説明

建具用施解錠検出装置

【課題】検出感度の低下を抑えつつ永久磁石の小型化を図る。
【解決手段】本実施形態の検出装置は、磁気センサ30の近傍(磁気センサ30を挟んで永久磁石1と対向する位置)に磁気誘導体4が配置されている。このため、従来例のように磁気誘導体4が無い場合と比較して、磁気センサ30の検出面と鎖交する磁束を増やす(磁束密度を大きくする)ことができる。その結果、従来例よりも寸法の小さい(磁界の弱い)永久磁石1を使用しても従来例と同等の検出感度を維持することができる。つまり、本実施形態の検出装置では、永久磁石1の磁束を磁気検知部3に導く磁気誘導体4を備えているため、検出感度の低下を抑えつつ永久磁石1の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出入口や窓に設けられる建具を施錠する錠の施解錠を検出する建具用施解錠検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、窓を開閉する建具(引き違い戸)に設けられるクレセント錠の施錠と解錠の各状態を検出する戸締まり検出装置が開示されている。この従来例は、引き違い式の窓枠の一方に設けられたクレセント錠の操作片に永久磁石が取り付けられ、他方の窓枠に設けられたワイヤレス送信器に近接センサが内蔵されている。近接センサにはリードスイッチが用いられ、クレセント錠の施錠状態では操作片に取り付けられた永久磁石の磁界によってリードスイッチがオンし、解錠状態では操作片に取り付けられた永久磁石が離れるためにリードスイッチがオフする。そして、リードスイッチのオン・オフによって検出されるクレセント錠の施解錠状態がワイヤレス送信器からワイヤレス信号で送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−309572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は様々な形状及び寸法のクレセント錠が市販されており、操作片と窓枠との隙間が従来よりも狭いものや、操作片の表面が曲面形状に形成されたものなどが普及してきている。そして、このような新しいタイプのクレセント錠に対応するためには、永久磁石を小型化することが好ましい。
【0005】
しかしながら、単純に永久磁石を小型化した場合、永久磁石の磁界も弱くなってしまうために戸締まりの検出感度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、検出感度の低下を抑えつつ永久磁石の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具用施解錠検出装置は、建物の出入口や窓に設けられる建具を施錠する錠の施解錠を検出する建具用施解錠検出装置であって、永久磁石と、磁界を検知する磁気検知部と、前記永久磁石の磁束を前記磁気検知部に導く磁気誘導体とを備え、前記永久磁石は、施錠位置と解錠位置の間を変位する前記錠の操作片又は前記建具の何れか一方に取り付けられ、前記磁気検知部及び前記磁気誘導体は、前記操作片と前記建具のうちで前記永久磁石が取り付けられていない方に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気検知部は、複数個の磁気センサを有し、前記複数個の磁気センサの検出出力の差分に基づいて磁界を検知することが好ましい。
【0009】
この建具用施解錠検出装置において、前記複数個の磁気センサは、互いの磁界検出方向が揃い且つ前記磁気誘導体を挟んで対向するように配置されることが好ましい。
【0010】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気検知部が2個の磁気センサを有することが好ましい。
【0011】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気検知部は、2個を1組とする複数組の磁気センサを有することが好ましい。
【0012】
この建具用施解錠検出装置において、前記永久磁石の磁束を前記複数組の磁気センサにそれぞれ導く複数の磁気誘導体が一体に形成されていることが好ましい。
【0013】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気誘導体が十字形に形成され、1つの組の2個の前記磁気センサが前記磁気誘導体の隣り合わない一対の凸部の先端に対向して配置されることが好ましい。
【0014】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気誘導体は、前記磁気センサと対向する先端部分が先細り形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気誘導体は異方性磁性体からなり、前記磁気センサは、磁界検出方向が前記磁気誘導体の磁化容易方向に一致するように配置されることが好ましい。
【0016】
この建具用施解錠検出装置において、前記磁気誘導体は、電磁鋼板、フェライト、パーマロイ、アモルファス磁性体の何れかの磁性体からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の建具用施解錠検出装置は、検出感度の低下を抑えつつ永久磁石の小型化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示し、建具に取り付けられた状態の一部省略した平面図である。
【図2】同上の別の構成を示す一部省略した平面図である。
【図3】同上のさらに別の構成を示す一部省略した平面図である。
【図4】同上における磁気検知部と磁気誘導体の他の構成を示す斜視図である。
【図5】同上における磁気検知部と磁気誘導体の他の構成を示す斜視図である。
【図6】同上における磁気検知部と磁気誘導体の他の構成を示す斜視図である。
【図7】同上における磁気検知部と磁気誘導体の他の構成を示す斜視図である。
【図8】同上における磁気検知部と磁気誘導体の他の構成を示す斜視図である。
【図9】同上における磁気検知部と磁気誘導体の他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、窓を開閉する建具(引き違い戸)に設けられるクレセント錠の施錠と解錠の各状態を検出する建具用施解錠検出装置に本発明の技術思想を適用した実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
クレセント錠100は、図1に示すように引き違い式の2枚の窓枠110の一方に固定されたクレセント錠本体101と、他方の窓枠(図示せず)に固定されたクレセント受け102とで構成される。クレセント錠本体101は、直方体形状の台座103と、台座103に対して回動自在に設けられた半月形状のクレセント部104と、クレセント部104の一端より台座103と平行に突出する操作片105とを具備する。そして、操作片105を持ってクレセント部104を回動させることにより、操作片105がクレセント部104の上に位置するときはクレセント部104がクレセント受け102と係合してクレセント錠100が施錠状態となる。一方、操作片105がクレセント部104の下に位置するときはクレセント部104とクレセント受け102との係合が外れてクレセント錠100が解錠状態となる。ただし、このようなクレセント錠100は従来周知であるから、クレセント錠本体101の詳細な構造の図示及び説明は省略する。なお、以下では、クレセント錠100が施錠状態のときの操作片105の位置(クレセント部104より上の位置)を「施錠位置」、クレセント錠100が解錠状態のときの操作片105の位置(クレセント部104より下の位置)を「解錠位置」と呼ぶことにする。
【0021】
本実施形態の建具用施解錠検出装置(以下、検出装置と略す。)は、操作片105に取り付けられる永久磁石1と、窓枠110におけるクレセント錠本体101の上方に取り付けられる検出装置本体2とを備える。
【0022】
永久磁石1は、両面テープなどを用いて操作片105の側面に取り付けられており、図1における左右方向の一端側がN極の磁極、他端側がS極の磁極となっている。
【0023】
検出装置2は、ホール素子などの磁気センサ30を有する磁気検知部3と、磁気検知部3を挟んで施錠位置の操作片105と対向する位置に配置される磁気誘導体4と、磁気検知部3及び磁気誘導体4を内蔵するケース5とを具備している。ケース5は、直方体形状の合成樹脂成形体からなり、操作片105が施錠位置にあるときに永久磁石1との距離が最も短くなる位置に磁気センサ30及び磁気誘導体4が配置されている。
【0024】
磁気検知部3は、磁気センサ30と、磁気センサ30の検知出力を信号処理することで操作片105が施錠位置に在るか否かを検出する信号処理部(図示せず)とを有している。ここで、磁気センサ30は、磁界(磁束)の検出方向が操作片105との対向方向(図1における左右方向)に一致する向きに配置されている。信号処理部は、例えば、磁気センサ30の検知出力を所定のしきい値と比較し、検知出力がしきい値を超えていれば施錠状態、検知出力がしきい値を超えていなければ解錠状態の検出結果をそれぞれ出力する。なお、信号処理部から出力される検出結果は、例えば、特許文献1記載の従来例と同様に、電波を媒体とするワイヤレス信号によって外部機器に通知される。
【0025】
磁気誘導体4は、例えば、電磁鋼板、フェライト、パーマロイ、アモルファス磁性体などで矩形板状に形成されている。
【0026】
次に、本実施形態の検出装置の動作を説明する。図1に示すように操作片105が施錠位置に在る場合、永久磁石1のN極からS極に向かう磁力線(磁束)が磁気センサ30の検出面と鎖交することで磁気センサ30の検知出力がしきい値を超えるため、操作片105が施錠位置に在ること、すなわち、クレセント錠100が施錠状態にあることが検出できる。一方、操作片105が解錠位置に在る場合、永久磁石1と磁気センサ30との距離が大きくなるために磁気センサ30の検知出力がしきい値を超えなくなるので、操作片105が解錠位置に在ること、すなわち、クレセント錠100が解錠状態にあることが検出できる。
【0027】
ここで、本実施形態の検出装置では、磁気センサ30の近傍(磁気センサ30を挟んで永久磁石1と対向する位置)に磁気誘導体4が配置されている。このため、従来例のように磁気誘導体4が無い場合と比較して、磁気センサ30の検出面と鎖交する磁束を増やす(磁束密度を大きくする)ことができる。その結果、従来例よりも寸法の小さい(磁界の弱い)永久磁石1を使用しても従来例と同等の検出感度を維持することができる。
【0028】
つまり、本実施形態の検出装置では、永久磁石1の磁束を磁気検知部3に導く磁気誘導体4を備えているため、検出感度の低下を抑えつつ永久磁石1の小型化を図ることができる。
【0029】
ただし、図2に示すようにクレセント錠本体101の台座103の内部に磁気検知部3及び磁気誘導体4が内蔵されても構わない。あるいは、図3に示すように永久磁石1が台座103の内部に収納され、且つ磁気検知部3と磁気誘導体4が操作片105に設けられても構わない。
【0030】
ところで、磁気検知部3が複数個の磁気センサ30を具備し、信号処理部がそれぞれの磁気センサ30の検知出力の差分を求めてしきい値と比較すれば、地磁気などのノイズによる検知出力への影響を低減して検出精度の向上を図ることができる。このとき、図4に示すように2個の磁気センサ30が左右方向に並置され、前後方向から見て2個の磁気センサ30の間に永久磁石1が配置されることが好ましい。
【0031】
ここで、操作片105が解錠位置に在るときに磁気検知部3に磁石が近付けられると、磁気センサ30の検知出力がしきい値を超えてしまい、クレセント錠100の施錠状態を誤検出してしまう虞がある。そこで、図5に示すように磁気誘導体4を挟んで対向する位置(磁気誘導体4の左右両隣)に2個の磁気センサ30が配置され、磁気センサ30の磁界検出方向が左右方向に揃えられ、N極とS極が左右方向に並ぶ向きで永久磁石1が操作片105に取り付けられることが望ましい。このようにすれば、それぞれの磁気センサ30の検知出力の正負(磁界の向き)と大きさを比較することにより、磁気センサ30に対する磁力源(永久磁石1又は磁石)の位置や向きが判別できるので、磁石による誤検出を防止することができる。
【0032】
また、図6に示すように磁気検知部3が、2個を1組とする複数組(図示例では2組)の磁気センサ30を有していてもよい。各組の磁気センサ30は、それぞれ磁気誘導体4を挟んで対向する位置に配置され、一方の組は2個の磁気センサ30が左右方向に並び、他方の組は2個の磁気センサ30が上下方向に並んでいる。そして、前者の磁気センサ30の組の下側に後者の磁気センサ30の組が配置されている。一方、永久磁石1は、N極とS極の並ぶ方向が左右方向と上下方向に対して各々傾くように配置されている。このようにすれば、それぞれの磁気センサ30の組の検知出力の正負(磁界の向き)と大きさを比較することにより、各磁気センサ30の組に対する磁力源(永久磁石1又は磁石)の位置や向きが判別できるので、磁石による誤検出を防止することができる。ただし、図7に示すように2枚の磁気誘導体4が一体に形成されれば、部品点数を削減することができる。さらに、図8に示すように磁気誘導体4が十字形に形成され、1つの組の2個の磁気センサ30が磁気誘導体4の隣り合わない一対の凸部40の先端にそれぞれ対向して配置されることが好ましい。このようにすれば、凸部40が無い場合(図7参照)と比較して磁気センサ30の検出面と鎖交する磁束を増やして検出感度を向上することができる。
【0033】
また、図9に示すように磁気誘導体4は、磁気センサ30と対向する先端部分が先細り形状に形成されることが好ましい。これにより、先端部分に磁束を集中させることで磁気検知部3の検知感度を向上して永久磁石1を小型化することができる。
【0034】
ところで、図5,図6及び図9に示した構成においては、磁気誘導体4が異方性磁性体からなり、磁気センサ30は、磁界検出方向が磁気誘導体4の磁化容易方向に一致するように配置されることが好ましい。これにより、磁気検知部3の検知感度を向上して永久磁石1を小型化することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 永久磁石
2 検出装置本体
3 磁気検知部
4 磁気誘導体
30 磁気センサ
100 クレセント錠
105 操作片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出入口や窓に設けられる建具を施錠する錠の施解錠を検出する建具用施解錠検出装置であって、永久磁石と、磁界を検知する磁気検知部と、前記永久磁石の磁束を前記磁気検知部に導く磁気誘導体とを備え、前記永久磁石は、施錠位置と解錠位置の間を変位する前記錠の操作片又は前記建具の何れか一方に取り付けられ、前記磁気検知部及び前記磁気誘導体は、前記操作片と前記建具のうちで前記永久磁石が取り付けられていない方に取り付けられることを特徴とする建具用施解錠検出装置。
【請求項2】
前記磁気検知部は、複数個の磁気センサを有し、前記複数個の磁気センサの検出出力の差分に基づいて磁界を検知することを特徴とする請求項1記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項3】
前記複数個の磁気センサは、互いの磁界検出方向が揃い且つ前記磁気誘導体を挟んで対向するように配置されることを特徴とする請求項2記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項4】
前記磁気検知部が2個の磁気センサを有することを特徴とする請求項2又は3記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項5】
前記磁気検知部は、2個を1組とする複数組の磁気センサを有することを特徴とする請求項2又は3記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項6】
前記永久磁石の磁束を前記複数組の磁気センサにそれぞれ導く複数の磁気誘導体が一体に形成されていることを特徴とする請求項5記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項7】
前記磁気誘導体が十字形に形成され、1つの組の2個の前記磁気センサが前記磁気誘導体の隣り合わない一対の凸部の先端に対向して配置されることを特徴とする請求項6記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項8】
前記磁気誘導体は、前記磁気センサと対向する先端部分が先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項3〜7の何れか1項に記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項9】
前記磁気誘導体は異方性磁性体からなり、前記磁気センサは、磁界検出方向が前記磁気誘導体の磁化容易方向に一致するように配置されることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の建具用施解錠検出装置。
【請求項10】
前記磁気誘導体は、電磁鋼板、フェライト、パーマロイ、アモルファス磁性体の何れかの磁性体からなることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の建具用施解錠検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8283(P2013−8283A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141714(P2011−141714)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】