説明

廃スラッジの燃料化方法及び燃料化システム

【課題】低コストで、効率よく廃塗料スラッジ等の廃スラッジをセメント焼成炉等の燃焼炉用燃料として燃料化する。
【解決手段】廃スラッジSと液体燃料Lとを混合する混合装置4と、廃スラッジを混合装置に供給する第1の供給装置3、7と、液体燃料を混合装置に供給する第2の供給装置8、10と、混合装置によって混合された混合物Mを破砕する破砕装置6と、破砕装置によって破砕された破砕物Cを燃焼炉20に導入する第3の供給装置9、11とを備える廃スラッジの燃料化システム1等。廃スラッジと液体燃料とを混合し、混合によって得られた混合物を破砕し、破砕によって得られた破砕物を燃焼炉に導入して燃焼させる。第1の供給装置は、ピストンポンプと、混合装置の内部まで挿入される供給管とを備え、供給管の端部に、廃スラッジを供給する際に、廃スラッジを分散させる分散板7aを備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃スラッジの燃料化方法及び燃料化システムに関し、特に、廃塗料スラッジ等の粘性の高い廃スラッジをセメント焼成炉等の燃焼炉用燃料として燃料化するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造工程において、各種廃棄物を燃料の代替として用い、廃棄物の処理に資するとともに、セメント製造における高価な化石燃料の原単位を低減する試みがなされている。例えば、特許文献1には、廃プラスチックと廃油とを混合し、そのスラリー状混合物を、ロータリーキルンの主燃料(微粉炭)バーナの中心に挿入した補助燃料バーナに送給し、補助燃料バーナの補助燃料吹出口からロータリーキルン内に吹き出して燃焼させるセメントクリンカの製造方法等が提案されている。
【0003】
一方、近年、廃塗料スラッジ、廃溶剤蒸留残渣、廃グリス、オイルスラッジ、廃インク及び廃白土等の廃スラッジは、焼却処理等されていたが、COを抑制するために、単なる焼却処理ではなく、その保有する発熱量を有効活用した燃料化等のサーマルリサイクルが求められている。尚、廃スラッジとは、一般には、汚泥等、下水処理、工場廃水処理等を行う際に発生する有機性の沈殿物をいうが、本明細書においては、液体中に固体が混在している廃棄物、又は部分的又は全体的に高粘度のものからなる廃棄物で、可燃性のものをいう。この廃スラッジの中には、粘性が高く、大塊も混在するため、取り扱いが困難であったり、セメント焼成炉等に供給する際に供給管に詰まるなどの不具合が発生するため、セメント製造工程において燃料の代替とすることが困難であるものが多い。
【0004】
ところで、特許文献2には、破砕された各種廃棄物をミキサーで混錬して高粘度廃棄物とし、ミキサー内の高粘度廃棄物の粘度に応じて、粘度調整剤タンク内に収容されている粘度調整剤としての廃液スラッジを個別にミキサー内に供給し、ミキサー内の高粘度廃棄物の粘度をポンプ圧送に適した状態に調整した後、焼成炉にポンプで圧送して燃焼させる装置等が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、精製廃棄物、アルミニウム精錬プロセスからの廃棄物、塗料廃棄物その他の産業廃棄物のような、液状で非水性の成分、固体成分及び水性成分を含む廃棄ストリーム燃料組成物を燃料化する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−192406号公報
【特許文献2】特許第3846254号公報
【特許文献3】特表2002−536493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の装置等を利用して、各種廃棄物をセメント焼成炉で焼成する場合には、複数種類の廃棄物を同時に処理できるという利点はあるものの、廃棄物に対して前処理として破砕処理を施し、破砕された廃棄物を混錬し、さらに、廃棄物の粘度に応じて粘度調整剤を添加する必要があるため、処理装置が大掛かりなものとなり、装置及び運転コストが高騰する。
【0008】
また、特許文献3に記載の燃料化方法においても、産業廃棄物に含まれる塊状の固形物を粉砕し、ポンピング可能とするのに十分な液状物を得るためにボールミルを用いるため、装置及び運転コストが高騰するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、低コストで、効率よく廃塗料スラッジ等の廃スラッジをセメント焼成炉等の燃焼炉用燃料として燃料化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、廃スラッジの燃料化方法であって、廃スラッジと液体燃料とを混合し、該混合によって得られた混合物を破砕し、該破砕によって得られた破砕物を燃焼炉に導入し、該燃焼炉で燃焼させることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、廃スラッジと液体燃料とを混合するため、受け入れた廃スラッジの粘度が高い場合でも、液体燃料との混合で粘度を下げることができるとともに、性状が均質化して取り扱いを容易にすることができるため、廃スラッジを容易に燃料化することが可能となる。また、燃料化にあたって、廃スラッジに粘度調整剤等を用いた前処理を施す必要がないため、運転コストを低減することもできる。さらに、混合物を破砕した後、燃焼炉に導入するため、廃スラッジに塊状の物が混入している場合でも、燃焼炉への供給が容易になるとともに、廃スラッジと液体燃料との混合物の性状がより均質化され、燃焼炉に導入した際に燃焼炉の燃焼状態への影響を最小限に抑えることができる。また、廃スラッジを燃料代替として用いることで、高価な化石燃料の原単位を低減することが可能となる
【0012】
前記廃スラッジの燃料化方法において、前記廃スラッジを、廃塗料スラッジ、廃溶剤蒸留残渣、廃グリス、オイルスラッジ、廃インク及び廃白土からなる群から選択される少なくとも一種以上とすることができる。
【0013】
また、前記廃スラッジの燃料化方法において、前記液体燃料を、廃溶剤、廃油、廃塗料、エマルジョン燃料及び有機物含有廃液からなる群から選択される少なくとも一種以上とすることができる。これにより、廃スラッジのみならず、廃溶剤等についても同時に燃料化することができる。
【0014】
前記廃スラッジの燃料化方法において、前記破砕物を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される一以上の箇所から導入することができる。これにより、セメントを製造する上で必要な高価な化石燃料の原単位を低減することができるとともに、廃スラッジに含まれる灰分をセメント原料として利用することができ、廃棄物を発生させることがない。
【0015】
また、本発明は、廃スラッジの燃料化システムであって、廃スラッジと液体燃料とを混合する混合装置と、廃スラッジを前記混合装置に供給する第1の供給装置と、液体燃料を前記混合装置に供給する第2の供給装置と、前記混合装置によって混合された混合物を破砕する破砕装置と、前記破砕装置によって破砕された破砕物を燃焼炉に導入する第3の供給装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、上記発明と同様に、運転コストを低く抑えながら、廃スラッジを容易に燃料化することができ、燃焼炉に導入した際に燃焼炉の燃焼状態への影響を最小限に抑えることができ、高価な化石燃料の原単位を低減することも可能となる。また、簡単な装置構成で燃料化システムを構成したため、装置コストの高騰も回避することができる。
【0017】
前記廃スラッジの燃料化システムにおいて、前記第1の供給装置を、ピストンポンプ、二軸スクリューポンプ、モーノポンプ又はロータリーポンプを備えるように構成することができる。ピストンポンプ又は二軸スクリューポンプ、は、比較的大きな塊状の物を含むスラッジを搬送可能であるため、廃スラッジと液体燃料との混合物に塊状物が含まれる場合でも容易に搬送することができる。廃スラッジに塊状物が含まれていない場合には、モーノポンプ又はロータリーポンプを備えるように構成することもできる。
【0018】
前記廃スラッジの燃料化システムにおいて、前記第1の供給装置に、前記混合装置の内部まで挿入される供給管を設け、該供給管に、該混合装置側の端部に、前記廃スラッジを供給する際に、該廃スラッジを分散させる分散板を設けることができる。これにより、廃スラッジを供給する際に、供給管内における詰まりを防止するとともに、混合装置内での液体燃料との混合をより効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、低コストで、効率よく廃塗料スラッジ等の廃スラッジをセメント焼成炉等の燃焼炉用燃料として燃料化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる廃スラッジ燃料化システムの一実施の形態を示し、この燃料化システム1は、大別して、ピストンポンプ3と、予混合タンク4と、液体燃料タンク5と、破砕機6と、スラリーポンプ9等で構成される。尚、以下の説明においては、燃料化システム1を、燃焼炉の一例としてのセメントキルン21に適用するものとする。
【0022】
ピストンポンプ3は、受入ホッパ2を介して受け入れた廃塗料スラッジ等の廃スラッジを予混合タンク4に供給するために備えられる。このピストンポンプ3は、廃スラッジに混入する大塊も供給可能とするため、広い間口を備え、供給管7を介して廃スラッジを予混合タンク4まで搬送する。供給管7は、予混合タンク4側の端部に、廃スラッジを分散させるための分散板7aを備える。尚、ピストンポンプ3に代えて二軸スクリューポンプを用いることもでき、廃スラッジに塊状物が含まれていない場合には、これらのポンプに代えて、モーノポンプ又はロータリーポンプ等を利用することもできる。
【0023】
液体燃料タンク5は、液体燃料を一時的に貯留するために一般的に用いられるものであって、液体燃料としての廃溶剤等が貯蔵される。尚、以下の説明においては、液体燃料として廃溶剤を用いるものとする。
【0024】
予混合タンク4は、ピストンポンプ3から搬送された廃スラッジと、液体燃料タンク5から供給される廃溶剤とを混合するために備えられる。この予混合タンク4の底部には、回転軸によって支持されて水平面内を回転し、両者を撹拌して混合を促進する高速撹拌機4aが配置される。予混合タンク4の底部近傍には、廃スラッジと廃溶剤との混合物(以下、「混合物」と略称する)を破砕機6まで搬送するための搬送管11の一端が位置し、予混合タンク4の下方には、予混合タンク4の底部に滞留した異物を外部に排出するための排出管12及びバルブ13が設けられる。
【0025】
破砕機6は、予混合タンク4から供給された混合物を破砕するために設けられ、例えば、シルバーソン社製のローター/ステーター式のハイシアーミキサー、インライン式湿式メディアレス微粉砕機としてのトリゴナル、モノポンプ社製Muncher等を用いることができる。
【0026】
次に、上記構成を有する廃スラッジ燃料化システム1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0027】
受け入れた廃スラッジSを受入ホッパ2に投入するとともに、受け入れた廃溶剤Lを液体燃料タンク5に貯留する。セメント焼成設備20の運転時に、廃スラッジSを受入ホッパ2から抜き出し、ピストンポンプ3によって供給管7を介して予混合タンク4に供給するとともに、廃溶剤Lをポンプ8によって供給管10を介して予混合タンク4に供給する。
【0028】
廃スラッジSは、上述のように、粘度の高い物体、大塊等を含むが、広い間口を備えたピストンポンプ3によって容易に予混合タンク4まで搬送することができる。また、供給管7の先端部に設けた分散板7aによって廃スラッジを分散させながら予混合タンク4に供給することにより、供給管7内での廃スラッジの詰まりを防止するとともに、廃スラッジを予混合タンク4内に分散させることができ、予混合タンク4での廃溶剤Lとの混合効率を高めることができる。
【0029】
予混合タンク4において、高速撹拌機4a等を用いて廃スラッジSと廃溶剤Lとを混合し、この混合によって得られた混合物Mを破砕機6に供給管11を介して供給する。受け入れた廃スラッジSの粘度が高い場合でも、廃溶剤Lとの混合で粘度を下げることができるとともに、性状が均質化されるため、後段での取り扱いが容易になる。予混合タンク4の底部に沈殿した金属等の異物は、排出管12及びバルブを介して定期的に排出する。
【0030】
破砕機6において混合物Mを破砕し、得られた破砕物Cを、スラリーポンプ9を介してバーナ23からセメントキルン21内に吹き込み、セメント焼成に利用する。受け入れた廃スラッジSに塊状の物が混入していても、混合物Mを破砕することにより、塊状物が細かく砕かれ、セメントキルン21内に吹き込み易くなる。以上により、廃スラッジS及び廃溶剤Lをセメント焼成工程において燃料の代替として用いることができる。
【0031】
尚、廃スラッジ燃料化システム1では、液体燃料タンク5の下方に位置するバルブ14を介して廃溶剤Lを供給管11に供給し、廃溶剤Lを単独でスラリーポンプ9を介してセメントキルン21に吹き込むこともでき、バルブ14を用いて破砕機6による破砕物Cにさらに廃溶剤Lを添加し、スラリーポンプ9を介してセメントキルン21に吹き込むこともできる。
【0032】
上記構成を有する廃スラッジ燃料化システム1は、予混合タンク4を備えるため、廃スラッジSと廃溶剤Lとの混合物Mを得ることができるとともに、廃スラッジSの供給系統又は廃溶剤Lの供給系統に不具合が生じた場合でも、直ぐに破砕物Cの供給に支障を来すことがなく、セメントキルン21に供給される破砕物Cの品質変動が小さい利点がある。特に、予混合タンク4を大規模なものとすることにより、上記効果が大きくなる。
【0033】
また、この廃スラッジ燃料化システム1は、廃スラッジSの粘性が高い場合でも、ピストンポンプ3を停止し、廃スラッジSの供給を停止したまま所定時間運転することにより、搬送管11の内部の廃スラッジが洗い流され、搬送管11の内部に廃スラッジが固着しなくなるため、廃スラッジを効率的に燃料化することができる。
【0034】
尚、上記実施の形態においては、破砕物Cを、窯前側からセメントキルン21に供給して燃料として用いる場合について説明したが、セメントキルン21の窯尻部から導入することもでき、また、セメントキルン21に付設された仮焼炉より導入して燃料として使用することもできる。
【0035】
また、上記実施の形態においては、本発明にかかる廃スラッジ燃料化システム1を、セメントキルン21に適用した場合を例示したが、この燃料化システム1は、セメントキルン21に限らず種々の燃焼炉に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる廃スラッジ燃料化システムの一実施の形態を示す全体概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 廃スラッジ燃料化システム
2 受入ホッパ
3 ピストンポンプ
4 予混合タンク
4a 高速撹拌機
5 液体燃料タンク
6 破砕機
7 供給管
7a 分散板
8 ポンプ
9 スラリーポンプ
10 供給管
11 搬送管
12 排出管
13 バルブ
14 バルブ
20 セメント焼成設備
21 セメントキルン
23 バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃スラッジと液体燃料とを混合し、
該混合によって得られた混合物を破砕し、
該破砕によって得られた破砕物を燃焼炉に導入し、該燃焼炉で燃焼させることを特徴とする廃スラッジの燃料化方法。
【請求項2】
前記廃スラッジは、廃塗料スラッジ、廃溶剤蒸留残渣、廃グリス、オイルスラッジ、廃インク及び廃白土からなる群から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の廃スラッジの燃料化方法。
【請求項3】
前記液体燃料は、廃溶剤、廃油、廃塗料、エマルジョン燃料及び有機物含有廃液からなる群から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の廃スラッジの燃料化方法。
【請求項4】
前記破砕物を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される一以上の箇所から導入することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の廃スラッジの燃料化方法。
【請求項5】
廃スラッジと液体燃料とを混合する混合装置と、
廃スラッジを前記混合装置に供給する第1の供給装置と、
液体燃料を前記混合装置に供給する第2の供給装置と、
前記混合装置によって混合された混合物を破砕する破砕装置と、
前記破砕装置によって破砕された破砕物を燃焼炉に導入する第3の供給装置とを備えることを特徴とする廃スラッジの燃料化システム。
【請求項6】
前記第1の供給装置は、ピストンポンプ、二軸スクリューポンプ、モーノポンプ又はロータリーポンプを備えることを特徴とする請求項5に記載の廃スラッジの燃料化システム。
【請求項7】
前記第1の供給装置は、前記混合装置の内部まで挿入される供給管を備え、
該供給管は、該混合装置側の端部に、前記廃スラッジを供給する際に、該廃スラッジを分散させる分散板を備えることを特徴とする請求項4に記載の廃スラッジの燃料化システム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−133518(P2009−133518A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308632(P2007−308632)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】