説明

廃蛍光ランプのリサイクル方法及び装置

【課題】蛍光体等のガラスに付着したものを迅速かつ高収率に回収するとともに、ガラスの表面の洗浄を促進させることを目的として、水中で超音波照射したのち水簸により、ガラスと蛍光体の円滑な分離方法を実現する。
【解決手段】蛍光体6又は水銀が付着した廃蛍光ランプの破砕産物である破砕ガラス片5に対し、水中で超音波を照射の後、水の上昇流による水簸機構7により、ガラス表面の蛍光体6又は水銀の剥離を促進し、ガラス表面の洗浄をしつつ、蛍光体6又は水銀の剥離物を水流により水中を浮上させ、ガラスと分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃蛍光ランプのリサイクル方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、廃蛍光ランプのリサイクル対象は直管形や環形である。これらの蛍光ランプは形状が統一されているため、コンベア上に並べられ、両端(直管)あるいは円周の一部(丸管)の口金部分を自動的に切断することでガラス部を回収してきた。
【0003】
ガラスはソーダ石灰ガラスであるが、口金付近だけは鉛ガラスを使用しており、鉛ガラスは口金部と共に回収される。切断後は筒状のガラス開口部より強く空気を吹き込み、ガラス内壁に付着した蛍光体並びに水銀を空気と共に回収する。
【0004】
丸管の場合、製造時加熱して管状に整形するため直管に比べ蛍光体のガラスへの固着力が強く、空気と共にショット剤を吹き込むこともある。
【0005】
また、破砕されたガラス片からの蛍光体および水銀の回収方法についても、従来、いくつか提案されている。例えば、乾式処理では、ボールミル等によりガラス表面に付着した蛍光体等を剥離して篩い分けをする方法(特許文献1参照)、気体と固体粒子のプラグ流よりなるブラスト流により蛍光体等を剥離する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
さらに、破砕ガラスを研磨タンク内で振動させながら蛍光体等を剥離する方法(特許文献3参照)、回転密閉容器内において、ブラシにより(特許文献4参照)、あるいは隔壁と掻き上げ板により蛍光体等を剥離する方法(特許文献5)等が提案されているが、剥離が不完全である。
【0007】
また、湿式法においては、酸などの薬液によりガラスを洗浄して水銀等を回収する方法(特許文献6、特許文献7参照など)がある。
【0008】
一方、近年、急増しているコンパクト形や電球形蛍光ランプは、形状の種類が極めて多く自動処理ができないため、口金切断機への装着を1つずつ手で行っているのが現状である。また、切断後の開口部が1カ所のため、エアブローによる蛍光体・水銀の回収もできない。
【0009】
本発明者らは、先願において特願2007−243562(廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置)において、ガラス部を選択破砕し、口金部と分離する技術を提案している。この方法でガラス部が選択的に破砕されても、現在提案されている乾式法による破壊ガラスからの蛍光体回収では、蛍光体の回収率が不完全となる。
【0010】
一方、湿式法では高い蛍光体の回収率を達成し得るが、薬液を使用したり、温度を調整したりなどが必要となる。
【0011】
【特許文献1】特開平11−300322号公報
【特許文献2】特開2002−100293号公報
【特許文献3】特開2005−230660号公報
【特許文献4】特開2001−286828号公報
【特許文献5】特開2006−102653号公報
【特許文献6】特開2003−45336号公報
【特許文献7】特開2004−352900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のとおり、破砕ガラスから水銀や蛍光体を回収する方法はいくつかの方法が提案されている。しかし、従来の方法では、それぞれ一長一短があり、目的に応じた組み合わせが必要である。
【0013】
本発明では、蛍光体等のガラス付着成分を迅速かつ高収率に回収するとともに、ガラスの表面の洗浄を促進させることを目的として、水中で超音波照射したのち水簸により、ガラスと蛍光体の円滑な分離方法を実現することを課題とする。即ち、本発明では、湿式法において、常温で水だけを使い、ガラスへの再付着を防止しつつ迅速な分離を達成する方法を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するために、蛍光体又は水銀が付着した廃蛍光ランプの破砕産物である破砕ガラス片に対し、水中で超音波を照射の後、水の上昇流による水簸機構により、ガラス表面の蛍光体や水銀の剥離を促進し、ガラス表面の洗浄をしつつ、蛍光体や水銀の剥離物を水流により水中を浮上させ、ガラスとの分離を達成することを特徴とする蛍光体又は水銀の分離回収方法を提供する。
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、蛍光体又は水銀が付着した廃蛍光ランプの破砕産物である破砕ガラス片に対し、水中で超音波を照射の後、水の上昇流による水簸機構により、ガラス表面の蛍光体又は水銀の剥離を促進し、ガラス表面の洗浄をしつつ、蛍光体又は水銀の剥離物を水流により水中を浮上させ、ガラスとの分離を達成することを特徴とする蛍光体又は水銀の分離回収装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による効果は、次のとおりである。破壊ガラスからの蛍光体・水銀の回収方法については、廃水処理が不要であることから簡便性という点では乾式法が有利であるが、粉体の制御のしやすさ蛍光体等の回収の精度では湿式法が有利である。
【0017】
本発明では湿式法において、水で満たされたカラム内で超音波を照射するとともに、下方から水の上昇流を付与する水簸機能(ガラス片の大きさに応じ、例えば流速0.08〜0.24m/s)を付加することにより、超音波によるガラス−蛍光体等剥離後、水簸(すいひ)の水流により剥離の促進、蛍光体のガラスへ再付着を防止、ガラスの洗浄効果を実現するものである。
【0018】
単に超音波を照射する方法は既に提案されている(特願2006-205138参照)が、水簸機能追加による相乗効果により、蛍光体剥離促進、蛍光体再付着防止、ガラス洗浄が短時間に達成され、ガラスからの蛍光粉等の剥離はもとより、ガラスと蛍光粉等の分離、ガラスの洗浄を、連続的かつ5〜15分の洗浄層滞留時間で達成することが可能であり、装置のコンパクト化などが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る廃蛍光ランプの蛍光体又は水銀の分離回収方法及び装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0020】
(実施例)
本発明の蛍光体又は水銀の分離回収装置1は、図1に示すように、入口から出口に向かって下方に傾斜する傾斜管路2と、傾斜管路2の途中である分岐部3から上方に連通起立した垂直管路4とを備え、その全体形状は、略逆T字型をしている。
【0021】
分岐部3及び垂直管路4は、後記する上昇水流で、廃蛍光ランプの破砕物である破砕ガラス片5(図1中の「蛍光付着ガラス」)を水中内であおり上げて、破砕ガラス片5から蛍光体6(図1中の「蛍光粉」)や水銀を剥離する水簸機構7を構成する。垂直管路4の上端部には、水が流れ出る溢流孔8が形成されている。
【0022】
傾斜管路2の入口9側である上流部の下面には、超音波発振子10が設けられており、上流部内は、洗浄槽として機能する。入口9側上流部の下流側に隣接し、傾斜管路2内の底部であって、垂直管路4の直下の分岐部3の位置に、水供給管11が配設されている。
【0023】
以上の構成から成る分離回収装置1を利用して、廃蛍光ランプの破砕物に付着した蛍光体6又は水銀を分離回収する方法は次のとおりである。
【0024】
水供給管11から水を分離回収装置1内に供給を開始すると、傾斜管路2内に水が充満するとともに、垂直管路4内では、上昇水流を形成が形成される。そして、超音波発振子10の動作を開始すると、入口9側上流部内の水中内で超音波振動が生じる。
【0025】
今、廃蛍光ランプを破砕機で破砕して得られる破砕産物を傾斜管路2の入口9から供給する。この実施例では、破砕産物として、未だ蛍光体6(水銀でもよいが、ここでは蛍光体6が付着した場合で説明する。)等が付着した廃蛍光ランプの破砕された破砕ガラス片5を、傾斜管路2の入口9から供給する。
【0026】
すると、破砕ガラス片5は、入口9側上流部内で超音波振動が付与され(水という媒体を介して超音波振動が付与され)、水による洗浄作用に加え、破砕ガラス片5に作用する超音波振動によって、破砕ガラス片5を洗浄するとともに、蛍光体6は破砕ガラス片5表面から剥離し、蛍光体6の分離を行う。
【0027】
このようにして蛍光体6が分離された破砕ガラス片5及び分離された蛍光体6は、分岐部3に送られる。この分岐部3において、水簸機構7による水供給管11から供給される上昇水流の作用を受け、さらに、破砕ガラス片5表面から蛍光体6の剥離はより促進される。そして、破砕ガラス片5の多くは、分岐部3から傾斜管路2の下流に流れ、その出口12から排出される。
【0028】
しかし、細かい破砕ガラス片5及び分離された蛍光体6は、水簸機構7において、水供給管11から供給される上昇水流の作用を受けあおり上げられ浮上する。この過程でも、細かい破砕ガラス片5表面から蛍光体6の剥離がより促進される。
【0029】
そして、分離された蛍光体6は、水簸機構7において、上昇水流によって垂直管路4内をさらに浮上し、溢流孔8から溢流とともに排出される。垂直管路4内で蛍光体6が分離された細かい破砕ガラス片5は、その重量により垂直管路4内を沈下し、傾斜管路2の下流に流れ、その出口12から排出される。
【0030】
このようにして、廃蛍光ランプの破砕ガラス片5に付着した蛍光体6を、効果的に分離して取り出すことができる。そして、分離して得られた蛍光体6及び洗浄ガラス片13は、それぞれリサイクル使用に供することができる。
【0031】
なお、本発明で処理する破砕ガラス片5を得るための廃蛍光ランプの破砕機としては、特願2007−243562(廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置)で本発明者らがすでに提案している廃蛍光ランプの破砕機を使用してもよい。
【0032】
以上、本発明に係る廃蛍光ランプのリサイクル方法及び装置の最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、以上のような構成であるから、蛍光体や水銀等が付着した廃蛍光ランプ等のガラスのリサイクル技術分野におけるリサイクルプラントに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る廃蛍光ランプのリサイクル方法及び装置の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0035】
1 分離回収装置
2 傾斜管路
3 分岐部
4 垂直管路
5 破砕ガラス片(蛍光付着ガラス)
6 蛍光体(蛍光粉)
7 水簸機構
8 溢流孔
9 傾斜管路の入口
10 超音波発振子
11 水供給管
12 傾斜管路の出口
13 洗浄ガラス片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体又は水銀が付着した廃蛍光ランプの破砕産物である破砕ガラス片に対し、水中で超音波を照射の後、水の上昇流による水簸機構により、ガラス表面の蛍光体や水銀の剥離を促進し、ガラス表面の洗浄をしつつ、蛍光体や水銀の剥離物を水流により水中を浮上させ、ガラスとの分離を達成することを特徴とする蛍光体又は水銀の分離回収方法。
【請求項2】
蛍光体又は水銀が付着した廃蛍光ランプの破砕産物である破砕ガラス片に対し、水中で超音波を照射の後、水の上昇流による水簸機構により、ガラス表面の蛍光体又は水銀の剥離を促進し、ガラス表面の洗浄をしつつ、蛍光体又は水銀の剥離物を水流により水中を浮上させ、ガラスとの分離を達成することを特徴とする蛍光体又は水銀の分離回収装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−101288(P2009−101288A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274911(P2007−274911)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】