェブを当接して配置され、
前記変形部が、溝形材のフランジ先端に当接することにより、外補剛材及び内補剛材がブレース芯材に圧着することを特徴とする請求項2記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであるとともに、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートとを有し、
座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする耐力フレーム。
【請求項6】
構造用部材として軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同長の筒状をなすとともに前記ブレース芯材に外挿し、かつ金属を用いて形成された外補剛材とを具えた座屈拘束ブレース材の製法であって、
ブレース芯材を外補剛材の内部に挿入するとともに、外補剛材内部の所定位置に配置するブレース組立工程と、
プレス装置により、外補剛材を外側から内側へ向けて押圧することにより変形部を形成し、外補剛材をブレース芯材に圧着する圧着工程とを含むことを特徴とする座屈拘束ブレースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−75281(P2008−75281A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253130(P2006−253130)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】