説明

建物の軒先構造

【課題】屋根に積もった雪が再凍結して軒先に氷柱が生成するのを防止する技術の提供。
【解決手段】屋根1から伝わる水が建物8から離れる部位となる水切り3を、底面3aと、底面3aの一方端から立ち上がり建物8に連なる表側壁3bと、底面3aの他方端から立ち上がり前記建物からは離間している裏側壁3cとを有する薄板で形成し、PTC線状発熱体4を前記底面3aと表側壁3bに断熱材5で圧接して設けた。水切り3の最下点となる底面3aに発熱体4を設けたため、水が留まりやすい部位での再凍結を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に寒冷地域の建物に採用することで、屋根に積もった雪が再凍結して軒先に氷柱が生成するのを防止する技術に関し、屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に寒冷地では、積雪によって屋根上に積もった雪の除雪作業の軽減のため、屋根にヒータを配設することにより、屋根上の雪を溶かす技術が知られている。
屋根から溶け出した雪水は、軒先端縁から地上へ滴下するのが通常であるが、気候条件によっては滴下せずに再び氷結し、軒先に氷柱が生成し成長することがある。氷柱が成長すると危険であり、軒先での再凍結を防ぐ必要がある。
そのため、例えば特開平9−49296号公報(特許文献1)には、屋根の軒先端縁に面状発熱体を敷設する技術が開示されている。この技術によれば、軒先の端縁で雪水が再凍結することを少なくして、軒先の先端縁をまたぐような雪庇の形成や、氷柱の成長を軽減する効果を望むものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−49296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特開平9−49296号公報(特許文献1)に記載の技術では、屋根の表層の下側に面状発熱体を設けたとはいえ、屋根の裏側などで再凍結の懸念を残しており、一旦、再凍結が起こると氷柱が生成される可能性も排除できない。
【0005】
本発明はこうした背景のもとでなされたものであり、建物の軒先に氷柱が生じないように軒先での雪水の再凍結をし難くする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、この水が建物から離れる部位となる水切りと、この水切りに包含配置されるヒータと、ヒータを水切りに圧接するとともに水切り以外へのヒータからの放熱を抑える断熱材と、を備えており、水切りが、断面凹状の薄板でなり、凹形状を形成する底面と、底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁と、底面の他方端から立ち上がり前記建物からは離間している裏側壁とを有し、ヒータがPTC線状発熱体であって、そのヒータを少なくとも水切りの底面と表側壁とに圧接して設けている軒先構造である。
【0007】
そしてまた、屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、この水が建物から離れる部位となる水切りと、この水切りに包含配置されるヒータと、を備えており、水切りが、断面凹状の薄板でなり、凹形状を形成する底面と、底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁と、底面の他方端から立ち上がり前記建物からは離間している裏側壁とを有し、ヒータがPTC線状発熱体であって、そのヒータを水切りの底面と表側壁とに圧接して設けている軒先構造である。
【0008】
屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、この水が建物から離れる部位となる水切りと、この水切りに包含配置されるヒータと、を備えているため、水切りが熱せられて水切りでの雪水の再凍結を起こしにくくしている。
そして、ヒータを水切りに圧接するとともに水切り以外へのヒータからの放熱を抑える断熱材を設ければ、ヒータの熱が水切り以外に発散することを抑制するとともに、ヒータと水切りとの圧接を確実にして密着力を高めるため、ヒータの熱を効率的に水切りに伝えることができる。
そして、水切りが、断面凹状の薄板でなり、凹形状を形成する底面と、底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁と、底面の他方端から立ち上がり前記建物からは離間している裏側壁とを有しているため、建物の屋根から流れる水は、水切りに表側壁を伝わって流れ、その底面で建物から離れて地面へと落下する。また、水量が多い時など、底面で落ちきらずに、さらに裏側壁に水が伝わる場合であっても、裏側壁が建物から離れているため、再び建物に水が流れ込むことがない。そのため、再び建物に流れ込んだ水が再凍結するおそれがなく、水切り以外の軒先からの氷柱の発生も防止することができる。
【0009】
ヒータがPTC線状発熱体であるため柔軟性のあるヒータである。そのため、水切りの底面に凹凸があっても、その水切りの形状に添って柔軟に追随し圧接することができる。そのためヒータをまんべんなく水切りに圧接することができる。
また、そのヒータを水切りの底面と表側壁とに圧接して設けているため、屋根から流れる水が建物から離れる部分である水切りの底面と表側壁とを効果的に暖めることができる。そのため、水切りから離れずに水切りに付着した水滴が再凍結することを防ぐことができる。
【0010】
また、ヒータをさらに水切りの裏側壁にも圧接して設けることができる。ヒータを水切りの裏側壁に圧接して設けたため、裏側壁で再凍結することも防ぎ、より確実に水切りでの再凍結を防止することができる。
【0011】
あるいはまた、水切りが前記建物からは離間している底面と、その底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁とを有し、水切りの最下点となるこの底面にヒータを圧接して設けている軒先構造とすることができる。
水切りが、前記建物からは離間している底面と、その底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁とを有するため、建物から表側壁を通じて流れ込む水が底面を通じて再び建物伝わることがない。そのため、水切り以外の軒先部分で再凍結を生じさせてしまうような不測の事態を防止し、氷柱の生成を防ぐことができる。
少なくとも水切りの最下点となる底面にヒータを圧接して設けたため、建物から表側壁を通じて流れ込む水が、水切りから落ちずに留まりやすい最下点となる底面にヒータが圧接されている。したがって、水が留まりやすい部分がヒータで熱せられるため、落ちきらずに水切りに残った水を暖めることができ、この水が再凍結するのを防止することができる。
【0012】
そして、水切りの底面へのヒータの圧接は、底面の一部だけでなく、底面全体にヒータを圧接している軒先構造とすることができる。水切りの底面全体にヒータを圧接したため、ヒータの熱を水が留まりやすい底面全体にまんべんなく伝えることができ、屋根から伝わる水の再凍結をより確実に抑制することができる。
【0013】
ヒータを水切りに圧接するためにさらに押圧部材を設けることができる。ヒータを水切りに圧接するための押圧部材を備えることで、ヒータと水切りとの密着状態をより確かなものとすることができる。また、水切りや屋根裏などの建物の形状が変わっても、押圧部材を設けることでヒータを水切りに圧接させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の軒先構造によれば、屋根等の建物上部から伝わる水が、その建物から離れる水切り部分で再凍結するのを防ぎ、水切り部分での氷柱の発生を防止することができる。また、その水切り部分からさらに建物に水が伝わることを防ぎ、建物に伝わったその水が再凍結して氷柱を生成することも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態である軒先構造の断面図である。
【図2】図1の水切り部分の変形例であり、分図2(A)は水切りが垂直に設けられた態様、分図2(B)は水切りが建物とは反対側に傾いた態様をそれぞれ示す断面図である。
【図3】PTC線状発熱体の断面図である。
【図4】図3のPTC線状発熱体の平面図である。
【図5】図1の水切り部分の別の変形例を示す断面図である。
【図6】図1の水切り部分に押圧部材を設けた変形例の断面図である。
【図7】図1の水切り部分に押圧部材を設けた別の変形例の断面図である。
【図8】実験例で採用した水切り部分の種々の態様であって、分図8(A)はヒータを横置きにした態様、分図8(B)はヒータを縦置きにした態様、分図8(C)はヒータを横置きにして断熱材を設けた態様、分図8(D)はヒータを縦置きにして断熱材を設けた態様をそれぞれ示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下に説明する。
図1は、屋根の軒先構造の断面図である。屋根1の軒先2には、屋根1からの水が建物8から離れ落ちる水切り3が設けられている。この水切り3には、屋根1から落ちる水の再凍結防止のために水切り3を暖めるヒータ4が設けられている。ヒータ4は断熱材5で水切り3に圧接されている。
【0017】
屋根1は、一般的な戸建て家屋や、マンション、その他住居以外の目的に供される建物、例えば、工場、店舗など種々の建物を対象とした屋根1であって、特定の建物や構造をした屋根に限定されない。図1で示す屋根1には、屋根1に積もった雪を融かす屋根上ヒータ7が設けられている。
水切り3は、屋根1のような建物8の上部から伝わって流れる水が、その建物8から流れ落ち、そして建物から離れる部位であり、本実施形態では、断面が凹形状となる薄板で形成されている。断面が凹形状となる薄板は、その最下点となる底面3aと、底面3aの一方端(建物から遠い端)から立ち上がり屋根1に連なっている表側壁3bと、底面3aの他方端(建物から近い端)から上方に屈曲して立ち上がり上記建物8からは離間している裏側壁3cとを有する。
そして、凹形状に形成された内部空間3d内に、ヒータ4を設けている。より具体的には、ヒータ4は、本実施形態では後述するPTC線状発熱体4であり、断熱材5で水切り3の底面3aと表側壁3b、および裏側壁3cに圧接されている。
【0018】
水切り3は、図1で示すように、建物8に面する側に傾いて設けているが、施工の状態によって図2(A)で示すように、地面に対して垂直(底面3aが地面に対して水平)に設けたり、図2(B)で示すように、建物8とは反対側に傾けて設けたりしても良く、水切り3の敷設状況によらずに水切り3の作用を奏することができる。
【0019】
水切り3は薄板に成形可能な種々の金属材を用いて形成することができ、例えば、亜鉛鉄板やアルミ合金板、SUS板などが例示されるが、熱伝導性を考慮するとアルミ合金板などの良熱伝導性を有する金属材が好ましい。
また、水切り3の厚みは、費用、熱電導性、加工性等の要求からできるだけ薄い方が好ましいが、ヒータ4を保持できる程度の強度が要求される。そのため、金属材の材質によるが、0.3mm〜数mm程度が好ましい。
【0020】
図3は、ヒータ4であるPTC線状発熱体4の断面図であり、図4は、PTC線状発熱体4の平面図である。
図3で示すように、PTC線状発熱体4は、複数個のPTC(Positive Temperature Coefficient)素子41を備え、その両端が金属端子42に保持され、これら両端の金属端子42がそれぞれ給電線43a,43bに固定されている。そして、PTC素子41の金属端子42が当接する部分には電極44が形成されている。
また、図4で示すように、複数個のPTC素子41は、長手方向に沿って対向配置された一対の給電線43a,43bの間に一定の間隔を開けて接続されており、全体としてはしご状の構造物を形成している。このはしご状の構造物は、電気絶縁性を有し柔軟な軟質塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂からなる被覆部材45によって被覆されている。被覆部材45は、PTC素子41と給電線43a,43bを内包して絶縁封止している。被覆部材45には、金属網体46を介在させておりPTC線状発熱体4の均一な発熱に寄与している。
【0021】
PTC素子41は、たとえばチタン酸バリウムなどを主原料としたもので、室温からキュリー温度(抵抗急変温度)までは低抵抗であるが、キュリー温度を越えると急に抵抗値が増大する特性を有する感熱素子である。この特性により、PTC素子41は、キュリー温度を下回る温度下において電圧が印加されると、最初は低温であるために抵抗値が小さいので大電流が流れ、PTC素子41の温度が急激に上昇する。そして、PTC素子41の温度がキュリー温度を越えると、抵抗値が急に増大するために電流量が減少し、その結果、PTC素子41の発熱量は減少する。そのため、PTC素子41は、一定温度以上に温度が上がることがなく、ある温度で安定して熱平衡状態を保つ。すなわち、PTC素子41は自己温度制御機能を有している。
【0022】
発熱体として自己温度制御機能を有するPTC素子41が用いられているので、このヒータ4は、発熱温度を制御するためにサーモスタットやサーミスタなどを含む発熱温度制御回路が不要であり、装置のコストを低減することができる。また、PTC素子41は一定温度以上には発熱しないので、その発熱温度を適切に設定しておけば、PTC素子41の発熱で断熱材5が変形したり劣化するおそれが少ないため、過熱防止回路などを別途設ける必要がない。
【0023】
断熱材5は、ヒータ4を水切りに圧接する弾性のある部材であり、ヒータ4からの熱を効率的に水切り3に伝えるべく熱容量が小さい材質であることが好ましい。また、夏場に高温下にさらされることから耐熱性、耐候性に優れた材質であることが好ましい。
こうしたことから、断熱材5には発泡体を用いることが好ましく、オレフィンを含む発泡樹脂やシリコーンゴムスポンジなどが挙げられるが、長期耐久性等を考慮するとシリコーンゴムスポンジはより好ましい材質である。
【0024】
水切り3へのヒータ4の圧接は、水切り3の内部空間3dにヒータ4のみならず断熱材5を詰めることで行っている。もちろん、粘着材や粘着テープを水切り3とヒータ4との間に設けて両者の密着性を高めることもできる。
【0025】
水切り3の軒先2への取付けは、ネジ留め、接着剤での固定など適当な接続手段で行えば良く、軒先2に水切り3が既設であれば、それにヒータ4を取付ければ良い。
また、水切り3の取り付け箇所は、屋根の軒先部分であるが、ここでいう屋根には、建物の上部を覆う構造物という狭義の屋根である場合の他、その屋根に設けた樋や、垂木、鼻隠し等であっても良い。さらには、屋根の上に取り付けられ屋根から張り出した構造物である看板や太陽電池などであっても良い。
【0026】
本実施形態の軒先構造では、ヒータ4が水切り3の底面3aだけでなく、表側壁3bおよび裏側壁3cに対しても圧接されているため、屋根から流れ落ちる水の再凍結を極めて良好に防止することができる。即ち、水切り3の設置状況によっては図1や図2で示したように、水切り3の取付角度が変わることが起きうるが、何れの場合であっても水切り3の最下点を含みその近傍を暖めることが可能となるからである。
【0027】
水切り3の表側壁3bは屋根裏に接続されている一方で、裏側壁3cは建物8からは離して設けている。そのため、水切り3を流れる水は、水切り3から離れ建物8の外に垂れ落ちる。表側壁3bから底面3aを伝わり、さらに裏側壁3cへ回り込む場合も同様である。これに対し、裏側壁3cが建物8に連なる構造の場合は、裏側壁3cへ回り込んだ水は再び建物8に伝わるおそれがある。そのため、水切り3以外の場所で再凍結し、予期せぬ場所で氷柱が生成する可能性があり、氷柱の生成を効果的に防止することができない。
【0028】
ヒータ4にPTC線状発熱体を用いたため、外側が柔軟な樹脂材で形成されることで非常に曲げやすいヒータ4であり、水切り3との密着程度を高くすることができる。そのため、建物8の大きさに合わせて長手方向に長く伸びる底面3aの広範な部分でヒータ4と底面3aや表側壁3bとの密着性を高く施工することができ、再凍結を極めて良好に防止することができる。
これに対し、樹脂に導電性カーボンを分散させてなるヒータ等を用いる場合は、ヒータ自体が硬くなり曲げにくいヒータとなる。そのため、水切り3の底面3aの形状変化に追随させてヒータを適宜曲げることが困難であり、水切り3に圧接し難いヒータ4となる。
【0029】
上記実施形態の変形例として以下に示す態様とすることも可能である。
まず、断熱材5を備えない構成とすることができる。ヒータ4を水切り3に圧接することが最低限必要だからである。
ヒータ4の水切り3への圧接法として、ヒータ4と水切り3との間に粘着材や粘着テープを設けることが挙げられる。
【0030】
また、ヒータ4の水切り3への圧接法として、押圧部材9を用いることも挙げられる。押圧部材9を用いる場合は、ヒータ4や断熱材5と、水切り3や屋根裏との隙間に押圧部材9を嵌め込むことでヒータ4を水切り3に圧接できる。より具体的には、水切り3の内部空間3dにヒータ4とともに押圧部材9を嵌め入れることで、押圧部材9が表側壁3bや裏側壁3c、あるいは屋根裏に圧接されてヒータ4を押圧することができる。
押圧部材9には、バネやスペーサ等の弾性がある部材を用いることできるが、熱を遮断する観点からは断熱性の高い材質であることが好ましい。
こうした押圧部材9を用いた一の実施形態を図6に示す。断熱材5はヒータ4の上面を押さえながら水切り3の内部空間3d内に収容している。また、断熱材5と屋根裏との間に押圧部材9であるバネを設けて、バネの押圧力で、水切り3の底面3aの全体にヒータ4を密着させている。また、押圧部材9を用いた別の実施形態として、図7には、ヒータ4と屋根裏との間に押圧部材9である樹脂製のスペーサ9を設けて、水切り3の底面3aの全体にヒータ4を密着させている。但し、ヒータ4に断熱材5を介さずに押圧部材9を設ける場合は、押圧部材9自体が断熱性の高いものであることが好ましい。
【0031】
ヒータ4には、水切り3との密着性が劣ることを許容すればPTC線状発熱体以外のヒータ4を用いることも可能である。
水切り3は、断面凹状としたが、図5で示すような裏側壁3cの無い断面がレ状となる構成であっても良い。
さらに、上述の種々の変形は、互いに矛盾が生じない限度で適宜組み合わせて形成することができる。
【実施例】
【0032】
以下に実験例を示して本発明をさらに説明する。
図8に示す断面形状を有し亜鉛鉄板で形成した水切り3に、PTC線状発熱体4を設置し、場合によってオレフィンを含む発泡樹脂でなる断熱材5を取り付けて水切り3の底面3aの温度を測定した。
より具体的には、図8(A)で示す軒先構造は、ヒータ4を横置きにして水切り3の底面3a、表側壁3b、および裏側壁3cに圧接して設置した。これを試料Aとした。図8(B)で示す軒先構造は、ヒータ4を縦置きにして水切り3の底面3aと表側壁3bに圧接して設置した。これを試料Bとした。図8(C)で示す軒先構造は、図8(A)と同様にヒータ4を横置きにするとともに断熱材5でヒータ4の上面を押さえて水切り3の内部空間3d内に収容した。これを試料Cとした。図8(B)で示す軒先構造は、図8(B)と同様にヒータ4を縦置きにするとともにヒータ4と裏側壁3cの隙間を断熱材5で埋めた。これを試料Dとした。
【0033】
0℃に設定した恒温槽内に試料A〜試料Dを設置し、ヒータ4をONにして経時における水切り3の底面3aの温度を温度センサーで計測した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1で示すように断熱材5を設けた試料C及び試料Dは、断熱材5を設けない試料A及び試料Bと比較して水切り3の底面3aの温度が高くなった。これより、断熱材5を用いた場合の方が用いない場合に比べて再氷結防止効果に優れることがわかる。
また、試料Aより試料Cの方が、そして試料Bより試料Dの方が、即ち、ヒータ4を縦置きにするよりも横置きにする方が底面温度が高くなった。これより、底面3a全体にヒータ4を密着させる方が底面3aの一部にヒータを密着させるよりも再凍結し難くなることがわかる。
【符号の説明】
【0036】
1 屋根
2 軒先
3 水切り
3a 底面
3b 表側壁
3c 裏側壁
3d 内部空間
4 ヒータ(PTC線状発熱体)
41 PTC素子
42 金属端子
43a,43b 給電線
44 電極
45 被覆部材
46 金属網体
5 断熱材
7 屋根上ヒータ
8 建物
9 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、
この水が建物から離れる部位となる水切りと、
この水切りに包含配置されるヒータと、
ヒータを水切りに圧接するとともに水切り以外へのヒータからの放熱を抑える断熱材と、を備えており、
水切りが、断面凹状の薄板でなり、凹形状を形成する底面と、底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁と、底面の他方端から立ち上がり前記建物からは離間している裏側壁とを有し、
ヒータがPTC線状発熱体であって、そのヒータを少なくとも水切りの底面と表側壁とに圧接して設けている軒先構造。
【請求項2】
屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、
この水が建物から離れる部位となる水切りと、
この水切りに包含配置されるヒータと、を備えており、
水切りが、断面凹状の薄板でなり、凹形状を形成する底面と、底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁と、底面の他方端から立ち上がり前記建物からは離間している裏側壁とを有し、
ヒータがPTC線状発熱体であって、そのヒータを水切りの底面と表側壁とに圧接して設けている軒先構造。
【請求項3】
ヒータをさらに水切りの裏側壁にも圧接している請求項1または請求項2記載の軒先構造。
【請求項4】
屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、
この水が建物から離れる部位となる水切りと
この水切りに包含配置されるヒータと、を備えており、
水切りが、前記建物からは離間している底面と、その底面の一方端から立ち上がり建物に連なる表側壁とを有し、水切りの最下点となるこの底面にヒータを圧接して設けている軒先構造。
【請求項5】
屋根等の建物上部から伝わる水が再凍結して氷柱が生成するのを防止する建物の軒先構造であって、
この水が建物から離れる部位となる水切りと
この水切りに包含配置されるヒータと、を備えており、
水切りの最下点となる底面にヒータを圧接して設けている軒先構造。
【請求項6】
ヒータを水切りに圧接するとともに水切り以外へのヒータからの放熱を抑える断熱材をさらに備える請求項4または請求項5記載の軒先構造。
【請求項7】
水切りの底面全体にヒータを圧接している請求項1〜請求項6何れか1項記載の軒先構造。
【請求項8】
ヒータを水切りに圧接するための押圧部材を備える請求項1〜請求項7何れか1項記載の軒先構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31700(P2012−31700A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174186(P2010−174186)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】