説明

廃棄物溶融炉の羽口のパージ方法及びその装置

【課題】三重管構造羽口のガス吹込み開始時及びガス吹込み停止時の非定常時に逆火を防止し且つガスを吹込まない時の羽口の詰まり防止して、安定運転を確保するとともに、不活性ガスの使用量を削減させ廃棄物溶融炉の羽口のパージ方法及びその装置を提供する。
【解決手段】廃棄物溶融炉の羽口1が、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気を供給する内筒2、可燃性ダストの着火用燃料を供給する中間筒3、及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する外筒4からなるとともに各筒の先端部を導通させた三重管構造の羽口のパージ方法において、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを開始する前には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管11,20内を不活性ガスでパージし、吹込みを停止した場合には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管11,20内を不活性ガスでパージした後に不活性ガスから空気に切り換えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般廃棄物、産業廃棄物などの廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉の羽口のパージ方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物溶融炉内に廃棄物をコークス、石灰石と共に装入し、炉体に設けられている羽口から空気又は酸素富化空気を吹き込み、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融して廃棄物を処理することが行われている。
【0003】
図4は、廃棄物溶融処理の説明図で、廃棄物溶融炉31には、廃棄物が副資材とともに、炉上部から装入装置32を介して装入され、炉内で乾燥、熱分解、燃焼、溶融の過程を経て出滓口33からはスラグが排出される。廃棄物中の可燃物は、一部が乾留されてガスとなって排出され、また一部は炉下部で羽口から吹き込まれた空気及び酸素によって燃焼するが、残りの可燃物は可燃性ダストとなって溶融炉31の炉頂から排出される。廃棄物溶融炉31の炉頂から排出されるダストは、可燃性ダスト捕集装置35で捕集し、可燃性ダスト貯蔵タンク36に貯蔵され、可燃性ダスト切出装置37で切り出されて、酸素富化空気を供給する羽口34から炉内へ吹き込まれる。可燃性ダスト捕集装置35を通過した排ガスは、燃焼室で燃焼される。
【0004】
可燃性ダストを炉内に吹き込む羽口において、特許文献1には、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気を供給する内筒、可燃性ダストの着火用燃料を供給する中間筒、及び着火用燃料燃焼用の酸素を供給する外筒の三重管構造とし、各筒の先端部で導通させるとともに、各筒の先端部と、羽口先端部との間に、着火室を形成した羽口、及び可燃性ダストと酸素富化空気、着火用燃料、着火用燃料燃焼用の酸素のそれぞれの供給ラインに、逆止弁と自動で作動する窒素パージシステムを配設することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−98676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の三重管構造の羽口は、燃料ガスの性状および炉規模などにより、燃料ガス及び燃料ガス燃焼用酸素のノズルの開口面積が小さくなることがある。この条件では、燃料ガス及び燃料ガス燃焼用酸素を溶融炉内に吹込まない場合にダストなどによるノズルの詰まりが発生することがある。また、詰まり防止に窒素パージシステムを使う方法も考えられるが、液化窒素の使用や窒素発生装置の運転時間増など運転コストアップにつながる。
【0006】
そこで、本発明は、三重管構造羽口のガス吹込み開始時及びガス吹込み停止時の非定常時に逆火を防止し且つガスを吹込まない時の羽口先端の詰まりを防止して、安定運転を確保するとともに、不活性ガスの使用量を削減させて経済的な運転を可能とする廃棄物溶融炉の羽口のパージ方法及びその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の、廃棄物溶融炉の羽口のパージ方法は、廃棄物溶融炉内に羽口から空気又は酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉の羽口が、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気を供給する内筒、可燃性ダストの着火用燃料を供給する中間筒、及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する外筒からなるとともに各筒の先端部を導通させた三重管構造の羽口のパージ方法において、廃棄物溶融炉に、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを開始する前には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージし、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを停止した場合には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージした後に不活性ガスから空気に切り換えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の、廃棄物溶融炉の羽口のパージ装置は、廃棄物溶融炉内に羽口から空気又は酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉の羽口が、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気を供給する内筒、可燃性ダストの着火用燃料を供給する中間筒、及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する外筒からなるとともに各筒の先端部を導通させた三重管構造の羽口からなり、中間筒に着火用燃料を供給する配管及び外筒に着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管にパージ配管が接続され、パージ配管に、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを開始する前には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージし、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを停止した場合には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージした後に不活性ガスから空気に切り換えるパージガス切替弁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、非定常時には、パージガスとして不活性ガスを用いることにより、配管内の着火用燃料は移管内及び着火用燃料燃焼用酸素配管内を不活性ガスで置換し、目詰まり、炉内ガスの逆火を防止する。
【0010】
また、長時間ガス吹込みを行わない場合は、不活性ガスパージ後は逆火防止のための手段は必要なく、羽口先端の詰まり防止のために、空気を使用することで目詰まりを防止することができる。
本発明は、その状況に応じてパージ流体を不活性ガスと空気とを使い分けることにより、安全性を確保しつつ、高価な不活性ガスの使用量を削減可能であるため、経済的な運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明のパージ方法を実施するための装置の一実施例を示す図、図2(a)は三重管構造の羽口の概略断面図、(b)は先端部の吹出孔を示す側面図である。
【0012】
図2において、本発明において使用する三重管構造の羽口1は、空気又は酸素富化空気で可燃性ダストを気送して供給する内筒2、可燃性ダストの着火用燃料(以下「燃料」という。)を供給する中間筒3、及び着火用燃料燃焼用酸素(以下「酸素」という。)を供給する銅製で水冷構造の外筒4が間隔をおいて配置された三重管構造である。燃料は、都市ガスやLPGのような燃料ガス、もしくは、灯油や重油のような液体燃料が利用される。図2(b)に示すように、中間筒3の先端部には同心円上に複数の燃料吹出孔6が形成され、外筒4の先端部は同心円上に複数の酸素吹出孔5が形成される。
【0013】
図1において、羽口1の中間筒に燃料を供給する燃料供給用本管7には、流量計8、流量調整弁9、遮断弁10が設けられ、燃料供給用本管7から分岐した各燃料供給用支管11には遮断弁12、逆止弁13、流量計14、逆止弁15がそれぞれ設けられる。
【0014】
羽口1の外筒に酸素を供給する酸素供給用本管16には、流量計17、流量調整弁18、遮断弁19が設けられ、酸素供給用本管16から分岐した各酸素供給用支管20には遮断弁21、流量計22、逆止弁23がそれぞれ設けられる。
【0015】
燃料供給用支管11及び酸素供給用支管20に不活性ガス又は空気をパージするパージ用配管24が接続される。パージ用配管24には、不活性ガスと空気を切り替えるパージガス切替弁25が設けられ、さらに流量計26、遮断弁27、逆止弁28がパージガス切替弁25と燃料供給用支管11及び酸素供給用支管20の間に設けられる。なお、図1においては、パージ用配管24が燃料供給用支管11及び酸素供給用支管20に接続されているが、この接続に変えて、点線で示すように燃料供給用本管7及び酸素供給用本管16に接続してもよい。
【0016】
次に本発明のパージ方法について説明する。
【0017】
図3はパージのタイミングを示す図である。
【0018】
廃棄物溶融炉の操業は、立ち上げ時は三重管構造の羽口1から燃料、酸素の吹き込みは行わず、コークスを燃焼させて温度を上昇させてから羽口1の内筒2から可燃性ダストと空気又は酸素富化空気の吹き込み、中間筒3から燃料の吹き込み、外筒4から酸素の吹き込みを開始して廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融を行う定常状態に移行する。
【0019】
燃料及び酸素の吹込みを開始する前の非定常状態では、燃料及び酸素の配管内及び羽口内を不活性ガス(窒素)でパージして噴出孔5,6の目詰まりとコークスの燃焼によるガスの侵入による逆火を防止する。窒素のパージは、パージ用配管24のパージガス切換弁25の窒素側を開、空気側を閉にし、パージガス遮断弁25を開にしてパージ用配管24に接続された燃料供給用支管11及び酸素供給用支管20に窒素を送り込む。
【0020】
また、燃料及び酸素の吹込みを停止した場合には、一定時間不活性ガスにて燃料及び酸素の配管をパージして燃料及び酸素を炉内に放出し、目詰まりと炉内ガスの侵入を防止する。窒素により配管内のパージが終了すると、切替弁によりパージガスを窒素から空気に切り換えて引き続き目詰まりと炉内ガスの侵入を防止する。窒素から空気への切換のタイミングは、パージする配管の容積、長さ、安全率等から設定するが、数分もあれば十分である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のパージガス吹込みを実施するための装置の一実施例を示す図である。
【図2】(a)は三重管構造の羽口の概略断面図、(b)は先端部の吹出孔を示す側面図である。
【図3】パージのタイミングを示す図である。
【図4】廃棄物溶融処理の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1:羽口 2:内筒
3:中間筒 4:外筒
5:酸素吹出孔 6:燃料吹出孔
7:燃料供給用本管 8:流量計
9:流量調整弁 10:遮断弁
11:燃料供給用支管 12:遮断弁
13:逆止弁 14:流量計
15:逆止弁 16:酸素供給用本管
17:流量計 18:流量調整弁
19:遮断弁 20:酸素供給用支管
21:遮断弁 22:流量計
23:逆止弁 24:パージ用配管
25:パージガス切替弁 26:流量計
27:遮断弁 28:逆止弁
31:廃棄物溶融炉 32:装入装置
33:出滓口 34:羽口
35:可燃性ダスト捕集装置 36:可燃性ダスト貯蔵タンク
37:可燃性ダスト切出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物溶融炉内に羽口から空気又は酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉の羽口が、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気を供給する内筒、可燃性ダストの着火用燃料を供給する中間筒、及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する外筒からなるとともに各筒の先端部を導通させた三重管構造の羽口のパージ方法において、
廃棄物溶融炉に、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを開始する前には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージし、
可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを停止した場合には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージした後に不活性ガスから空気に切り換えることを特徴とする廃棄物溶融炉の羽口のパージ方法。
【請求項2】
廃棄物溶融炉内に羽口から空気又は酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融炉の羽口が、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気を供給する内筒、可燃性ダストの着火用燃料を供給する中間筒、及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する外筒からなるとともに各筒の先端部を導通させた三重管構造の羽口からなり、
中間筒に着火用燃料を供給する配管及び外筒に着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管にパージ配管が接続され、
パージ配管に、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを開始する前には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージし、可燃性ダストと空気又は酸素富化空気、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素の吹込みを停止した場合には、着火用燃料及び着火用燃料燃焼用酸素を供給する配管内を不活性ガスでパージした後に不活性ガスから空気に切り換えるパージガス切替弁が設けられていることを特徴とする廃棄物溶融炉の羽口のパージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−255776(P2007−255776A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79463(P2006−79463)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】