説明

座標入力システム

【課題】耐久性向上の為に保護層を厚く設けた抵抗膜型の座標入力パネルにおいて、掌の接触等による誤検出を防ぐ座標入力システムを提供する。
【解決手段】高い耐久性の求められる入力パネルでは、非絶縁性の厚い樹脂膜を保護層として使用することがあるが、この場合に掌と面抵抗体との静電容量結合の影響を受けて指の指示した位置からずれた座標が入力されてしまうことがある。座標入力領域を指などの導体で接触又は近接した箇所が1箇所か2箇所かを識別する計算手段を有することで、耐久性向上のため保護層を厚くしても誤検出を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などの導体により指示した位置を検出する座標入力システム、特に座標入力領域を導体で接触又は近接した箇所が1箇所か2箇所かを識別する計算手段を有する座標入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
座標入力システムの入力パネルは、均一な面抵抗体に該面抵抗体を取り囲む形で各辺の長さあたりの抵抗値は各辺内で一定となる長方形の抵抗性周囲電極を配設しており、4頂点に検出電極を備えている。該検出電極は前記抵抗性周囲電極と電気的に接続されている。
座標入力システムの座標検出方法は、入力パネルの面抵抗体に流入する電流の4頂点へ配分される電流値を計測するものが知られている(特許文献1参照)。指で指示した位置の座標は、面抵抗体に流入する電流の4頂点への配分値を用いて計算できるものが知られている(特許文献2参照)。また、検出点電極の数は少なくとも入力パネルの頂点に設置する必要はあるが、それ以上の検出電極を辺に設置しても良い。その場合の座標の計算方法は特願2008−251905号として出願している(特許文献3)。
【0003】
上記のような座標入力システムは、発券機やATMなど公共の場に設置されることもあり、その場合、不特定多数の人が使用することになる為、入力パネルは耐久性の高いものが求められている。
【0004】
入力パネルの耐久性を向上させるには面抵抗体の上に保護層を設けることが考えられる。該保護層は絶縁処理したものであっても良いし、非絶縁性の樹脂膜を使用するものも知られている(特許文献4参照)。このとき、指と面抵抗体との静電容量結合により、面抵抗体に電流が流入する。また、この保護層は一般的に厚いほど耐久性は高くなる。
【0005】
面抵抗体の上に保護層を設けた場合、指が保護層に接触したかどうかを判断するために、各検出電極で計測した電流量の合計値に閾値を設ける必要がある。つまり、計測した電流量の合計値が一定値未満の場合は、指が接触していないとして、座標の計算は行わないとする。静電容量結合は指と面抵抗体との距離によって変わるため、面抵抗体の上に保護層を厚めに設けた場合は、閾値の設定を低めにする必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−132319号
【特許文献2】特許第4168537号
【特許文献3】特願2008−251905号
【特許文献4】特開2003−140833号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
静電容量結合の大きさは、人体と面抵抗体との距離や面積などで大きく変わる。つまり人体と面抵抗体との距離が近いほど静電容量結合は大きく、また、静電容量結合を受ける面積が大きいほど静電容量結合は大きくなる。つまり、保護層を厚く設けた場合、座標入力領域に指が触れた状態でも指と面抵抗体との静電容量結合は比較的小さい状態である。 このとき、操作者の指示の仕方によっては、従来は無視をすることができていた掌と面抵抗体との静電容量結合の影響を受けることがある。つまり、検出された座標は指の静電容量結合された位置なのか、指だけではなく掌も面抵抗体と静電容量結合しており、その影響で本来の指の指示した位置からずれた位置なのかを判断することができなかった。
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、各検出電極で計測された電流量から指示した位置の座標計算をするとともに、座標入力領域の中で静電容量結合が1箇所か2箇所なのかを識別することで、耐久性向上の為保護層を厚くしても、誤検出を防止できる座標入力システムを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、絶縁基材に形成された面抵抗体の周囲又は内部に各辺の長さあたりの抵抗値は各辺内で一定となる長方形の抵抗性周囲電極を、全ての辺が前記面抵抗体と電気的に接触する様に設けると共に、該抵抗性周囲電極の内部を座標入力領域とする座標入力システムであって、前記座標入力領域を指などの導体で接触又は近接したときに、前記抵抗性周囲電極の少なくとも全ての頂点に流れる電流を計測する検出電極と、該検出電極が計測する電流値から前記導体で接触又は近接した前記座標入力領域の位置を計算する座標計算手段と、前記検出電極が計測する電流値から前記座標入力領域を前記導体で接触又は近接した箇所が1箇所か2箇所かを識別する識別計算手段を有することを特徴とする座標入力システムを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る座標入力システムにおいては、耐久性向上の為、保護層を厚くしても掌の影響を受けて座標が指の位置からずれているかどうか識別することができる。従って、本発明に係る座標入力システムを用いる券売機などの装置は、掌の影響を受けていない場合はそのまま座標を利用し、掌の影響を受けている場合はエラーとして操作者に再度入力を促すメッセージを出すなどすることによって、誤検出を回避することができる。
【0010】
不特定多数の人が使う座標入力システムの場合、指からの静電容量結合を受けているのか、受けていないのかを識別する閾値を低めに設定しておくことで、軽く触った場合でも反応できる利便性の高いタッチパネルになる。この場合においても、誤検出を回避することができる。
【0011】
座標入力領域の中で静電容量結合が1箇所か2箇所なのかを識別することで、操作している指が1本なのか、2本なのか識別することができるため、例えば、2本で操作した場合は無効にしたり、ダブルクリックなどの機能に割り当てることで、利便性を高めることができる。ただし、2本の指で操作しても、座標は1点に計算されるので、そのような操作を機能に割り当てる場合には、座標値の取り扱いに注意する必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に従って、本発明に係る座標入力システムの好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、座標入力システムの一例を示す構成図である。指7が入力パネルの座標入力領域12内で指示した位置(X,Y座標)を検出する座標入力システムの構成図である。面抵抗体1は、透明なガラス、樹脂、または不透明な絶縁基材の片面に塗布、蒸着等によりITO膜やNESA膜などを均一に形成したものである。面抵抗体1の表面は、耐久性を向上させる為、保護層を設け、保護層は指7が面抵抗体1に直接触れない様に絶縁処理することによって、指7と面抵抗体1との静電容量結合による信号伝達をさせるようにしてもよいし、保護層を特許文献4に記載のものにしてもよいし、保護層を設けず、指7と面抵抗体1の直接的な電気的接触による信号伝達をさせるようにしてもよい。ここでは、面抵抗体1表面に絶縁処理をした保護層を設けた場合を説明する。
均一な面抵抗体1の周囲又は内部に、抵抗性周囲電極2を密着配設し、抵抗性周囲電極2の内部を座標入力領域12とする。抵抗性周囲電極2上において、座標入力領域の4隅の位置に検出電極3〜6を設置し、そこにそれぞれ1本ずつ引き出し線8〜11を接続する。引き出し線8〜11をアナログ信号処理部15内の振動電圧印加回路16に接続する。
【0013】
座標を検出する際、AC信号源としての振動電圧発生器17は、振動電圧印加回路16に振動電圧を与え、振動電圧印加回路16は対応する検出電極3〜6を低インピーダンスで電圧振動させ、且つ、アナログマルチプレクサ18に検出電極から流入した電流を出力する。簡単な例としては、トランジスタのベースをAC信号で振動させ、エミッタを検出電極と接続して、コレクタから電流出力するものがある。
【0014】
AC信号源としての振動電圧発生器17によって、面抵抗体1は、全面が電圧振動する。人体は、従来から知られているように、AC信号に対して接地効果を持っており、人体の指7が面抵抗体1に接触または近接すると、静電容量結合により、指先を通して面抵抗体1との間にAC信号電流が流れる。検出電極3〜6は、アナログマルチプレクサ18を通してA/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)19に接続しており、各検出電極に流れる電流に比例した電圧がA/Dコンバータ19に印加されるため、指先から面抵抗体1を通して流れ、検出電極3〜4へ配分される電流値を、電圧値としてデジタル値で得ることができる。CPU20は、アナログマルチプレクサ18を順番に切り替え、A/Dコンバータ19が出力するデジタル値を入力し、指7の指示位置の座標を計算する。また、計測された電流量は指示をした指7から流れてきたものか、他の導体の影響を受けたものかを識別する計算を行う。
【0015】
指の位置の座標計算方法については、特許文献2に開示されている通りであり、各検出電極の計測レベルの比に基づいて計算しているため、静電容量の結合量が大きく変わっても、指のパネル部上の座標が高精度に検出される。CPU20は計算した座標を出力し、座標は後段の装置によって利用される。
【0016】
操作をするときに掌の位置が座標入力領域12に近い位置にある場合、座標入力領域12上で指と掌の2箇所で静電容量結合をする場合がある。このとき、検出電極3〜6には静電容量結合された2箇所の合計の電流量が流れる。前述のように座標は各検出電極の比から計算するため、指と掌の間の座標が計算される。
つまり、座標計算式だけでは掌の影響を受けて、計算された座標が指の指示した位置とは違っていても、それを識別することができない。
【0017】
このため座標の計算とは別に掌の影響を受けているのか、つまり座標入力領域12内で、静電容量結合が1箇所で行われているのか、2箇所で行われているのかを識別する方法が必要となる。
例えば、図1の座標入力領域の頂点にある検出電極3〜6で計測さされた電流量をそれぞれI、I、I、Iとすると特許文献2に基づいて計算すると数式1が成り立つことが分かった。
【0018】
【数1】

【0019】
しかし、数式1は指のみ、つまり座標入力領域12内に1箇所で静電容量結合をしている状態の時に成り立つ式であって、掌の影響、つまり座標入力領域12内に2箇所で静電容量結合を受けている場合は成立しないことが分かった。
したがって、座標入力領域の頂点にある検出電極の電流量の関係から、数式2で定義されるSの値によって、座標入力領域12内に1箇所で静電容量結合をしている状態か2箇所で静電容量結合をしている状態かを識別することが出来る。ここで、Iは各検出電極の総和である。
【0020】
【数2】

【0021】
この数式2のSは静電容量結合を受けている2点の位置関係で符号が異なり、2点間の距離が離れているほど絶対値が大きく、また、2点の静電容量の結合量の比が1:1に近いほど絶対値が大きくなる。但し、2点の位置関係がY軸に平行又は、X軸に平行になった場合はSの値が0になる。
数式2の識別計算を行うことで、Sの値が0の場合は座標入力領域12の中で静電容量結合が1箇所ある。また、Sの値が0以外の場合は座標入力領域12の中で静電容量結合が2箇所あると識別することができる。このとき、ノイズなどの影響で静電容量結合が1箇所の場合でもSの値が0にならない場合がある。Sの値には例えば±0.01以下は0と見なすなどの閾値の設定が必要である。
【0022】
しかし、数式2だけでは2点の位置関係、つまり手と掌の位置関係がY軸に対して平行又は、X軸に対して平行な位置の場合は、Sの値が0に近い値になってしまい、静電容量結合が1箇所の場合と識別がしにくい状態になる。この場合、Sの値の閾値を小さくすることで識別することができるが、Sの値の閾値を小さくし過ぎると、例えば掌と座標入力領域12との静電容量結合が座標の精度に問題にならないくらい小さい場合(実質的に1箇所の入力動作時)でも2箇所で静電容量結合あると判断されるため、使いにくいシステムになってしまう。
このことから、この識別計算方法のみで識別をする場合は、X軸、Y軸方向と平行な位置は識別できなくても問題にならないようなシステム構成にするか、この計算方法とは異なった識別計算やこれを併用して判断する必要がある。
【0023】
検出電極の数は座標を計算するために、少なくても抵抗性周囲電極の全ての頂点に設置する必要があるが、それ以上の数を設置しても良い。例えば、図2のように4頂点に検出電極3〜6を設置する以外に各辺の中点に検出電極21〜24を設置した8点の検出電極がある入力パネルの場合、座標を計算する上では、8角形の入力パネルの場合と同じと考えることが出来るため、特許文献3の記載の計算方法で座標を計算することが出来る。
また、辺上の検出電極21〜24の計測された電流量をそれぞれ、I、I、I、Iとすると、各辺あたりの抵抗値は一定であることから数式2は数式3のように定義できる。
【0024】
【数3】

【0025】
次に、前記の方法とは異なった識別計算手段の計算式について説明する。
図2の辺上にある検出電極21〜24の電流量と、検出電極のある辺から導体の触れた位置までの距離とが、直線的な関係式になっていないことが分かった。例えば、検出電極21で計測された電流量Iと、座標入力領域の中心線の位置での検出電極21から指までの距離との関係を図3に示す。流入点41〜45からは同じ量の電流量が流れるとし、座標入力領域の中心線の位置で検出電極21から最も遠い位置を流入点41、最も近い位置を流入点45とすると、流入点が検出電極21に近いほど電流量Iは大きくなるが、その関係式は直線的ではない。
このことは2箇所から静電容量結合を受けた状態で、検出電極21で検出される電流量Iと、2箇所から静電容量結合を受けたときに計算された座標の位置の1箇所で静電容量結合をしたときに検出電極21で検出される電流量Iとが、異なることを意味している。
この現象を利用して検出された座標が2箇所から静電容量結合を受けたのか、1箇所から静電容量結合を受けたのか識別することができる。
【0026】
座標入力領域全域において、1箇所で静電容量結合した場合の検出電極に流れる電流量を予めCPU20に記録させておき、座標計算するときに、この検出電極に流れる電流量を比較することで、2箇所で静電容量結合したのか、1箇所で静電容量結合なのか識別することができる。
しかし、この辺上の検出電極の電流量だけでは、特に抵抗性周囲電極の頂点付近の位置では、近くの頂点にある検出電極に多くの電流量が流れる為、識別することがほとんど不可能となる。このことから、検出電極21を基準にすると例えば数式4で定義されるSの値によって、座標入力領域内に1箇所で静電容量結合をしている状態か2箇所で静電容量結合をしている状態かを識別することが出来る。
【0027】
【数4】

【0028】
数式4は辺上の検出電極で計測された電流量を、その辺の両端にある検出電極で計測された電流量でそれぞれ割ったものを足している形であり、検出電極21のある辺の全域で有効な識別ができる。
また、数式4は検出電極21のある辺の近い位置では大きく、その反対側の検出電極23のある辺に近い位置では小さい値になるため、小さい値の位置では識別することが難しくなる。各辺上の検出電極で同様のことが言えるため、座標入力領域全域で識別を可能にするには、座標入力領域の辺上にある検出電極の電流量の関係から、数式5で定義されるSの値を用いればよい。
【0029】
【数5】

【0030】
1箇所で静電容量結合した場合の数式5のSの値を予めCPU20に記録させておき、座標計算をするときに、数式5を計算して、予め記録してある計算された座標のSの値を比較することで識別することができる。
つまり、座標の計算と同時に識別計算を行い、計算された座標から、その座標値のSの値をCPU20から読み出し、識別計算結果のSの値とCPU20のSの値を比較することで、同じ値の場合は座標入力領域の中で静電容量結合が1箇所ある。違う値の場合は、座標入力領域の中で静電容量結合が2箇所あると識別することができる。このとき、ノイズなどの影響で静電容量結合が1箇所の場合でも同じ値にならない場合があるので、例えば±0.1以下は同じ値とするなどの閾値の設定が必要である。
【0031】
また、数式5は座標入力領域内を正規化したときにパネルの真ん中を中心に上下左右同じ値を示すので、予め記録させておく範囲は座標入力領域の1/4の領域で良いことになる。さらに記憶させておく位置は例えば座標入力領域の10mm間隔などで良く、その間の座標が検出されたときの1箇所の静電容量結合時のSの値は、付近の座標のSの値から計算してよい。Sは電流量の比であるので、結合の強さによっては変化せず、従って、記憶すべき1箇所の静電容量結合時のSは、記憶させる位置について一種類でよい。
【0032】
この数式5のSの1箇所の場合から2箇所の場合の差をとると、2点の位置関係で符号が異なり、2点間の距離が離れているほど絶対値が大きくなり、また、2点の静電容量の結合量の比が1:1に近いほど絶対値が大きくなる。但し、2点の位置関係が長方形の座標入力領域の対角線と平行な同一直線上である場合は、静電容量結合が1箇所の場合と2箇所の場合とでは非常に近い値になってしまい静識別がつきにくい状態になるが、数式2の場合と同様にSの値の閾値の調整や、この方向に識別できなくても問題にならないようなシステム構成にすることで、数式5のみでも識別することができる。
【0033】
また、検出電極が8点あり、各辺の中点の位置に検出電極がある場合、例えば識別計算式の数式3のSと数式5のSを併用することで、それぞれが識別しにくい2点の位置関係を補うことができるので、座標入力領域を指などの導体で接触又は近接した箇所が1箇所か2箇所かをより正確に識別することができる。
【0034】
数式5の計算をすることで、座標入力領域全域で静電容量結合が1箇所の場合と2箇所の場合の識別を行うことが出来るが、システムの構成上、例えば座標入力領域の上部だけ識別をしたい場合は、上部の辺のみに検出電極を設置し、検出電極が5点又は、左右にも設置したとして検出電極が7点の構成であってもよい。
また、辺上の検出電極も辺の中心におく必要はないが、パネル全体の識別精度を考慮すると、辺の中点に設置したほうが望ましい。
【0035】
図4のように辺上の検出点が等間隔で2箇所づつ、つまり合計して12箇所の検出電極を設置している場合、4隅にある検出電極3〜6の計測さされた電流量をそれぞれ、I、IB、I、I、辺上の検出電極31〜38の計測された電流量をそれぞれ、I、I、I、I、I、I、I、Iとすると、数式5は数式6のように定義できる。
【0036】
【数6】

【0037】
数式6も数式5と同様に数式3と併用して識別計算を行うことによって静電容量結合が1箇所の場合と2箇所の場合を識別することができる。このとき数式3は辺上の検出電極の位置に合わせて、辺上の検出電極の電流量の係数を変えるとよい。
また、数式6のSの値の1箇所と2箇所の差は、数式5の1箇所と2箇所の差より大きな値が得られるので、数式5よりもノイズなどの外乱の影響を受けにくいといえるが、検出電極が多くなってしまうことからコストアップに繋がる。
【0038】
本発明は長方形の座標入力システムについて説明を行ったが、必ずしも長方形である必要はなく、例えば辺上の検出電極の位置で僅かに角度をつけて8角形の形状をしても、識別する精度が悪くなるが、前記した識別計算を使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により、本発明を説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものでなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。
【0040】
(実施例1)
本実施例の座標入力システムは、四角いガラス基材の上にITO膜を形成した面抵抗体1をパソコンのディスプレイの上に置き、面抵抗体1を取り囲む用に設けた抵抗性周囲電極2は、銀カーボンインクのスクリーン印刷によって形成した。また、耐久性をあげる為、面抵抗体1の上に0.5mmの厚さのガラス系コーティング剤で保護層を設けた。検出電極を抵抗性周囲電極2の4つの頂点と各辺の中点に設け、引き出し線を接続し、図1に示した構成図のように作成したハードウエアに接続した。ただし、振動電圧印加回路16は8個使用し、8個の入力を処理できるアナログマルチプレクサ18を使用して、CPU20が入力チャネルを切り替えられるようにした。
パソコンから座標入力領域内に直径20mmのボタンを複数個ディスプレイ内に表示し、操作者の指や掌が座標入力領域に接触又は近接すると、CPU20は特許文献2の方法で入力座標を計算する。
操作者がボタンを押すときに、押し方によっては、指だけでなく掌も面抵抗体と静電容量結合することがある。つまり、押し方によっては座標入力領域中で静電容量結合が2箇所あり、本来の指で指示した位置からずれた座標が計算されてしまう場合がある。
本実施例では、数式3によるSと数式5によるSを併用して行い、Sの閾値を±0.01、Sの閾値を±0.5と設定した。閾値を超えた場合は、正確な座標でないと判断して、操作者に入力の注意点(入力されなかった理由や正しい入力方法)の説明と再度入力を促すメッセージを出すことにより、以降、正確に入力されるようにした。
また、閾値以下の場合には、正確な座標と判断して、シリアル通信によってパソコンに座標を送る。パソコンは送られてきた座標がディスプレイ上のボタンの座標領域の中に入っている場合はボタンが押されたと認識して、ボタンに割り当てられた機能、例えば明かりを点けるなどの動作を行う。送られてきた座標がボタンの座標領域の中に入っていない場合は、ボタンが押されたと認識しないものとする。
【0041】
複数の操作者がランダムに複数箇のボタン領域内を指で押し、どの程度正しく入力されたか評価する為に、認識率(ボタンが押されたと認識された回数/操作者がボタンを押した回数)を計測した。その結果、認識率は80%程度あった。
【0042】
(実施例2)
座標入力システムの抵抗性周囲電極上にある検出電極は図5のように4つの頂点に検出電極3〜6と、上辺に等間隔で2箇所の検出電極31、32の合計7箇所設置する。このときのCPU20の識別計算式は、検出電極3〜6の計測さされた電流量をそれぞれI、I、I、I、検出電極31、32をそれぞれI、Iとすると数式7と数式8が定義できる。それ以外は実施例1と同じ構成とする。
【0043】
【数7】

【0044】
【数8】

【0045】
上記の実施例2のシステムを用いて、実施例1と同様の計測を行った。その結果、認識率は座標入力領域の上部に配置されたボタンを押した場合と下部に配置されたボタンを押した場合とで差があり、上部では80%程度、下部では30%程度であった。下部に配置されたボタンを押した場合は、掌の影響を受けて座標がずれた場合でも、S及びSの閾値を満足するため、正確な座標でないと判断されない。一方、パソコンは送られてきた座標がボタンの座標領域の中に入っていないので、ボタンが押されたと認識しない。にもかかわらずメッセージが表示されなかった為、操作者はその状況に気がつかず、何度もボタンを押した結果、認識率が低くなったことが判明した。
【0046】
(実施例3)
座標入力システムの抵抗性周囲電極上にある検出電極は4つの頂点だけとし、またCPU20の識別計算は数式2のみとする。それ以外は実施例1と同じ構成とする。
上記の比較例1のシステムを用いて、実施例1と同様の計測を行った。その結果、認識率はボタンの配置された位置によって差があり、70%〜30%程度であった。これは、数式2によるSだけの識別では2点の位置関係、つまり手と掌の位置関係がY軸に対して平行又は、X軸に対して平行な位置の場合は、Sの値が0に近い値になってしまい、静電容量結合が1箇所の場合と2箇所の場合とが識別しにくい状態になるためである。
【0047】
(比較例1)
座標入力システムの抵抗性周囲電極上にある検出電極は4つの頂点だけとし、またCPU20は識別計算を行わずに入力座標をパソコンに送る。それ以外は実施例1と同じ構成とする。
上記の比較例1のシステムを用いて、実施例1と同様の計測を行った。その結果、認識率は20%程度あった。これは、実施例2の下部に配置しているボタンと同じで、掌の影響を受けて座標がずれた場合でも、正確な座標でないと判断されなかった為、操作者は何度もボタンを押した結果、認識率が低くなったことが判明した。また、操作者が指示したボタンと違うボタンが反応したなどのトラブルも起こった。
【0048】
(比較例2)
座標入力システムの抵抗性周囲電極上にある検出電極は4つの頂点だけとし、またCPU20は識別計算を行わずに入力座標をパソコンに送る。かつ、面抵抗体1上の保護層は設けないものとする。それ以外は実施例1と同じ構成とする。
上記の比較例1のシステムを用いて、実施例1と同様の計測を行った。その結果、認識率は最初のうちは90%程度あったが、徐々に下がり続けて10%程度まで下がった。これは、使用中に面抵抗体1上のITO膜の指の触れた部分が傷ついてしまい、その周囲で均一な面抵抗体にならなくなり、その部分の座標が正確に検知できてなかったことが判明した。
【0049】
実施例1のシステムは、座標入力領域全域で認識率も耐久性も良いシステムであり、ボタンが上部にしか配置されない場合は実施例2のシステム、ボタンの配置位置によっては実施例3のシステムでも認識率も耐久性も良いシステムといえる。
それに比較して、比較例1のシステムは、耐久性は良いものの認識率が悪く、また違うボタンが押されるなどの誤検出が発生したシステムであり、比較例2のシステムは、認識率は良いものの、耐久性が悪いシステムである。以上のことから、本発明は有効であることが確認された。

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】座標入力システムの一例を示す構成図
【図2】検出電極が8点の場合の設置位置の一例を示す構成図
【図3】電流の流入点の位置と辺上の検出電極の電流量の検出量を示す図
【図4】検出電極が12点の場合の設置位置の一例を示す構成図
【図5】実施例2の検出電極の位置を示す図
【符号の説明】
【0051】
1 面抵抗体
2 抵抗性周囲電極
3、4、5、6 検出電極
7 指
8、9、10、11 引き出し線
12 座標入力領域
15 アナログ信号処理部
16 振動電圧印加回路
17 振動電圧発生器
18 アナログマルチプレクサ
19 A/Dコンバータ
20 CPU
21、22、23、24 検出電極
31、32、33、34、35、36、37、38 検出電極
41、42、43、44、45 電流の流入点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材に形成された面抵抗体の周囲又は内部に各辺の長さあたりの抵抗値は各辺内で一定となる長方形の抵抗性周囲電極を、全ての辺が前記面抵抗体と電気的に接触する様に設けると共に、該抵抗性周囲電極の内部を座標入力領域とする座標入力システムであって、前記座標入力領域を指などの導体で接触又は近接したときに、前記抵抗性周囲電極の少なくとも全ての頂点に流れる電流を計測する検出電極と、該検出電極が計測する電流値から前記導体で接触又は近接した前記座標入力領域の位置を計算する座標計算手段と、前記検出電極が計測する電流値から前記座標入力領域を前記導体で接触又は近接した箇所が1箇所か2箇所かを識別する識別計算手段を有することを特徴とする座標入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−157029(P2010−157029A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333776(P2008−333776)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】