説明

廃棄物焼却飛灰処理装置及び方法

【課題】電力エネルギを用いず、二酸化炭素排出量削減効果の高い廃棄物焼却飛灰処理装置及び方法を提供することを課題とする。
【解決手段】廃棄物を焼却又はガス化・溶融する廃棄物処理炉から排出される飛灰に含まれているダイオキシン類を加熱して揮発除去する廃棄物飛灰処理装置において、飛灰と加熱ガスを受けて飛灰を攪拌流動させかつ加熱ガスで該飛灰を加熱する攪拌流動加熱器10と、熱媒体により上記攪拌流動加熱器内の飛灰を熱媒体との熱交換で加熱する飛灰加熱器20と、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置40と、太陽熱集熱装置40からの太陽熱を受けて該太陽熱で上記熱媒体を加熱して上記飛灰加熱器20へ送る太陽熱受熱熱媒体加熱器30と、太陽熱集熱装置40からの太陽熱を受けて該太陽熱で加熱用のガスを加熱して、加熱ガスを上記攪拌流動加熱器10へ送る太陽熱受熱ガス加熱器50と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を燃焼又はガス化・溶融する廃棄物処理炉から排出される飛灰に含まれているダイオキシン類を加熱して揮発除去する廃棄物焼却飛灰処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を処理する技術として、都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を火格子上に供給し、廃棄物を燃焼させて、燃焼残渣の灰分を排出するストーカ式焼却炉や流動層式焼却炉を用いる方式と、廃棄物を熱分解して可燃性ガスを発生させ、その熱分解残渣を溶融してスラグにして排出するガス化溶融炉を用いる方式とがある。本発明では、廃棄物焼却炉と廃棄物ガス化溶融炉とを合わせて廃棄物処理炉という。
【0003】
いずれの方式においても、廃棄物処理炉から排出された排ガスに含まれる飛灰は、ろ過式集塵機(バグフィルタ)により捕集される。飛灰にはダイオキシン類が含まれているため、その無害化処理のため飛灰を加熱してダイオキシン類を揮発除去させる飛灰加熱処理装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている飛灰用の加熱処理装置は、飛灰を収容する縦型の容器を有し、この縦型の容器の上部に飛灰の投入口とガス排出口が設けられ、下部に処理済み飛灰の取出口とガス導入口が設けられている。また、上記容器の底部には、ガス導入口からのガスを分散させる分散板が設けられている。さらに、容器の外周には該容器の内部を加熱するヒータが、その内部には飛灰を攪拌する攪拌翼をも備えている。ヒータは電力を受けて発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3465708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の飛灰加熱処理装置では、加熱容器の外面から電気ヒータで内部の飛灰を加熱しているので、外部電力源を必要とし、電力を消費する。かかる電力消費は、近来、二酸化炭素排出量削減の観点から好ましくなく、エネルギ源の転換が求められている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、廃棄物焼却飛灰処理装置及び方法において、電力エネルギを用いず、二酸化炭素排出量削減効果の高い装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る廃棄物飛灰処理装置は、廃棄物を焼却又はガス化・溶融する廃棄物処理炉から排出される飛灰に含まれているダイオキシン類を加熱して揮発除去する。
【0009】
かかる廃棄物飛灰処理装置において、本発明は、飛灰と加熱ガスを受けて飛灰を攪拌流動させかつ加熱ガスで該飛灰を加熱する攪拌流動加熱器と、熱媒体により上記攪拌流動加熱器内の飛灰を熱媒体との熱交換で加熱する飛灰加熱器と、太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置と、太陽熱集熱装置からの太陽熱を受けて該太陽熱で上記熱媒体を加熱して上記飛灰加熱器へ送る太陽熱受熱熱媒体加熱器と、太陽熱集熱装置からの太陽熱を受けて該太陽熱で加熱用のガスを加熱して、加熱ガスを上記攪拌流動加熱器へ送る太陽熱受熱ガス加熱器と、を有していることを特徴としている。
【0010】
本発明において、攪拌流動加熱器は、例えば、竪型円筒容器を有し、この竪型円筒容器の上部にガス排出口、飛灰供給口を設けると共に、下部には、飛灰を流動させる加熱ガスの導入口、分散板、処理飛灰取出口を設け、さらに上記容器内部に攪拌翼を有していて、竪型円筒容器内の飛灰を攪拌流動させながら加熱する。
【0011】
上記攪拌流動加熱器内の飛灰を熱媒体で加熱する飛灰加熱器は、竪型円筒容器の外周又は内部に設けられ、加熱された流通中の熱媒体との熱交換により上記竪型円筒容器内部の飛灰を加熱する。
【0012】
この熱媒体は太陽熱を利用して加熱される。太陽熱は太陽熱集熱装置で得られ、しかる後、この太陽熱が、太陽熱受熱熱媒体加熱器にて、飛灰加熱器へ供給される上記熱媒体を加熱すると共に、太陽熱受熱ガス加熱器にて、攪拌流動加熱器へのガスをも加熱する。
【0013】
このように構成される本発明装置によると、飛灰は、飛灰と加熱ガスを受けて飛灰を攪拌流動させかつ加熱ガスで該飛灰を加熱する攪拌流動加熱工程と、熱媒体により上記攪拌流動加熱工程における飛灰を熱媒体との熱交換で加熱する飛灰加熱工程と、太陽熱を集熱する太陽熱集熱工程と、太陽熱を受けて該太陽熱で上記熱媒体を加熱し、該熱媒体で上記飛灰加熱工程における飛灰を加熱する太陽熱受熱熱媒体加熱工程と、太陽熱を受けて該太陽熱で加熱用のガスを加熱して、加熱ガスを上記攪拌流動加熱工程における飛灰へ送る太陽熱受熱ガス加熱工程と、を経て処理される。
【発明の効果】
【0014】
太陽熱を利用して飛灰そして流動用のガスを加熱するため、電力エネルギを用いずに飛灰の無害化処理を行うことができ、二酸化炭素排出量削減効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1において、符号10は攪拌流動加熱器である。該攪拌流動加熱器10は、竪型円筒状の容器11内に攪拌機12が設けられている。該攪拌機12は、モータ13により駆動される回転軸体14と、該回転軸体14から半径方向に延びる複数の回転翼15とを有している。上記容器11の下部には透気性部材の分散板16が設けられていて、その中央部からは容器11の底壁から下方へ突出する処理飛灰取出管17が延びている。また、上記容器11の上壁には、バグフィルタ装置18が設けられている。かかる容器11は、上壁側で、廃棄物処理炉(図示せず)からの飛灰が投入されるようになっており、また、底壁側では、上記分散板16の下方空間に後述の加熱ガスの供給を受けるようになっている。該加熱ガスは、分散板16を透過上昇することにより、容器11内の飛灰中に拡散し、飛灰を流動させる。
【0018】
上記バグフィルタ装置18には、ダイオキシン類分解反応器19が接続されていて、容器11内での飛灰処理により発生したガスがバグフィルタで粉塵が除去された後に、ダイオキシン類の分解により無害化されて、処理済みガスとして排出されるようになっている。
【0019】
上記攪拌流動加熱器10の容器11の周囲には、環状筒体21内に熱媒体管路22を有する飛灰加熱器20が配設されている。該環状筒体21の内筒は、良熱伝導性材で作られていて上記攪拌流動加熱器10の容器11の胴体と共有していて、上記熱媒体管路22内を流通する熱媒体の熱が容器11の飛灰に良好に伝熱されるようになっている。
【0020】
上記飛灰加熱器20は、太陽熱受熱熱媒体加熱器30と接続されており、上記熱媒体管路22がポンプ23を経て該太陽熱受熱熱媒体加熱器30を経て上記環状筒体21内を通る循環路を形成している。上記太陽熱受熱熱媒体加熱器30は、太陽熱集熱装置40で集熱された太陽熱を受けるべく、該太陽熱集熱装置40に接続されている。
【0021】
太陽熱集熱装置40からの太陽熱は、太陽熱受熱熱媒体加熱器30を通る熱媒体管路22内の熱媒体を加熱する。
【0022】
上記太陽熱集熱装置40は、空気等の加熱用のガスを加熱する太陽熱受熱ガス加熱器50へも太陽熱を供給するように接続されている。該太陽熱受熱ガス加熱器50は、ブロワ51で送り込まれてくる加熱用のガスとしての空気等を、上記太陽熱集熱装置40からの太陽熱で加熱した後に、加熱ガスとして攪拌流動加熱器10の底部から容器11の下部空間へ送入する。
【0023】
次に、本発明での太陽熱の利用に係る各装置について、さらに詳説する。
【0024】
<太陽熱集熱装置>
太陽熱集熱装置40は、太陽熱を集熱すべく構成されていて、例えば、複数の反射鏡と反射された太陽光を収束させるため断面が放物線状の収束反射鏡とを有していて、複数の反射鏡で反射された太陽光が収束反射鏡により集光され、収束された太陽光が太陽熱受熱熱媒体加熱器30と太陽熱受熱ガス加熱器50の受熱部に照射されることにより効率的に太陽熱を集熱し受熱されるようになっている。
【0025】
<太陽熱受熱熱媒体加熱器>
太陽熱受熱熱媒体加熱器30は、飛灰加熱器20に供給され飛灰を加熱させる熱媒体を、太陽熱集熱装置40により集熱された太陽熱により加熱されるように構成されている。
【0026】
この太陽熱受熱熱媒体加熱器30は、内部に熱媒体を流通させる受熱部を有していて、集熱された太陽熱により熱媒体を加熱するようになっている。太陽熱受熱熱媒体加熱器30の表面は、透明ガラス、透明石英等に覆われ、透明ガラス等と受熱部との間の空間を真空とすることにより、滞留伝熱による熱ロスを抑制できる。また、受熱部表面は、黒色塗料が塗布されるか、凹凸のある鏡面構造を有することで、輻射伝熱ロスを抑制できるようになっていて、太陽熱集熱装置40からの受熱熱量を最大に、かつ熱ロスを最小化にする。
【0027】
太陽熱受熱熱媒体加熱器30内に蓄熱材を設け太陽熱集熱装置40からの集熱された太陽熱を受けて蓄熱材を加熱し、加熱された蓄熱材に熱媒体を接触させ加熱するようにしてもよい。
【0028】
<太陽熱受熱ガス加熱器>
太陽熱受熱ガス加熱器50は、攪拌流動加熱器10に供給され飛灰を流動させるガスとして、空気、廃棄物処理炉から排出される排ガスの一部、窒素、水蒸気等のうち少なくと一つが用いられ、太陽熱集熱装置40により集熱された太陽熱により加熱されるように構成されている。
【0029】
この太陽熱受熱ガス加熱器50は、内部にガスを流通させる受熱部を有していて、集熱された太陽熱によりガスを加熱するようになっている。太陽熱受熱ガス加熱器50の表面は、透明ガラス、透明石英等に覆われ、透明ガラス等と受熱部との間の空間を真空とすることにより、滞留伝熱による熱ロスを抑制できる。また、受熱部表面は、黒色塗料が塗布されるか、凹凸のある鏡面構造を有することで、輻射伝熱ロスを抑制できるようになっていて、太陽熱集熱装置40からの受熱熱量を最大に、かつ熱ロスを最小化にする。
【0030】
太陽熱受熱ガス加熱器50は、上記のように太陽熱集熱装置40から受けた太陽熱により直接ガスを加熱するようにしてもよいし、熱媒体を介してガスを加熱するようにしてもよい。
【0031】
太陽熱受熱ガス加熱器50内に蓄熱材を設け太陽熱集熱装置40からの集熱された太陽熱を受けて蓄熱材を加熱し、加熱された蓄熱材にガスを接触させ加熱するようにしてもよい。
【0032】
本実施形態装置では、このように太陽熱を利用して、飛灰加熱器20により攪拌流動加熱器10内の飛灰が加熱されると共に、下部から吹き込まれる加熱ガスにより流動されるとともに加熱され、攪拌翼15の回転により攪拌され、効率よく攪拌流動されながら加熱される。
【0033】
飛灰に含まれるダイオキシン類が350〜550℃に加熱されることにより、気化し飛灰から除去され、気化したダイオキシン類は流動ガスにより移送され、ガス排出口から排出される。ダイオキシン類が除去された処理飛灰は処理飛灰排出口から排出される。排出されたダイオキシン類を含むガスはバグフィルタ18に導かれ粉塵が除去され、ダイオキシン類分解触媒が充填されたダイオキシン類分解反応器でダイオキシン類が分解され、処理済みガスとして排出される。
【0034】
本実施形態装置では、太陽熱により加熱された熱媒体を飛灰加熱器に供給して攪拌流動加熱器内の飛灰を加熱するが、太陽熱集熱装置により集熱された太陽熱を攪拌流動加熱器内に入射して飛灰を直接加熱するようにしてもよい。その場合には、攪拌流動加熱器の太陽熱を入射させる部分には、石英ガラス等の太陽熱を透過させる材質を用い、また、その内面(飛灰側)には、飛灰が付着して太陽熱入射を阻害することを防ぐためにパージガスを流す機構を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
10 攪拌流動加熱器
20 飛灰加熱器
30 太陽熱受熱熱媒体加熱器
40 太陽熱集熱装置
50 太陽熱受熱ガス加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却又はガス化・溶融する廃棄物処理炉から排出される飛灰に含まれているダイオキシン類を加熱して揮発除去する廃棄物飛灰処理装置において、
飛灰と加熱ガスを受けて飛灰を攪拌流動させかつ加熱ガスで該飛灰を加熱する攪拌流動加熱器と、
熱媒体により上記攪拌流動加熱器内の飛灰を熱媒体との熱交換で加熱する飛灰加熱器と、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱装置と、
太陽熱集熱装置からの太陽熱を受けて該太陽熱で上記熱媒体を加熱して上記飛灰加熱器へ送る太陽熱受熱熱媒体加熱器と、
太陽熱集熱装置からの太陽熱を受けて該太陽熱で加熱用のガスを加熱して、加熱ガスを上記攪拌流動加熱器へ送る太陽熱受熱ガス加熱器と、
を有していることを特徴とする廃棄物焼却飛灰処理装置。
【請求項2】
廃棄物を焼却又はガス化・溶融する廃棄物処理炉から排出される飛灰に含まれているダイオキシン類を加熱して揮発除去する廃棄物飛灰処理方法において、
飛灰と加熱ガスを受けて飛灰を攪拌流動させかつ加熱ガスで該飛灰を加熱する攪拌流動加熱工程と、
熱媒体により上記攪拌流動加熱工程における飛灰を熱媒体との熱交換で加熱する飛灰加熱工程と、
太陽熱を集熱する太陽熱集熱工程と、
太陽熱を受けて該太陽熱で上記熱媒体を加熱し、該熱媒体で上記飛灰加熱工程における飛灰を加熱する太陽熱受熱熱媒体加熱工程と、
太陽熱を受けて該太陽熱で加熱用のガスを加熱して、加熱ガスを上記攪拌流動加熱工程における飛灰へ送る太陽熱受熱ガス加熱工程と、
を有していることを特徴とする廃棄物焼却飛灰処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−212517(P2011−212517A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80556(P2010−80556)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】