説明

廃コンクリート破砕装置

【課題】廃コンクリートに廃鉄塊を含んでいても、破砕駆動ロール及び破砕従転ロールの回転を中断させることなく、破砕作業を継続して行うことができ、破砕作業を効率的に行うことができる廃コンクリート破砕装置を提供する。
【解決手段】廃コンクリートが投入される破砕室と、上記破砕室内に回転するように軸支された破砕駆動回転体と、上記破砕室内にて回転し、かつ外周面が上記破砕駆動回転体に対して遠ざかる方向及び所定の間隔をおいて近づく水平方向へ移動可能に設けられた破砕従転回転体と、上記破砕駆動回転体に駆動連結されて回転駆動する駆動部材と、本体フレーム上にて上記水平方向へ移動可能に支持され、上記破砕従転回転体を回転可能に軸支する軸受け部材が固定された可動体と、可動体を、上記破砕荷重力で押圧付勢する弾性押圧部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物(本発明において、コンクリート構造物とは、コンクリート建造物、コンクリート舗装道路、コンクリート橋梁等の各種コンクリート製の構造物を意味する。)の解体に伴って排出される廃コンクリートを所望の大きさに破砕する廃コンクリート破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石やコンクリートの塊を所望の大きさに破砕する装置として、例えば特許文献1に示すロールクラッシャー等の破砕装置が知られている。該ロールクラッシャーは、破砕室内に、電動モータ等の駆動手段に連結された破砕駆動ロール及び破砕従転ロールを、相互間に破砕しようとする大きさに応じた微小間隔をおいて回転可能にそれぞれ軸支した構造からなる。
【0003】
そしてある程度の大きさに破砕されたコンクリート塊や石を破砕室内に投入すると、回転駆動される破砕駆動ロールとこれに伴って従転する破砕従転ロールによりコンクリート塊や石を加圧して上記微小間隔に応じた大きさに破砕している。
【0004】
コンクリート構造物の解体に伴って排出される廃コンクリートは、所望の大きさに破砕して舗装する際の骨材や、敷石等として再利用しているが、上記したロールクラッシャーにより廃コンクリートを所望の大きさに破砕する場合には、以下の問題を有している。
【0005】
即ち、廃コンクリートは、大部分がコンクリートであるが、構造物によっては、コンクリートの他に鉄筋材や鉄骨材等のようにコンクリートより高い破砕強度の異物を含んでいる。このため、上記したクラッシャーにより廃鉄塊等の異物を含んだ廃コンクリートを破砕する場合には、破砕駆動ロール及び破砕従転ロールでコンクリートと共に異物を破砕することができず、破砕駆動ロール及び破砕従転ロール間に噛合って(挟まって)破砕駆動ロールの回転不能を招いて破砕作業を継続することができなかった。
【0006】
破砕駆動ロール及び破砕従転ロール間に異物が噛合って破砕駆動ロールの回転駆動が停止した場合で、電動モータへの電力供給が継続されると、過電流により電動モータの磁コイルが焼損して部品自体を破損する恐れがあると共に、また両ロール間から異物を取り除かなければならず、その際の作業に手間がかかって破砕作業を効率的に行えない問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−225351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、廃鉄塊等の異物を含んだ廃コンクリートを破砕する際には、コンクリートと一緒に異物を破砕することができず、異物が破砕駆動ロール及び破砕従転ロール間に噛合い、破砕作業の中断が余儀なくされる点にある。また、破砕駆動ロール及び破砕従転ロール間に異物が噛合った際には、その都度、破砕作業を中断して取除かなければならず、破砕作業を効率的に行えない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の破砕荷重力で破砕可能なコンクリート材及び上記破砕荷重力では破砕不能な異物を含んだ廃コンクリートを所望の大きさに圧縮破砕する廃コンクリート破砕装置において、廃コンクリートが投入される破砕室と、上記破砕室内に回転するように軸支された破砕駆動回転体と、上記破砕室内にて回転し、かつ外周面が上記破砕駆動回転体に対して遠ざかる方向及び所定の間隔をおいて近づく水平方向へ移動可能に設けられた破砕従転回転体と、上記破砕駆動回転体に駆動連結されて回転駆動する駆動部材と、本体フレーム上にて上記水平方向へ移動可能に支持され、上記破砕従転回転体を回転可能に軸支する軸受け部材が固定された可動体と、可動体を、上記破砕荷重力に応じた圧力で押圧付勢する弾性押圧部材とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、廃コンクリートに廃鉄塊の異物を含んでいる場合であっても、破砕駆動ロール及び破砕従転ロールの回転を中断することなく、破砕作業を継続して行うことができ、破砕作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】廃コンクリート破砕装置の全体を示す斜視図である。
【図2】破砕従転ローラの移動構造を示す部分断面図である。
【図3】廃コンクリートの通常の破砕状態を示す説明図である。
【図4】破砕駆動ロール及び破砕従転ロール間に鉄塊等の異物が噛合った際の状態を示す説明図である。
【図5】本発明の変更例を示す説明図である。
【図6】本発明の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、異物を含んだ廃コンクリートが破砕駆動回転体及び破砕従転回転体間に導入されると、弾性押圧部材の弾性力に抗して可動体を移動させることにより破砕従転回転体を、破砕駆動回転体から遠ざかる方向へ移動して両回転体の相互間隔を拡大して異物の通過を可能にさせることを最良の形態とする。
【実施例1】
【0013】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1及び図2において、廃コンクリート破砕装置1の本体フレーム3には上部に投入開口部5a及び下部に排出開口部5bがそれぞれ形成された破砕室3が固定され、投入開口部5aに応じた破砕室5の上面には投入ホッパー7が固定されている。また、排出開口部5bに応じた破砕室5の下面には排出ホッパー6が固定されている。
【0014】
上記破砕室5の一側内には水平方向に軸線を有した破砕駆動回転体としての破砕駆動ロール9が配置され、該破砕駆動ロール9の軸9aは破砕室5の側壁に形成された透孔(図示せず)を挿通して外部へ突出している。そして外部に突出した軸9aの両端部は本体フレーム3に固定された軸受け部材11にそれぞれ軸支されると共に一方の軸受け部材11から突出した軸9aの軸端部には大径スプロケット13が固定されている。
【0015】
大径スプロケット13側の本体フレーム3には駆動部材としての電動モータ15が固定され、該電動モータ15の回転軸には小径スプロケット17が固定され、該小径スプロケット17及び大径スプロケット15には駆動力伝達部材としての駆動チェーン19が掛け渡されている。
【0016】
一方、上記破砕室5の他側内には水平方向に軸線を有した破砕従転回転体としての破砕従転ロール21が、破砕駆動ロール9の軸線と平行で、外周面との間に、廃コンクリート41の所望の破砕大きさに応じた間隔をおいて相対するように配置されている。該破砕従転ロール21における軸21aの両端部は破砕室5の側壁に水平方向へ延出するように形成された長孔(図示せず)を挿通して外部へそれぞれ突出し、破砕駆動ロール9に対して遠ざかる方向及び近づく方向へ移動可能に構成される。
【0017】
外部へ突出した軸21aの両端部に応じた本体フレーム3には上面に破砕駆動ロール9から遠ざかる水平方向へ延出するガイドレール23が固定された支持体25がそれぞれ固定され、各ガイドレール23には可動体27が水平方向へ移動するようにそれぞれ支持されている。そして上記した軸21aの軸両端部は各可動体27の破砕駆動ロール9側に固定された軸受け部材29にそれぞれ軸支されている。
【0018】
上記各支持体25の破砕駆動ロール9と反対側端部には水平方向へ延出する取付け軸31の軸端部がそれぞれ固定されている。各取付け軸31は上記可動体27の上記破砕駆動ロール9と反対側端部に固定された押圧部材33に形成された透孔33aを挿通して外側へそれぞれ突出している。そして各取付け軸31の軸端部に固定された固定部材35と押圧部材33間に応じた取付け軸31には弾性押圧部材としての圧縮ばね37が装着されている。
【0019】
該圧縮ばね37は上記可動体27、従って破砕従転ロール21を破砕駆動ロール9へ近付く方向へ、廃コンクリート41におけるコンクリートの破砕荷重力より若干大きい力の弾性力で付勢するように圧縮変形されている。
【0020】
なお、上記破砕駆動ロール9及び破砕従転ロール21はその外周面に凹凸部9b・21bを有し、凹凸部9b・21bが投入された廃コンクリート41に係合して両ロール間へ巻き込むようにしている。
【0021】
次に、上記のように構成された廃コンクリート破砕装置1による廃コンクート材41の破砕作用を説明する。
上記したように廃コンクリート41は大部分がコンクリートであるが、構造物によっては、例えばコンクリートより破砕荷重が大きい鉄筋や鉄骨等の異物41aを含んでいる。先ず、投入された廃コンクリート41のコンクリートを破砕する場合に付いて説明すると、破砕室3内にある程度の大きさに予め破砕された廃コンクリート41が投入されると、廃コンクリート41のコンクリートは回転駆動する破砕駆動ロール9の凹凸部9bに係合して破砕従転ロール21との間に導入されて破砕従転ロール21を従転させながら破砕駆動ロール9との協働により加圧して両ロール間の間隔に応じた大きさに破砕される。
【0022】
このとき、破砕従転ロール21はコンクリートの破砕荷重力より若干大きい弾性力の圧縮ばね37により破砕駆動ロール9側へ付勢されているため、コンクリートを破砕する際には破砕従転ロール21が破砕駆動ロール9から遠ざかる方向へ移動することなく、廃コンクリート41を両ロール9・21間の間隔に応じた大きさへ破砕する。そして所望の大きさに破砕された破砕コンクリート41bは排出ホッパー6の下方に配置された回収容器(図示せず)内に回収される。(図3参照)
【0023】
なお、上記のように破砕された破砕コンクリート41bは、水洗して付着したコンクリート粉を除去した後、篩装置(図示せず)によりそれぞれの粒度へ選別して骨材や敷き材として使用される。
【0024】
一方、破砕駆動ロール9及び破砕従転ロール21の相互間隔より大きい異物41aを含んだ廃コンクリート41を破砕する際に付いて説明すると、異物41aを含んだ廃コンクリート41が両ロール9・21間に導入されると、廃コンクリート41のコンクリートは上記と同様に破砕されるが、該異物41a自体、コンクリートの破砕荷重力で破砕することができないため、両ロール9・21間を通過することができない。
【0025】
この場合にあっては、両ロール9・21間に上記した異物41aが位置した際には該異物41aにより破砕従転ロール21を圧縮ばね37の弾性力に抗して破砕駆動ロール9から遠ざかる方向へ移動して両ロール9・21間の間隔を拡大して通過を可能にさせる。なお、上記したように異物41aは廃コンクリート41の一部として含まれているものであるが、図4においては説明の便宜上、廃コンクート材41の全体が異物41aであるとして示す。
【0026】
これにより異物41aが破砕駆動ロール9及び破砕従転ロール21の相互間隔より大きい場合であっても、両ロール9・21間の間隔を拡大して異物41aの通過を可能にし、破砕駆動ロール9の回転駆動が停止されるのを回避して破砕作業を継続させる。(図4参照)
【0027】
本実施例は、廃コンクリート41に廃鉄塊等の異物41aが含まれている場合であっても、破砕駆動ロール9及び破砕従転ロール21間に異物41aが導入された際には該異物41aにより圧縮ばね37の弾性力に抗して破砕従転ロール21を破砕駆動ロール9から遠ざかる方向へ移動して両ロール9・21間の間隔を拡大して異物41aの通過を可能にして破砕作業を継続的に行うことができる。
【0028】
上記説明は、破砕従転ロール21を圧縮ばね37の弾性力により破砕駆動ロール9側へ付勢してコンクリート材41aの破砕を可能にする一方、コンクリート材41aより硬い異物41aが両ロール9・21間に導入された際には破砕従転ロール21を圧縮ばね37の弾性力に抗して破砕駆動ロール9から遠ざかる方向へ移動できるようにして両ロール9・21間の間隔を拡大することにより破砕作業を継続して行える構成としたが、図5に示すように弾性押圧部材を圧縮ばね37に代えてエアーシリンダとしてもよい。
【0029】
即ち、支持体25の端部に設けられた取付け板51に弾性押圧部材としてのエアーシリンダ53の基端部を固定すると共に該エアーシリンダ53の作動ロッド53aを可動体27に押し当てて取付ける。そして上記エアーシリンダ53を、コンクリート材41aの破砕荷重より若干高い圧力になるエアーを供給して作動し、伸長する作動ロッド53aにより可動体27、従って破砕従転ローラ21を破砕駆動ローラ9に近づく方向へ付勢する。該エアーシリンダ53は作動圧以上の力が作用した際には、作動ロッド53aが縮小する方向へ移動するクッション機能を有している。
【0030】
そして両ロール9・21間に廃鉄塊と等の異物41aが導入された際にはエアーシリンダ53の作動圧に抗して破砕従転ローラ21を破砕駆動ローラ9から遠ざかる方向へ移動して両ロール9・21間の間隔を拡大させることにより異物41aの通過を可能にする。
【0031】
なお、エアーシリンダ53の取付け態様としては、基端部を支持台25の端部に固定すると共に作動ロッド53aを可動体27に固定し、該エアーシリンダ53を、作動ロッド53aが縮小する方向へ作動する構成であってもよい。
【0032】
また、上記説明は破砕駆動ロール9及び破砕従転ロール21の相互間隔を固定的にしたが、図6に示すように本体フレーム3に固定された起立部61に水平方向に軸線を有した位置調節ボルト63を位置調節可能に取り付け、該位置調節ボルト63と可動体27における破砕駆動ロール9側の端面に対する当接幅を変更可能にすることにより破砕駆動ロール9及び破砕従転ロール21の相互間隔を任意に変更することができる。なお、図中の符号65は固定ナットである。
【符号の説明】
【0033】
1 廃コンクリート破砕装置
3 本体フレーム
5 破砕室
5a 投入開口部
5b 排出開口部
6 排出ホッパー
7 投入ホッパー
9 破砕駆動回転体としての破砕駆動ロール
9a 軸
11 軸受け部材
13 大径スプロケット
15 駆動部材としての電動モータ
17 小径スプロケット
19 駆動チェーン
21 破砕従転回転体としての破砕従転ロール
21a 軸
23 ガイドレール
25 支持体
27 可動体
29 軸受け部材
31 取付け軸
33 押圧部材
33a 透孔
35 固定部材
37 弾性押圧部材としての圧縮ばね
41 廃コンクリート
41a 異物
41b 破砕コンクリート
51 取付け板
53 エアーシリンダ
53a 作動ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の破砕荷重力で破砕可能なコンクリート材及び上記破砕荷重力では破砕不能な異物を含んだ廃コンクリートを所望の大きさに圧縮破砕する廃コンクリート破砕装置において、
廃コンクリートが投入される破砕室と、
上記破砕室内に回転するように軸支された破砕駆動回転体と、
上記破砕室内にて回転し、かつ外周面が上記破砕駆動回転体に対して遠ざかる方向及び所定の間隔をおいて近づく水平方向へ移動可能に設けられた破砕従転回転体と、
上記破砕駆動回転体に駆動連結されて回転駆動する駆動部材と、
本体フレーム上にて上記水平方向へ移動可能に支持され、上記破砕従転回転体を回転可能に軸支する軸受け部材が固定された可動体と、
可動体を、上記破砕荷重力に応じた圧力で押圧付勢する弾性押圧部材と、
を備えた廃コンクリート破砕装置。
【請求項2】
請求項1において、弾性押圧部材は、上記破砕荷重力に応じた弾性力を有した圧縮ばねとした廃コンクリート破砕装置。
【請求項3】
請求項1において、弾性押圧部材は、上記破砕荷重力に応じた作動圧力のエアーシリンダとした廃コンクリート破砕装置。
【請求項4】
請求項1において、破砕駆動回転体及び破砕従転回転体は、外周面に凹凸部を設けた廃コンクリート破砕装置。
【請求項5】
請求項1において、可動体に当接して破砕駆動回転体に近づく方向に対する移動量を調整するストッパー部材を設け、該破砕駆動回転体及び破砕従転回転体間の間隔を変更可能にした廃コンクリート破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−20039(P2011−20039A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166631(P2009−166631)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(502038358)
【Fターム(参考)】