説明

廃液の処理装置、その処理システム並びにその処理方法

【課題】
簡単な構造で低コストに製作が可能であり、しかも小型で高い浄化性能の廃液の処理装置、その処理システム並びにその処理方法を提供する。
【解決手段】
廃液の処理装置は、凝集剤を接触させた連続投入される廃液の凝集反応を促進させつつ反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を回収する凝集沈殿粒子回収部と、凝集沈殿粒子回収部で回収される液を導入してその中の相対的な大比重粒子成分を沈殿分離させる沈殿分離部と、沈殿分離部で分離された後の処理清水を排出させる排出部と、を含み、凝集沈殿粒子回収部は、廃液中の浮遊懸濁物質を多く含む液を捕捉し、相対的な大比重粒子成分を含む液を連続して沈殿分離部へ供給する浮遊懸濁物質捕捉機構と、を有する。清水のみを連続排出させ、清水以外の槽体内に滞留させた浮遊懸濁物質ならびに大比重粒子成分滓はバッチ処理により排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃液の処理装置等に係り、特に廃液中から木片等の粗大浮遊固形物や砂等を除去した前処理後の廃液の処理装置、その処理システム並びにその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動が引き起こす都市・生活公害問題や地球規模の環境問題が深刻になってきている。とりわけ、すべての生物にとって良好な水環境の維持が重要な点から、産業排水、生活排水、廃棄物排水等による河川水、湖沼水、海域水、地下水等の水質汚濁を生じさせない努力がなされている。水質汚濁の具体的な原因として、例えば人の生活に伴い発生する生活排水のほかに、製紙、食品、製鉄、自動車、石油製品、化学工場等から排出される産業排水、農用地の除草、防虫のために散布される農薬類、廃棄物に含まれる汚濁物質が雨水に洗われて浸出し河川に流出する廃棄物排水等があるが、そのうち発生負荷量(COD:chemical oxygen demand[化学的酸素要求量])は生活排水が最も多く、次いで産業排水となっているのが今日の実状である。そして、これらの排水は今日、何らかの処理を行って公的許容基準値以下の状態でしか河川に放流できないようになっている。産業排水は、事業活動の中で排出されるものであるから、その性質上、大量に連続排水が行われる場合が多く、したがって、放流の前に大量連続の水処理が求められる。その例として、例えば、食品製造業、酒類製造業、木材・木製品製造業、飲食・旅館業等の事業所から排出される廃液があり、これらの廃液は例えば、食品製造業を例に取ると、畜産・水産品、野菜・果物関係、味噌・しょうゆ製造、パン・菓子製造、麺類製造、餡類製造、弁当業等の事業所から排出されるものであって、廃水中のBOD(biochemical oxygen demand:生物化学的酸素要求量)で表される有機性物質、SS(suspended solid:水中懸濁有機無機物質)で示される浮遊物質の値が大きく、それらの大量連続処理が簡単ではない。ビール、ウイスキー、日本酒、焼酎などの酒類製造工程からの廃水や、繊維質を含むSSの濃度の高い木材・木製品製造工程からの廃水、あるいは洗浄、塗装廃水にCr,Znなどの重金属を含む自動車関連事業工程からの廃水なども同様である。
【0003】
図14は、従来の1つの例として焼酎廃液処理工程を示しており、含水率90%以上、酸性度pH4程度で、高濃度のBOD,COD値を示す焼酎廃液(焼酎かす)としての原水がベルトプレス機に投入されて脱水され、脱水ケーキは焼却、肥料化等に回収される。濾液はいったん調整タンクに収容された後、適宜のタイミングで好気性微生物を介した好気性発酵処理あるいは、酸素を遮断した密閉室内での嫌気性微生物によるメタンガス化処理等のための微生物処理槽に収容されて、それぞれの処理を経た後に、目的に応じて利用がなされていたものである。しかしながら、この従来の方法では、微生物処理槽における微生物処理能力に限界があり、例えば処理槽1基が平面の縦×横×高さサイズで20m×10m×3m程度の大きさで30m/日程度の処理能力が通常であった。したがって、従来は、この微生物処理槽の能力に応じて、日々排出される原水投入を行うものであるが、脱水後の搾り廃液の濾液には依然として多量の懸濁浮遊物質(SS)が含まれており、このため、大型の流量調整用タンクを用いた脱水後の濾液の貯留が必要となる上に、微生物処理槽の定格の浄化能力通りの処理が安定して行われる場合が少なく、例えば河川放流水が公的基準値以下となるおそれがあった。すなわち、脱水後の濾液に高濃度のSS成分が含まれるため、微生物処理槽での生物処理能力が低下し、定格どおりの浄化処理が実現されにくいものであった。また、SS成分により、微生物処理槽内が短時間で汚れてしまい処理性能維持のために常時槽内の掃除が必要でその清掃作業に人件コスト、作業労力を要していた。これに対し、SS成分の除去のために例えば、低比重粒子物質(SS成分)除去用の処理プラントと、高比重粒子物質除去用の処理プラントと、を別に用意しそれぞれのプラントに順次通過させることが考えられるが、装置全体が大型化し長大な設置スペースが必要であるとともに、設備コストも高くなって採用し得ないものであった。また、別プラントによる処理となるために、処理時間ロスが発生し処理能力も低下する問題があった。従来の微生物処理槽でも投入量を少なくし、時間をかけ、さらに処理槽の数を増加すれば大きな処理量を確保できるが、上記のように、この処理槽1基自体が大型で、大きな設置スペースが必要であるとともに、該処理槽の槽内条件設定の装置や設備が必要で、コストが高価で廃液処理のためのコストとしてはパフォーマンスが小さいという問題があった。一方、例えば、焼酎廃液処理については、特許文献1のような食品廃液処理方法も提案されている。
【特許文献1】特開平11−207371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1の処理方法では、上面が開口した扁平箱状の複数の容器を上下に間隔をあけて柵状に配置し、回転軸を容器を上下に貫通するように設け、櫛状の撹拌器を容器内に挿入されるように回転軸に放射状に固定し、複数の土壌資材と土壌菌を含む微生物資材とを混合した処理基盤土壌を各容器上に敷き、処理基盤土壌に焼酎廃液等を散布し、回転軸を介して撹拌器を回転させて処理基盤土壌を撹拌し、食品廃液の液体分を蒸発させるとともに、食品廃液の固形分を土壌菌により分解させようとするものである。しかしながら、この方法では、予め敷設した処理基盤土壌に廃液を散布し、さらにこの後液体分蒸発のために土壌を撹拌しなければならず、処理量、処理時間を含む処理能力は従来の大型微生物処理槽よりもはるかに劣るものであるばかりか、コスト的にも複数容器、これらの回転機構、駆動用動力等が必要であり廉価に得られるものではなく、大量の処理液の連続処理には到底実用し得るものではなかった。すなわち、この特許文献1の方法では1度には少量の焼酎廃液しか処理ができず、少量の処理量の廃液であって、しかも半日置き等に処理すべき原水が発生する場合にしか適用できないものであった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は簡単な構造で低コストに製作が可能であり、しかも小型で小さなスペースでも設置ができ、同時に浄化機能及び処理量において高い処理性能を保持し得る廃液の処理装置、その処理システム並びにその処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、砂除去、粗い浮上固形物除去を含む前処理後の廃液の処理装置であり、凝集剤を接触させた連続投入される廃液の凝集反応を促進させつつ反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を回収する凝集沈殿粒子回収部16と、凝集沈殿粒子回収部16で回収される液を導入してその中の相対的な大比重粒子成分を沈殿分離させる沈殿分離部18と、沈殿分離部18で分離された後の処理清水を排出させる排出部20と、を含み、凝集沈殿粒子回収部16は、廃液中の浮遊懸濁物質を多く含む液を捕捉し、相対的な大比重粒子成分を含む液を連続して沈殿分離部18へ供給する浮遊懸濁物質捕捉機構58を有する廃液の処理装置10から構成される。廃液を1つの処理槽に連続して投入しつつ廃液中の大比重粒子成分を沈殿分離し、浮遊懸濁物質のみを捕捉させて清水のみを連続排出させる。清水以外の槽体内に滞留させた浮遊懸濁物質ならびに大比重粒子成分滓はバッチ処理により排出させる。浮遊懸濁物質除去後の液を処理すること、凝集沈殿粒子あるいは大比重粒子成分を含む液の処理を行うことにより、確実かつ円滑な廃液の連続処理を行う。
【0007】
その際、凝集沈殿粒子回収部及16び沈殿分離部18はそれぞれ処理すべき廃液を連続して受け入れて処理する凝集沈殿粒子回収槽165並びに沈殿分離槽185を含むとよく、これによって、連続大量処理可能が可能となる。槽体の外形は特に限定されないが流路を一方向に長いものとし、小型でコンパクトなものとするとよい。
【0008】
また、浮遊懸濁物質捕捉機構58は、凝集沈殿粒子回収槽165に投入される廃液の流れを遮断するように設けられた遮断壁50を含む遮断壁構造60と、遮断壁50の下端側に設けられ凝集沈殿粒子回収部の一部を形成する出口開口62と、を含むようにするとよい。
【0009】
また、本発明の廃液の処理装置は、1方向に長い槽体101が長手方向に沿って2分割するように仕切られてそれぞれの分割された槽が凝集沈殿粒子回収槽165と沈殿分離槽185とされ、凝集沈殿粒子回収部16からの廃液の流れを反転させて沈殿分離部18に導入させる反転導入機構64を設けるとよい。
【0010】
さらに、反転導入機構64は、一端側が凝集沈殿粒子回収部16の遮断壁50下端に設けられた出口開口62に接続して立ち上がり、他端側が沈殿分離部18の前壁50の上部位置の入口開口70に連通接続された立ち上がり管66を含むようにするとよい。
【0011】
また、凝集沈殿粒子回収部16は、廃液の流れの行程を延長させる手段が設けられるとともに、沈殿分離部18には、凝集沈殿成分や大比重粒子成分を排出清水から分離促進させる手段を設けるとよい。
【0012】
また、沈殿分離部18における大比重粒子成分を排出清水から分離させる手段は、廃液の流れが壁の上端部を乗り越えて逸流する態様で流動する複数の第1仕切り部材90を含むとよい。
【0013】
また、沈殿分離部18における大比重粒子成分を排出清水L2から分離させる手段は、流路Fの底部86との間に下部開口89を形成して廃液が潜行するように下部開口を介して流れるようにする第2の仕切り部材92を含み、第1と第2の仕切り部材90、92が流路Fの行程に離隔して交互に配置されるようにするとよい。
【0014】
さらに、沈殿分離槽185には、反転後の流れを再反転させるように流れ方向に沿って中仕切り88を設けるとよい。
【0015】
また、凝集沈殿粒子回収槽165に処理すべき廃液が連続投入され、
反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液L1は、凝集沈殿粒子回収槽165側へ投入される廃液の液圧を介して、凝集沈殿粒子回収槽165と沈殿分離槽185内との液面高さが略同じとなるように立ち上がり管66内を上昇して入口開口70から沈澱分離槽内に導入されるようにするとよい。
【0016】
また、出口開口62に連通し、凝集沈殿粒子回収部16における反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液L1を沈殿分離部18側に導入させるか、外部に排出させるか、を自在に切り替える開閉弁機構78を設けるとよい。
【0017】
また、凝集沈殿粒子回収槽165および/又は沈殿分離槽185の底面52/86は廃液の流れる方向に沿って傾斜して設けるとよい。
【0018】
また、本発明は、請求項9ないし12のいずれかに記載の廃液処理装置10の開閉弁機構78により排出される液および/又は沈殿分離槽から排出される清水を連続して受け入れて濾過処理する開放容器形網体濾過装置96が廃液処理装置10に隣接配置されている廃液処理システムから構成される。
【0019】
さらに、本発明は、砂除去、粗い浮上固形物除去を含む前処理後の廃液の処理にあたり、廃液を1つの処理槽に連続投入しつつ廃液中の大比重粒子成分を沈殿分離し浮遊懸濁物質のみを捕捉させるとともに、清水のみを連続排出させ、浮遊懸濁物質ならびに大比重粒子成分滓はバッチ処理排出させる廃液の処理方法から構成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の廃液の処理装置は、砂除去、粗い浮上固形物除去を含む前処理後の廃液の処理装置であり、凝集剤を接触させた連続投入される廃液の凝集反応を促進させつつ反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を回収する凝集沈殿粒子回収部と、凝集沈殿粒子回収部で回収される液を導入してその中の相対的な大比重粒子成分を沈殿分離させる沈殿分離部と、沈殿分離部で分離された後の処理清水を排出させる排出部と、を含み、凝集沈殿粒子回収部は、廃液中の浮遊懸濁物質を多く含む液を捕捉し、相対的な大比重粒子成分を含む液を連続して沈殿分離部へ供給する浮遊懸濁物質捕捉機構を有する構成であるから、浮遊懸濁物質除去後の液を連続して沈殿分離部へ供給できる結果、確実かつ円滑な廃液の連続処理を行うことができる。また、SS成分除去後の相対的な大比重粒子成分を含む液の処理を簡易な構成により処理することができる。
【0021】
また、凝集沈殿粒子回収部及び沈殿分離部はそれぞれ処理すべき廃液を連続して受け入れて処理する凝集沈殿粒子回収槽並びに沈殿分離槽を含む構成であるから、槽体への投入、凝集処理、処理済液の搬送、沈殿分離処理工程を簡単な構成で実現できる。かつ、これによって、連続大量処理の実効を確保しうる。
【0022】
また、浮遊懸濁物質捕捉機構は、凝集沈殿粒子回収槽に投入される廃液の流れを遮断するように設けられた遮断壁を含む遮断壁構造と、遮断壁の下端側に設けられ凝集沈殿粒子回収部の一部を形成する出口開口と、を含む構成とすることにより、極めて簡単な構造により、分離処理の困難な浮遊懸濁物質を効果的に捕捉でき、低コスト、装置の小型化に資する。
【0023】
また、1方向に長い槽体が長手方向に沿って2分割するように仕切られてそれぞれの分割された槽が凝集沈殿粒子回収槽と沈殿分離槽とされ、凝集沈殿粒子回収部からの廃液の流れを反転させて沈殿分離部に導入させる反転導入機構が設けられた構成とすることにより、1つの槽体により廃液中の浮遊懸濁物質を多く含む液を捕捉し、凝集沈殿成分や相対的な大比重粒子成分を含む液を連続して沈殿分離部へ供給し、沈殿分離処理により最終的に清水あるいは清水に近似の処理済液のみを外部に排出させる構成を簡単で小型の装置により実現し、さらに高い浄化処理性能を保持する構成を実現し得る。また、装置の低コスト化を達成し得る。
【0024】
また、反転導入機構は、一端側が凝集沈殿粒子回収部の遮断壁下端に設けられた出口開口に接続して立ち上がり、他端側が沈殿分離部の前壁の上部位置の入口開口に連通接続された立ち上がり管を含む構成であるから、併設した凝集沈殿粒子回収槽から沈殿分離層に液体の流れを変向させて小型装置としながら、高い浄化処理性能を確保する構成を実現するばかりでなく、単なるU字管ではなく、前段の凝集沈殿粒子回収部の排出開口から沈殿分離部へ高位から導入することにより、廃液の流れについて強制的な動力を用いることなく、自然な流れによる連続処理構成を実現し得る。
【0025】
また、凝集沈殿粒子回収部は、廃液の流れの行程を延長させる手段が設けられるとともに、沈殿分離部には、凝集沈殿成分や大比重粒子成分を排出清水から分離促進させる手段が設けられている構成とすることにより、凝集沈殿処理と、沈殿成分や大比重粒子成分の清水部分からの分離促進処理を実現し、浄化処理性能を高く保持させ得るとともに、槽体の小型化を実現し得る。
【0026】
また、沈殿分離部における大比重粒子成分を排出清水から分離させる手段は、廃液の流れが壁の上端部を乗り越えて逸流する態様で流動する複数の第1仕切り部材を含む構成とすることにより、それぞれの第1仕切り部材により仕切られる室ごとに沈殿物を底部に滞留保持させ複数の室による沈殿分離処理の性能を高く保持し得る。
【0027】
また、沈殿分離部における大比重粒子成分を排出清水から分離させる手段は、流路の底部との間に下部開口を形成して廃液が潜行するように下部開口を介して流れるようにする第2の仕切り部材を含み、第1と第2の仕切り部材が流路の行程に離隔して交互に配置されている構成とすることにより、沈殿分離部での沈殿物の分離処理を確実に行なえる。
【0028】
また、沈殿分離槽には、反転後の流れを再反転させるように流れ方向に沿って中仕切りが設けられたこととすることにより、第1、第2仕切り部材による沈殿分離処理を十分に行えるとともに、装置の小型化の実効を確保し得る。
【0029】
また、凝集沈殿粒子回収槽に処理すべき廃液が連続投入され、反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液は、凝集沈殿粒子回収槽側へ投入される廃液の液圧を介して、凝集沈殿粒子回収槽と沈殿分離槽内との液面高さが略同じとなるように立ち上がり管内を上昇して入口開口から沈澱分離槽内に導入される構成とすることにより、廃液の流動のための特別の動力を必要とせず、装置構成の簡単化、低コスト化を図れる上に、自然な流れによる原水廃液の掛け流し式の連続処理構成を実効化あらしめる。
【0030】
また、出口開口に連通し、凝集沈殿粒子回収部における反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を沈殿分離部側に導入させるか、外部に排出させるか、を自在に切り替える開閉弁機構が設けられた構成とすることにより、装置の運転稼動時、非稼動時に応じて開閉弁を切り替えて、特に槽内の洗浄時などに外部排出モードに切り替えて簡単に清掃を行える。
【0031】
また、凝集沈殿粒子回収槽および/又は沈殿分離槽の底面は廃液の流れる方向に沿って傾斜して設けられた構成とすることにより、槽内の洗浄や沈殿分離効率を向上させることができる。
【0032】
また、本発明は、上記の廃液処理装置の開閉弁機構により排出される液および/又は沈殿分離槽から排出される清水を連続して受け入れてろ過処理する開放容器形網体濾過装置が廃液処理装置に隣接配置されている廃液処理システムから構成されるから、浮遊懸濁物質ならびに凝集沈殿成分あるいは大比重粒子成分を除去後の清水部分のみを大量に受け入れつつ連続的にこの液を濾過し、例えば生物処理装置における負荷を軽減して確実な定格運転あるいはそれ以上の処理性能を保持させることができる。
【0033】
また、本発明は、砂除去、粗い浮上固形物除去を含む前処理後の廃液の処理にあたり、廃液を1つの処理槽に連続投入しつつ廃液中の大比重粒子成分を沈殿分離し浮遊懸濁物質のみを捕捉させるとともに、清水のみを連続排出させ、浮遊懸濁物質ならびに大比重粒子成分滓はバッチ処理排出させる廃液の処理方法から構成することにより、浮遊懸濁物質除去後の液を連続して沈殿分離部へ供給できる結果、確実かつ円滑な廃液の連続処理を行うことができる。また、SS成分除去後の相対的な大比重粒子成分を含む液の処理を簡易な構成により処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明は、生活排水や種々の事業体から出される廃液中の砂や木片、繊維質片等の粗い浮上固形物を除去した前処理後の廃液の処理装置であり、例えば、焼酎その他の酒類製造時の廃液、食品製造、木材・木製品製造工程で出される廃液、その他の有機質廃液さらには、それ以外の無機質成分を含む廃液で浮遊懸濁物質を多く含む廃液の処理に有利に適用されるものである。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る廃液の処理装置を含む廃液の処理システムの平面構成図であり、本実施形態において、廃液の処理システムは、廃液の処理装置10と、処理された液体を受けて連続濾過処理する濾過装置96と、を備えている。図2ないし図7は、廃液処理装置10を示しており、以下まず該廃液処理装置10について図を参照して説明する。
【0036】
図1において、廃液処理装置10は、投入される廃液Lの凝集反応部14と、凝集沈殿粒子回収部16と、沈殿分離部18と、排出部20と、を含む。具体的には、図1において、該廃液処理装置10は、全体として直方体形状の箱型槽体から構成されている。すなわち、凝集沈殿粒子回収部16と、沈殿分離部18とは、それぞれ一方向に長い直方体状の凝集沈殿粒子回収槽165と、沈殿分離槽185と、を含み、これらの凝集沈殿粒子回収槽165と、沈殿分離槽185とが並列状態で接合併設され全体として直方体形状の箱型槽体101を形成している。凝集沈殿粒子回収槽165と、沈殿分離槽185とは、それぞれ処理すべき廃液を連続して受け入れて処理し、最終的には処理済の凝集沈殿物質やSS成分を除去し、BOD、COD値を低下させた処理済の液体を外部に排出させる。
【0037】
本実施形態において、箱型槽体101の一端側面側に処理すべき原水廃液が投入され、他端側面側に後述する大比重粒子成分液取り出し手段あるいは処理済の処理水又は清水の排出部20が設けられている。図1において、原水廃液投入側の端壁を含む壁に四周を囲まれて縦長の凝集反応槽22が設けられている。凝集反応槽22は、投入される原水廃液を凝集反応薬剤に接触させて反応させる凝集反応部14であり、凝集反応槽22に例えば焼酎廃液や食品製造廃液その他の廃液が直接に投入されるとともに、凝集剤が投入される。凝集反応槽22は、例えば砂利や大型浮遊木片等を除去した有機質系廃液に凝集剤を投入してフロックを生じさせフロック廃液を生成する廃液のフロック生成手段であり、液中の粒子の帯電状態を操作して粒子間結合を促進し、さらに、それらの相互を架橋作用により沈殿し得る程の大きさにフロックを成長させることにより固液分離をしやすくするものである。実施形態において、凝集反応槽22には、攪拌モータ24と攪拌モータ24に連結された攪拌羽根26とを含む攪拌装置28が設けられている。また、凝集反応槽22の角隅部には、上部を三角状に仕切り、下端側が中途で終端して攪拌作用室側に連通するコーナ仕切り30が設けられている。コーナ仕切り30は、攪拌装置28による攪拌作用を受ける前に凝集剤を原水廃液に接触させてその後に攪拌作用室に供給させる凝集剤接触手段である。
【0038】
詳細には、本実施形態において、コーナ仕切り30の内側に原水廃液の供給管32と、凝集剤供給パイプ34と、がそれぞれ廃液あるいは液化された凝集剤を投入するようにそれらの開口を臨ませて配置されている。本発明の廃液処理装置は、処理廃液が連続投入されてこれを処理しつつ処理水を連続排出させる小型装置であり、実施形態において、廃液供給管32は、図示しないポンプとともに原水廃液を凝集反応槽22内に掛け流し式に連続投入させる連続投入手段を構成する。本実施形態では、図1に示すように、凝集剤の溶解槽36、溶解槽で溶解されポンプ38を介して送られる凝集剤液を一次貯留するサブタンク40、サブタンク内の凝集剤液をコーナ仕切り室に送るポンプ42、を含む凝集剤供給装置が本廃液処理装置に付設されている。なお、溶解槽にはモータ44を介して攪拌回転する羽根46が設けられている。コーナ仕切り30の内側の凝集剤接触室で凝集剤と接触した原水廃液は凝集反応槽22の本体室内で羽根46の回転により攪拌され、その攪拌された液は凝集沈殿粒子回収槽165との仕切り壁47の上端縁の一端側に形成されたオーバフロー用切欠49を乗り越えてオーバフローぶんが凝集沈殿粒子回収槽165側に流入する。
【0039】
前記したように、箱型槽体101は、1方向に長い槽体であり、この槽体内を長手方向に沿って2分割するように分割壁48により仕切り分割されており、それぞれの分割された槽が凝集沈殿粒子回収槽165と沈殿分離槽185とされる。分割壁48により、凝集沈殿粒子回収槽165と沈殿分離槽185との槽内の液の流れは相互に影響を受けないように、分割遮断されている。そして、後述するように、凝集沈殿粒子回収部16から沈殿分離部18に至る廃液の流れが反転されるように沈殿分離部18側に導入される。
【0040】
凝集沈殿粒子回収部16は、廃液の凝集剤との反応を促進させつつフロック形成して沈殿した粒子やその他の沈殿粒子成分を主に含む液のみを回収して取り出し、例えばSS成分等の非沈殿浮遊懸濁物質やその他の非沈殿成分を貯留保持させる廃液の処理流路手段であり、本実施形態では、左右方向に長い凝集沈殿粒子回収槽165を主要な構成要素として含む。
【0041】
凝集沈殿粒子回収槽165は、図3,4に示すように、ある程度の深さ(例えば1.2m程度)を有する廃液流路Fを内側に形成した槽体であり、上面を開口して四周壁で囲まれている。回収槽165は、凝集反応槽との仕切り壁47と、両側壁と、流れの突き当たりの遮断壁50により四周を囲まれており、その底部は略V字状に形成されている。詳細には、このV字底部52は、対向中央側に下がり傾斜した両斜壁52A,52Bと、その中央の下がり対向部に形成されたコ字凹陥部54とからなり、形成されたフロックや大比重成分粒子が斜壁52A、52Bに案内されてコ字凹陥部54に収束され沈殿する。流路Fの横幅より小さなコ字凹陥部54に沈殿物が収束するから槽内の清掃に手間がかからず、小さな労力で短時間で行える。V字底部52は、図5、図2、図4に示すように、廃液の投入側N1から排出側U1側にかけて直線状に下がるように傾斜して設置されている。これによって、上記のような槽内の清掃、洗浄等の際に利便であるとともに、掛け流し式の原水廃液の投入による液の流れが滞留することなく自然に下流側に移動するようにし得る。特に、凝集沈殿した成分が確実に下流側、すなわち遮断壁側に流下する。さらに、本実施形態において、この凝集沈殿粒子回収槽165には、廃液の流れの行程を延長させる手段が設けられている。本実施形態において、この流れ行程延長手段は廃液の投入側から排出側に向けた直線状の流れの途中に左右の側壁から流路の中途までを遮るように流れ方向に対して間隔をあけて左右側壁から交互に突設された複数の迂回用壁56(図1の例では、5個の迂回用壁56が設けられている。)からなり、図1矢視線f1のように、廃液はこれらの迂回用壁56に案内されて蛇行しながら流れることにより行程を延長あるいは流れを遅延させて原水廃液が十分に凝集剤と凝集反応を生じさせフロックを沈殿させるようにする。なお、この迂回用壁56の下端側は鉛直状に配置された両側壁の下端とV字底部52の斜壁52Aの上端との接合部分で終端されて図3のように縦長四角形状の板により形成されている。したがって、迂回用壁56の下端よりも下部側は廃液の投入側から遮断壁50にかけて直状に連通し(直状空隙)、凝集沈殿粒子等は傾斜下流側に自然に滞留して、洗浄等を手間をかけずに短時間で、簡単に行える。
【0042】
前述したように、凝集沈殿粒子回収槽を含む凝集沈殿粒子回収部16は、原水廃液中の凝集沈殿粒子を主に含む液を回収し、フロック化しにくいSS成分等の液中の浮遊懸濁物質を槽内に止め置く機能を行う。すなわち、概略的にいうと、原水中のフロックにより沈殿する重比重固形分を抜き取り、液面等に浮遊する成分は槽体中に残留させるようにしたものである。すなわち、凝集沈殿粒子回収部16は、浮遊懸濁物質捕捉機構58を有する。本実施形態において、浮遊懸濁物質捕捉機構58は、凝集沈殿粒子回収槽に投入される廃液の流れを遮断する遮断壁構造60と、流路の終端の下端側から凝集沈殿粒子成分を主に含む液を取り出し回収する開口62と、を含む。遮断壁構造60は、槽内での廃液の流れの突き当たりに設けられた遮断壁50を含み、この遮断壁50が凝集沈殿粒子回収槽に投入される廃液の流れを最終的に遮断する。そして、図2に示すように、V字底部52のコ字凹陥部54が遮断壁50と突き当たる部分の遮断壁部分、すなわち、遮断壁50の下端側中央位置に出口開口62が形成され、これによって、沈殿粒子成分を主に含む液のみが遮断壁の下端側の該出口開口62から排出され、液面側の浮遊懸濁物質を主に含む液は遮断壁50に堰き止められた状態となって、槽内に滞留する。したがって、原水廃液の連続投入に際して作業継続中は凝集沈殿粒子回収槽165からは沈殿粒子成分を主に含む液のみを排出し、液面側の浮遊懸濁物質を主に含む液は槽体内に滞留させたままとされる。そして、原水側の投入を停止する時間帯に回収槽165内の液を排出し、この際、浮遊懸濁物質を濾過装置側に誘導させて、まとめて濾過処理する。
【0043】
前記したように、本実施形態の廃液の処理装置は、1方向に長い箱型槽体101を、長手方向に沿って分割壁48により中央で2分割するように仕切って、凝集沈殿粒子回収槽165と沈殿分離槽185とを並列状態で併設させている。したがって、装置全体が非常に小型化され、狭小スペースでも設置可能となっている。
【0044】
さらに、本実施形態において、凝集沈殿粒子回収部16からのN1からU1方向への廃液の流れを反転させてU1側からN1側に液体を流動させるように沈殿分離部18に導入させる反転導入機構64が設けられている。反転導入機構64は、凝集沈殿粒子回収部16から取り出される凝集沈殿粒子成分を主に含む液L1をUターン状に反転した流れとして沈殿分離部側に流す流れ反転手段であり、併設した回収槽165から沈殿分離層185に液体の流れを変向させて小型装置による廃液処理構成の実効化を図る。実施形態において、反転導入機構64は凝集沈殿粒子回収槽165あるいは、沈殿分離層185の外側に配置され、一端側が凝集沈殿粒子回収部16の遮断壁50下端に設けられた出口開口62に接続して立ち上がり、他端側が沈殿分離部18の沈殿分離槽185内に上方位置から流入させるように液を導入させる立ち上がり管66から構成されている。立ち上がり管66の他端側は、沈殿分離槽185の前壁68の上部位置の入口開口70に連通接続しており、このように、単なるU字管ではなく、前段の凝集沈殿粒子回収部の排出開口62から沈殿分離部への導入が高位から導入されるので廃液の流れについて強制的な動力を用いることなく、自然な流れによる連続処理構成を実現し得る。すなわち、高位から沈殿分離槽に導入されるので、原水廃液の連続投入による液の流動圧力のみで沈殿分離槽内においても液体が流動し得る。
【0045】
詳細には、立ち上がり管66は、図1,2に示すように、出口開口62との接続部分から直状に延びる直管部72の中途から図2のように横管74と縦管76からなるL字管の縦管76を槽体の略高さ上端位置程度まで立ち上げて構成されている。前述したように、凝集沈殿粒子回収部16により凝集沈殿粒子を主に含む液を取り出し回収する一方、浮遊懸濁物質を含む液を適宜バッチ処理にて外部に排出させる。この際の、開閉弁機構78が凝集沈殿粒子回収槽165の遮断壁50から突設された直管部72の立ち上がり管66の接続位置よりもより突出した位置に設けられている。開閉弁機構78は、出口開口62に連通し、凝集沈殿粒子回収部16における反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を沈殿分離部18側に導入させるか、外部に排出させるか、を自在に切り替える切換手段であり、本実施形態では、例えば簡単な手動開閉バルブが用いられている。手動開閉バルブにより直管部72を閉鎖させた状態で出口開口62から出る廃液を立ち上がり管の立ち上がり側に送るとともに、直管部72を開放させると本処理装置に隣接配置された網体濾過装置に向けて排出させる。
【0046】
凝集沈殿粒子回収槽165に併設された沈殿分離槽185は、前壁68、分割壁48、側壁82、仕切り壁84により囲繞されて一方向に長い上面開放容器状に構成されており、前壁60の上端寄り位置に形成された入口開口70に立ち上がり管66の他端側が連通接続されて、前段工程からの廃液を沈殿分離槽内に流下導入させる。
【0047】
沈殿分離槽185は、凝集沈殿粒子回収部16で回収される液を導入してその中の相対的な大比重粒子成分を沈殿分離させる沈殿分離手段としての沈殿分離部16であり、凝集沈殿粒子回収部16で懸濁浮遊物質を除去後の、清水部分と凝集沈殿粒子成分を含む液部分とをその中に導入させ、最終的に凝集沈殿粒子成分並びに大比重粒子成分のみを保持させて清水部分のみを外部に排出させる。沈殿分離槽185は、図3、4に示すように、凝集沈殿粒子回収槽165と同じ槽壁高さを有し、同じ流路幅を有する槽体から構成され、その底部86は回収槽165と異なり、横に平らな平面で構成されている。そして、底部86は、隣接の凝集沈殿粒子回収槽165と同様に、N1側からU1側にかけて直線状に下がるように傾斜して設置されている。したがって、図9のように、回収槽165から導入された液は沈殿分離槽185内では上り勾配で流動することとなる。沈殿分離槽185自体には、液の流れ方向、すなわち槽体の長手方向に沿ってその流路幅中央に、中仕切り88が取り付けられている。中仕切り88は、反転導入機構64を介してUターン状に反転導入された液の流れf2を再反転させて、装置の長大、大型化を防止しコンパクト化を保持させるとともに、凝集沈殿粒子成分や大比重粒子成分を清水部分から十分に分離させて清水を放出させる工程を行うものであり、図1のように流路F中の往路と復路とを左右両側に分割させて相互の流れf3が影響しないように遮断する。これによって、回収槽165から導入された液は沈殿分離槽185内の往路が上り勾配で流動するとともに、復路は下がり勾配の流動となる。
【0048】
さらに、この沈殿分離槽185には、排出させる清水から大比重粒子成分を分離させ、これを促進させる分離促進手段が設けられている。分離促進手段は、流路の中途に設けられ廃液の流れが壁の上端部を乗り越えて逸流する態様で流動する複数の第1仕切り部材90を含む。第1仕切り部材90は、底部86から略鉛直方向に立ち上がり、該底部86と往路の側壁部分を接合されて往路断面の上部付近程度全体を遮蔽する閉鎖板部材からなり、往路では仕切り壁84との間に1個、復路では仕切り壁84と前壁68との間に2個設けられている。これらの第1仕切り部材はそれら同士あるいはそれらと仕切り壁84や前壁68のような外囲壁との間に複数の仕切り室Cを形成しており、分離した沈殿粒子の流動を仕切り室ごとに個別に遮断する。ちなみに、本実施形態では、外囲壁と第1仕切り部材との間の仕切り室Cは、往復路で計5個(C1〜C5)設けられている(図8参照)。したがって、これらの仕切り部材を廃液が逸流LRにより流動する際にそれぞれの仕切り室ごとに沈殿粒子あるいは大比重粒子成分を捕捉し、浮遊懸濁成分を除去した液から質量の大きな汚濁原因物質を分離除去し、清水のみを排出させるようにする。本実施形態では、さらに、分離促進手段として壁の下部側を潜行して液が流れる態様で流動させる第2の仕切り部材92が取り付けられている。第2仕切り部材92は、第1仕切り部材と同様の閉鎖板材からなり、図6,7に示すように両端を流路の両側壁に接合固定され、底部86との間に下部開口89を形成するように設けられている。そして、第2仕切り部材92に当たる液体は下部開口89のみから潜行する状態の潜行流LUとして、流動する。本実施形態では、第1仕切り部材90と第2仕切り部材2とが交互に配置されており、したがって、単なる遮断壁の逸流のみでなく図6,7のように強制的に縦方向の振幅を大きくさせる縦に蛇行する波のように液を流動させる。これによって、沈殿粒子あるいは大比重粒子成分を確実に各仕切り室で分離させ滞留させる。なお、実施形態では、図6、図10のように入口開口70から導入された液は液の進行方向せり上がり状に傾斜した第2仕切り部材92により下部からの落下空間を狭小化されて流速を増し、増速して最初の第1仕切り部材90の逸流に移行するようになっている。同様に、復路では、図7、図10のように最後の第1仕切り部材の1つ手前の第2仕切り部材も液の進行方向せり上がり状に傾斜して配置されており、最後の第1仕切り部材90の逸流を円滑に行えるようにしている。なお、図3に示すように前壁の1つ手前の第1仕切り部材90の上端中央部にはV字状溝94が形成されており、そのV字の斜辺に沿って流量目盛りが表示されている(図示せず)。これによって、清水の凡その流量を目測でき、以降の処理工程での段取りや生物処理工程での準備をしやすくさせ得る。なお、図中、150,151は沈殿物質を排出させて洗浄処理する際の開閉コック付きドレン、53は凝集反応槽と凝集沈殿粒子回収槽とを連通し凝集沈殿粒子回収槽内を貫通して先端を遮断壁50から突設させた連通ドレン管である。
【0049】
前述のように、凝集沈殿粒子回収槽165ならびに沈殿分離槽185内を流動する液は反転導入機構64の立ち上がり管66内を立ち上がり方向に流れる液を含めて流れを強制的に生じさせる動力を用いることなく、掛け流し式の原水廃液の連続投入による水圧により流動させている。すなわち、凝集沈殿粒子回収槽165からの反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液は、凝集沈殿粒子回収槽165側へ投入される廃液の液圧を介して、凝集沈殿粒子回収槽165と沈殿分離槽185内との液面高さが略同じとなるように立ち上がり管66内を上昇して入口開口70から沈澱分離槽185内に導入される。したがって、廃液の案内や流動制御が自動的に行われ、特段の装置を必要とすることなく簡単な槽体構成のみで浄化能力に優れた廃液処理を行える。
【0050】
最後の第1仕切り部材90xの上端部を逸流した液は、凝集沈殿粒子回収槽165による軽量浮遊懸濁成分(SS物質)並びに沈殿分離槽185による沈殿粒子成分や大比重粒子成分を除去した後の清水に近い液体L2となり、これが復路側の突き当りとなる前壁部分の仕切り部材90xよりやや下部位置に設けた排出部20としての排出口から排出され、例えば次工程に供給される。このように、軽量浮遊懸濁成分(SS物質)を確実な方法で除去し、凝縮沈殿物質さらには大比重粒子成分を除去した液体は、BOD(biochemical oxygen demand:生物化学的酸素要求量)値並びにCOD(chemical oxygen demand:化学的酸素要求量)値を相当程度で、確実に減少させ、限られた能力の微生物処理工程へ供給して例えば河川放流として許容される程度の浄化処理を実現し得る。
【0051】
以上は、本発明にかかる廃液の処理装置について説明したが、次に、該処理装置10を備えた廃液処理システムについて説明すると、この廃液処理システムでは、該廃液処理装置10からの処理済み廃液を受けて連続処理可能なように、該廃液処理装置10に隣接して開放容器形網体濾過装置96を配置させている。図1,9に示すように、開放容器形網体濾過装置96は、四周壁および底壁により形成された上面開放の外ケース98と、外ケース98内に配置された外ケースより小さなサイズの上面開放の網体濾過ケース100と、を含む。網体濾過ケース100は少なくとも四周が網体により囲まれたケース体であり、内部に処理水を導入して網体を通過した濾過後の液体を外ケース側に排出し、外ケース内の処理液はポンプ102等を介して例えば微生物工程へ供給される。網体濾過ケース100は、実施形態では例えば図示しない上面開放の直方体状金網フレームや単なるフレームを用意し、その内側に強度を有するネットであって所要のメッシュ大きさの網目を有するネットを張設して構成されている。上面開放状態の網体構造を保持できる限りではその形態を保持する形状は円筒、その他の多角形、異形等任意の外観形態としてよい。また、網体濾過ケースは、所望のメッシュ大きさの金網等の強度のある素材を上面開放の箱形状に構成したり、あるいはパンチング孔を形成した素材を接合して組み付けたケース体構造であってもよい。この開放容器形網体濾過装置96によれば、処理すべき液体を排出口に連通接続して網体濾過ケース100内に放出口を向けて配置した接続投入管104を設けることにより、連続投入し処理できるとともに、大量処理が可能であり、かつ短時間で濾過処理できるから、次工程への待ち時間を極めて短くし、そのぶん網体の濾過用網目の洗浄等のメンテナンスを常時完備させることができて、濾過機能を常に高性能に保持し得る。なお、この開放容器型網体濾過装置は、微生物工程へ渡す前の液体の一次貯留用バッファタンク手段としても機能する。
【0052】
次に、本発明の廃液の処理方法について説明しつつ、上記の実施形態の作用について説明する。原水廃液は砂除去、木片等の粗い浮上固形物除去をした後の廃液が対象となる。詳細には、それらの粗固形物の除去後の廃液をベルトプレスあるいはフィルタプレス等の前処理を行った後の廃液が対象とされる。そして、この廃液は例えば焼酎廃液のような高濃度のBOD、COD、SS成分値を有してそのままでは河川放流が許されないような廃液である。このような廃液を1つの処理槽に連続して投入しつつ廃液中の大比重粒子成分を沈殿分離し、浮遊懸濁物質のみを捕捉させるとともに、清水のみを連続排出させる。そして、清水以外の槽体内に滞留させた浮遊懸濁物質ならびに大比重粒子成分滓はバッチ処理により排出させるものである。
【0053】
図11は、焼酎廃液処理について、本廃液の処理システムを用いて最終的に微生物処理までを行う工程を示したフローチャート図であり、原水廃液投入後ベルトプレスにより脱水し(S1,S2)、残渣の脱水ケーキは肥料、飼料等に利用される。脱水後の濾液はいったん曝気調整タンクを通じて(S3)エアレーションによりアルコールをとばして反応処理準備を行う。その後、S4において、本廃液の処理システムを通じて浄化処理され、SS、BOD、COD値を顕著なレベルで落とす。また、本システムでは例えば10m/h程度の液量を浄化できる。その後、微生物処理タンクに投入する前の流量処理のための調整タンクS5を経て、微生物処理タンクに投入される(S6)。通常微生物処理装置では30m/24hの処理能力であるから、本願システムでは十分な処理時間の余裕があり、したがって、そのぶん本願装置の工程を長く行うために繰り返し本装置を通過させたり、あるいは、装置の廃液処理流路を長くとって処理能力を高めた装置としたものにて処理を行う等により、十分な前処理が可能であり、これによって、さらに、SS、BOD、COD値等を低減させることが可能となる。
【0054】
(試験例)
図13は、図12の焼酎廃液テストプラントの処理フローによる処理工程から廃液あるいは処理液を採水し分析して得られた数値を示したものである。図12中、各工程でのあるいはそれらからの投入量、処理量、生成量、排出量を示してある。採水は、主な工程を選択した数点について行っている。採水方法は、工程から定期的に採水を繰り返し、廃液の一日の平均値を割り出して得た。表中、(1)洗米廃液は、酵母生成用の米の研ぎ汁を焼酎の各仕上げ処理時の絞り粕液とともに廃液として処理するためである。また、絞り廃液は原水廃液を布袋にて搾り、搾り粕をベルトプレス処理と同等の含水率まで搾って採水したものである。(2)搾り廃液濾過機後は、配管途中より採水し、搾り廃液と濾布洗浄水の混合により調整した。(3)の流量調整槽は本願システムを通さない従来方法により収容した調整槽A、並びに本願システムを経由した二重線による流量調整タンクBにおいて、それぞれ2回/時間、合計18回採水して得たものである。(4)本願システムは、1回/時間、合計7回採水して得た。放流水は、微生物処理装置に取り付けられた微生物処理後の放流水の放流管の吐出口より採水したものである。
【0055】
本願システムを通さない従来方法による調整槽AでのBOD、SS、COD値(mg/L)は、それぞれ6,700、1,500、1,900であるのに対し、本願装置による処理を行った場合には、それぞれ4,800、98、1,500であり、すべての値について本願装置による処理を経由することにより低減させ得ることが分る。特に、SS値が大幅に低減されており、次工程での濾過処理で装置の目詰まりを生じさせず安定して処理を継続しうるだけでなく、微生物処理装置においてもBOD値、COD値の減少に資する。具体的には、(7)に示す例えば1つの自治体における放流基準値例に対し、本願装置を介した処理後の処理液では、すべての指標において、基準値を下回っているのに対し、従来方法による場合には基準値を超えた数値が検出されている。なお、この場合、図10に示すように、本願システムでは、10m/h程度の液量処理が縦×横×高さが3m×2.7m×1.8m程度の装置サイズで実現される。したがって、微生物処理装置の処理は定格30m/24h通りあるいは、投入前の液の浄化が優れるので現実にはそれ以上の処理が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の廃液の処理装置、その処理システム並びにその処理方法は、畜産・水産品、野菜・果物関係、味噌・しょうゆ製造、パン・菓子製造、麺類製造、餡類製造、弁当業等を含む食品製造に関する事業、酒類製造業、木材・木製品製造業、製紙、製鉄、自動車、石油製品、化学工場等から排出される産業排水、農用地の除草、防虫のために散布される農薬類、廃棄物に含まれる汚濁物質飲食・旅館業等の事業所から排出される廃液であって、廃液中から木片等の粗大浮遊固形物や砂等を除去した前処理後の廃液の処理について、好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に廃液の処理システムの全体平面説明図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】図1のB−B線矢視図である。
【図4】図1のC−C線矢視図である。
【図5】図1のシステムの廃液処理装置部分のみを示すD−D線矢視図である。
【図6】図1のシステムの廃液処理装置部分のみを示すE−E線矢視図である。
【図7】図1のシステムの廃液処理装置部分のみを示すF−F線矢視図である。
【図8】図1のシステムの廃液処理装置における沈殿分離槽の仕切り室Cの構成を示す平面説明図である。
【図9】図1のシステムの開放容器形網体濾過装置部分の全体斜視図である。
【図10】箱型槽体中の廃液の処理の流れを示す廃液流れ図である。
【図11】本願処理システムを用いた焼酎廃液処理の工程例のフローチャート図である。
【図12】テストプラントに係る焼酎廃液処理の本願システムと従来方法とを同時に示すフローチャート図である。
【図13】図11のテストプラントから採水して得られた廃液の汚濁指標の分析結果を示す表の図である。
【図14】従来の廃液処理方法(例えば焼酎粕)の1例を示すフローチャート図である。の図である。
【符号の説明】
【0058】
10 廃液の処理装置
12 開放容器形網体濾過装置
14 凝集反応部
16 凝集沈殿粒子回収部
165 凝集沈殿粒子回収槽
18 沈殿分離部
185 沈殿分離槽
20 排出部
22 凝集反応槽
48 分割壁
50 遮断壁
58 浮遊懸濁物質捕捉機構
60 遮断壁構造
62 出口開口
64 反転導入機構
66 立ち上がり管
68 前壁
70 入口開口
78 開閉弁機構
86 底部
88 中仕切り
90 第1仕切り部材
92 第2仕切り部材
96 開放容器形網体濾過装置
F 廃液流路
C 仕切り室
S 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂除去、粗い浮上固形物除去を含む前処理後の廃液の処理装置であり、
凝集剤を接触させた連続投入される廃液の凝集反応を促進させつつ反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を回収する凝集沈殿粒子回収部と、
凝集沈殿粒子回収部で回収される液を導入してその中の相対的な大比重粒子成分を沈殿分離させる沈殿分離部と、
沈殿分離部で分離された後の処理清水を排出させる排出部と、を含み、
凝集沈殿粒子回収部は、廃液中の浮遊懸濁物質を多く含む液を捕捉し、相対的な大比重粒子成分を含む液を連続して沈殿分離部へ供給する浮遊懸濁物質捕捉機構を有することを特徴とする廃液の処理装置。
【請求項2】
凝集沈殿粒子回収部及び沈殿分離部はそれぞれ処理すべき廃液を連続して受け入れて処理する凝集沈殿粒子回収槽並びに沈殿分離槽を含む請求項1記載の廃液の処理装置。
【請求項3】
浮遊懸濁物質捕捉機構は、凝集沈殿粒子回収槽に投入される廃液の流れを遮断するように設けられた遮断壁を含む遮断壁構造と、
遮断壁の下端側に設けられ凝集沈殿粒子回収部の一部を形成する出口開口と、を含むことを特徴とする請求項2記載の廃液の処理装置。
【請求項4】
1方向に長い槽体が長手方向に沿って2分割するように仕切られてそれぞれの分割された槽が凝集沈殿粒子回収槽と沈殿分離槽とされ、
凝集沈殿粒子回収部からの廃液の流れを反転させて沈殿分離部に導入させる反転導入機構が設けられたことを特徴とする請求項2又は3記載の廃液の処理装置。
【請求項5】
反転導入機構は、一端側が凝集沈殿粒子回収部の遮断壁下端に設けられた出口開口に接続して立ち上がり、他端側が沈殿分離部の前壁の上部位置の入口開口に連通接続された立ち上がり管を含むことを特徴とする請求項4記載の廃液の処理装置。
【請求項6】
凝集沈殿粒子回収部は、廃液の流れの行程を延長させる手段が設けられるとともに、沈殿分離部には、凝集沈殿成分や大比重粒子成分を排出清水から分離促進させる手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項7】
沈殿分離部における大比重粒子成分を排出清水から分離させる手段は、廃液の流れが壁の上端部を乗り越えて逸流する態様で流動する複数の第1仕切り部材を含む請求項2ないし6のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項8】
沈殿分離部における大比重粒子成分を排出清水から分離させる手段は、流路の底部との間に下部開口を形成して廃液が潜行するように下部開口を介して流れるようにする第2の仕切り部材を含み、第1と第2の仕切り部材が流路の行程に離隔して交互に配置されていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項9】
沈殿分離槽には、反転後の流れを再反転させるように流れ方向に沿って中仕切りが設けられたことを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項10】
凝集沈殿粒子回収槽に処理すべき廃液が連続投入され、
反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液は、凝集沈殿粒子回収槽側へ投入される廃液の液圧を介して、凝集沈殿粒子回収槽と沈殿分離槽内との液面高さが略同じとなるように立ち上がり管内を上昇して入口開口から沈澱分離槽内に導入されることを特徴とする請求項2ないし9のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項11】
出口開口に連通し、凝集沈殿粒子回収部における反応後の凝集沈殿粒子を主に含む液を沈殿分離部側に導入させるか、外部に排出させるか、を自在に切り替える開閉弁機構が設けられたことを特徴とする請求項3ないし10のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項12】
凝集沈殿粒子回収槽および/又は沈殿分離槽の底面は廃液の流れる方向に沿って傾斜して設けられていることを特徴とする請求項2ないし11のいずれかに記載の廃液の処理装置。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかに記載の廃液処理装置の開閉弁機構により排出される液および/又は沈殿分離槽から排出される清水を連続して受け入れてろ過処理する開放容器形網体濾過装置が廃液処理装置に隣接配置されていることを特徴とする廃液処理システム。
【請求項14】
砂除去、粗い浮上固形物除去を含む前処理後の廃液の処理にあたり、
廃液を1つの処理槽に連続投入しつつ廃液中の大比重粒子成分を沈殿分離し浮遊懸濁物質のみを捕捉させるとともに、清水のみを連続排出させ、
浮遊懸濁物質ならびに大比重粒子成分滓はバッチ処理排出させることを特徴とする廃液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−326485(P2006−326485A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153337(P2005−153337)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(598092133)有限会社中道環境開発 (3)
【Fターム(参考)】