説明

廃液吸引装置

【課題】簡便な操作で廃液の吸引を達成できる良好な操作性、廃液の漏出及び逆流を生じることのない高い安全性及び操作者の体表面に装着し易い優れた携帯性を有する廃液吸引装置を提供すること。
【解決手段】廃液を導入する導入口、廃液を排出する排出口及び内部の空気を排気可能な逆止弁付の排気口を有する廃液貯留槽と、
前記廃液貯留槽内に収容される袋体であり、該袋体の外面及び前記廃液貯留槽の内面で形成される領域に廃液が貯留され、かつ外気と通じている弾力性袋と、
内部の空気を排気可能な一方向弁付の通気孔を有し、内容積の増減によって、前記廃液貯留槽から前記排気口を介して吸気し、前記通気孔を介して排気可能であり、前記廃液貯留槽に廃液を貯留するときは前記逆止弁を閉鎖状態にする内容積可変部材とを備えることを特徴とする廃液吸引装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃液吸引装置に関し、特に詳しくは、簡便な操作で廃液の吸引を達成できる良好な操作性、廃液の漏出及び逆流を生じることのない高い安全性及び操作者の体表面に装着し易い優れた携帯性を有する廃液吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「切開創もしくは手術創からの排血液等の体液(排液)を吸引集液するための用具であって、容器本体と、・・・袋状部材とから成り、容器本体の上部には、吸引手段に接続するための吸引口・・・が設けられており、一方、貯溜部は・・・伸展拡径して容器本体上部下面の排液口および取出口を内在する領域を取り囲む位置に固着してなることを特徴とする体液吸引集液器」が記載されている(特許文献1の請求項1参照)。吸引手段として、「剛性容器(11)内に膨張収縮自在な弾性部材(12)(バルーン等)が内蔵され、上下両端に一方向弁を備えたゴム球(13)を用いて剛性容器(11)内を排気して弾性部材(12)を膨張させ、その収縮によって吸引力を発生させる吸引具(10)」を装着した「体液吸引集液器」の具体例が示されている。特許文献1に示される「体液吸引集液器」の具体例では、廃液を貯留する容器本体と吸引手段とが単に並列されているに過ぎないと認められる(特許文献1の図2参照)。
【0003】
例えば、容器本体と吸引具とを面ファスナー等の結合手段により結合した場合に、操作者が容器本体又は吸引具を把持して「体液吸引集液器」を持ち上げようとすると、把持していない側の自重により結合手段の結合状態が解除されて容器本体と吸引具とが分離する虞がある。また、体液を吸引して貯留する装置は、操作者が体表面に装着して持ち運ぶことが多いので、容器本体と吸引手段とが並列されていると装置が大型化してしまい、操作者の体表面に装着し難く、負担になることがあった。なお、容器本体と吸引具とが分離可能であると、吸引具を作動させて容器本体内を減圧している状態で操作者の不注意等により容器本体と吸引具とが分離してしまうと、容器本体内に貯留している体液が体内に逆流する可能性があり、生体に使用する装置には高い安全性が要求されるので好ましくない。更に言うと、袋状部材が破損してしまった場合には、吸引手段にまで廃液が流入する可能性があり、衛生面から好ましくない。
【0004】
特許文献1に示されるような容器本体と吸引手段とが別体的に設けられる態様ではなく、一体的に構成されている液体吸引器具の一例が特許文献2に示されている。特許文献2には、「・・・自己復元性を有する吸引具本体と、該吸引具本体に設けられ・・・る連通口部及び吸引口部と、該吸引口部に接続された吸引チューブとからな・・・る液体用吸引具において、・・・逆止弁を前記連通口部に設け・・・たことを特徴とする液体吸引具」が記載されている(特許文献2の請求項1参照)。更に、連通口部に設けられる逆止弁の具体例も記載されている(特許文献2の実施例欄、図2及び7参照)。
【0005】
特許文献2に示される液体吸引具は、液体を吸引している途中では蛇腹部が圧縮状態であるので、吸引した液量を目視しようとしても、目盛りが見難いことがある。また、持続した吸引の達成が装置全体の大型化を招いてしまうと考えられる。更に、操作者の例えば腰部分等に装着し難く、携帯性が悪いことも考えられる。蛇腹部を圧縮状態にするだけでは、所定の減圧状態を達成できたかどうか分かり難いという難点もあった。
【0006】
かかる難点に鑑みて、簡便な操作で廃液の吸引を達成できる良好な操作性、廃液の漏出及び逆流を生じることのない高い安全性及び操作者の体表面に装着し易い優れた携帯性を有する廃液吸引装置が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平5−168698号公報
【特許文献2】特開平2−261472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、簡便な操作で廃液の吸引を達成できる良好な操作性、廃液の漏出及び逆流を生じることのない高い安全性及び操作者の体表面に装着し易い優れた携帯性を有する廃液吸引装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、
請求項1は、廃液を導入する導入口、廃液を排出する排出口及び内部の空気を排気可能な逆止弁付の排気口を有する廃液貯留槽と、
前記廃液貯留槽内に収容される袋体であり、該袋体の外面及び前記廃液貯留槽の内面で形成される領域に廃液が貯留され、かつ外気と通じている弾力性袋と、
内部の空気を排気可能な一方向弁付の通気孔を有し、内容積の増減によって、前記廃液貯留槽から前記排気口を介して吸気し、前記通気孔を介して排気可能であり、前記廃液貯留槽に廃液を貯留するときは前記逆止弁を閉鎖状態にする内容積可変部材とを備えることを特徴とする廃液吸引装置であり、
請求項2は、前記廃液貯留槽が円筒形状を有し、
前記内容積可変部材が有底円筒形状を有するシリンダであり、かつ前記廃液貯留槽が挿入されて前記廃液貯留槽の周側面を摺動可能に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の廃液吸引装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、装置自体が小型であるので、例えば操作者の体表面に装着し易く、操作者が腰部分に装着した状態で容易に移動及び動作可能な、優れた携帯性を有している廃液吸引装置を提供することができる。
【0011】
また、この発明によると、廃液貯留槽内に廃液を吸引する操作が簡便であるような、良好な操作性を有する廃液吸引装置を提供することができる。
【0012】
更に、一旦貯留した廃液が外部に漏出及び逆流を生じることの無い、高い安全性を有する廃液吸引装置を提供することができる。
【0013】
この発明によると、シリンダである内容積可変部材に廃液貯留槽が挿入され、内容積可変部材を廃液貯留槽の周側面に摺動させるだけで廃液貯留槽内の排気を行うことができるので、操作性がより一槽向上した廃液吸引装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、廃液貯留槽と、弾力性袋と、内容積可変部材とを有している。
【0015】
廃液貯留槽は、導入口、排出口及び排気口を備える。
【0016】
詳述すると、前記導入口は、廃液貯留槽内に廃液を導入することができる。該導入口には、廃液を生体等から導入口まで導出する部材、例えば生体に留置されるカテーテルに結合された開閉弁付きのチューブ等が接続される。
【0017】
また、前記排出口は、廃液貯留槽内の廃液を排出することができる。該排出口には、廃液貯留槽内に廃液が流入する際に、廃液貯留槽内の減圧状態を解除することのないように着脱可能な適宜の封止部材を装着すると良い。
【0018】
前記排気口は、廃液貯留槽内部の空気を排気することができ、逆止弁付きである。前記排気口は、逆止弁が取り付けられているので、廃液貯留槽における内部から外部への空気の流通は生じるが、外部から内部への空気の流通は生じることがない。該逆止弁としては、一方向に流体例えば気体の流れを規制できる種々の部材を採用することができる。逆止弁の具体例としては、例えば廃液貯留槽の排気口を封止するゴム膜の略中央部に複数の切れ目を設け、排気口から空気の流通が生じた場合に空気でゴム膜が一方向にのみ押し開かれる態様、又は、コイルスプリング等の付勢により排気口を封止するボール弁を設け、排気口からの空気の流通が生じた場合にボール弁が一方向にのみ付勢力に抗して押し開かれる態様等を挙げることができる。
【0019】
なお、この発明の廃液吸引装置が吸引及び貯留する廃液としては、特に限定されないが、医療現場で排出される液体又は医療現場に限らず、種々の実験及び作業等で生じた吸引すべき液体等を挙げることができる。詳しく言うと、医療現場において排出される廃液としては、例えば生体の手術後に創傷から溢出するリンパ液、腹膜透析を行う際に排出される透析液、及び血液等を挙げることができる。医療現場で排出される廃液以外にも、例えば化学実験及び生物実験等で排出される廃液を、この発明の廃液吸引装置により吸引することもできる。
【0020】
前記廃液貯留槽の好ましい態様を例示すると、大きさは100〜500mLの廃液を貯留することのできる程度が好ましい。前記廃液貯留槽を大型化して1L以上の廃液を貯留するような態様も可能ではあるが、例えばこの発明の廃液吸引装置を医療現場で用いる場合には、大量の廃液が貯留されるまで吸引し続けると、生体に不都合な菌類及び微生物等が繁殖する可能性が高まるので不衛生であり、好ましくないことがある。
【0021】
また、前記廃液貯留槽の材料としては、貯留する廃液により変性しない硬質の材料であれば良く、例えばプラスチック、金属又はセラミック等を用いることができる。前記廃液貯留槽の材料においては、透明又は半透明のプラスチックが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、アクリル樹脂等が特に好ましい。透明又は半透明のプラスチックを用いると、前記廃液貯留槽の大量生産性、加工性、廃液の量の視認性を向上させることができ、かつ装置軽量化を達成することもできる。前記廃液貯留槽が透明又は半透明である場合には、貯留している廃液の量を目視可能なように廃液貯留槽の外周面に液量を示す目盛りを付しても良い。
【0022】
前記廃液貯留槽の形状としては、廃液貯留槽内の空気を排気しても容易に変形せず、かつ操作者が携帯し易い形状が好ましく、例えば両端を封止した直方体、両端を封止した円筒体又は楕円筒体等を挙げることができる。この発明の廃液吸引装置を医療現場において用いる場合には、操作者の腰部に装着し易い形状として、底面の長軸方向が湾曲した楕円筒状を挙げることもできる。
【0023】
この発明の廃液吸引装置における弾力性袋は、前記廃液貯留槽内に収容される袋体である。また、この袋体は、袋体で形成される内部空間が外部に通じている。弾力性袋の内部空間には廃液が流入することがなく、弾力性袋の外面と前記廃液貯留槽の内面とで形成される領域(以下、「貯留領域」と称することがある。)に廃液が流入及び貯留されることとなる。該弾力性袋は、弾性力を有しているので、前記廃液貯留槽内で膨満及び収縮することができる。弾力性袋が前記廃液貯留槽内で膨満すると、弾力性袋の内部空間の容積が増加するので、貯留領域の容積が減少する。逆に、弾力性袋が廃液貯留槽内で収縮すると、弾力性袋の内部空間の容積が減少するので、貯留領域の容積が減少する。
【0024】
前記弾力性袋の好ましい態様を例示すると、大きさは、弾力性袋が膨満した場合に廃液貯留槽の内壁に弾力性袋の大部分が密着し、かつ前記排気口を閉鎖する程度が特に好ましい。弾力性袋が膨満した際に廃液貯留槽の内壁に弾力性袋の大部分が密着していると、貯留領域が大幅に減少することになる。貯留流域が大幅に減少すると、廃液貯留槽の内面において減圧の影響を受ける面積が減少する。弾力性袋と廃液貯留槽とが密着している箇所は、弾力性袋の内面から外面に向って押圧する大気圧の力と、廃液貯留槽の外面から内面に向って押圧する大気圧の力とが平衡状態を保持することができる。これに対して、弾力性袋が膨満しても弾力性袋と廃液貯留槽とが密着していない箇所は、弾力性袋の初期状態に戻ろうとする力により貯留領域が減圧状態となっているので、貯留領域を形成する廃液貯留槽に対して、大気圧による負荷が生じる。よって、弾力性袋を廃液貯留槽の内壁に密着させることで、減圧状態にある貯留領域が廃液貯留槽に及ぼす負荷を軽減することができる。更に、弾力性袋が膨満して排気口を閉鎖すると、廃液貯留槽内の空気を排気している途中で排気口から排気不能となるので、排気口を閉鎖するまで弾力性袋が膨満したことを操作者が使用感で判別することができるようになり、更なるこの発明の廃液吸引装置の操作性向上を図ることができる。
【0025】
また、弾力性袋の材料としては、膨満又は収縮可能な袋体を作製できる材料であれば良く、例えばラテックス及びポリウレタン等を用いることができる。
【0026】
前記弾力性袋の形状としては、弾力性袋が膨満した場合に前記廃液貯留槽の内面に密着し易い形状が好ましく、前記廃液貯留槽の形状に合わせて選択すると良い。
【0027】
この発明の廃液吸引装置における内容積可変部材は、通気孔を有している。
【0028】
前記通気孔は、内容積可変部材の内部に存在している空気を排気することができるように一方向弁を装着している。該一方向弁は、前記排気口に装着される逆止弁と同様の効果を奏する弁体であり、内容積可変部材における内部から外部への空気の流通は生じるが、外部から内部への空気の流通は生じることがない。一方向弁の具体例としては、上述した逆止弁の具体例と同様の部材を採用することができる。
【0029】
前記内容積可変部材は、内容積可変部材の内容積が増減することにより、廃液貯留槽から排気口を介して吸気し、通気孔を介して排気することができる。すなわち、内容積可変部材の内容積を増減させると、貯留領域の空気を吸引し、更に内容積可変部材の外部に抜いた空気を排気することができる。該内容積可変部材の実施態様としては、次に挙げる態様を採用すると好ましい。
【0030】
先ず、廃液貯留槽が底面に排気口を設けた円筒体であり、かつ内容積可変部材が廃液貯留槽の周側面を摺動可能な有底円筒体のシリンダであることによって、内容積可変部材を廃液貯留槽の周側面を摺動すると、内容積可変部材の内周面及び底面と廃液貯留槽の底面の外壁とで形成される領域の容積が増減し、貯留領域の空気の吸引及び内容積可変部材の外部への空気の排気を達成可能な態様を挙げることができる。
【0031】
続いて、廃液貯留槽の排気口と内部空間とが連通し、かつ両端が通気孔以外は閉塞した筒体であり、かつ周側面が蛇腹状の伸縮可能な部材を内容積可変部材として用いることによって、蛇腹状の周側面を内容積可変部材の軸方向に伸縮させると、内容積可変部材の底面及び蛇腹状の内周面と廃液貯留槽の底面の外壁とで形成される領域の容積が増減し、貯留領域の空気の吸引及び内容積可変部材の外部への空気の排気を達成可能な態様を挙げることができる。
【0032】
更に、安全ピペッタ様の部材であって、弾性力を有しかつ膨満した球体と、廃液貯留槽の排気口に取り付けかつ開閉弁付きの気体の流路とを有する部材を内容積可変部材用いることによって、膨満している球体を押し潰すようにして圧縮し、通気孔から内容積可変部材内の空気を追い出すようにして排気した後に、気体の流路の開閉弁を開放状態にすると球体が膨満しようとするので廃液貯留槽内の空気を排気口を介して球体内に吸引することとなり、球体の圧縮及び開閉弁の開放を繰り返すと、貯留領域の空気の吸引及び内容積可変部材の外部への空気の排気を達成可能な態様も挙げることができる。
【0033】
前記内容積可変部材の好ましい態様を例示すると、大きさは、操作者が操作しかつ把持し易い程度が好ましく、例えば成人女性及び成人男性が片手で把持できる程度の大きさであれば、医療現場等で医療従事者が支障なく操作することができる。
【0034】
また、前記内容積可変部材において、操作者が把持する箇所等の比較的硬質な材料を使用するべき箇所には、前記廃液貯留槽で用いた材料と同様の材料を用いると良い。比較的硬質な内容積可変部材の材料として、例えばプラスチック、金属又はセラミック等を用いることができる。比較的硬質な内容積可変部材の材料においては、透明又は半透明のプラスチックが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、アクリル樹脂等が特に好ましい。更に言うと、上述した安全ピペッタ様の部材を内容積可変部材として採用する場合は、弾性力を有するラテックス及びポリウレタン等の材料を用いることもできる。
【0035】
前記内容積可変部材の形状としては、特に限定はされないが操作者が操作し易い形状、例えば把持し易い形状等を採用すると好ましい。
【0036】
以下に、この発明の廃液吸引装置の使用方法及び作用を説明する。
【0037】
この発明の廃液吸引装置は、内容積可変部材の内容積を変化させず、弾力性袋が収縮状態であるとき、廃液を廃液貯留槽内に吸引しない。このとき、貯留領域の空気をこの発明の廃液吸引装置の外部に排気して、廃液貯留槽内に廃液を吸引する前段階の準備を行うことができる。この前段階の準備としては、例えば生体内に留置されたカテーテルに結合された開閉弁付きのチューブとこの発明の廃液吸引装置の導入口とを接続し、チューブの開閉弁は閉塞状態にしておき、排出口を閉鎖状態にすることが挙げられる。
【0038】
内容積可変部材の内容積を増加させると、通気孔に装着される一方向弁によりこの発明の廃液吸引装置の外部から内容積可変部材の内部に空気が流入することはないので、廃液貯留槽の排気口を介して、貯留領域に存在する空気が内容積可変部材の内部に吸気されることになる。更に、貯留領域内で空気が排気されることにより弾力性袋が膨満する。なお、排気口に装着される逆止弁により、内容積可変部材内に一旦吸気された空気は貯留領域に逆流することはない。
【0039】
内容積可変部材の内容積を減少させると、排気口の逆止弁により貯留領域内に空気が逆流することはないので、内容積可変部材の内部に存在する気体がこの発明の廃液吸引装置の外部に通気孔を介して排気される。
【0040】
弾力性袋が適度に膨満した状態となるまで内容積可変部材の内容積の増減を繰り返すことで、弾性力体の収縮状態に戻ろうとする力により貯留領域が減圧状態となるので、この発明の廃液吸引装置の貯留領域に廃液を導入することができるようになる。なお、貯留領域内に廃液を導入すると排気口に装着される逆止弁が廃液によって押圧されて開放し、内容積可変部材内に廃液が流入することが考えられる。内容積可変部材内への廃液の流入を防ぐ好適な態様として、貯留領域に廃液が導入し始める状態において、逆止弁を内容積可変部材側から貯留領域方向に押圧することにより、貯留領域側から内容積可変部材方向にも開放しないようにする態様が挙げられる。逆止弁を内容積可変部材側から押圧する態様としては、適宜の手段を用いることができる。その適宜の手段として、例えば排気口を通過する気体の流通とは逆方向に逆止弁又は排気口を閉塞する部材を設ける態様、及び内容積可変部材の内容積を最大まで増大させて固定することにより、排気口を通過する気体の流通とは逆方向に内容積可変部材内の空気が逆止弁を押圧する態様等を挙げることができる。
【0041】
次に、廃液を廃液貯留槽内に導入口を介して導入し始める。廃液は、弾力性袋が収縮した体積分だけ導入され、弾力性袋が初期状態に戻るまで貯留領域内に導入され続ける。
【0042】
廃液を導入し終わった後、廃液は排出口から排出される。
【0043】
この発明の廃液吸引装置を医療現場で使用する場合、この廃液吸引装置は、特に衛生面を考慮して、使い捨てにするのが良い。もっとも、廃液の導入及び排出の後に廃液貯留槽等の清浄化を行うことにより、この発明の廃液吸引装置を繰り返して使用可能なようにしても良い。
【0044】
以下に、図面を用いて、この発明の廃液吸引装置の実施態様を説明する。
【0045】
この発明の廃液吸引装置における内容積可変部材の態様としては、2種類挙げることができる。具体的には、この発明の廃液吸引装置が初期状態において、内容積可変部材の内容積が最小である態様と最大である態様とに分けられる。以下の説明では、図1及び2を用いて初期状態に内容積可変部材の内容積が最小である廃液吸引装置を説明し、図3及び4を用いて初期状態に内容積可変部材の内容積が最大である廃液吸引装置を説明する。
【0046】
図1には、この発明の一実施態様である廃液吸引装置1Aを示す。廃液吸引装置1Aは、廃液貯留槽2と、弾力性袋3と、内容積可変部材の一例であるシリンダー体4Aとを備えている。なお、図1における中心線より右側ではシリンダー体4Aの内容積が最小である状態を示し、中心線より左側では、シリンダー体4Aの内容積が最大である状態を示している。
【0047】
廃液貯留槽2は、有底円筒形状をなす蓋体5及び有底円筒形状をなす貯留部6を有しており、貯留部6の開口端部を覆蓋するように蓋体5が取り付けられている。蓋体5と貯留部6とは、蓋体5の下端周縁部に外側に張り出すようにして設けられるフランジ状の肩部7と貯留部6の上端周縁部が肉厚となった肩部装着部8とが一体的に固着されているので、両端が略閉塞された円筒形状を有する廃液貯留槽2を得ることができる。なお、肩部7及び肩部装着部8との固着方法としては、蓋体5と貯留部6とがこの発明の廃液吸引装置を通常に使用する状態において脱離しない方法であれば良く、例えば超音波溶着、熱溶着及び接着剤による接着等を挙げることができる。また、蓋体5と貯留部6とを別体的に設けることなく、予め導入口及び排出口等を備えたような両端を閉塞する円筒形状をなす筐体を廃液貯留槽として用いることもできる。
【0048】
蓋体5は、導入口9、頸部10、開口部11及び排出口12を有している。導入口9は、弾力性袋3の外面と廃液貯留槽の内面とで形成される領域、すなわち貯留領域13に廃液を導入することができ、吸引管(図示せず)を取り付ける吸引管取付部14を備えている。もっとも、吸引管取付部14は、生体等から吸引管を延在立設する必要がある場合に設ければ良く、特に必要のない場合は設けなくとも良い。頸部10は、その周側面でかつ開口部11近傍に鍔部15が設けられており、封蓋板16で封蓋されている。頸部10は、弾力性袋3及び封蓋板16を固定的に取り付けることができる。また、封蓋板16は、略中央に空気の流通可能な連通孔17と、封蓋板16の周囲において内側に張り出すように設けられる係止部18とを有している。弾力性袋3の端部には、縁辺部19が設けられている。図1に示される廃液吸引装置1Aでは、弾力性袋3を蓋体5に固定する方法として、弾力性袋3の縁辺部19を頸部10の鍔部15に載置した状態で、封蓋板16の内面を弾力性袋3及び縁辺部19に当接させつつ係止部18を鍔部15の下端面に係止させる方法を採用した。この方法では、封蓋板16の内壁面と鍔部15とで弾力性袋3を挟み込むようにして廃液貯留槽2に固定することができる。排出口12は、貯留領域13内に吸引及び貯留した廃液を排出することができ、貯留領域13の空気を抜く際に、空気が外部から流入することがないように栓体20を取り付けている。
【0049】
貯留部6の底面であるところの槽底部21には、略中央部に排気口22と弁体取付部23Aと逆止弁24と保持部材25Aとが設けられている。排気口22に取り付けられる逆止弁24は、排気口22を囲繞するように立設されかつ有底円筒状をなす弁体取付部23Aに嵌め込むようにして装着されている。更に、環状の保持部材25Aは、逆止弁24が空気に押圧されて弁体取付部23Aから脱離しないように逆止弁24の端縁を押さえ付けている。保持部材25Aは、弁体取付部23Aに嵌合状態であっても良いし、溶着状態又は接着状態であっても良い。
【0050】
弁体取付部23Aと貯留部6の周側面が突設されてなる外壁部26との間でかつ槽底部21の下端面には、廃液貯留槽2の軸線に平行な板体であるリブ27が立設している。リブ27は、貯留領域13が減圧状態となったときに廃液貯留槽2が変形及び破損することがないように補強材として作用する。
【0051】
シリンダー体4Aは、有底円筒形状を有しており、一実施態様として廃液貯留槽2の周側面を摺動することのできるシリンダが採用されている。
【0052】
シリンダー体4Aの底面であるところの底面部28には、略中央部に通気孔29と弁体取付部23Bと逆止弁24と保持部材25Bとが設けられている。通気孔29は、シリンダー体4Aの内部と外部とを連通可能に設けられた孔である。通気孔29に取り付けられる一方向弁30は、通気孔29を囲繞するように立設される弁体取付部23Bに嵌め込むようにして装着されている。更に、保持部材25Bは、一方向弁30が空気に押圧されて弁体取付部23Bから脱離しないように一方向弁30の端縁を押さえ付けている。保持部材25Bは、弁体取付部23Bに嵌合状態であっても良いし、溶着状態又は接着状態であっても良い。
【0053】
シリンダー体4Aは、底面部28の略中央部にシリンダー体4Aの内部に向って突設される凸状部31を有している。凸状部31は、図1の中心線より右側に示されるように、シリンダー体4Aが上死点に達したときに、凸状部31の上端面全面が逆止弁24の下端面全面に当接する。よって、図1に示される廃液貯留槽2内に廃液を導入した場合に、廃液がその重量で逆止弁24を上から下に向って押圧しても、凸状部31が逆止弁24を下から上に向って押し上げているので廃液がシリンダー体4A又は廃液吸引装置1Aの外部に漏出することがない。
【0054】
図1におけるシリンダー体4Aの上端でかつ内周面には、パッキン32が装着されている。パッキン32は、廃液貯留槽2の周側面に摺動することができると共に、シリンダー体4Aの内部に存在する空気が通気孔以外から漏出することがないように廃液貯留槽2の周側面に気密に密着している。パッキン32とシリンダー体4Aとは、一体成形、溶着又は接着等の適宜の方法で固着されている。
【0055】
また、廃液吸引装置1Aは、シリンダー体4Aが図1における中心線を軸に回動することを防ぐ回動防止部33を備えている。回動防止部33は、凸部34、溝部35、下端規制部36及び上端規制部37を有している。凸部34は、貯留部6の下端近傍でかつ周側面に突設され、直方体を貯留部6の周側面に貼り付けたような形状をなす。溝部35の下端及び上端には、下端規制部36及び上端規制部37が付設されており、凸部34の可動範囲を規制している。図1に示されるように、シリンダー体4Aが上死点に達している場合は凸部34が下端規制部36に当接し、シリンダー体4Aが下死点に達している場合は凸部34が上端規制部37に当接している。シリンダー体4Aを廃液貯留槽2に取り付ける方法は、パッキン32及び上端規制部37が凸部34を乗越えるように圧入される。
【0056】
回動防止部33は、シリンダー体4Aの回動を防止すると共に、シリンダー体4Aの摺動を案内する案内部材としても作用する。
【0057】
図2には、図1に示した廃液吸引装置1AをX−Y線で切断した断面図を示す。
【0058】
図2に示されるように、シリンダー体4Aの内周面に設けられる溝部35と、貯留部6の外周面に設けられる凸部34とが摺接している。貯留部6における底面部28の略中央部には、排気口22が4箇所設けられている。なお、この発明の廃液吸引装置において、排気口及び通気孔の数は、この発明の目的が達成できる限り任意である。図2において、破線で示すのは、底面部28の貯留領域(図示せず)ではない側に設けられる部材である。破線で示される部材として、排気口22の間を切込みが通過するように装着された逆止弁24、逆止弁24が嵌まり込むようにして装着される弁体取付部23A、弁体取付部23Aから半径方向に付設された6つのリブ27、及びリブ27の一端が当接しかつ弁体取付部23Aと同心を有している外壁部26が示されている。
【0059】
以下に、図1及び2に示す廃液吸引装置1Aの使用方法及び作用を説明する。
【0060】
先ず、貯留領域13内の空気を外部に排出する前段階の準備を行う。前段階の準備としては、例えば生体内に留置されたカテーテルから延在立設される開閉弁付きの吸引管(図示せず)を吸引管取付部14に取付ける。更に、準備としては、栓体20により排出口12を封止する。準備のときには、導入口9に取り付ける吸引管の開閉弁を閉鎖状態にしておき、貯留領域13内の空気の排出が完了してから開閉弁を開放状態にする。準備を行っただけでは、各部材の体積の増減が無いので、貯留領域13に空気の流通は生じない。
【0061】
次に、シリンダー体4Aの内容積を増加させる。すなわち、シリンダー体4Aの周側面を把持して図1における下方向に引き下げると、通気孔29に装着される一方向弁30により廃液吸引装置1Aが閉鎖されているので、廃液貯留槽2の排気口22を介して、貯留領域13に存在する空気がシリンダー体4Aの内部に吸気されることになる。このとき、貯留領域13内の減少した空気の体積分だけ連通孔17から空気が弾力性袋3の内部に流入することにより、弾力性袋3が膨満する。なお、排気口22に装着される逆止弁24により、シリンダー体4Aに一旦吸気された空気は貯留領域13に逆流することはない。
【0062】
効率的に貯留領域13内の空気を廃液吸引装置1Aの外部に排気するには、凸部34がシリンダー体4Aの内周面の上端規制部37に当接し、シリンダー体4Aが下死点に達するまでシリンダー体4Aを引き下げると良い。
【0063】
続いてシリンダー体4Aを上方向に引き上げ始める。
【0064】
シリンダー体4Aの内容積を減少させる。すなわちシリンダー体4Aの周側面を把持して図1における上方向にシリンダー体4Aを引き上げると、排気口22の逆止弁24により貯留領域13内に空気が逆流することはないので、通気孔29を介してシリンダー体4Aの内部に存在する気体が廃液吸引装置1Aの外部に排気される。
【0065】
効率的に貯留領域13内の空気を廃液吸引装置1Aの外部に排気するには、シリンダー体4Aの内容積の変化が大きい方が良いので、凸部34がシリンダー体4Aの内周面の下端規制部36に当接し、シリンダー体4Aが上死点に達するまでシリンダー体4Aを引き上げると良い。
【0066】
シリンダー体4Aの内容積を増減させる操作は、弾力性袋3が適当に膨満した状態となるまで繰り返すことにより、貯留領域13に廃液を導入することができるようになる。好ましくは、弾力性袋3が排気口22を閉塞するまで膨満させると、シリンダー体4Aの内容積を増加できなくなり、弾力性袋3が廃液貯留槽2の内壁に密着するまで膨満したということが操作者の使用感で感知できる。廃液吸引装置1Aは、シリンダー体4Aの増減だけで排気操作を行うことができるので、操作性が良い。更に、図1に示すような排気口等の配置を有する構造であると、弾力性袋の膨満状態を操作者の使用感で感知できるので、より一層の操作性の向上を図ることができる。
【0067】
次に、廃液を廃液貯留槽2内に導入口9を介して導入し始める。このとき、シリンダー体4Aは、凸部34が下端規制部36に当接する上死点まで引き上げておく。廃液は、弾力性袋3が収縮した体積分だけ導入されることとなる。なお、廃液吸引装置1Aでは、廃液を導入する際に凸状部31が逆止弁24を押圧しており、廃液がシリンダー体4A内及び廃液吸引装置1Aの外部に漏出しないので、衛生面が良好でありかつ安全性が高い。
【0068】
廃液の導入は、弾力性袋3が初期状態に戻るまで持続する。
【0069】
廃液を導入し終わった後、吸引管から導入口9を取外し、排出口12の栓体20を開放状態にした後、廃液を排出口12から排出する。
【0070】
次に、図3に示すこの発明の一実施多様である廃液吸引装置1Bについて説明する。
【0071】
図3に示す廃液吸引装置1Bにおいて、図1に示される廃液吸引装置1Aとの相違点は、内容積可変部材の一例である蛇腹体4Bを用いている点である。なお、蛇腹体4B以外の部材については、廃液吸引装置1Aの部材と同一であるので、図1に図示する番号と同一の番号を付すと共に、詳細な説明を省略する。
【0072】
蛇腹体4Bは、上面部38と蛇腹部39と下面部40とを有している。
【0073】
上面部38は、廃液貯留槽2の下端部を囲繞して固定される有底円筒体の底面である。上面部38を底面とする有底円筒体は、その内周面において、凸部34に嵌合可能な固定部41を有している。固定部41は、凸部34ががたつき無く嵌合する形状を有しており、蛇腹体4Bと廃液貯留槽2とを固定して接合することができる。なお、固定部41と凸部34とは、固定的に嵌合していても良く、また接着又は溶着等により固着されていても良い。上面部38の略中央部には、貯留領域13内の空気が蛇腹体4Bに流入可能なように空気流通口42が設けられている。
【0074】
蛇腹部39は、管状部材であり、周側面において山部43と谷部44とが交互に複数連なっている。蛇腹部39は、山部43と谷部44との水平距離が小さくなることにより、軸線方向に伸縮することができる。
【0075】
図3における下面部40は、蛇腹部39の下端を閉塞する部材であると共に、略中央部には図1のシリンダー体4Aの底面部と同様の部材を備えている。また、下面部40には、給気孔45及び給気栓46が設けられている。下面部40に設けられた孔である給気孔45と、給気孔45に気密に着脱可能に装着される給気栓46とは着脱可能であり、給気栓46が給気孔45から脱離状態であると蛇腹体4B内に外部から空気を供給することができる。
【0076】
以下に、図3に示す廃液吸引装置1Bの使用方法及び作用を説明する。
【0077】
先ず、貯留領域13内の空気を外部に排出する前段階の準備を行う。該準備については、上述した廃液吸引装置1Aと同様の操作を行えば良い。
【0078】
次に、蛇腹体4Bの内容積を減少させる。すなわち蛇腹体4Bの下面部40を図3における上方向に押し上げると、排気口22の逆止弁24により廃液吸引装置1Bが閉鎖されているので、通気孔29を介して蛇腹体4Bの内部に存在する気体が廃液吸引装置1Bの外部に排気される。
【0079】
続いて、蛇腹体4Bを下方向に引き下げ始める。なお、蛇腹部39が伸縮し易い材料である場合は、操作者が操作することなく初期状態に戻ろうとする。蛇腹体4Bの内容積を増加させると、通気孔29に装着される一方向弁30により廃液吸引装置1Bの外部から空気が流入することはないので、廃液貯留槽2の排気口22を介して、貯留領域13に存在する空気が蛇腹体4Bの内部に吸気されることになる。このとき、貯留領域13内の減少した空気の体積分だけ連通孔17から空気が流入することにより、弾力性袋3が膨満する。なお、排気口22に装着される逆止弁24により、蛇腹体4Bに一旦吸気された空気は貯留領域13に逆流することはない。
【0080】
効率的に貯留領域13内の空気を廃液吸引装置1Bの外部に排気するには、蛇腹体4Bの内容積の変化が大きい方が良いので、下面部40を上死点に達するまで押し上げると良い。
【0081】
蛇腹体4Bの内容積を増減させる操作は、弾力性袋3が適当に膨満した状態となるまで繰り返すことにより、貯留領域13に廃液を導入することができるようになる。好ましくは、弾力性袋3が排気口22を閉塞するまで膨満させると、蛇腹体4Bの内容積を増加できなくなり、弾力性袋3が廃液貯留槽2の内壁に密着するまで膨満したということが操作者の使用感で感知できる。廃液吸引装置1Bは、蛇腹体4Bの増減だけで排気操作を行うことができるので、操作性が良い。更に、図3に示すような排気口等の配置を有する構造であると、弾力性袋の膨満状態を操作者の使用感で感知できるので、より一層の操作性の向上を図ることができる。
【0082】
次に、廃液を廃液貯留槽2内に導入口9を介して導入し始める。このとき、蛇腹体4Bは、給気栓46を取外して外部の空気を蛇腹体4B内に供給することにより、初期状態である下死点まで戻しておく。蛇腹体4B内への空気の供給が完了すると、給気栓46を給気孔45に装着されて閉塞状態とする。廃液は、弾力性袋3が収縮した体積分だけ導入されることとなる。なお、廃液吸引装置1Bでは、蛇腹体4Bを上述のように下死点に戻しておくと、蛇腹体4B内が廃液が流入する余地が無い程度に空気で満たされており、蛇腹体4B内の空気で逆止弁24を押圧している状態となる。したがって、廃液を導入したとしても、廃液が蛇腹体4B内に廃液が流入することがなく、廃液吸引装置1Bの外部に漏出することがないので、衛生面が良好でありかつ安全性が高い。
【0083】
廃液の導入は、弾力性袋3が初期状態に戻るまで持続する。
【0084】
廃液を導入し終わった後、吸引管から導入口9を取外し、排出口12の栓体20を開放状態にした後、廃液を排出口12から排出する。
【0085】
次に、図4に示すこの発明の一実施多様である廃液吸引装置1Cについて説明する。
【0086】
図4のこの発明の一実施態様である廃液吸引装置1Cにおいて、図1の廃液吸引装置1Aとの相違点は、内容積可変部材の一例であるピペッタ4Cを用いている点である。なお、ピペッタ4C以外の部材については、廃液吸引装置1A又は廃液吸引装置1Bの部材と同一であるので、図1及び3に図示する番号と同一の番号を付すと共に、詳細な説明を省略する。
【0087】
ピペッタ4Cは、固定装着部47と弾性球48とを有している。
【0088】
固定装着部47は、廃液吸引装置1Bにおける上面部38を有する有底円筒体と略同様の部材であり、廃液貯留槽2の下端部を囲繞して固定される有底円筒形状を有する部材である。固定装着部47と、廃液吸引装置1Bにおける上面部38を有する有底円筒体との相違点は、略中央部に軸方向に立設される筒状の取付口49を有していることである。
【0089】
弾性球48は、ゴム等の弾性力を有する材料を用いて得られる部材であり、全体として弾性力を有している。図4における弾性球48の上端部には、嵌着部50が設けられ、該嵌着部50が取付口49に気密に嵌着している。もっとも、嵌着部50は、取付口49に嵌着した後に、接着又は溶着されていても良い。前記弾性球48は、嵌着部50以外に、ボール弁51、拡縮部52、可撓性弁53、膨大部54A及び54B、封止部55並びに貫通孔56も有している。廃液吸引装置1Cの初期状態においては、球体のボール弁51は、ボール弁51の形状に合わせて膨大している膨大部54Aに気密に収容される。また、廃液吸引装置1Cの初期状態においては、可撓性弁53は、球状に膨大している膨大部54Bの内部上端であって、弾性球48の内外を隔絶する封止部55に設けられた貫通孔56を閉鎖するように、膨大部54Bに収容される。よって、廃液吸引装置1Cの初期状態では、弾性球48の内外に流体の流通を生じさせない。膨大部54Aを操作者が挟持することにより、膨大部54Aとボール弁51との間に間隙が生じて流体が流通できるようになる。拡縮部52は、内容積が増減可能な部位であり、略球体である。なお図示されないが、可撓性弁53は、図4における右端部分が膨大部54B内部に接着され、封止部55の貫通孔56を閉鎖している左端部分が下方に押開可能なように、膨大部54Bに取り付けられている。
【0090】
以下に、図4に示す廃液吸引装置1Cの使用方法及び作用を説明する。
【0091】
先ず、貯留領域13内の空気を外部に排出する前段階の準備を行う。該準備については、上述した廃液吸引装置1Aと同様の操作を行えば良い。
【0092】
次に、ピペッタ4Cの内容積を減少させる。すなわち拡縮部52を押し潰すようにして弾性球48を圧縮すると、逆止弁24及びボール弁51により貯留領域13は閉鎖されているので、拡縮部52内の空気が貫通孔56を介して可撓性弁53を押開し、更に通気孔29を通過してピペッタ4Cの内部に存在する気体が廃液吸引装置1Cの外部に排気される。
【0093】
続いて、ピペッタ4Cの内容積を増加させ始める。拡縮部52の圧縮を解除して膨大部54Aを挟持すると、可撓性弁53が貫通孔56を閉鎖し、更に拡縮部52が初期状態に戻ろうとしてその内容積を増加させようとする。しかしながら、可撓性弁53により弾性球48は閉鎖されているので、廃液貯留槽2の排気口22を介して、貯留領域13に存在する空気がピペッタ4Cの拡縮部52に吸気されることになる。このとき、貯留領域13内の減少した空気の体積分だけ連通孔17から空気が流入することにより、弾力性袋3が膨満する。なお、排気口22に装着される逆止弁24により、ピペッタ4Cに一旦吸気された空気は貯留領域13に逆流することはない。
【0094】
効率的に貯留領域13内の空気を廃液吸引装置1Cの外部に排気するには、ピペッタ4Cの内容積の変化が大きい方が良いので、拡縮部52を押し潰すように空気を追い出す際にできる限り拡縮部52内の空気を追い出すと良い。
【0095】
ピペッタ4Cの内容積を増減させる操作は、弾力性袋3が適当に膨満した状態となるまで繰り返すことにより、貯留領域13に廃液を導入することができるようになる。好ましくは、弾力性袋3が排気口22を閉塞するまで膨満させると、ピペッタ4Cの内容積を増加できなくなり、弾力性袋3が廃液貯留槽2の内壁に密着するまで膨満したということが操作者の使用感で感知できる。廃液吸引装置1Cは、ピペッタ4Cの増減だけで排気操作を行うことができるので、操作性が良い。更に、図4に示すような排気口等の配置を有する構造であると、弾力性袋の膨満状態を操作者の使用感で感知できるので、より一層の操作性の向上を図ることができる。
【0096】
次に、廃液を廃液貯留槽2内に導入口9を介して導入し始める。このとき、ピペッタ4Cは、膨大部54Aの挟持を解除しておく。廃液は、弾力性袋3が収縮した体積分だけ貯留領域13に導入されることとなる。なお、廃液吸引装置1Cでは、逆止弁24が貯留領域13内に貯留される廃液の重量で押開されたとしても、ボール弁51によって拡縮部52内への廃液の流入を防ぐことができ、廃液吸引装置1Cの外部に廃液が漏出しないので、衛生面が良好でありかつ安全性が高い。この発明の廃液吸引装置は、廃液吸引装置1Cのボール弁51のように、廃液貯留槽2の逆止弁24を直接的に閉鎖しなくとも、結果的に廃液吸引装置1Cの外部に廃液を漏出させないような構成も採用することができる。
【0097】
廃液の導入は、弾力性袋3が初期状態に戻るまで持続する。
【0098】
廃液を導入し終わった後、吸引管から導入口9を取外し、排出口12の栓体20を開放状態にした後、廃液を排出口12から排出する。
【0099】
この発明の廃液吸引装置は、内容積可変部材の内容積を増減させるだけで、廃液貯留槽内の空気を吸気し、更に外部に排出することができるので、廃液を導入するまでの操作が簡便であり、操作性が良好である。
【0100】
なお、この発明の廃液吸引貯留装置は、発明の目的を達成することのできる限り、種々の設計変更を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、この発明の廃液吸引装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示される廃液吸引装置をX−Y線で切断した断面図である。
【図3】図3は、この発明の廃液吸引装置の別の実施例を示す断面図である。
【図4】図4は、この発明の廃液吸引装置の別の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1A、1B、1C 廃液吸引装置
2 廃液貯留槽
3 弾力性袋
4A シリンダー体
4B 蛇腹体
4C ピペッタ
5 蓋体
6 貯留部
7 肩部
8 肩部装着部
9 導入口
10 頸部
11 開口部
12 排出口
13 貯留領域
14 吸引管取付部
15 鍔部
16 封蓋板
17 連通孔
18 係止部
19 縁辺部
20 栓体
21 槽底部
22 排気口
23A、23B 弁体取付部
24 逆止弁
25A、25B 保持部材
26 外壁部
27 リブ
28 底面部
29 通気孔
30 一方向弁
31 凸状部
32 パッキン
33 回動防止部
34 凸部
35 溝部
36 下端規制部
37 上端規制部
38 上面部
39 蛇腹部
40 下面部
41 固定部
42 空気流通口
43 山部
44 谷部
45 給気孔
46 給気栓
47 固定装着部
48 弾性球
49 取付口
50 嵌着部
51 ボール弁
52 拡縮部
53 可撓性弁
54A、54B 膨大部
55 封止部
56 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液を導入する導入口、廃液を排出する排出口及び内部の空気を排気可能な逆止弁付の排気口を有する廃液貯留槽と、
前記廃液貯留槽内に収容される袋体であり、該袋体の外面及び前記廃液貯留槽の内面で形成される領域に廃液が貯留され、かつ外気と通じている弾力性袋と、
内部の空気を排気可能な一方向弁付の通気孔を有し、内容積の増減によって、前記廃液貯留槽から前記排気口を介して吸気し、前記通気孔を介して排気可能であり、前記廃液貯留槽に廃液を貯留するときは前記逆止弁を閉鎖状態にする内容積可変部材とを備えることを特徴とする廃液吸引装置。
【請求項2】
前記廃液貯留槽が円筒形状を有し、
前記内容積可変部材が有底円筒形状を有するシリンダであり、かつ前記廃液貯留槽が挿入されて前記廃液貯留槽の周側面を摺動可能に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の廃液吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−112453(P2009−112453A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287439(P2007−287439)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(503251385)有限会社上田機械設計事務所 (1)
【Fターム(参考)】