説明

建物の防犯システム

【課題】建物の防犯性を高める建物の防犯システムを提供する。
【解決手段】建物10には、インナーガレージ11が設けられるとともに、そのガレージ11の内外を連通する車両出入口12が設けられている。また、建物10には、車両出入口12を開閉するシャッタ装置20と、地震等に伴う建物10の横揺れを抑制する制振装置30とが設置されている。さらに、建物10には人感センサ40〜42を始めとする複数の人感センサが設置されている。これらの人感センサの検出領域は、建物10周辺及び建物10内に設定されている。コントローラ50は、人感センサの出力信号などに基づいて不審者による建物10への接近及び侵入の有無を判定するとともに、その判定結果に応じて、シャッタ装置20や制振装置30を用いて、シャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の防犯性を高める防犯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、犯罪を予防する建物の設計手法として「防犯環境設計」が知られており、その具体的手法として「接近の制御」や「自然監視性の確保」等がある。「接近の制御」は、建物への不審者の接近を抑止することで不審者による犯行の機会を奪うというものであり、「物理的な接近の制御」と「心理的な接近の制御」とに大別されている。「物理的な接近の制御」としては、塀や門扉による境界部(建物の敷地と道路との境界部や、建物の敷地と隣地との境界部)の強化などがある。「心理的な接近の制御」としては、例えば特許文献1に記載の発明がある。特許文献1に記載の発明では、太陽電池や乾電池からの給電により動作する電動式カーテンと、同じく太陽電池や乾電池からの給電により音を発生させる音発生手段とを備え、電動式カーテンを揺らし、それに連動して音発生手段により音を発生させる。一方、「自然監視性の確保」は、敷地外からの建物の見通しを確保することで不審者による犯罪行為を抑制するというものである。
【特許文献1】特開2006−65553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、建物の境界部を強化すべく塀や門扉を高くすると、敷地外からの建物の見通しが悪くなり、「自然監視性の確保」の観点から建物の防犯性の低下が懸念される。また、特許文献1に記載の発明のように、建物内でカーテンを揺らしたり音を発生させたりしても、建物外の不審者がカーテンの揺れや建物内の音に気付きにくく、建物の防犯性を十分に高めることができるとは言い難い。
【0004】
本発明は、建物の防犯性を高める建物の防犯システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0006】
第1の発明の防犯システムは、不審者による建物への接近及び侵入のいずれかを検出する不審者検出手段と、建物の屋内外を仕切る仕切部材に設けられ、当該仕切部材に振動を発生させる振動発生手段と、前記不審者検出手段により不審者による建物への接近及び侵入のいずれかが検出された場合に、前記振動発生手段により仕切部材を振動させる振動制御手段とを備えている。第1の発明によれば、不審者による建物への接近や侵入に伴って、建物の仕切部材が振動する。この仕切部材の振動で不審者に対し警告を与えることにより、不審者による建物への接近や侵入を抑止することができ、ひいては建物の防犯性を高めることができる。特に、建物の屋内外を仕切る仕切部材の振動は、建物周辺にいる不審者にとって認識されやすく、不審者による建物への接近を効果的に抑止することができる。
【0007】
第2の発明は、水平方向に架設された梁材を備え、前記梁材の屋外側に前記仕切部材として外壁材が設けられている建物に適用され、前記振動発生手段は、前記梁材を水平方向に変位させるアクチュエータを有し、前記振動制御手段は、前記アクチュエータの駆動を制御することにより前記仕切部材を振動させるものである。第2の発明によれば、不審者による建物への接近や侵入に伴って、梁材が水平方向に変位して建物自体が振動し、これにより外壁材に振動が生じる。この建物や外壁の振動で不審者に対し警告を与えることができる。
【0008】
第3の発明は、前記梁材として、基礎上に設けられた第1梁材と、第1梁材に対し上下に対向するように設けられた第2梁材とを備え、第2梁材の屋外側に前記仕切部材として外壁材が設けられている建物に適用される。そして、前記アクチュエータは、第2梁材を第1梁材に対し水平方向に変位させるものであり、前記振動制御手段は、前記アクチュエータの駆動を制御することにより前記第2梁材の前記第1梁材に対する相対位置を変動させるものである。第3の発明によれば、不審者による建物への接近や侵入に伴って、第2梁材の第1梁材に対する相対位置が変動して建物自体が振動し、これにより外壁が振動する。この建物や外壁の振動で不審者に対し警告を与えることができる。
【0009】
第4の発明は、前記梁材の水平方向の変位(第3の発明では、第1梁材と第2梁材との水平方向の相対変位)を抑制する粘性ダンパを有する制振装置を備えている建物に適用される。そして、前記アクチュエータとして、粘性ダンパと、当該粘性ダンパ内に粘性流体を強制給排するポンプ部とを用い、前記振動制御手段は、前記梁材の変位(第1梁材と第2梁材との相対変位)を相反する2方向で交互に行わせるようにポンプ部による粘性流体の給排を制御する。第4の発明によれば、粘性ダンパ内への粘性流体の給排制御の結果、梁材の位置(第2梁材の第1梁材に対する相対位置)が相反する2方向で交互に変位して建物自体が振動し、これにより外壁が振動する。このように制振装置用の粘性ダンパをアクチュエータとして用いることにより、防犯システムとて新たなアクチュエータの追加が不要であり、当該防犯システムのイニシャルコストを削減することができる。
【0010】
第5の発明は、前記梁材の水平方向の変位又はその相関値(第3の発明では、第2梁材の第1梁材に対する水平方向の変位又はその相関値)が所定値以上か否かを判定する変位判定手段を備え、前記振動制御手段は、前記変位判定手段により前記梁材の水平方向の変位又はその相関値(第2梁材の第1梁材に対する変位又はその相関値)が所定値以上と判定された場合に、前記アクチュエータの駆動による仕切部材の振動処理の実行を停止する。第5の発明によれば、梁材の変位(第2梁材の第1梁材に対する変位)が所定値以上に大きくなることを抑制することができる。これにより、建物の防犯性を高めつつ、当該建物の損傷を抑制することができる。
【0011】
第6の発明は、建物の屋内外を連通する開口部を開閉する開閉部材を、仕切部材として備える建物に適用される。そして、前記振動発生手段は、前記開閉部材を開閉駆動する駆動部を有し、前記振動制御手段は、前記駆動部の駆動を制御することにより前記仕切部材を振動させる。第6の発明によれば、不審者による建物への接近や侵入に伴って、開閉部材が開側及び閉側に作動されて振動する。この開閉部材の振動により、不審者に対し警告を与えることができる。
【0012】
第7の発明は、建物の使用者が在宅か否かを判定する在宅判定手段を備え、前記振動制御手段は、前記在宅判定手段による判定結果に応じた態様で、前記振動発生手段により仕切部材を振動させる。第7の発明によれば、建物の使用者が在宅か否かに応じた態様で仕切部材を振動させることにより、建物の居住性を維持しつつ、建物の防犯性を高めることができる。例えば、建物の使用者の在宅時には、仕切部材の振動を相対的に小さくすることにより、仕切部材の振動に起因する建物の使用者の不快感を軽減し、建物の使用者の留守時には、仕切部材の振動を相対的に大きくすることにより、建物の防犯性を高めることが考えられる。
【0013】
第8の発明は、前記振動制御手段は、前記不審者検出手段により不審者による建物への接近が検出された場合には、第1の態様で前記振動発生手段により仕切部材を振動させ、前記不審者判定手段により不審者による建物への侵入が検出された場合には、第1の態様とは異なる第2の態様で前記振動発生手段により仕切部材を振動させる。第8の発明によれば、不審者による建物への侵入前か侵入後かに応じて仕切部材の振動態様を異ならせることにより、建物への侵入に伴って建物の警戒レベルが変化したことを認識させて、建物に侵入した不審者に対し建物外への退去を迫ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態では、鉄骨ラーメン構造によるユニット式建物の防犯システムについて具体化している。ユニット式建物は、周知のとおり複数の建物ユニットを結合させて構築されるものである。建物ユニットは、工場にてあらかじめ製造され、その後、建築現場にトラック等により運搬されて当該建築現場にて結合されるものである。建物ユニットについて補足すると、建物ユニットは、各々長方形状に組み付けられた四辺の床大梁及び天井大梁と、床大梁及び天井大梁を四隅で連結する柱とを有しており、これらにより直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。建物の外周部には外壁パネルが取り付けられ、これにより建物の屋内外が仕切られるようになっている。詳しくは、外壁パネルは、その骨格をなす下地フレームと、その下地フレームにタッピングネジ(図示略)等により固定された外壁材とを有して構成されており、上記下地フレームが天井大梁などに固定される。
【0015】
まずは、建物の構成について図1〜図5を参照しつつ説明する。図1は建物の概略構成を示す図である。図2は建物ユニットの配置を示す平面図である。図5は防犯システムの構成を示す図である。
【0016】
図1に示す建物10は複数階建ての住宅である。建物10の1階部分は、6つの建物ユニットU1を用いて構築されている(図2参照)。建物10の1階部分には、インナーガレージ11が設けられるとともに、そのガレージ11の内外を連通する車両出入口12が設けられている。図1では、紙面左側の外壁材15aに車両出入口12が形成されている。
【0017】
建物10には、車両出入口12を開閉する電動式のシャッタ装置20が設置されている。本実施形態では、シャッタ装置20として、巻き取り式のシャッタ装置を想定している。すなわち、シャッタ装置20は、開閉部材としてのシャッタカーテン21と、そのシャッタカーテン21が巻かれた状態で収納されるシャッタケース22(図5参照)と、シャッタカーテン21を昇降させる駆動部23(図5参照)とを備えて構成されている。この場合、シャッタカーテン21が降下することで車両出入口12が閉鎖され、シャッタカーテン21が上昇することで車両出入口12が開放される。また、シャッタカーテン21として、屋内側及び屋外側の間を開閉する多数のスラット24を有して構成されているスラット式のものを想定している。
【0018】
図1では、紙面右側の外壁材15bに、掃き出し窓13が形成されており、その掃き出し窓13には引き違い式の窓サッシ14が設けられている。以下の説明では、建物10の四方の外壁材を総称する場合には外壁材15と記載する。
【0019】
建物10の1階部分には、地震等に伴う建物の振動(特に横揺れ)を抑制する制振装置30が設置されている。本実施形態では、複数の制振装置30が建物10の四方に配置されていることを想定している(図2参照)。図3は制振装置30の構成を示す正面図であり、同図には、建物ユニットU1の構成として、左右の柱18と、その下端部に連結された床大梁16と、上端部に連結された天井大梁17とが示されている。
【0020】
制振装置30は、建物ユニットU1の床大梁16に連結された高剛性フレーム31と、その高剛性フレーム31及び建物ユニットU1の天井大梁17の間に設けられた油圧ダンパ32とを備えている。高剛性フレーム31は、床大梁16に対し略垂直に延びる直立材31aと、その直立材31aと床大梁16との間に斜めに配されて同直立材31aの上端部付近と床大梁16とを連結する斜材31bとを有している。直立材31a及び斜材31bは、その上端部と天井大梁17との間に所定の隙間が形成された状態で、その下端部が床大梁16に連結されている。油圧ダンパ32は、直立材31aの上端部付近と天井大梁17との間に取り付けられている。油圧ダンパ32は、ロッド33と当該ロッド33が内挿されたシリンダ34とを有し、ロッド33がシリンダ34に対し伸縮可能に構成されている。
【0021】
図4は油圧ダンパ32の構成を示す図である。油圧ダンパ32のシリンダ34内は、粘性流体としてのオイルで満たされている。シリンダ34内において、ロッド33には、当該シリンダ34の内壁との間に僅かな隙間を形成しながら、当該シリンダ34内を往復移動するピストン33aが設けられている。シリンダ34内は、ピストン33aにより第1油圧室C1と第2油圧室C2とに仕切られている。この場合、建物10の横揺れにより天井大梁17が床大梁16に対し水平方向に振動(変位)すると、ロッド33がシリンダ34に対し伸縮し、シリンダ34内においてピストン33aが水平方向に移動し、オイルがシリンダ34の内壁とピストン33aとの間の隙間を通って第1油圧室C1から第2油圧室C2に又は第2油圧室C2から第1油圧室C1に流れる。このようにシリンダ34内のオイルが狭小な流路を流れる際のオイルの粘性抵抗によって、建物10の横揺れ(変形)が抑制される。なお、ピストン33aにオリフィス(絞り通路)を設け、そのオリフィスを通過する際のオイルの粘性抵抗によって、建物10の横揺れ(変形)を抑制するようにしてもよい。
【0022】
油圧ダンパ32には、油圧回路部35が設けられている。油圧回路部35は、シリンダ34の両端部に接続されたバイパス流路36と、そのバイパス流路36に設けられたポンプ装置37とを有して構成されている。このポンプ装置37においては、(1)バイパス流路36におけるオイルの流れを遮断すること、(2)第1油圧室C1のオイルをバイパス流路36経由で第2油圧室C2に圧送すること、(3)第2油圧室C2のオイルをバイパス流路36経由で第1油圧室C1に圧送することが可能となっている。
【0023】
第1油圧室C1には、当該第1油圧室C1内のオイルの圧力を検出する圧力センサ38aが設けられており、第2油圧室C2には、当該第2油圧室C2内のオイルの圧力を検出する圧力センサ38bが設けられている。また、バイパス流路36には、当該バイパス流路36を流れるオイルの流量を検出する流量センサ39が設けられている。
【0024】
図1の説明に戻って、建物10には、人感センサ40及び人感センサ41を始めとする複数の人感センサが設置されており、それらの検出領域が建物10周辺の全周に設けられている。これらの人感センサは、検出領域内において所定値(例えば60W/m2)以上の熱量を放射する物体(以下「発熱体」という)を検出する検出器である。図1では、人感センサ40,41がそれぞれ紙面左右の外壁材15a,15bに取り付けられており、人感センサ40の検出領域A1は外壁材15aの屋外側に設定され、人感センサ41の検出領域A2は外壁材15bの屋外側に設定されている。図5に示すように、建物10内にも、人感センサ40,41と実質的に同一の人感センサ(例えば人感センサ42)が複数設置されており、それらの検出領域は建物10内に設定されている。
【0025】
建物10(図5では建物10内)には無線通信機46が設置されている。無線通信機46は、建物10の使用者により携帯される通信端末(例えば電子キー)47との無線通信を行うための通信機である。無線通信機46の通信領域は、建物10内及び建物10周辺の全域に設定されている。通信端末47には、建物10の使用者を識別するための識別情報が記憶されており、その識別情報は無線通信機46により受信可能となっている。建物10内には、当該建物10の警備モードの設定操作を受け付ける操作部48が設置されている。本実施形態では、建物10の警備モードとして「在宅モード」及び「留守モード」のいずれか一方が設定されることを想定している。
【0026】
上記シャッタ装置20、ポンプ装置37、圧力センサ38a,38b、流量センサ39、人感センサ40〜42、無線通信機46及び操作部48は、コントローラ50に接続されている。コントローラ50は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータを主体とする制御装置である。コントローラ50には、建物10の使用者の識別情報があらかじめ登録されている。
【0027】
コントローラ50は、不審者による建物10への接近や侵入に伴って、シャッタカーテン21や建物ユニットU1(図2参照)を振動させる。詳しくは、コントローラ50は、建物10に設置された人感センサ(図5の人感センサ40〜42)及び無線通信機46を用いて不審者による建物10への接近や侵入の有無を判定するとともに、その判定結果に応じて以下の(処理1)や(処理2)を実行する。
(処理1) シャッタ装置20の駆動部23の制御により、シャッタカーテン21を所定周期(例えば5秒)で開側及び閉側へ交互に作動させて振動させる。
(処理2) ポンプ装置37の制御により、シリンダ34の第1油圧室C1及び第2油圧室C2へのオイル圧送を交互に繰り返す。これにより、ロッド33をシリンダ34に対し伸縮させ、高剛性フレーム31の床大梁16に対する相対位置を変動させ、ひいては建物ユニットU1を振動させる。なお、この場合、建物ユニットU1の振動に伴って、外壁15を含む建物10全体が振動する。
【0028】
不審者による建物10への接近や侵入の有無の判定処理について補足すると、コントローラ50は、建物10に設置された人感センサの出力信号に基づいて、建物10周辺及び建物10内のいずれかに人が存在するか否かを判定する。詳しくは、コントローラ50は、人感センサの出力信号に基づいて、建物10周辺及び建物10内に発熱体が存在するか否かを判定する。そして、コントローラ50は、建物10周辺及び建物10内に発熱体が存在する状態が所定時間(例えば10秒)以上継続している場合に、建物10周辺及び建物10内のいずれかに人が存在すると判定する。コントローラ50は、人が存在すると判定した場合には、更にその人が不審者か否かを判定する。詳しくは、コントローラ50は、無線通信機46により通信端末47との通信を行うことにより、通信端末47に記憶されている識別情報を取得し、取得した識別情報と建物10の使用者の識別情報とを照合する。コントローラ50は、取得した識別情報が建物10の使用者の識別情報と一致した場合には、建物10周辺や建物10内の人が不審者ではないと判断し、不審者による建物10への接近や侵入がない旨を判定する。一方、取得した識別情報が建物10の使用者の識別情報と一致しない場合には、コントローラ50は、建物10周辺や建物10内の人が不審者であると判断し、不審者による建物10への接近や侵入がある旨を判定する。
【0029】
上記のとおりシャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させることで、建物10に接近する不審者や建物10に侵入した不審者に対し警告を与えることができる。
【0030】
また、コントローラ50は、圧力センサ38a,38b及び流量センサ39の出力信号に基づいて建物10の1階部分の層間変形角がその上限値(例えば、地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって建物に著しい損傷が生ずるおそれのない場合は1/120)以下か否かを判定し、建物10の層間変形角が上限値よりも大きいと判定した場合に、上記建物ユニットU1を振動させるための処理2を実行しないようにしている。ここで、建物10の1階部分の層間変形角は、天井大梁17の床大梁16に対する水平方向の変位を建物10の1階部分の階高で割った値である。これにより、建物10の外壁材15や天井クロス等の内装の損傷を防ぐことができる。
【0031】
次に、建物10の防犯システムの作動について図6を参照しつつ説明する。図6は、防犯プログラムの流れを示すフローチャートである。図6では、コントローラ50が本プログラムを所定周期で実行することにより、建物10の防犯システムが作動することを想定している。
【0032】
図6に示すステップS11では、コントローラ50は、建物10の屋外側に設置されている人感センサ(図5の人感センサ40,41参照)及び無線通信機46を用いて、不審者による建物10への接近の有無を判定する。
【0033】
ステップS11において不審者による建物10への接近があると判定した場合には、コントローラ50は、ステップS12において建物10の警備モードの判定を行う。そして、コントローラ50は、警備モードが「在宅モード」であると判定した場合には、ステップS13においてシャッタ装置20の駆動部23を制御してシャッタカーテン21を所定時間だけ振動させた上で、今回のプログラムの実行を終了する。警備モードが「留守モード」であると判定した場合には、コントローラ50は、ステップS14においてシャッタ装置20の駆動部23を制御してシャッタカーテン21を所定時間だけ振動させる。続くステップS15では、コントローラ50は、圧力センサ38a,38b及び流量センサ39の出力信号に基づいて、建物10の1階部分の層間変形角がその上限値以下か否かを判定する。詳しくは、コントローラ50は、圧力センサ38a,38b及び流量センサ39のセンサ値のいずれもが所定値以下である場合に、上記層間変形角がその上限値以下と判定し、圧力センサ38a,38b及び流量センサ39のセンサ値のいずれかが所定値よりも大きい場合に、上記層間変形角がその上限値よりも大きいと判定する。そして、コントローラ50は、建物10の1階部分の層間変形角がその上限値以下と判定した場合には、ステップS16においてポンプ装置37を制御して建物ユニットU1を所定時間だけ振動させた上で、今回のプログラムの実行を終了する。これにより、外壁材15を含む建物10全体が振動する。建物10の1階部分の層間変形角がその上限値よりも大きいと判定した場合には、コントローラ50は、ステップS16の処理を実行することなく、今回のプログラムの実行を終了する。
【0034】
一方、ステップS11において不審者による建物10への接近がないと判定した場合には、コントローラ50は、ステップS17において建物10の警備モードの判定を行う。そして、コントローラ50は、警備モードが「留守モード」であると判定した場合にはステップS18の処理に進み、警備モードが「在宅モード」であると判定した場合には今回のプログラムの実行を終了する。
【0035】
ステップS18では、コントローラ50は、建物10内に設置されている人感センサ(図5の人感センサ42参照)及び無線通信機46を用いて、不審者による建物10への侵入の有無を判定する。コントローラ50は、不審者による建物10への侵入があると判定した場合には、ステップS19においてシャッタ装置20の駆動部23を制御してシャッタカーテン21を所定時間だけ振動させた上で、ステップS20の処理に進む。不審者による建物10への侵入がないと判定した場合には、コントローラ50は、ステップS19〜S21の処理を実行することなく、今回のプログラムの実行を終了する。
【0036】
ステップS20では、コントローラ50は、圧力センサ38a,38b及び流量センサ39の出力信号に基づいて、建物10の1階部分の層間変形角がその上限値以下か否かを判定する。そして、コントローラ50は、建物10の1階部分の層間変形角がその上限値以下と判定した場合には、ステップS21においてポンプ装置37を制御して建物ユニットU1を所定時間だけ振動させた上で、今回のプログラムの実行を終了する。これにより、外壁材15を含む建物10全体が振動する。建物10の1階部分の層間変形角がその上限値よりも大きいと判定した場合には、コントローラ50は、ステップS21の処理を実行することなく、今回のプログラムの実行を終了する。
【0037】
以上の構成により、以下に示す有利な効果が得られる。
【0038】
不審者の建物10への接近や侵入に伴って、シャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させた。具体的には、建物10周辺や建物10内の不審者を検出し、不審者が検出された場合に、シャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させた。このシャッタカーテン21や建物ユニットU1(外壁材15を含む建物10全体)の振動で不審者に対し警告を与えることにより、不審者による建物10への接近や侵入を抑止することができ、建物の防犯性を高めることができる。
【0039】
特に、仕切部材(シャッタカーテン21や外壁材15)の振動は、建物10周辺の不審者にとって認識されやすく、不審者による建物10への接近を効果的に抑止することができる。不審者による建物10への接近を抑止することにより、建物への被害、例えば窓サッシ14の窓ガラスが割られることを未然に防ぐことができる。また、外壁材15を含む建物10全体の振動は、建物10に侵入した不審者に対する効果的な警告となり得る。
【0040】
建物10の使用者が在宅中か否かに応じた態様で、シャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させた。具体的には、建物10周辺に不審者が存在すると判定された場合において、建物10の警備モードが「在宅モード」である場合には、シャッタカーテン21を振動させ(図6のステップS13参照)、建物10の警備モードが「留守モード」である場合には、シャッタカーテン21に加え、建物ユニットU1を振動させた(図6のステップS14,S15参照)。これにより、建物10の居住性を維持しつつ、建物10の防犯性を高めることができる。すなわち、建物10の使用者の在宅中には、建物ユニットU1を振動させないため、外壁材15を含む建物10全体の揺れにより当該建物10の使用者に不快感を与えることはない。また、建物10の使用者の留守中には、建物ユニットU1を振動させることにより、不審者に対し効果的な警告を与えることができる。
【0041】
シャッタ装置20や制振装置30の油圧ダンパ32を用いて、シャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させた。シャッタ装置20や制振装置30が設置されている建物については、本実施形態のように、これらのシャッタ装置20や制振装置30の油圧ダンパ32を、シャッタカーテン21や建物ユニットU1を振動させるアクチュエータとして用いることにより、防犯システムを設置する上でコスト(イニシャルコスト)を削減することができる。
【0042】
建物10の1階部分の層間変形角が上限値よりも大きい場合には、建物ユニットU1を振動させるための処理2を実行しないようにした。これにより、建物10の防犯性を高めつつ、当該建物10の外壁材15や天井クロス等の内装の破損を防ぐことができる。
【0043】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0044】
・上記実施形態では、建物10周辺又は建物10内に人がいるか否かの判定結果と、建物10の使用者の識別情報とに基づいて、不審者による建物10への接近や侵入の有無を判定した。しかしながら、これに限られず、時間帯と、建物10周辺又は建物10内に人がいるか否かの判定結果とに基づいて、不審者による建物10への接近や侵入の有無を判定してもよい。例えば、深夜帯において建物10周辺に人を検出した場合に、不審者が建物10に接近した旨を判定することが考えられる。また、建物10の使用者が在宅か否かの判定結果と、建物10周辺又は建物10内に人がいるか否かの判定結果とに基づいて、不審者による建物10への接近や侵入の有無を判定してもよい。例えば、建物10使用者の留守時において建物10内に人がいる場合に、不審者が建物10に侵入した旨を判定することが考えられる。
【0045】
・不審者による建物10への侵入前か侵入後かに応じて、仕切部材の振動態様を異ならせることが好ましい。例えば、不審者による建物10への侵入前と不審者による建物10への侵入後とで、シャッタカーテン21の振動の大きさを異ならせることが考えられる。具体的には、図6のステップS13,14ではシャッタカーテン21を小さく振動させ、図6のステップS19ではシャッタカーテン21を大きく振動させる。これにより、建物10への侵入に伴って建物10の警戒レベルが上がったことを不審者に認識させることができ、建物10に侵入した不審者に対し建物10外への退去を迫ることができる。この場合、シャッタカーテン21を小さく振動させることが「第1の態様」に相当し、シャッタカーテン21を大きく振動させることが「第2の態様」に相当する。
【0046】
・不審者の建物10周辺や建物10内における滞在時間に応じて、仕切部材の振動態様を変化させることが好ましい。例えば、不審者の建物10周辺や建物10内における滞在時間が長くなるほど、シャッタカーテン21の振動を大きくすることが考えられる。これにより、建物10周辺や建物10内に滞在する不審者に退去を迫ることができる。
【0047】
・不審者の滞在場所や不審者による建物10への接近経路に応じて、建物10のシャッタカーテン21や建物ユニットU1の振動態様を異ならせてもよい。例えば、図1の人感センサ41の検出領域A2に含まれ、かつ、人感センサ40の検出領域A1に含まれない領域A3内に不審者が存在する場合には、建物ユニットU1を振動させることが好ましい。すなわち、上記領域A3内にいる不審者に対してはシャッタカーテン21の振動が認識されにくいため、建物ユニットU1を振動させることで、外壁材15を含む建物10全体の振動、特に外壁材15bの振動等により建物10に接近する不審者に対し確実に警告を与えることができる。
【0048】
・上記実施形態では、建物10のシャッタカーテン21及び建物ユニットU1のうち振動させるものを異ならせることにより、仕切部材の振動態様を変化させた。しかしながら、これに限られず、仕切部材の振動の大きさや周期を異ならせることにより、上記振動態様を変化させてもよい。例えば、図6のステップS13とステップS14とでシャッタカーテン21の振動の大きさを異ならせることが考えられる。
【0049】
・建物ユニットとして、水平方向に架設される上下一対の梁材のうちいずれか一方(床大梁又は天井大梁)を設けない構成が考えられる。例えば、ガレージを構成するための建物ユニットでは、柱の上端部を連結する上大梁はあっても、柱の下端部を連結する下大梁(地上レベルの梁材等)がない構成が採用される。かかる場合、建物ユニットに取り付けられる制振装置の構造が上記の制振装置30(図3)とは相違する。図7には、建物ユニットを構成する柱18と天井大梁17とを示しており、左右の柱18間には、一方の柱18の下端部と他方の柱18の上端部とを連結するようにして筋交い部材61が設けられている。そして、その筋交い部材61の途中に、制振装置としての粘性ダンパ62が設けられている。粘性ダンパ62は、例えば上述した油圧ダンパ32と同様に油圧式ダンパであり、シリンダ内部のオイルの粘性抵抗によって、地震発生時などにおいて建物(建物ユニット)の変形を抑制するものである。なお、油圧回路部63の構成も、上述した油圧回路部35に準ずるものとなっている。
【0050】
本構成においても、不審者による建物への接近及び侵入のいずれかが検出された場合に、粘性ダンパ62を伸縮させるよう当該粘性ダンパ62の駆動を制御することにより、建物10の外壁部に振動を生じさせるようにする。これにより、建物の防犯性を高めることが可能となる。
【0051】
・不審者による建物10への接触を不審者による建物10への接近として検出してもよい。例えば、建物10の仕切部材(シャッタカーテン21や外壁材15や窓サッシ14のガラス窓)への接触に伴う当該仕切部材の静電容量の変化を検出するセンサを備え、そのセンサ値に基づいて不審者による建物10への接近を検出することが考えられる。
【0052】
・制振装置30を用いて建物ユニットU1を振動させることにより、窓サッシ14を振動させてガタ付き音を発生させることが可能である。この場合、上記窓サッシ14のガタ付き音で不審者に対し警告を与えることができる。
【0053】
・建物10にその屋内外を連通する窓部(例えば、掃き出し窓13)が設けられるとともに、その窓部を開閉する電動式のシャッタ装置が設置されている場合には、そのシャッタ装置のシャッタカーテンを振動させてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、不審者による建物10への接近や侵入があると判定された場合のシャッタカーテン21の振動を図6の防犯プログラムにより制御した。しかしながら、これに限られず、上記シャッタカーテン21の振動を専用の回路により制御してもよい。例えば、不審者による建物10への接近や侵入がないと判定された場合のシャッタカーテン21の昇降を制御する通常回路と、不審者による建物10への接近や侵入があると判定された場合のシャッタカーテン21の振動を制御する非常回路とを備え、不審者による建物10への接近や侵入の有無に応じて、これらの回路とシャッタ装置20との接続を切り替えることが考えられる。
【0055】
・ガレージ11内の車両を用いて、不審者に対し警告を与えてもよい。例えば、不審者による建物10への接近があると判定された場合には、シャッタカーテン21を僅か(不審者が車両出入口12から建物10に侵入できない程度)に上昇させるとともに、ガレージ11内の車両の前照灯を点灯又は点滅させることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】建物の概略構成を示す図。
【図2】建物ユニットの配置を示す平面図。
【図3】制振装置の構成を示す図。
【図4】油圧ダンパの構成を示す図。
【図5】防犯システムの構成を示す図。
【図6】防犯プログラムの流れを示すフローチャート。
【図7】別の形態において制振装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0057】
10…建物、15…外壁材(仕切部材)、16…床大梁(第1梁材)、17…天井大梁(第2梁材)、20…シャッタ装置(振動発生手段)、21…シャッタカーテン(仕切部材、開閉部材)、23…駆動部、30…制振装置(振動発生手段)、32…油圧ダンパ(振動発生手段、アクチュエータ、粘性ダンパ)、37…ポンプ装置(振動発生手段、ポンプ部)、40…人感センサ(不審者検出手段)、46…無線通信機(不審者検出手段)、50…コントローラ(不審者検出手段、振動制御手段、変位判定手段、在宅判定手段)、62…粘性ダンパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不審者による建物への接近及び侵入のいずれかを検出する不審者検出手段と、
建物の屋内外を仕切る仕切部材に設けられ、当該仕切部材に振動を発生させる振動発生手段と、
前記不審者検出手段により不審者による建物への接近及び侵入のいずれかが検出された場合に、前記振動発生手段により前記仕切部材を振動させる振動制御手段と、
を備えていることを特徴とする建物の防犯システム。
【請求項2】
水平方向に架設された梁材を備え、前記梁材の屋外側に前記仕切部材として外壁材が設けられている建物に適用され、
前記振動発生手段は、前記梁材を水平方向に変位させるアクチュエータを有し、
前記振動制御手段は、前記アクチュエータの駆動を制御することにより前記仕切部材を振動させるものである請求項1に記載の建物の防犯システム。
【請求項3】
前記梁材として、基礎上に設けられた第1梁材と、前記第1梁材に対し上下に対向するように設けられた第2梁材とを備え、前記第2梁材の屋外側に前記仕切部材として外壁材が設けられている建物に適用され、
前記アクチュエータは、前記第2梁材を前記第1梁材に対し水平方向に変位させるものであり、
前記振動制御手段は、前記アクチュエータの駆動を制御することにより前記第2梁材の前記第1梁材に対する相対位置を変動させるものである請求項2に記載の建物の防犯システム。
【請求項4】
前記梁材の水平方向の変位を抑制する粘性ダンパを有する制振装置を備えている建物に適用され、
前記アクチュエータとして、前記粘性ダンパと、当該粘性ダンパ内に粘性流体を強制給排するポンプ部とを用い、
前記振動制御手段は、前記梁材の変位を相反する2方向で交互に行わせるように前記ポンプ部による粘性流体の給排を制御する請求項2又は3に記載の建物の防犯システム。
【請求項5】
前記梁材の水平方向の変位又はその相関値が所定値以上か否かを判定する変位判定手段を備え、
前記振動制御手段は、前記変位判定手段により前記梁材の水平方向の変位又はその相関値が所定値以上と判定された場合に、前記アクチュエータの駆動による前記仕切部材の振動処理の実行を停止する請求項2乃至4のいずれか一項に記載の建物の防犯システム。
【請求項6】
建物の屋内外を連通する開口部を開閉する開閉部材を、前記仕切部材として備える建物に適用され、
前記振動発生手段は、前記開閉部材を開閉駆動する駆動部を有し、
前記振動制御手段は、前記駆動部の駆動を制御することにより前記仕切部材を振動させるものである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の防犯システム。
【請求項7】
建物の使用者が在宅か否かを判定する在宅判定手段を備え、
前記振動制御手段は、前記在宅判定手段による判定結果に応じた態様で、前記振動発生手段により前記仕切部材を振動させる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物の防犯システム。
【請求項8】
前記振動制御手段は、前記不審者検出手段により不審者による建物への接近が検出された場合には、第1の態様で前記振動発生手段により前記仕切部材を振動させ、前記不審者検出手段により不審者による建物への侵入が検出された場合には、前記第1の態様とは異なる第2の態様で前記振動発生手段により前記仕切部材を振動させる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の建物の防犯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−140128(P2010−140128A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313932(P2008−313932)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】