説明

廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法および甲殻類の乾燥殺菌粉末

【課題】 本発明は、廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻を低分子化する乾燥処理技術と低分子アミノ酸が抽出され易い乾燥殺菌エビ粉末を製造することができる(廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法および甲殻類の乾燥殺菌粉末)を得ることにある。
【解決手段】 ([請求項1]の構成要件)とで、廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻に、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸させた後、過熱蒸気乾燥殺菌手段と、これを粉砕して廃棄甲殻類の乾燥殺菌粉末および有用成分溶液を得るよう構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法に関する。詳しくは、廃棄甲殻類の有用成分の脂質、蛋白質、アミノ酸、炭水化物、食物繊維等の腐敗防止と凝固・硬質化を防止して、有用成分を抽出され易くする廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法および甲殻類の乾燥殺菌粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
甲殻類のエビ生産国はインドネシア、タイ、ベトナム、インド、マレーシア、中国等が挙げられる。原産地より出荷される際エビは不飽和脂肪酸が多く腐敗が激しいことから、頭部や外殻を除去する加工処理が行われる。その際、廃棄されるエビの頭部および外殻の総廃棄量は、現在、年間15,000トン以上の莫大な量が廃棄され、極微量である一部は生のまま鳥の餌として、また、外殻の一部はキチン・キトサン加工に使用されているが、大部分は海岸や野山に不法投棄処分され、腐敗が早いため悪臭発生源となり、環境悪化の源となっているのが現状である。
更に、これらエビ生産国では、エビの頭部や外殻を加工工場独自で廃棄処理する方法が常法となっていること、また、廃棄する場合には、運賃や人件費が必要のことから、各国のエビ加工工場に於いて野積みになり悪臭発生源となっている。
【0003】
これまで、魚介類廃棄物の蛋白質を、蛋白質分解酵素とともに攪拌して、魚介類由来の蛋白質などを含む有用物質およびその製造方法が[特許文献1]に開示されている。
また、有機廃棄物を高温高圧蒸気180℃〜220℃、10〜30kg/cmで処理する方法と得られる処理物が[特許文献2]に提案されている。
【0004】
[特許文献1]は、蛋白質分解酵素のエンド型、エキソ型、エンド・エキソ型、それぞれの組合せにより、魚介類有用成分の水溶性アミノ酸を含む分子量30,000以下のオリゴ蛋白質の他、分子量20,000〜100,000の脂肪酸を製造することであるが、かくの如く、蛋白質分解酵素のみによる魚介類の蛋白質の分解には、極めて長期間の分解時間が必要となるのみでなく、低分子のアミノ酸を得ることは困難である。また、[特許文献2]の提案は、有機廃棄物を直接高温乾燥するので、有用成分である蛋白質は硬質化およびアミノ酸の熱分解が起きることは常識であり、この乾燥物から有用成分を抽出するには、乾燥方法に重大な欠点がある。
【0005】
前記した従来法には、有機廃棄物を乾燥殺菌脱水すると有機成分組織が硬化・凝縮等の変形があり、有用成分の抽出性が低下する基本的な問題意識の欠如がある。
また、魚介類のアミノ酸抽出に蛋白質分解酵素が用いられているものの、低分子量のアミノ酸は得られていない。
即ち、原料である有機廃棄物や魚介類の初期処理(乾燥前処理)の欠如および蛋白分解酵素によるアミノ酸生成に限界があり、外的エネルギーを補充する必要があることから、低分子量アミノ酸を得ること等々に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408958号公報
【特許文献2】特開2008−264756号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】固体物理12Vol,24(12)1989
【発明の概要】

【発明を解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻に、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸漬・含浸させ、乾燥することにより有用成分の軟質化を促進し、蛋白質の凝固・硬質化を抑制し低分子アミノ酸、ペプチド蛋白質、脂質、食物繊維、ナトリウム、リン、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン等を含有する乾燥殺菌粉末および液体抽出を容易にする技術を確立することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、生産現地の廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸させるとき、パイナップル酵素とエビの頭部および外殻の有用成分の複合蛋白質の基質と結合して、初期加水分解の状態となり、これを過熱蒸気乾燥する外的エネルギーを付与することにより、酵素触媒が促進され、乾燥甲殻類の硬質化・凝固が抑制され、低分子アミノ酸、ペプチド蛋白質、脂質、食物繊維、ナトリウム、リン、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン等を含有する乾燥殺菌粉末および高濃度の低分子アミノ酸類を容易に抽出することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、生産現地のみならず廃棄甲殻類のエビの頭部は不飽和脂肪酸が多く含有されるため、外殻と共に腐敗防止について、これまで、食肉および魚類の切り身の鮮度保持(ドリップ防止)や酸化防止剤として使用したパイナップル酵素果汁液をエビの頭部および外殻に含浸し、天日乾燥したところ、乾燥エビに異臭がなくて硬質化は起こらなかった。この乾燥エビを酵素抽出したところ、低分子のアミノ酸が抽出成分中に多く含まれることがわかった。しかし、甲殻類は、東南アジアの海岸に近い池での養殖および自然界で養殖していることから、一般細菌、大腸菌類が付着している可能性があり、殺菌を兼ねて過熱蒸気乾燥殺菌処理し、脂質、蛋白質、アミノ酸、炭水化物等の抽出成分濃度を高めることを加えた。
【0011】
即ち、本発明は、廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸させて、パイナップル酵素の触媒作用を受ける蛋白質の基質と一旦酵素分子と結合させ、加水分解反応を起こしやすくした後、これを過熱蒸気乾燥殺菌する外的エネルギーを付与することにより、蛋白質を各種アミノ酸成分に分解し低分子化させ、加水分解反応が促進し柔らかく効率が良い状態で乾燥処理した甲殻類の粉末を得る。該乾燥処理甲殻類を微粉砕した後、常法の抽出方法であるアルコール60%、水40%および温水抽出、有機溶媒を用いての抽出が容易であり、抽出溶液中には低分子アミノ酸類のアルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、バリン(Val)、アラニン(Ara)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Sir)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、トリプトファン(Trp)、シスチン(Cys)を高濃度組成およびペプチド蛋白質、脂質、炭水化物、食物繊維、ナトリウム(Na)、リン(P)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)等を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明のアミノ酸成分と濃度分析は(社)日本食品分析センター(第306040264号)および(第306020655号)、(第308020674号)、(No306010437)、インドネシア ボゴール大学(LT−405−541)、(有)エス・エヌ・イー総合研究所(第20070320)で行った。
【0013】
本発明は、以下の構成から成り立っている。
(1)廃棄甲殻類であるエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵 素果汁液を浸透・含浸させた後、過熱蒸気乾燥殺菌後、粉砕処理する廃棄甲殻類の 乾燥殺菌処理方法および甲殻類の乾燥殺菌粉末。
(2)天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液が、パイナップル皮果汁液に天然 鉱石のヒル石、麦飯石、異王石、ゼオライトを単独ないし複数浸漬して得るカルシ ウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、アルミニウム、亜鉛、ケイ素等 のミネラルイオンから成る前記(1)に記載する廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法お よび甲殻類の乾燥殺菌粉末。
(3)廃棄甲殻類であるエビの頭部および外殻を乾燥殺菌する前に、天然ミネラルイオン 含有パイナップル酵素果汁液を含浸し、腐敗防止と悪臭発生防止すると共に有用成 分の軟化を促進する前記(1)、(2)に記載する廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法 。
(4)甲殻類の乾燥殺菌粉末の有用成分が抽出成分中に、低分子アミノ酸のアルギニン( Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe )、チロシン(Tyr)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオ ニン(Met)、バリン(Val)、アラニン(Ara)、グリシン(Gly)、 プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、セリン( Sir)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(A sp)、トリプトファン(Trp)、シスチン(Cys)を高濃度に抽出されやす くした前記(1)、(2)、(3)に記載の甲殻類の乾燥殺菌粉末。
【0014】
本発明に於いて、甲殻類のエビを生産現地加工工場において、エビ本体から除かれた直後のエビの頭部および外殻は、腐敗防止のため天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を含浸処理される。これによりエビの不飽和脂肪酸による酸化を防止し、蛋白質群はパイナップル酵素の触媒作用を受け、加水分解が起こり易くできる。
【0015】
従来、エビの生産現地では、エビの頭部は生の状態で一部は鳥の餌として与えるが、殆どは生の状態で海岸や野山に不法投棄されているのが通常になっている。また、外殻の一部はキチン・キトサンの加工に使用されているが、殆どは、頭部と同様に廃棄処分され、悪臭による環境悪化を招いている。
エビの生産現地では、廃棄物となるエビの頭部および外殻の取り扱いに対し、本発明の天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液にエビの頭部および外殻を浸漬・含浸させ、エビの頭部に含まれる不飽和脂肪酸および蛋白質の酸化および腐敗を防止し、アミノ酸、脂質や蛋白質、炭水化物、食物繊維等の腐敗防止をすることは発明者による全く初の知見である。
【0016】
本発明のエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸させた後、これを過熱蒸気乾燥殺菌処理した甲殻類の乾燥物の成分は硬質・固化することなく食品微粉砕機により極微細粉末を得ことができる。
【0017】
本発明者は、前記した甲殻類の乾燥物が硬質・固化しなかったことについて、甲殻類の蛋白質の加水分解反応が、湿式処理による加水分解に加え、耐高熱性のパイナップル酵素が含浸した蛋白質の加水分解反応を促進した結果、低分子化アミノ酸加水分解生成を可能にしたものと考えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸した後、過熱蒸気乾燥殺菌処理した甲殻類の蛋白質から低分子のアミノ酸成分20種、ペプチド蛋白質、脂質、炭水化物等の高濃度粉末および液体抽出を可能にしたことは、食品添加物、健康食品、化粧品、医薬品、飼料、ペットフード、肥料等の産業応用への効果は多大である。
【0019】
以上の説明から成るように、本発明にあたっては、次に列挙する効果が得られる。
(1)([請求項1]の構成要件)とで構成されるエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸させることにより、エビの頭部および外殻の不飽和脂肪酸および蛋白質の腐敗防止と共に加水分解を促進し、乾燥殺菌粉末から低分子アミノ酸20種およびペプチド蛋白質、脂質、炭水化物、各種ミネラル成分等多種類有用成分を高濃度で得られる。
【0020】
(2)([請求項2]の構成要件)とで構成されているので、前記(1)の加水分解酵素であり、乾燥殺菌粉末からの低分子アミノ酸成分の抽出性を容易にする効果が得られる。
【0021】
(3)([請求項3]の構成要件)も前記(2)と同様な効果が得られる。
【0022】
(4)([請求項4]の構成要件)とで構成されている前記(1)、(2)の乾燥殺菌粉末から、低分子化アミノ酸全てのアルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、バリン(Val)、アラニン(Ara)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Sir)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、トリプトファン(Trp)、シスチン(Cys)を高濃度で液体抽出し易くする効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態のESR(電子スピン共鳴)Signal intensity(I)=h1/h2図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、上記した構成からなる廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻の乾燥殺菌処理方法および甲殻類の乾燥殺菌粉末を実施する最も好ましい実施形態を詳しく説明する。
本発明は甲殻類であれば、イセエビ、ウチワエビ、クルマエビ、ブラックタイガー,大正エビ、バナメー、ホワイト、南米ピンク、ウシエビ、オキアミ、ズワイガニ、毛ガニ、ワタリガニ、上海ガニ、アサヒガニ、アブラガニ、タラバガニ、ザリガニ等を用いることができる。
【0025】
上記甲殻類は、乾燥前に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸漬、含浸して、腐敗防止と加水分解の前処理を実施する。
【0026】
本発明の天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液について説明する。ミネラルイオン群を含む鉱物としては、ゼオライト、麦飯石、ヒル石、医王石等を挙げることができる。本発明においては、俗名ヒル石と呼ばれる閃緑岩変質黒雲母に含有されるカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、マンガン、アルミニウム、亜鉛、ケイ素、チタン等の金属酸化物の鉱物微細粉をパイナップル酵素果汁液に浸漬してイオン化状態で抽出して得たものを天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液と本発明では称し、還元性を有することを確認している。
【表1】
【0027】
天然ミネラルイオンについて、説明する。

び麦飯石の成分組成は、概して[表1]に示す混合粉末(1:1:1)を用いた。
【表1】

【表2】
【0028】
本発明に用いた天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液のミネラル組成値は概して[表2]に示すものを用いた。
【表2】

【0029】
次に、パイナップル酵素果汁液について説明する。
パイナップル酵素は、パイナップル皮果汁中に含有することは公知である。パイナップル酵素中にはセルロース分解酵素の他、蛋白質およびアミノ酸分子分解酵素、各種有機酸分解酵素等30種以上の酵素成分が含まれている。パイナップル酵素は、脱水素(酸化)脱炭酸、脱アミン等の酵素を含んでおり、これらの複合触媒作用により、甲殻類のアミノ酸、蛋白質、脂質、炭水化物等を単分子および低分子に分解する働きがある。
【表3】
【0030】
[表3]にパイナップル酵素の主要な成分を示す。
【表3】


*パイナップル酵素は腐敗しやすいため、HSO、HPOを少量添加し酸性溶液 となっている。
[表3]パイナップル酵素成分の外、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、キナーゼ、マルターゼ、トランスアミラーゼ、デカルボキターゼ等を用いても差しつかえない。
【0031】
本発明の天然ミネラル含有パイナップル酵素果汁液中のミネラルイオン群は、パイナップル酵素と共に甲殻類の有用組成物に含浸吸着され、乾燥すると水酸基を伴った乾燥体を生成し、乾燥体の硬化防止のため必須と成る。
【0032】
続いて、本発明の天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液の腐敗防止作用について説明する。
本発明は、前記した天然ミネラル鉱石の金属酸化物が、パイナップル酵素果汁液に含有する有機酸と共に安定保存のため添加した無機酸に浸漬してイオン状態で抽出する際、生成する励起状態の新生水(HO)が励起水素(H・)となり、周辺の水(HO)と結合し、プロトニウムイオン(H)(H・→H + HO→H)となり、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液中に長期間安定状態を維持し続け含有される。
【0033】
本発明の天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液の腐敗防止作用は、抗酸化と同様この励起状活性水素(H・)の還元力の働きがあると考えられる。
一般的に励起状の活性水素とは、化学辞典編集委員会「化学大辞典」(共立出版株式会社)によれば、発生期状態の水素は原子状またはそれに近い状態にあり、化学反応を起こしやすくなっている水素を云うと記述されている。
本発明の励起状活性水素についても、原子状または原子状に近い状態であるが、水素ガス(H)化することなく、プロトニウムイオン(H)となっていると考えている。
【0034】
天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液の還元性である励起水素もしくはプロトニウムイオン(H)の存在について金属銅(Cu)を用いた銅の溶解試験を実施して還元物質の存在を確認した。
銅の溶解は酸化反応を伴いつつイオン化し、青色の銅イオン液となることが知られている。試験は、希硫酸溶液単独では金属銅は溶解しないので、希硫酸溶液に少量の硝酸を添加した硝酸性硫酸溶液中に銅片を入れると、銅片が溶解して青色液になった。
次に、硝酸を添加した硝酸性硫酸溶液中に本発明の天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を少量添加すると、銅片は溶解することなく、銅片を入れた溶液は無色のままであった。更にこの溶液に鉄片(クギ)を入れたところ、鉄片は錆が発生することなく金属光沢を持ち続けた。
このことは、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁組成中に、酸化を阻止する還元性能を有する励起状水素の存在を示す証拠であると考えている。
【0035】
本発明の天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液は、前記した励起状活性水素(H・)が酸化腐敗防止に有効に働くものとの知見で甲殻類の腐敗防止に応用した。
[表1]の天然鉱石の金属酸化物のミネラルイオン化について詳しく説明する。
一例として、MgOが浸出の際、酸性溶液により、ミネラルイオン化すると共に生成する励起状新生水と励起活性水素(H・)についての説明を(1)、(2)に示す。
酸性溶液として、パイナップル有機酸のイソ吉草酸〔(CH3)CHCHCOH〕により、MgOのイオン化とヒドロニウムイオン(H)生成。
MgO+2〔(CHCHCHCOOH〕――――→
―――→〔(CHCHCHCOOH〕Mg2++H・+OH・・・(1)
周辺の水と結合してヒドロニウムイオンとなる。(非特許文献1)。
H・――――→H+HO―――→H・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
(励起水素) (活性水素) (ヒドロニウムイオン=プロトニウムイオン)
【0036】
発明者らは、前記した基礎試験を基に、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液の還元性物質の励起水素(H・)捕捉剤DPPH(1,1Diphengl−2−piorylhydrazyl,max=517mn)ラジカルスペクトルのピーク減少を利用するESR(電子スピン共鳴)法をESR測定装置(JOEL製のJES−FE3XG Speotrometer)〔(株)ウォーターデザイン研究所(城西大学薬学部)〕により、更に詳しい測定を実施して、還元性物質が原子状の活性水素(H・)であることを確認した。
発明の励起水素(ラジカル水素H・)の検出方法は、次の反応に基づきDPPHラジカルが還元性能を有するH・を捉えると、定量的に反応しDPPHラジカルピーク(517nm)が消失する原理を利用した検出方法である。
反応式を式[化1]およびSignal intensity(I)h2/h1図を[図1]に示す。
【0037】
【化1】

【0038】
反応式(3)は、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液500倍希釈溶液を用いた場合について、励起状活性水素(H・)とDPPHが反応しDPPH−Hを生成し、DPPHラジカルピークの減少(h1/h2)[図1]を示した検出ピーク図である。
DPPHと反応した励起活性水(H・)量は20.0mgH/Lを検出した。
【0039】
本発明の甲殻類の過熱蒸気乾燥殺菌処理方法について説明する。
過熱蒸気乾燥殺菌装置(株式会社エコノス・ジャパン社製)型式:スーパースチーマミニ試験機を用い、甲殻類のエビの頭部および外殻を天然ミネラルイオン含有パイナップル果汁酵素液に浸漬・含浸した後、これを装置内部に挿入し、過熱蒸気温度160℃〜180℃に保持しつつ過熱蒸気乾燥殺菌処理して、甲殻類の乾燥殺菌した後、小型高速粉砕機(三庄インダストリー製)型式:NH−34型を用いて甲殻類の乾燥殺菌粉末を得る。
【0040】
以下、実施例により、更に詳しく本発明の説明を記述するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0041】
廃棄甲殻類のエビの頭部100重量部、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液50倍希釈液50重量部を浸漬容器に投入、常温にて攪拌、浸漬120分した後、該天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液含浸エビの頭部を収容器に移し、160℃〜180℃に設定された過熱蒸気乾燥殺菌処理装置に挿入し、18分〜20分間過熱蒸気乾燥殺菌処理を実施し、乾燥殺菌処理したエビの頭部20重量部を得た。
【比較例1】
【0042】
[実施例1]に用いたエビの頭部を天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を無添加のまま、周知の乾燥装置により乾燥処理し、食品粉砕機にて比較例乾燥エビ粉末を得た。
【実施例2】
【0043】
[実施例1]および[比較例1]で得た乾燥殺菌エビ粉末および通常乾燥処理エビ粉末について、アミノ酸および有用成分の成分組成の定量分析を(社)日本食品分析センター(前記)により実施した。結果を[表4][表5]に示す。
【表4】
【0044】
【表4】

【表5】
【0045】
【表5】

【0046】
[表4][表5]より、本発明の[実施例1]の結果、過熱蒸気乾燥殺菌処理した乾燥殺菌エビ粉末は、低分子アミノ酸20種が高い含有率で含有され、比較例の1000倍近い値を示し、且つ、有用成分の蛋白質の値は低下し、脂質、炭水化物を高い含有率として得ることができた。蛋白質が低下し、アミノ酸各種が増加していることは、比較例に対して実施例では、蛋白質が低分子化されアミノ酸の低分子に変化している証である。
即ち、分子量(M,W)170以下の低分子アミノ酸を高く含有する、グルタミン(M,W146.2)、グルタミン酸(M,W147.1)、L−アスパラギン(M,W132.1)、L−アスパラギン酸(M,W133.1)、L−プロリン(M,W115.1)、グリシン(M,W75.07)、アラニン(M,W89.09)、バリン(M,W117.2)、ロイシン(M,W131.2)、リジン(M,W155.2)、フェルアラニン(M,W165.3)等、含有値3.00g/100〜6.00g/100gを得た。
更に、比較例の通常乾燥処理粉末では検出されないアミノ酸成分であるリジン、ヒスチジン、フェルアラニン、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、トリプトファン等が、本発明の天然ミネラル含有パイナップル酵素果汁浸漬・含浸後、過熱蒸気乾燥殺菌処理エビ粉末中には高い含有値で検出された。
【実施例3】
【0047】
[実施例1]および[比較例1]で得た、それぞれのエビ粉末100重量部を常法により抽出液(エタノール60%、水40%)350重量部に投入し60℃にて40分間密閉状態で攪拌し成分抽出後、更に抽出した液を80℃まで加熱しエタノールを除去した後の成分抽出溶液140重量部を得た。更に得た抽出液を80℃にて50分間加熱して濃縮液120重量部を得た。
【実施例4】
【0048】
[実施例3]方法で得た、[表4][表5]の実施例および比較例で得たエビ粉末の液体抽出液について、アミノ酸および有用成分の成分濃度の定量分析を(社)日本食品分析センター(前記)により分析実施した。
結果を[表6][表7]に示す。
【表6】
【0049】
【表6】

【表7】
【0050】
【表7】

【0051】
[表6][表7]より[実施例3]で得たエビ粉末抽出液のアミノ酸成分分析の結果、本発明の実施例で得た乾燥殺菌エビ粉末に含有される低分子アミノ酸は、その96%以上が抽出され離分子アミノ酸総合含有量42.3g/100gとなり、低分子アミノ酸の高濃度の抽出液組成値を得ることができた。
即ち、抽出液100g中アミノ酸であるグルタミン3.42g、グルタミン酸5.44g、アスパラギン2.51g、アスパラギン酸3.7g、プロリン3.01g、グリシン2.78g、アラニン2.58g、フェルアラニン2.15g、バリン2.33g、ロイシン2.15g、リジン2.82g他、総アミノ酸42.3gを含有することが検出された。その抽出液の一般細菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌および耐熱性芽胞菌数は全て陰性ないし検出せずであった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、廃棄甲殻類のエビの頭部および外殻に天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸漬・含浸させた後、過熱蒸気乾燥殺菌処理して、粉砕したエビ粉末は、低分子アミノ酸の高含有率を示し、該エビ粉末は通常抽出法により、低分子アミノ酸の高濃度抽出液を得ることを可能にした。これより、食品添加物、健康食品、化粧品、医薬品、各飼料、ペットフード、肥料等への利用性への可能性が高い。
【符号の説明】
【0053】
[図1]に基づく符号
(1)DPPH(1−1−Dipheyl−2−picryLhydeazyl,λma x=517nm)
フリーラジカル
(2)H・(励起状活性水素)
(3)DPPH−H DPPHフリーラジカルのN部に、H・が捕捉されDPPH−Hが 生成された分子構造式。
(A)ESRDPPH Signal(h1)
(B)ESRDPPH−H Signal(h2)
(h2/h1< 1):ESR Signal intensity(I)
(H・捕捉によりSignal intensity(I)は1以下となる。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄甲殻類であるエビの頭部および外殻に、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸させた後、過熱蒸気乾燥殺菌後粉砕処理する、廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法および甲殻類の乾燥殺菌粉末。
【請求項2】
天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液が、パイナップル皮果汁液に天然鉱石のヒル石、麦飯石、医王石、ゼオライトを単独ないし複数浸漬して得るカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、アルミニウム、亜鉛、ケイ素等のミネラルイオンを含有することを特徴とする[請求項1]に記載する廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理および甲殻類の乾燥殺菌粉末。
【請求項3】
廃棄甲殻類であるエビの頭部および外殻を乾燥殺菌する前に、天然ミネラルイオン含有パイナップル酵素果汁液を浸透・含浸し腐敗防止と悪臭発生防止すると共に有用成分の軟質化を促進する[請求項1]および[請求項2]に記載する廃棄甲殻類の乾燥殺菌処理方法。
【請求項4】
乾燥殺菌粉末甲殻類の有用成分として低分子アミノ酸類のアルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、シスチンおよび蛋白質、脂質、炭水化物、食物繊維、ナトリウム、リン、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン等含有する液体抽出され易くした[請求項1][請求項2][請求項3]に記載の甲殻類の乾燥殺菌粉末。

【図1】
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【公開番号】特開2011−200854(P2011−200854A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89815(P2010−89815)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(508323562)
【Fターム(参考)】