建物安全モニタリングシステム
【課題】免震ピット内を自動的にモニタリングすることができる建物安全モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】免震ピット9内の点検対象物の情報を収集する情報収集ロボット200と、情報収集ロボットが収集した情報を受信して外部に送信するロボットステーション300と、ロボットステーションから受信した情報に基づいて点検対象物の状態を判断するコントロールセンター110と、を備え、情報収集ロボットは、点検対象物の情報を収集する情報収集手段と、免震ピット内を移動するための駆動手段と、を備えている。
【解決手段】免震ピット9内の点検対象物の情報を収集する情報収集ロボット200と、情報収集ロボットが収集した情報を受信して外部に送信するロボットステーション300と、ロボットステーションから受信した情報に基づいて点検対象物の状態を判断するコントロールセンター110と、を備え、情報収集ロボットは、点検対象物の情報を収集する情報収集手段と、免震ピット内を移動するための駆動手段と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の安全性を自動的にモニタリングするシステムに関し、特に免震装置が設置された免震ピット内の点検を自動的に行うことが可能な建物安全モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震による建築物の破壊を防止するため、近年、中層、高層建築物に免震構造が採用されている。免震構造化は、天然積層ゴム支承を設置して建築物と地盤を構造的に絶縁したり、オイルダンパーを設置して地震動を減衰させること等によって実現される。これらの免震装置は、建築物の地下或いは中間層に設けられた免震ピット内に設置される。特許文献1には、免震装置が設置された免震ピットを有する建築物が記載されている。
免震装置に限らず建築物については定期点検を行う必要があるが、点検時期は、例えば竣工後、1年、5年、10年、以降10年ごとというように、その周期が比較的長期である。免震装置も定期点検の対象となっているが、特別な事情がなければ定期点検以外の時期に免震ピット内に人が立ち入ることはない。従って、免震ピット内に設置された各装置や設備に不具合が生じたとしても、長期間放置されて不具合の発見が遅れる可能性がある。
上記問題を解決する発明として特許文献2には、構造ヘルスモニタリングシステムについて記載されている。構造ヘルスモニタリングでは、建築物の状況を示すヘルスモニタリング用のセンサ(加速度センサ、温度センサ、湿度センサ等)を建築物内に設置し、これらセンサからのセンシング情報を、通信インフラを用いて常時モニタリングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−140970公報
【特許文献2】特開2009−162661公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、耐力壁等の構造体に生じたクラックや配管設備等に生じた錆などは、目視による確認(或いはカメラ画像による確認)が必要不可欠である。これらは上記構造ヘルスモニタリングシステムでは検知することができない情報である。また、構造ヘルスモニタリングシステムを用いたとしても免震ピット内の点検を自動的に行うことができるわけではない。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、免震ピット内の点検を自動的に行うことができる建物安全モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、免震装置が設置された構造物の免震ピット内に配置されて該免震ピット内の情報を収集する情報収集ロボットと、前記情報収集ロボットが収集した情報を受信して外部に送信するロボットステーションと、該ロボットステーションから受信した情報に基づいて前記免震ピット内の状態を判断するコントロールセンターと、を備え、前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の情報を収集する情報収集手段と、前記免震ピット内を移動するための駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
請求項1の発明では、情報収集ロボットが駆動手段により免震ピット内を移動して免震ピット内の情報を収集し、ロボットステーションを介してコントロールセンターに送信する。コントロールセンターでは、ロボットが収集した情報をもとに、免震ピット内の状態を判断する。
請求項2に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、前記物体までの距離及び該物体の形状を非接触にて測定する距離画像センサと、前記測距手段と前記距離画像センサからのセンシング情報に基づいて移動ルートを決定する移動ルート制御手段と、を備えていることを特徴とする。
請求項2の発明では、情報収集ロボット周囲の物体に関するセンシング情報を測距手段と距離画像センサとから取得し、取得したセンシング情報に基づいて障害物等の存在を認知する。例えば、障害物を回避する必要があると判断される時には、障害物を回避する移動ルートを移動ルート制御手段が演算により決定するので、情報収集ロボットが自律的に移動することができる。
【0006】
請求項3に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段からの測距情報に基づいて前記免震ピット内における情報収集ロボットの位置を推定する位置推定手段と、を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明では、情報収集ロボット周囲の物体に関する情報を測距手段から取得する。取得した測距情報に基づいて免震ピット内における情報収集ロボットの位置を推定する。情報収集ロボットは、免震ピット内における位置を常時把握しながら情報収集を行う。
請求項4に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、前記ロボットステーションから指示を受けた場合、前記ロボットステーションを介して前記コントロールセンターから指示を受けた場合、又は前記ロボット自身が備える検知センサの検知情報に基づく場合に、前記免震ピット内の情報を収集することを特徴とする。
請求項4の発明では、情報収集ロボットは、外部からの指令に基づいて、又は自主的に、免震ピット内の情報を収集する。
【0007】
請求項5に記載の発明は、前記情報収集ロボットは前記情報収集手段として、前記免震ピット内の画像を撮影するカメラと、前記免震ピット内周辺の音を集音するマイクと、前記免震ピット内周辺の温度、及び/又は、湿度を測定する温度・湿度センサと、の何れかを備えていることを特徴とする。
請求項5の発明では、免震ピット内の各部に関する情報を得る手段として、カメラ、マイク、温度・湿度センサの何れかを有している。
請求項6に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の特定の点検対象物の情報を収集することを特徴とする。
請求項6の発明において情報収集ロボットは、免震ピット内を移動して、特定の対象物に関する情報を収集する。
請求項7に記載の発明は、前記点検対象物が免震装置であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、特に普段人の目に触れることがない免震装置の状態を、任意のタイミングで把握することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、免震ピット内を自在に移動する情報収集ロボットにより免震ピット内の情報を収集し、この情報に基づいて免震ピット内の状態を判断するので、点検作業員が現場に直行する必要が無く、且つ任意のタイミングで免震ピット内の点検を行うことかできる。従って、免震ピット内に設置された免震装置、耐力壁等の構造体、或いはその他の設備の不具合を早期に発見することができる。また、地震発生直後等に実施しなければならない臨時点検を情報収集ロボットにより行うことができるので、速やかな情報収集が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】免震ピットを有する建築物の軸組図である。
【図2】図1に係る建築物の免震層伏図である。
【図3】図1に係る建築物の1階伏図である。
【図4】免震装置の一つである天然積層ゴム支承を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)はボルトに付されたマーキングを示す斜視図である。
【図5】免震継手により接続された配管の一例を示す図である。
【図6】被災時における臨時点検内容の一例を示す表である。
【図7】本発明に係る建物安全モニタリングシステムの概略構成図である。
【図8】ロボットステーション及び情報収集ロボットの概略側面図である。
【図9】情報収集ロボットの機能ブロック図である。
【図10】定期監視について示したシーケンスチャート図である。
【図11】停電時緊急監視に関わるロボットステーションの機能ブロック図である。
【図12】停電時緊急監視について示したシーケンスチャート図である。
【図13】ヘルスモニタリング用センサの異常値検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。
【図14】P波検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。
【図15】遠隔操作について示したシーケンスチャート図である。
【図16】振動による監視について示したシーケンスチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔免震ピット、及び免震ピット内設備〕
本発明に係る建物安全モニタリングシステムを構成する情報収集ロボットが設置される建築物について図1に基づいて説明する。図1は、免震ピットを有する建築物の軸組図である。図2は、図1に係る建築物の免震層伏図である。図3は、図1に係る建築物の1階伏図である。図4は、免震装置の一つである天然積層ゴム支承を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)はボルトに付されたマーキングを示す斜視図である。
建築物1(構造物)は、地盤面に設置される基礎3と、基礎3の上部に配置された上部構造体5とを有しており、基礎3と上部構造体5の間には免震装置7が設置された免震ピット9(免震層)を備えている。図示する建築物1は基礎免震構造の建築物の例である。他にも、下部構造体と上部構造体との間に免震装置7を配置する中間免震構造をとる場合もある。なお、本発明はいずれの免震構造についても適用可能である。以下「下部構造体」については、基礎を含む概念として説明する。
【0011】
図2に示すように、免震ピット9には、免震装置7として天然積層ゴム支承10とオイルダンパー20が設置されている。
天然積層ゴム支承10は水平免震機構の一つであり、建築物と地盤を絶縁し、地震の揺れ周期を長周期化することで地震による被害を抑制する。天然積層ゴム支承10は、鋼板とゴムとが交互に積層された積層ゴムの周囲を、被覆ゴム11にて被覆した構成を有している(図4(a)参照)。また、上下方向(積層方向)両端部はフランジ状の取付プレート13(鋼材部)が配置されている。2つの取付プレート13のうち、下部プレート13aは下部構造体3の上面にボルト15により固定され、上部プレート13bは上部構造体5の底面にボルト15により固定される。図4(b)に示すように、天然積層ゴム支承10の設置時には、ボルト15の緩み測定用に、ボルト15から座金16、取付プレート13にかけて直線状のマーキング17が施される。このマーキング17のずれを目視確認することで、ボルト15がどの程度緩んだかを確認することができる。
【0012】
オイルダンパー20は減衰装置の一つであり、地震エネルギーを吸収し、地震動による揺れを速やかに減衰させる。オイルダンパー20の一端は下部構造体3とボルトにより接続され、他端は上部構造体5とボルトにより接続されている。なお、このボルトにも天然積層ゴム支承10のボルト15と同様に緩み測定用のマーキングが施されている。
免震ピット9内には、上記免震装置7のほか、給排水配管、ガス配管、電気配線、電話線等(図2中、不図示)が配置されている。
配管類については、地震時における相対変位に対して設備配管及びその支持架台が損傷を受けることがないように免震継手を用いて接続される。
【0013】
図5は、免震継手により接続された配管の一例を示す図である。この給水配管31の中途には、免震継手33が水平方向に取り付けられており、水平・垂直全方向に対して変位を吸収可能となっている。免震継手33としては、例えばメタル製フレキシブル可とう継手を用いることができる。水平方向ではなく、垂直方向に免震継手を取り付けたり、給水配管の屈曲部の近傍に免震継手をL型に配置する等により変位を吸収する。
設備配管の変位吸収能力は、地震時における下部構造体3と上部構造体5の最大相対変位に基づいて決定されている。例えば、終局地震時の水平変位が500mm、垂直変位が100mmであるとき、設備配管の変位吸収能力は、水平方向については600mm、垂直方向については200mmと設定される。
電線及び電話線については、余長を設け、地震時に発生する相対変位を吸収可能とする。
免震ピット9内から観察可能な建築物1の構造体としては、図2に示す耐力壁41、図3に示す一階床梁43、及び免震装置上側フーチング45を挙げることができる。これらの構造体も、免震ピットの点検の際に合わせて点検される。
【0014】
〔免震ピットの点検項目〕
免震ピットの点検項目について説明する。非常時に免震装置が確実に機能を発揮するように、また設備を適切に維持管理するため、免震ピット内の装置等については、点検時期及び内容が規定されている。例えば、定期点検としては、年1回の通常点検、5年ごとに行われる定期点検等がある。また、大きな地震を受けた後や台風、洪水などの災害、火災などがあった場合(被災時)には、その直後に臨時点検を行うことが規定されている。
図6は、被災時における臨時点検内容の一例を示す表である。図示するように、大半の調査が目視による確認である。例えば、図4に示す天然積層ゴム支承10の場合は、被覆ゴム11の外観に、変色、傷、ふくれ変形があるか否かを目視確認する。傷がある場合は傷の長さを計測し、ふくれ変形がある場合はふくれ部の高さを計測する。オイルダンパー20については、発錆や傷の有無を目視確認する。また、免震層・建築物外周部、及び設備配管・配線可撓部についても点検が行われる。
点検項目のうち、特に目視による確認の対象となっている装置等については、建物安全モニタリングシステムにより情報を収集して、各装置等の状態が判断される。
【0015】
〔建物安全モニタリングシステムの概要〕
以下、本発明に係る建物安全モニタリングシステムについて説明する。図7は、本発明に係る建物安全モニタリングシステムの概略構成図である。なお、本実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
本発明に係る建物安全モニタリングシステム100は、モニタリング対象である建築物1(1a、1b)の免震ピット9(9a、9b)内に設置されて、免震ピット9内を自在に移動して点検対象物の情報を収集する情報収集ロボット200と、平時において情報収集ロボット200の待機場所となるとともに、情報収集ロボット200が収集したデータを外部に送信するロボットステーション300と、ロボットステーション300から送信されたデータを受信して情報を蓄積するコントロールセンター110と、を備えている。コントロールセンター110とロボットステーション300とは、ネットワークNにより互いに接続されており、有線(又は無線)によりデータの送受信を行うことができる。
図7では、モニタリング対象となる建築物1としてA地点の建築物1a、B地点の建築物1bを示しており、夫々の建築物に情報収集ロボット200とロボットステーション300が設置されている。また、夫々の建築物には、ヘルスモニタリング用センサ120(120a、120b)が設置されている。以下、特にA地点とB地点とを区別することなく説明する。
【0016】
〔コントロールセンター〕
コントロールセンター110では、建築物1に設置されたヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報や、ロボットステーション300からの情報を収集し、蓄積管理するとともに、収集した情報の解析を行うことにより、点検対象物(免震装置、免震層・建築物外周部、及び設備配管・配線可撓部)の状態を判断する。また、必要なデータの出力を行ったり、情報収集ロボット200の遠隔操作を行う。これらは、コントロールセンター110に設置された集中管理装置111により行われる。
集中管理装置111としては、CPU、メモリ(ROM、RAM)、記憶手段(HDD)、操作入力手段、表示手段、通信手段等を有する一般的なコンピュータ装置から構成することができる。
集中管理装置111は、建築物に設置されたヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報を、ネットワークNを介して受信すると共に、ネットワークNを介してロボットステーション300との間で必要なデータを送受信する。
集中管理装置111の記憶手段は、受信したセンシング情報、及び情報収集ロボット200が収集したデータを蓄積する。表示手段は、ヘルスモニタリング用センサ120及びロボットステーション300から送信されたデータや、情報収集ロボット200の遠隔操作に必要な情報等を表示する。操作入力手段は、情報収集ロボット200を遠隔操作するために必要な入力を受け付ける。
【0017】
また、集中管理装置111は、ヘルスモニタリング用センサ120及びロボットステーション300から収集されたデータを帳票として出力する帳票作成ソフトウェア(帳票作成手段)や、収集されたデータを解析して建築物の状態を診断する解析ソフトウェア(解析手段)等を備えている。これら2プログラムは記憶手段に記憶されており、メモリ(RAM)に格納された後、CPUにて実行処理される。なお、集中管理装置111は、1箇所にまとめて設置されていても良いし、集中管理装置111の有する各機能を異なる場所に分散して配置してもよい。
【0018】
〔ヘルスモニタリング用センサ〕
建物安全モニタリングシステム100による監視対象となる建築物1には、建築物1の状況を示すヘルスモニタリング用センサ120が設置されている。ヘルスモニタリング用センサ120は、例えば加速度センサ、温度センサ、湿度センサ等から構成されている。ヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報は、不図示の送信装置によりネットワークNを介してコントロールセンター110に常時送信されるようになっており、コントロールセンター110において建築物1の構造ヘルスモニタリングが可能である。ヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報は、コントロールセンター110の集中管理装置111の記憶手段に蓄積され、後に利用される。なお、ヘルスモニタリング用センサ120は、免震ピット9内に設置されているか、免震ピット9以外の箇所に設置されているかを問わない。
【0019】
〔ロボットステーション、及び情報収集ロボット〕
以下、ロボットステーション及び情報収集ロボットについて説明する。図8は、ロボットステーション及び情報収集ロボットの概略側面図である。建築物1の免震ピット9には、免震ピット9内を巡回する情報収集ロボット200、及び平常時において情報収集ロボット200が待機し、巡回後の情報収集ロボット200が帰還する装置であるロボットステーション300が配置されている(図7参照)。
【0020】
〔ロボットステーション〕
ロボットステーション300は、制御装置及びバッテリが内蔵されたベース部301と、ベース部301後方(情報収集ロボット待機側)に配置されて、ロボットステーション300に帰還してきた情報収集ロボット200の前方部分と当接して、帰還時の衝突による機器類の損傷を防止するバンパー303と、電気エネルギーを情報収集ロボット200に供給する送電プラグ305と、情報収集ロボット200との間でデータ通信を行うステーション側通信アンテナ307と、を備えている。
ベース部301に内蔵された制御装置(不図示)には、CPU、メモリ(ROM/RAM)、HDD(記憶手段)、通信手段(有線及び無線)等を備えた一般的なノート型のパーソナルコンピュータを使用することができる。HDDには、ロボットステーション300の動作に必要な制御ソフトウェアと、免震ピット内の地図情報が記憶されている。制御ソフトウェアは、メモリ(RAM)に読み込まれ、CPUにて実行される。また、建築物が停電して、ロボットステーション300の外部からの電力供給が遮断されたときには、情報収集ロボット200が収集したデータを一時的に保存する。通信手段は、コントロールセンター110との間でデータ通信を行い、情報収集ロボット200との間でデータ通信を行う通信手段である。なお、コントロールセンター110との間の通信は有線にて行われることを基本とするが、無線によるデータ通信を行う構成であっても良い。情報収集ロボット200との間の通信は無線にて行われる。制御装置の動作電源には、建築物から供給される電力を利用するが、建築物の停電時にはベース部301に内蔵されたバッテリにて動作する。
【0021】
送電プラグ305は、建築物からの電力供給があるときに、情報収集ロボット200に電力を供給する。情報収集ロボット200は、供給された電力をバッテリの充電に利用する。
ロボットステーション300は、情報収集ロボット200から受信した収集データをリアルタイムでコントロールセンター110に送信し、コントロールセンター110から受信した遠隔操作指令を情報収集ロボット200に送信する。この時のロボットステーション300は、データの中継装置として動作する。また、ロボットステーション300は、情報収集ロボット200のシステムメンテナンス機能(稼働時間の計測、OS・ソフトウェアのバージョンアップ、情報収集ロボット200が内蔵する地図情報の更新等)等を有している。
なお、本実施形態に関して、ロボットステーションが免震ピット内に設置される例により説明するが、ロボットステーションを免震ピット外に設置してもよい。この場合、情報収集ロボットが常時において待機し、充電する位置を免震ピットの任意の位置に設定する。
【0022】
〔情報収集ロボット〜外観〕
情報収集ロボットについて説明する。情報収集ロボット200は、平時にはロボットステーション300にて待機している。情報収集ロボット200は、自律して稼働する機械であり、またコントロールセンター110からの遠隔操作により必要な情報収集を行うことができる。また、情報収集に関わる一連の動作が完了した後には、ロボットステーション300に帰還する。
図8に示すように、情報収集ロボット200は、各部材を内蔵し、又は取り付ける際の基礎部分となるベース部201と、ベース部201に内蔵されて、情報収集ロボット200の各部の動作に必要な電源を供給するメインバッテリ(不図示)と、ベース部201の両側部に配置された駆動装置203と、ベース部201前方に配置された距離画像センサ205と、距離画像センサ205の直後方のベース部201上に配置されて温度及び湿度を計測する温度・湿度センサ207と、ベース部201の上部中央に基部209aが取り付けられた6軸のロボットアーム209と、ベース部201の後端部に搭載されて、情報収集ロボット200の動作を制御するロボット制御装置225と、ロボット制御装置225の上部に配置されて、ロボットステーション300との間でデータ通信を行うロボット側通信アンテナ227と、ロボット制御装置225の上部後方に配置されて、情報収集ロボット200の側方又は後方に位置する特定の物体(障害物)の検知を行う後方レーザーレンジファインダ229(後方測距手段)と、を備えている。
【0023】
図8中には、駆動装置203の一例としてクローラ(無限軌道)を示している。各側部のクローラが、夫々正逆自在に回転することにより、情報収集ロボット200を前進、後退、或いは回転させながら目標地点に移動させることができる。クローラは、情報収集ロボット200を自在に移動させる駆動装置203の一例であり、これに限定されるものではない。情報収集ロボット200を移動させることができれば、ゴムタイヤ等を用いても良い。なお、駆動装置203は、不図示の駆動部制御装置235にて、その動作が制御される。
距離画像センサ205は三次元測定器の一つであり、内蔵された赤外線LEDの光を特定の物体に照射し、反射した赤外線光の戻り時間を計測することで、物体との距離、及び物体の形状を非接触にて測定することができる。距離画像センサ205としては、例えばMicrosoft社のキネクトセンサ(登録商標)を利用することができる。本発明において距離画像センサ205は、主に情報収集ロボット200前方の障害物検知に使用される。
温度・湿度センサ207は、情報収集ロボット200周囲の温度及び湿度を計測するセンサである。温度・湿度センサ207によって計測された温度及び湿度を元に、建築物や免震ピットが異常な状態に置かれていないかを推測する。例えば、検知温度が高い場合は免震ピット内で火災が発生している可能性があると判断できる。また、検知湿度が高い場合は、免震ピット内の設備配管が破断し、上水又は汚水が免震ピット内に漏れている可能性、或いは集中豪雨により免震ピット内に雨水が入り込んだ可能性があると判断できる。
【0024】
ロボットアーム209は、各軸(関節)を所定の回転半以内で自在に回転させることにより、ベース部201に対するアーム先端部209bの角度や位置を自在に変更することができる。
アーム先端部209bには、駆動・自己位置推定系のセンサ、アーム制御系のセンサ、情報収集系の装置、及び電源系の器具が取り付けられている。
情報収集ロボット200は、アーム先端部209bに取り付けられた駆動・自己位置推定系のセンサとして、前方レーザーレンジファインダ211(前方測距手段)を備えている。前方レーザーレンジファインダ211は、照射した赤外線レーザーの反射光を受信することにより、情報収集ロボット200前方に位置する特定の物体(目標物又は障害物)までの距離を測定する装置である。本発明において前方レーザーレンジファインダ211は、情報収集ロボット200の位置測定用に使用される。
【0025】
また、アーム制御系のセンサとして、情報収集ロボット200の3次元的な加速度を計測する加速度センサ213と、ロボットアーム209の3次元的な傾きを計測するジャイロセンサ215と、を備えている。
また、情報収集系の装置として、免震ピット内の状況を画像(静止画像又は動画像)として撮影するカメラ217と、情報収集ロボット200周辺の音声を取得する無指向性のマイク219と、カメラ217による画像撮影時に撮影範囲を照らすライト221と、を備えている。
また、電源系の器具として、ロボットステーション300の送電プラグと接続することにより、情報収集ロボット200に電力を供給する受電プラグ223を備えている。供給された電力は、ベース部201に内蔵されたメインバッテリと、ロボット制御装置225に搭載されたサブバッテリの充電に用いられる。
【0026】
ロボット制御装置225は、周知のCPU、メモリ(ROM、RAM)、HDD等を備えたごく一般的なコンピュータ装置から構成することができ、例えばノート型のパーソナルコンピュータを利用することができる。
HDDには、情報収集ロボット200の動作に必要な複数の制御用ソフトウェアが格納されており、これらのソフトウェアは、RAMに読み込まれてCPUにて実行される。また、HDD内には免震ピット内の地図も格納されており、情報収集ロボット200が移動する際に、自己位置の推定及び移動先の決定等に用いられる。また、巡回中に取得した情報を一時的に記憶する手段としても用いられる。
【0027】
また、ロボット制御装置225には、サブバッテリ(不図示)が搭載されており、メインバッテリに不具合が発生したときの緊急用電源として使用される。なお、一般的なノート型パーソナルコンピュータに搭載されたバッテリをサブバッテリとして使用することができる。
ロボット側通信アンテナ227は、ロボット制御装置225の外部入出力手段であり、ロボットステーション300との間で無線通信を行う際に使用される。
後方レーザーレンジファインダ229は、前方レーザーレンジファインダ211と設置位置及び用途が異なるだけで、前方レーザーレンジファインダ211と同様のセンサである。
【0028】
〔情報収集ロボット〜機能ブロック〕
ここで、情報収集ロボット200の各部の動作について、機能ブロック図を用いて説明する。図9は、情報収集ロボットの機能ブロック図である。情報収集ロボット200を構成するハードウェア及びロボット制御装置225のHDDに記憶された制御用ソフトウェアは、その機能により、駆動・自己位置推定系、アーム制御系、情報収集系、通信系、及び電源系に分類することができる。これら、以下、これら各分類に従って順次説明する。
【0029】
駆動・自己位置推定系のうち、特に自己位置推定に関わる系には、距離画像センサ205と前方レーザーレンジファインダ211が含まれる。また、これらセンサからのセンシング情報は、位置推定ソフトウェア231にて処理される。情報収集ロボット200の自己位置推定動作について説明する。
前方レーザーレンジファインダ211は前方にある物体までの距離を測定し、測定結果を位置推定ソフトウェア231に送信する。距離画像センサ205は、対象物までの距離及びその三次元的な形状を計測し、計測により得られた情報を位置推定ソフトウェア231に送信する。位置推定ソフトウェア231は、情報収集ロボット200が存在している免震ピット内の3次元的な空間の情報を保持しており、主に前方レーザーレンジファインダ211のセンシング情報から、情報収集ロボット200の免震ピット内における3次元的な位置を推定する。なお、距離画像センサ205からのセンシング情報は、位置推定ソフトウェア231の補正用情報として使用される。位置推定ソフトウェア231による自己位置の推定結果は、後述する移動ルート制御ソフトウェア233に送信され、情報収集ロボット200の移動ルートの決定に使用される。
【0030】
駆動・自己位置推定系のうち、特に情報収集ロボット200の駆動に関わる系には、距離画像センサ205と、後方レーザーレンジファインダ229と、各センサからのセンシング情報に基づいて移動ルートを決定する移動ルート制御ソフトウェア233と、駆動装置203の動作を制御する駆動部制御装置235と、駆動装置203と、が含まれる。
情報収集ロボット200の駆動について説明する。距離画像センサ205は、対象物までの距離及びその三次元的な形状を計測し、計測により得られた情報を移動ルート制御ソフトウェア233に送信する。後方レーザーレンジファインダ229は、情報収集ロボット200の後方又は側方にある物体までの距離を測定することにより、情報収集ロボット200周囲にある障害物の情報を得る。そして、測定結果(障害物の情報等)を移動ルート制御ソフトウェア233に送信する。
移動ルート制御ソフトウェア233は、免震ピット内の地図を保持しており、位置推定ソフトウェア231により推定された情報収集ロボット200の現在位置から、移動先となる目標地点までの移動ルートを演算する。その際、後方レーザーレンジファインダ229及び距離画像センサ205からのセンシング情報に基づいて、情報収集ロボット200の移動ルートの演算を行う。仮に、後方レーザーレンジファインダ229又は距離画像センサ205により、情報収集ロボット200の移動経路上に何らかの障害物が存在することが検知された場合には、障害物の回避行動の決定(乗り越え又は迂回ルート演算)を行う。
【0031】
例えば、検知された障害物の大きさや形状が、クローラにて乗り越えても情報収集ロボット200が転倒しない程度である場合に、移動ルート制御ソフトウェア233は、そのまま情報収集ロボット200を前進させて障害物を乗り越えるように移動ルートを決定する。また、検知された障害物をクローラにて乗り越えたと仮定したときに情報収集ロボット200が転倒する可能性がある場合には、移動ルート制御ソフトウェア233は、障害物を回避し、目的地まで最短で移動することができる回避ルートを演算し、決定する。演算により決定された移動経路は、駆動部制御装置235に送信される。
駆動部制御装置235は、移動ルート制御ソフトウェア233により決定された移動経路に沿って情報収集ロボット200を移動させるように駆動装置203を動作させる。また、駆動装置203に何らかの不具合(動作不良、オーバーヒート等)が存在する場合、その内容を移動ルート制御ソフトウェア233に通信する。
駆動装置203は、駆動部制御装置235からの動作命令を受けて駆動し、情報収集ロボット200を移動させる。
また、遠隔操作で情報収集ロボット200を移動させる際には、コントロールセンター110から制御命令等の情報が送信される。移動ルート制御ソフトウェア233は、通信装置241が受信した制御命令等の情報を元に演算を行い、演算結果を駆動部制御装置235に通知し、駆動装置203を動作させる。
【0032】
アーム制御系は、主としてロボットアーム209の動作に関わる系であり、加速度センサ213と、ジャイロセンサ215と、ロボットアーム制御ソフトウェア237と、ロボットアーム制御装置239と、ロボットアーム209とが含まれる。
加速度センサ213は、情報収集ロボット200本体の3次元的な加速度を計測して、計測結果をロボットアーム制御ソフトウェア237に通知する。ジャイロセンサ215は、ロボットアーム209の3次元的な傾きを計測して、計測結果をロボットアーム制御ソフトウェア237に通信する。
ロボットアーム制御ソフトウェア237は、加速度センサ213から通知された加速度データ、及びジャイロセンサ215から通知された傾斜データに基づいて、ロボットアーム209を制御するための演算を行う。具体的には、位置推定ソフトウェア231による位置計測を正確に行うために、ロボットアーム209先端に取り付けられた前方レーザーレンジファインダ211を水平かつ、地上高を一定に保持する制御を行うための演算を行う。そして、演算結果をロボットアーム制御装置239に通信する。
【0033】
また、遠隔操作でカメラ217による画像撮影等を行う際には、コントロールセンター110から制御命令等の情報が送信される。ロボットアーム制御ソフトウェア237は、通信装置241が受信した制御命令等の情報を元に、ロボットアーム209の制御に必要な演算を行い、演算結果をロボットアーム制御装置239に通知する。
ロボットアーム制御装置239は、ロボットアーム制御ソフトウェア237からの情報を受け、ロボットアーム209を動作させる。ロボットアーム209は、ロボットアーム制御装置239によりその動作の指令を受けて動作する。
【0034】
情報収集系には、カメラ217と、温度・湿度センサ207と、マイク219と、が含まれる。カメラ217は、動画像又は静止画像を撮影して通信装置に送信する。温度・湿度センサ207は、情報収集ロボット200周辺の温度・湿度の情報を取得して通信装置に送信する。マイク219は、情報収集ロボット200周辺の音声を取得して通信装置に送信する。
【0035】
通信系には、通信装置241が含まれる。通信装置241は、ロボット側通信アンテナ227を備え、ロボットステーション300との間で無線通信を行う。情報収集系の各装置が収集した情報をロボットステーション300に無線送信する。なお、通信装置241は、大容量データ(動画像等)については、巡回中に順次ロボットステーション300にリアルタイムで送信し、比較的容量の少ないデータ(温度・湿度データ等)については、巡回終了までロボット制御装置225内のHDDに一時的に記憶しておき、巡回終了後にまとめてロボットステーション300に転送する。
情報収集ロボット200が外部からの遠隔操作によって作動する場合には、通信装置241がコントロールセンター110から送信される駆動装置の駆動に関する制御命令やロボットアーム209の制御命令等を受信し、夫々移動ルート制御ソフトウェア233とロボットアーム制御ソフトウェア237に通信する。
電源系には、メインバッテリ243とサブバッテリ245が含まれる。これらのバッテリは、上記各機能を動作させるための電源となる。
【0036】
〔建物安全モニタリングシステムの稼働シーケンス〕
上述のように構成された建物安全モニタリングシステムの稼働シーケンスの例について説明する。
【0037】
〔定期監視〕
定期監視について図10を用いて説明する。図10は、定期監視について示したシーケンスチャート図である。定期監視は、主として竣工時と比較して問題が発生していないかを確認するものである。定期監視は、ロボットステーション300からの指示に基づいて行われる。
ロボットステーション300は、定期巡回のスケジュール及びタイマを保持しており、定期巡回を行うべき日時が到来したときに、情報収集ロボット200に対して定期巡回開始指示を出す(ステップS1)。また、ロボットステーション300は情報収集ロボット200に対して、定期巡回ルートを指示する。
情報収集ロボット200は、定期巡回開始指示を受けて免震ピット内を巡回する(ステップS2)。情報収集ロボット200は、内部に保持している地図を元に、指示された巡回ルートに従って巡回する。図2、図3には、点線にて巡回ルートの一例を示している。図示するように、巡回ルートは免震ピット9内に設置された各免震装置7(天然積層ゴム支承10、オイルダンパー20)、構造体である耐力壁41、一階床梁43、及び免震装置上側フーチング45の状態を一度の巡回で確認できるように設定される。
なお、図3にロボットステーション300の位置及び情報収集ロボット200の巡回ルートを示したのは、これらの一階床梁43及び免震装置上側フーチング45に対する位置関係を示すためである。1階部分にロボットステーション300が配置され、或いは情報収集ロボット200により1階部分の巡回が行われるという意味ではない。
【0038】
距離画像センサ205等により巡回ルート上に障害物が検知された場合には、その検知情報に基づいて移動ルート制御ソフトウェア233が演算を行い、障害物の回避行動をとる。
情報収集ロボット200は、巡回中にカメラ217にて動画像を撮影すると共に、リアルタイムでロボットステーション300を介してコントロールセンター110に送信する(ステップS3)。なお、リアルタイムに送信される情報はコントロールセンター110において記憶手段に蓄積しないことを原則とする。また、巡回ルート中の所定のポイントでは、免震装置や各設備、構造体等の静止画像の撮影、そのポイントの気温・湿度の測定、及び音声の録音等を行う。これらのデータは、免震ピット内の位置を示すデータと共に情報収集ロボット200の記憶装置(RAM又はHDD)に一時的に記憶される。
なお、情報収集ロボット200からロボットステーション300までは無線通信、ロボットステーション300からコントロールセンター110までは有線通信にて情報の送受信が行われる。また、リアルタイム情報が送信されている時のロボットステーション300は、情報収集ロボット200とコントロールセンター110との間を中継する装置として動作する。
【0039】
情報収集ロボット200は、所定の巡回ルートを巡回し終えた場合には、ロボットステーション300に帰還する(ステップS4)。帰還後、記憶装置に一時的に記憶させたデータを、ロボットステーション300に転送する(ステップS5)。転送されたデータは、さらにコントロールセンター110に転送される(ステップS6)。情報収集ロボット200が巡回中に取得した各データは、コントロールセンター110の情報記憶装置に蓄積され(ステップS7)、その後の帳票の作成等に活用される。また、巡回に関わる全ての動作を完了した後の情報収集ロボット200は、ロボットステーション300から電気エネルギーをバッテリに充電し、次の巡回に備える(ステップS8)。
なお、情報収集ロボット200の巡回開始(ステップS2)から帰還(ステップS3)までの間に、コントロールセンター110からの遠隔操作により情報収集ロボット200を動作させるようにしても良い。情報収集ロボット200の遠隔操作シーケンスについては、後述する。
【0040】
〔停電時緊急監視〕
停電時緊急監視について説明する。この監視は、建築物に停電事故が発生した場合に、ロボットステーション300がこれを検知して、情報収集ロボット200に臨時的な巡回をさせるものである。
図11は、停電時緊急監視に関わるロボットステーションの機能ブロック図である。ロボットステーション300は電源として、建築物から供給される外部電源311(AC電源)と、バッテリ313との双方を備えている。建築物から電力が供給されている場合は外部電源311によって動作し、建築物からの電力供給が遮断された場合はバッテリ313によって動作する。また、ロボットステーション300は、外部電源311の断接を検知する電圧検知手段315と、電圧検知手段315の検知結果に基づいて情報収集ロボット200に巡回指示を出す制御手段317と、情報収集ロボット200からの情報を一時的に記憶する記憶手段319(HDD等)と、情報収集ロボット200との間で通信を行う無線通信装置321と、コントロールセンター110との間で通信を行う有線通信装置323とを備えている。電圧検知手段315は、外部電源311の電圧が所定時間消失した場合に停電と判断する。なお、この時間(無通電時間)は任意の値に設定可能である。
【0041】
図12は、停電時緊急監視について示したシーケンスチャート図である。停電時の建物安全モニタリングシステム100の動作は以下の通りである。
ロボットステーション300は、電圧検知手段315により外部電源311の電圧が検知されなくなった場合に、建築物に停電事故が発生したと判断し、情報収集ロボット200に対して緊急巡回を開始するように指示を出す(ステップS11)。また、合わせて巡回ルートを指示する。この巡回ルートは、図2及び図3に示した定期巡回ルートと同一であっても良いし、これとは別に設定されても良い。
巡回開始指示を受けた情報収集ロボット200は内部に保持している地図を元に、ロボットステーション300から指示された巡回ルートに従って免震ピット内を巡回する(ステップS12)。なお、このシーケンスの場合、情報収集ロボット200は、巡回中に動画像を撮影せず、データのリアルタイム送信は行わない。情報収集ロボット200は、巡回ルート中の所定のポイントにおいて免震装置等の静止画像の撮影、気温・湿度の測定、及び音声の録音等を行う。これらのデータは比較的小容量のデータであり、得られた情報を内蔵された記憶装置に一時的に蓄積する。
情報収集ロボット200は、所定の巡回ルートを巡回し終えた場合には、ロボットステーション300に帰還する(ステップS13)。帰還後、記憶装置に一時的に記憶させたデータを、ロボットステーション300に転送する(ステップS14)。ロボットステーション300は、情報収集ロボット200から受け取ったデータを、内蔵の記憶手段319に蓄積する(ステップS15)。外部電源311が復帰したことを電圧検知手段315が検知した後、蓄積された情報をコントロールセンター110に転送する(ステップS16)。また、外部電源311の復帰後に情報収集ロボット200への充電を行う(ステップS17)。
【0042】
〔ヘルスモニタリング用センサの異常値検知による緊急監視〕
建築物に設置されたモニタリングセンサが異常値を検知した場合の緊急監視について図13を用いて説明する。図13は、ヘルスモニタリング用センサの異常値検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。この監視は、コントロールセンターに常時送信されるヘルスモニタリング用センサのセンシング情報に異常値が含まれていた場合に、コントロールセンターからの通知を受けて情報収集ロボットが臨時的な巡回をするものである。
建築物1に設置されたヘルスモニタリング用センサ120(図7参照)から送信されたセンシング情報に異常値が含まれていることをコントロールセンター110が検知すると(ステップS21)、コントロールセンター110は、ヘルスモニタリング用センサ120のセンシング情報から異常が発生したと推定される箇所(異常箇所)を特定し、「異常箇所位置情報」としてロボットステーション300に送信する(ステップS22)。
異常箇所位置情報を受信したロボットステーション300は、記憶手段に保持している免震ピットの地図上に異常箇所をマッピングし(ステップS23)、異常箇所に直行するよう情報収集ロボット200に指示する(ステップS24)。このとき、情報収集ロボット200に対して異常箇所のマッピングデータも送信する。
【0043】
情報収集ロボット200は、ロボットステーション300からの直行指示と異常箇所のマッピングデータを受信すると、ロボットステーション300から異常箇所までのルートを移動ルート制御ソフトウェア233にて演算し、指示された異常箇所に直行する(ステップS25)。
移動中の情報収集ロボット200の視点映像は、ロボットステーション300を介してリアルタイムでコントロールセンター110に送信される(ステップS26)。
コントロールセンター110では、異常箇所に到着した情報収集ロボット200を遠隔操作して、異常箇所、及びその周辺の情報を取得させる(ステップS27)。なお、遠隔操作のシーケンスついては、後述する。
コントロールセンター110からの遠隔操作終了指示を受けて、情報収集ロボット200はロボットステーション300に帰還する(ステップS28)。なお、ステップS27に示したコントロールセンター110からの遠隔操作がない場合、情報収集ロボット200は異常箇所にて所定時間待機した後、ロボットステーション300への帰還行動をとる。
帰還後、ステップS5からステップS8までの動作を行う。
【0044】
〔P波検知による緊急監視〕
P波検知による緊急監視について図14を用いて説明する。図14は、P波検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。この監視は、コントロールセンター110にてP波を検知した場合、又は気象庁からの緊急地震速報を受信した場合に、コントロールセンター110からの通知を受けて情報収集ロボット200が臨時的な巡回をするものである。
コントロールセンター110がP波を検知し、又は気象庁からの緊急地震速報を受信すると(ステップS31)、コントロールセンター110は、P波が検知された旨を「緊急監視情報」としてロボットステーション300に送信する(ステップS32)。
緊急監視情報を受信したロボットステーション300は、予め定められた重要点検箇所に直行するよう情報収集ロボット200に指示する(ステップS33)。重要点検箇所には、例えば免震装置の設置箇所が指定される。情報収集ロボット200は、ロボットステーション300からの直行指示を受けて、ロボットステーション300から重要点検箇所までのルートを移動ルート制御ソフトウェア233にて演算し、直行する(ステップS34)。
以降は、モニタリングセンサの異常値検知による緊急監視のステップS26以降と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
なお、ロボットステーション300が緊急監視情報を受信した場合、情報収集ロボット200を一定時間、或いは地震動が加速度センサ213により検知されなくなるまでロボットステーション300に待機させるとともに、地震発生中の動画像をリアルタイムにコントロールセンター110に送信するようにしてもよい。
この場合、待機中の情報収集ロボット200がロボットステーション300から移動することなく重要点検箇所の少なくとも一つを撮影できる位置にロボットステーション300を配置する。地震発生中において情報収集ロボット200を定点観測装置として使用するので、免震装置を観察できる位置にロボットステーション300を配置した場合は、地震発生中の免震装置の動作を観察することができ、免震装置の重要な研究開発資料として利用することができる。なお、リアルタイムに送信される情報は、原則としてコントロールセンター110において記憶手段に蓄積しないが、このシーケンスの場合は、例外として動画像を記憶手段に蓄積することが望ましい。
そしてP波検知から一定時間経過後、又は地震動が検知されなくなった後、ロボットステーション300は情報収集ロボット200に対して他の重要点検箇所へ直行するように指示する(ステップS33)。そしてステップS34以降の処理を行う。
【0046】
〔遠隔操作〕
コントロールセンター110から情報収集ロボット200を遠隔操作するシーケンスについて図15を用いて説明する。まず、情報収集ロボット200がロボットステーション300に待機している時に遠隔操作が開始される場合について説明する。図15は、遠隔操作について示したシーケンスチャート図である。
コントロールセンター110から情報収集ロボット200に対して遠隔操作開始指示を出すと(ステップS41)、ロボットステーション300にて待機している情報収集ロボット200がコントロールセンター110から遠隔操作可能な状態となる。コントロールセンター110から指示を出して(ステップS42)、情報収集ロボット200を稼働させる(ステップS43)。
情報収集ロボット200は、遠隔操作の指示内容に従った稼働中における視点映像をリアルタイムでコントロールセンター110に送信する(ステップS44)。
コントロールセンター110から遠隔操作終了指示を出すと(ステップS44)、情報収集ロボット200は、ロボットステーション300に帰還する(ステップS45)。ロボットステーション300に帰還した情報収集ロボット200は、ステップS5からS8までの動作を行う。
なお、情報収集ロボット200が巡回中である等、ロボットステーション300に待機しておらず、自律して稼働している場合に遠隔操作開始指示(ステップS41)が出されると、情報収集ロボット200は自律動作を一時的に中止して遠隔操作可能な状態に入る。また、遠隔操作終了指示(ステップS45)が出されると、一時的に中止した自律動作を再開し、所要の自律動作を完了した後にロボットステーション300に帰還する。
【0047】
〔振動による監視〕
振動による監視について図16を用いて説明する。図16は、振動による監視について示したシーケンスチャート図である。上述の各シーケンスでは、ロボットステーション300又はコントロールセンター110からの指示に基づいて情報収集ロボット200が巡回等を行うものであったが、本シーケンスは、情報収集ロボット200が自主的に異常を検知して臨時の巡回を行うものである。
情報収集ロボット200が加速度センサ213により振動を検知すると(ステップS51)、情報収集ロボット200は予め定められた巡回ルートに従って、免震ピット内を巡回する(ステップS52)。巡回中の情報収集ロボット200の視点映像は、ロボットステーション300を介してリアルタイムでコントロールセンター110に送信される(ステップS53)。巡回が終了すると情報収集ロボット200はロボットステーション300に帰還し(ステップS54)、ステップS5からステップS8までの動作を行う。
なお、本シーケンスは、加速度による振動の検知により自動巡回を開始するものであるが、情報収集ロボット200に搭載されているその他のセンサにより何らかの異常を検知したときに、自動巡回を行うようにしてもよい。
【0048】
以上のように本発明によれば、免震ピット内を自在に移動する自律型の情報収集ロボットにより免震ピット内の情報を収集して、収集された情報に基づいて免震ピット内の状態を判断する。点検作業員が現場に直行する必要が無く、且つ任意のタイミングで免震ピット内の点検を行うことかできる。従って、構造や設備の不具合を早期に発見することができる。また、地震発生直後等に実施しなければならない臨時点検を情報収集ロボットにより行うことができるので、速やかな情報収集が可能となる。また、情報収集ロボットには、画像を撮影するカメラを搭載しているので、目視確認が必要な項目についても情報収集ロボットが収集した情報に基づいた設備点検をすることができる。
さらに、情報収集ロボットを定点観測に利用することにより、地震発生時に動画を記録することができるので、地震動とそれに対する建築物、免震装置の応答に関する技術研究開発に役立つデータを得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…建築物、3…基礎(下部構造体)、5…上部構造体、7…免震装置、9…免震ピット、10…天然積層ゴム支承、20…オイルダンパー、41…耐力壁、43…一階床梁、45…免震装置上側フーチング、100…建物安全モニタリングシステム、110…コントロールセンター、111…集中管理装置、120…ヘルスモニタリング用センサ、200…情報収集ロボット、201…ベース部、203…駆動装置、205…距離画像センサ、207…温度・湿度センサ、209…ロボットアーム、211…前方レーザーレンジファインダ、213…加速度センサ、215…ジャイロセンサ、217…カメラ、219…マイク、221…ライト、223…受電プラグ、225…ロボット制御装置、227…ロボット側通信アンテナ、229…後方レーザーレンジファインダ、231…位置推定ソフトウェア、233…移動ルート制御ソフトウェア、235…駆動部制御装置、237…ロボットアーム制御ソフトウェア、239…ロボットアーム制御装置、241…通信装置、243…メインバッテリ、245…サブバッテリ、300…ロボットステーション、301…ベース部、303…バンパー、305…送電プラグ、307…ステーション側通信アンテナ、311…外部電源、313…バッテリ、315…電圧検知手段、317…制御手段、319…記憶手段、321…無線通信装置、323…有線通信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の安全性を自動的にモニタリングするシステムに関し、特に免震装置が設置された免震ピット内の点検を自動的に行うことが可能な建物安全モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震による建築物の破壊を防止するため、近年、中層、高層建築物に免震構造が採用されている。免震構造化は、天然積層ゴム支承を設置して建築物と地盤を構造的に絶縁したり、オイルダンパーを設置して地震動を減衰させること等によって実現される。これらの免震装置は、建築物の地下或いは中間層に設けられた免震ピット内に設置される。特許文献1には、免震装置が設置された免震ピットを有する建築物が記載されている。
免震装置に限らず建築物については定期点検を行う必要があるが、点検時期は、例えば竣工後、1年、5年、10年、以降10年ごとというように、その周期が比較的長期である。免震装置も定期点検の対象となっているが、特別な事情がなければ定期点検以外の時期に免震ピット内に人が立ち入ることはない。従って、免震ピット内に設置された各装置や設備に不具合が生じたとしても、長期間放置されて不具合の発見が遅れる可能性がある。
上記問題を解決する発明として特許文献2には、構造ヘルスモニタリングシステムについて記載されている。構造ヘルスモニタリングでは、建築物の状況を示すヘルスモニタリング用のセンサ(加速度センサ、温度センサ、湿度センサ等)を建築物内に設置し、これらセンサからのセンシング情報を、通信インフラを用いて常時モニタリングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−140970公報
【特許文献2】特開2009−162661公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、耐力壁等の構造体に生じたクラックや配管設備等に生じた錆などは、目視による確認(或いはカメラ画像による確認)が必要不可欠である。これらは上記構造ヘルスモニタリングシステムでは検知することができない情報である。また、構造ヘルスモニタリングシステムを用いたとしても免震ピット内の点検を自動的に行うことができるわけではない。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、免震ピット内の点検を自動的に行うことができる建物安全モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、免震装置が設置された構造物の免震ピット内に配置されて該免震ピット内の情報を収集する情報収集ロボットと、前記情報収集ロボットが収集した情報を受信して外部に送信するロボットステーションと、該ロボットステーションから受信した情報に基づいて前記免震ピット内の状態を判断するコントロールセンターと、を備え、前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の情報を収集する情報収集手段と、前記免震ピット内を移動するための駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
請求項1の発明では、情報収集ロボットが駆動手段により免震ピット内を移動して免震ピット内の情報を収集し、ロボットステーションを介してコントロールセンターに送信する。コントロールセンターでは、ロボットが収集した情報をもとに、免震ピット内の状態を判断する。
請求項2に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、前記物体までの距離及び該物体の形状を非接触にて測定する距離画像センサと、前記測距手段と前記距離画像センサからのセンシング情報に基づいて移動ルートを決定する移動ルート制御手段と、を備えていることを特徴とする。
請求項2の発明では、情報収集ロボット周囲の物体に関するセンシング情報を測距手段と距離画像センサとから取得し、取得したセンシング情報に基づいて障害物等の存在を認知する。例えば、障害物を回避する必要があると判断される時には、障害物を回避する移動ルートを移動ルート制御手段が演算により決定するので、情報収集ロボットが自律的に移動することができる。
【0006】
請求項3に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段からの測距情報に基づいて前記免震ピット内における情報収集ロボットの位置を推定する位置推定手段と、を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明では、情報収集ロボット周囲の物体に関する情報を測距手段から取得する。取得した測距情報に基づいて免震ピット内における情報収集ロボットの位置を推定する。情報収集ロボットは、免震ピット内における位置を常時把握しながら情報収集を行う。
請求項4に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、前記ロボットステーションから指示を受けた場合、前記ロボットステーションを介して前記コントロールセンターから指示を受けた場合、又は前記ロボット自身が備える検知センサの検知情報に基づく場合に、前記免震ピット内の情報を収集することを特徴とする。
請求項4の発明では、情報収集ロボットは、外部からの指令に基づいて、又は自主的に、免震ピット内の情報を収集する。
【0007】
請求項5に記載の発明は、前記情報収集ロボットは前記情報収集手段として、前記免震ピット内の画像を撮影するカメラと、前記免震ピット内周辺の音を集音するマイクと、前記免震ピット内周辺の温度、及び/又は、湿度を測定する温度・湿度センサと、の何れかを備えていることを特徴とする。
請求項5の発明では、免震ピット内の各部に関する情報を得る手段として、カメラ、マイク、温度・湿度センサの何れかを有している。
請求項6に記載の発明は、前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の特定の点検対象物の情報を収集することを特徴とする。
請求項6の発明において情報収集ロボットは、免震ピット内を移動して、特定の対象物に関する情報を収集する。
請求項7に記載の発明は、前記点検対象物が免震装置であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、特に普段人の目に触れることがない免震装置の状態を、任意のタイミングで把握することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、免震ピット内を自在に移動する情報収集ロボットにより免震ピット内の情報を収集し、この情報に基づいて免震ピット内の状態を判断するので、点検作業員が現場に直行する必要が無く、且つ任意のタイミングで免震ピット内の点検を行うことかできる。従って、免震ピット内に設置された免震装置、耐力壁等の構造体、或いはその他の設備の不具合を早期に発見することができる。また、地震発生直後等に実施しなければならない臨時点検を情報収集ロボットにより行うことができるので、速やかな情報収集が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】免震ピットを有する建築物の軸組図である。
【図2】図1に係る建築物の免震層伏図である。
【図3】図1に係る建築物の1階伏図である。
【図4】免震装置の一つである天然積層ゴム支承を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)はボルトに付されたマーキングを示す斜視図である。
【図5】免震継手により接続された配管の一例を示す図である。
【図6】被災時における臨時点検内容の一例を示す表である。
【図7】本発明に係る建物安全モニタリングシステムの概略構成図である。
【図8】ロボットステーション及び情報収集ロボットの概略側面図である。
【図9】情報収集ロボットの機能ブロック図である。
【図10】定期監視について示したシーケンスチャート図である。
【図11】停電時緊急監視に関わるロボットステーションの機能ブロック図である。
【図12】停電時緊急監視について示したシーケンスチャート図である。
【図13】ヘルスモニタリング用センサの異常値検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。
【図14】P波検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。
【図15】遠隔操作について示したシーケンスチャート図である。
【図16】振動による監視について示したシーケンスチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔免震ピット、及び免震ピット内設備〕
本発明に係る建物安全モニタリングシステムを構成する情報収集ロボットが設置される建築物について図1に基づいて説明する。図1は、免震ピットを有する建築物の軸組図である。図2は、図1に係る建築物の免震層伏図である。図3は、図1に係る建築物の1階伏図である。図4は、免震装置の一つである天然積層ゴム支承を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)はボルトに付されたマーキングを示す斜視図である。
建築物1(構造物)は、地盤面に設置される基礎3と、基礎3の上部に配置された上部構造体5とを有しており、基礎3と上部構造体5の間には免震装置7が設置された免震ピット9(免震層)を備えている。図示する建築物1は基礎免震構造の建築物の例である。他にも、下部構造体と上部構造体との間に免震装置7を配置する中間免震構造をとる場合もある。なお、本発明はいずれの免震構造についても適用可能である。以下「下部構造体」については、基礎を含む概念として説明する。
【0011】
図2に示すように、免震ピット9には、免震装置7として天然積層ゴム支承10とオイルダンパー20が設置されている。
天然積層ゴム支承10は水平免震機構の一つであり、建築物と地盤を絶縁し、地震の揺れ周期を長周期化することで地震による被害を抑制する。天然積層ゴム支承10は、鋼板とゴムとが交互に積層された積層ゴムの周囲を、被覆ゴム11にて被覆した構成を有している(図4(a)参照)。また、上下方向(積層方向)両端部はフランジ状の取付プレート13(鋼材部)が配置されている。2つの取付プレート13のうち、下部プレート13aは下部構造体3の上面にボルト15により固定され、上部プレート13bは上部構造体5の底面にボルト15により固定される。図4(b)に示すように、天然積層ゴム支承10の設置時には、ボルト15の緩み測定用に、ボルト15から座金16、取付プレート13にかけて直線状のマーキング17が施される。このマーキング17のずれを目視確認することで、ボルト15がどの程度緩んだかを確認することができる。
【0012】
オイルダンパー20は減衰装置の一つであり、地震エネルギーを吸収し、地震動による揺れを速やかに減衰させる。オイルダンパー20の一端は下部構造体3とボルトにより接続され、他端は上部構造体5とボルトにより接続されている。なお、このボルトにも天然積層ゴム支承10のボルト15と同様に緩み測定用のマーキングが施されている。
免震ピット9内には、上記免震装置7のほか、給排水配管、ガス配管、電気配線、電話線等(図2中、不図示)が配置されている。
配管類については、地震時における相対変位に対して設備配管及びその支持架台が損傷を受けることがないように免震継手を用いて接続される。
【0013】
図5は、免震継手により接続された配管の一例を示す図である。この給水配管31の中途には、免震継手33が水平方向に取り付けられており、水平・垂直全方向に対して変位を吸収可能となっている。免震継手33としては、例えばメタル製フレキシブル可とう継手を用いることができる。水平方向ではなく、垂直方向に免震継手を取り付けたり、給水配管の屈曲部の近傍に免震継手をL型に配置する等により変位を吸収する。
設備配管の変位吸収能力は、地震時における下部構造体3と上部構造体5の最大相対変位に基づいて決定されている。例えば、終局地震時の水平変位が500mm、垂直変位が100mmであるとき、設備配管の変位吸収能力は、水平方向については600mm、垂直方向については200mmと設定される。
電線及び電話線については、余長を設け、地震時に発生する相対変位を吸収可能とする。
免震ピット9内から観察可能な建築物1の構造体としては、図2に示す耐力壁41、図3に示す一階床梁43、及び免震装置上側フーチング45を挙げることができる。これらの構造体も、免震ピットの点検の際に合わせて点検される。
【0014】
〔免震ピットの点検項目〕
免震ピットの点検項目について説明する。非常時に免震装置が確実に機能を発揮するように、また設備を適切に維持管理するため、免震ピット内の装置等については、点検時期及び内容が規定されている。例えば、定期点検としては、年1回の通常点検、5年ごとに行われる定期点検等がある。また、大きな地震を受けた後や台風、洪水などの災害、火災などがあった場合(被災時)には、その直後に臨時点検を行うことが規定されている。
図6は、被災時における臨時点検内容の一例を示す表である。図示するように、大半の調査が目視による確認である。例えば、図4に示す天然積層ゴム支承10の場合は、被覆ゴム11の外観に、変色、傷、ふくれ変形があるか否かを目視確認する。傷がある場合は傷の長さを計測し、ふくれ変形がある場合はふくれ部の高さを計測する。オイルダンパー20については、発錆や傷の有無を目視確認する。また、免震層・建築物外周部、及び設備配管・配線可撓部についても点検が行われる。
点検項目のうち、特に目視による確認の対象となっている装置等については、建物安全モニタリングシステムにより情報を収集して、各装置等の状態が判断される。
【0015】
〔建物安全モニタリングシステムの概要〕
以下、本発明に係る建物安全モニタリングシステムについて説明する。図7は、本発明に係る建物安全モニタリングシステムの概略構成図である。なお、本実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
本発明に係る建物安全モニタリングシステム100は、モニタリング対象である建築物1(1a、1b)の免震ピット9(9a、9b)内に設置されて、免震ピット9内を自在に移動して点検対象物の情報を収集する情報収集ロボット200と、平時において情報収集ロボット200の待機場所となるとともに、情報収集ロボット200が収集したデータを外部に送信するロボットステーション300と、ロボットステーション300から送信されたデータを受信して情報を蓄積するコントロールセンター110と、を備えている。コントロールセンター110とロボットステーション300とは、ネットワークNにより互いに接続されており、有線(又は無線)によりデータの送受信を行うことができる。
図7では、モニタリング対象となる建築物1としてA地点の建築物1a、B地点の建築物1bを示しており、夫々の建築物に情報収集ロボット200とロボットステーション300が設置されている。また、夫々の建築物には、ヘルスモニタリング用センサ120(120a、120b)が設置されている。以下、特にA地点とB地点とを区別することなく説明する。
【0016】
〔コントロールセンター〕
コントロールセンター110では、建築物1に設置されたヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報や、ロボットステーション300からの情報を収集し、蓄積管理するとともに、収集した情報の解析を行うことにより、点検対象物(免震装置、免震層・建築物外周部、及び設備配管・配線可撓部)の状態を判断する。また、必要なデータの出力を行ったり、情報収集ロボット200の遠隔操作を行う。これらは、コントロールセンター110に設置された集中管理装置111により行われる。
集中管理装置111としては、CPU、メモリ(ROM、RAM)、記憶手段(HDD)、操作入力手段、表示手段、通信手段等を有する一般的なコンピュータ装置から構成することができる。
集中管理装置111は、建築物に設置されたヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報を、ネットワークNを介して受信すると共に、ネットワークNを介してロボットステーション300との間で必要なデータを送受信する。
集中管理装置111の記憶手段は、受信したセンシング情報、及び情報収集ロボット200が収集したデータを蓄積する。表示手段は、ヘルスモニタリング用センサ120及びロボットステーション300から送信されたデータや、情報収集ロボット200の遠隔操作に必要な情報等を表示する。操作入力手段は、情報収集ロボット200を遠隔操作するために必要な入力を受け付ける。
【0017】
また、集中管理装置111は、ヘルスモニタリング用センサ120及びロボットステーション300から収集されたデータを帳票として出力する帳票作成ソフトウェア(帳票作成手段)や、収集されたデータを解析して建築物の状態を診断する解析ソフトウェア(解析手段)等を備えている。これら2プログラムは記憶手段に記憶されており、メモリ(RAM)に格納された後、CPUにて実行処理される。なお、集中管理装置111は、1箇所にまとめて設置されていても良いし、集中管理装置111の有する各機能を異なる場所に分散して配置してもよい。
【0018】
〔ヘルスモニタリング用センサ〕
建物安全モニタリングシステム100による監視対象となる建築物1には、建築物1の状況を示すヘルスモニタリング用センサ120が設置されている。ヘルスモニタリング用センサ120は、例えば加速度センサ、温度センサ、湿度センサ等から構成されている。ヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報は、不図示の送信装置によりネットワークNを介してコントロールセンター110に常時送信されるようになっており、コントロールセンター110において建築物1の構造ヘルスモニタリングが可能である。ヘルスモニタリング用センサ120からのセンシング情報は、コントロールセンター110の集中管理装置111の記憶手段に蓄積され、後に利用される。なお、ヘルスモニタリング用センサ120は、免震ピット9内に設置されているか、免震ピット9以外の箇所に設置されているかを問わない。
【0019】
〔ロボットステーション、及び情報収集ロボット〕
以下、ロボットステーション及び情報収集ロボットについて説明する。図8は、ロボットステーション及び情報収集ロボットの概略側面図である。建築物1の免震ピット9には、免震ピット9内を巡回する情報収集ロボット200、及び平常時において情報収集ロボット200が待機し、巡回後の情報収集ロボット200が帰還する装置であるロボットステーション300が配置されている(図7参照)。
【0020】
〔ロボットステーション〕
ロボットステーション300は、制御装置及びバッテリが内蔵されたベース部301と、ベース部301後方(情報収集ロボット待機側)に配置されて、ロボットステーション300に帰還してきた情報収集ロボット200の前方部分と当接して、帰還時の衝突による機器類の損傷を防止するバンパー303と、電気エネルギーを情報収集ロボット200に供給する送電プラグ305と、情報収集ロボット200との間でデータ通信を行うステーション側通信アンテナ307と、を備えている。
ベース部301に内蔵された制御装置(不図示)には、CPU、メモリ(ROM/RAM)、HDD(記憶手段)、通信手段(有線及び無線)等を備えた一般的なノート型のパーソナルコンピュータを使用することができる。HDDには、ロボットステーション300の動作に必要な制御ソフトウェアと、免震ピット内の地図情報が記憶されている。制御ソフトウェアは、メモリ(RAM)に読み込まれ、CPUにて実行される。また、建築物が停電して、ロボットステーション300の外部からの電力供給が遮断されたときには、情報収集ロボット200が収集したデータを一時的に保存する。通信手段は、コントロールセンター110との間でデータ通信を行い、情報収集ロボット200との間でデータ通信を行う通信手段である。なお、コントロールセンター110との間の通信は有線にて行われることを基本とするが、無線によるデータ通信を行う構成であっても良い。情報収集ロボット200との間の通信は無線にて行われる。制御装置の動作電源には、建築物から供給される電力を利用するが、建築物の停電時にはベース部301に内蔵されたバッテリにて動作する。
【0021】
送電プラグ305は、建築物からの電力供給があるときに、情報収集ロボット200に電力を供給する。情報収集ロボット200は、供給された電力をバッテリの充電に利用する。
ロボットステーション300は、情報収集ロボット200から受信した収集データをリアルタイムでコントロールセンター110に送信し、コントロールセンター110から受信した遠隔操作指令を情報収集ロボット200に送信する。この時のロボットステーション300は、データの中継装置として動作する。また、ロボットステーション300は、情報収集ロボット200のシステムメンテナンス機能(稼働時間の計測、OS・ソフトウェアのバージョンアップ、情報収集ロボット200が内蔵する地図情報の更新等)等を有している。
なお、本実施形態に関して、ロボットステーションが免震ピット内に設置される例により説明するが、ロボットステーションを免震ピット外に設置してもよい。この場合、情報収集ロボットが常時において待機し、充電する位置を免震ピットの任意の位置に設定する。
【0022】
〔情報収集ロボット〜外観〕
情報収集ロボットについて説明する。情報収集ロボット200は、平時にはロボットステーション300にて待機している。情報収集ロボット200は、自律して稼働する機械であり、またコントロールセンター110からの遠隔操作により必要な情報収集を行うことができる。また、情報収集に関わる一連の動作が完了した後には、ロボットステーション300に帰還する。
図8に示すように、情報収集ロボット200は、各部材を内蔵し、又は取り付ける際の基礎部分となるベース部201と、ベース部201に内蔵されて、情報収集ロボット200の各部の動作に必要な電源を供給するメインバッテリ(不図示)と、ベース部201の両側部に配置された駆動装置203と、ベース部201前方に配置された距離画像センサ205と、距離画像センサ205の直後方のベース部201上に配置されて温度及び湿度を計測する温度・湿度センサ207と、ベース部201の上部中央に基部209aが取り付けられた6軸のロボットアーム209と、ベース部201の後端部に搭載されて、情報収集ロボット200の動作を制御するロボット制御装置225と、ロボット制御装置225の上部に配置されて、ロボットステーション300との間でデータ通信を行うロボット側通信アンテナ227と、ロボット制御装置225の上部後方に配置されて、情報収集ロボット200の側方又は後方に位置する特定の物体(障害物)の検知を行う後方レーザーレンジファインダ229(後方測距手段)と、を備えている。
【0023】
図8中には、駆動装置203の一例としてクローラ(無限軌道)を示している。各側部のクローラが、夫々正逆自在に回転することにより、情報収集ロボット200を前進、後退、或いは回転させながら目標地点に移動させることができる。クローラは、情報収集ロボット200を自在に移動させる駆動装置203の一例であり、これに限定されるものではない。情報収集ロボット200を移動させることができれば、ゴムタイヤ等を用いても良い。なお、駆動装置203は、不図示の駆動部制御装置235にて、その動作が制御される。
距離画像センサ205は三次元測定器の一つであり、内蔵された赤外線LEDの光を特定の物体に照射し、反射した赤外線光の戻り時間を計測することで、物体との距離、及び物体の形状を非接触にて測定することができる。距離画像センサ205としては、例えばMicrosoft社のキネクトセンサ(登録商標)を利用することができる。本発明において距離画像センサ205は、主に情報収集ロボット200前方の障害物検知に使用される。
温度・湿度センサ207は、情報収集ロボット200周囲の温度及び湿度を計測するセンサである。温度・湿度センサ207によって計測された温度及び湿度を元に、建築物や免震ピットが異常な状態に置かれていないかを推測する。例えば、検知温度が高い場合は免震ピット内で火災が発生している可能性があると判断できる。また、検知湿度が高い場合は、免震ピット内の設備配管が破断し、上水又は汚水が免震ピット内に漏れている可能性、或いは集中豪雨により免震ピット内に雨水が入り込んだ可能性があると判断できる。
【0024】
ロボットアーム209は、各軸(関節)を所定の回転半以内で自在に回転させることにより、ベース部201に対するアーム先端部209bの角度や位置を自在に変更することができる。
アーム先端部209bには、駆動・自己位置推定系のセンサ、アーム制御系のセンサ、情報収集系の装置、及び電源系の器具が取り付けられている。
情報収集ロボット200は、アーム先端部209bに取り付けられた駆動・自己位置推定系のセンサとして、前方レーザーレンジファインダ211(前方測距手段)を備えている。前方レーザーレンジファインダ211は、照射した赤外線レーザーの反射光を受信することにより、情報収集ロボット200前方に位置する特定の物体(目標物又は障害物)までの距離を測定する装置である。本発明において前方レーザーレンジファインダ211は、情報収集ロボット200の位置測定用に使用される。
【0025】
また、アーム制御系のセンサとして、情報収集ロボット200の3次元的な加速度を計測する加速度センサ213と、ロボットアーム209の3次元的な傾きを計測するジャイロセンサ215と、を備えている。
また、情報収集系の装置として、免震ピット内の状況を画像(静止画像又は動画像)として撮影するカメラ217と、情報収集ロボット200周辺の音声を取得する無指向性のマイク219と、カメラ217による画像撮影時に撮影範囲を照らすライト221と、を備えている。
また、電源系の器具として、ロボットステーション300の送電プラグと接続することにより、情報収集ロボット200に電力を供給する受電プラグ223を備えている。供給された電力は、ベース部201に内蔵されたメインバッテリと、ロボット制御装置225に搭載されたサブバッテリの充電に用いられる。
【0026】
ロボット制御装置225は、周知のCPU、メモリ(ROM、RAM)、HDD等を備えたごく一般的なコンピュータ装置から構成することができ、例えばノート型のパーソナルコンピュータを利用することができる。
HDDには、情報収集ロボット200の動作に必要な複数の制御用ソフトウェアが格納されており、これらのソフトウェアは、RAMに読み込まれてCPUにて実行される。また、HDD内には免震ピット内の地図も格納されており、情報収集ロボット200が移動する際に、自己位置の推定及び移動先の決定等に用いられる。また、巡回中に取得した情報を一時的に記憶する手段としても用いられる。
【0027】
また、ロボット制御装置225には、サブバッテリ(不図示)が搭載されており、メインバッテリに不具合が発生したときの緊急用電源として使用される。なお、一般的なノート型パーソナルコンピュータに搭載されたバッテリをサブバッテリとして使用することができる。
ロボット側通信アンテナ227は、ロボット制御装置225の外部入出力手段であり、ロボットステーション300との間で無線通信を行う際に使用される。
後方レーザーレンジファインダ229は、前方レーザーレンジファインダ211と設置位置及び用途が異なるだけで、前方レーザーレンジファインダ211と同様のセンサである。
【0028】
〔情報収集ロボット〜機能ブロック〕
ここで、情報収集ロボット200の各部の動作について、機能ブロック図を用いて説明する。図9は、情報収集ロボットの機能ブロック図である。情報収集ロボット200を構成するハードウェア及びロボット制御装置225のHDDに記憶された制御用ソフトウェアは、その機能により、駆動・自己位置推定系、アーム制御系、情報収集系、通信系、及び電源系に分類することができる。これら、以下、これら各分類に従って順次説明する。
【0029】
駆動・自己位置推定系のうち、特に自己位置推定に関わる系には、距離画像センサ205と前方レーザーレンジファインダ211が含まれる。また、これらセンサからのセンシング情報は、位置推定ソフトウェア231にて処理される。情報収集ロボット200の自己位置推定動作について説明する。
前方レーザーレンジファインダ211は前方にある物体までの距離を測定し、測定結果を位置推定ソフトウェア231に送信する。距離画像センサ205は、対象物までの距離及びその三次元的な形状を計測し、計測により得られた情報を位置推定ソフトウェア231に送信する。位置推定ソフトウェア231は、情報収集ロボット200が存在している免震ピット内の3次元的な空間の情報を保持しており、主に前方レーザーレンジファインダ211のセンシング情報から、情報収集ロボット200の免震ピット内における3次元的な位置を推定する。なお、距離画像センサ205からのセンシング情報は、位置推定ソフトウェア231の補正用情報として使用される。位置推定ソフトウェア231による自己位置の推定結果は、後述する移動ルート制御ソフトウェア233に送信され、情報収集ロボット200の移動ルートの決定に使用される。
【0030】
駆動・自己位置推定系のうち、特に情報収集ロボット200の駆動に関わる系には、距離画像センサ205と、後方レーザーレンジファインダ229と、各センサからのセンシング情報に基づいて移動ルートを決定する移動ルート制御ソフトウェア233と、駆動装置203の動作を制御する駆動部制御装置235と、駆動装置203と、が含まれる。
情報収集ロボット200の駆動について説明する。距離画像センサ205は、対象物までの距離及びその三次元的な形状を計測し、計測により得られた情報を移動ルート制御ソフトウェア233に送信する。後方レーザーレンジファインダ229は、情報収集ロボット200の後方又は側方にある物体までの距離を測定することにより、情報収集ロボット200周囲にある障害物の情報を得る。そして、測定結果(障害物の情報等)を移動ルート制御ソフトウェア233に送信する。
移動ルート制御ソフトウェア233は、免震ピット内の地図を保持しており、位置推定ソフトウェア231により推定された情報収集ロボット200の現在位置から、移動先となる目標地点までの移動ルートを演算する。その際、後方レーザーレンジファインダ229及び距離画像センサ205からのセンシング情報に基づいて、情報収集ロボット200の移動ルートの演算を行う。仮に、後方レーザーレンジファインダ229又は距離画像センサ205により、情報収集ロボット200の移動経路上に何らかの障害物が存在することが検知された場合には、障害物の回避行動の決定(乗り越え又は迂回ルート演算)を行う。
【0031】
例えば、検知された障害物の大きさや形状が、クローラにて乗り越えても情報収集ロボット200が転倒しない程度である場合に、移動ルート制御ソフトウェア233は、そのまま情報収集ロボット200を前進させて障害物を乗り越えるように移動ルートを決定する。また、検知された障害物をクローラにて乗り越えたと仮定したときに情報収集ロボット200が転倒する可能性がある場合には、移動ルート制御ソフトウェア233は、障害物を回避し、目的地まで最短で移動することができる回避ルートを演算し、決定する。演算により決定された移動経路は、駆動部制御装置235に送信される。
駆動部制御装置235は、移動ルート制御ソフトウェア233により決定された移動経路に沿って情報収集ロボット200を移動させるように駆動装置203を動作させる。また、駆動装置203に何らかの不具合(動作不良、オーバーヒート等)が存在する場合、その内容を移動ルート制御ソフトウェア233に通信する。
駆動装置203は、駆動部制御装置235からの動作命令を受けて駆動し、情報収集ロボット200を移動させる。
また、遠隔操作で情報収集ロボット200を移動させる際には、コントロールセンター110から制御命令等の情報が送信される。移動ルート制御ソフトウェア233は、通信装置241が受信した制御命令等の情報を元に演算を行い、演算結果を駆動部制御装置235に通知し、駆動装置203を動作させる。
【0032】
アーム制御系は、主としてロボットアーム209の動作に関わる系であり、加速度センサ213と、ジャイロセンサ215と、ロボットアーム制御ソフトウェア237と、ロボットアーム制御装置239と、ロボットアーム209とが含まれる。
加速度センサ213は、情報収集ロボット200本体の3次元的な加速度を計測して、計測結果をロボットアーム制御ソフトウェア237に通知する。ジャイロセンサ215は、ロボットアーム209の3次元的な傾きを計測して、計測結果をロボットアーム制御ソフトウェア237に通信する。
ロボットアーム制御ソフトウェア237は、加速度センサ213から通知された加速度データ、及びジャイロセンサ215から通知された傾斜データに基づいて、ロボットアーム209を制御するための演算を行う。具体的には、位置推定ソフトウェア231による位置計測を正確に行うために、ロボットアーム209先端に取り付けられた前方レーザーレンジファインダ211を水平かつ、地上高を一定に保持する制御を行うための演算を行う。そして、演算結果をロボットアーム制御装置239に通信する。
【0033】
また、遠隔操作でカメラ217による画像撮影等を行う際には、コントロールセンター110から制御命令等の情報が送信される。ロボットアーム制御ソフトウェア237は、通信装置241が受信した制御命令等の情報を元に、ロボットアーム209の制御に必要な演算を行い、演算結果をロボットアーム制御装置239に通知する。
ロボットアーム制御装置239は、ロボットアーム制御ソフトウェア237からの情報を受け、ロボットアーム209を動作させる。ロボットアーム209は、ロボットアーム制御装置239によりその動作の指令を受けて動作する。
【0034】
情報収集系には、カメラ217と、温度・湿度センサ207と、マイク219と、が含まれる。カメラ217は、動画像又は静止画像を撮影して通信装置に送信する。温度・湿度センサ207は、情報収集ロボット200周辺の温度・湿度の情報を取得して通信装置に送信する。マイク219は、情報収集ロボット200周辺の音声を取得して通信装置に送信する。
【0035】
通信系には、通信装置241が含まれる。通信装置241は、ロボット側通信アンテナ227を備え、ロボットステーション300との間で無線通信を行う。情報収集系の各装置が収集した情報をロボットステーション300に無線送信する。なお、通信装置241は、大容量データ(動画像等)については、巡回中に順次ロボットステーション300にリアルタイムで送信し、比較的容量の少ないデータ(温度・湿度データ等)については、巡回終了までロボット制御装置225内のHDDに一時的に記憶しておき、巡回終了後にまとめてロボットステーション300に転送する。
情報収集ロボット200が外部からの遠隔操作によって作動する場合には、通信装置241がコントロールセンター110から送信される駆動装置の駆動に関する制御命令やロボットアーム209の制御命令等を受信し、夫々移動ルート制御ソフトウェア233とロボットアーム制御ソフトウェア237に通信する。
電源系には、メインバッテリ243とサブバッテリ245が含まれる。これらのバッテリは、上記各機能を動作させるための電源となる。
【0036】
〔建物安全モニタリングシステムの稼働シーケンス〕
上述のように構成された建物安全モニタリングシステムの稼働シーケンスの例について説明する。
【0037】
〔定期監視〕
定期監視について図10を用いて説明する。図10は、定期監視について示したシーケンスチャート図である。定期監視は、主として竣工時と比較して問題が発生していないかを確認するものである。定期監視は、ロボットステーション300からの指示に基づいて行われる。
ロボットステーション300は、定期巡回のスケジュール及びタイマを保持しており、定期巡回を行うべき日時が到来したときに、情報収集ロボット200に対して定期巡回開始指示を出す(ステップS1)。また、ロボットステーション300は情報収集ロボット200に対して、定期巡回ルートを指示する。
情報収集ロボット200は、定期巡回開始指示を受けて免震ピット内を巡回する(ステップS2)。情報収集ロボット200は、内部に保持している地図を元に、指示された巡回ルートに従って巡回する。図2、図3には、点線にて巡回ルートの一例を示している。図示するように、巡回ルートは免震ピット9内に設置された各免震装置7(天然積層ゴム支承10、オイルダンパー20)、構造体である耐力壁41、一階床梁43、及び免震装置上側フーチング45の状態を一度の巡回で確認できるように設定される。
なお、図3にロボットステーション300の位置及び情報収集ロボット200の巡回ルートを示したのは、これらの一階床梁43及び免震装置上側フーチング45に対する位置関係を示すためである。1階部分にロボットステーション300が配置され、或いは情報収集ロボット200により1階部分の巡回が行われるという意味ではない。
【0038】
距離画像センサ205等により巡回ルート上に障害物が検知された場合には、その検知情報に基づいて移動ルート制御ソフトウェア233が演算を行い、障害物の回避行動をとる。
情報収集ロボット200は、巡回中にカメラ217にて動画像を撮影すると共に、リアルタイムでロボットステーション300を介してコントロールセンター110に送信する(ステップS3)。なお、リアルタイムに送信される情報はコントロールセンター110において記憶手段に蓄積しないことを原則とする。また、巡回ルート中の所定のポイントでは、免震装置や各設備、構造体等の静止画像の撮影、そのポイントの気温・湿度の測定、及び音声の録音等を行う。これらのデータは、免震ピット内の位置を示すデータと共に情報収集ロボット200の記憶装置(RAM又はHDD)に一時的に記憶される。
なお、情報収集ロボット200からロボットステーション300までは無線通信、ロボットステーション300からコントロールセンター110までは有線通信にて情報の送受信が行われる。また、リアルタイム情報が送信されている時のロボットステーション300は、情報収集ロボット200とコントロールセンター110との間を中継する装置として動作する。
【0039】
情報収集ロボット200は、所定の巡回ルートを巡回し終えた場合には、ロボットステーション300に帰還する(ステップS4)。帰還後、記憶装置に一時的に記憶させたデータを、ロボットステーション300に転送する(ステップS5)。転送されたデータは、さらにコントロールセンター110に転送される(ステップS6)。情報収集ロボット200が巡回中に取得した各データは、コントロールセンター110の情報記憶装置に蓄積され(ステップS7)、その後の帳票の作成等に活用される。また、巡回に関わる全ての動作を完了した後の情報収集ロボット200は、ロボットステーション300から電気エネルギーをバッテリに充電し、次の巡回に備える(ステップS8)。
なお、情報収集ロボット200の巡回開始(ステップS2)から帰還(ステップS3)までの間に、コントロールセンター110からの遠隔操作により情報収集ロボット200を動作させるようにしても良い。情報収集ロボット200の遠隔操作シーケンスについては、後述する。
【0040】
〔停電時緊急監視〕
停電時緊急監視について説明する。この監視は、建築物に停電事故が発生した場合に、ロボットステーション300がこれを検知して、情報収集ロボット200に臨時的な巡回をさせるものである。
図11は、停電時緊急監視に関わるロボットステーションの機能ブロック図である。ロボットステーション300は電源として、建築物から供給される外部電源311(AC電源)と、バッテリ313との双方を備えている。建築物から電力が供給されている場合は外部電源311によって動作し、建築物からの電力供給が遮断された場合はバッテリ313によって動作する。また、ロボットステーション300は、外部電源311の断接を検知する電圧検知手段315と、電圧検知手段315の検知結果に基づいて情報収集ロボット200に巡回指示を出す制御手段317と、情報収集ロボット200からの情報を一時的に記憶する記憶手段319(HDD等)と、情報収集ロボット200との間で通信を行う無線通信装置321と、コントロールセンター110との間で通信を行う有線通信装置323とを備えている。電圧検知手段315は、外部電源311の電圧が所定時間消失した場合に停電と判断する。なお、この時間(無通電時間)は任意の値に設定可能である。
【0041】
図12は、停電時緊急監視について示したシーケンスチャート図である。停電時の建物安全モニタリングシステム100の動作は以下の通りである。
ロボットステーション300は、電圧検知手段315により外部電源311の電圧が検知されなくなった場合に、建築物に停電事故が発生したと判断し、情報収集ロボット200に対して緊急巡回を開始するように指示を出す(ステップS11)。また、合わせて巡回ルートを指示する。この巡回ルートは、図2及び図3に示した定期巡回ルートと同一であっても良いし、これとは別に設定されても良い。
巡回開始指示を受けた情報収集ロボット200は内部に保持している地図を元に、ロボットステーション300から指示された巡回ルートに従って免震ピット内を巡回する(ステップS12)。なお、このシーケンスの場合、情報収集ロボット200は、巡回中に動画像を撮影せず、データのリアルタイム送信は行わない。情報収集ロボット200は、巡回ルート中の所定のポイントにおいて免震装置等の静止画像の撮影、気温・湿度の測定、及び音声の録音等を行う。これらのデータは比較的小容量のデータであり、得られた情報を内蔵された記憶装置に一時的に蓄積する。
情報収集ロボット200は、所定の巡回ルートを巡回し終えた場合には、ロボットステーション300に帰還する(ステップS13)。帰還後、記憶装置に一時的に記憶させたデータを、ロボットステーション300に転送する(ステップS14)。ロボットステーション300は、情報収集ロボット200から受け取ったデータを、内蔵の記憶手段319に蓄積する(ステップS15)。外部電源311が復帰したことを電圧検知手段315が検知した後、蓄積された情報をコントロールセンター110に転送する(ステップS16)。また、外部電源311の復帰後に情報収集ロボット200への充電を行う(ステップS17)。
【0042】
〔ヘルスモニタリング用センサの異常値検知による緊急監視〕
建築物に設置されたモニタリングセンサが異常値を検知した場合の緊急監視について図13を用いて説明する。図13は、ヘルスモニタリング用センサの異常値検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。この監視は、コントロールセンターに常時送信されるヘルスモニタリング用センサのセンシング情報に異常値が含まれていた場合に、コントロールセンターからの通知を受けて情報収集ロボットが臨時的な巡回をするものである。
建築物1に設置されたヘルスモニタリング用センサ120(図7参照)から送信されたセンシング情報に異常値が含まれていることをコントロールセンター110が検知すると(ステップS21)、コントロールセンター110は、ヘルスモニタリング用センサ120のセンシング情報から異常が発生したと推定される箇所(異常箇所)を特定し、「異常箇所位置情報」としてロボットステーション300に送信する(ステップS22)。
異常箇所位置情報を受信したロボットステーション300は、記憶手段に保持している免震ピットの地図上に異常箇所をマッピングし(ステップS23)、異常箇所に直行するよう情報収集ロボット200に指示する(ステップS24)。このとき、情報収集ロボット200に対して異常箇所のマッピングデータも送信する。
【0043】
情報収集ロボット200は、ロボットステーション300からの直行指示と異常箇所のマッピングデータを受信すると、ロボットステーション300から異常箇所までのルートを移動ルート制御ソフトウェア233にて演算し、指示された異常箇所に直行する(ステップS25)。
移動中の情報収集ロボット200の視点映像は、ロボットステーション300を介してリアルタイムでコントロールセンター110に送信される(ステップS26)。
コントロールセンター110では、異常箇所に到着した情報収集ロボット200を遠隔操作して、異常箇所、及びその周辺の情報を取得させる(ステップS27)。なお、遠隔操作のシーケンスついては、後述する。
コントロールセンター110からの遠隔操作終了指示を受けて、情報収集ロボット200はロボットステーション300に帰還する(ステップS28)。なお、ステップS27に示したコントロールセンター110からの遠隔操作がない場合、情報収集ロボット200は異常箇所にて所定時間待機した後、ロボットステーション300への帰還行動をとる。
帰還後、ステップS5からステップS8までの動作を行う。
【0044】
〔P波検知による緊急監視〕
P波検知による緊急監視について図14を用いて説明する。図14は、P波検知による緊急監視について示したシーケンスチャート図である。この監視は、コントロールセンター110にてP波を検知した場合、又は気象庁からの緊急地震速報を受信した場合に、コントロールセンター110からの通知を受けて情報収集ロボット200が臨時的な巡回をするものである。
コントロールセンター110がP波を検知し、又は気象庁からの緊急地震速報を受信すると(ステップS31)、コントロールセンター110は、P波が検知された旨を「緊急監視情報」としてロボットステーション300に送信する(ステップS32)。
緊急監視情報を受信したロボットステーション300は、予め定められた重要点検箇所に直行するよう情報収集ロボット200に指示する(ステップS33)。重要点検箇所には、例えば免震装置の設置箇所が指定される。情報収集ロボット200は、ロボットステーション300からの直行指示を受けて、ロボットステーション300から重要点検箇所までのルートを移動ルート制御ソフトウェア233にて演算し、直行する(ステップS34)。
以降は、モニタリングセンサの異常値検知による緊急監視のステップS26以降と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
なお、ロボットステーション300が緊急監視情報を受信した場合、情報収集ロボット200を一定時間、或いは地震動が加速度センサ213により検知されなくなるまでロボットステーション300に待機させるとともに、地震発生中の動画像をリアルタイムにコントロールセンター110に送信するようにしてもよい。
この場合、待機中の情報収集ロボット200がロボットステーション300から移動することなく重要点検箇所の少なくとも一つを撮影できる位置にロボットステーション300を配置する。地震発生中において情報収集ロボット200を定点観測装置として使用するので、免震装置を観察できる位置にロボットステーション300を配置した場合は、地震発生中の免震装置の動作を観察することができ、免震装置の重要な研究開発資料として利用することができる。なお、リアルタイムに送信される情報は、原則としてコントロールセンター110において記憶手段に蓄積しないが、このシーケンスの場合は、例外として動画像を記憶手段に蓄積することが望ましい。
そしてP波検知から一定時間経過後、又は地震動が検知されなくなった後、ロボットステーション300は情報収集ロボット200に対して他の重要点検箇所へ直行するように指示する(ステップS33)。そしてステップS34以降の処理を行う。
【0046】
〔遠隔操作〕
コントロールセンター110から情報収集ロボット200を遠隔操作するシーケンスについて図15を用いて説明する。まず、情報収集ロボット200がロボットステーション300に待機している時に遠隔操作が開始される場合について説明する。図15は、遠隔操作について示したシーケンスチャート図である。
コントロールセンター110から情報収集ロボット200に対して遠隔操作開始指示を出すと(ステップS41)、ロボットステーション300にて待機している情報収集ロボット200がコントロールセンター110から遠隔操作可能な状態となる。コントロールセンター110から指示を出して(ステップS42)、情報収集ロボット200を稼働させる(ステップS43)。
情報収集ロボット200は、遠隔操作の指示内容に従った稼働中における視点映像をリアルタイムでコントロールセンター110に送信する(ステップS44)。
コントロールセンター110から遠隔操作終了指示を出すと(ステップS44)、情報収集ロボット200は、ロボットステーション300に帰還する(ステップS45)。ロボットステーション300に帰還した情報収集ロボット200は、ステップS5からS8までの動作を行う。
なお、情報収集ロボット200が巡回中である等、ロボットステーション300に待機しておらず、自律して稼働している場合に遠隔操作開始指示(ステップS41)が出されると、情報収集ロボット200は自律動作を一時的に中止して遠隔操作可能な状態に入る。また、遠隔操作終了指示(ステップS45)が出されると、一時的に中止した自律動作を再開し、所要の自律動作を完了した後にロボットステーション300に帰還する。
【0047】
〔振動による監視〕
振動による監視について図16を用いて説明する。図16は、振動による監視について示したシーケンスチャート図である。上述の各シーケンスでは、ロボットステーション300又はコントロールセンター110からの指示に基づいて情報収集ロボット200が巡回等を行うものであったが、本シーケンスは、情報収集ロボット200が自主的に異常を検知して臨時の巡回を行うものである。
情報収集ロボット200が加速度センサ213により振動を検知すると(ステップS51)、情報収集ロボット200は予め定められた巡回ルートに従って、免震ピット内を巡回する(ステップS52)。巡回中の情報収集ロボット200の視点映像は、ロボットステーション300を介してリアルタイムでコントロールセンター110に送信される(ステップS53)。巡回が終了すると情報収集ロボット200はロボットステーション300に帰還し(ステップS54)、ステップS5からステップS8までの動作を行う。
なお、本シーケンスは、加速度による振動の検知により自動巡回を開始するものであるが、情報収集ロボット200に搭載されているその他のセンサにより何らかの異常を検知したときに、自動巡回を行うようにしてもよい。
【0048】
以上のように本発明によれば、免震ピット内を自在に移動する自律型の情報収集ロボットにより免震ピット内の情報を収集して、収集された情報に基づいて免震ピット内の状態を判断する。点検作業員が現場に直行する必要が無く、且つ任意のタイミングで免震ピット内の点検を行うことかできる。従って、構造や設備の不具合を早期に発見することができる。また、地震発生直後等に実施しなければならない臨時点検を情報収集ロボットにより行うことができるので、速やかな情報収集が可能となる。また、情報収集ロボットには、画像を撮影するカメラを搭載しているので、目視確認が必要な項目についても情報収集ロボットが収集した情報に基づいた設備点検をすることができる。
さらに、情報収集ロボットを定点観測に利用することにより、地震発生時に動画を記録することができるので、地震動とそれに対する建築物、免震装置の応答に関する技術研究開発に役立つデータを得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…建築物、3…基礎(下部構造体)、5…上部構造体、7…免震装置、9…免震ピット、10…天然積層ゴム支承、20…オイルダンパー、41…耐力壁、43…一階床梁、45…免震装置上側フーチング、100…建物安全モニタリングシステム、110…コントロールセンター、111…集中管理装置、120…ヘルスモニタリング用センサ、200…情報収集ロボット、201…ベース部、203…駆動装置、205…距離画像センサ、207…温度・湿度センサ、209…ロボットアーム、211…前方レーザーレンジファインダ、213…加速度センサ、215…ジャイロセンサ、217…カメラ、219…マイク、221…ライト、223…受電プラグ、225…ロボット制御装置、227…ロボット側通信アンテナ、229…後方レーザーレンジファインダ、231…位置推定ソフトウェア、233…移動ルート制御ソフトウェア、235…駆動部制御装置、237…ロボットアーム制御ソフトウェア、239…ロボットアーム制御装置、241…通信装置、243…メインバッテリ、245…サブバッテリ、300…ロボットステーション、301…ベース部、303…バンパー、305…送電プラグ、307…ステーション側通信アンテナ、311…外部電源、313…バッテリ、315…電圧検知手段、317…制御手段、319…記憶手段、321…無線通信装置、323…有線通信装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置が設置された構造物の免震ピット内に配置されて該免震ピット内の情報を収集する情報収集ロボットと、前記情報収集ロボットが収集した情報を受信して外部に送信するロボットステーションと、該ロボットステーションから受信した情報に基づいて前記免震ピット内の状態を判断するコントロールセンターと、を備え、
前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の情報を収集する情報収集手段と、前記免震ピット内を移動するための駆動手段と、を備えていることを特徴とする建物安全モニタリングシステム。
【請求項2】
前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、特定の物体までの距離及び該物体の形状を非接触にて測定する距離画像センサと、前記測距手段と前記距離画像センサからのセンシング情報に基づいて移動ルートを決定する移動ルート制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項3】
前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段からの測距情報に基づいて前記免震ピット内における情報収集ロボットの位置を推定する位置推定手段と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項4】
前記情報収集ロボットは、前記ロボットステーションから指示を受けた場合、前記ロボットステーションを介して前記コントロールセンターから指示を受けた場合、又は前記ロボット自身が備える検知センサの検知情報に基づく場合に、前記免震ピット内の情報を収集することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項5】
前記情報収集ロボットは前記情報収集手段として、前記免震ピット内の画像を撮影するカメラと、前記免震ピット内の音を集音するマイクと、前記免震ピット内の温度、及び/又は、湿度を測定する温度・湿度センサと、の何れかを備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項6】
前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の特定の点検対象物の情報を収集することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項7】
前記点検対象物が免震装置であることを特徴とする請求項6に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項1】
免震装置が設置された構造物の免震ピット内に配置されて該免震ピット内の情報を収集する情報収集ロボットと、前記情報収集ロボットが収集した情報を受信して外部に送信するロボットステーションと、該ロボットステーションから受信した情報に基づいて前記免震ピット内の状態を判断するコントロールセンターと、を備え、
前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の情報を収集する情報収集手段と、前記免震ピット内を移動するための駆動手段と、を備えていることを特徴とする建物安全モニタリングシステム。
【請求項2】
前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、特定の物体までの距離及び該物体の形状を非接触にて測定する距離画像センサと、前記測距手段と前記距離画像センサからのセンシング情報に基づいて移動ルートを決定する移動ルート制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項3】
前記情報収集ロボットは、特定の物体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段からの測距情報に基づいて前記免震ピット内における情報収集ロボットの位置を推定する位置推定手段と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項4】
前記情報収集ロボットは、前記ロボットステーションから指示を受けた場合、前記ロボットステーションを介して前記コントロールセンターから指示を受けた場合、又は前記ロボット自身が備える検知センサの検知情報に基づく場合に、前記免震ピット内の情報を収集することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項5】
前記情報収集ロボットは前記情報収集手段として、前記免震ピット内の画像を撮影するカメラと、前記免震ピット内の音を集音するマイクと、前記免震ピット内の温度、及び/又は、湿度を測定する温度・湿度センサと、の何れかを備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項6】
前記情報収集ロボットは、前記免震ピット内の特定の点検対象物の情報を収集することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の建物安全モニタリングシステム。
【請求項7】
前記点検対象物が免震装置であることを特徴とする請求項6に記載の建物安全モニタリングシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−54504(P2013−54504A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191658(P2011−191658)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(591280197)株式会社構造計画研究所 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(591280197)株式会社構造計画研究所 (59)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]