説明

建入れ治具

【課題】 所定の建入れ調整を可能にし得るのはもちろんのこと、可能な限りの重量の軽減化と耐久性の向上を可能にする。
【解決手段】 既設となる下方柱体P1の上端部に設けた下方エレクションピースE1と新たとなる上方柱体P2の下端部に設けた上方エレクションピースE2を臨在させるフレームFが下端部3に螺装の固定ボルト7における螺合操作で下方エレクションピースE1に対してこのフレームFの軸線方向となる上下方向に移動可能とされ、上記のフレームFの上端部に設けられる流体圧ジャッキJが下端を上方エレクションピースE2の上端に当接させるロッド体22を有すると共に、このロッド体22が伸長作動時に突出して上方エレクションピースE2を下方エレクションピースE1に向けて下降させて、下方柱体P1に対する上方柱体P2の下降を可能にしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建入れ治具に関し、特に、重量物たる鉄骨製の柱体を利用して構築物を構築する際に、建込まれる柱体における垂直度の調整を可能にする建入れ治具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、構築物を構築する際には、立設される、すなわち、建込まれる柱体における垂直度が調整されるが、その柱体が重量物たる鉄骨製とされる場合には、専用の治具たる建入れ治具が利用される。
【0003】
そして、この種の建入れ治具として、これまでに種々の提案があるが、その中で、特許文献1に開示の提案にあっては、機械力たる油圧ジャッキの作用力を利用する。
【0004】
すなわち、この特許文献1に開示の建入れ治具は、上下となる柱体にあらかじめ連設されるブラケットたるエレクションピースに連結され、このエレクションピースを通じて、たとえば、横断面が四方形となる上方柱体におけるいわゆる四方を独立に高低させて柱体における垂直度を調整する。
【0005】
ちなみに、油圧ジャッキは、作業員によるポンピング操作で伸縮する構成とされ、ポンピング用のハンドルを有すると共に、油圧ジャッキの伸縮方向を選択する切換バルブを有するなどのいわゆる油圧機構を有する。
【0006】
それゆえ、この特許文献1に開示の建入れ治具にあっては、たとえば、既設となる鉄骨製の下方柱体に対してクレーンの利用などで上方から吊り下げられて連結される上方柱体における垂直度を油圧ジャッキの作動で調整し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002‐227419号公報(特許請求の範囲,明細書中の段落0011から同0025,図1,図2,図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、油圧ジャッキの作動で上方柱体における垂直度を調整し得る点で、基本的に、問題がある訳ではないが、その利用の実際を鑑みると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0009】
すなわち、上記した提案にあっては、流体圧ジャッキは、流体油機構を有し、しかも、この流体圧機構が梃子原理に基づく外付けのハンドルを有する他、タンク,ポンプ,圧力室制御弁および背圧室制御弁を有してなるから、建入れ治具を全体構成として看ると構造が複雑になる。
【0010】
その結果、先ずは、部品点数を多くして、建入れ治具における重量の増大化や製品コストの高騰化を回避できなくする不具合がある。
【0011】
つぎに、この種の建入れ治具は、仮設資材であり、この種の建築構築の業種にあってはその取り扱いが乱雑にされ易くなることを鑑みると、この建入れ治具に梃子状に設けられるハンドルや、内部に組み込まれるバルブ類の外部に露出する制御部分についての耐久性を保障し難くなる不利がある。
【0012】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所定の建入れ調整を可能にし得るのはもちろんのこと、可能な限りの重量の軽減化と耐久性の向上を可能にして、その汎用性の向上を期待するのに最適となる建入れ治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、この発明による建入れ治具の構成を、基本的には、既設となる下方柱体の上端部に設けた下方エレクションピースおよび上記の下方柱体に上方から連結される上方柱体の下端部に設けた上方エレクションピースを臨在させるフレームと、このフレームの上端部に設けられて人力操作による伸長作動時に上方エレクションピースを下方エレクションピースに向けて押し下げる流体圧ジャッキとを有してなる建入れ治具において、フレームが下端部に螺装の固定ボルトにおける螺合操作で下方エレクションピースに対してこのフレームの軸線方向となる上下方向に移動可能とされ、流体圧ジャッキが下端を上方エレクションピースの上端に当接させるロッド体を有すると共に、このロッド体が伸長作動時に突出して上方エレクションピースを下方エレクションピースに向けて下降させて、下方柱体に対する上方柱体の下降を可能にしてなるとする。
【発明の効果】
【0014】
それゆえ、この発明にあっては、流体圧ジャッキの伸長作動で上方エレクションピースを下方エレクションピースに向けて下降させることが可能になり、したがって、上方柱体における垂直度を調整し得る。
【0015】
つまり、この発明にあっては、上方柱体を下方柱体に向けて下降させることで上方柱体における垂直度を調整するから、上方柱体を上昇させるようにして上方柱体における垂直度を調整する場合に比較して、上方柱体の重量を作用力に置き換えられることもあって、上方柱体に作用する作用力を小さくでき、したがって、その分、部品構成をいたずらに頑強にしなくて済み、製品重量の削減と製品コストの削減を可能にする。
【0016】
そして、流体圧ジャッキが人力操作で伸長作動するから、切換バルブ類を有する場合に比較して、その構成を簡素化でき、構造を複雑にすることによる重量のいたずらな増大化や製品コストの高騰化を回避できる。
【0017】
そしてまた、人力操作で伸長作動する流体圧ジャッキが人力操作で回動する操作ボルトを有すると共にこの操作ボルトの回動でロッド体を突出させて伸長作動する設定とされる場合には、流体圧ジャッキを伸長作動させるための梃子式のハンドルを有する場合に比較して、流体圧ジャッキにおける耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態による建入れ治具の利用状態を示し、(A)は、側面図であり、(B)は、正面図である。
【図2】図1(A)に示す建入れ治具を一部側面図にして示す拡大縦断面図である。
【図3】図1(B)に示す建入れ治具を正面視で示す拡大断面図である。
【図4】流体圧ジャッキの他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図示するところでは、図1(A)に示すように、この発明による建入れ治具は、構築物を構成する鉄骨製の上方柱体P2を既設となる同じく鉄骨製の下方柱体P1に上方から連結するのに際して、この上方柱体P2における垂直度を調整するために利用される。
【0020】
このとき、下方柱体P1にあっては、上端部に鋼板からなるブラケットたる下方エレクションピースE1が工場などであらかじめ溶接(図中に溶接部として符号Mで示す)されており、上方柱体P2にあっても、下端部に鋼板からなるブラケットたる上方エレクションピースE2が同じく工場などであらかじめ溶接される。
【0021】
そして、この下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2は、上方柱体P1および下方柱体P2における外部に対向する各立面に溶接されながら水平方向に適宜の長さに、すなわち、この発明による建入れ治具の連結を許容する長さを有するように突出する(図1(A)参照)。
【0022】
このとき、この発明による建入れ治具を利用する場合には、詳しくは後述するが、仮止め用の補助板やボルトナットの併用を要しないから、仮止め用の補助板やボルトナットを併用する場合に比較して、下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2をいわゆる大きく形成させない。
【0023】
また、この下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2は、それぞれの軸線方向を下方柱体P1および上方柱体P2の軸線方向に沿う上下方向にしながら、特に、図1(A)中で左側部となる先端側部が建入れ治具を構成する後述するフレームFにおける内側空部A(図1(B)参照)、すなわち、筒状部からなる本体部1の言わば内側部となる内側空部Aへの臨在が許容される軸方向長さを有するように形成される。
【0024】
そして、この建入れ治具にあっては、フレームFの上端部に連設されて人力操作による伸長作動時にロッド体22(図3参照)の下端を上方エレクションピースE2の上端に向けて突出する流体圧ジャッキJを有してなる。
【0025】
つまり、この発明による建入れ治具は、上方柱体P2における垂直度を調整するのに際して、上方柱体P2を下降させて垂直度を調整し得るようにしたところに特徴がある。
【0026】
以下に、説明すると、図2および図3に示すように、フレームFは、上下方向に延在される本体部1が筒状体からなり、特に、図示するところでは、円筒状体からなり(図1参照)、本体部1が角筒状体からなる場合に比較していわゆる当りを柔らかくし、取り扱う作業者に不快な感覚を抱かせないように配慮するが、本体部1が円筒状体からなるか、角筒状体からなるかは、この発明の成立に必要な条件ではないこともちろんである。
【0027】
また、このフレームFにあって、本体部1は、上端部2と下端部3とを有し、上端部2が後述する流体圧ジャッキJを連設させると共に下端部3が本体部1の下端開口を閉塞することで、内側に内側空部Aを画成する。
【0028】
このとき、このフレームFにあって、上端部2は、その軸芯部に流体圧ジャッキJを連設させ、したがって、この流体圧ジャッキJの下端、すなわち、流体圧ジャッキJを形成する後述のロッド体22の下端を上記の内側空部Aに露呈させる。
【0029】
そして、この内側空部Aは、図1(A)中で左端面となる正面(図1(B)にあっては、フレームFの正面)に露呈する縦長の開口(符示せず)を介して外部に連通すると共に、同じく図1(A)中で右端面となる背面に露呈する縦長の開口(符示せず)を介して外部に連通する。
【0030】
そしてまた、このフレームFにあっては、内側空部Aに下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2、さらには、後述する支持ブロック4および楔5を上記の開口を介して挿通、すなわち、案内させる。
【0031】
ところで、この建入れ治具にあっては、これを下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2に連結するのに際して、先ずは、下方エレクションピースE1にこの建入れ治具、すなわち、フレームFを連結する。
【0032】
このとき、図示する実施形態では、フレームFは、連結ピンたるトグルピン6(図3参照)の利用下に下方エレクションピースE1に連結されるが、これは、フレームFの下方エレクションピースE1への連結状態を保障するためである。
【0033】
その一方で、フレームFをトグルピン6の利用下に下方エレクションピースE1に連結する場合には、爾後に、このトグルピン6を回転中心にするようにしてフレームFを起き上がらせる(図1(A)中の仮想線図参照)ことで、内側空部Aに上方エレクションピースE2を簡単に挿通、すなわち、案内させられる。
【0034】
以上からすると、特に、フレームFを下方エレクションピースE1に連結するためのみからは、下方エレクションピースE1に対する挿通孔Ehの開穿を省略すると共にトグルピン6を不要にするとも言い得るが、フレームFの下方エレクションピースE1への連結状態を保障するために、つまり、フレームFが下方エレクションピースE1から脱落する不具合の発生を阻止する上からは、上記の挿通孔Ehの形成とトグルピン6の利用が好ましい。
【0035】
以上からして、下方エレクションピースE1に挿通孔Ehが形成されるが、この挿通孔Ehは、上記のトグルピン6を挿通させるのにあって、このトグルピン6の下方エレクションピースE1に対する上下方向の動きとなる昇降を妨げないように上下方向に延びる縦長孔からなる。
【0036】
なお、フレームFにおいて、図3中で左右部となる両側面部(符示せず)に開穿されて上記のトグルピン6を挿通させる孔(符示せず)は、このトグルピン6の軸部61をいたずらなガタなくして挿通させる丸孔からなる。
【0037】
そして、このトグルピン6にあっては、軸部61の図3中で左端部となる先端部(符示せず)に抜け止め部62(図3参照)を有し、この抜け止め部62が回転作動することで、このトグルピン6のフレームFに開穿の孔からの抜け出しを阻止する。
【0038】
一方、フレームFにおける下端部には、下方エレクションピースE1に対してフレームFの上昇を阻止する手段を構成する固定ボルト7が螺装されており、この固定ボルト7の図中で上端となる先端は、その作動前、つまりこのフレームFを下方エレクションピースE1に連結する際には下方エレクションピースE1の下端に対向するが、フレームFが所定のセット状態にされてからこの固定ボルト7が螺入操作されると、図示するように、下方エレクションピースE1の下端に当接される。
【0039】
つまり、フレームFを所定のセット状態にするのに際しては、フレームFが下方エレクションピースE1に連結されると共に上方エレクションピースE2を内側空部Aに挿通させる状態になり、このとき、フレームFの上端部2にある流体圧ジャッキJの下端が上方エレクションピースE2の上端に対向しあるいは当接される状態になりながら上方エレクションピースE2の上端に吊持される態勢におかれる。
【0040】
そして、この態勢下に、フレームFの下端部3に螺装されている固定ボルト7を螺入操作すると、この固定ボルト7の先端が上記したように下方エレクションピースE1の下端に当接される。
【0041】
そしてまた、この態勢から、すなわち、フレームFが下方エレクションピースE1に連結されて、特に、下方エレクションピースE1に対してフレームFの上昇が阻止されている態勢から、フレームFの上端部2に連設される流体圧ジャッキJが伸長作動すると、フレームFに対して上方エレクションピースE2が下降する状態になり、当初に述べたように、下方エレクションピースE1に対して上方エレクションピースE2を下降させることが可能になる。
【0042】
つまり、この発明の建入れ治具にあっては、上方柱体P2を下方柱体P1に向けて下降させることで上方柱体P2における垂直度を調整するから、上方柱体P2を上昇させるようにして上方柱体P2における垂直度を調整する場合に比較して、上方柱体P2の重量を作用力に置き換えられることもあって、上方柱体P2に作用する作用力を小さくでき、したがって、その分、部品構成をいたずらに頑強にしなくて済み、製品重量の削減と製品コストの削減を可能にする。
【0043】
のみならず、上方柱体P2を下方柱体P1に向けて下降させることで上方柱体P2における垂直度を調整するから、結果として、下方柱体P1の上端と上方柱体P2の下端との間となる溶接隙間を小さくするようになり、その分溶接量を少なくできると共に、溶接作業における作業性を向上させることが可能になる。
【0044】
ところで、流体圧ジャッキJは、図2および図3に示すように、図示する実施形態にあっては、操作部10と、加圧部20とを有し、操作部10に対する作業員による人力操作で加圧部20を作動させるように構成されている。
【0045】
すなわち、この発明にあって、流体圧ジャッキJは、切換バルブやその他の制御バルブ類を有せずして構成され、したがって、構造を簡単にして、製品重量の削減を可能にすると共に製品コストの低廉化を可能にする。
【0046】
先ず、操作部10は、作業員による人力作業を容易にするように、人力操作で回動される操作ボルト11の軸線方向がフレームFにおける上下方向なる軸線方向を横切る方向に設定され、この操作ボルト11を回動操作すると、図中で左右方向となる作業者にとっていわゆる前後方向にこの操作ボルト11が進退することになって、その操作性に優れることになる。
【0047】
そして、この操作ボルト11は、ケーシング12内で摺動するピストン部11aを有し、このピストン部11aは、ケーシング12内に作動流体を充満させる容室12aを画成する。
【0048】
上記に対して、加圧部20は、上記のケーシング12と一体形成されるハウジング21内に摺動可能に収装されて下端を前記したフレームFにおける内側空部Aに露呈させるロッド体22を有する。
【0049】
そして、このロッド体22は、ハウジング21内に摺動可能に収装されてこのハウジング21内に上記の容室12aと連通する圧力室21aを画成するピストン部22aを有する。
【0050】
ちなみに、上記の操作部10におけるピストン部11aの摺動方向が図3中で左右方向となる水平方向とされるのに対して、上記の加圧部20におけるピストン部22aの摺動方向は、上下方向となって、フレームFにおける内側空部Aに挿通されている上方エレクションピースE2の下降方向にロッド体22からの作用力をいわゆる無駄なく作用できるように配慮している。
【0051】
また、この流体圧ジャッキJにあって、上記の加圧部20を構成するハウジング21は、図3に示すように、下端螺条部21bがフレームFの上端部2に形成の内側螺条2aに螺合することで、フレームFに一体的に連設される。
【0052】
このとき、図示しないが流体圧ジャッキJの作用力で上記の下端螺条部21bと内側螺条2aとの螺合状態が解除などされないように、ハウジング21とフレームFの上端部2との連続部を溶接して一体化したり補強したりしても良いことはもちろんである。
【0053】
そして、図示する流体圧ジャッキJにあって、上方エレクションピースE2の上端に下端を当接させるロッド体22は、下端たる基端22b(図3参照)が下方に向けて突出する湾曲面からなる。
【0054】
つまり、この種のエレクションピース、すなわち、下方エレクションピースE1もそうであるが、上方エレクションピースE2が上方柱体P2に溶接される際に、その上端が絶対的に水平になるように溶接されると限らないことは経験則の示すところである。
【0055】
このことからすると、仮に、上方エレクションピースE2の上端が図3中において左右のいずれかに傾斜して水平状態にない場合に、ロッド体22の基端22bが平坦面からなる場合には、ロッド体22の基端22bが上方エレクションピースE2の上端に点当たり、あるいは、線当たりする状況になり、当接状態が安定しなくなる危惧があるが、ロッド体22の基端22bが下方に突出する湾曲面からなる場合には、ロッド体22の基端22bが上方エレクションピースE2の上端に面当たりする状況になり、安定した当接状態を具現化できる。
【0056】
そこで、言わば好ましくない状況が上方エレクションピースE2の上端に出現していても、ロッド体22の基端22bにおける上方エレクションピースE2の上端への当接状態を安定させられるように、上記したように、ロッド体22の基端22bを下方に向けて突出する湾曲面からなるとする。
【0057】
それゆえ、この流体圧ジャッキJにあっては、操作部10で操作ロッド11を回動操作させることで、容室12aの作動流体を加圧部20における圧力室21aに供給し、この圧力室21aの膨張でピストン部22aを下降させることが可能になる。
【0058】
なお、操作部10は、図示するところにあっては、図3に示すように、水平方向に配設されているが、これに代えて、図示しないが、垂直方向に配設されるとしても良く、この場合には、いわゆる突起部がなくなり、収納性が向上すると共に、操作部10と加圧部20とを同軸にすることで、本体部1との一体成形も可能になる点で有利となる。
【0059】
このとき、図示するところにあっては、操作部10におけるピストン部11aの受圧面が加圧部20におけるピストン部22aの受圧面より小さく設定されているので、作業員による人力操作で操作ロッド11の回動を実現でき、圧力部20におけるロッド体22のハウジング21内からの突出を容易に実現できる。
【0060】
また、流体圧ジャッキJにあって、ロッド体22の基端22bが下方に向けて突出する湾曲面とされるので、上方エレクションピースE2の上端に面当たりする状況になり、ロッド体22からの推力、すなわち、上方エレクションピースE2を押し下げるようにする力が無駄なく、上方エレクションピースE2に伝達される。
【0061】
以上からすると、この建入れ治具にあっては、最低限、上記した構成、すなわち、フレームFと、流体圧ジャッキJと、固定ボルト7を有すれば、上方エレクションピースE2を連設させる上方柱体P2における垂直度の調整を可能にし得ることになり、それで足りると言い得る。
【0062】
しかし、この建入れ治具を利用する実際を鑑みると、上記のようにして上方柱体P2における垂直度が調整された後は、この上方柱体P2がいわゆる本作業(あるいは、本締作業)によって、その調整状態のままに固定されることが必要になる。
【0063】
つまり、垂直度が調整された上方柱体P2は、そのままの状態に適宜の手段で維持されながら、溶接やボルト締めなどの本作業で下方柱体P1に一体的に連結されることで、上方柱体P2における建込みを終了できる。
【0064】
このとき、下方柱体P1の上端と上方柱体P2の下端との間が直ちに溶接を実行できるほどに狭くなっている場合には、上記した適宜の手段による垂直度の調整状態の維持は、不要になるであろう。
【0065】
しかし、多くの場合に、下方柱体P1の上端と上方柱体P2の下端との間が直ちに溶接を実行できるほどに狭くなっているとは限らず、また、一般的には、他作業の段取りなどの関係で、上方柱体P2における垂直度が調整された状態を上記の適宜の手段で一時的に維持するのが常態であろう。
【0066】
このとき、図示しないが、従前であれば、下方エレクションピースE1の上端部と上方エレクションピースE2の下端部とに架け渡すように配設される仮止め用の補助板と、この補助板を下方エレクションピースE1の上端部および上方エレクションピースE2の下端部にそれぞれ連結するボルトナットとが適宜の手段として利用される。
【0067】
また、同じく図示しないが、要する場合に下方エレクションピースE1の上端と上方エレクションピースE2の下端との間の溶接隙間に挿し込まれる楔が適宜の手段として併用される。
【0068】
ちなみに、上記したように、従前であれば、適宜の手段として、補助板や楔を利用するから、この補助板の展設や楔の挿し込みを許容するように、下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2が大きく形成される傾向にある。
【0069】
しかし、この種のエレクションピースにあっては、爾後に柱体から切り離されて廃棄処分されることを勘案すると、このエレクションピースを大きく形成することは不経済となる。
【0070】
そこで、図示する実施形態にあっては、垂直度が調整された上方柱体P2における調整状態を一時的に固定的に維持するために、前記した支持ブロック4および楔5を有して、上方エレクションピースE2からの軸力を下方エレクションピースE1に伝達して安定させる。
【0071】
すなわち、この発明にあっては、従前の仮止め用の補助板の利用を廃止すると共に、楔を下方エレクションピースE1の上端と上方エレクションピースE2の下端との間の溶接隙間に挿し込ませない、つまり、建入れ治具が楔を有するようにする。
【0072】
このとき、支持ブロッ4は、言わばスペーサとして機能し、楔5は、文字通り、クサビとして機能するが、支持ブロック4がスペーサとして機能することを勘案すると、仮に、下方エレクションピースE1の上端と上方エレクションピースE2の下端との間が極めて接近している場合には、支持ブロック4の配設は不要であり、楔5の挿し込みだけで足りる。
【0073】
しかし、下方エレクションピースE1の上端と上方エレクションピースE2の下端との間を楔5の挿し込みだけで足りるほどに狭くする場合には、そのために下方エレクションピースE1および上方エレクションピースE2を上下方向となる軸線方向に長く形成することに繋がり、爾後に溶断されて廃棄されるエレクションピースを大きく形成する不具合を招く。
【0074】
そこで、エレクションピースを一般的な大きさに形成する一方で、下方エレクションピースE1の上端と上方エレクションピースE2の下端との間が広くなることによる不具合を解消するために、上記の支持ブロック4の配設が必須になる。
【0075】
以上のこと、つまり、上方エレクションピースE2からの軸力を下方エレクションピースE1に伝達することからすると、支持ブロック4と楔5が別部品に形成されることは必須の条件ではない。
【0076】
したがって、このことからすると、支持ブロック4と楔5は、これが図示するように、別部品に形成されるのに代えて、図示しないが、一体に形成された楔のみからなるとしても良い。
【0077】
ただ、支持ブロック4と楔5を一体に形成する場合には、結果的に、楔を大きく形成することになり、楔の重量を大きくして、それを利用する際の作業性を悪くすることが十分考えられるから、このことからすると、図示するように別部品からなる方が良いのであろう。
【0078】
そして、支持ブロック4が楔5と別部品に形成されることで、下方エレクションピースE1の上端と上方エレクションピースE2の下端との間の間隔が区々となる場合にも、この支持ブロック4を寸法違いのものと交換すれば良く、楔5の寸法違いのものを多数用意しなくて済むことになる点で有利となる。
【0079】
以上のような前提の下に、この支持ブロック部4は、図2にも示すように、前記した下方エレクションピースE1に開穿の挿通孔Ehに類似する縦長孔からなる挿通孔4aを有し、この挿通孔4aに連結ピン8(図3参照)を挿通させている。
【0080】
このとき、フレームFにあっては、前記したトグルピン6における場合と同様に、図3中で左右部となる両側部に上記の挿通孔4aに照準されるように丸孔(符示せず)が開穿され、この丸孔に上記の連結ピン8の軸部81がいわゆるガタなく挿通される。
【0081】
それゆえ、上記の支持ブロック4にあっては、下方エレクションピースE1の上端位置が、また、上方エレクションピースE2の下端位置がいわゆる高低バラバラになるとしても、支持ブロック4が自身の有する縦長の挿通孔4aの長さ分昇降し得ることになって、上記の上端位置および下端位置が区々になることに対応でき、軸力の伝達が不能になることをあらかじめ回避している。
【0082】
そして、この支持ブロック4にあっては、その上端4bの後述する楔5の下端への当接が安定するように、また、その下端4cの下方エレクションピースE1の上端への当接が安定するように、上端4bおよび下端4cがそれぞれ外方に向けて突出する湾曲面からなるとしている。
【0083】
このとき、図示するところにあっては、この支持ブロック4において下端4cの湾曲面は、下方エレクションピースE1の言わば水平となる上端に倣うように湾曲するが、上端4bの湾曲面は、傾斜する楔5の下端に倣うように言わば傾斜しながら湾曲する。
【0084】
もっとも、支持ブロック4の上下端が対向する部材に安定状態に当接するとの観点からすれば、上端4bが楔5の傾斜した下端に倣うように傾斜しながら湾曲することは必ずしも必要でなく、したがって、上端4bが下端4cと対称となる湾曲面からなるとしても良い。
【0085】
一方、楔5は、上記した支持ブロック4の上端と上方エレクションピースE2の下端との間の挿し込まれるもので、この楔5の挿し込みで上方エレクションピースE2からの軸力が楔5および支持ブロック4を介して下方エレクションピースE1に確実に伝達されることになる。
【0086】
なお、この楔5は、上方エレクションピースE2と支持ブロック4との間に差し込まれるように先端に向けて収斂する本体部51と、この本体部51の後端に一体に設けられたブラケット部52とを有し(図2参照)、このブラケット部52を打撃することで、本体部51の上方エレクションピースE2と支持ブロック4との間への差し込みを可能にする。
【0087】
そして、このブラケット部52は、ボルト53を螺装させ、このボルト53の捩じ込み操作で、本体部51の上方エレクションピースE2と支持ブロック4との間からの抜き出しを可能にしている。
【0088】
なお、上記の楔5は、図1に示すように、ワイヤW1で連結ピン8に連結され、この連結ピン8は、同じくワイヤW2でトグルピン6に連結され、楔5およびトグルピン6が連結ピン8に接続されて、紛失され易くなることを防止している。
【0089】
なお、上方柱体P2が下方柱体P1に溶接やボルト締めなどで一体的に連結された後は、建入れ治具が下方エレクションピースE1および上方エレクションピースP2から外されて、再利用に供されるのはもちろんである。
【0090】
上記したところでは、この発明による建入れ治具がフレームFと、流体圧ジャッキJと、固定ボルト7、さらには、ブロック4および楔5を有して、上方柱体P2における垂直度の調整を可能にすると共に、垂直度が調整された上方柱体P2をそのままの状態に維持することを可能にするが、流体圧ジャッキJを利用するがゆえに危惧される不具合の解消を可能にする固定手段を有しても良い。
【0091】
すなわち、流体圧ジャッキJにあっては、時間の経過による作動流体の漏出を絶対的には阻止できず、したがって、流体圧ジャッキJの作動で上方柱体P2の垂直度を調整した後は、できるだけ速やかに溶接やボルト絞めなどの本作業で上方柱体P2を下方柱体P1に固定状態に連結して建入れ治具に拠らなくても済むようにするのが好ましい。
【0092】
しかしながら、実際には、諸般の事情で本作業に速やかに移行できず、したがって、垂直度が調整された上方柱体P2と下方柱体P1との間に建入れ治具が装着されたまま長時間が経過することがあり、折角調整した上方柱体P2における垂直度が流体圧ジャッキJにおける作動流体の漏れで狂ってしまうことが危惧される。
【0093】
そこで、図4に示す実施形態では、流体圧ジャッキJが固定手段としてのロック構造を備えるもので、このロック構造は、流体圧ジャッキJにおけるロッド体22に代わって上方エレクションピースE2の上端に下端を当接させ、ロッド体22が仮に後退して上方エレクションピースE2から離れることがあっても、上方エレクションピースE2の後退、すなわち、上昇を阻止して上方柱体P2における垂直度が変更されないように機能する。
【0094】
少し説明すると、図4に示すところにあって、ロック構造は、流体圧ジャッキJにおける加圧部20を構成するピストン部22aを含むロッド体22の軸芯部を貫通するロックピン23を有し、このロックピン23は、頸部23aがハウジング21に回動可能に保持されながら上下動可能とされて、図中で下端となる先端23bをロッド体22の下端に露呈させながら上方エレクションピースE2の上端に当接可能とされてなる。
【0095】
このとき、ロックピン23は、図中での上端部を操作部23cとして人力による回動操作を可能にし、また、頸部23aは、螺条部とされてハウジング21側に、すなわち、ハウジング21の上端に溶接などで一体的に連設されたソケット24における内周螺条24aに螺合する。
【0096】
そして、このロックピン23にあっては、本体部たる軸部23dがハウジング21に開穿の透孔21cおよびピストン部22aを含めたロッド体22の軸芯部に開穿の透孔22cをシール(符示せず)を有してそれぞれ液密構造下に貫通する。
【0097】
そしてまた、このロックピン23にあっては、軸部23dの下端たる先端23bを上方エレクションピースE2の上端に対向させるようにロッド体22の下端22b(図3参照)に露呈する。
【0098】
それゆえ、このロック構造、すなわち、固定手段を構成するロックピン23にあっては、これがハウジング21に対して進退されるのは、作業者による回動操作時のみであり、したがって、仮にピストン部22aを含むロッド体22が作動流体の漏出で後退することがあっても、ロックピン23が上方エレクションピースE2のフレームFに対する移動を阻止して、ロック状態を維持する。
【0099】
そして、このロック構造たる固定手段にあっては、ロックピン23の先端23bを上方エレクションピースE2の上端に当接させて、上方エレクションピースE2のフレームFに対する上昇が阻止された状態のときには、加圧部20において、むしろ積極的にロッド体22を後退させるのが良い。
【0100】
すなわち、操作部10において、操作ボルト11を回動操作してケーシング12内にピストン部11aで画成される容室12aを膨張させ、加圧部20における圧力室21aに充満される作動流体を操作部10側に戻すことで、圧力室21aにおける圧力を言わば零にし6て、加圧部20における漏油をあらかじめ回避するのが良い。
【0101】
前記したところでは、この建入れ治具が柱体の垂直度を調整するいわゆる建入れ治具として利用される場合を例にして説明したが、この発明による建入れ治具の構成からすれば、これが柱体に連結される水平材たる梁材における目違いを修正する治具として利用されるとしても良いことはもちろんである。
【0102】
また、前記したところでは、フレームFが下方エレクションピースE1と上方エレクションピースE2との間における目違いを修正する構成を有しないが、これは、前記したところが、建入れ治具が建入れ治具として機能するところを優先的に説明するからであり、したがって、この建入れ治具が下方エレクションピースE1と上方エレクションピースE2との間における目違いを修正する構成を有するとしても良いことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
重量物たる鉄骨製の柱体を利用して構築物を構築する際に、建込まれる柱体における垂直度を調整するのに向く。
【符号の説明】
【0104】
1 本体部
2 上端部
2a,24a 内周螺条
3 下端部
4 支持ブロック
4a,Eh 挿通孔
4b 上端
4c,22b 下端
5 楔
6 トグルピン
7 固定ボルト
8 連結ピン
10,23c 操作部
11 操作ボルト
11a,22a ピストン部
12 ケーシング
20 加圧部
21 ハウジング
21a 圧力室
21b 下端螺条部
21c,22c 透孔
22 ロッド体
23 ロックピン
23a 頸部
23b 先端
23d 本体部たる軸部
24 ソケット
51 本体部
52 ブラケット部
53 ボルト
61,81 軸部
62 抜け止め部
A 内側空部
E1 下方エレクションピース
E2 上方エレクションピース
F フレーム
J 流体圧ジャッキ
M 溶接部
P1 下方柱体
P2 上方柱体
W1,W2 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設となる下方柱体の上端部に設けた下方エレクションピースおよび上記の下方柱体に上方から連結される上方柱体の下端部に設けた上方エレクションピースを臨在させるフレームと、このフレームの上端部に設けられて人力操作による伸長作動時に上方エレクションピースを下方エレクションピースに向けて押し下げる流体圧ジャッキとを有してなる建入れ治具において、フレームが下端部に螺装の固定ボルトにおける螺合操作で下方エレクションピースに対してこのフレームの軸線方向となる上下方向に移動可能とされ、流体圧ジャッキが下端を上方エレクションピースの上端に当接させるロッド体を有すると共に、このロッド体が伸長作動時に突出して上方エレクションピースを下方エレクションピースに向けて下降させて、下方柱体に対する上方柱体の下降を可能にしてなることを特徴とする建入れ治具。
【請求項2】
上記のフレームがこのフレームを貫通すると共に上記の下方エレクションピースを挿通するトグルピンによって下方エレクションピースに連結される一方で、フレームがトグルピンの貫通を許容する丸孔を有すると共に、下方エレクションピースが上記のトグルピンの挿通を許容する縦長孔からなる挿通孔を有し、この挿通孔で上記のトグルピンが上下動可能とされてなる請求項1に記載の建入れ治具。
【請求項3】
上記のフレームが内側空部に下方エレクションピースの上端に担持される支持ブロックと、この支持ブロックと上方エレクションピースとの間に挿し込まれる楔とを有し、この楔に対向する支持ブロックにおける上端面および上記の下方エレクションピースに対向する下端面がそれぞれ外方に向けて突出する湾曲面とされてなる請求項1または請求項2に記載の建入れ治具。
【請求項4】
上記のフレームがこのフレームを貫通すると共に上記の支持ブロックを挿通する連結ピンを有する一方で、フレームが上記の連結ピンの貫通を許容する丸孔を有すると共に、支持ブロックが上記の連結ピンの挿通を許容する縦長孔からなる挿通孔を有し、この挿通孔で上記の連結ピンが上下動可能とされてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の建入れ治具。
【請求項5】
上記の流体圧ジャッキが人力操作で回動する操作ボルトを有する操作部を有し、この操作部がケーシング内に摺動可能に収装されて上記の操作ボルトを連設させるピストン部を有し、このピストン部によってケーシング内に作動流体を充満させる容室を画成し、ピストン部が上記の操作ボルトの回動で摺動して容室を狭めるときにこの容室からの流体圧を外部に供給してなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の建入れ治具。
【請求項6】
上記の流体圧ジャッキが下端を上方エレクションピースの上端に当接させるロッド体を有する加圧部を有し、この加圧部がハウジング内に摺動可能に収装されるピストン部を有し、このピストン部によってハウジング内に画成されて外部からの流体圧を受け容れる圧力室を有し、ピストン部が圧力室の膨張で伸長作動してこのピストン部に連設の上記のロッド体を外部に突出させ、ロッド体が下端たる基端を下方に向けて突出する湾曲面としてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載の建入れ治具。
【請求項7】
上記のロッド体が軸芯部を貫通するロックピンを有し、このロックピンが頸部を上記のハウジングに回動可能に保持されながら上下動可能とされて先端をロッド体の下端に露呈させながら上方エレクションピースの上端に当接可能とされてなる請求項6に記載の建入れ治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236585(P2011−236585A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107127(P2010−107127)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】