説明

廃棄物溶融処理方法および廃棄物溶融処理装置

【課題】乾燥用シャフト部内に形成した廃棄物充填層に火格子部及び熱分解残渣溶融部で発生したガスの流れを均一化する。
【解決手段】廃棄物を乾燥・熱分解する乾燥用シャフト部1の頂部から廃棄物を装入して形成した廃棄物充填層6に、熱分解残渣を生成する火格子部2と塊状炭素系可燃物質を熱源として熱分解残渣を溶融する熱分解残渣溶融部3とで発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥・熱分解させるとともに、廃棄物充填層6を通過したガスは乾燥用シャフト部1の頂部から排出し、乾燥用シャフト部1で乾燥した廃棄物を火格子部2で熱分解して熱分解残渣を生成し、生成した熱分解残渣を火格子部2から熱分解残渣溶融部3へ供給して溶融処理し、乾燥シャフト部1におけるガス流れを検出して火格子部2の送風量、送風温度、送風バランス及び/又は火格子速度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を乾燥・熱分解して廃棄物中の水分および揮発分を除去して得られた熱分解残渣を溶融する廃棄物溶融処理に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物などの廃棄物をシャフト炉式廃棄物溶融炉で溶融処理することが行われている。図2に示すように、溶融炉31には、廃棄物がコークス、石灰石などの副資材とともに、炉上部から装入装置32により装入される。廃棄物は炉内で乾燥、熱分解、燃焼、溶融の過程を経て出湯口33から溶融物として排出される。廃棄物中の可燃物は、一部が熱分解されてガスとなって排出され、一部は炉下部で羽口34から吹き込まれた空気および酸素によって燃焼するが、残りの可燃物は可燃性ダストとなって溶融炉31の炉頂から排出される。
【0003】
溶融炉31の炉頂から排出される可燃性ダストは、可燃性ダスト捕集装置35で捕集され、可燃性ダスト貯蔵タンク36に貯蔵され、可燃性ダスト切出装置37で切り出されて酸素富化空気を供給する羽口34から炉内へ吹き込まれる。可燃性ダスト捕集装置35を通過した排ガスは、後段の燃焼室で燃焼される。
【0004】
溶融炉31による廃棄物溶融処理では、処理物を溶融するための主燃料として使用されるコークスの処理費用に占める割合が大きいので、処理費用を節約するためにコークスの使用量を低減することが望まれている。
【0005】
一方で、地球温暖化防止の観点から、化石燃料に由来するコークスを溶融熱源として用いるので、環境に対するCO負荷を削減することからもコークス使用量の削減が望まれている。
【0006】
コークス使用量を低減させるため、例えば、羽口を介して炉頂から排出した可燃性ダストとともに、可燃性ダスト以外の可燃物を吹き込む方法(特許文献1)、下段送風羽口から供給される酸素量(A)に対する、捕集され該下段送風羽口から供給される可燃性ダストとコークスの量および組成から求まる理論酸素量(B)の比率(B/A)を、0.5〜1.0の範囲になるように、可燃性ダストの吹き込み量に応じて送風条件を変える方法(特許文献2)、加熱コイルによって炉内に充填されたコークスを羽口から吹き込まれた空気又は酸素富化空気により還元燃焼せしめるとともに、該コークスに交番電流を通電して誘導加熱することにより廃棄物を溶融処理する廃棄物の溶融処理方法(特許文献3)あるいは、木材などのバイオマスを利用する方法(特許文献4)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−207911号公報
【特許文献2】特開2003−056820号公報
【特許文献3】特開2002−054810号公報
【特許文献4】特開2007−93069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シャフト炉式ガス化溶融炉の炉内の充填層では直接熱交換により固体の昇温が行われているため熱効率はよいが、廃棄物中には生ごみ等の高水分ごみや木等の揮発分が多く、また径が大きいものが存在する。このため、従来型のシャフト式ガス化溶融炉では、これらの廃棄物の一部が十分に乾燥されることなく、また揮発分のガス化が十分行われることなく炉最下部に下降して、コークスと共に燃焼・溶融されていた。炉下部において水分や揮発分はいずれも雰囲気温度を低下させることになるので、雰囲気温度を高く維持し非燃焼物を完全溶解するためには、結果としてコークス使用量を増やす必要がある。また、コークス代替としてLPG等の外部燃料を使用する場合、外部燃料(コークス+ガス)使用量は高いままであった。また、従来のシャフト炉式ガス化溶融炉内では、ごみの装入時や未乾燥・未乾留の廃棄物が炉最下部まで下降した時などに、充填層内での揮発分のガス化に伴う蒸気量や排ガス量の変動が発生していた。
【0009】
さらに、従来型のシャフト炉式ガス化溶融炉では水分および揮発分の乾燥、ガス化が均一になされず、吹き抜けと呼ばれるガスの偏流現象が発生することがあった。
【0010】
そこで、本発明は、乾燥用シャフト部内に形成した廃棄物充填層に火格子部及び熱分解残渣溶融部で発生したガスの流れを均一化することにより、外部燃料使用量を低減させることができる廃棄物溶融処理方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の廃棄物溶融処理方法は、廃棄物を乾燥・熱分解する乾燥用シャフト部の頂部から廃棄物を乾燥用シャフト部内に装入して形成した廃棄物充填層に、熱分解残渣を生成する火格子部と塊状炭素系可燃物質を熱源として熱分解残渣を溶融する熱分解残渣溶融部とで発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥・熱分解させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスは乾燥用シャフト部の頂部から排出し、乾燥用シャフト部で乾燥した廃棄物を火格子部で熱分解して熱分解残渣を生成し、生成した熱分解残渣を火格子部から熱分解残渣溶融部へ連続的に供給して溶融し、かつ、乾燥シャフト部におけるガス流れを検出して火格子部からの送風量、送風温度、送風バランス及び/又は火格子速度を変化させて乾燥用シャフト部におけるガス流れを均一にすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の廃棄物溶融処理装置は、廃棄物装入口及び排ガス排気口が頂部に設けられ、廃棄物装入口から廃棄物が装入されて形成された廃棄物充填層に火格子部及び熱分解残渣溶融部で発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥・熱分解させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスが排ガス排気口から排出される乾燥用シャフト部と、乾燥用シャフト部の下部に接続され、乾燥用シャフト部で乾燥した廃棄物を熱分解して熱分解残渣を生成する火格子部と、火格子部の熱分解残渣の出側に接続され、火格子部から供給される熱分解残渣を、塊状炭素系可燃物質を熱源として溶融処理する熱分解残渣溶融部とが順次配列されており、乾燥シャフト部にガス流れを検出するための検出手段を有し、検出信号により火格子部からの送風量、送風温度、送風バランス及び/又は火格子速度を変化させて乾燥用シャフト部におけるガス流れを均一にする制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、乾燥用シャフト部のガス流れを検出して、火格子部の送風量、送風温度、送風バランス、火格子速度等の因子を変化させてガス流れを均一化することで乾燥用シャフト部における炉内ガスと廃棄物との適正な熱交換が可能となり、コークス等の外部燃料使用量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明おいて使用する火格子を備えた廃棄物溶融処理装置を示す概略図である。
【図2】従来の廃棄物溶融処理設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1において、本発明の廃棄物溶融処理装置は、装入された廃棄物を乾燥・熱分解する乾燥用シャフト部1、乾燥用シャフト部1で乾燥・熱分解された廃棄物をさらに熱分解して熱分解残渣を生成する火格子部2、火格子部2で生成された熱分解残渣を燃焼・溶融する熱分解残渣溶融部3からなる。乾燥用シャフト部1が火格子部2の入側の上方に配置され、熱分解残渣溶融部3が火格子部2の出側の下方に配置されてクランク形状に連通して一体に接続されている。
【0017】
乾燥用シャフト部1の頂部には、廃棄物装入口4と排ガス出口5が設けられる。乾燥用シャフト部1内に廃棄物装入口4から装入された廃棄物により廃棄物充填層6が形成される。廃棄物充填層6は火格子部2及び熱分解残渣溶融部3で発生したガスが通過し、通過したガスは頂部の排ガス出口5から排出される。
【0018】
乾燥用シャフト部1には、乾燥用シャフト部1におけるガス流れを検出するための手段として、乾燥用シャフト部内のガス温度あるいは廃棄物温度を検出する温度計やサーモグラフィー等のガス流れ検出手段7が設置される。ガス流れ検出手段7で検出された信号は、制御手段に入力され、火格子部の送風量、送風温度、送風バランス及び/又は火格子速度の制御端を制御してガス流れを均一にする。
【0019】
火格子部2は、乾燥用シャフト部1で乾燥、熱分解された廃棄物をさらに熱分解させて熱分解残渣を生成して熱分解残渣溶融部3へ移動させる火格子を備えている。火格子部2は、スト−カ炉と同様に、可動火格子8と固定火格子9とを交互に階段状又は傾斜状に組み合せることにより形成されており、各可動火格子8を流体圧シリンダ等の駆動装置で前後方向へ一定のピッチで往復動させることによって、火格子上の廃棄物を撹拌しながら上流側から下流側へ前進させるようになっている。火格子部2は下方から空気が送風される。火格子構造とすることによって、熱分解残渣溶融部3への熱分解残渣7の供給が連続的且つ安定的となり、熱分解残渣溶融部3において熱分解残渣の安定的な溶融を確保することが可能となる。
【0020】
熱分解残渣溶融部3は、下方の炉床部10、この炉床部10の上に連なる朝顔部11、この朝顔部11の上のシャフト部12を備える。なお、シャフト部12はなくてもかまわない。炉床部10には酸素源として空気と酸素を吹き込む下段羽口13を備えるとともに、朝顔部11からシャフト部12の下端部にかけて空気を吹き込む上段羽口14,15が配置されている。熱分解残渣溶融部3の炉床部10には、従来のシャフト炉式廃棄物溶融炉と同じくコークスベットが形成され、溶融物を出湯する出湯口16が形成されている。
【0021】
コークス、石灰石などの副資材は、熱分解残渣溶融部3の頂部の副資材装入口17から投入する。
【0022】
前記構成において、乾燥用シャフト部1の頂部の廃棄物装入口4から廃棄物が乾燥用シャフト部1内に装入されて形成された廃棄物充填層6に火格子部2および熱分解残渣溶融部3で発生した排ガスが通過することによって熱交換されて廃棄物の乾燥・熱分解を効率化することが可能となる。乾燥用シャフト部1の廃棄物充填層6を通過した排ガスは、排ガス出口5から排気される。
【0023】
乾燥用シャフト部1で乾燥、熱分解された廃棄物は、火格子部2でさらに熱分解させて熱分解残渣18を生成する。生成された熱分解残渣18は、火格子部2の出側から熱分解残渣溶融部3内へ落下して充填され、コークスベットの熱源により燃焼、溶融され、炉床部10の出湯口16から排出される。
【0024】
本発明においては、乾燥用シャフト部1に設置されている温度計やサーモグラフィー等の検出手段7にて把握した乾燥用シャフト部1におけるガス流れを元に火格子部2からの送風量、送風温度、送風バランス、火格子速度等の因子を変化させることによって乾燥用シャフト部1におけるガス流れを均一にすることで乾燥用シャフト部における炉内ガスと廃棄物との適正な熱交換が可能となり、コークス等の外部燃料使用量を極小化することが可能となる。
【0025】
乾燥シャフト部1にガス流れ検出手段7として設置された温度計の1カ所が非常に高温になってガス流れの偏流が検出された場合、火格子部2にて発生した高温ガスがその部分に局所的に流れていることがわかる。このような局所的な流れ抑制するために、たとえば火格子からの送風量を変化させることによって温度の低い部位へのガス流れを増やしたり、温度上昇の大きい部位の火格子速度を変化させたりして、乾燥シャフト部でのガス流れを均一化することが可能となる。
【0026】
送風量、送風バランスおよび火格子速度を変化させ、乾燥用シャフトにおけるガス流れを均一にするために、火格子部は2段以上の構造とし、それぞれに駆動装置を有することが望ましい。
【符号の説明】
【0027】
1:乾燥用シャフト部 2:火格子部
2a:前段の火格子群 2b:後段の火格子群
3:熱分解残渣溶融部 4:廃棄物装入口
5:排ガス出口 6:廃棄物充填層
7:ガス流れ検出手段 8:可動火格子
9:固定火格子 10:炉床部
11:朝顔部 12:シャフト部
13:下段羽口 14:上段羽口
15:上段羽口 16:出湯口
17:副資材装入口 18:熱分解残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を乾燥・熱分解する乾燥用シャフト部の頂部から廃棄物を乾燥用シャフト部内に装入して形成した廃棄物充填層に、熱分解残渣を生成する火格子部と塊状炭素系可燃物質を熱源として熱分解残渣を溶融する熱分解残渣溶融部とで発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥・熱分解させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスは乾燥用シャフト部の頂部から排出し、乾燥用シャフト部で乾燥した廃棄物を火格子部で熱分解して熱分解残渣を生成し、生成した熱分解残渣を火格子部から熱分解残渣溶融部へ連続的に供給して溶融処理し、
乾燥シャフト部におけるガス流れを検出して火格子部からの送風量、送風温度、送風バランス及び/又は火格子速度を変化させて乾燥用シャフト部におけるガス流れを均一にすることを特徴とする廃棄物溶融処理方法。
【請求項2】
前記ガス流れ検出が、ガス温度または廃棄物温度であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
廃棄物装入口及び排ガス排気口が頂部に設けられ、廃棄物装入口から廃棄物が装入されて形成された廃棄物充填層に火格子部及び熱分解残渣溶融部で発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥・熱分解させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスが排ガス排気口から排出される乾燥用シャフト部と、
乾燥用シャフト部の下部に接続され、乾燥用シャフト部で乾燥した廃棄物を熱分解して熱分解残渣を生成する火格子部と、
火格子部の熱分解残渣の出側に接続され、火格子部から供給される熱分解残渣を、塊状炭素系可燃物質を熱源として溶融処理する熱分解残渣溶融部とが順次配列されており、
乾燥シャフト部にガス流れを検出するための検出手段を有し、検出信号により火格子部からの送風量、送風温度、送風バランス及び/又は火格子速度を変化させて乾燥用シャフト部におけるガス流れを均一にする制御手段を有することを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記検出手段が温度計であることを特徴とする請求項3記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記検出手段がサーモグラフィであることを特徴とする請求項3記載の廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−64383(P2011−64383A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214714(P2009−214714)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】