説明

廃棄物処理自動車および廃棄物処理装置

【課題】熱硬化性樹脂の廃棄物を減容する廃棄物処理自動車を提供する。
【解決手段】廃棄物処理自動車1に、廃棄物を持ち上げるショベル部31と、該ショベル部31からの前記廃棄物の投入を許容して該廃棄物を減容し加熱する減容槽11および加熱槽12と、該減容槽11および加熱槽12に蒸気を充満させる水蒸気発生装置11と、該減容槽11および加熱槽12で加熱された廃棄物を破砕する破砕装置22と、本体底部に位置する車輪33と、該車輪33を回転駆動させる駆動エンジン35とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば熱可塑性素材が原料となっている廃棄物を減容するような廃棄物処理自動車および廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用の終了した廃棄物は、減容等されて廃棄されるか、分別して再利用されている。この廃棄物は、夢の島などの埋立地に廃棄されている。廃棄物を減容する方法としては、例えば、廃プラスチックを約140℃で加熱し、廃プラスチック中の発砲スチロールを減容し、廃プラスチックを微粉砕する廃プラスチック分別回収方法が提案されている(特許文献1参照)。また、電子部品搭載プリント配線基板を低温乾留して可燃部分を炭化させ、冷却して破砕する電子部品搭載プリント配線基板の処理方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、これらの方法は、様々な素材で構成されている廃棄物を減容する方法として利便性の高い方法とは言えなかった。詳述すると、例えばこれらの方法は、車のバンパー、およびモーターボートの筐体等、熱硬化素材に難燃剤や熱可塑性素材を含有させた熱硬化性樹脂による廃棄物までをも減容できるものではなかった。このため、このような部材による廃棄物は、減容されずにそのまま廃棄されているのが現状であった。
【0004】
また、このように廃棄物が減容されずにそのまま廃棄されると、廃棄物間に空間が生じることになる。そして、廃棄物間に空間が存在する状態で埋め立てが行われると、この空間にガスが溜まり、このガスが外へ抜け出たときに廃棄物間が詰まって全体の体積が減少し、地盤沈下に繋がるという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−153525号公報
【特許文献2】特開2001−81519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑み、種々の廃棄物を減容することができ、利便性の高い廃棄物処理自動車および廃棄物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、廃棄物の投入を許容して該廃棄物を減容し加熱する減容加熱手段と、該減容化熱手段内に蒸気を充満させる蒸気供給手段と、前記減容加熱手段で加熱された廃棄物を破砕する破砕手段と、本体底部に位置する車輪と、該車輪を回転駆動させる駆動手段とを備えた廃棄物処理自動車であることを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、廃棄物の投入を許容して該廃棄物を減容し加熱する減容加熱手段と、該減容化熱手段内に蒸気を充満させる蒸気供給手段と、前記減容加熱手段で加熱された廃棄物を破砕する破砕手段と、本体底部に位置する車輪と、該車輪を回転駆動させる駆動手段とを備え、前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備えた廃棄物処理自動車であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、種々の廃棄物を減容することができ、利便性の高い廃棄物処理自動車および廃棄物処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1の廃棄物処理自動車1の構成を示す構成図であり、図2は廃棄物処理自動車1が実施する工程のフローチャートである。
【0012】
廃棄物処理自動車1には、水蒸気発生装置11と、減容槽12と、油化槽21と、破砕装置22と、塩素除去装置23と、冷却装置24と、油水分離装置25と、油槽26と、ショベル部31と、油圧アーム部32と、車輪33と、駆動エンジン35とが設けられている。
このうち、水蒸気発生装置11と、減容槽12と、油化槽21と、破砕装置22と、ショベル部31と、油圧アーム部32と、車輪33と、駆動エンジン35とにより、廃棄物減容自動車が構成されている。
【0013】
水蒸気発生装置11は、加熱した水蒸気を減容槽12と油化槽21に供給する水蒸気供給工程を実施する(ステップS1)。減容槽12に供給する水蒸気の温度は、図示省略する温度調整機構により、減容槽12の加熱温度(摂氏200℃程度)と同一かほぼ同一の温度にしている。また、油化槽21に供給する水蒸気の温度は、図示省略する温度調整機構により、油化槽21の加熱温度(たとえば摂氏400℃〜500℃程度、好ましくは摂氏450℃程度)と同一かほぼ同一の温度にしている。
【0014】
減容槽12は、投入口から投入された廃棄物を摂氏200℃程度に加熱して容積を減少させる装置である。この減容槽12により減容工程(ステップS2)を実施する。この減容槽12の投入口は、熱可塑性樹脂、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、廃プラスチック、廃油、電線、廃タイヤ、賞味期限切れコンビニ弁当(コンビニエンスストア等で販売されるプラスチック製容器に食料が収納された弁当)、建設廃材(木屑、金属屑、電線屑、ガラス、陶器等)、および制服等の廃棄物の投入を許容する。この減容槽12の後段には、油化槽21が設けられており、減容槽12は、減容後の固形物および液体を油化槽21に送り出す。
【0015】
油化槽21は、減容槽12から供給される減容後の廃棄物を加熱して油化する油化工程(ステップS3)を実施する。この油化槽21は、加熱装置で加熱される加熱室の内部にプラスチック等を分解させる反応槽を備えて構成されている。この油化槽21は、反応槽(釜)自体の温度を任意の設定温度(例えば摂氏400℃〜500℃程度、好ましくは摂氏450℃程度)に加熱し、水蒸気発生装置11から供給された同温度若しくはほぼ同温度の水蒸気を反応槽内に充満させ、この環境内で廃棄物を加熱する。
【0016】
ここで、油化槽21の温度は、投入許容する廃棄物に含まれる可燃物が通常であれば燃える温度にまで上げることが好ましく、この実施例では、再生油としてA重油を取得する目的も加味して400℃〜500℃程度としている。
【0017】
油化槽21の槽内の廃棄物は、水蒸気の存在により燃えることなく温度上昇する。そして、廃棄物中の油成分は揮発して気化物となり、油化槽21に設けられた気化物取出口(連通孔H3)から塩素除去装置23へ送られる。
【0018】
また、熱可塑性部材で構成された廃棄物については、加熱によって溶け出し、減容される。このとき、廃棄物に土や砂などが付着していても、熱可塑性部材が溶け出すことによって、廃棄物は問題なく減容される。
【0019】
また、熱硬化性樹脂の一種であるFRP部材で構成された車のバンパーやモーターボートの筐体など、熱硬化性樹脂で構成された廃棄物については、加熱によって部材中に含有されている難燃性部材(ブロム)や熱可塑性部材が溶け、硬化材や金属類、臭素、三酸化アンチモンといった残留物質と分離する。従って、廃棄物の表面付近の難燃性部材や熱可塑性部材は廃棄物の外へ流れ出し、廃棄物の内側に埋設されている難燃性部材や熱可塑性部材といった成分は内部で分離して残る。
また、自動車等に用いられるタイヤの廃棄物が投入された場合も、ゴム系素材が溶けて液体となり、残留する固形物と分離される。
【0020】
この油化槽21により加熱された後に残留した固形物は、上述したように成分が分離して脆化した状態となっている。このため、例えば非常に硬く破砕の難しいFRPであっても、油化槽21から出てきた固形物は、普通人が素手で力を加えると破壊できる。従って、水蒸気発生装置11と、減容槽12と、油化槽21と、ショベル部31と、油圧アーム部32と、車輪33と、駆動エンジン35とで廃棄物脆化自動車を構成することができる。
【0021】
破砕装置22は、油化槽21で加熱されて残った固形物の供給を受け、この固形物を粉々に破砕する破壊工程(ステップS4)を実施する。ここで、FRP等の熱硬化性樹脂は、硬化材と可塑性材や難燃材が混合された素材であるため、通常であればそのまま破砕することが非常に困難である。しかし、油化槽21にて熱硬化性樹脂と難燃性部材や熱可塑性部材が分離することで、残留物である固形物は破壊しやすくなっている。また、タイヤについても、本来であれば破砕が困難であるが、ゴム系素材が溶け出しているために残った固形物は破壊しやすくなっている。従って、破砕装置22は、供給された固形物を問題なく容易に破砕することができる。破砕した廃棄物は、廃棄物処理自動車1の車体下方へ廃棄する。これにより廃棄物の容積を大幅に減容することができる。
【0022】
塩素除去装置23は、油化槽21の気化物取出口から供給された気化物の塩素(ハロゲン)を除去する塩素除去工程(ステップS5)を実施する。この塩素除去装置23は、塩素除去後の気化物を後段の冷却装置24へ送り出す。
【0023】
冷却装置24は、塩素除去装置23から供給された気化物を冷却して液化する冷却工程(ステップS6)を実施する。この冷却装置24は、液化した液体を後段の油水分離装置25へ送り出す。
【0024】
油水分離装置25は、冷却装置24から供給された液体の油水分離する油水分離工程(ステップS7)を実施する。この油水分離装置25は、分離された油を油槽26へ供給し、分離された水をミックスチェンジャー27へ供給する。
【0025】
油槽26は、油水分離装置25から供給された油を貯留し、この油を再生油として取り出し許容する。この実施例では、再生油としてA重油が得られる。また、油槽26は、一部の油を水蒸気発生装置11のバーナー用の油として再利用する。
【0026】
ショベル部31は、埋立地などに廃棄されている廃棄物をすくい取る部分であり、廃棄物処理自動車1の車幅と同程度の横幅を有している。
油圧アーム部32は、油圧によって伸縮するアームであり、別途の駆動手段によって廃棄物処理自動車1に取り付けられている基部を中心に回転する回転動作も行う。これにより、先端に装着されているショベル部31ですくった廃棄物を持ち上げ、減容槽12に投入する動作を実行する。
なお、このショベル部31および油圧アーム32は、廃棄物を減容槽12に搬送する搬送手段であればよく、ベルトコンベアで構成するなど、適宜の搬送手段で構成することができる。
【0027】
車輪33は、駆動エンジン35の駆動力を受けて回転駆動するタイヤであり、この回転駆動によって廃棄物処理自動車1を走行させる。
駆動エンジン35は、車輪33に回転駆動力を供給し、車輪33を回転させる。
【0028】
以上の構成と動作により、廃棄物処理自動車1は、車体前方に存在する廃棄物をショベル部31で持ち上げて減容槽12に投入し、廃棄物を減容することができる。
【0029】
また、減容するだけでなく、投入された廃棄物によって、油化により再生油を取り出す、貴重な金属類を取り出す、燃料を取り出すなど、種々の再生物を取り出して廃棄物をリサイクルすることができる。
【0030】
詳述すると、例えば熱可塑性樹脂である廃プラスチックが投入される場合、この廃プラスチックと共に付加物としてのスポンジやギンガミ等も含まれていることが多い。本実施形態では、廃プラスチックにスポンジやギンガミが混ざった状態のものが減容槽12に投入されれば、油槽26から再生油を取得でき、破砕装置22から残渣物を取り出すことができる。そして、この残渣物から、燃えずに残るギンガミを金属として取り出すことができる。また、残渣物のうちの可燃物を燃料として取り出すことができる。
【0031】
また、熱硬化性樹脂であるFRPが減容槽12に投入された場合、非常に破壊困難であるFRPを減容して破砕装置22から残渣物を取得することができる。つまり、減容槽12に投入されたFRPは、水蒸気が充満している油化槽21にて加熱することで成分が分離して脆化し、破砕が容易になる。そして、この破砕容易状態で破砕装置22により破砕するため、非常に強固で本来破砕が困難であるFRPを、容易に破砕できる。また、廃モーターボートの筐体などのFRPには、土や砂などが付着していることが多い。それでも、この土や砂などが付着した状態のFRPを減容槽12に投入すれば、廃棄物処理自動車1により問題なくFRPを減容することができる。
【0032】
また、銅などの金属線を絶縁体で被覆した電線が減容槽12であれば、絶縁体をわざわざ剥ぐことなく、そのまま減容槽12に投入して再生油と銅などの金属を取得することができる。特に、減容槽12および油化槽21にて加熱しても絶縁体からダイオキシンが発生すること防止でき、環境破壊を防止することができる。また、銅が酸化しないため、還元処理が不要となる。このため、還元時の還元ロスを防止できる。また、還元処理を不要とすることで、銅を再生するためのコストを安価にすることができる。
【0033】
また、賞味期限切れコンビニ弁当が弁当箱と残飯が一緒になった状態で減容槽12に投入された場合も、問題なく減容することができる。また、弁当箱に用いられているプラスチックから、再生油を取得することができる。この賞味期限切れコンビニ弁当を減容する場合は、最も高温となる油化槽21の槽内温度を360℃程度とすることが好ましい。
【0034】
また、ゴム材だけでなく針金が付いているような廃タイヤが減容槽12に投入された場合も、問題なく減容して残渣物を取り出すことができる。この残渣物には可燃物が多く含まれているため、固形燃料として再利用することができる。このように廃タイヤを減容する場合、最も高温となる油化槽21の槽内温度を450℃程度とすることが好ましい。
【0035】
また、建設廃材が投入された場合も、問題なく減容し、残渣物と再生油を取り出すことができる。建設廃材は、木屑、金属屑、電線屑、ガラス、および陶器等が混合されていることが多い。このように種々の素材が混合されている建設廃材が減容槽12に投入された場合も、問題なく減容して残渣物と再生油を取り出すことができる。残渣物は、可燃物が多く含まれているため、固形燃料として利用することができる。
【0036】
また、制服などの被服が減容槽12に投入された場合も、問題なく減容して残渣物を取り出すことができる。残渣物は、可燃物が多く含まれているため、固形燃料として利用することができる。
【0037】
このように、様々な物質を投入しても確実に減容でき、また資源を再利用できる利便性の高い廃棄物処理自動車1を提供することができる。
【0038】
また、廃棄物処理自動車1は、駆動エンジン35と車輪33を有して自由に移動することができるため、従来のように廃棄物を廃棄用の施設に運んで減容した後に埋立地などに搬送するという手間を削減することができる。つまり、廃棄物処理自動車1は、廃棄物の存在するところへ移動し、その場で廃棄物を減容することができるため、廃棄物を減容して効率よく搬送することが容易に実現できる。
【0039】
また、廃棄物処理自動車1は、走行しながら前方の廃棄物を破砕して後方へ排出できるため、埋立地などに廃棄された廃棄物を効率よく減容することができる。
【0040】
また、例えばプラモデルなどのプラスチック成型品を製造している工場では、型ヌキして余ったプラスチック余剰物が発生する。廃棄物処理自動車1は、このような工場へ出向し、プラスチック余剰物を回収してその場で減容することができる。
【0041】
また、例えば雨といは、金属と塩ビで構成されているものがある。廃棄物処理自動車1は、このような雨といも、現場に出向してその場で減容することができる。
【0042】
また、廃棄物処理自動車1は、例えば自衛隊や警察署など、各種機関に出向し、その場で制服を減容することもできる。この場合、廃棄過程で制服が不正に流出することを防止でき、機密性確保に役立てることができる。
【0043】
また、廃棄物処理自動車1は、廃棄物を油化してA重油を取得することもできる。このA重油は、水蒸気発生装置11などの加熱用原料としても用いることができるため、廃棄物の減容を効率よく行うことができる。
【0044】
また、油化槽21の槽内は、水蒸気が充満されて酸素が除去されているため、摂氏400℃〜500℃という高温に加熱しても可燃物が燃えることを防止できる。これにより、硬化性物質と難燃性部材や熱可塑性部材の分離の確実性を高めることができ、また、油化槽21の槽表面にすすが付くことを防止できる。
【0045】
この廃棄物処理自動車1により、FRP、廃プラスチック、または廃油等を廃棄物として投入すれば、この廃棄物から油分と水分を抽出して再利用することができると共に、残った固形物を確実に破砕することができる。したがって、廃棄物を効率よく処理することができる。
【0046】
なお、以上の実施形態では、減容槽12と油化槽21を別々に設けたが、一体化して減容槽として設けても良い。この場合、廃棄物処理自動車1を小型化することができる。
【0047】
また、廃棄物処理自動車1は、病院や老人施設などの施設に行かせて、減容化炭化自動車として使用してもよい。この場合、例えばプラスチック、食器、シーツ、注射針など、病院で使用した廃棄物を減容槽12に投入すれば、減容化されて滅菌された破砕物が破砕装置22から排出されることになる。つまり、投入された廃棄物は、減容槽12で減容化され、油化槽21で炭化および滅菌され、破砕装置22に粉々に粉砕される。これにより、病院で用いられて菌が付着している可能性のある廃棄物を、安全に滅菌すると共に減容化することができ、その後の取り扱いを容易化することができる。
【実施例2】
【0048】
図3は、実施例2の廃棄物処理自動車1の部分拡大図を示し、図4は、実施例2の廃棄物処理自動車1の動作のフローチャートを示す。
この実施例では、油化槽21に、連通孔H1〜H4を開閉する開閉蓋C1〜C4が設けられている。詳述すると、油化槽21には、水蒸気発生装置11に連通する連通孔H1、減容槽12に連通する連通孔H2、塩素除去装置23に連通する連通孔H3、および破砕装置22に連通する連通孔H4が設けられている。
【0049】
そして、この連通孔H1〜H4に、それぞれ開閉蓋C1〜C4が設けられている。開閉蓋C1〜C4は、図示省略する開閉駆動装置により開閉駆動される。これにより、図3(A)に示すように開閉蓋C1〜C4を開状態にして油化槽21内を開放した開放状態と、図3(B)に示すように開閉蓋C1〜C4を閉状態にして油化槽21内を密閉した密閉状態とに状態変化できるようにしている。
【0050】
なお、開閉蓋C1〜C4の開閉は、全て同一制御によって一括して開閉駆動するようにする、あるいは、個別に開閉駆動するなど、適宜の構成により開閉駆動するとよい。
【0051】
また、連通孔H1は、水蒸気発生装置11から油化槽21内に水蒸気を導入する水蒸気導入口として機能するものであるから、この水蒸気導入口を複数個所に設けても良い。この場合、加熱した水蒸気を油化槽21内にむらなく導入することが容易になる。
【0052】
また、連通孔H3は、塩素除去装置23へ気化物を取り出す気化物取出口として機能するものである。この気化物取出口から塩素除去装置23へは、気化物が水蒸気と共に送り出される
【0053】
図4に示すように、実施例2の廃棄物処理自動車1は、実施例1で説明した各工程に加えて、滅菌工程を行う。この滅菌工程は、減容工程の次で油化工程の前に行う構成としている。この滅菌工程で、廃棄物処理自動車1は、開閉駆動装置により開閉蓋C1〜C4を全て閉状態にして油化槽21を密閉状態にし、この密閉状態で加熱を行う。このとき、油化槽21内は密閉状態であるため、雰囲気圧が高まって空気圧よりも圧力が高い高圧雰囲気(たとえば2気圧程度)になる。従って、開放状態で空気圧雰囲気になっているときより減容槽12内の温度を高く上昇させることができ、800℃程度かそれ以上まで昇温させることができる。これにより、廃棄物に付着した菌を死滅させる滅菌処理を行える。この滅菌処理は、病院にて使用された後の廃棄物の処理に非常に有効である。この滅菌処理を施すことによって、以降の廃棄物管理に感染予防などの管理が不要となり、扱いを容易化することができる。
【0054】
この滅菌工程が完了すると、廃棄物処理自動車1は、開閉蓋C1〜C4を全て開状態にして次の油化工程に進む。滅菌工程以外の工程(ステップS11〜S12、S14〜S18)は、上述した実施例の各工程(ステップS1〜S7)と同一であるので、その詳細な説明を省略する。なお、これらの滅菌工程以外の工程(ステップS11〜S12、S14〜S18)は、開閉蓋C1〜C4を全て開状態にして実行する。
【0055】
以上の構成および動作により、廃棄物を滅菌し、その後で油化することができる。滅菌を行うことで油化後の残渣物の管理を容易にでき、感染予防などの対策を省略することができる。また、滅菌後に油化を行うことで、油化中に細菌が生きたままで破砕装置22や塩素除去装置23に流れ込むことを防止できる。また、実施例1と同一の効果も得ることができる。
【実施例3】
【0056】
図5は、実施例3の廃棄物処理自動車1の動作を説明するフローチャートである。
廃棄物処理自動車1は、実施例2における工程の順序を一部異ならせており、滅菌工程(ステップS25)を油化工程(ステップS23)の次に実行するように構成している。その他の構成および動作は、実施例2と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0057】
以上の構成および動作により、油化工程により発生した残渣物を、高圧雰囲気下(例えば2気圧)で高温(例えば800℃程度かそれ以上)の油化槽21内で滅菌することができる。従って、以降の残渣物の取り扱いを容易にすることができる。また、実施例1と同一の効果も得られる。
【0058】
なお、以上の実施形態の各廃棄物処理自動車1から車輪33や駆動エンジン35を排除して、施設に備え付けて使用する廃棄物処理装置を構成してもよい。この場合、移動はできなくとも、設置された場所で減容でき、再生油の取り出し、金属類の取り出し、および固形燃料の取り出し等を行うことができる。また、廃棄物処理装置を大型化することができ、一度に大量の廃棄物を減容等することができる。
【0059】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の蒸気供給手段は、実施形態の水蒸気発生装置11に対応し、
以下同様に、
減容加熱手段とは、減容槽12および油化槽21に対応し、
破砕手段は、破砕装置22に対応し、
駆動手段は、駆動エンジン35に対応し、
第1連通孔は、連通孔H4に対応し、
第2連通孔は、連通孔H1に対応し、
開閉蓋は、開閉蓋C1,C4に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】廃棄物処理自動車の構成図。
【図2】廃棄物処理自動車が実施する工程のフローチャート。
【図3】実施例2の廃棄物処理自動車の部分拡大説明図。
【図4】実施例2の廃棄物処理自動車が実施する工程のフローチャート。
【図5】実施例3の廃棄物処理自動車が実施する工程のフローチャート。
【符号の説明】
【0061】
1…廃棄物処理自動車、11…水蒸気発生装置、12…減容槽、21…油化槽、22…破砕装置、25…油水分離装置、31…ショベル部、33…車輪、35…駆動エンジン、C1,C4…開閉蓋、H1,H4…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の投入を許容して該廃棄物を減容し加熱する減容加熱手段と、
該減容化熱手段内に蒸気を充満させる蒸気供給手段と、
前記減容加熱手段で加熱された廃棄物を破砕する破砕手段と、
本体底部に位置する車輪と、
該車輪を回転駆動させる駆動手段とを備えた
廃棄物処理自動車。
【請求項2】
前記廃棄物は、熱可塑性素材が含有されている部材である
請求項1記載の廃棄物処理自動車。
【請求項3】
前記廃棄物は、熱硬化性素材が含有されている部材である
請求項1または2記載の廃棄物処理自動車。
【請求項4】
前記減容加熱手段の加熱槽の温度と、前記蒸気供給手段で加熱槽内に供給される蒸気の加熱槽内での蒸気温度を同一若しくはほぼ同一にした
請求項1、2または3記載の廃棄物処理自動車。
【請求項5】
前記加熱槽温度と前記蒸気温度を約400℃から500℃とした
請求項4記載の廃棄物処理自動車。
【請求項6】
前記減容化熱手段には、前記破砕手段への第1連通孔と前記蒸気供給手段への第2連通孔が設けられ、
前記第1連通孔と前記第2連通孔に、開閉する開閉蓋を備えた
請求項1から5のいずれか1つに記載の廃棄物処理自動車。
【請求項7】
前記開閉蓋を閉状態にして前記減容加熱手段による加熱を行い、該減容加熱手段内を高圧雰囲気に加圧して前記廃棄物または該廃棄物の減容後の残渣物を滅菌する構成にした
請求項6記載の廃棄物処理自動車。
【請求項8】
廃棄物の投入を許容して該廃棄物を減容し加熱する減容加熱手段と、
該減容化熱手段内に蒸気を充満させる蒸気供給手段と、
前記減容加熱手段で加熱された廃棄物を破砕する破砕手段と、
本体底部に位置する車輪と、
該車輪を回転駆動させる駆動手段とを備え、
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備えた
廃棄物処理自動車。
【請求項9】
廃棄物の投入を許容して該廃棄物を減容し加熱する減容加熱手段と、
該減容化熱手段内に蒸気を充満させる蒸気供給手段と、
前記減容加熱手段で加熱された廃棄物を破砕する破砕手段とを備えた
廃棄物処理装置。
【請求項10】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入された廃プラスチックおよび付加物から、再生油と金属と残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。
【請求項11】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入されたFRPなどの熱硬化性樹脂から、減容した残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。
【請求項12】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入された電線から、金属と残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。
【請求項13】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入された賞味期限切れコンビに弁当から、再生油と残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。
【請求項14】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入された廃タイヤから、可燃性の残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。
【請求項15】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入された建設廃材から、再生油と残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。
【請求項16】
前記減容加熱手段は、揮発した気化物を取り出す気化物取出部を有し、
該気化物取出部から取り出された気化物を油水分離する油水分離装置を備え、
投入された被服から、可燃性のある残渣物を取り出す構成とした
請求項9記載の廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−264725(P2008−264725A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114026(P2007−114026)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(597120972)オリエント測器コンピュータ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】