説明

廃棄物ガス化装置

【課題】 化石燃料の使用を削減できて、低コストで効率的に可燃性ガスを回収することができる廃棄物ガス化装置を提供する。
【解決手段】 可燃性廃棄物Dをガス化ガスにより熱分解して可燃性ガスG1を生成する熱分解炉2と、熱分解炉2から排出される残渣であるチャー・灰B1を溶融状態で部分燃焼させて、発生した高温ガスを熱分解炉2にガス化ガスG2として供給するガス化溶融炉3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に都市ごみのような可燃性廃棄物を高温処理することにより、ガスエンジン、ガスタービンおよび燃料電池のような発電装置でエネルギー源として使用できる可燃性ガスを回収する廃棄物ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日々、多量に発生する都市ごみのような可燃性一般廃棄物や工場で発生する可燃性産業廃棄物などの廃棄物(以下、可燃性廃棄物という)は、その焼却による減量化と、焼却時に発生する可燃性ガスの資源としての有効利用を目的として、各種の廃棄物処理技術が開発されている。
【0003】
例えば、一般廃棄物や産業廃棄物を、熱分解処理により、使用可能な可燃性ガスとする廃棄物処理システムが知られている(例えば特許文献1参照)。この廃棄物処理システムでは、主に、乾燥機、熱分解キルン、クラッカーおよび溶融炉で構成され、廃棄物中の水分を乾燥除去後、450〜650℃の熱分解キルンで、還元雰囲気(無酸化状態)にて前記廃棄物をタール、CO2、CO、H2などの揮発性ガス成分と、炭素、灰分、金属分、ガレキなどの残渣に分解する。このうち、揮発性ガス成分をクラッカーで少量の酸素や空気を供給して部分燃焼(不完全燃焼)し、タールを改質することで水蒸気以外の凝縮性成分が少ない可燃性ガスとして回収する。また残渣は、金属分を回収後、約1500℃の溶融炉で化石燃料を用いて高温燃焼し、灰の溶融と炭素の完全燃焼を図っている。
【特許文献1】特開平11−188333号公報
【0004】
また前記廃棄物処理システムにおける熱分解炉を流動床とした先行技術には、流動化ガスとして空気を用いたもの(例えば特許文献2参照)、また、流動化ガスとして燃焼排ガスを用いたもの(例えば特許文献3参照)がある。これらの技術は、(いずれも可燃性ガスの回収を目的としたものではないが、)一旦、可燃性ガスを回収した後に完全燃焼させ、排熱ボイラなどを経て電力を回収する。廃棄物の熱分解に流動床を用いると、熱分解キルンのような外部熱源(燃料)を必要とせず、部分燃焼(内部熱源)によって分解できる。しかし、廃棄物を流動化させるために一定量以上の流動化ガスを必要とするため、従来は、空気や燃焼排ガス、水蒸気といったものを用いることが一般的である。
【特許文献2】特開平10−9511号公報
【特許文献3】特開2002−228126号公報
【0005】
さらに、前記廃棄物処理システムにおける熱分解炉を竪形一体炉(シャフト炉)とした先行技術が知られている(例えば特許文献4参照)。この竪形一体炉によれば、炉底から空気および酸素富化空気を、炉頂からコークス、石灰石、廃プラスチックおよび廃棄物を投入することによって、炉底からは溶融スラグを、炉頂からは可燃性ガスを回収する。
【特許文献4】特開2002−301457号公報
【0006】
また、コークス、石灰石などの化石燃料を用いない竪形一体炉が知られている(例えば特許文献5参照)。この場合は、炉底から燃料を投入して炉底の温度を維持している。
【特許文献5】特開2002−276925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献1に係る廃棄物処理システムによれば、回収した可燃性ガスの一部を熱分解キルンの熱源とし、また、残渣を燃焼させる溶融炉の燃焼性を維持するために化石燃料を用いる必要があるため、廃棄物からのエネルギー回収装置として見た場合、効率が低いという課題がある。
【0008】
また、前記特許文献2、3に係る廃棄物処理技術によれば、回収される可燃性ガス中に窒素、二酸化炭素などの不活性ガスが多く含まれるため、発熱量が低くなり、このような可燃性ガスをガスエンジン、ガスタービン、燃料電池のような発電装置に使用すると、その正常な作動に支障を来すとともに、ガスホルダ(ガスタンク)、配管などの規模の増大化につながる。また、可燃性ガスを水蒸気と酸素によって熱分解し、下流で水蒸気を除去することで高カロリーガスを回収する技術も知られているが、多量の水蒸気の供給、回収、再加熱など、システムが複雑化するという課題もある。
【0009】
また、前記特許文献4に係る廃棄物処理技術によれば、炉底の温度を維持するためにコークスを投入する必要があり、コークスの消費による経済性、資源消費、加えて地球温暖化CO2ガス排出などの点で課題が多い。
【0010】
さらに、前記特許文献5に係る廃棄物処理技術によれば、炉底の温度を維持するために化石燃料等を投入する必要があり、やはり化石燃料の消費による経済性、資源消費、加えて地球温暖化CO2ガス排出などの点で課題が多い。また、炉底では残渣は酸素によって燃焼することで高温となり、灰分は溶融してスラグとなるが、このとき溶融部の上部近傍においてクリンカー(残渣の塊)が発生しやすく、これによってガスの偏流や反応の不均一化などのトラブルが起きやすい。
【0011】
そこで、本発明は、化石燃料の削減と回収する可燃性ガス発熱量の向上とを図り、低コストで可燃性ガスを回収することができる廃棄物ガス化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る廃棄物ガス化装置は、可燃性廃棄物をガス化ガスにより熱分解して可燃性ガスを生成する熱分解炉と、前記熱分解炉から排出される残渣を溶融状態で部分燃焼させて、発生した高温ガスを前記熱分解炉に前記ガス化ガスとして供給するガス化溶融炉とを備えている。
【0013】
この構成によれば、熱分解炉から排出される残渣は、熱分解炉ではなく、ガス化溶融炉で溶融状態で部分燃焼させるので、前記熱分解炉の下部に溶融状態のスラグやクリンカーが滞留しない。これにより、前記熱分解炉の炉底から炉頂に至る空間に収容される可燃性廃棄物に対するガスの通過性がよくなり、可燃性廃棄物とガスとの接触による反応性が向上する。また、熱分解炉から排出される残渣を溶融状態で部分燃焼させて、発生した高温ガスを熱分解炉で可燃性廃棄物のガス化剤として用いるため、従来のように、前記熱分解炉の炉底に灯油バーナのような燃焼手段が不要となり、灯油のような化石燃料を削減することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、前記熱分解炉は、下部から前記残渣を排出する固定床炉である。この構成によれば、流動床のように、熱分解炉の下部に燃焼排ガスや空気を炉内上方に向けて噴射する複雑な設備が不要となるので、廃棄物ガス化装置の構成が簡素化でき、製作コストを低く抑えることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記固定床炉の下部に前記可燃性廃棄物を撹拌する回転火格子が設置されている。この構成によれば、回転火格子の設置によって固定床炉の内部に存在する可燃性廃棄物に対するガスの通過性および接触性が良好となり、ガス化反応性が向上する。このことにより、発熱量の大きい可燃性ガスを効率的に生成して回収できる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、前記熱分解炉は、流動床炉である。この構成によれば、流動床炉の炉底から高温のガス化ガス、または高温のガス化ガスと少量の空気とを炉頂に向けて噴射させるから、前記流動化ガスの循環流により熱が拡散されるので、空気量を削減することで発熱量の高い可燃性ガスを回収できる。また、このことによって、流動化ガスとして水蒸気を投入する必要がなくなるため、下流での水分回収の煩雑さもない。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記ガス化溶融炉は、補助燃料として廃プラスチックを使用するものである。この構成によれば、廃プラスチック自体が化石燃料である石油を主原料として製造されたものであるので、化石燃料を用いずとも、ほぼ化石燃料と同等の熱エネルギーを得ることができ、燃料の削減を図ることができる。また、従来、廃棄されていた廃プラスチックの有効活用を図ることができるので、日々、膨大な量で発生する廃プラスチックの不当投棄を減らすことができ、環境汚染改善上きわめて有効となる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、さらに、前記ガス化溶融炉の底部に溶融スラグの排出口が設けられている。この構成によれば、ガス化溶融炉の底部の排出口から排出される溶融スラグは、前記熱分解炉に供給されるガス化ガスを回収された残りであり、従来の廃棄物ガス化装置で排出されていた溶融スラグに比べ、はるかに減量化される。このことにより、最終的に廃棄処分される溶融スラグの量が少なくなり、前記溶融スラグの搬出および埋立廃棄する際にもきわめて有利となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の廃棄物ガス化装置によれば、廃棄物ガス化装置の構成を、熱分解炉とガス化溶融炉との二つの炉に分割し、前記熱分解炉では可燃性廃棄物をガス化ガスにより熱分解して可燃性ガスを生成する役割を持たせ、ガス化溶融炉では前記熱分解炉から排出される残渣を溶融状態で部分燃焼させて、発生した高温ガスを前記熱分解炉に前記ガス化ガスとして供給する役割を持たせている。したがって、熱分解炉の下部に溶融状態のスラグが滞留しないので、前記熱分解炉の炉底から炉頂に至る空間に収容される可燃性廃棄物に対するガスの通過性がよくなり、可燃性廃棄物とガスとの接触による反応性が向上し、化石燃料の削減が図れるので、発熱量の大きい可燃性ガスを低コストで効率的に回収できる。つまり、熱分解炉に酸素または空気を供給して炉内温度を高くするガス化方式ではなく、高温のガス化ガス(還元ガス)を投入することで安定な廃棄物ガス化反応を起こすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る廃棄物ガス化装置を示す概略図である。同図に示すように、廃棄物ガス化装置1は、可燃性廃棄物Dを熱分解する熱分解炉2と、この熱分解炉2から排出される残渣を溶融状態で部分燃焼(完全燃焼でないガス化燃焼)するガス化溶融炉3の、二つの炉を備えている。
【0021】
前記熱分解炉2は、可燃性廃棄物Dを前記ガス化溶融炉3で得られるガス化ガスG2により熱分解して可燃性ガスG1を生成するものであって、熱分解炉2の下部から残渣である未燃のチャー・灰Bを排出する固定床炉(竪型シャフト炉ともいう)で構成されている。この熱分解炉2は、竪形円筒部2aの下端開口(つまり、炉底側)にチャー・灰Bを収納する残渣ホッパ4が配置され、この残渣ホッパ4の下端は、モータ5を駆動源とするスクリューフィーダ6に接続されている。熱分解炉2の炉底内には支軸7a回りに回転する回転火格子7が設けられている。前記回転火格子7は、その下面側に配置された駆動軸13のピニオン13aに歯合して駆動されることで、支軸7aを中心として炉底内を回転するようになっている。なお、前記残渣ホッパ4を形成するホッパ壁4aは、その内部を水が循環して残渣ホッパ4内のチャー・灰Bを一旦、冷却するための水冷壁として構成されている。
【0022】
前記熱分解炉2の円筒部2aの上部には可燃性廃棄物Dの投入口2bが設けられ、その下方の炉頂付近には可燃性ガスの回収口2cが設けられ、この回収口2cの若干下方で炉心周りにほぼ180°対向する部位には、後述するタール分を改質するため、炉2内部に少量の空気を導入する空気取入口2dが設けられている。
【0023】
前記のように構成される熱分解炉2に対し、別設備として前記ガス化溶融炉3が付設されている。このガス化溶融炉3は、竪形円筒状のガス分離炉10の前段に、竪形円筒状の予燃焼炉11を有しており、この予燃焼炉11の上部に、補助燃料となる廃プラスチックPを予燃焼炉11内部に投入するための燃料ホッパ9が設けられ、予燃焼炉11の炉頂近傍には、スクリューフィーダ6からチャー・灰Bを予燃焼炉11に投入する投入路12が設けられている。この投入路12の中途には、予燃焼炉11内に導入したチャー・灰Bを燃焼させるガス化酸素を導入する酸素導入路13が接続されており、ガス化酸素によってチャー・灰Bを予燃焼炉11内へ送給している。なお、前記投入路12と酸素導入路13とは、途中で合流されることなく、それぞれ別々に前記予燃焼炉11に接続されていてもよい。
【0024】
前記ガス化溶融炉3とこれに付設された予燃焼炉11との間には、予燃焼されたチャー・灰Bを予燃焼炉11からガス分離炉10に導入する横形円筒状の旋回炉15が設けられている。予燃焼されたチャー・灰B1は、予燃焼炉11から下方の旋回炉15に、旋回炉15の軸心から偏心した位置で投入されるようになっており、これにより、チャー・灰B1が旋回炉15内で旋回して、その際の遠心力により液体成分を旋回炉15の内周面に付着させながら燃焼が進行し、ガス分離炉10へ導入されるようになっている。旋回炉15の下流端近傍には、ガス成分が除かれたチャー・灰B1の液体成分をスラグSとして外部に排出する排出口17が設けられている。
【0025】
旋回炉15からのガスはガス分離炉10に入り、径の大きいガス分離炉10内でガスが減速することにより、ガス成分からスラグ飛沫成分が分離されて落下し、排出口17からスラグSの一部として排出される。
【0026】
前記ガス分離炉10の炉頂と熱分解炉2の炉底の間は、前記ガス分離炉10で発生した高温ガスを前記熱分解炉2にガス化ガスG2として供給するガス供給路14が設けられている。
【0027】
以上のように構成される廃棄物ガス化装置の動作について説明する。熱分解炉2を構成する固定床炉の寸法は、例えば、内寸法6.2mL×2.4mφ、ごみ層高さ3.2mLとする。ガス化溶融炉3の寸法は、内寸法3mL(全長)×0.45mφとする。このような熱分解炉2の上部に設けた投入口2bから内部に、都市ゴミのような可燃性廃棄物D(水分約40%、常温)を2000kg/hの投入速度で投入する。このとき、動作スタート(始動)時、炉底に設けた図示しない燃焼バーナ設備でガス化酸素を供給しながら灯油を燃やすことで燃焼ガスが炉頂に向けて吹き込まれる。灯油の供給は、後述するガス化ガスG2の熱分解炉2への供給により、熱分解炉2内で熱分解が一定レベル以上進行するまで継続される。
【0028】
この燃焼ガスの吹き込み状態で、前記可燃性廃棄物Dは、自重により降下しながら炉内の乾燥ゾーンZ1、熱分解ゾーンZ2、ガス化ゾーンZ3を順次通過する。このようなゾーンZ1〜Z3の通過時、乾燥ゾーンZ1で前記可燃性廃棄物Dは炉底からの高温ガスによって熱交換されることで水分が蒸発する。この段階で、前記可燃性廃棄物Dは組成がCxHyOzからなる乾燥物となる。続いて、前記組成がCxHyOzからなる乾燥物は、熱分解ゾーンZ2で吸熱反応により、CxHyOz⇒CO,CO2,H2,H2O,メタン,タールに分解される。さらに、ガス化ゾーンZ3で吸熱反応により、カーボン+H2O/CO2⇒CO,H2,CO2,H2Oに分解される。
【0029】
前記のようなゾーンZ1〜Z3を通過後、炉底から残渣として未燃のチャー・灰Bが残渣ホッパ4に排出される。つまり、従来の竪形一体炉(特許文献4,5)内の最下層を占めていたチャー燃焼・灰溶融ゾーンがなくなり、ガス化ゾーンZ3を出た未燃のチャー・灰Bが残渣ホッパ4に入る。さらにスクリューフィーダ6により投入路12を介して予燃焼炉11に投入される。このとき、同時にガス化酸素が酸素導入路13から前記投入路12に導入され、チャー・灰Bを搬送しながら、予燃焼炉11に供給される。ガス化酸素(60%O2)の吹込量は330Nm3 /hとする。なお、前記チャー・灰Bは、残渣ホッパ4の外壁が水冷されているので、排出時の温度は約300℃で、排出量は245kg/hである。
【0030】
前記チャー・灰Bが予燃焼炉11に投入されるのに合わせて、燃料ホッパ9から補助燃料に相当する破砕した廃プラスチックPを予燃焼炉11に投入する。廃プラスチックPの発熱量は7500kcal /kgで、その投入量は40kg/hとする。これにより、前記予燃焼炉11に投入されたチャー・灰Bは、チャーと比べて着火性の高い廃プラスチックPを補助燃料として約1500℃まで加熱される。こうして予燃焼されたチャー・灰B1は、チャー燃焼(発熱反応)により、ガス成分と液体スラグとに変換される。このように、1500℃まで加熱され、溶融状態となった前記チャー・灰B1は、旋回炉15内で旋回しながら燃焼し、液体成分(溶融スラグ)は、旋回炉15の内面を伝って下流に移動していき、排出口17から外部に取り出される。排出口17からのスラグSの排出量は110kg/hである。なお、ガス成分はさらにガス分離炉10に入り、燃焼を進行させながら、約1070℃の高温ガス化ガスG2となる。このガス化ガスG2の成分は、CO;370kg/h,CO2;26kg/h,H2;0.2kg/h,N2;18kg/hおよび水蒸気50kg/hである。
【0031】
続いて、前記高温ガス化ガスG2は、ガス分離炉10に入り、前記高温ガス化ガスG2に含まれたスラグ飛沫成分が、ガス分離炉10内でのガス流速の低下により分離されて、ガス化溶融炉3の下方の排出口17から回収される。こうして、スラグ飛沫の少ないガス化ガスG2は、ガス分離炉10の炉頂からガス供給路14を介して熱分解炉2の炉底に供給され、熱分解炉2で可燃性廃棄物Dの熱分解用のガス化剤として継続的に用いられる。
【0032】
このようにして、ガス化溶融炉3から熱分解炉2に供給される高温ガス化ガスG2によって熱分解炉2内の可燃性廃棄物Dは前述したように、炉内を自重により降下しながら乾燥ゾーンZ1、熱分解ゾーンZ2、ガス化ゾーンZ3を通過する際に熱分解されて最終的に可燃性ガスG1(700〜800℃)が可燃性ガスの回収口2cから回収される。この際、前記可燃性ガスG1には少量のタール分が含有されているので、炉頂寄りに設けた前記空気取入口2dから少量の空気を噴射して、前記タール分をメタンやプロパンのようなガスエンジンなどに適した成分に分解する。これにより、前記可燃性ガスG1は一層発熱量の高い燃料用ガスとして回収される。このように、回収される可燃性ガスG1は、発熱量が高く、ガスエンジンのようなタール分の混入を嫌う発電装置に適したものとなる。
【0033】
このように、前記廃棄物ガス化装置1によれば、始動時(動作スタート)にのみ、バーナ設備で灯油のような化石燃料を用いるものの、熱分解炉2で可燃性廃棄物Dの熱分解用に燃料となる高温ガス化ガスG2を得た後には、前記化石燃料を用いることがない。したがって、従来の廃棄物ガス化装置に比べ、化石燃料の大幅な削減が可能となる。また、残渣であるチャー・灰Bの溶融は、ガス化溶融炉3で行うので、溶融したチャー・灰Bが熱分解炉2の下部に滞留しない。その結果、熱分解炉2でのガス化ガスG2の通過性が向上し、ガス化反応が促進されるので、効率的に可燃性ガスG1を生成して、組成変動の少ない均一な可燃性ガスを回収することができる。また、ガス化溶融炉3は、着火性の高いプラスチックを補助燃料として使用できるため、燃焼性が向上する。その結果、酸素導入路13を通してガス化溶融炉3に供給されるガス化酸素は、従来は約90%酸素濃度が必要であったところ、60%酸素濃度で十分な熱分解効率が得られ、高濃度酸素製造設備の少容量化と消費電力の削減ができる。さらに、流動床のように、熱分解炉2の下部に燃焼排ガスや空気を炉内上方に向けて噴射する複雑な設備が不要となるので、廃棄物ガス化装置1の構成を簡素化でき、製作コストを低く抑えることができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態に係る廃棄物ガス化装置について図2を参照しながら説明する。この廃棄物ガス化装置は、前記第1実施形態の熱分解炉2である固定床炉を流動床炉に代えた点、およびタール回収装置を付加した点でのみ相違し、その他の基本構成は同様であり、第1実施形態と同一部分には同一の符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0035】
図2に示す廃棄物ガス化装置1Aは、流動床炉からなり可燃性廃棄物Dを熱分解する熱分解炉20と、この熱分解炉20から排出される残渣チャー・灰Bを溶融燃焼するガス化溶融炉3の、二つの炉を備えている。熱分解炉20の円筒部20aの上部には可燃性廃棄物Dの投入口20bが設けられている。一方、この熱分解炉20の炉底側には、第1実施形態の回転火格子7に代え、流動化ガス(酸素、水蒸気または燃焼排ガスなど)を炉内に吹込む流動化ガス吹込口22が設けられている。なお、図示のものは、流動化ガスとして空気が供給されるようになっている。
【0036】
前記炉底の下端部20eとガス化溶融炉3のガス分離炉10の炉頂との間は、ガス供給路23で接続されている。予燃焼炉11には、その内部にガス化酸素を導入する酸素導入路24が接続され、この酸素導入路24の途中に、後述するサイクロン28で分離された残渣チャー・灰Bを予燃焼炉11に投入する投入路25が接続されている。
【0037】
前記熱分解炉20は、その上部から残渣を排出する。すなわち、熱分解炉20の炉頂寄りに、可燃性廃棄物Dの熱分解により不純物が混じった可燃性ガスG1と、残渣であるチャー・灰Bの混合物とを炉外に取り出す取出口26が設けられ、この取出口26は接続管27によってサイクロン28に接続されている。このサイクロン28によって前記混合物のうち、不純物が混じった可燃性ガスG1は配管29を通ってタール改質炉30に供給され、サイクロン28で分離された溶融残渣であるチャー・灰Bは、前述のように、投入路25を通って酸素導入路24に入り、ガス化酸素によって搬送されて予燃焼炉11に供給される。
【0038】
前記タール改質炉30の炉頂側には、配管31によりタール改質用空気が供給される。また、このタール改質炉30の炉底側からはタール改質処理により低分子量化された可燃性ガスG1が、配管32により熱回収装置33に導入されている。この熱回収装置33ではガス圧縮機34によって導入された気体燃料Fとの間で熱交換され、この気体燃料Fが予熱されて、ガスタービンや燃料電池の発電装置で利用される。
【0039】
前記熱回収装置33を出た可燃性ガスG1は集塵機35で粉状物を除去されたのち、水シャワーのような分離手段を有するガス・タール分離装置36に送られ、分離されたガスG1は、必要に応じて、図示しないガス精製装置を経て前記ガス圧縮機34の上流側で天然ガスのような燃料に混入されて前記気体燃料Fとなる。また、分離されたタール分はフィルタを内蔵した精製装置37を経て液体燃料とし、廃プラスチックPと共に、または廃プラスチックPの代わりに、補助燃料として前記ガス化溶融炉3で用いられる。
【0040】
この第2実施形態では、熱分解炉20として流動床炉を用いているので、可燃性廃棄物Dの熱分解後の残渣は炉底からではなく、流動床炉の特性上、炉頂側の取出口26から可燃性ガスG1と同伴して取り出される。熱分解炉20内の可燃性廃棄物Dは、流動床炉の寸法が4mL×1.5mであるとき、流動化ガス(空気)によって約1.5mLの流動層高で常に流動していて十分撹拌されるので、炉底から炉内に供給される溶融炉3からの高温のガス化ガスG2と前記可燃性廃棄物Dとは効率よく接触し、しかもG2の通過も良好となるから、ガス化反応性が良好となる。また、廃プラスチックPを燃料源としたことで化石燃料を削減でき、可燃性ガスG1を低いコストで生成回収できる点、着火性の高いプラスチックを補助燃料として使用できるため、燃焼性が向上する点など、第1実施形態と同等の利点がある。また、流動床炉である熱分解炉20の炉底から高温のガス化ガス、または高温のガス化ガスと空気とを炉頂に向けて噴射させるから、前記流動化ガスの循環流により熱が拡散されるので、空気量を削減することで発熱量の高い可燃性ガスを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る廃棄物ガス化装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る廃棄物ガス化装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 廃棄物ガス化装置
2,20 熱分解炉
3 ガス化溶融炉
7 回転火格子
10 ガス分離炉
11 予燃焼炉
15 旋回炉
17 排出口
D 可燃性廃棄物
G1 可燃性ガス
P 廃プラスチック
S スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物をガス化ガスにより熱分解して可燃性ガスを生成する熱分解炉と、
前記熱分解炉から排出される残渣を溶融状態で部分燃焼させて、発生した高温ガスを前記熱分解炉に前記ガス化ガスとして供給するガス化溶融炉とを備えた廃棄物ガス化装置。
【請求項2】
請求項1において、前記熱分解炉は、下部から前記残渣を排出する固定床炉である廃棄物ガス化装置。
【請求項3】
請求項2において、前記固定床炉の下部に前記可燃性廃棄物を撹拌する回転火格子が設置されている廃棄物ガス化装置。
【請求項4】
請求項1において、前記熱分解炉は、上部から残渣を排出する流動床炉である廃棄物ガス化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記ガス化溶融炉は、燃料として廃プラスチックを使用するものである廃棄物ガス化装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記ガス化溶融炉の底部に溶融スラグの排出口が設けられている廃棄物ガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−28211(P2006−28211A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204363(P2004−204363)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】