説明

建具

【課題】火災等により室内外に炎貫通部が生じない建具を提供する。
【解決手段】2つの空間を仕切るパネル体を有する建具であって、前記パネル体を形成し、前記2つの空間のうちの一方の空間に臨む部位と他方の空間に臨む部位とに開孔が形成された中空部を有する金属製の框体と、前記框体内に配置され、前記開孔により前記框体が見込み方向に貫通されることを防止する金属製の貫通防止部材と、を有し、 前記中空部は、互いに対向する一対の内面を有しており、 前記貫通防止部材は、前記開孔と対向する遮蔽部と、前記中空部の一対の内面と当接する当接部と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの空間を仕切るパネル体を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの空間を仕切るパネル体を有する建具としては、例えば、室内側と室外側とに受信機が設けられた防火扉が知られている。このような防火扉は、室内側の受信機と室外側の受信機とを接続するケーブルを挿通させるための挿通孔が形成された金属製の裏板がそれぞれの受信機に設けられている。各々の裏板は、挿通孔が互い違いにずれた状態で固定されている(例えば、特許文献1参照)。また、パネル体の室内側と室外側から取り付けられるものとしては障子の引手がある。引手は、室内側においても室外側においても操作しやすい位置、すなわち、室内側と室外側で同じ位置に開孔を設けて取り付けられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−29644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような引手として、樹脂製の引手を用いると、火災等にて燃焼してしまい、室内外に炎貫通部が生じてしまう虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、火災等により室内外に炎貫通部が生じない建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、2つの空間を仕切るパネル体を有する建具であって、前記パネル体を形成し、前記2つの空間のうちの一方の空間に臨む部位と他方の空間に臨む部位とに開孔が形成された中空部を有する金属製の框体と、前記框体内に配置され、前記開孔により前記框体が見込み方向に貫通されることを防止する金属製の貫通防止部材と、を有し、前記中空部は、互いに対向する一対の内面を有しており、前記貫通防止部材は、前記開孔と対向する遮蔽部と、前記中空部の一対の内面と当接する当接部と、を有していることを特徴とする建具である。
このような建具によれば、框体に設けられている開孔により框体が見込み方向に貫通することを防止する金属製の貫通防止部材の遮蔽部が、框体内にて開孔と対向する位置に配置されているので、2つの空間を仕切るパネル体が、たとえ火災等により火炎に晒されたとしても、2つの空間の間に炎貫通部が生じることを防止することが可能である。このとき、貫通防止部材は、框体の中空部が有する、互いに対向する一対の内面に当接部が当接されるので、貫通防止部材を中空部が有する一対の内面に狭持させて容易に取り付けることが可能である。
【0007】
かかる建具であって、前記当接部は、前記一対の内面にて押圧され、押圧された反力により保持されることが望ましい。
このような建具によれば、当接部は、一対の内面にて押圧された反力により保持されるので、貫通防止部材を框体の一対の内面間に、強固に保持させることが可能である。
【0008】
かかる建具であって、前記当接部は、前記一方の空間に臨む部位と前記他方の空間に臨む部位とでなる前記一対の内面に当接されており、前記框体の見付け方向における当該当接部の幅は、当該見付け方向における前記開孔の幅より広いことが望ましい。
このような建具によれば、当接部の見付け方向の幅は、開孔の見付け方向の幅より広いので、貫通防止部材を框体の中空部内に、長手方向の端部から挿入し、開孔を通過させても当接部が開孔に入り込むことはない。このため、貫通防止部材を框体の長手方向の端部から挿入して、一方の空間に臨む部位と他方の空間に臨む部位とでなる一対の内面に容易に配置させることが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記遮蔽部は、平板形状であり、前記当接部は、前記遮蔽部から前記一方の空間側に向かって突出する一方側折曲部と、前記遮蔽部から前記他方の空間側に向かって突出する他方側折曲部と、で構成されていることが望ましい。
このような建具によれば、開孔を覆うための遮蔽部と、中空部内に保持される為の当接部とが簡単な形状で構成される為、貫通防止部材の全体構成をシンプルにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火災等により室内外に炎貫通部が生じない建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る建具を示す外観図である。
【図2】貫通防止部材が設けられた縦框の断面図である。
【図3】図2におけるA矢視図である。
【図4】貫通防止部材の縦框への取り付け方法を説明するための斜視図である。
【図5】貫通防止部材の縦框への取り付け方法を説明するための概略断面図である。
【図6】貫通防止部材の第1変形例を示す正面図である。
【図7】貫通防止部材が設けられた縦框の断面図である。
【図8】図7におけるB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態の建具10は、2つの空間を仕切る防火用建具であって、図1に示すように、パネル体としての引き違い方式の障子20と、障子20が案内されるレールを有する枠体12とを有している。本実施形態では、一方の空間としての室内側の空間と他方の空間としての室外側の空間との2つの空間を仕切る障子20を備えた防火用の建具10を例に挙げて説明する。
【0013】
以下の説明においては、建具10が建物等に取り付けられた状態にて上下となる方向を上下方向、室内外方向(奥行き方向)を見込み方向として示す。また、建具10が有する各部材は、単体の説明であっても、当該部材が取り付けられている状態にて上下となる方向を上下方向、室内外方向(奥行き方向)を見込み方向として示す。
【0014】
障子20は、矩形状に枠組みされた框体21と、框体21に囲まれた内側に配置される面材28とを有している。框体21は、障子20の戸先側に配置される戸先框22を有しており、戸先框22には障子20の開閉時に使用者が指を掛ける樹脂製の引手24が設けられ、内部には貫通防止部材30が設けられている。
【0015】
戸先框22は、アルミニウム製の押出成形部材であり、長手方向に貫通された中空部材である。そして、戸先框22の水平断面は、見付け方向に沿うように長辺側が配置された長方形状の中空部22aを有している。すなわち、中空部22aは、長辺側をなす一対の見付け方向壁部22bと短辺側をなす一対の見込み方向壁部22cとを有している。
【0016】
一対の見付け方向壁部22bには、戸先框22の長手方向における中央より僅かに下側に、引手24が嵌合される開孔としての嵌合孔22dが設けられている。嵌合孔22dは、框体21の室内側の空間に臨む部位である室内側の見付け方向壁部22bと框体21の室外側の空間に臨む部位である室外側の見付け方向壁部22bとの対向する位置に、同じ形状に形成されており、2つの嵌合孔22dにより戸先框22は見込み方向に貫通されている。
【0017】
戸先框22の内部に設けられる貫通防止部材30は、アルミニウム製であり、室内側の見付け方向壁部22bに設けられた嵌合孔22dと室外側の見付け方向壁部22bに設けられた嵌合孔22dにて貫通される空間を遮るように配置されている。
【0018】
貫通防止部材30は、室内側及び室外側の見付け方向壁部22bに設けられた嵌合孔22dより十分に広い面積を有する遮蔽部としての平板形状の遮蔽板部31と、遮蔽板部31の上端が見付け方向において2つに分割され、一方が室内側に、他方が室外側に折り曲げられている。図2、図3に示す例では、分割された部位の戸先側が室外側に向かって突出するように折り曲げられて一方側折曲部としての外側折曲部32を形成し、召合せ側が室内側に向かって突出するように折り曲げられて他方側折曲部としての内側折曲部33を形成している。ここで、外側折曲部32及び内側折曲部33が当接部に相当する。
【0019】
外側折曲部32の見付け方向(框体の見付け方向)の幅と、内側折曲部33の見付け方向の幅とを足した寸法(幅)は、戸先框22に設けられた嵌合孔22dの見付け方向の幅より大きくなるように形成されている。また、貫通防止部材30を中空部22a内に配置する前の状態において、外側折曲部32の室外側の縁32aと内側折曲部33の室内側の縁33aとの距離は、戸先框22が有する中空部22aの見込み方向の幅、すなわち、見付け方向壁部22bの間隔より僅かに大きく形成されている。ここで、見付け方向壁部22bの内面が中空部22aを形成し互いに対向する一対の内面に相当し、当接部の一対の内面と交差する方向における幅が、通防止部材30を中空部22a内に配置する前の状態における外側折曲部32の室外側の縁32aと内側折曲部33の室内側の縁33aとの距離に相当する。
【0020】
貫通防止部材30の戸先框22への取り付けは、図4に示すように、治具50を用いて行われる。
【0021】
治具50は、断面形状が正方形状をなす角材で形成されており、治具50の長手方向におけるほぼ半分より先端側は、正方形状をなす角材の厚みが後端側より薄く形成されている。治具50の先端側の断面は、戸先框22の中空部22aより僅かに小さな長方形状をなしている。このため、治具50は長手方向におけるほぼ中央に段部51が形成されており、先端側が戸先框22の中空部22aに挿入されると、段部51が戸先框22の小口22eに当接されるように形成されている。
【0022】
また、治具50の先端には、長方形状の断面における短辺方向の中央に長辺方向に沿ってスリット52が形成されている。スリット52の深さ(戸先框22の長手方向の深さ)は、貫通防止部材30が有する遮蔽板部31の下端から外側折曲部32及び内側折曲部33に至る長さより浅く形成されている。このため、スリット52に遮蔽板部31を下端側から挿入しても治具50の先端50aが外側折曲部32及び内側折曲部33に接触しないように構成されている。
【0023】
貫通防止部材30を戸先框22に取り付ける場合には、まず、貫通防止部材30を治具50のスリット52に挿入する。
【0024】
次に、スリット52に挿入された貫通防止部材30の外側折曲部32及び内側折曲部33を、戸先框22の下端側の小口22eに接触させる。このとき、外側折曲部32の室外側の縁32aと内側折曲部33の室内側の縁33aとがいずれも戸先框22の小口22eに接触するように配置する。
【0025】
次に、治具50を戸先框22の長手方向に沿って戸先框22内に挿入する。このとき、貫通防止部材30は図5に示すように、外側折曲部32及び内側折曲部33が、さらに押し曲げられつつ挿入されていく。このとき、戸先框22の内面により外側折曲部32及び内側折曲部33が押圧された反力にて貫通防止部材30が戸先框22内に保持される。
【0026】
貫通防止部材30は、外側折曲部32及び内側折曲部33が、戸先框22に設けられた嵌合孔22dを通過した後に、治具50の段部51が戸先框22の小口22eに当接されて位置決めされる。そして、治具50を戸先框22から抜き取ると、貫通防止部材30の遮蔽板部31が、嵌合孔22dにより戸先框22が見込み方向に貫通しない位置に配置されている。
【0027】
最後に、戸先框22の室内側と室外側とから引手24が嵌合孔22dに嵌合されることにより引手24が戸先框22に取り付けられる。引手24が取り付けられた戸先框22を用いて障子20が組立てられ、組み立てられた障子20が枠体12に組み付けられて建具10が完成する。
【0028】
本実施形態の建具10によれば、框体21に設けられている嵌合孔22dにより框体21が見込み方向に貫通することを防止する金属製の貫通防止部材30の遮蔽部が、框体21内にて開孔と対向する位置に配置されているので、障子20が仕切る室内に臨む部位と室外に臨む部位とに嵌合孔22dが形成された框体21を有する障子20が、たとえ火災等により火炎に晒されたとしても、室内と室外との間に炎貫通部が生じることを防止することが可能である。また、貫通防止部材30は、框体21の中空部22aにおける互いに対向する一対の内面である見付け方向壁部22bに当接されているので、貫通防止部材30の取り付けが容易である。そして、貫通防止部材30は、一対の見付け方向壁部22bによって狭持される状態となる。
【0029】
また、外側折曲部32の室外側の縁32aと内側折曲部33の室内側の縁33aとの距離は、戸先框22が有する中空部22aの見込み方向の幅より僅かに大きく形成されているので、貫通防止部材30を框体21内に配置することにより、貫通防止部材30を框体21に確実に保持させることが可能である。
【0030】
また、外側折曲部32と内側折曲部33とは、一対の内面、すなわち、見付け方向壁部22bの内面に押圧された反力により保持されるので、貫通防止部材30を框体21の一対の見付け方向壁部22b間に、より強固に保持させることが可能である。このとき、図6に示すように、外側折曲部32と内側折曲部33との間の遮蔽板部31に切り欠き34を設けると、遮蔽板部31による撓みが生じやすくなるので、貫通防止部材30を戸先框22により挿入し易くすることが可能である。
【0031】
また、外側折曲部32と内側折曲部33の見付け方向の幅の合計は、嵌合孔22dの見付け方向の幅より広いので、貫通防止部材30を中空部材でなる戸先框22に、長手方向の端部となる小口22eから挿入し、嵌合孔22dを通過させても外側折曲部32及び内側折曲部33が嵌合孔22dに入り込むことはない。このため、貫通防止部材30を框体21の長手方向の端部の小口22eから挿入して、室内に臨む部位と室外に臨む部位とでなる見付け方向壁部22bに容易に狭持させることが可能である。
【0032】
上記実施形態においては、外側折曲部32と内側折曲部33の見付け方向の幅の合計を嵌合孔22dの見付け方向の幅より広くさせたが、外側折曲部32と内側折曲部33の見付け方向の幅をそれぞれ嵌合孔22dの見付け方向の幅より広くしてもよい。
【0033】
上記実施形態においては、貫通防止部材30を戸先框22の室内側の面と室外側の面とで保持する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図7、図8に示すように、外側折曲部32の室外側の縁32aと内側折曲部33の室内側の縁33aとの距離を、戸先框22が有する中空部22aの見込み方向の幅より狭くし、外側折曲部32及び内側折曲部33をそれぞれ見付け方向に延出させ、延出させた先端32b、33bを、戸先框22の中空部22aにおける戸先側の面と召合せ側の面とをなす見込み方向壁部22cに当接させて保持することも可能である。
【0034】
上記実施形態においては、貫通防止部材をアルミニウム製として説明したが、貫通防止部材の材質はアルミニウムに限らず、例えばステンレスや鉄等でも構わない。このとき、貫通防止部材の材質は、その融点が、アルミニウムの融点より高くても低くてもいずれであっても構わない。
【0035】
上記実施形態においては、戸先框22に設けられた開孔を引手24が嵌合される嵌合孔22dとしたが、これに限らず、例えばハンドルや施錠機構などを設けるために形成された開孔であっても構わない。また、開孔が形成されている框も戸先框に限るものではない。
【0036】
上記実施形態においては、障子20が仕切る2つの空間を室内側の空間と室外側の空間としたが、これに限るものではなく、例えば、通路の途中に設けられて手前側の空間と奥側の空間とを仕切る建具であっても構わない。
【0037】
上記実施形態においては、防火用の建具を例に挙げて説明したが、2つの空間を仕切る建具であれば防火用に限るものではない。
【0038】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10 建具、12 枠体、20 障子、21 框体、22 戸先框、22a 中空部、
22b 見付け方向壁部、22c 見込み方向壁部、22d 嵌合孔、
30 貫通防止部材、31 遮蔽板部、32 外側折曲部、32a 室外側の縁、
33 内側折曲部、33a 室内側の縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの空間を仕切るパネル体を有する建具であって、
前記パネル体を形成し、前記2つの空間のうちの一方の空間に臨む部位と他方の空間に臨む部位とに開孔が形成された中空部を有する金属製の框体と、
前記框体内に配置され、前記開孔により前記框体が見込み方向に貫通されることを防止する金属製の貫通防止部材と、
を有し、
前記中空部は、互いに対向する一対の内面を有しており、
前記貫通防止部材は、前記開孔と対向する遮蔽部と、前記中空部の一対の内面と当接する当接部と、を有していることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記当接部は、前記一対の内面にて押圧され、押圧された反力により前記中空部内に保持されることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記当接部は、前記一方の空間に臨む部位と前記他方の空間に臨む部位とでなる前記一対の内面に当接されており、前記框体の見付け方向における当該当接部の幅は、当該見付け方向における前記開孔の幅より広いことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
前記遮蔽部は、平板形状であり、
前記当接部は、前記遮蔽部から前記一方の空間側に向かって突出する一方側折曲部と、前記遮蔽部から前記他方の空間側に向かって突出する他方側折曲部と、で構成されていることを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231595(P2011−231595A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105687(P2010−105687)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】