説明

座瘡病変の治療のためのアダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せ

本発明は、アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩の使用であって、毎日の局所投与によって座瘡病変の数を低減させるための医薬組成物の製造のための、過酸化ベンゾイル(BPO)との組合せまたは併用での使用に関する。推奨治療は、アダパレンとBPOとを組合せた医薬組成物の形態をとることも、一方はアダパレンを含み他方はBPOを含む2つの組成物の併用適用の形態をとることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座瘡病変の数を低減させるためのアダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せまたは併用に関する。
【背景技術】
【0002】
6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸(以下、アダパレンと呼ぶ)は、レチノイド性および抗炎症性を有するナフトエ酸誘導体である。この分子は、尋常性座瘡およびレチノイド類に感受性の皮膚疾患の局所治療のための開発の対象であった。
【0003】
アダパレンは、Differin(登録商標)の商標名の下、0.1重量%の濃度で、「アルコール性ローション」溶液、水性ゲル、およびクリームの形態で販売されている。これらの組成物は、座瘡の治療用である。仏国特許出願第2837101号には、座瘡を治療するための0.3重量%の濃度のアダパレン組成物が記載されている。
【0004】
国際公開第03/055472号にはさらに、アダパレンと過酸化ベンゾイル(BPO)とを含む安定な医薬組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2837101号公報
【特許文献2】国際公開第03/055472号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】KorkutおよびPiskin、J. Dermatology, 2005, 32: 169-173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
KorkutおよびPiskinの文献J. Dermatology, 2005, 32: 169-173には、夜のアダパレンの適用と、朝のBPOの適用とを組み合わせる治療を、これらの活性物質のそれぞれの単独での適用と比較する研究結果が報告されている。この著者らは、11週間の治療期間にわたって、この組合せ治療の何らの優位性も観測していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、アダパレンとBPOとを治療において併用または組合せると、座瘡病変の数を低減させ、患者の病態を改善することにある程度の成功を収めることができ、この低減および改善がアダパレン単独またはBPO単独に基づく治療によるものより顕著に優れている一方で、皮膚の忍容性が同等に維持されることを実証した。
【0009】
推奨治療は、アダパレンとBPOとを組合せた医薬組成物の形態をとることも、一方はアダパレンを含み他方はBPOを含む2つの組成物の併用適用の形態をとることもできる。
【0010】
したがって、本発明の主題の1つは、アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩の使用であって、座瘡病変の治療のため、特に、座瘡病変の数を低減させ、患者の病態を改善するために、過酸化ベンゾイル(BPO)と組合せるかまたは併用して投与することを目的とした(特に固定用量の)医薬組成物の製造のための使用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1の臨床研究における全病変数の変化(中央値 %)を示す。
【図2】図2は、実施例1の臨床研究における炎症性病変数の変化(中央値 %)を示す。
【図3】図3は、実施例1の臨床研究における非炎症性病変数の変化(中央値 %)を示す。
【図4】図4は、実施例1の臨床研究における成功率(%)を示す。
【図5】図5は、実施例2の耳の浮腫モデルにおける耳の厚さの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましくは、座瘡病変は、炎症性型および/または非炎症性型である。
座瘡は、初期には、時には裸眼では視認することができない角化障害によって特徴づけられる。その後、視認可能な座瘡病変が発症し、皮脂腺のサイズおよび皮脂の生産が増大する。
【0013】
本発明は、特に、座瘡病変を問題とする。用語「座瘡病変」は、座瘡によって引き起こされた非炎症性病変(開放性面皰または閉鎖性面皰)および炎症性病変(丘疹、小膿疱、小節、および嚢胞)を意味する。好ましくは、炎症性病変を、本発明の組合せまたは併用を用いて治療する。
【0014】
より好ましくは、本医薬組成物は、毎日の皮膚局所適用によって投与する。言い換えれば、本発明は、アダパレンの、BPOの作用を増強するための薬剤としての使用に関する。相互的に、BPOは、アダパレンの作用を増強する。
【0015】
用語「アダパレンの塩」は、医薬品として許容可能な塩基、特に、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアなど)または有機塩基(例えば、リシン、アルギニン、またはN-メチルグルカミンなど)で形成された塩を意味する。用語「アダパレンの塩」は、脂肪族アミン(例えば、ジオクチルアミンおよびステアリルアミンなど)で形成された塩をも意味する。
【0016】
表現「アダパレンまたはその塩と、過酸化ベンゾイルとの組合せ」は、アダパレンまたはその塩と、過酸化ベンゾイルとを両方含む1つの組成物を意味する。
【0017】
1つの好ましい実施態様では、医薬組成物は、医薬品として許容可能な媒体中に、
(i)アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩から選択される少なくとも1種の化合物;および
(ii)過酸化ベンゾイル(BPO)
を含む固定併用剤である。好ましくは、医薬組成物は、1日当たり1回の局所適用用である。
【0018】
用語「医薬品として許容可能な媒体」は、皮膚、粘膜、および外皮に適合する媒体を意味する。
【0019】
用語「固定併用剤」は、その複数の活性成分が、これらの成分を作用点に一緒に送達する同一の賦形剤(単一の製剤)中で、固定用量で組み合わされている併用剤を意味すると解されるべきである。好ましくは、固定併用剤の形態の医薬組成物は、ゲルであり、この場合において、2つの活性成分は、製造時に、これらの成分をゲルの適用時に一緒に送達する同一の賦形剤中に分散され、かつ密接に混合される。
【0020】
本発明の別の実施態様では、医薬組成物は、アダパレンを含む組成物Aの形態であり、過酸化ベンゾイルを含む組成物Bと併用して適用することを目的とする組成物である。好ましくは、組成物Aおよび組成物Bは、キットの形態で存在する。好ましくは、このキットは、それぞれに2つの組成物AおよびBの少なくとも1つが入った2つの分離した区画(2包装)を含むか、あるいは、同一の提供形態中に少なくとも前記の2つの製品(組成物AおよびB)を2つの分離した包装(好ましくはチューブの形態の包装)を組み合わせた(共に梱包した)キットの形態である。
【0021】
この場合、当業者であれば、粘度、添加剤などの観点から、選択したキットに最も適切な製剤を採用することができる。
【0022】
表現「併用での適用」は、組成物を同時または任意の順番に皮膚に適用する(例えば、BPOを含む医薬組成物Bの適用を、アダパレンを含む医薬組成物Aの適用に先立って行う)が、1時間未満の時間間隔内、好ましくは30分未満、好ましくは15分未満、より好ましくは5分未満、なおさらに好ましくは1未満の時間間隔内で適用することが意図されていることを意味する。
【0023】
したがって、本発明の主題はまた、少なくとも2つの構成品:
− アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩を少なくとも含む第一の構成品、および
− 過酸化ベンゾイルを含む第二の構成品
を含むキットの形態の構成であり、これらの2つの構成品は、皮膚、粘膜、および/または外皮への併用適用用である。
【0024】
組成物はAおよびBは、好ましくは、1日当たり単回の皮膚局所適用が意図されている。
【0025】
治療は、患者および患者の座瘡の重症度次第で、さまざまな持続期間で行われる。したがって、治療期間は、数週間〜数ヶ月間にわたってよい。好適な治療期間は、少なくとも2週間であり、好ましくは1〜6ヶ月であり、より好ましくは約3ヶ月間の持続期間が好ましい。治療の持続期間は、必要に応じて延長することができる。
【0026】
本発明において有用な医薬組成物はいずれも、0.01%〜2%、好ましくは0.05%〜0.5%、優先的には、0.1%〜0.3%のアダパレンを含み、0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜10%のBPO、より好ましくは2%〜5%のBPOを含み、優先的には2.5%のBPOを含む。
【0027】
パーセンテージはいずれも、組成物の総重量に対して重量で示す。
【0028】
アダパレン:BPOの比は、1:1〜1:200であり、反対に、BPO:アダパレンの比は、1:1〜1:200である。好ましくは、アダパレン:BPOの比は、1:1〜1:200であり、アダパレン:BPOの比は、1:1〜1:25である。
【0029】
好ましくは、2つの活性成分の併用効果は、少なくとも相加効果であり、優先的には、増強効果または相乗効果である。用語「増強効果」および「相乗効果」は、2つの活性成分のそれぞれ単独の投与によって得られる効果の加算によって得られる効果より大きな治療効果(成功の程度)を意味する。
【0030】
2つの活性成分を同一の医薬組成物中で組み合わせる場合、アダパレンとBPOとを、医薬組成物中に相乗効果を奏する量で(すなわち、座瘡病変および患者の病態に対する相乗効果または増強効果が観察されるような量で)存在させる。好ましくは、医薬組成物は、0.1%のアダパレンと2.5%のBPOとを含む。
【0031】
組成物AおよびBを個別に用いる場合、アダパレンとBPOとを、それぞれ組成物Aおよび組成物Bに、とりわけ、組成物を等量で併用適用する場合に相乗効果を奏する量で(すなわち、座瘡病変および患者の病態に対する相乗効果または増強効果が観察されるような量で)存在させる。好ましくは、組成物Aは0.1%のアダパレンを含み、組成物Bは2.5%のBPOを含む。
【0032】
この点、実施例により、アダパレンとBPOとの相乗効果のおかげで、本発明により、一般な座瘡および特に座瘡病変の治療に対するより高い有効性、ならびに単剤治療と比較してより速い作用の発現がもたらされることが実証されている。
【0033】
本発明による有用な医薬組成物は、軟膏、エマルション(好ましくはクリーム、ミルク、またはポマードの形態)、粉末、含浸パッド、溶液、ゲル、スプレー、ローション、または懸濁液の形態であってよい。これらはまた、マイクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁液の形態、脂質もしくはポリマー小胞の形態、またはポリマーパッチの形態、および/または制御放出を可能にするヒドロゲルの形態であってよい。これらの組成物は、無水形態、水性形態、またはエマルションの形態であってよい。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、医薬組成物は、ゲル、クリーム、または溶液(ローションと呼ばれる)の形態である。
【0035】
好ましくは、アダパレンとBPOとを組み合わせた医薬組成物、または医薬組成物Aおよび/またはBは、ゲルである。
【0036】
本発明において有用な医薬組成物は、不活性な添加剤またはこれらの添加剤の組合せを含有していてもよい。これらの添加剤は、例えば、
− 湿潤剤;
− テクスチャ強化剤;
− 保存料(例えば、パラ-ヒドロキシ安息香酸エステルなど);
− 安定剤;
− 湿潤調整剤;
− pH調整剤;
− 浸透圧調整剤;
− 乳化剤;
− UV-AおよびUV-Bスクリーニング剤;ならびに
− 酸化防止剤(例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、もしくはブチルヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール、または特定の金属キレート剤など)
である。
【0037】
言うまでもなく、当業者であれば、本発明に伴う本質的な有利な特性に、その添加が悪影響を及ぼさないか、あるいは実質的に悪影響を及ぼさないように注意して、これらの組成物に添加する追加の化合物を選択することができる。
【0038】
1つの特定の実施態様では、アダパレンを含む医薬組成物Aは、カーボマー940(BF Goodrich Carbopol 980)およびプロピレングリコールから選択される1種以上の成分を特に含有する水性ゲルであってよく、あるいはペルヒドロスクアレン、シクロメチコーン、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、およびメチルグルコースセスキステアレートから選択される1種以上の成分を特に含有するクリームであってよく、あるいはポリエチレングリコールをベースとする「アルコール性ローション」溶液であってよい。
【0039】
アダパレンとBPOとを含む有用な医薬組成物は、国際公開第03/055472号にさらに記載されている。このような組成物の実施例は、活性成分であるアダパレンおよびBPOに加えて:
− 5%〜25%の水;
− 0%〜10%、好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0.5%未満の湿潤性液体界面活性剤;
− 0%〜10%の浸透促進剤;および
− pH非依存性ゲル化剤を含む水性相
を含む。
【0040】
1つの好ましい態様では、アダパレンとBPOとを含む好ましい医薬組成物は、以下の配合を有する水性ゲルである:
− 2.5%のBPO;
− 0.1%のアダパレン;
− 0.10%のEDTA二ナトリウム;
− 4.00%のグリセリン;
− 4.00%のプロピレングリコール;
および、好ましくは、
− 0.05%のドキュセートナトリウム;
− 0.20%のポロキサマー124;
− 4.00%のナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマーおよびイソヘキサデカンおよびポリソルベート80;
− pHを5とするために十分な量のNaOH。
【0041】
標的とする座瘡には、全ての形態の座瘡が含まれ、尋常性座瘡、面皰、多型性座瘡、結節嚢腫性座瘡、集簇性座瘡、および二次的座瘡(例えば、日光性座瘡、薬物性座瘡または職業性座瘡)が含まれる。座瘡は、特に、軽度から重度の症状の座瘡であってよく、好ましくは軽度から中等度の症状の座瘡であってよい。本発明の組成物は、ファーストライン治療として投与することができ、Korkutらにより記載されている条件にしたがうアダパレンおよび/またはBPOの投与を含む他の特定の治療の不成功の後で投与することもできる。
【0042】
アダパレンとBPOとの組合せまたは併用により、炎症性座瘡病変だけでなく非炎症性座瘡病変の数を減少させること、および患者の病態の改善を観察することが可能になる。「増強効果」または「相乗効果」が観察される。実施例において記述するこの増強効果は、病変数の減少、ならびに、完治した患者(きれい)およびほとんど治った患者(ほとんどきれい)のパーセンテージにおいて、固定用量のアダパレンおよびBPOの組み合わせの、この組み合わせと同じ用量で個々に適用される活性剤に対する優位性の大きさによって示される。
【0043】
さらに、実施例で示したアダパレンとBPOとの組合せの増強効果の結果は、個々に適用された活性物質について得られた結果とは統計的に異なっている。
【0044】
したがって、アダパレンとBPOとの組合せまたは併用は、炎症性および/または非炎症性座瘡病変の数を減少させるために特に有用である。好ましくは、減少は、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは、減少は少なくとも約60%である。同様に、実施例において、病変全体の減少が、35%〜80%、好ましくは50%〜70%であることが実証されている。
【0045】
別の態様では、本発明は、
(i)少なくとも1つの区画を区切っている容器であって、前記容器が、閉じる部材によって閉じられている容器;および
(ii)前記区画内に入れた、アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩と過酸化ベンゾイルとを含む医薬組成物
を含む医薬組立体(製品)に関する。
【0046】
容器は、任意の適切な形態であってよい。容器は、特に、ボトル、チューブ、ジャー、ケース、缶、サシェ、または箱の形態であってよい。
【0047】
好ましくは、容器は、2つの区画を含み、これらの区画のそれぞれは、組成物Aまたは組成物Bのいずれかを含む。
【0048】
閉じる部材は、取り外し可能なストッパー、ふた、カバー、切り取りストリップ、またはキャップの形態、特に、容器に固定された主部とこの主部に関節でつながったキャップを含むタイプの形態であってよい。閉じる部材は、容器の密閉を確実にする部材、特にポンプ、バルブ、またはクラッパー(clapper)の形態であってよい。
【0049】
閉じる部材は、ねじで締めることによって容器に連結されていてよい。あるいは、閉じる部材と容器との連結は、ねじで締めること以外、特に、差し込み機構によって、クリック締め付け、グリップ、溶接、接着、または磁力によって行われ得る。用語「クリック締め付け」は、特に、材料の縁またはビードの一部(特に、閉じる部材)の弾性変形を伴う通過にかけ、次いで縁またはビードが通過した後に前記部分が弾性的に応力がかかっていない位置に戻ることによる任意のシステムを意味する。
【0050】
容器は、少なくとも部分的に熱可塑性材料でできていてよい。熱可塑性材料の例として、ポリプロピレンおよびポリエチレンを挙げることができる。
【0051】
あるいは、容器は、非熱可塑性材料、特に、ガラスまたは金属(もしくはアロイ)でできていてよい。
【0052】
容器は、剛壁、または変形可能な壁(特に、チューブまたはチューブボトルの形態のもの)を有していてよい。
【0053】
容器は、組成物の分配を引き起こすかまたは容易にするための手段を含んでいてよい。例えば、容器は、変形可能な壁を有していてよく、これにより組成物が容器内の加圧に応じて外に出るようにすることができる。この加圧は、容器の壁を弾性的(または非弾性的)に強く握ることによって引き起こされる。あるいは、特に、製品がスティックの形態である場合には、このスティックをピストン機構によって動かすこともできる。スティック(特に、メイクアップ製品のスティック)の場合には、容器は、メカニズム、特にウィッシュボーンメカニズム、またはネジ山の付いた枝、またはらせん状の斜面を有するを有するメカニズムを含んでいてよく、これによってスティックを開口部の方向に動かすことができる。このようなメカニズムは、例えば、仏国特許第2806273号または同第2775566号に記載されている。液体製品のためのこのようなメカニズムは、仏国特許第2727609号に記載されている。
【0054】
以下の実施例は、本発明を、その範囲を限定することなく実証する。
【実施例】
【0055】
[実施例1]:臨床研究結果
有効性を確認するための臨床研究を、アダパレンと過酸化ベンゾイルとを組み合わせた局所用ゲルについて実施した。
このゲルは、以下の配合を有する(重量/総重量の%で表す):
アダパレン 0.10%
過酸化ベンゾイル 2.50%
アクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムとを含むコポリマー 4.00%
ドキュセートナトリウム 0.05%
EDTA二ナトリウム 0.10%
グリセリン 4.00%
ポロキサマー124 0.20%
プロピレングリコール 4.00%
精製水 100%とするための残量。
【0056】
[プロトコル]
臨床研究は、多施設共同、無作為の、平行グループにおける二重盲検の研究であり、上記製剤の忍容性および有効性を、固定併用剤の配合と同じ配合のゲル中に同じ用量に置かれたその個々の活性物質(個々の製剤を「モナド(monads)」と呼ぶ)との比較、およびゲル賦形剤(プラセボ製剤)との比較で評価するためのものである:
配合は、アダパレン(0.10%)、BPO(2.50%)、および賦形剤である。
【0057】
処置はいずれも、座瘡に罹患した517名の患者に、12週間の間、1日1回適用された。
【0058】
主要な有効性の基準は以下の通りであった:
− 成功の程度。評価スケールにおいて、「きれい」であると判断された患者〔すなわち、この患者は、患者の病態の改善を反映して、もはや座瘡がない(面皰も炎症性病変もない)〕または「ほとんどきれい」であると判断された患者のパーセンテージにより定義される。;
− 12週間の治療後の炎症性および非炎症性の病変の減少パーセンテージ。
【0059】
[結果]:
結果を下記の表に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
1)本研究の主要な基準4つ:3つの病変タイプのパーセンテージとしての成功および改善の程度については、固定併用剤が、2種のモナドおよび賦形剤に対して統計的に優れていることが分かった。
【0062】
2)賦形剤(V)として用いたゲルの効果を、固定併用剤(C)の効果から差し引くと、固定併用剤の正味の臨床的有益性(C-V)は、アダパレン(A)およびBPO(A)の効果から賦形剤の効果を差し引いた後の個々の物質それぞれの正味の臨床的有益性の合計に対して数値的に優れている。すなわち、(C-V)>(A-V)+(B-V)である。
【0063】
これらの結果は、増強効果を系統的に明らかにしている。正味の有益性は、アダパレン+BPOの組合せゲルが、成功の程度の点でアダパレンとBPOの加算に対して優っているという結果を支持しているからである(組合せは28%であり、これに対してアダパレン、BPO、および賦形剤は16%、15%、および10%である)。この場合、上記式は、(28-10)>(16-10)+(15-10)、すなわち18>11であり、式が成り立つ。
【0064】
同様に、アダパレン+BPOの組合せゲルは、全病変の数の減少(炎症性および非炎症性病変のパーセンテージの減少)に関する、個々の活性物質および賦形剤と比較した有効性の点で、数値的に優れている。
【0065】
アダパレンとBPOとを一緒にすることによる増強効果は、以下のように観察されている。併用剤については病変の51%の減少が観測されており、これに対して、アダパレン単独については35%、BPO単独については36%、賦形剤については31%の減少が観測されているため、上記式で正味の有効性を表すと、(51-31)>(35-31)+(36-31)、すなわち、20>9であり、式が成り立つ。
【0066】
[実施例2]:Balb/cマウスでの耳の浮腫モデルにおける抗炎症性の評価
この研究は、45匹(1グループに5匹)の9週齢の雌性Balb/c ByJIcマウスを使って実施した。
アセトン中に0.01%の濃度で溶解させたTPA 20μlを単回適用することによって、浮腫を誘発させた。
治療は、TPAの0.01%溶液に溶解させた試験化合物の単回局所適用による投与(グループ3、4、5、6、および7)、ならびにTPA(0.01%)+BPO溶液に溶解させた試験化合物の単回局所適用による投与(グループ8、9、および10)であった。
治療の活性は、T + 6時間での耳の厚さを使った炎症の評価によって測定した。
【0067】
結果を下記表および図5に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
[結論]
TPA溶液中に希釈させた実薬対照(positive control)CD0153(0.01%)の単回局所適用後に、耳の厚さの92%の低下が観察された。2.5%、5%、および10%のBPOは、わずかに抗炎症効果を有し、TPAで誘発された耳の浮腫を、それぞれ16%、24%、および40%低下させる。この効果は、統計的に有意な、用量バランスのとれた効果(0.42)である。
アダパレン単独は、低い抗炎症効果を有し、TPAで誘発された耳の浮腫を、13%低下させる。
BPOの濃度の変化を、アダパレンと組み合わせて測定した。2.5%、5%、および10%のBPOと、0.1%のアダパレンとの併用剤は、TPAで誘発された耳の浮腫を、それぞれ48%、63%、および59%低下させる。組合せ治療は、最後のグループの用量効果がTPA単独のグループを考慮すると有意ではない(0.1089)にもかかわらず、BPO単独より統計的により効果的である(0.0015)。
0.1%のアダパレンは、BPOを用いて得られる抗炎症性効果を、BPOのいずれの試験用量においても増加させる。
より低いBPOの用量が、組合せの用量依存性の効果を明らかにする試みに用いられるであろう。
これらの結果は、単独で適用された個々の化合物と比較して、組合せの抗炎症効果が潜在的、相乗的であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩の使用であって、過酸化ベンゾイル(BPO)と組合せるかまたは併用して投与して座瘡病変の数を低減させることを目的とした医薬組成物の製造のための使用。
【請求項2】
前記医薬組成物が、医薬品として許容可能な媒体中に、
(i)アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩から選択される少なくとも1種の化合物;および
(ii)過酸化ベンゾイル
を含む固定併用剤である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記座瘡病変が、炎症性型および/または非炎症性型である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
炎症性座瘡病変および/または非炎症性座瘡病変の数の減少が、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
アダパレンおよび過酸化ベンゾイルが、前記医薬組成物中に相乗効果を奏する量で存在する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬組成物が、0.1%のアダパレンと、2.5%の過酸化ベンゾイルとを含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬組成物がゲルである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬組成物が局所適用用である、請求項2〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬組成物が、アダパレンを含む組成物Aの形態であり、過酸化ベンゾイルを含む組成物Bと併用して適用することを目的とする組成物である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
アダパレンおよび過酸化ベンゾイルが、それぞれ、組成物AおよびB中に相乗効果を奏する量で存在する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
組成物Aが0.1%のアダパレンを含み、組成物Bが2.5%の過酸化ベンゾイルを含む、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
組成物AおよびBがゲルである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
組成物Aおよび組成物Bが、キットの形態で存在する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記キットが、2つの医薬組成物AまたはBのうちの1つがそれぞれ入った2つの隔離された区画を有する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記キットが、1つの提供形態中の2つの分離したパッケージのなかに、2つの組成物AおよびBからなる少なくとも1つの組合せを含む、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬組成物が、組成物Aであり、組成物Aが、任意の順番で、あるいは順次に、1時間未満の時間間隔で、組成物Bと共に適用される、請求項9〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
組成物AおよびBを局所適用用として用いる、請求項9〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記医薬組成物が、炎症性座瘡病変の数を低減させることを目的とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記医薬組成物が、非炎症性座瘡病変の数を低減させることを目的とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
過酸化ベンゾイルの作用を増強するための薬剤としての、アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩の使用。
【請求項21】
少なくとも2つの構成品:
− アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩を少なくとも含む第一の構成品、および
− 過酸化ベンゾイルを含む第二の構成品
を含むキット。
【請求項22】
(i)少なくとも1つの区画を区切っている容器であって、前記容器が、閉じる部材によって閉じられている容器;および
(ii)前記区画内に入れた、アダパレンもしくは医薬品として許容可能なその塩と、過酸化ベンゾイルとを含む医薬組成物
を含む製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−542779(P2009−542779A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518901(P2009−518901)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057207
【国際公開番号】WO2008/006888
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】