説明

廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット

【課題】本発明は竪形炉(シヤフト炉)方式で炉内が1500℃を越える廃棄物溶融炉におけるスラグ排出口の封止剤(マッド)の開孔作業に用いるドリフターの中空ロッドの先端に設けられるビットであって上記廃棄物溶融炉に多数回使用可能なスラグ排出口開口用ビットを得ることを目的とする。
【解決手段】 穿孔用中空ビットの先端面に該ビットの中心軸線cと直交する山頂線3よりなる山形台金を3方又は4方に形成し、各台金の両山形傾斜面4’、頂部及びその外端面4”に硬化肉盛材を一連に溶着肉盛りしてなり、さく岩機の中空ロッド1の先端に上記穿孔用中空ビット2を上記中心軸線上に1体に溶着してなる廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可燃性及び不燃性ゴミ(合成樹脂、ガラス、金属類他)の廃棄物溶融炉等のスラグ排出口を開削する開口用ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融炉の開口に際して用いられるスラグ排出口用ビットでは先端に嵌込溝を形成し、超硬チップの基部を該溝に嵌合させた。又、該チップの外周を上記ビットにしんちゅうロー付けするものであった(例えば特許文献1、2)。
【0003】
ビットの先端に超硬チップを嵌込溝に嵌込む作業は精密作業であって熟練を要し、超硬チップの分離により掘削作業に支障を来した。
【0004】
又超硬チップの外周をビットの先端に溶接により固定し、或はしんちゅうローによる接着が行われた(特許文献2)。しかし超硬チップと台金との接合は困難で熟練を要し、ローによる溶着は熱により外れ易いという問題があった。
【0005】
何れも掘削作業中にビットの先端面から超硬チップが熱影響、熱膨張により分離し易く、分離により掘進速度を著しく低下させるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−156222号
【特許文献2】特開平10−140960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は竪形炉(シヤフト炉)方式で炉内が1500℃を越える廃棄物溶融炉におけるスラグ排出口の封止剤(マッド)の開孔作業に用いるドリフターの中空ロッドの先端に設けられるビットであって上記廃棄物溶融炉に多数回使用可能なスラグ排出口開口用ビットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は
第1に穿孔用中空ビットの先端面に該ビットの中心軸線と直交する山頂線よりなる山形台金を3方又は4方に形成し、各台金の両山形傾斜面、頂部及びその外端面に硬化肉盛材を一連に溶着肉盛りしてなり、さく岩機の中空ロッドの先端に上記穿孔用中空ビットを上記中心軸線上に1体に溶着してなる廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット、
第2に上記3方又は4方の山形台金の上記中心軸線側に集合する部分に凹部空間を形成し、該空間の底面から上記中空ビットの外周に向って該ビットの基部側に傾斜する3個又は4個の溝を上記山形台金間に形成し、該溝のそれぞれ傾斜面に圧力空気噴出口を開口した上記第1発明記載の廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット、
第3に上記溶着肉盛りが両側の山形傾斜面の頂部を凸弧形に接続してなる上記第1又は第2発明記載の廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット、
によって構成される。
【0009】
従ってドリフターに装着された中空ロッドの先端に設けた穿孔用中空ビットの先端に設けた3方又は4方の山形台金に山頂線を凸弧形に形成して溶着肉盛りされた硬化肉盛材による山形台金の3方又は4方の山形面が溶融炉の上記排出口に衝接し、上記排出口の耐火物の中心線の回りに回動しながら上記排出口のマッドを前進しながら衝撃破砕し繰粉はビットの先端中央凹部から3個の溝を経てビット及びロッドの側面から圧力空気によって炉外に排出され、上記排出口は開削され、炉内の溶融物が排出口から炉外に排出される。
【0010】
上記3方の山形硬化肉盛材は3個の山形台金の外面に均等硬度に肉盛り分配されているため硬度むらが少なく掘削抵抗を山形頂面及び両側の傾斜面によって均等掘削し、山形硬化肉盛材は台金と溶着一体化しているため、衝撃力や熱等によって山形台金から分離脱落するおそれはない。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したのでビットの外端面の硬化肉盛材の脱落のおそれがなく、排出口の耐火物を均等に掘削することができるため、スラグ排出口の掘削推進を安全迅速に行い得る効果がある。又炉内温度が1500℃を越える高温において、上記ビットを上記ロッドの先端と1体に多数回使用し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
可燃性(紙、合成樹脂等)及び不燃性(ガラス、金属類)の廃棄物の図2に示す溶融炉14の排出口口15の封止剤15’(マッド)を開孔するため、機枠にドリフター(さく岩機)を上記排出口15に向って往復摺動自在に設け、
上記ドリフターにシヤンクロッドを介して回転中空ロッド1を上記排出口15に向って設ける。
【0013】
中空ロッド1の先端部には穿孔用中空ビット2を溶着6する(図1(ロ)図、図2、図4)。
【0014】
上記中空ロッド1及び中空ビット2は中心軸線cの回りに回動し、上記台座2’の先端に設けた穿孔用中空ビット2の先端面に上記中心軸線cと直交する山頂線3よりなる山形台金4を上記軸線cから3方又は4方に形成する。
【0015】
そして上記3方又は4方の山形台金4のそれぞれ山形傾斜面4’,4’、その山頂線3及び該山形台金4の外端面4”に硬化肉盛材5を溶着肉盛りする。
【0016】
上記硬化肉盛材5にはタングステン系又はステライト等が用いられ、切削能力は焼結超硬合金と同等である。
【0017】
上記3方の山形台金4の上記中心軸線c側に集合する部分に凹部空間sを形成し、該空間sの底面8から上記中空ビット2の外周に向かって該ビット2の基部側に傾斜する3個又は4個の溝9を上記山形台金4の間に形成し、該溝9のそれぞれ下端側内部に圧力空気噴出口10を開口し、繰粉を上記ビット2の側溝11から台座2’を経てロッド1の外周と穿孔壁との中間に排出する。
【0018】
上記硬化肉盛材5の溶着肉盛りによる山形頂部5’は両側の山形傾斜面の硬化肉盛り5”,5”の頂部3を上記肉盛りによって凸弧形に接続する。
【0019】
従ってドリフターを動作させ中空ロッド1から台座2’を経て中空ビット2の上記高圧空気噴出口10,10,10から高圧空気を噴出させ、その状態で該ビット2を溶融炉の開口部に向って推進させると3方の山形傾斜面4’,4’の硬化肉盛り5”,5”及び凸弧形山形頂部5’を形成する硬化肉盛材5が排出口15のマッドに衝接して排出口15を開削することができる。
【0020】
この開削に際し、上記硬化肉盛材5はその山形傾斜面の硬化肉盛り5”,5”及び凸弧形山形頂部5’が排出口15の上記マッド15’に均等衝接し、掘削抵抗が分散されるため上記肉盛材5の部分的離脱のおそれが無く開孔が充分かつ安全迅速に行われる。
【0021】
尚図5(イ)(ロ)図中12は従来の超硬合金チップ、13は該チップ12の溶着ビードである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
1500℃を越える上記廃棄物溶融炉の溶融物をマッド材15’で封止されたスラグ排出口15をドリフターに設けた中空ロッド1の先端に溶着6した中空ビット2の3方又は4方山形台金4に溶着した硬化肉盛材5によって該肉盛材5の分離脱落のおそれが少なく多数回に亘って上記廃棄物溶融炉の上記排出口を開削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(イ)図は本発明の開口用ビットの平面図、(ロ)図はその正面図、(ハ)図は(イ)図A−A線による縦断面図、(ニ)図は(イ)図B−B線による縦断面図である。
【図2】溶融炉開孔口の縦断面図である。
【図3】(イ)(ロ)図は上記開口用ビットの平面図、(ハ)(ニ)図は(イ)(ロ)図の正面図である。
【図4】中空ビット及び中空ロッドを溶着した正面図である。
【図5】(イ)図は従来の分離型中空ビットの平面図、(ロ)図は(イ)図の正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 中空ロッド
2 穿孔用中空ビット
2’ 台座
c 中心軸線
3 山頂線
4 山形台金
4’ 山形傾斜面
4” 外端面
5 硬化肉盛材
6 溶着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔用中空ビットの先端面に該ビットの中心軸線と直交する山頂線よりなる山形台金を3方又は4方に形成し、各台金の両山形傾斜面、頂部及びその外端面に硬化肉盛材を一連に溶着肉盛りしてなり、さく岩機の中空ロッドの先端に上記穿孔用中空ビットを上記中心軸線上に1体に溶着してなる廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット。
【請求項2】
上記3方又は4方の山形台金の上記中心軸線側に集合する部分に凹部空間を形成し、該空間の底面から上記中空ビットの外周に向って該ビットの基部側に傾斜する3個又は4個の溝を上記山形台金間に形成し、該溝のそれぞれ傾斜面に圧力空気噴出口を開口した請求項1記載の廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット。
【請求項3】
上記溶着肉盛りが両側の山形傾斜面の頂部を凸弧形に接続してなる請求項1又は2記載の廃棄物溶融炉スラグ排出口開口用ビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−97145(P2009−97145A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266673(P2007−266673)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(594086152)株式会社丸和技研 (13)
【出願人】(506000128)日鉄環境プラントソリューションズ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】