建物の温熱環境シミュレーション装置
【課題】簡単な操作で建物の各部屋ごとの冬季の温熱環境をシミュレーションすることのできる建物の温熱環境シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】建物の各部屋の情報を記憶するメモリ14〜18と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の冬期の日射取得係数を算出する演算制御装置20と、この演算制御装置20が算出した算出結果を表示する表示装置12とを備えた。
【解決手段】建物の各部屋の情報を記憶するメモリ14〜18と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の冬期の日射取得係数を算出する演算制御装置20と、この演算制御装置20が算出した算出結果を表示する表示装置12とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示手段に表示された間取り図の建物の温熱環境をシミュレーションする建物の温熱環境シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の性能評価である熱損失係数と夏期日射取得係数等を算出する建物の性能評価提示装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる建物の性能評価提示装置は、建物の開口部データや建物の寸法データなどに基づいて建物の熱損失係数と夏期日射取得係数等を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような建物の性能評価提示装置にあっては、1つの建物の熱損失係数と夏期日射取得係数を求めるものであり、建物の各部屋ごとの冬期の温熱環境をシミュレーションすることはできないという問題がある。
【0006】
この発明の目的は、簡単な操作で建物の各部屋ごとの冬期の温熱環境をシミュレーションすることのできる建物の温熱環境シミュレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、建物の各部屋の情報を記憶する記憶手段と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の冬期の日射取得係数を算出する算出手段と、この算出手段が算出した算出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、簡単な操作で建物の各部屋ごとの冬期の温熱環境をシミュレーションすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明に温熱環境シミュレーション装置の構成を示したブロック図である。
【図2】表示画面上に表示された間取り図を示した説明図である。
【図3】部屋の床面積,外壁面積,各開口面積と、熱貫通率,日射侵入率,方位係数等との対応関係を示した表である。
【図4】各部屋のQ値およびμ値を示した表である。
【図5】各部屋のQ値およびμ値を示したグラフである。
【図6】第2実施例の構成を示したブロック図である。
【図7】第3実施例の部屋の床面積,外壁面積,各開口面積と、熱貫流率,日射侵入率,方位係数等との対応関係を示した表である。
【図8】各部屋のQ値と夏期のμ値とを示した表である。
【図9】各部屋のQ値と冬期のμ値とを示した表である。
【図10】図8に示す表をグラフにしたものである。
【図11】図9に示す表をグラフにしたものである。
【図12】各種のサッシに対応した部屋の冬期の平均室温と夏期の平均室温とを示した表である。
【図13】6つの各地域の夏期方位係数と冬期方位係数とを示した表である。
【図14】標準的な部屋をそれぞれ異なる仕様で仕上げた場合のQ値とμ値をそれぞれ示した表である。
【図15】標準的な部屋のQ値,μ値の標準値を示す標準線を図10のグラフ上に示したものである。
【図16】標準的な部屋のQ値,μ値の標準値を示す標準線を図11のグラフ上に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明に係る建物の温熱環境シミュレーション装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
[第1実施例]
図1は、建物の温熱環境シミュレーション装置10の構成を示したブロック図である。この建物の温熱環境シミュレーション装置10は、キーボードやマウスなどからなる入力手段11と、液晶などの表示装置(表示手段)12と、作成した建物の間取り図を記憶するメモリ13と、建物の部屋の各種の大きさに応じた床,天井,外壁などのそれぞれの面積やそれぞれの大きさの部屋の気積や部屋に設ける各種の窓や引戸などの開口面積を記憶したメモリ(記憶手段)14と、各種の窓や引戸,外壁,天井,床等の熱貫流率(単位面積、単位時間、単位温度差当たりで移動する熱量)やその窓や引戸,外壁,天井,床等の日射侵入率(輻射熱の透過率)を記憶したメモリ(記憶手段)15と、窓や外壁等が設けられる方位に対応した方位係数や外気との接触度を示す係数を記憶したメモリ(記憶手段)16と、Q値である熱損失係数を演算する演算式やμ値である夏期日射取得係数を演算する演算式を記憶したメモリ(記憶手段)17と、各種のキッチン,玄関,階段,トイレ,洗面所や各種の居室空間などやドア,引戸,窓等の建具の平面図を示すデータや家具等の平面図を示すデータを記憶したメモリ18と、熱損失係数や夏期日射取得係数(特定季節の日射取得係数)などを演算して求めたり、メモリ18に記憶された各種のデータに基づいて間取り図を作成するための演算処理を行ったりする演算制御装置(演算手段)20等とを備えている。なお、Q値の単位はW/m2 ・Kであり、μ値は無次元、Kはケルビンである。
【0012】
演算制御装置20は、下記に示す演算式(1),(2)によってQ値やμ値を求める。
【0013】
Q=(Σki・Ai・Hi+0.35xV)/S …(1)
ただし、iは1からnまでの整数であり、kは壁や床や開口等の熱貫流率で、材質などによって異なり予め求められている値である。Aは壁や床や開口等の面積で予め求められている値である。Hは外気との接触度を示すものであり、外気に接触する外壁や開口などは「1」、床は「0.7」、隣の部屋に接触する壁は完全断熱として捉えその値は「0」である。xは換気回数であり、通常「0.5」である。Vは室の容積(気積)、Sは室の床面積である。
【0014】
μ=(Σηi・Ai・ν)/S …(2)
ただし、ηは日射侵入率で予め求められている値である。νは方位係数であり、方位によって予め定められた値である。
【0015】
この方位係数νは、例えば、図13の表に示すように、予め定めた6つの地域毎に方位によって定めた値であり、夏期方位係数と冬期方位係数とがある。図3の表の方位係数νは、IV地域の夏期方位係数を示す。
【0016】
なお、この実施例で作成される間取り図の建物は、建物ユニットで構成されるものであり、窓や引戸等の開口面積や各部屋の外壁,天井,床等の面積や部屋の気積等はすべて既知である。また、窓や引戸,外壁,天井,床等の材質も定められているので、熱貫流率kや日射侵入率ηも既知であり、方位係数も既知である。これら既知のデータが各メモリ14〜16に記憶されているものである。
[動 作]
次に、上記のように構成される建物の温熱環境シミュレーション装置10の動作について説明する。
【0017】
先ず、キーボードやマウスを操作して表示装置12の表示画面Gに例えば図2に示すように所望の間取り図を作成する。この間取り図は、既にメモリ13に記憶されている間取り図を読み出すものであってもよい。
【0018】
温熱環境シミュレーションを行う場合には、これを実行するボタン(図示せず)をクリックする。
【0019】
このクリックにより演算制御装置20は、表示画面に表示された間取り図の各部屋のデータ(情報)に対応して、各メモリ14〜16に記憶されている各部屋の窓や引戸等の開口面積、外壁,天井,床等の面積、各部屋の気積、その窓や引戸,外壁,天井,床等の熱貫流率およびその日射侵入率、窓や外壁等の方位係数や外気との接触度を示す係数等に基づいて、メモリ17に記憶された演算式により、温熱環境を示す熱損失係数(Q値)と夏期日射取得係数(μ値)を演算して求める。
【0020】
例えば、図2に示す1階の間取り図のLDKの部屋30のQ値およびν値の求め方の一例を以下に説明する。
【0021】
図3の表に示すように、部屋30の床面積と気積と、部屋30の外壁31〜34の面積と、北の窓40の開口面積と、東の勝手口41,引戸42,43のそれぞれの開口面積と、南の引戸44の開口面積と、部屋の天井の面積とがメモリ14に記憶されており、これら必要な面積を部屋30のデータ(部屋30を構成した各種のデータ)に基づいて演算制御装置20がメモリ14から読み出し、これら読み出した各面積のデータを図示しない内蔵メモリに記憶させる。なお、天井の面積は、2階の建物からはみ出る部分の面積である。
【0022】
さらに、演算制御装置20は、メモリ15から天井,外壁31〜34,窓40,勝手口41,引戸42,43,44等の熱貫流率kiや日射侵入率ηを読み出して内蔵メモリに記憶させ、部屋30のデータに基づいてメモリ16から係数Hiや方位係数νを読み出して内蔵メモリに記憶させる。
【0023】
演算制御装置20は、内蔵メモリに記憶されたそれぞれのデータに基づいて、天井,外壁31〜34,床,各開口40〜44のAi・ki・Hiを求めるとともに、天井,外壁31〜34,各開口40〜44のAi・ν・ηを求める。
【0024】
そして、演算制御装置20は、メモリ17に記憶した演算式(1)に基づいて部屋30のQ値である熱損失係数と、演算式(2)に基づいて部屋30のμ値である夏期日射取得係数を求める。この演算で求めた熱損失係数は3.01、夏期日射取得係数は0.078となる。
【0025】
なお、図3の表に示す「14.36」の値は演算式(1)の0.35xVの値であり、「97.00」の値は演算式(1)のΣki・Ai・Hiの値である。
【0026】
同様にして、演算制御装置20は、各部屋50〜54の熱損失係数および夏期日射取得係数を求めていく。すなわち、各部屋30,50〜54ごとに温熱環境をシミュレーションしていくことになる。このシミュレーションした結果の一例を図4の表に示す。なお、図4の表に示す「LDK」のQ値およびμ値は、図3の表に示す「LDK」のQ値およびμ値と異なる例を示した。
【0027】
このシミュレーションした結果は、例えば図5に示すように、温熱環境表示方法の一例として、横軸にQ値、縦軸にμ値を表すグラフ上に、各部屋30,50〜54の熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μの値をプロットしたグラフG1が例えば表示画面Gの下に表示される。この場合、例えば間取り図を縮小したり、この間取り図の代わりにグラフG1のみを表示したりする。
【0028】
このグラフG1から、各部屋30,50〜54の温熱環境すなわち熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μの状態が分かることになる。
【0029】
ここで、各部屋30,50〜54のQ値,μ値のバラツキが小さいほうが、各部屋30,50〜54の温熱環境は一定であることを示し、各部屋30,50〜54を移動した際に一定の体感を得ることができ好ましいものとなる。また、Q値が大きいほど熱損失が大きく冷え易い部屋を示し、μ値が大きいほど入射熱が多く、熱ごもりし易く暑くなり易い部屋を示す。
【0030】
したがって、Q値が例えば「3.0」以下、μ値が例えば「0.10」以下の範囲内に入っていれば、温熱環境のよい住み心地のよい部屋となり、さらに、Q値,μ値のバラツキが小さいほど温熱環境が一定であることを示すことになる。そして、これらのことが図5に示すグラフG1から一目で分かることになる。
【0031】
また、各部屋ごとの温度を予測する場合には、表示装置12の表示画面に表示されている予測温度ボタン(図示せず)をクリックすると、各部屋30,50〜54の冬期および夏期の予測温度が求められて、表示画面に表示される。
【0032】
この予測温度は、Q値およびμ値から求めるものであり、下記の(3)式により冬期の日平均内外温度差(1日の内外温度差の平均値)を求め、下記の(4)式により夏期の日平均内外温度差を求める。
【0033】
Δt[K]=熱取得[W/m2]/Q …(3)
熱取得は、晴天日の日平均のエネルギーであり、例えば20[W/m2]である。
【0034】
Δt[K]=日射受熱[W/m2]×μ/Q …(4)
日射受熱は、夏期の平均的な日射のエネルギーであり、予め求めておく。
【0035】
(3)式,(4)式から求めた温度差Δt[K]に、外気の温度を加算することにより、各部屋30,50〜54の冬期および夏期の予測温度を求める。
【0036】
このように、各部屋30,50〜54の冬期および夏期の温度をシミュレーションすることができるので、顧客の要望に応じたよりよい建物を提供することができることになる。
【0037】
ところで、(3)式および(4)式の演算式はメモリ17に記憶させておくものであり、日平均のエネルギーや平均的な日射のエネルギーの値は例えばメモリ16等に記憶させておき、演算制御装置20がメモリ16,17に記憶されたデータに基づいて各部屋30,50〜54の冬期および夏期の予測温度を求めていくものである。
【0038】
このように、ボタンをクリックするだけで、演算制御装置20が表示画面G上に表示された間取り図の各部屋30,50〜54ごとのQ値およびμ値や温度、すなわち温熱環境をシミュレーションしていくものであるから、その操作はいたって簡単である。
[第2実施例]
図6は第2実施例の建物の温熱環境シミュレーション装置100を示したものである。
【0039】
この第2実施例では、メモリ13〜18と演算制御装置20(図1参照)をサーバ101に設け、各家庭のパーソナルコンピュータ102によって温熱環境を第1実施例と同様にQ値,μ値や各部屋の温度をシミュレーションできるようにしたものである。
【0040】
上記の第1,第2実施例は、いずれも縦軸にμ値、横軸にQ値をとっているが、この逆であってもよく、また、Q値およびμ値を求めているが、どちらか一方だけを求めて、表示画面Gに表示するようにしてもよい。
[第3実施例]
図7に示す表は、図3の表に示したものの他に、冬期における天井,外壁31〜34,各開口40〜44の方位係数ν(w)を示したものであり、これら方位係数ν(w)は例えばメモリ16(図1参照)に記憶させておく。
【0041】
この第3実施例では、第1実施例と同様に、演算制御装置20(図1参照)によって、夏期および冬期の方位係数ν(w)をメモリ16から読み出して天井,外壁31〜34,各開口40〜44の夏期のAi・ν(s)・ηと冬期のAi・ν(w)・ηを求める。そして、演算制御装置20は、メモリ17に記憶した演算式(1)に基づいて部屋30のQ値である熱損失係数と、演算式(2)に基づいて部屋30の夏期日射取得係数(特定季節の日射取得係数)μ(s)と冬期日射取得係数(特定季節の日射取得係数)μ(w)を求める。
【0042】
ここで、μ値は一般に夏期日射取得係数を示すが、ここでは冬期日射取得係数も示すもとのとして扱う。
【0043】
同様にして、演算制御装置20は、各部屋50〜54(図2参照)の熱損失係数および夏期日射取得係数μ(s)と冬期日射取得係数μ(w)を求めていく。
【0044】
図8および図9に各部屋30、50〜54の熱損失係数および夏期日射取得係数μ(s)と、各部屋30、50〜54の熱損失係数および冬期日射取得係数μ(w)とを求めた結果の一例の表を示す。
【0045】
図10および図11は、図8に示す熱損失係数および夏期日射取得係数μ(s)の結果と、図9に示す熱損失係数および冬期日射取得係数μ(w)の結果を、温熱環境表示方法の一例として、グラフG2,G3として表示したものである。これらグラフは、横軸にQ値、縦軸にμ値をとり、各部屋30,50〜54の熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μ(s)や冬期日射取得係数μ(w)の値をプロットして表示したものである。これらグラフも第1実施例と同様に表示画面Gに表示する。
【0046】
これらグラフG2,G3から、各部屋30,50〜54の温熱環境すなわち熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μ(s)の状態と、熱損失係数Qおよび冬期日射取得係数μ(w)の状態とが分かることになる。
【0047】
そして、熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)に基づいて、例えば、部屋30の南の開口44の戸をシングルサッシにしたときの部屋30の冬期の予測温度と夏期の予測温度とを求めて画面Gに表示し、さらにシングルサッシからアルミペアサッシ、アルプラサッシ、樹脂サッシへと替えたときの部屋30の冬期の平均室温と夏期の予測平均室温とを求めて、図12に示すように画面G4に表示する。
【0048】
このように、シングルサッシ、アルミペアサッシ、アルプラサッシ、樹脂サッシへと替えたときの部屋30の冬期の予測平均室温と夏期の予測平均室温とを画面G4に表示することにより、客はサッシの種類の選択がし易くなる。他の部屋についても同様に表示する。
【0049】
なお、各部屋の平均室温は、メモリ15に記憶されたシングルサッシ,アルミペアサッシ,アルプラサッシ,樹脂サッシ等の日射侵入率と、熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)を基にして、例えば上記(4)式などにより求める。
【0050】
この第3実施例では、熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)を求めているが、熱損失係数Qと冬期日射取得係数μ(w)を求めてこれを表示するようにしてもよい。
[第4実施例]
図14に示す表は、標準的な部屋を設定した場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)を示したものである。
【0051】
標準的な部屋は、床面積=30m2(南6m×東5m)、
天井高=2.4m
開口率(開口面積/床面積)=30%
開口の方位比率(開口比率、南面積:他面積)=1:1
2Fの部屋(天井が熱境界)
と設定したものである。そして、図14の表の「Case5」は、次世代省エネ基準に規定される仕様の場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)の標準値を示す。なお、他の「Case1〜4,6」はその他のそれぞれ異なる仕様の場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)の値の一例をそれぞれ示す。
【0052】
そして、「Case5」の場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)の標準値を示す標準線L1〜L3を図15および図16に示すように、表示装置12(図1参照)の画面G2,G3に表示する。
【0053】
この画面G2,G3の標準線L1から右側へいくほど保温性が弱くなることを示し、標準線L1から左へいくほど保温性が強くなることを示す。また、画面G2の標準線L2より上にいくほど日射(暑さ)が大きくなることを示し、標準線L2より下にいくほど日射(暑さ)が小さくなることを示す。同様に、画面G3の標準線L3より上にいくほど日射(暖かさ)が大きくなることを示し、標準線L2より下にいくほど日射(暖かさ)が小さくなることを示す。
【0054】
また、標準線L1,L2によって画面G2をG2a〜G2dの4つの領域に分け、同様に標準線L1,L3によって画面G3をG3a〜G3dの4つの領域に分ける。
【0055】
そして、画面G2の領域G2aにある部屋は、「日中の日射を遮る工夫が必要です。」などのコメントを画面G2の領域G2a上に表示する。また、画面G2の領域G2bにある部屋は、「日中の日射を遮る工夫が必要です。」などのコメントを画面G2の領域G2b上に表示する。
【0056】
また、画面G2の領域G2cにある部屋は、「涼しく過ごすことができます。」などのコメントを画面G2の領域G2c上に表示する。
【0057】
画面G2の領域G2dにある部屋は、「積極的に窓を開けることが必要です。」などのコメントを画面G2の領域G2d上に表示する。
【0058】
同様に、画面G3の領域G3aにある部屋は、「暖かく過ごすことができます。」などのコメントを画面G3の領域G3a上に表示する。画面G3の領域G3b上にある部屋は、「夜室内の熱を逃がさない工夫が必要です。」などのコメントを画面G3の領域G3b上に表示する。
【0059】
画面G3の領域G3c上にある部屋は、「夜室内の熱を逃がさない工夫が必要です。」などのコメントを画面G3の領域G3c上に表示する。画面G3の領域G3d上にある部屋は、「日射を取り込む工夫が必要です。」などのコメントを画面G3の領域G3d上に表示する。
【0060】
この第4実施例によれば、画面G2,G3に標準線L1〜L3を表示してその画面G2,G3を4つの領域に分けたものであるから、各部屋がどの領域にあるかが分かり、夏は暑いのか涼しいのかや、冬は寒いのか暖かいのかが分かる。また、例えば部屋の床や壁などの仕上材等の材質を選択する場合にも、どの材質を選択すれば快適な居住空間を得ることができるかが分かり、快適な居住空間を得ることのできる住戸のプランを顧客に提案することができる。
【0061】
上記実施例は、いずれも表示装置12の表示画面Gに各部屋のQ値やμ値等を表示するようにしているが、例えば、横軸にQ値、縦軸にμ値を表すグラフ用紙(書式)上に各部屋のQ値,μ値などを印字して提示するようにしてもよい。
【0062】
この発明は、第1〜第4実施例に限定されるものではなく、種々設計変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 温熱環境シミュレーション装置
12 表示装置(表示手段)
13〜18 メモリ(記憶手段)
20 演算制御装置(演算手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示手段に表示された間取り図の建物の温熱環境をシミュレーションする建物の温熱環境シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の性能評価である熱損失係数と夏期日射取得係数等を算出する建物の性能評価提示装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる建物の性能評価提示装置は、建物の開口部データや建物の寸法データなどに基づいて建物の熱損失係数と夏期日射取得係数等を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような建物の性能評価提示装置にあっては、1つの建物の熱損失係数と夏期日射取得係数を求めるものであり、建物の各部屋ごとの冬期の温熱環境をシミュレーションすることはできないという問題がある。
【0006】
この発明の目的は、簡単な操作で建物の各部屋ごとの冬期の温熱環境をシミュレーションすることのできる建物の温熱環境シミュレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、建物の各部屋の情報を記憶する記憶手段と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の冬期の日射取得係数を算出する算出手段と、この算出手段が算出した算出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、簡単な操作で建物の各部屋ごとの冬期の温熱環境をシミュレーションすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明に温熱環境シミュレーション装置の構成を示したブロック図である。
【図2】表示画面上に表示された間取り図を示した説明図である。
【図3】部屋の床面積,外壁面積,各開口面積と、熱貫通率,日射侵入率,方位係数等との対応関係を示した表である。
【図4】各部屋のQ値およびμ値を示した表である。
【図5】各部屋のQ値およびμ値を示したグラフである。
【図6】第2実施例の構成を示したブロック図である。
【図7】第3実施例の部屋の床面積,外壁面積,各開口面積と、熱貫流率,日射侵入率,方位係数等との対応関係を示した表である。
【図8】各部屋のQ値と夏期のμ値とを示した表である。
【図9】各部屋のQ値と冬期のμ値とを示した表である。
【図10】図8に示す表をグラフにしたものである。
【図11】図9に示す表をグラフにしたものである。
【図12】各種のサッシに対応した部屋の冬期の平均室温と夏期の平均室温とを示した表である。
【図13】6つの各地域の夏期方位係数と冬期方位係数とを示した表である。
【図14】標準的な部屋をそれぞれ異なる仕様で仕上げた場合のQ値とμ値をそれぞれ示した表である。
【図15】標準的な部屋のQ値,μ値の標準値を示す標準線を図10のグラフ上に示したものである。
【図16】標準的な部屋のQ値,μ値の標準値を示す標準線を図11のグラフ上に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明に係る建物の温熱環境シミュレーション装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
[第1実施例]
図1は、建物の温熱環境シミュレーション装置10の構成を示したブロック図である。この建物の温熱環境シミュレーション装置10は、キーボードやマウスなどからなる入力手段11と、液晶などの表示装置(表示手段)12と、作成した建物の間取り図を記憶するメモリ13と、建物の部屋の各種の大きさに応じた床,天井,外壁などのそれぞれの面積やそれぞれの大きさの部屋の気積や部屋に設ける各種の窓や引戸などの開口面積を記憶したメモリ(記憶手段)14と、各種の窓や引戸,外壁,天井,床等の熱貫流率(単位面積、単位時間、単位温度差当たりで移動する熱量)やその窓や引戸,外壁,天井,床等の日射侵入率(輻射熱の透過率)を記憶したメモリ(記憶手段)15と、窓や外壁等が設けられる方位に対応した方位係数や外気との接触度を示す係数を記憶したメモリ(記憶手段)16と、Q値である熱損失係数を演算する演算式やμ値である夏期日射取得係数を演算する演算式を記憶したメモリ(記憶手段)17と、各種のキッチン,玄関,階段,トイレ,洗面所や各種の居室空間などやドア,引戸,窓等の建具の平面図を示すデータや家具等の平面図を示すデータを記憶したメモリ18と、熱損失係数や夏期日射取得係数(特定季節の日射取得係数)などを演算して求めたり、メモリ18に記憶された各種のデータに基づいて間取り図を作成するための演算処理を行ったりする演算制御装置(演算手段)20等とを備えている。なお、Q値の単位はW/m2 ・Kであり、μ値は無次元、Kはケルビンである。
【0012】
演算制御装置20は、下記に示す演算式(1),(2)によってQ値やμ値を求める。
【0013】
Q=(Σki・Ai・Hi+0.35xV)/S …(1)
ただし、iは1からnまでの整数であり、kは壁や床や開口等の熱貫流率で、材質などによって異なり予め求められている値である。Aは壁や床や開口等の面積で予め求められている値である。Hは外気との接触度を示すものであり、外気に接触する外壁や開口などは「1」、床は「0.7」、隣の部屋に接触する壁は完全断熱として捉えその値は「0」である。xは換気回数であり、通常「0.5」である。Vは室の容積(気積)、Sは室の床面積である。
【0014】
μ=(Σηi・Ai・ν)/S …(2)
ただし、ηは日射侵入率で予め求められている値である。νは方位係数であり、方位によって予め定められた値である。
【0015】
この方位係数νは、例えば、図13の表に示すように、予め定めた6つの地域毎に方位によって定めた値であり、夏期方位係数と冬期方位係数とがある。図3の表の方位係数νは、IV地域の夏期方位係数を示す。
【0016】
なお、この実施例で作成される間取り図の建物は、建物ユニットで構成されるものであり、窓や引戸等の開口面積や各部屋の外壁,天井,床等の面積や部屋の気積等はすべて既知である。また、窓や引戸,外壁,天井,床等の材質も定められているので、熱貫流率kや日射侵入率ηも既知であり、方位係数も既知である。これら既知のデータが各メモリ14〜16に記憶されているものである。
[動 作]
次に、上記のように構成される建物の温熱環境シミュレーション装置10の動作について説明する。
【0017】
先ず、キーボードやマウスを操作して表示装置12の表示画面Gに例えば図2に示すように所望の間取り図を作成する。この間取り図は、既にメモリ13に記憶されている間取り図を読み出すものであってもよい。
【0018】
温熱環境シミュレーションを行う場合には、これを実行するボタン(図示せず)をクリックする。
【0019】
このクリックにより演算制御装置20は、表示画面に表示された間取り図の各部屋のデータ(情報)に対応して、各メモリ14〜16に記憶されている各部屋の窓や引戸等の開口面積、外壁,天井,床等の面積、各部屋の気積、その窓や引戸,外壁,天井,床等の熱貫流率およびその日射侵入率、窓や外壁等の方位係数や外気との接触度を示す係数等に基づいて、メモリ17に記憶された演算式により、温熱環境を示す熱損失係数(Q値)と夏期日射取得係数(μ値)を演算して求める。
【0020】
例えば、図2に示す1階の間取り図のLDKの部屋30のQ値およびν値の求め方の一例を以下に説明する。
【0021】
図3の表に示すように、部屋30の床面積と気積と、部屋30の外壁31〜34の面積と、北の窓40の開口面積と、東の勝手口41,引戸42,43のそれぞれの開口面積と、南の引戸44の開口面積と、部屋の天井の面積とがメモリ14に記憶されており、これら必要な面積を部屋30のデータ(部屋30を構成した各種のデータ)に基づいて演算制御装置20がメモリ14から読み出し、これら読み出した各面積のデータを図示しない内蔵メモリに記憶させる。なお、天井の面積は、2階の建物からはみ出る部分の面積である。
【0022】
さらに、演算制御装置20は、メモリ15から天井,外壁31〜34,窓40,勝手口41,引戸42,43,44等の熱貫流率kiや日射侵入率ηを読み出して内蔵メモリに記憶させ、部屋30のデータに基づいてメモリ16から係数Hiや方位係数νを読み出して内蔵メモリに記憶させる。
【0023】
演算制御装置20は、内蔵メモリに記憶されたそれぞれのデータに基づいて、天井,外壁31〜34,床,各開口40〜44のAi・ki・Hiを求めるとともに、天井,外壁31〜34,各開口40〜44のAi・ν・ηを求める。
【0024】
そして、演算制御装置20は、メモリ17に記憶した演算式(1)に基づいて部屋30のQ値である熱損失係数と、演算式(2)に基づいて部屋30のμ値である夏期日射取得係数を求める。この演算で求めた熱損失係数は3.01、夏期日射取得係数は0.078となる。
【0025】
なお、図3の表に示す「14.36」の値は演算式(1)の0.35xVの値であり、「97.00」の値は演算式(1)のΣki・Ai・Hiの値である。
【0026】
同様にして、演算制御装置20は、各部屋50〜54の熱損失係数および夏期日射取得係数を求めていく。すなわち、各部屋30,50〜54ごとに温熱環境をシミュレーションしていくことになる。このシミュレーションした結果の一例を図4の表に示す。なお、図4の表に示す「LDK」のQ値およびμ値は、図3の表に示す「LDK」のQ値およびμ値と異なる例を示した。
【0027】
このシミュレーションした結果は、例えば図5に示すように、温熱環境表示方法の一例として、横軸にQ値、縦軸にμ値を表すグラフ上に、各部屋30,50〜54の熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μの値をプロットしたグラフG1が例えば表示画面Gの下に表示される。この場合、例えば間取り図を縮小したり、この間取り図の代わりにグラフG1のみを表示したりする。
【0028】
このグラフG1から、各部屋30,50〜54の温熱環境すなわち熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μの状態が分かることになる。
【0029】
ここで、各部屋30,50〜54のQ値,μ値のバラツキが小さいほうが、各部屋30,50〜54の温熱環境は一定であることを示し、各部屋30,50〜54を移動した際に一定の体感を得ることができ好ましいものとなる。また、Q値が大きいほど熱損失が大きく冷え易い部屋を示し、μ値が大きいほど入射熱が多く、熱ごもりし易く暑くなり易い部屋を示す。
【0030】
したがって、Q値が例えば「3.0」以下、μ値が例えば「0.10」以下の範囲内に入っていれば、温熱環境のよい住み心地のよい部屋となり、さらに、Q値,μ値のバラツキが小さいほど温熱環境が一定であることを示すことになる。そして、これらのことが図5に示すグラフG1から一目で分かることになる。
【0031】
また、各部屋ごとの温度を予測する場合には、表示装置12の表示画面に表示されている予測温度ボタン(図示せず)をクリックすると、各部屋30,50〜54の冬期および夏期の予測温度が求められて、表示画面に表示される。
【0032】
この予測温度は、Q値およびμ値から求めるものであり、下記の(3)式により冬期の日平均内外温度差(1日の内外温度差の平均値)を求め、下記の(4)式により夏期の日平均内外温度差を求める。
【0033】
Δt[K]=熱取得[W/m2]/Q …(3)
熱取得は、晴天日の日平均のエネルギーであり、例えば20[W/m2]である。
【0034】
Δt[K]=日射受熱[W/m2]×μ/Q …(4)
日射受熱は、夏期の平均的な日射のエネルギーであり、予め求めておく。
【0035】
(3)式,(4)式から求めた温度差Δt[K]に、外気の温度を加算することにより、各部屋30,50〜54の冬期および夏期の予測温度を求める。
【0036】
このように、各部屋30,50〜54の冬期および夏期の温度をシミュレーションすることができるので、顧客の要望に応じたよりよい建物を提供することができることになる。
【0037】
ところで、(3)式および(4)式の演算式はメモリ17に記憶させておくものであり、日平均のエネルギーや平均的な日射のエネルギーの値は例えばメモリ16等に記憶させておき、演算制御装置20がメモリ16,17に記憶されたデータに基づいて各部屋30,50〜54の冬期および夏期の予測温度を求めていくものである。
【0038】
このように、ボタンをクリックするだけで、演算制御装置20が表示画面G上に表示された間取り図の各部屋30,50〜54ごとのQ値およびμ値や温度、すなわち温熱環境をシミュレーションしていくものであるから、その操作はいたって簡単である。
[第2実施例]
図6は第2実施例の建物の温熱環境シミュレーション装置100を示したものである。
【0039】
この第2実施例では、メモリ13〜18と演算制御装置20(図1参照)をサーバ101に設け、各家庭のパーソナルコンピュータ102によって温熱環境を第1実施例と同様にQ値,μ値や各部屋の温度をシミュレーションできるようにしたものである。
【0040】
上記の第1,第2実施例は、いずれも縦軸にμ値、横軸にQ値をとっているが、この逆であってもよく、また、Q値およびμ値を求めているが、どちらか一方だけを求めて、表示画面Gに表示するようにしてもよい。
[第3実施例]
図7に示す表は、図3の表に示したものの他に、冬期における天井,外壁31〜34,各開口40〜44の方位係数ν(w)を示したものであり、これら方位係数ν(w)は例えばメモリ16(図1参照)に記憶させておく。
【0041】
この第3実施例では、第1実施例と同様に、演算制御装置20(図1参照)によって、夏期および冬期の方位係数ν(w)をメモリ16から読み出して天井,外壁31〜34,各開口40〜44の夏期のAi・ν(s)・ηと冬期のAi・ν(w)・ηを求める。そして、演算制御装置20は、メモリ17に記憶した演算式(1)に基づいて部屋30のQ値である熱損失係数と、演算式(2)に基づいて部屋30の夏期日射取得係数(特定季節の日射取得係数)μ(s)と冬期日射取得係数(特定季節の日射取得係数)μ(w)を求める。
【0042】
ここで、μ値は一般に夏期日射取得係数を示すが、ここでは冬期日射取得係数も示すもとのとして扱う。
【0043】
同様にして、演算制御装置20は、各部屋50〜54(図2参照)の熱損失係数および夏期日射取得係数μ(s)と冬期日射取得係数μ(w)を求めていく。
【0044】
図8および図9に各部屋30、50〜54の熱損失係数および夏期日射取得係数μ(s)と、各部屋30、50〜54の熱損失係数および冬期日射取得係数μ(w)とを求めた結果の一例の表を示す。
【0045】
図10および図11は、図8に示す熱損失係数および夏期日射取得係数μ(s)の結果と、図9に示す熱損失係数および冬期日射取得係数μ(w)の結果を、温熱環境表示方法の一例として、グラフG2,G3として表示したものである。これらグラフは、横軸にQ値、縦軸にμ値をとり、各部屋30,50〜54の熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μ(s)や冬期日射取得係数μ(w)の値をプロットして表示したものである。これらグラフも第1実施例と同様に表示画面Gに表示する。
【0046】
これらグラフG2,G3から、各部屋30,50〜54の温熱環境すなわち熱損失係数Qおよび夏期日射取得係数μ(s)の状態と、熱損失係数Qおよび冬期日射取得係数μ(w)の状態とが分かることになる。
【0047】
そして、熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)に基づいて、例えば、部屋30の南の開口44の戸をシングルサッシにしたときの部屋30の冬期の予測温度と夏期の予測温度とを求めて画面Gに表示し、さらにシングルサッシからアルミペアサッシ、アルプラサッシ、樹脂サッシへと替えたときの部屋30の冬期の平均室温と夏期の予測平均室温とを求めて、図12に示すように画面G4に表示する。
【0048】
このように、シングルサッシ、アルミペアサッシ、アルプラサッシ、樹脂サッシへと替えたときの部屋30の冬期の予測平均室温と夏期の予測平均室温とを画面G4に表示することにより、客はサッシの種類の選択がし易くなる。他の部屋についても同様に表示する。
【0049】
なお、各部屋の平均室温は、メモリ15に記憶されたシングルサッシ,アルミペアサッシ,アルプラサッシ,樹脂サッシ等の日射侵入率と、熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)を基にして、例えば上記(4)式などにより求める。
【0050】
この第3実施例では、熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)を求めているが、熱損失係数Qと冬期日射取得係数μ(w)を求めてこれを表示するようにしてもよい。
[第4実施例]
図14に示す表は、標準的な部屋を設定した場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)を示したものである。
【0051】
標準的な部屋は、床面積=30m2(南6m×東5m)、
天井高=2.4m
開口率(開口面積/床面積)=30%
開口の方位比率(開口比率、南面積:他面積)=1:1
2Fの部屋(天井が熱境界)
と設定したものである。そして、図14の表の「Case5」は、次世代省エネ基準に規定される仕様の場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)の標準値を示す。なお、他の「Case1〜4,6」はその他のそれぞれ異なる仕様の場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)の値の一例をそれぞれ示す。
【0052】
そして、「Case5」の場合の熱損失係数Qと夏期日射取得係数μ(s)および冬期日射取得係数μ(w)の標準値を示す標準線L1〜L3を図15および図16に示すように、表示装置12(図1参照)の画面G2,G3に表示する。
【0053】
この画面G2,G3の標準線L1から右側へいくほど保温性が弱くなることを示し、標準線L1から左へいくほど保温性が強くなることを示す。また、画面G2の標準線L2より上にいくほど日射(暑さ)が大きくなることを示し、標準線L2より下にいくほど日射(暑さ)が小さくなることを示す。同様に、画面G3の標準線L3より上にいくほど日射(暖かさ)が大きくなることを示し、標準線L2より下にいくほど日射(暖かさ)が小さくなることを示す。
【0054】
また、標準線L1,L2によって画面G2をG2a〜G2dの4つの領域に分け、同様に標準線L1,L3によって画面G3をG3a〜G3dの4つの領域に分ける。
【0055】
そして、画面G2の領域G2aにある部屋は、「日中の日射を遮る工夫が必要です。」などのコメントを画面G2の領域G2a上に表示する。また、画面G2の領域G2bにある部屋は、「日中の日射を遮る工夫が必要です。」などのコメントを画面G2の領域G2b上に表示する。
【0056】
また、画面G2の領域G2cにある部屋は、「涼しく過ごすことができます。」などのコメントを画面G2の領域G2c上に表示する。
【0057】
画面G2の領域G2dにある部屋は、「積極的に窓を開けることが必要です。」などのコメントを画面G2の領域G2d上に表示する。
【0058】
同様に、画面G3の領域G3aにある部屋は、「暖かく過ごすことができます。」などのコメントを画面G3の領域G3a上に表示する。画面G3の領域G3b上にある部屋は、「夜室内の熱を逃がさない工夫が必要です。」などのコメントを画面G3の領域G3b上に表示する。
【0059】
画面G3の領域G3c上にある部屋は、「夜室内の熱を逃がさない工夫が必要です。」などのコメントを画面G3の領域G3c上に表示する。画面G3の領域G3d上にある部屋は、「日射を取り込む工夫が必要です。」などのコメントを画面G3の領域G3d上に表示する。
【0060】
この第4実施例によれば、画面G2,G3に標準線L1〜L3を表示してその画面G2,G3を4つの領域に分けたものであるから、各部屋がどの領域にあるかが分かり、夏は暑いのか涼しいのかや、冬は寒いのか暖かいのかが分かる。また、例えば部屋の床や壁などの仕上材等の材質を選択する場合にも、どの材質を選択すれば快適な居住空間を得ることができるかが分かり、快適な居住空間を得ることのできる住戸のプランを顧客に提案することができる。
【0061】
上記実施例は、いずれも表示装置12の表示画面Gに各部屋のQ値やμ値等を表示するようにしているが、例えば、横軸にQ値、縦軸にμ値を表すグラフ用紙(書式)上に各部屋のQ値,μ値などを印字して提示するようにしてもよい。
【0062】
この発明は、第1〜第4実施例に限定されるものではなく、種々設計変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 温熱環境シミュレーション装置
12 表示装置(表示手段)
13〜18 メモリ(記憶手段)
20 演算制御装置(演算手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各部屋の情報を記憶する記憶手段と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の冬期の日射取得係数を算出する算出手段と、この算出手段が算出した算出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする温熱環境シミュレーション装置。
【請求項2】
建物の各部屋の情報を記憶する記憶手段と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の熱損失係数と冬期の日射取得係数とを算出する算出手段と、この算出手段が算出した算出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする温熱環境シミュレーション装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、下記の演算式(1),(2)を記憶し、
Q=(Σki・Ai・Hi+0.35xV)/S …(1)
ただし、Qは熱損失係数、iは1からnまでの整数、kは壁や床や 開口等の熱貫流率、Aは壁や床や開口等の面積、Hは外気との接 触度、xは換気回数、Vは室の気積、Sは室の床面積である。
μ=(Σηi・Ai・ν)/S …(2)
ただし、μは日射取得係数、ηは日射侵入率、νは冬期の方位係 数である。
前記算出手段は、前記記憶手段に記憶された各部屋の情報と上記演算式(1),(2)とから熱損失係数Qと冬期の日射取得係数μとを算出することを特徴とする請求項2に記載の温熱環境シミュレーション装置。
【請求項4】
前記冬期の日射取得係数の算出をインターネットを介して行うことを特徴とする請求項1に記載の温熱環境シミュレーション装置。
【請求項5】
前記熱損失係数と冬期の日射取得係数の算出をインターネットを介して行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の温熱環境シミュレーション装置。
【請求項1】
建物の各部屋の情報を記憶する記憶手段と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の冬期の日射取得係数を算出する算出手段と、この算出手段が算出した算出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする温熱環境シミュレーション装置。
【請求項2】
建物の各部屋の情報を記憶する記憶手段と、前記建物の各部屋の情報に基づいて各部屋毎の熱損失係数と冬期の日射取得係数とを算出する算出手段と、この算出手段が算出した算出結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする温熱環境シミュレーション装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、下記の演算式(1),(2)を記憶し、
Q=(Σki・Ai・Hi+0.35xV)/S …(1)
ただし、Qは熱損失係数、iは1からnまでの整数、kは壁や床や 開口等の熱貫流率、Aは壁や床や開口等の面積、Hは外気との接 触度、xは換気回数、Vは室の気積、Sは室の床面積である。
μ=(Σηi・Ai・ν)/S …(2)
ただし、μは日射取得係数、ηは日射侵入率、νは冬期の方位係 数である。
前記算出手段は、前記記憶手段に記憶された各部屋の情報と上記演算式(1),(2)とから熱損失係数Qと冬期の日射取得係数μとを算出することを特徴とする請求項2に記載の温熱環境シミュレーション装置。
【請求項4】
前記冬期の日射取得係数の算出をインターネットを介して行うことを特徴とする請求項1に記載の温熱環境シミュレーション装置。
【請求項5】
前記熱損失係数と冬期の日射取得係数の算出をインターネットを介して行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の温熱環境シミュレーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−41591(P2013−41591A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205821(P2012−205821)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2008−254044(P2008−254044)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2008−254044(P2008−254044)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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