説明

建具

【課題】 地震対策、熱伸び対策等として、たて材の変形を防止することができる建具を提供することを目的とする。
【解決手段】 実施例1は、図1(A)(B)及び図2のように、たて材としての障子の召合かまち1に横材としての障子の中さん2を取付ける場合に、離隔材3を介在させ、前記中さん2の端部20を召合かまち1に呑み込ませると共に、中さん2の端面21を離隔材3の一面30に、その離隔材3の他面31を召合かまち1に、それぞれ当接させて取付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の外力を受けた場合に建具の面内方向に生じる応力を吸収可能な建具に関する。
【背景技術】
【0002】
障子を構成する框の通常の組立ては、図10のように、たてかまちの上下に上下かまちの両端部を当接させてネジ止めしていたり、また、中骨(中さん)2に対しても、その両端部を左右の召合かまち1及びたてかまちに当接させてネジ止めしていた。
【0003】
このような組立ては、当業者において通常、実施されているものであり、出願人は、この従来技術が記載された特許公開公報等の特許文献を本願出願時においては知見していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる従来技術には次のような課題があった。
第1に、地震等により外力を受けた障子等の建具においては、その中骨が面内方向に変位して、その端部が当接している召合かまち等のたて材に押圧力を加え、そのたて材が変形を受ける恐れがあったこと、
第2に、たて材の変形の恐れは、地震等により外力ばかりではなく、中骨の「熱伸び」によっても懸念されていたこと、
第3に、特に召合かまちは、たてかまちが躯体に押さえられる位置にあるために、中骨から集中的に力を受けて、変形を受けやすかったこと、
である。
【0005】
そこで、本願発明は、地震対策、熱伸び対策等として、召合かまち等のたて材の変形を防止することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は、建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させ、前記横材の端部をたて材に呑み込ませると共に、前記横材の端部の端面と前記離隔材とたて材とを当接可能に取付けたことを特徴とする建具とした(請求項1の発明)。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本願発明は、建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させ、前記横材の端部の側面と前記離隔材とたて材とを当接可能に取付けたことを特徴とする建具とした(請求項2の発明)。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本願発明は、建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させ、前記横材の端部をたて材に呑み込ませると共に、前記横材の端部の端面と前記離隔材とたて材とを当接可能に、且つ、前記横材の端部の側面と前記離隔材とたて材とを当接可能に取付けたことを特徴とする建具とした(請求項3の発明)。
【0009】
上記発明において、前記離隔材の外郭が横材の端面形状に略一致しているようにしてもよい(請求項4の発明)。
【0010】
上記各発明において、前記横材の端部の下方に、その横材をガイドするガイド片を前記たて材に固定してもよい(請求項5の発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させたので、横材のたて材に対する押圧力が、直接、たて材に作用せず、地震対策、熱伸び対策等として、たて材の変形を防止することができる建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は実施例1に係る建具としての障子の要部横断面図であり、図1(B)は図1(A)のA−A線矢視断面図である。
【図2】図2は図1の障子の要部分解斜視図である。
【図3】図3(A)及び図3(B)は図2に示したガイド片の取付説明図である。
【図4】図4(A)は実施例2に係る障子の要部横断面図ある。図4(B)は図4(A)のA−A線矢視断面図である。図4(C)及び図4(D)は同障子の要部側面図である。図4(E)は変形例に係る障子の要部横断面図ある。
【図5】図5は図4の障子の要部分解斜視図である。
【図6】図6(A)は実施例3に係る障子の要部横断面図ある。図6(B)は図6(A)のA−A線矢視断面図である。
【図7】図7は図6の障子の要部分解斜視図である。
【図8】図8(A)は実施例4に係る障子の要部横断面図ある。図8(B)は図8(A)のA−A線矢視断面図である。図8(C)は同障子の要部側面図である
【図9】図9は図8の障子の要部分解斜視図である。
【図10】従来例を示す障子の分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る建具は、その実施例が各図において引違い障子について示されている。建具としての他の障子、ドアの扉、枠等においても実施することができる。
【実施例1】
【0014】
実施例1は、図1(A)(B)及び図2のように、たて材としての障子の召合かまち1に横材としての障子の中さん2を接続する場合に、その端部20と召合かまち1を離隔させる離隔材3を介在させ、前記中さん2の端部20を召合かまち1に呑み込ませると共に、中さん2の端面21を離隔材3の一面30に、その離隔材3の他面31を召合かまち1に、それぞれ当接可能に取付けている。
【0015】
前記召合かまち1は、前記中さん2の端部20を呑み込むための凹部10を備えている。
この凹部10は、本実施例の場合、前記召合かまち1の長手方向に形成されている障子に取り付けられるガラスの端部を受ける溝のヒレを必要に応じて、切欠いて形成されている。よって凹部10は横材の端部を呑み込むことができる凹状の構成であればよい。
【0016】
前記中さん2は、その端部20の両外側面22,23が、前記召合かまち1の凹部10の両内側面11、12に当接または近接するように取付けられており、召合かまち1と中さん2の接合強度を高めている。
【0017】
前記離隔材3は、その外郭が中さん2の端面21の形状に略一致させて成形されている。即ち、前記離隔材3は、障子に取り付けられるガラスの端部を受けることができる受け溝32と、その底に設けられ且つ中さん2を固定するためのネジを通過させるネジ溝33と、本体34の重量を軽減させるための孔35を設けている。
前記離隔材3の厚さは、前記中さん2からの押圧力に対抗でき、且つ、中さん端部20の前記凹部10に対する呑み込みを妨げない程度であればよい。
前記離隔材3の材質は限定されることはなく、例えば合成樹脂により成形されている。
なお、前記ネジ溝33に代えて、本体34に丸孔を設けてもよい。
【0018】
以上のように構成された障子においては、前記召合かまち1の凹部10に予め前記離隔材3を両面テープ等を用いてセットしておき、これに前記中さん2の端面21を突き当ててネジ止めすればよい。
【0019】
図2及び図3のように、前記中さん端部20の下方の前記召合かまち1に、ガイド片4を固定してもよい。これは、押圧力が加えられた中さん2の端部20を前記離隔材3の一面30方向にガイドするものである。また中さん2の端部20を召合かまち1に取り付ける際のガイドになるものである。
【0020】
なお、この実施例1では、召合かまち1に中さん2を接続する場合の構成例であったが、障子のたてかまち(図示せず)に中さん2を接続する場合に前記
離隔材3を介在させてもよい。
また、障子を構成する上下かまちについても前記離隔材3を介在させて前記召合かまち1又は/及びたてかまちに固定してもよい。
その他、建具を構成する横材としての上枠の端部とたて材としてのたて枠との関係でも、前記離隔材3を介在させてもよい。
【0021】
以上の障子の構成によれば次のような作用効果を奏する。
a. 地震等の外力により中さん2が障子の面内方向に変位し、その端部20が召合かまち1の方向に押圧力を加えても、前記離隔材3が中さん2の端面21からの力を受けるので、その力は直接には召合かまち1に伝達されない。よって召合かまち1の変形防止に有効である。
b. より強い押圧力の場合には、前記離隔材3が変形するので、召合かまち1の変形防止に有効である。
c. 前記離隔材3が変形する場合には、ネジが前記ネジ溝33を介して、押圧力の方向に逃げることで、召合かまち1の板厚部1aの変形防止に有効である。
d. 前記離隔材3のネジ溝33がネジの前記中さん2に対する進行方向のガイドなり、取り付けを円滑に行うことができる。
e. 前記離隔材3の外郭が中さん2の縦方向の断面形状に略一致させて成形されているので、召合かまち1に対する押圧力は、その板厚部1aに垂直に加えられる場合のみならず、垂直方向以外の方向からの押圧力に対しても対応できる。
f. ネジにより、前記召合かまち1に中さん2を固定する場合、前記離隔材3がネジのトルクを調整する作用を果たし、過度の絞め付けによる前記召合かまち1の板厚部1aに対する破損や、絞め付け不足による不具合の発生を防ぐことができる。
g. 前記中さん2の端部20の両外側面22,23が、前記召合かまち1の凹部10の両内側面11,12に当接または近接するように取付けられており、かつ、前記中さん2の端面21と召合かまち1がそれぞれ離隔材3に当接して取付けてられているので、召合かまち1と中さん2の接合強度を高めている。
h. 前記離隔材3は中さん2等の熱伸び対策にも有用である。
i. ガイド片4が、中さん2の押圧力の方向を規制し、押圧力を確実に離隔材3で受け止めることができる。
【実施例2】
【0022】
次に、実施例2の構成を図4及び図5に基づいて説明する。
実施例2においては、実施例1と同様に離隔材3(図示省略)を介在させて前記召合かまち1に前記中さん2を接合させており、その特徴は中さん端部20の側面の外側端面24と召合かまち1との間に離隔材5の両端50,51を当接可能に取付けている点にある。
【0023】
前記離隔材5は、長方形状の薄板状のもので、縦寸法が中さん2の高さ寸法と略一致している。横寸法は、前記中さん2の押圧力に対抗できる程度の幅であればよい。
【0024】
前記離隔材5の一端50が召合かまち1に当接する箇所は、その召合かまち1の自由端13、或いは突き当て面14として、それらの個所の曲がり等の変形を防止できるようにしている。
また、図4(A)〜(D)では、前記離隔材5は障子の一側面にのみ取り付けられているが、中さん2の見込み寸法(厚み)が大きい場合には、障子の他側面にも前記離隔材5を配置してもよい(図4(E)参照)。
【0025】
以上のように構成された障子においては、前記中さん2に前記離隔材5をネジ止めしておき、前記中さん2の端部20と召合かまち1とをネジ止めすればよい。
その他の構成は、上記実施例1に共通している。
【0026】
この実施例2の構成においては、次のような作用効果を奏する。
j. 前記離隔材5は、中さん2の外側端面24と召合かまち1の自由端13、或いは突き当て面14にそれぞれ当接しているので、それらの個所の曲がり等の変形を防止できる。
【実施例3】
【0027】
次に、実施例3の構成を図6及び図7に基づいて説明する。
実施例3は、前記召合かまち1に前記中さん2を取付け場合に離隔材6を介在させる構成は上記実施例と共通し、その特徴点は中さん2の端部20に離隔材6を圧入して取付可能にしたもので、その離隔材6が中さん2の端面21と召合かまち1との間に当接して取付けられている。
【0028】
前記離隔材6は、中さん2の端面21と召合かまち1とがそれぞれ当接する離隔部60と、その離隔部60から中さん2方向に略水平に突出する圧入部61からなる。
前記離隔部60は、中さん2の端面21の縦幅と横幅をカバーする、略長方形の本体62と、この本体62に設けられたネジ孔63を備えている。
前記圧入部61は、ガラス端部を逃げることができる位置に設けられており、その横張辺64が中さん2の内側に圧着されつつ挿入可能となっている。
かかる離隔材6は予め中さん2にセットされるか、召合かまち1側に取付けられて、その圧入部61が中さん2に圧入されるようにしてもよい。
【0029】
この実施例3の構成においては、次のような作用効果を奏する。
k. 離隔材6は予め中さん2にセットすることができるので、前記離隔材6のセット済みの中さん2の端面21を突き当ててネジ止めすればよく、作業が容易になる。
l. 離隔材6の圧入部61が、中さん2の押圧力の方向を規制し、押圧力を確実に離隔部60で受け止めることができる。
その他の構成は、上記実施例1の構成と同様で、作用効果も同様である。
【実施例4】
【0030】
次に、実施例4の構成を図8及び図9に基づいて説明する。
図8及び図9のように、前記召合かまち1に前記中さん2を取付け場合に離隔材7を介在させる構成は各実施例と共通しているが、その特徴は前記離隔材7が、前記離隔材5に相当する第1の離隔部70と、前記離隔材3に相当する第2の離隔部71から構成される点である。
即ち、中さん2の外側端面24と召合かまち1の自由端13との間に第1の離隔部70を当接させ、中さん2の端面21と召合かまち1との間に第2の隔離部71を当接させて取付けている。
【0031】
前記第1の離隔部70は障子の一側面用にのみ形成されているが、中さんの見込み寸法(厚み)が大きい場合には、他側面用に前記第1の離隔部70と同様な離隔部を形成し、配置してもよい。
【0032】
この実施例4の構成においては、次のような作用効果を奏する。
m. 第1の離隔部70と第2の離隔部71から構成されていることから、上記各実施例の場合よりも、強い押圧力に対抗することが可能で、召合かまち1の変形防止に有効である。
その他の構成及び効果は、上記各実施例と同様である。
【符号の説明】
【0033】
1 召合かまち
1a 板厚部
10 凹部 11 12 両内側面
13 召合かまちの自由端 14 突き当て面

2 中さん
20 端部 21 端面
22 23 両外側面 24 中さんの外側端面

3 離隔材
30 離隔材の一面 31 離隔材の他面
32 受け溝
33 ネジ溝 34 本体
35 孔

4 ガイド片

5 離隔材
50 51 離隔材の両端

6 離隔材
60 離隔部 61 圧入部
62 本体 63 ネジ孔
64 横張辺

7 離隔材
70 第1の離隔部 71 第2の離隔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させ、前記横材の端部をたて材に呑み込ませると共に、前記横材の端部の端面と前記離隔材とたて材とを当接可能に取付けたことを特徴とする建具。
【請求項2】
建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させ、前記横材の端部の側面と前記離隔材とたて材とを当接可能に取付けたことを特徴とする建具。
【請求項3】
建具の横材の少なくともいずれか一方の端部とたて材とを接続する箇所に、その端部とたて材を離隔させる離隔材を介在させ、前記横材の端部をたて材に呑み込ませると共に、前記横材の端部の端面と前記離隔材とたて材とを当接可能に、且つ、前記横材の端部の側面と前記離隔材とたて材とを当接可能に取付けたことを特徴とする建具。
【請求項4】
前記離隔材の外郭が横材の端面形状に略一致していることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記横材の端部の下方に、その横材をガイドするガイド片を前記たて材に固定したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−229720(P2010−229720A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78726(P2009−78726)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【Fターム(参考)】