説明

廃棄物処分場用シートおよびそれを用いた埋め立て工法

【課題】廃棄物処分場の埋め立て層上部もしくは内部廃棄物に水を均一に供給する工法を提供する。
【解決手段】吸水高さが5cm以上、透水係数が1×10−4以上、および通気度が0.2cc/cm/秒以上の廃棄物処分場用シートを、埋め立て層上部もしくは内部に敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理型最終処分場において埋め立て層内の微生物を活用し、廃棄物中の有機物を分解させ廃棄物の安定化するに際し、埋め立て層内に均一に水を供給させる工法および、水を供給するシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最終処分場における環境問題には、廃棄物の不法投棄問題や浸出水の漏水による土壌や地下水汚染問題などが挙げられる。最近の管理型最終処分場では、埋め立て層内の微生物を活用し、廃棄物中の有機物を分解させ、廃棄物の安定化を行っている。微生物を最大限に活用するためには適度な水の供給が必要であり、屋内型処分場では散水量により、屋外型処分場では覆土により埋め立て層内への水の供給量を制御している。しかしながら埋め立て層へ散水により直接水を供給する場合、埋め立て表層の状態により局所的に水が溜まりやすく、均一に水を供給することが困難である。また埋め立て層を覆土する場合も、覆土層内で水の通り道ができやすく、埋め立て層内へ均一に水を供給することが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、適度な水と気体の拡散性を有する廃棄物処分場用シート及びそれを用いた廃棄物の埋め立て工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
吸水高さが5cm以上、透水係数が1×10−4以上、および通気度が0.2cc/cm/秒以上の廃棄物処分場用シートを、埋め立て層上部もしくは内部に敷設することにより廃棄物中の有機物は分解されるとともに、発生するガスも適切に外部に排出される。
【発明の効果】
【0005】
特定の透水係数および通気性を有するシートで廃棄物を覆うことにより廃棄物に水を均一に供給することができ、微生物を活用し、廃棄物中の有機物を分解させ、廃棄物の安定化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
廃棄物処分場における埋め立て層を被覆するシートとしては、上部からの水を下部の埋め立て層に供給する必要があるため、透水係数は1×10−4以上、好ましくは1×10−3以上必要である。透水係数が1×10−4未満であると不透水性となるため、埋め立て層に十分水を供給することができない。
【0007】
更にシートを敷設する埋め立て層表面においては凹凸が生じているため、埋め立て層表面上に均一に水を拡散させるためには、最低でも吸水高さ5cm以上、好ましくは10cm以上必要である。吸水高さが5cm未満であると埋め立て層表面において局所的に水が溜まりやすくなる。この吸水高さの時に水は毛管現象により内部に適度な速度で浸透していく。
【0008】
吸水高さを5cm以上とするには、単糸繊度が0.1以上5dtex未満の繊維からなる不織布、織物、編物、およびその組み合わせであることが好ましい。0.1〜5dtex未満の範囲であることにより、優れた毛管現象により吸水高さ5cmが得られる。ただし0.1dtex未満であると、施工に耐えうる十分な強度が得られない。
以上のように吸水性と透水性とをバランスさせることにより埋め立て層に適度な水の供給が可能となる。
【0009】
また有機物が分解する際、メタンガスや水蒸気などの気体が発生するため、シートの通気度は0.2cc/cm・秒以上、好ましくは1.0cc/cm・秒以上であることが必要である。通気度が0.2cc/cm/秒未満であると、下部からの発生ガスによりシートの破損を引き起こす恐れがあり好ましくない。
【実施例】
【0010】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の各特性は下記の方法により評価した。
(1)シートの単位面積重量(目付)
JIS L 1908に規定される方法に準じて測定した。
(2)シートの厚さ
JIS L 1908に規定される方法に準じて測定した。
(3)シートの吸水高さ
JIS L 1907に規定される方法に準じて測定した。
(4)シートの透水係数
JIS A 1218に規定される、「土の透水試験方法」に準じて測定した。
(5)シートの通気度
JIS L 1096のA法に規定される、フラジール形法に準じて測定した。
(6)シートの水の拡散性
幅100cm×奥行き100cm×高さ30cmの型枠に、市販の真砂土(水分率20%)を密度g/cmになるように敷き詰めた上に、シートを敷設し、シート垂直方向1mの高さから、全体の20%の面積に対し、散水強度60mm/時で1時間散水した。1時間散水したあと、真砂土表面上に水溜りが発生していない状態を、水の拡散性「良好」、水溜りが発生している状態を、水の拡散性「不良」とした。
【0011】
[実施例1]
特開昭51−70366号公報の実施例1に記載された方法に従って、ポリエチレンテレフタレート構成部分とナイロン6構成部分が交互に隣接して16環状に配置され、且つ繊維の長手方向に伸び全体として管状体を構成している分割型中空複合繊維で、全ポリエチレンテレフタレート構成部分と全ナイロン6構成部分の重量比が1:1で、個々の構成部分の繊径が0.18dtex、分割型中空複合繊維の繊径が2.8dtex、中空率(全ポリエチレンテレフタレート構成部分と全ナイロン6構成部分および中空部分の体積の合計に対する中空部分の体積の割合)が10%である繊維長64mmの短繊維を作製した。該短繊維をカーディング工程にて開繊して得たウェブに、ニードルパンチ処理を200ポイント/cmの条件により強制交絡処理を施した後、公知のウォーターニードル法を用いて、50kg/cm×10列の条件により該分割型中空複合繊維の細化を行い、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0012】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート構成部分とナイロン6構成部分の重量比が1:1で、中空率が8%である16分割型中空複合繊維のマルチフィラメント糸(500dtex/120フィラメント)を経糸及び緯糸に用いて、織物組織として8枚朱子を用いて経密度120本/2.54cm、緯密度67本/2.54cmで織成し、該織物を分割処理剤(山川薬品製:テトロシンOE−N 3%)で処理を行い、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0013】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(32dtex/72フィラメント)を用いて、40ゲージで経編物を編成し、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0014】
[実施例4]
短繊維の繊度が3.3dtex、繊維長が51mmであるポリエステル短繊維をカーディング工程にて開繊してウェブにニードルパンチ処理を300ポイント/cmの条件により強制交絡処理を施して、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0015】
[比較例1]
シートを被覆しない場合の水の拡散性、および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月の状況を表1に示す。
【0016】
[比較例2]
短繊維の繊度が6.6dtex、繊維長が51mmであるポリエステル短繊維をカーディング工程にて開繊してウェブにニードルパンチ処理を210ポイント/cmの条件により強制交絡処理を施して、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0017】
[比較例3]
シートAにおいて、市販のポリエチレン系系多孔質膜((株)トクヤマ製、ポーラム高通気タイプ)を、ウレタン接着剤を用いて貼りあわせ、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0018】
[比較例4]
シートAにおいて、市販のポリウレタン系無孔フィルム(日本マタイ製)を、ウレタン接着剤を用いて貼りあわせ、シートを作成した。得られたシートの物性および実際に屋外廃棄物処分場に6ヶ月使用した際の状況を表1に示す。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
管理型最終処分場において、特定の透水性と通気性を有するシートで廃棄物を覆うことにより、適度な水の供給が可能となり、埋め立て層内の微生物を活用し、廃棄物中の有機物を分解させ、廃棄物の安定化を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布、織物、編物、及びその組み合わせからなるシートであって、吸水高さが5cm以上、透水係数が1×10−4以上、および通気度が0.2cc/cm・秒以上であることを特徴とする廃棄物処分場用シート。
【請求項2】
単糸繊度が0.1以上5dtex未満の繊維からなる不織布、織物、編物、およびその組み合わせからなることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場用シート。
【請求項3】
廃棄物処分場において、水の拡散性が優れたシートを廃棄物上部もしくは内部に敷設することを特徴とする廃棄物処分場の埋め立て工法。
【請求項4】
水の拡散性が優れたシートが請求項1、2いずれか1項記載のシートである請求項3記載の廃棄物処分場の埋め立て工法。

【公開番号】特開2007−319758(P2007−319758A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151636(P2006−151636)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】