説明

建材

【課題】
可視光型光触媒効果、消臭性、抗菌性などの機能性材料を用いるにあたり、機能性が効率的に発揮されるようにした壁材やタイルなどの建材を提供することを目的とする。
【解決手段】
含セラミックス機能性成分と、バインダーとを必須成分としたモルタルによるモルタル壁材やタイルなどの建材であって、
前記含セラミックス機能性成分は、機能性セラミックスを(a1)、(a1)以外のセラミックスを(a2)、有機質または(a1)以外の無機質の機能性物質を(a3)とした場合に、(a1)、(a1)+(a3)、(a2)+(a3)、または(a1)+(a2)+(a3)から選ばれたものであり、
前記機能性セラミックス(a1)(a2)のうちのいずれかは光触媒であり、また珪藻土を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能、消臭性、抗菌性、抗アレルギー性、断熱性、調湿性またはリラクゼーション性などの機能が効率的に得られるような特別の工夫を講じた壁材モルタルやタイルなどの建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、汚れの分解、消臭・脱臭、抗菌・殺菌、有害物質の除去などの機能を備えている。このため、建材であるタイルの表面に光触媒を線状或いは点状に設けて、タイルの地肌の質感ないし美感を生かしたものも提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、珪藻土に光触媒を加えてタイルに利用することはすでに周知となっているが、珪藻土は、塗り壁としての素質(性能)を有してはいるものの、珪藻土のみでは光触媒性の機能は期待できない。また、光触媒と珪藻土を混合した材料を用意しても、蛍光灯での光触媒効果や暗闇での抗菌効果、消臭性能は期待できない。
【0004】
そして、珪藻土と可視光型光触媒のそれぞれ単体物質は、壁用モルタルやタイル用に適用するという観点においては基礎的な第一段階の応用にとどまり、光触媒をより有効に利用するという発展的な第2段階にはまだ到達していないように見える。
【0005】
そのほか、光触媒性の観点から考察すると、壁土やタイルの光触媒効果を高めるべく微量の金属または金属酸化物を励起剤として併用する方法は有効な方法ではあるが、珪藻土の光触媒効果を十分に高めるためには、相応の量の光触媒性物質を併用しなければいけないところ、そのような量の併用によっても、光触媒性にはおのずから限界がある。
【0006】
珪藻土の可視光型光触媒性を高めるべく導電性物質を励起剤として併用する方法も、それなりに有効な方法である。しかしながら、導電性物質の併用による励起効果はそれほど大きいものではないし、コストが合わない。
【0007】
光触媒材料のほか、消臭性や抗微生物性を発揮する材料についても種々の提案がなされているが、やはり基礎的な段階の応用にとどまり、その有効利用の点で発展的な第2段階には達していないように見える。
【特許文献1】特開2000−262905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、可視光型光触媒効果を有する機能性材料、あるいは遠赤外線放射性、消臭性、抗菌性、抗アレルギー性、酸化性またはリラクシゼーション性を有する機能性材料などの機能性材料を用いるにあたり、機能性が効率的に発揮されるようにした壁材やタイルなどの建材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した目的を達成するために開発されたものであり、請求項1に記載のものは、含セラミックス機能性成分と、バインダーとを必須成分としたモルタルによるモルタル壁材やタイルなどの建材であって、
前記含セラミックス機能性成分は、機能性セラミックスを(a1)、(a1)以外のセラミックスを(a2)、有機質または(a1)以外の無機質の機能性物質を(a3)とした場合に、(a1)、(a1)+(a3)、(a2)+(a3)、または(a1)+(a2)+(a3)から選ばれたものであることを特徴とする建材である。
【0010】
請求項2に記載のものは、前記機能性セラミックス(a1)(a2)のうちのいずれかは光触媒であり、また珪藻土を含むことを特徴とする請求項1に記載の建材である。
【0011】
請求項3に記載のものは、前記機能性セラミックス(a1)(a2)のうちのいずれか光触媒が可視光型光触媒であることを特徴とする請求項2に記載の建材である。
【0012】
請求項4に記載のものは、本体部とその表面に形成した表面部とを有し、表面部は光触媒を含み、本体部の少なくとも一部は消臭、抗菌性を有する銀が含まれて構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の建材である。
【0013】
請求項5に記載のものは、前記含セラミックス機能性成分に、他の機能として遠赤外線放射性、マイナスイオン発生性などを有する含セラミックス機能性成分を加えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の建材である。
【0014】
請求項6に記載のものは、光触媒機能を有する含セラミックス機能性成分が酸化チタンおよびその励起剤からなり、かつ該励起剤が銀や銅などの金属物質およびその酸化物を併用したものからなることを特徴とする請求項5に記載の建材である。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、モルタル組成物が含セラミックス機能性成分であるので、機能を十分に発揮させることができ、また、その機能を持続させることができる。
そして、機能性セラミックス(a1)(a2)のうちいずれかが光触媒であり、また珪藻土を含むと、珪藻土が吸着した汚れや臭いを光触媒が分解することになり、永続的なセルフクリーニング効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は光触媒珪藻土モルタルの(イ)平面図と(ロ)断面図である。
まず、モルタル組成について説明する。
本発明においてはモルタル組成物として、含セラミックス機能性成分(A)とバインダー(B)とを必須成分とする組成物を用いる。
【0017】
含セラミックス機能性成分(A)としては、機能性セラミックスを(a1)、(a1)以外のセラミックスを(a2)、有機質または(a1)以外の無機質の機能性物質を(a3)とした場合に、(a1)、(a1)+(a3)、(a2)+(a3)、(a1)+(a2)+(a3)から選ばれたものが用いられる。
【0018】
機能性セラミックス(a1)としては、例えば、可視光型光触媒性を有するセラミックスを挙げることができる。また、光触媒機能を有する機能性セラミックス(a1)の代表例としては、チタンアパタイトを挙げることができる。なお、珪藻土単独では光触媒機能がないので、チタンアパタイトと併用する。ここで励起剤としては、銀または銅の金属またはそれらの酸化物が代表的なものとしてあげられるが、そのどちらか一方ではなお励起作用が必ずしも十分ではないので、アパタイト物質と励起剤とを併用することが望ましい。
【0019】
光触媒の粒度はできるだけ細かいほうが好ましい。具体的には、平均粒子径で20μm以下、通常は10μm以下、さらには5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下というように小さいほど好ましく、特に1μm未満のサブミクロンオーダーとすることが好ましい。下限については限定はないものの、0.1μmのものとすることも容易である。
【0020】
励起剤のうち金属物質の具体例としては、銀、銅、錫、鉄、コバルトのような物質を挙げることができる。
【0021】
導電性物質の具体例としては、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、ベリリウム等の金属(合金を含む)系の導電性物質や、カーボンブラック、炭素繊維等のカーボン系の導電性物質を挙げることができる。そして、金属酸化物や金属塩であっても、ITO、酸化インジウム、酸化スズ、チタン酸バリウムのように導電性を有するものは、導電性物質として使用可能である。
【0022】
励起剤としての金属物質と導電性物質との比率は、広い範囲から選択することができるが、両者の使用比率を、重量比で、20:1〜1:2、殊に15:1〜1:1、さらには10:1〜2:1に設定することが好ましい。このような範囲において両者の併用効果がもっとも顕著に発揮されるからである。
【0023】
珪藻土と励起剤(金属物質および導電性物質)との比率は、両者の合計量を100重量%とするとき、珪藻土を20〜95重量%(殊に30〜90重量%)、励起剤を80〜5重量%(殊に70〜10重量%)とすることが一般的である。
【0024】
機能性セラミックス(a1)は、上述の光触媒機能を有するセラミックスのほか、遠赤外線放射性セラミックスであってもよい。
【0025】
一方、機能性セラミックス(a1)以外のセラミックス(a2)としては、次のようなものが例示できる。重複して掲載しているものもあるが、先ず、含水ケイ酸ゲルを経て得られるシリカゲルを挙げることができ、次に、アルミナゾルやシリカゾルの様なゾル状または溶液状の無機質凝集剤、殊に、ゾル状の無水ケイ酸または溶液状のケイ酸塩(ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム)を挙げることができる。ゾル状の無水ケイ酸には、水を媒体とする通常のコロイダルシリカのほか、アルコール等の有機溶媒を媒体とするオルガノシリカゾルがある。これらを用いれば、凝集力を利用して有効成分との複合化を図ることができる。また、粘土鉱物、例えば、カオリン、ベントナイトなどでもよい。酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化銅(殊に酸化第一銅)などの酸化物でもよい。さらには、水酸化物、例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガンなどの水酸化物でもよい。ミョウバンなどの複合酸化物、窒化物(窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等)、炭化物(炭化ケイ素、炭化ホウ素等)、ホウ化物でもよい。さらに、ケイ酸の多価金属塩、例えば、ケイ酸のアルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩などでもよいし、ケイ酸のアルカリ金属塩、例えば、ケイ酸のアルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩などでもよい。水を吸って膨潤する性質を有する粘土鉱物、例えば、セピオライト、バーミキュライト、ベントナイト、セリサイト粘土などを用いることもできる。これらの中では、特異な繊維状構造を有するセピオライトが特に重要である。珪藻土は勿論のこと、ゼオライト、クリストバライト、タルクでもよいし、天然マイカ、例えば、絹雲母(セリサイト)、白雲母(マスコバイト)、金雲母(フロゴパイト)、フッ素金雲母、着色元素が結晶中に配位した着色マイカ、雲母チタン、紫外線吸収マイカなどでもよい。光触媒酸化チタンなどのセラミックス系の無機質光触媒でもよい。
【0026】
有機質または(a1)以外の無機質の機能性物質(a3)のうち、(a1)以外の無機質の機能性物質としては、銅塩(殊に第一銅塩)、リン酸、硫酸、賞賛、炭酸などの無機酸の多価金属縁(アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガン等)やアルカリ金属塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のフッ化物やケイフッ化物を挙げることができる。ただし、セラミックス(a2)と区別しがたいものもある。
【0027】
有機質または(a1)以外の無機質の機能性物質(a3)のうち、有機質の機能性物質としては、消臭性、抗菌性、抗アレルギー性、酸化性またはリラクシゼーション性を有するものが挙げられる。消臭性は、脱臭性、悪臭消去性、有毒ガス成分除去性を包含し、抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウイルス性を包含し、リラクシゼーション性は、リラックス感、ヒール感(癒し感)、快適感、快活感(高揚感)、爽快感、清涼感、健康感などを包含するものとする。有機質の機能性物質は、動植物または微生物由来の有効成分または合成によるこれと同等の有効成分であることが好ましい。
【0028】
有機質の機能性物質としては、例えば、カテキン類、サポニン類、茶葉粉末、茶葉抽出物、タンニン(酸)、カフェイン、メチルカテキンがある。
【0029】
次に、バインダー(B)について説明する。
バインダー(B)としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、セルロース系高分子、各種エマルジョン系バインダー、各種水溶性高分子系バインダー、各種ゴム系またはエラストマー系バインダーをはじめとする種々の樹脂が用いられる。これらの中では、硬いバインダーよりも、柔軟な印刷膜を与えるバインダーの方が光触媒効果が大きくなる傾向がある。したがって、架橋タイプのバインダーよりも、非架橋タイプのバインダーのほうが有利であり、架橋タイプのバインダーを用いるときは、架橋点が過度に大にならないようにする方が好ましい。バインダー(B)としては、アルミナゾルやシリカゾルのような無機質系のバインダーも使用可能であり、このときの無機質系のバインダーは先に述べた機能性セラミックス(a1)以外のセラミックス(a2)と重複することがある。
【0030】
次に、溶媒について説明する。
モルタル組成物は、通常は適度の水系溶媒を含む。溶媒としては、水、有機溶剤、水−有機溶剤混合溶媒が用いられる。ここで有機溶剤としては、アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、含窒素溶剤、含ハロゲン溶剤をはじめとする種々の有機溶剤が、1種または2種以上を混合して用いられる。ただし、活性エネルギー線硬化型のモルタルの場合には、溶媒の使用を省略するか、溶媒の使用をごく少量にとどめることもできる。
【0031】
モルタル組成物の調製にあたっては、上記の各成分のほか、着色剤(顔料や染料)、フィラー、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、スリッピング剤、色別れ防止剤、増粘剤、チクソトロピー性調整剤、紫外線吸収剤、乾燥促進剤などの助剤または添加剤を適宜配合することができる。なお、顔料として導電性物質を用いたときは、珪藻土の励起剤としての役割も果たすことになる。
【0032】
(モルタル組成物の処方)
モルタル組成物における各成分の配合割合については、各成分の種類によっても異なるので一概には決められないが、含セラミックス機能性成分(A)とバインダー(B)との合計量を100重量%とするとき、含セラミックス機能性成分(A)が例えば99〜20重量%(殊に97〜30重量%、さらには95〜40重量%)、バインダー(B)が例えば1〜80重量%(殊に3〜70重量%さらには5〜60重量%)とすることが多い。
【0033】
モルタル組成物の粘度は、塗り壁施工に供する関係上、通常は数百〜数千cps/20℃程度の範囲から選択され、特に200〜1000cps/20℃程度の範囲から選択することが多い。水などの溶媒の使用量は、このような粘度も考慮して定められる。
【0034】
(モルタル組成物)
本発明における塗り壁のモルタル組成物は、コンクリートまたは合板系対象物を対象とする。対象物は、モルタル組成物の部分が存在すれば、全体に限らず一部分でもよい。
【0035】
モルタル組成物の代表例は、珪藻土である。そのような三次元網目状の粘土鉱物は、例えば、溶媒に溶解しない高分子Xと溶媒に溶解し得る高分子または非高分子物質Yとの組成物を用いて、任意の形状に成形した後、Yの少なくとも一部を適当な溶媒を用いて溶解除去する方法などにより製造することができる。高分子としては多種のものを適宜用いることができる。
【0036】
繊維絡合体の例は、不織布、麻、ワラ、綿状物、紙、ガラス繊維などである。繊維の太さ(繊度)は任意であり、超極細のものであってもよい。
【0037】
モルタル組成物は、その少なくとも表面側が可視型光触媒(特にアパタイト系)、または繊維絡合体でできていればよい。
【0038】
そのような構成の一例は、建材の一種であるモルタル対象物1が表面部1aと本体部1bとからなり、その少なくとも表面部1aは、光触媒を有する珪藻土で構成され、その少なくとも本体部1bの少なくとも一部は、かならず珪藻土で構成されているものである。図1は、二層構造を形成した光触媒珪藻土モルタル対象物1の構造の代表的な一例を示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は縦断面図である。図中、1aは表面部、1bは本体部である。パターンとしては、円形のドット上のパターンを代表例として示してある。
【0039】
光触媒珪藻土モルタル1の少なくとも表面部1aは光触媒珪藻土で構成され、モルタル組成物は光触媒珪藻土モルタル1の表面層を構成しており、光触媒珪藻土モルタルの内面組織に厚みを確保して調湿性、断熱性、遮音性など必要機能を保持させるための珪藻土組成物からなる下地モルタルが配される。なお、一般の珪藻土は、これを最小厚にまで押圧してから押圧を解除したときに直ちに(例えば1秒以内に)元の厚みにまで回復する。一方、低反発性を有する光触媒珪藻土は、例えば50mm厚みのものを最小厚にまで押圧してから押圧を解除したときに、元の厚みにまで回復するのに数秒から数10秒(例えば2〜40秒、殊に3秒から30秒)を要するような反発性を有する。
【0040】
建材の一種である光触媒珪藻土タイルは、平面的な形状のものであってもよく、任意の立体的な形状のものであってもよい。そして、この光触媒珪藻土タイルの用途例は、玄関のポーチ、台所、リビング、浴室の壁やその天井材料に適している。
【0041】
次に、光触媒珪藻土塗り壁について説明する。
本発明においては、上記のモルタル組成物の塗り壁工法による壁材と、上記の光触媒珪藻土タイルは、いずれも用途や目的、主観でパターン状に形成する。モルタル塗り壁工法としては、一般的な均一コテ塗りのほか、模様を入れたり粒状の骨材を入れたりして表面状態の異なる壁材やタイルを作製することができ、これにより目的とする壁材が得られる。1回のモルタル施工で所期の付着量または所期の厚みが得られないときは、必要回数重ね刷りすることができる。ただし、乾燥しないうちに重ねる必要がある。
【0042】
次に、光触媒珪藻土モルタルの積層および塗り壁の例について説明する。
図2は、光触媒珪藻土モルタル1の積層および塗り壁の例を模式的に示した説明図であり、(イ)平面図と(ロ)縦切断端面図で示してある。積層としては、二層のパターンを代表例として図示してある。光触媒珪藻土モルタル1を単体にて施工してもよいが、光触媒珪藻土モルタル1が薄手の場合に二層形成してもよい。具体的には、図2に示すように、薄手の光触媒珪藻土モルタル1からなる表面部1a上にパターンを形成した後、これを厚手の角形断面の本体部1bに接着積層してもよい。なお、本体部1b上にガラス繊維メッシュ1cを敷設し、その上に表面部1aを形成してある。また、本体部1bと、施工対象である既存の壁材(コンクリート、石膏ボード等)1′との間に防水層を設けてもよい。
さらに、薄手の多孔質系対象物からなる表面部上にパターンを形成した後、これを厚手の雲形断面の多孔質系対象物からなる本体部に接着積層してもよい。
【0043】
図3は、光触媒珪藻土タイル2の例を示す説明図であり、(イ)は光触媒珪藻土タイルの平面図、(ロ)はその下に珪藻土質タイル3を形成したことを示す断面図である。
【実施例】
【0044】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。
実施例1
原料として、次のものを準備した。
・珪藻土:平均粒子径が3μmの珪藻土。
・励起剤:平均粒子径が3μmの銀、平均粒子径が1μmのアルミニウム粉末、平均直径が0.5μm、アスペクト比が4の炭素繊維微粉。
・バインダー:ポリエステル系バインダー、シリコーン系バインダー、ビニル系バインダー、ウレタン系バインダー、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、フェノール系バインダー。
・顔料(着色剤):ブルー顔料、イエロー顔料、ピンク顔料、シルバー顔料、ブラック顔料。
【0045】
(多孔質系対象物の準備)
多孔質系対象物として、厚み5mmの連続気泡を有するポリウレタンシート(三次元網目状の発泡体)を準備した。
【0046】
(光触媒効果の測定)
以下においては、分光光度計(日立電子株式会社製)用いて、試験体粉末または構造体を測定機から一定距離(10cmまたは5cm)に置き、無風の専用測定室において、18℃、45%RHの条件にて、光触媒効果を測定した。
【0047】
(予備的実験1/原料粉体の光触媒効果)
原料として用いた粉体状の珪藻土の光触媒効果は、次の通りだった。測定機フィルターは、300×300×5mmにおける60分後のアンモニア消臭率。
・珪藻土: 36%
・光触媒: 82%
・光触媒型珪藻土:62%
【0048】
(予備的実験2/混合粉体の光触媒効果)
珪藻土と光触媒との種々の割合の混合粉体につき、光触媒効果を測定した。結果を表1に示す。「ブランク」は大気中での測定値である。
【0049】
光触媒を、予め、試料のない恒温恒湿状態で60分間運転した。供試体の粉体を100g秤量したものをガラス製試験管に入れ、UVランプの測定用シリンダー前面10cmに設置し、シリンダー内に吸引して捕集した空気に電気的な負荷を加えて、その抵抗値から、空気中に含まれている光触媒の効果を測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から、珪藻土に光触媒を混合した混合粉体は、光触媒効果が大になることがわかる。
【0052】
(光触媒珪藻土モルタルの光触媒効果/その1)
珪藻土80重量%と光触媒20重量%との混合物を30重量部、ブルー顔料(コバルトブルー)を6重量部含み、表2のポリエステル系バインダーを35重量部含み、かつ溶媒として上述の混合溶媒を用いたモルタル組成物を調製し、上述のポリウレタン発泡シート上に施工して、(3回重ね刷り、厚みは重量から測定して3mm相当)、モルタルを得た。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
(光触媒珪藻土タイルの光触媒効果/その2)
珪藻土80重量%とモナズ石20重量%との混合物を0〜50重量部、ブルー顔料(コバルトブルー)を6重量部含み、ポリエステル系バインダーを35重量部含み、かつ溶媒として上述の混合溶媒を用いたモルタル組成物を調製し、上述のポリウレタン発泡シート上に施工して(3回重ね刷り、厚みは重量から測定して3mm相当)、モルタル構造体を得た。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
(光触媒珪藻土モルタルの光触媒効果/その3)
珪藻土80重量%と光触媒20重量%との混合物を30重量部または40重量部、各種の色の顔料を6重量部含み、ポリエステル系バインダーを35重量部含み、かつ溶媒として上述の混合溶媒を用いたモルタル組成物を調製し、上述のポリウレタン発泡シート上に施工して(3回重ね刷り、厚みは重量から測定して3mm相当)、硬化体を得た。結果を表4に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
上記において、イエロー顔料はチタン化合物系、ピンク顔料はクロム・鉄化合物系、ブルー顔料はコバルトブルー(CoO・nAlO)、シルバー顔料はアルミニウム粉、ブラック顔料はカーボンブラックである。
【0059】
表3と表4の対比から、シルバー顔料(アルミニウム粉)とブラック顔料(カーボンブラック)とにおいては、顔料併用のときに相乗効果が示されている。このことから、シルバー顔料とブラック顔料とは、着色料としての役割のほかに、励起剤ないし励起補助剤の役割を果たしていることが判明した。
【0060】
(光触媒珪藻土モルタルの光触媒効果/その4)
上記の結果を踏まえ、励起剤として、銀と共に金属系またはカーボン系の物質を併用したときの効果を確認するために、次の実験を行った。
【0061】
すなわち、珪藻土80重量%と光触媒20重量%との混合物を40重量部、シルバー顔料を6重量部含み、アルミニウム系フィラーまたは/およびカーボン系フィラーを後述の量含み、ポリエステル系バインダーを35重量部含み、かつ溶媒として上記の混合溶媒を用いたモルタル組成物を調製し、上述のポリウレタン発泡シート上にドット状に施工して(3回重ね刷り、厚みは重量から測定して3mm相当)、硬化体を得た。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
表5から、励起剤としては、銀と共に、金属系またはカーボン系のフィラーを併用することが望ましく、特にカーボン系のフィラーの併用は相乗効果が大きく、さらには、金属系およびカーボン系のフィラーの双方を併用することが相乗効果が大きいことがわかる。
【0064】
(光触媒珪藻土モルタルの光触媒効果/その5)
施工厚みによる塗布法との差異があるかどうかを見るため、上述の表5の実験において、ロールコーターによる塗布を行った場合についても実験を行った。
【0065】
すなわち、珪藻土80重量%と光触媒20重量%との混合物を40重量部、シルバー顔料を6重量含み、アルミニウム系フィラーを4重量部、カーボン系フィラーを4重量部含み、ポリエステル系バインダーを35重量部含み、かつ溶媒として上記の混合溶媒を用いたモルタル組成物を調製し、上述のポリウレタン発泡シート上に施工して(3回重ね刷り、厚みは重量から測定して3mm相当)硬化体を得た。
ロールコーターによる塗布については、塗布厚みが3mmになるようにした。
その結果、ロール施工の場合のアセトアルデヒドに対する光触媒性は40〜50%であるのに対し、コテ塗りの場合には60〜70%であり、前者のほうが付着面積が小さいにもかかわらず良好な結果が得られた。
【0066】
(他の作用効果)
機能性セラミックス(a1)として光触媒性セラミックスを用いる場合、光触媒珪藻土モルタル1がポリウレタンのように自己臭を有するときであっても、その自己臭が消失するという予期せぬ副生効果が奏された。
【0067】
処方1:
珪藻土、シルバー顔料、アルミニウム系フィラー、カーボン系フィラー、ポリエステル系バインダーを重量比で32:8:6:4:4:35の割合となるように含み、かつ溶媒として実施例1の混合溶媒を用いたモルタル組成物。
【0068】
処方2:
遠赤外線放射性セラミックスを40部、ポリエステル系バインダーを35重量%含み、かつ溶媒として実施例1で述べた混合溶液を用いたモルタル組成物。
【0069】
実施例2
(光触媒珪藻土タイルの準備)
光触媒珪藻土タイルとして、表面部用の厚み1mmの表層を有する陶器質レンガ(各面がほぼ六角形、五角形および四角形の三次元網目状構造を有する発泡体)と、厚み約2mmのナイロンプレートとの2種を準備した。また、本体部用の陶器質タイルを準備した。後者のタイルは、最薄部で6mm、最厚部で7mmの厚みを有し、最薄部および最厚部で最小厚にまで押圧してから押圧を解除したときに、いずれも元の厚みにまで回復するのに約15秒を要するものであった。
【0070】
(印刷体の製造)
上記の表面部用のタイルまたはプレートに、下記の処方のモルタル組成物を施工して(3回重ね刷り、厚みは重量から測定して3mm相当)、印刷体を得た。施工の中心間距離は10mmとした。タイルのパターンを形成した部分の領域に占めるパターン部分の面積割合は、約20%に設定してある。ついで、パターンを形成した表面部用の部材を、本体部用の部材をくるむように接着剤にて接着積層して、タイルまたは内装材を作成した。
【0071】
(モルタル組成物の処方)
処方1:
珪藻土、光触媒、シルバー顔料、アルミニウム系フィラー、カーボン系フィラー、茶由来の純度30重量%のカテキン、ポリエステル系バインダーを重量比で32:8:6:4:4:35の割合となるように含み、かつ溶媒として実施例1の混合溶媒を用いたモルタル組成物。
【0072】
処方2:
光触媒、茶由来の純度30重量%のカテキン、シリカ分40重量%と水60重量%とからなるコロイダルシリカ、粉砕シリカを10:40:40:10になるように混合し、4流体ノズルより噴射して一挙に乾燥粉末を得た後、該粉末とポリエステル系バインダーとを重量比で54:35の割合で含みかつ溶媒として実施例1の混合溶媒を用いたモルタル組成物。
【0073】
処方3:
光触媒、シリカ分40重量%と水60重量%とからなるコロイダルシリカを40:5:40になるように混合し、4流体ノズルより噴射して一挙に乾燥粉末を得た後、該粉末とポリエステル系バインダーとを重量比で54:35の割合で含みかつ溶媒として実施例1の混合溶媒を用いたモルタル組成物。
【0074】
処方4:
溶媒抽出法により得たジンジャー抽出物、酸化第一銅、珪藻土、光触媒、固形分40%の珪酸ソーダ水溶液、ゼオライト微粉、ポリエステル系バインダーを重量比で5:10:20:5:15:10:40の割合になるように含み、かつ溶媒として実施例1の混合溶媒を用いたモルタル組成物。
【0075】
(官能試験)
上記のモルタルやタイル空間に一晩居住したときのリラクシゼーション性を、男女各10名、計20名のパネラー(年代は10代から70代まで)により次の基準で判断してもらった。
【0076】
評価は、光触媒珪藻土を設けないクロス貼り壁を対照例とし、その対照例に比し、効果が感じられる場合を3点、ごくわずかに感じられる場合を1点、効果が感じられない場合を0点とした。かえって悪化する場合については、その度合いに応じて、−1点、−2点、−3点としたが、マイナス評価の事例はなかった。結果を表6に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
以上説明したように、光触媒珪藻土が塗り壁またはタイルからなる機能性材料であって、その上にモルタル組成物が特定の含セラミックス機能性成分(A)とバインダー(B)とを必須成分とするものであることは、作用効果の点で次のように有利である。
1.モルタル組成物が含セラミックス機能性成分(A)であることにより、機能が持続する。
2.施工方法によるパターン施工であることにより、通常のコーティング法(ロールコーティング、ドクターナイフコーティング、刷毛塗り、ディッピング等)や前面印刷法に比し、モルタル組成物の使用量が少なくて済む上、光触媒珪藻土全体としての物理的機能が損なわれにくい。
3.セラミックス成分を含む施工部のパターンにより、他の部分に比し施工部の高度を高くすることができるので、身体に接触ないし近接する使い方をする場合、同時に指圧効果を発揮させることができる。
4.身体に接触ないし近接する使い方をする場合、必要部位における光触媒珪藻土部の配置や施工厚みを自在に設定できる。
5.エアコンディショナや空気清浄機などに装備するフィルタのような室内または車内環境の改善を図る使い方をする場合、所期の機能を発揮しながら、圧損の増大が少ない。
6.光触媒珪藻土構造体の少なくとも表面には光触媒の壁材であり、モルタル組成物は機能性材料の表面加工ができるため、光触媒珪藻土構造体の性質をそれほど損なうことなく必要量のモルタル組成物からなるドット形状またはそれに準じた形状のパターン状の施工部を形成することができる。しかも、施工部の面積の割には、浸入したモルタル組成物により実体的な表面積が大となるので、機能が十分に奏される。
7.機能性セラミックス(a1)として光触媒性セラミックスを用いるときは、採用している施工層が光触媒性の点で好ましいものとなり、コーティング法(塗布法)に比し一段と良好な結果が得られる上、塗り壁工法によれば多層印刷や版のメッシュの選択が自在であるため、光触媒効果を広い範囲で自在に設定することができる。また、励起剤として銀を使用するときも、その使用量の割には光触媒効果を効率的に生じさせることができる。特に導電性物質を併用したときには、同じだけの光触媒効果を生じさせるのに、金属材料の使用量を少なくすることができる。このように金属材料の使用量を少なくできることは、使用量をさらに少なくすることができるという利点もある。
8.含セラミックス機能性成分(A)として消臭性、抗菌性、抗アレルギー性、酸化性、リラクシゼーション性を有する成分を用いるときは、これらの機能が効果的に発揮され、かつその機能が持続する。
9.機能性セラミックス(a1)として光触媒性セラミックスを用いる場合は、モルタル対象物がポリウレタンのように自己臭を有するときであっても、その自己臭が消失するという予期せぬ副生効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】光触媒珪藻土モルタルの構造の代表的な一例を示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は縦断面図である。
【図2】光触媒珪藻土モルタルおよび施工例を模式的に示した説明図であり、(イ)は平面図、(ロ)は縦切断端面図である。
【図3】光触媒珪藻土タイル2の例を示す説明図であり、(イ)は光触媒珪藻土タイルの平面図、(ロ)はその下に珪藻土質タイル3を形成したことを示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 光触媒珪藻土モルタル
1a 表面部
1b 本体部
1c ガラス繊維メッシュ
1′ 既存の壁材
2 光触媒珪藻土タイル
3 珪藻土質タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含セラミックス機能性成分と、バインダーとを必須成分としたモルタルによるモルタル壁材やタイルなどの建材であって、
前記含セラミックス機能性成分は、機能性セラミックスを(a1)、(a1)以外のセラミックスを(a2)、有機質または(a1)以外の無機質の機能性物質を(a3)とした場合に、(a1)、(a1)+(a3)、(a2)+(a3)、または(a1)+(a2)+(a3)から選ばれたものであることを特徴とする建材。
【請求項2】
前記機能性セラミックス(a1)(a2)のうちのいずれかは光触媒であり、また珪藻土を含むことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記機能性セラミックス(a1)(a2)のうちのいずれか光触媒が可視光型光触媒であることを特徴とする請求項2に記載の建材。
【請求項4】
本体部とその表面の表面部とを有し、表面部は光触媒を含み、本体部の少なくとも一部は消臭、抗菌性を有する銀が含まれて構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の建材。
【請求項5】
含セラミックス機能性成分に、他の機能として遠赤外線放射性、マイナスイオン発生性などを有する含セラミックス機能性成分を加えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の建材。
【請求項6】
光触媒機能を有する含セラミックス機能性成分が酸化チタンおよびその励起剤からなり、かつ該励起剤が銀や銅などの金属物質およびその酸化物を併用したものからなることを特徴とする請求項5に記載の建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77554(P2006−77554A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266032(P2004−266032)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(303040242)株式会社グリーンジャパン (2)
【Fターム(参考)】