説明

廃棄物処理方法及び廃棄物処理装置

【課題】本発明は、PCB処理施設内に留置される運転廃棄物の封入容器の本数を減らすべく、運転廃棄物を減容して封入容器への充填量を向上させる廃棄物処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】廃棄物を破砕する破砕工程と、この破砕工程により破砕された廃棄物を袋体に収容する収容工程と、この収容工程により廃棄物が収容された袋体を傾斜させて前記廃棄物を袋体内に拡散する傾斜工程と、この傾斜工程により拡散された廃棄物が収容された袋体内の空気を排気する排気工程と、この排気工程により排気された袋体の開口部を熱圧着して閉止する閉止工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の処理施設において発生する作業着等の嵩張る廃棄物(以下、運転廃棄物と称する)の嵩密度を小さくし、その運転廃棄物を減容化する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCBは電気絶縁性に優れ、且つ耐熱性に優れていることから、変圧器用として大量に使用されていたが、発がん性や毒性が高いことから1970年代に使用・生産が中止された。PCBの使用・生産が中止されたが、当時はPCBの具体的かつ安全な無害化処理方法が確立されておらず、多くの事業所で使用されてきた変圧器などのPCB利用製品は、各事業所の敷地内で保管されることとなっていた。その後、脱塩素化分解法や還元熱化学分解法などのPCB無害化処理方法が提案され、2000年代よりPCBの無害化処理施設が稼働し始めた。
【0003】
そのPCB無害化処理施設での無害化処理の一例としては、変圧器などの一次汚染物からPCBを抜油し、そのPCBを前述の処理方法により無害化し、一次汚染物に付着・残留しているPCBは真空加熱分離法(VTR)により気化させて無害化処理方法により無害化している。PCBが気化・分離された一次汚染物は、PCBが除去されているので、通常の廃棄物(金属などの資源)として再資源化される。
【0004】
このようなPCB無害化処理施設でPCB処理の作業を行う作業者は、防護服や防護手袋、防護マスク、作業靴などを着用し、PCBが直接人体に接触しないように防護している。その作業者が着用した防護服などは、PCBが付着しているものとして、処理施設の外部へ持ち出されないように厳重に回収される。このように回収された廃棄物は、運転廃棄物と称され、前述のVTR法によって容易に無害化処理できないことから、蓋付きの封入容器(例えば、ドラム缶など)や、ビニール袋に収容され、施設内で保管されている。
【0005】
その運転廃棄物は、防護服や作業靴などの比較的嵩張るものが多く、日常の作業で頻繁に廃棄されることから、短期間で封入容器がいっぱいとなってしまい、運転廃棄物が封入されたドラム缶や、ビニール袋が施設内に溢れかえり、各エリアの作業スペースが圧迫されつつある。
【0006】
ところで、一次汚染物および二次汚染物(運転廃棄物等)をプラズマ溶融分解によって溶融処理することが提案されている(特許文献1)が、その処理コストがVTR法よりも遙かに高価である上に、PCB処理施設内で発生した運転廃棄物の処理に費用はかけられないので、当面の間は、ドラム缶で保管することとなっている。
【0007】
そこで発明者は、運転廃棄物が封入されるドラム缶が増加し続けることに危機感を覚え、その運転廃棄物に見立てた試験体を減容化する試験を行った。この試験によるPCBの漏洩や外部への持ち出しを防ぐため、その試験に使用した試験体は、PCB処理施設内で発生する防護服や作業靴などと同等品であり、かつ、PCBに汚染されていないものである。
【0008】
試験1)運転廃棄物をドラム缶に圧縮して詰め込む、試験2)運転廃棄物を袋体(ビニール袋)に収容し、その袋体の空気を抜いて真空パックとする、試験3)運転廃棄物をハサミなどで切り刻む、という3種類の試験を行い評価を行った。
【0009】
結果、試験1は、圧縮率が1/2程度であった。試験2は、紙や布、作業着等の薄くて柔らかい試験体は1/4程度まで圧縮されるが、作業靴などの比較的硬質で空間の大きい試験体の体積は殆ど減容しなかった。試験3は、布や作業着などはハサミで切断して細かくすることができたが、その手間と時間と作業者の労力が著しくかかる上、作業靴などの硬質のものや厚手のものは容易に切断できなかった。しかしながら、試験3によると、試験体が1/3〜1/4にまで大幅に圧縮されることが判った。
【0010】
かかることから、発明者は次なる試験として、破砕機によって試験体を破砕し、更に、破砕した試験体を真空パックとする試験を行った。具体的には、破砕機の下部にビニール袋が収容された容器を配置し、そのビニール袋に破砕された試験体を入れ、次に、試験体が充填されたビニール袋の開口部より空気を吸引し、その開口部を熱圧着して閉止した。その結果、試験体が1/5程度にまで圧縮された。
【0011】
圧縮について発明者が種々の試験を行った結果、破砕された試験体を雪崩のように前面(開口部)に流し、薄く広げた状態で真空パックとすることで、1/6〜1/8にまで著しく圧縮されることを見出し、本発明に至ったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−301416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、PCB処理施設内に留置される運転廃棄物の封入容器の本数を減らすべく、運転廃棄物を減容して封入容器への充填量を向上させる廃棄物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る廃棄物処理方法は次のように構成されている。
【0015】
1)廃棄物を破砕する破砕工程と、この破砕工程により破砕された廃棄物を袋体に収容する収容工程と、この収容工程により廃棄物が収容された袋体を傾斜させて前記廃棄物を袋体内に分散する平坦化工程と、この平坦化工程により分散された廃棄物が収容された袋体内の空気を排気して圧偏する圧縮工程と、この圧縮工程により偏平化された袋体の開口部を圧着して閉止する封止工程とを備えていることを特徴としている。
【0016】
2)前記破砕工程と、収容工程と、平坦化工程と、圧縮工程と、封止工程とが、空気を排気して負圧にされたカバー内で行われることを特徴としている。
【0017】
3)前記圧縮工程により排気された空気、又は、前記負圧にされたカバー内より排気された空気が浄化される浄化工程を備えていることを特徴としている。
【0018】
4)前記廃棄物がPCBで汚染された廃棄物であることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る廃棄物処理装置は次のように構成されている。
【0020】
5)廃棄物を破砕する破砕装置と、破砕された廃棄物を収容する袋体と、この袋体を収容する保持容器と、この保持容器を傾斜させる傾斜機構を持つ支持装置と、袋体内の空気を吸引する吸引装置と、袋体の開口部を封止する封止装置と、前記吸引された空気を浄化する浄化装置とを備えることを特徴としている。
【0021】
6)前記破砕装置と、支持装置と、吸引装置と、封止装置とが、負圧にされたカバー内に配置されていることを特徴としている。
【0022】
7)前記支持装置は、袋体内の破砕された廃棄物に振動を付与する振動装置を備えていることを特徴としている。
【0023】
8)前記破砕装置は、二軸剪断機を備えると共に、その二軸剪断機の下部と保持容器の上部とを連通させるリフト装置が設けられていることを特徴としている。
【0024】
9)前記廃棄物がPCBで汚染された廃棄物であることを特徴としている。
【0025】
10)前記袋体の肉厚が100μm以上であることを特徴としている。
【0026】
11)前記保持容器は、この保持容器内に収容した袋体を押圧する押圧部材を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る廃棄物処理方法は、廃棄物を破砕する破砕工程と、この破砕工程により破砕された廃棄物を袋体に収容する収容工程と、この収容工程により廃棄物が収容された袋体を傾斜させて前記廃棄物を袋体内に分散する平坦化工程と、この平坦化工程により分散された廃棄物が収容された袋体内の空気を排気して圧偏する圧縮工程と、この圧縮工程により偏平化された袋体の開口部を圧着して閉止する封止工程とを備えているので、PCBが付着した防護服、防護めがね、手袋、マスク、ウェス、作業靴、紙、シートなどといった運転廃棄物が破砕されて著しく減容する上に、その破砕された運転廃棄物が収容された袋体を傾斜させた状態で押圧部材で押圧しながら真空パックするので、破砕された運転廃棄物が薄板状となる。
【0028】
結果、薄板状となった破砕された運転廃棄物が収容された袋体を封入容器に積層状態として収容することができ、その封入容器における運転廃棄物の嵩密度が著しく大きくなり、従来よりも多量の運転廃棄物を封入容器で保管することができる。
【0029】
従って、施設内で留置されている既存の封入容器の運転廃棄物を、本発明に係る廃棄物処理装置で処理することにより、その運転廃棄物が著しく減容されるので、多数の封入容器が空となり、その封入容器の本数を減らすことができ、各エリアの作業スペースが確保される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置の概略構成図(平面図)である。
【図3】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置における破砕装置の概略構成図(側面図)である。(A)はリフト装置が下降した状態、(B)はリフト装置が上昇した状態を示す図である。
【図4】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置における袋体の保持容器を示す概略構成図である。(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図である。
【図5】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置における支持装置と吸引装置と熱圧着装置とを示す概略構成図(側面図)である。(A)は支持装置のリフトを作動させる前の状態、(B)は支持装置のリフトが作動している状態、(C)は支持装置のリフトが最上点に達し且つ熱圧着装置に袋体が配置された状態を示す図である。
【図6】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置における吸引装置の吸引管と袋体との関係を示す図である。(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図7】本発明に係る廃棄物処理方法を適用した廃棄物処理装置における袋体の保持容器の内部構造の概略図である。(A)は袋体を収容する前の状態、(B)は収容した袋体に破砕物が充填された状態、(C)は袋体を押え板で押圧しながら真空にしている状態を示す図である。
【図8】本発明に係る廃棄物処理方法により形成された薄板状の破砕された二次汚染物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0032】
(概要)
本発明に係る廃棄物処理方法は、破砕した運転廃棄物を袋体内の全体に分散させ、その分散した状態で袋体内の空気を排気して真空パックとし、運転廃棄物をシート状に形成する方法である。
【0033】
(実施例)
本発明に係る廃棄物処理装置は、図1に示すように、廃棄物を破砕する破砕装置2と、破砕された廃棄物を収容する袋体8と、この袋体8を収容する保持容器9と、この保持容器9を傾斜させる傾斜機構を持つ支持装置3と、袋体内の空気を吸引する吸引装置4と、袋体8の開口部を封止する封止装置5と、前記吸引された空気を浄化する浄化装置7とを備えている。
【0034】
また、廃棄物処理装置1は、その全体がポリプロピレン製のシート12で覆われて恰もグリーンハウスのようになっており、更に、そのシート12内の空気が前記浄化装置7によって吸引されて負圧となっている。また、各装置には前記浄化装置7に連通する局所排気管11aが設けられ、その各装置より運転廃棄物に付着したPCBや破砕された運転廃棄物の粒体などが飛散しないようにしている。更に、封入容器30(ドラム缶)の開口部付近にも局所排気管11aが配置され、運転廃棄物より揮発したPCBの飛散を防いでいる。浄化装置7は、その内部に、活性炭が充填された浄化手段を備えており、吸引した空気に含まれるPCBをその活性炭で吸着除去し、PCBが除去された空気を排気するようにしている。
【0035】
前記袋体8は、後述する熱圧着装置5により開口部8cが封止されるように、内層が熱融着性ポリエチレン、中間層がポリエチレン、外層がナイロンである多層構造となっている。また、破砕された運転廃棄物により袋体8が破けたり穴が開いたりしない肉厚に形成されている。この肉厚については、発明者が種々の試験をした結果、容易に袋体が傷つけられない肉厚は70μm以上であり、より好ましくは100μm以上であることが判明している。
【0036】
廃棄物処理装置1は、図2における平面図に示されるように、各装置がそれぞれの台車35上に搭載され、前述の各エリアに移動可能となっている。浄化装置7についても同様に図示しない台車により移動可能となっており、浄化装置7の排気は各エリアに既設の排気装置に接続するようになっている。また、作業者が作業をしやすいように作業台28,29が設けられている。更に、吸引装置4及び熱圧着装置5は、足踏みスイッチ10により操作可能となっており、破砕装置2は図示しない制御盤が設けられている。前記足踏みスイッチ10は、作業者が作業を行いやすいように設けられたものであり、破砕装置2と
同様に制御盤を使用することもできる。
【0037】
破砕装置2は、図3における左側面図に示されるように、台車35と一体となった枠体35aの上部に、二軸剪断機13と、この二軸剪断機13の軸13aを駆動する電動機14とが設けられている。二軸剪断機13の上部には、投入蓋2cを内蔵した投入ホッパ2aが載置され、破砕された運転廃棄物が投入口2bから飛び出さないようにしている。更に、投入蓋2cにリミットスイッチを設け、その投入蓋2cが解放されている状態で二軸剪断機13が起動しないようにインターロックをとっている。
【0038】
また、二軸剪断機13の下方には、廃棄物シュート2fが設けられ、この廃棄物シュート2fの出口にはシャッター2gが設けられており、機器の停止時には、シャッター2gが閉まり、残留物の下方への落下を防止している。廃棄物シュート2fには、過投入検出スイッチ2iが設けられている。
【0039】
前記シュート2fの下部には、保持容器9が配設される空間が形成されると共に、その保持容器9を上下に移動させるリフト装置15が設けられている。そのリフト装置15は、前記枠体35aに一端が固定されたシリンダ15aと、このシリンダ15aの他端に設けられた支持台15bとを備え、その支持台15bをリフトアップさせて前記シャッター2gと保持容器9とを連結するようにしている(図3(b))。また、シャッター2gの下部には、破砕物g2がこぼれないように、保持容器9とシャッター2gとを密着させるためのパッキン2hが設けてある。
【0040】
保持容器9は、図4に示すように、やや縦長の長方形に形成され、両側面に、前記支持装置3に支持される支持突起9aが設けられている。また一方の側面に、破砕された運転廃棄物の最適な充填量を検出するセンサーが取付けられるブラケット9bが形成されている。更に、保持容器9の下部には、作業者が容易に保持容器9を移動させることができるように複数の車輪(キャスター)9gが設けられている。
【0041】
その保持容器9は、例えば、高さが500mm、幅が450mm、奥行きが200mmで肉厚が3mm程度に形成され、その内部に袋体8を収容するようにしている。前記寸法は、袋体8に充填された運転廃棄物が後述の吸引装置4と熱圧着装置5とによって真空パック状態となったときに、その真空パックの寸法が封入容器(ドラム缶)の内径とほぼ同一か僅かに小さくなる大きさとなっている。また、後述する吸引装置4により、袋体8内に運転廃棄物を扁平化させた状態で減圧し、シート状に形成されればよいので、多角形でも円形でもよい。
【0042】
更に、保持容器9の内部には、図7(A)に示されるように、下端が幅方向に移動可能に支持された押え板9wが設けられており、左矢印方向に(左側)に倒すことで内容物(袋体8に収容された破砕物g2)を簡易圧縮した状態とすることができる。そして、その簡易圧縮した状態で、図7(C)に示されるように真空パックすることで運転廃棄物の破砕物g2を薄板状とすることができる。
【0043】
支持装置3と吸引装置4と熱圧着装置5は、共通する台車35上に設けられており、図5に示されるように、上段に吸引装置4と熱圧着装置5とが、中段に支持装置3が、下段に前記吸引装置4の真空ポンプユニット22がそれぞれ設けられている。真空ポンプユニット22は前述の浄化装置7に排気管11を介して連結されている。
【0044】
上段に配置された吸引装置4と熱圧着装置5とは、袋体8の開口部8cを挟持すると共に熱溶着する二本のシーリングバー19と、吸引した排気エアのフィルタ18と、図6に示すような吸引管4aと、偏平な吸引口4dとを備えている。吸引口4dは、破砕された
運転廃棄物g2が吸引されにくいようにノズル先端の開口が、破砕物よりも狭くなっている。更に、吸引口4はシーリングバー19で挟持されても開口が閉止されない強度に形成されている。
【0045】
中段に配置された支持装置3は、上端が枢支され下端にフック部16bが設けられた支持腕16aが、その支持腕16aの中間部に設けられたシリンダ17で駆動されるようにしたリフト装置16を備えている。そのリフト装置16は、図2に示されるように、一対で設けられており、二本の支持腕16aの間に前記保持容器9が支持される指示棒16cが架設されている。
【0046】
前記リフト装置16を備えた支持装置2の動作は、図5(b)に示されるように、シリンダ17が伸長するのに伴って支持腕16aが保持容器9側へ移動し、その支持腕16aの先端に設けたフック部16bが保持容器9の支持突起9aの下部に配置される。このとき、二本の支持腕16bの間に架設された支持棒16cが保持容器9の背面に当接する。
【0047】
シリンダ17の更なる伸長に伴って支持腕16aが上昇し、この支持腕16aと共に保持容器9が持ち上げられ、熱圧着装置5のシーリングバー19近傍に保持容器9が配置される。
【0048】
このように、熱圧着装置5のシーリングバー19近傍に配置された保持容器9より袋体8の開口部8cが作業者によって引き出され、そのシーリングバー19の間に前記開口部8cが配置されると、熱圧着装置5のシーリングバー19が袋体8の開口部8cを挟持すると共に吸引装置4の真空ポンプユニット22が作動し、袋体8内部の空気が排気されるようになっている。また、真空ポンプユニット22に設けられた流量センサあるいは気圧センサにより、袋体8内が所定の真空度となったのを検知すると、シーリングバー19が加熱されて袋体8の開口部8cが熱圧着されるようにしている。
【0049】
(動作)
次に、本発明に係る廃棄物処理方法を適用した処理装置を用いたPCB処理施設における運転廃棄物の処理について、図示して説明する。
【0050】
廃棄物処理装置1は、組み立て式の骨組みで囲われており、その周囲がシート12で覆われると共に、浄化装置7によってシート12内の空気が排気されて負圧に保たれている。作業者は、図示しない出入口からシート内に出入り可能となっており、図1に示されるように、施設内の運転廃棄物が収容されて蔵置された密封容器30(ドラム缶)が搬入される(図1においては左側のドラム缶)。
【0051】
保持容器9内に袋体8を収容すると共に、破砕装置2の支持台15bに保持容器9を配置する。次に、シリンダー15aを縮小させて支持台15bを上昇させて保持容器9とシャッター2gとを連結させる。次いで、そのシャッター2gを開放し、二軸剪断機13と保持容器9の袋体8とが連通した状態とする。この状態で、過投入検出スイッチ2iの反射板であり、電気的な配線のないブラケット9bの位置決めがなされる。
【0052】
ドラム缶30の蓋を外し、そのドラム缶30に封入されていた防護服、樹脂シート、防護手袋や作業靴、長靴などの運転廃棄物g1が作業者によって取り出され、破砕装置2に投入される。投入された運転廃棄物g1が破砕装置2の二軸破砕機13により破砕されると共に、破砕物シュート2fを介して保持容器9の袋体8に順次案内される。
【0053】
前記過投入検出スイッチ2iが、破砕された運転廃棄物g2の袋体8内への充填量が適量に達したことを検出し、二軸剪断機13の回転軸13aが停止されると共に、破砕物シ
ュート2fと保持容器9との間がシャッター2gにより閉鎖される。適量の運転廃棄物g2が充填された保持容器9は、シリンダ15aが伸長して支持台15bと共に下降する。
【0054】
その保持容器9を作業者が支持装置3の所定の位置に移動し、足踏みスイッチ10を操作して支持装置3のリフト16を作動させる。そのリフト16が保持容器9を上昇させながら傾斜させ、この傾斜した状態で保持容器9が熱圧着装置5の近傍に支持される。
【0055】
また、例えば、リフト16に設けられた振動装置により、保持容器9の袋体8内の二次汚染物g2に振動が付与され、前述の傾斜に沿って運転廃棄物g2がなだらかに広げられる。
【0056】
次に、作業者が袋体8の開口部8cをシーリングバー19の間に配置し、足踏みスイッチ10を操作して前記開口部8cをシーリングバー19で挟持すると共に、真空ポンプユニット22を作動させ、袋体8内の空気を排気する。この時、保持容器9の内部に設置された押え板9wを破砕物に押しつけることで、圧縮物の平坦化が図れる。前記真空ポンプユニット22に設けた流量センサあるいは圧力センサにより、袋体8より排気される空気流量あるいは袋体8内の圧力(気圧)が所定の閾値に達したのを検知し、前記シーリングバー19が加熱されて袋体8の開口部8cが熱圧着され、そのシーリングバー19が開口部8cから離される。
【0057】
足踏みスイッチ10を操作して支持装置3のリフト16を下降させて保持容器9が台車35上に載置される。その保持容器9から真空パック状態で薄板状となった運転廃棄物g2が取り出され、前述のドラム缶30あるいは他のドラム缶30bに一枚ごと収容され、ドラム缶内に積層状態となって破砕された運転廃棄物g2が収容される。
【0058】
前述の作業を繰り返し行い、ドラム缶30b内に破砕された運転廃棄物g2が積層され、所定の充填量となったら、ドラム缶30bに蓋をして運転廃棄物g2が封入される。
【0059】
前記ドラム缶30bに収容される板状の運転廃棄物g2は、例えば、防護服や樹脂シートは、そのままの状態に対して1/8の体積にまで圧縮され、また、防護手袋や作業靴、長靴は、そのままの状態に対して1/5の体積にまで圧縮される。
【0060】
(発明の効果)
上述のように、本発明に係る廃棄物処理方法は、廃棄物を破砕する破砕工程と、この破砕工程により破砕された廃棄物を袋体に収容する収容工程と、この収容工程により廃棄物が収容された袋体を傾斜させて前記廃棄物を袋体内に拡散する傾斜工程と、この傾斜工程により拡散された廃棄物が収容された袋体内の空気を排気する排気工程と、この排気工程により排気された袋体の開口部を熱圧着して閉止する閉止工程とを備えているので、PCBが付着した防護服、防護めがね、マスク、ウェス、作業靴、紙などといった運転廃棄物が破砕されて著しく減容する上に、その破砕された運転廃棄物が収容された袋体を傾斜させた状態で真空パックするので、破砕された運転廃棄物が薄板状となる。
【0061】
結果、薄板状となった破砕された運転廃棄物が収容された袋体を封入容器に積層状態として収容することができ、その封入容器における運転廃棄物の嵩密度が著しく大きくなり、従来よりも多量の運転廃棄物を封入容器で保管することができる。
【0062】
従って、施設内で留置されている既存の封入容器の運転廃棄物を、本発明に係る廃棄物処理装置で処理することにより、その運転廃棄物が著しく減容されるので、多数の封入容器が空となり、その封入容器の本数を減らすことができ、各エリアの作業スペースが確保される。
【0063】
なお、前述の実施例においては、各エリアに蔵置されたドラム缶に封入された運転廃棄物を対象として説明したが、日々発生する新規の運転廃棄物も対象であることは勿論のことである。
【符号の説明】
【0064】
1 廃棄物処理装置
2 破砕装置
2a 投入ホッパ
2b 投入口
2c 投入蓋
2f 破砕物シュート
2g シャッター
2i 過投入検出スイッチ
13 二軸剪断機
13a 回転軸
13b 刃
14 駆動モータ
15 リフト装置
15a シリンダ
15b 支持台
3 支持装置
16 リフト装置
16a 支持腕
16b フック部
16c 指示棒
17 シリンダ装置
4 吸引装置
4a 吸引管
4d 吸引口
22 真空ポンプユニット
5 熱圧着装置
18 排気フィルタ
19 溶着シーリングバー
6 パック体
7 浄化装置
8 袋体(ビニール袋)
8a シール部(溶着封止部)
8c 開口部
8h 保護管
9 保持容器
9a 突起部
9b 光電センサ取付ブラケット
9w 押え板
10 足踏み式スイッチ
11 排気管
11a 局所排気
12 ポリプロピレンシート(カバー、グリーンハウス)
30 封入容器(ドラム缶)
35 台車
g1 破砕前の二次汚染物
g2 破砕後の二次汚染物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を破砕する破砕工程と、この破砕工程により破砕された廃棄物を袋体に収容する収容工程と、この収容工程により廃棄物が収容された袋体を傾斜させて前記廃棄物を袋体内に分散する平坦化工程と、この平坦化工程により分散された廃棄物が収容された袋体内の空気を排気して圧偏する圧縮工程と、この圧縮工程により偏平化された袋体の開口部を圧着して閉止する封止工程とを備えていることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記破砕工程と、収容工程と、平坦化工程と、圧縮工程と、封止工程とが、空気を排気して負圧にされたカバー内で行われることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記圧縮工程により排気された空気、又は、前記負圧にされたカバー内より排気された空気が浄化される浄化工程を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記廃棄物がPCBで汚染された廃棄物であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項5】
廃棄物を破砕する破砕装置と、破砕された廃棄物を収容する袋体と、この袋体を収容する保持容器と、この保持容器を傾斜させる傾斜機構を持つ支持装置と、袋体内の空気を吸引する吸引装置と、袋体の開口部を封止する封止装置と、前記吸引された空気を浄化する浄化装置とを備えることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記破砕装置と、支持装置と、吸引装置と、封止装置とが、負圧にされたカバー内に配置されていることを特徴とする請求項5記載の廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記支持装置は、袋体内の破砕された廃棄物に振動を付与する振動装置を備えていることを特徴とする請求項5又は6記載の廃棄物処理装置。
【請求項8】
前記破砕装置は、二軸剪断機を備えると共に、その二軸剪断機の下部と保持容器の上部とを連通させるリフト装置が設けられていることを特徴とする請求項5又は6記載の廃棄物処理装置。
【請求項9】
前記廃棄物がPCBで汚染された廃棄物であることを特徴とする請求項5記載の廃棄物処理装置。
【請求項10】
前記袋体の肉厚が100μm以上であることを特徴とする請求項5記載の廃棄物処理装置。
【請求項11】
前記保持容器は、この保持容器内に収容した袋体を押圧する押圧部材を備えていることを特徴とする請求項5記載の廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−234212(P2010−234212A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83425(P2009−83425)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(509090586)株式会社サンユテクノスプラントエンジニアズ (1)
【出願人】(000204310)泰成工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】