説明

建物換気システム及び方法

建物の内側の部分に沿って垂直に配列されたソーラエンジン302は、太陽輻射によって暖められる。ソーラエンジン302は、ソーラエンジン302の上部の暖気室308と、暖気室308の下に配置された中空のコア108とを含む。居住空間102は、コア108周りに、建物100の外側に向かって配置される。暖気室308への太陽輻射は、暖気室308内に高温度帯を形成し、この高温度帯は、煙突効果を生じさせ、コア108のより低い温度によって、空気がコア108内を上昇し、結果として、コア108内に負圧を発生する。空気は、建物のより低い部分から流入し、ソーラエンジン302によって、コア108内を上昇される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、建物のエネルギシステムに関し、特に、煙突効果(stack effect)を用いて、建物の換気(ventilation)及び温度(temperature)を制御するとともに、電力を発生することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物の設計では、建物の外部から居住空間(Habitable spaces)に換気(ventilation)を行うのに、動力建物−機械システム(powered building-mechanical systems)に依存している。これらの従来の設計では、通常、建物の外壁に電動ルーバ(powered louvers)を配置し、換気、暖房及び冷房のために、これらの電動ルーバを開けて、居住空間に空気を入れることができるようにしている。通常、電動ファン(powered fans)は、これらの電動ルーバを介して外気(outside air)を吸い込み、そして、居住空間から空気を建物の外側に排出する。この従来の手法は、電動ルーバ及び電動ファンを駆動するために大きなエネルギ消費を必要としていた。したがって、建物のエネルギ効率を改善することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明に基づく建物換気方法及びシステムは、建物のエネルギ効率を改善する。建物の内側の部分(interior portion)に沿ってソーラエンジン(solar engine)を垂直に配置し、このソーラエンジンは、太陽輻射(solar radiation)によって暖められる。ソーラエンジンは、ソーラエンジンの上部である暖気室(warm air chamber)と、暖気室の下に配置された中空のコア(hollow core)、すなわち空洞(void)とを備える。居住空間は、コアの周りに、建物の外側に向かって配置されている。暖気室に対する太陽輻射により、暖気室内に高温度帯(high temperature zone)が形成される。これにより、煙突効果が発生し、コアのより低い温度に起因して、空気がコア内を上昇して、コア内に負圧が生じる。空気は、ソーラエンジンによって、建物の低い部分(lower portion)から流入し、コア内を吸い上げられる。居住空間の外側の窓が開いている場合、コアの負圧により、空気が、建物の外部から流入し、居住空間を通り、コアに流入する受動的な通風(passive cross ventilation)が起こり、空気は、暖気室に上昇し、そして、建物の外部に流出する。この煙突効果によって、居住空間を、光熱費なしで、自然冷房及び換気することができる。
【0004】
また、空気をコアから居住空間内に吸い込むことによって、居住空間を換気してもよい。この場合、居住空間の機械ユニット(mechanical units)は、コア内を上昇している空気を、居住空間内に吸い込む。コアからの空気は、居住空間を換気して、建物の外側に排出される。建物のより低い部分の居住空間は、高い負圧を発生するとともに、内部ゾーン(interior zones)を冷房する必要がある。コアからの空気が居住空間の内面に沿って流れるときに、空気は、周囲の調和空間(conditioned space)とのエネルギ伝達によって予熱される(preheated)。建物の外側からではなく、コアを通じて空気を吸い込むことによって、空気を予調和(preconditioning)することにより、暖房エネルギをかなり節約できる。さらに、建物の外壁に設けられたルーバは、変化する風況(changing wind conditions)の影響を受けやすく、風の吸気力(suction forces)がルーバファンの外向きの定常圧力(external static pressure)を上回る場合もあり、この場合、空気を吸い込むことができないので、コアからの空気は、ルーバを介して吸い込まれる空気と比較して、より安定した換気(more consistent ventilation)を行うことができる。
【0005】
煙突効果は、暖気室に1つ以上の太陽反射器(solar reflector)を設けることによって、高めることができる。太陽輻射は、太陽反射器で反射され、下方に向かって、暖気室及びコアに入射される。コア内に更なる反射器又は反射面(reflective surface)を設けることによって、太陽輻射を、コアのより下方に向けることができる。コアに太陽エネルギを導入することにより、コア内の空気は更に暖められ、その結果、ソーラエンジン内を介する空気速度が高くなり、煙突効果は高くなる。また、コアに太陽光(light)を導入することより、コアの周りに配置された居住空間の内側の部分を照明するのにも役に立つことができる。これにより、居住空間を照明するためのエネルギ消費量を削減することができる。
【0006】
さらに、ソーラエンジンに1つ以上の風力タービン(wind turbines)を設けることにより、ソーラエンジン内を上方に流れる空気の風エネルギを、建物に電力を供給する(power)電気に変換することができる。したがって、本発明に基づいた建物換気方法及びシステムにより、建物を換気するために必要なエネルギ量を削減できるとともに、建物に電力を供給するのに用いることができる電気を発生する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建物換気システムを提供する。この本発明に基づいた建物換気システムは、建物の上部に配置され、その底部に暖気室吸気口と、その最上部に暖気室排気口とを有し、その上部の少なくとも一部が透明材料からなり、透明材料を透過した太陽輻射によってその内部の空気が暖められる暖気室と、暖気室吸気口から下方に、建物の内側の部分に沿って垂直に延び、その側壁の少なくとも一部が居住空間の内壁によって画定され、建物の外側の部分に延びる外気ダクトに連結した第1のコア開口と、居住空間の内壁を介して居住空間に連結した第2のコア開口を有する中空のコアとを備える。そして、コア内の空気の温度は、暖気室内の空気よりも低く、それによって、コア内の空気が、上昇し、暖気室吸気口を介して暖気室に流入することにより、建物の外の圧力に対する負圧をコア内に発生するとともに、建物の外から外気ダクトを介して外気を吸気する吸気力を生じ、コアからの空気は、暖気室内に上昇し、暖気室内の空気と混合され、混合空気の少なくとも一部は、暖気室から暖気室排気口を介して排出される。
【0008】
本発明は、建物換気方法を提供する。この本発明に基づいた建物換気方法は、建物は、当該建物の上部に配置され、その底部に暖気室吸気口と、その最上部に暖気室排気口とを有する暖気室と、暖気室吸気口から下方に、当該建物の内側の部分に沿って垂直に延び、その側壁の少なくとも一部が居住空間の内壁によって画定され、第1のコア開口と、居住空間の内壁を介して居住空間に連結した第2のコア開口を有する中空のコアとを備える。そして、暖気室の透明な上部を介して入射される太陽輻射を用いて、該暖気室内の空気を暖めるステップと、建物の外側の部分に延びる第1の開口と、第1のコア開口に連結された第2の開口とを有する外気ダクトを用い、コア内の空気の温度は、暖気室内の空気よりも低く、それによって、コア内の空気が、上昇し、暖気室吸気口を介して暖気室に流入することにより、建物の外の圧力に対する負圧を該コア内に発生させるとともに、建物の外から該外気ダクトを介して外気を吸気する吸気力を生じさせ、コアからの空気が、暖気室内に上昇し、暖気室内の空気と混合され、混合空気の少なくとも一部を、暖気室から暖気室排気口を介して排出するステップとを有する。
【0009】
他のシステム、他の方法、発明の特徴及び効果は、以下の図面と詳細な説明によって、当業者に明らかである。全てのそのような更なるシステム、更なる方法、本発明の特徴及び効果は、この明細書内に含まれ、発明の範囲内であって、図面によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
明細書に援用され、その一部を構成する図面は、本発明の実施の形態を示し、明細書と共に、発明の効果及び原理を説明するのに役に立つ。
【0011】
【図1】本発明に基づいた建物の断面図である。
【図2】コアの上部の断面図である。
【図3】煙突効果を用いたソーラエンジン内の気流を示す建物の機能的な断面図である。
【図4】従来の居住空間の断面側面図である。
【図5】本発明に基づいた居住空間の断面側面図である。
【図6】反射器を有する建物の断面図である。
【図7】他の反射器を有する建物の断面図である。
【図8】コアの最上部に風力タービンを有する建物の断面図である。
【図9】コアの上部の周りに風力タービンを有する建物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明に基づく実施の形態を詳細に説明する。図面及び明細書を通じて同じ又は類似した部分に、可能ならば、同じ指示符号を付している。
【0013】
本発明に基づく建物換気方法及びシステムは、建物のエネルギ効率を改善する。図1は、本発明に基づく実施の形態の建物100の垂直断面図である。一実施の形態の建物100は、その低い部分(lower portion)に居住空間(habitable spaces)102の複数の床#1〜#nと、その上部に迫頭(crown)104とが設けられている。居住空間102は、建物100の外側の部分(exterior portion)の周りに配置されている。居住空間102の内壁106は、建物100の内側の部分(interior portion)とのオープンスペース(open space)、すなわちコア108の外側境界面(outer boundary)を形成している。この実施の形態においては、コア108は、居住空間102の高さに広がるアトリウム空間(atrium)である。なお、この実施の形態では、コア108は、居住空間102の高さの全体に広がっているが、低層階の床まで達しないようにしてもよい。
【0014】
図2に示すように、一実施の形態の建物100は、円形の断面を有する。なお、建物100は、この構成に限定されるものではない。建物100は、他の断面形状、例えば正方形、長方形等の断面形状を有していてもよく、さらに、高さに沿った様々な場所で異なる断面形状を有していてもよい。さらに、一実施の形態のコア108は、円形の断面を有し、建物100の中心に位置するが、コアは、あらゆる形状の断面を有し、あるいは建物中のいかなる位置にあってもよい。
【0015】
従来の建物の設計では、建物の外部から居住空間(Habitable spaces)に換気を行うのに、動力建物−機械システム(powered building-mechanical systems)に依存している。これらの従来の設計では、通常、建物の外壁に電動ルーバ(powered louvers)を配置し、換気、暖房及び冷房のために、これらの電動ルーバを開けて、居住空間に空気を入れることができるようにしている。通常、電動ファン(powered fans)は、これらの電動ルーバを介して外気(outside air)を吸い込み、そして、居住空間から空気を建物の外側に排出する。この従来の手法は、電動ルーバ及び電動ファンを駆動するために大きなエネルギ消費を必要としていた。本発明に基づく建物換気方法及びシステムでは、居住空間内を自然換気するソーラエンジン(solar engine)を、建物内に設けることによって、エネルギ消費量を削減する。
【0016】
図3に示すように、迫頭104とコア108を連結した空間は、ソーラエンジン302を形成している。一実施の形態のソーラエンジン302を実線で示す。一実施の形態において、迫頭104の幅は、コア108の幅よりも広い。したがって、空気は、コア108から、迫頭104の底面(base)を介して迫頭104に入る。迫頭104の屋根304の少なくとも一部分は、透明材料、例えばガラス、プラスチック等からなる。太陽輻射306は、迫頭104の屋根304を加熱するとともに、透明材料を介して迫頭104に入射し、迫頭104内の空気を暖め、コア108に対して、高温度帯(high temperature zone)を形成する。したがって、以下、迫頭104を、暖気室(warm air chamber)308と呼ぶ。
【0017】
暖気室308の空気は、コア108の空気より暖かい。さらに、コア108の上部の空気は、太陽輻射306がコア108の上部の空気を照らしているので、コア108の下部の空気よりも暖かい。これにより、空気は、コア108の上部に向かって上昇し、暖気室308に流入して、コア108内に負圧を生じる。コア108内のこの負圧は、結果として、煙突効果(stack effect)となり、空気が建物100の外部から流入し、換気シャフト(ventilation shafts)内を吸い上げられる、換言すると、空気を、窓を介して居住空間に吸い込み、居住空間を流し、コア内に流入させることができる。コア108内の空気が外気よりも暖かい限り、煙突効果は維持される。
【0018】
外気は、外側換気口(outer ventilation openings)312を介して建物100に流入し、また、外気は、居住空間102の開いた窓314を介して建物100に流入することもできる。コア108の負圧は、外側換気口312を介して外気を吸い込み、そして、外気を内側換気口(inner ventilation openings)316を介してコア108内に吸い込む。また、この負圧は、1つ以上の窓314を介して外気を吸い込み、そして、外気を、内側換気口316を介してコア108内に吸い込むこともできる。内側換気口316は、例えば、内側の窓の開口(interior window openings)、通路(vias)、換気シャフト口(ventilation shaft openings)、壁の隙間(voids)、玄関(doorways)等である。当業者にとって、窓は、あらゆる適切な開口、例えば、外側の窓の開口、通路、換気シャフト口、外壁の隙間、玄関等あってもよいことは、明らかである。具体的には、窓は、閉じることができるが、永久に開いたものであってもよい。空気は、コア108の負圧によって、建物100の低い部分(lower portion)から流入し、コア108内を吸い上げられる。暖気は、迫頭104の1つ以上の排気口(exhaust openings)318を介して、迫頭104から排出される。排気口318は、迫頭104の外側の側壁に及び/又は迫頭104の屋根304は設けることができる。
【0019】
一実施の形態において、外側換気口312、内側換気口316、窓314及び排気口318は、建物100の外側からコア108に気流をもたらすのに適したサイズを有する。外側換気口312、内側換気口316、窓314及び排気口318は、0mよりも大きな高さと幅を有する。実験では、外側換気口312が6.0mの高さ、排気口318が3.0mの幅を有するとき、コア108の最上部の平均風速は、中間季(transitional season)では7.0m/sであり、冬季では7.5m/sである。中間季にいて、外気(ambient air)は、17℃であり、建物100の外面は、20℃であり、コア108の表面は、27℃であり、迫頭104の内面は、45℃であり、建物100の屋根304は、40℃であった。コア108の内側の空気は、平均で18℃〜20℃であり、それは、外気温度よりも1℃〜3℃暖かいことが判明した。建物100の迫頭104内の空気温度(air temperature)は、更に高い20℃〜23℃であり、すなわち外気温度よりも高かった。冬季においては、外気は、1℃であり、建物100の外面は、5℃であり、コア108の表面は、14℃であり、迫頭104の内面は、25℃であり、建物100の屋根304は、20℃であった。空気がコア108内を上昇し、コア108の最上部に到着したとき、コア108内の空気温度は、2℃以上上昇していたことが判明した。空気が暖気室308に流入した後、温度は、更にもう1〜2℃上昇していた。冬季において、外気は、約3.5m/sの速度で外側換気口312に吸気されていた。空気は、コア108の壁面によって暖められるので、コア108の上部に向かって上昇して、9.0m/sのピーク速度で暖気室308に流入していた。
【0020】
実験とモデリングによって、発明者は、迫頭104の外壁に特定の材料を用いたときに、迫頭104内の空気温度を上昇させることができることを発見した。例えば、実験では、迫頭104の壁は、通常の二重板ガラス(double panel glazing)であり、外側板ガラス(outer panel)は、0.08の反射率と、0.16の吸収率とを有し、内側板ガラス(inner panel)は、0.08の反射率と、0.16の吸収率とを有していた。吸収性の内側板ガラスを用いたとき、外側板ガラスは、0.08の反射率と、0.16の吸収率とを有し、内側板ガラスは、0.08の反射率と、0.41の吸収率とを有していた。吸収性の内側板ガラスが、低eコーティング(例えば0.20の低e値)を有するとき、外側板ガラスは、0.08の反射率と、0.16の吸収率とを有し、内側板ガラスは、0.08の反射率と、0.41の吸収率とを有していた。
【0021】
実験では、通常の二重板ガラスは、ピーク日照時間帯(during peak sunlight hours)は、約36℃の表面温度を有し、吸収性の内側板ガラスは、ピーク日照時間帯は、約43℃の表面温度を有し、低eコーティングを有する吸収性の内側板ガラスは、約44℃の表面温度を有していることが分かった。したがって、迫頭104に低eコーティングを有する吸収性の内側板ガラスを用いることにより、迫頭104の温度は上昇していた。
【0022】
さらに、迫頭104の内面を暗色(dark color)、例えば黒とすることによって、迫頭104内の温度は、更に上昇する。実験では、迫頭104に通常の二重板ガラスを用いるとともに、内部垂直黒シリンダ(internal vertical black cylinder)を迫頭104の中心部に配置したとき、外側板ガラスは、0.08の反射率と、0.16の吸収率と、0.90の表面放射率(surface emissivity)とを有し、内側板ガラスは、0.08の反射率と、0.16の吸収率と、0.90の表面放射率とを有し、内部シリンダ表面(inner cylinder surface)は、0.10の反射率と、0.90の吸収率と、0.90の表面放射率とを有していることが分かった。この実験では、通常の二重板ガラスは、ピーク日照時間帯には、約36℃の表面温度を有し、内部黒シリンダ(internal black cylinder)は、約42℃の表面温度を有していた。
【0023】
コア108の内部黒シリンダに吸収性の内側板ガラスが使われたとき、外側板ガラスは、0.08の反射率と、0.16の吸収率と、0.90の表面放射率とを有し、内側板ガラスは、0.08の反射率と、0.41の吸収率と、0.90の表面放射率とを有し、内部シリンダ表面は、0.10の反射率と、0.90の吸収率と、0.90の表面放射率とを有していた。この実験では、吸収性の内側板ガラスは、ピーク日照時間帯には、約40℃の表面温度を有し、内部黒シリンダは、約42℃の表面温度を有していた。
【0024】
したがって、吸収性の内側板ガラス、特に低eコーティングを有する吸収性の内側板ガラスと、迫頭104内の1つ以上の内部黒体表面、例えば内部シリンダにより、暖気室308内の空気温度は上昇し、これは、煙突効果と、コア108中の気動(air movement)とを高める。
【0025】
一実施の形態において、居住空間102の内壁106のコア108に面する側の少なくとも一部は、反射面(reflective surface)を構成している。したがって、コア108に入射した太陽輻射は、この反射面で反射されて、コア108のより低い部分に向かう。これにより、コア108のより低い部分の空気が暖められて、煙突効果が高められる。反射面は、あらゆる適切な材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属、塗装面等のうちの少なくとも1つからなる。
【0026】
図4は、従来の居住空間402の断面図である。従来の換気慣例(conventional ventilation practices)に基づく換気及び快適制御(ventilation and comfort control)は、循環ファン404(circulation fan)、機械通風装置(mechanical ventilation system)406又は床暖房装置(floor heating system)412を用いることによって、行われている。機械通風装置406は、電気ヒータ(powered heating)に連結された空気ダクトと、換気装置と、空気調和装置(air conditioning unit、図示せず)とを含んでいる。従来の居住空間402に居る人は、制御操作器(control actuator)410、例えば壁掛けスイッチ(wall switch)又は自動温度調節器の操作盤(thermostat operator)を用いて、循環ファン404又は機械通風装置406をオンにする。循環ファン404又は機械通風装置406をオンしたとき、室内の空気は循環される。また、機械通風装置406は、温風(heated or conditioned air)又は調和空気(conditioned air)を部屋に供給する。また、床414の床暖房装置412も、部屋を暖めるためにオンにされる。したがって、従来の居住空間402は、部屋を換気、暖房及び冷房するためには、循環ファン404、機械通風装置406、床暖房装置412を作動させるために必要なエネルギを消費していた。従来の居住空間402には、窓408を介して外気が入ることがある。しかしながら、これは、本発明に基づく建物換気方法及びシステムとは異なり、空気は、ソーラエンジン302を用いて、従来の居住空間402に流入し、又は居住空間402から流出されない。
【0027】
本発明に基づく建物換気方法及びシステムでは、コア内に生じる有益な煙突効果により、居住空間は自然換気される。これにより、光熱費をゼロ又は削減して、居住空間を自然換気、冷房及び暖房することができる。図5は、本発明に基づいた実施の形態の居住空間102の断面図である。居住空間102は、建物100の外側に設けられた窓314と、コア108への通路(via)を形成する内側換気口316を含んでいる。居住空間102の外側の窓314が開いているとき、コア108の負圧により、空気が、建物100の外部から流入し、居住空間102を通り、コア108に流入する吸気の受動的な通風(passive cross ventilation)310が起こり、空気は、暖気室308に上昇し、そして、建物100の外部に流出する。この煙突効果によって、居住空間102を、光熱費なしで、自然冷房及び換気することができる。
【0028】
居住空間102の換気及び快適制御は、例えば循環ファン502と、機械通風装置504と、床508の下に設けられた床暖房装置506とによって補われる。代わりに又は加えて、換気及び快適制御装置を用いてもよい。例えば、居住空間102に居る人は、部屋の空気を更に冷やすために、制御操作盤(control operator)510を用いて、循環ファン502又は機械通風装置504のうちの少なくとも1つをオンにすることができる。あるいは、人は、部屋を暖めるために、制御操作盤510を用いて、床暖房装置506又は機械通風装置504のうちの少なくとも1つをオンにすることができる。一実施の形態では、制御操作器の操作盤(control actuator operator)510は、循環ファン502、機械通風装置504及び床暖房装置506のうちの少なくとも1つを作動させることができる制御装置に機械的に又は電気的に接続された、例えば壁掛けスイッチ、自動温度調節器等である。
【0029】
また、制御操作盤510は、窓314と内側換気口316のそれぞれの通気口(vents)514、516だけではなく、換気扇(exhaust fan)512を起動させる。一実施の形態において、制御操作盤510は、循環ファン502、機械通風装置504及び床暖房装置506をオフにし、換気扇512をオンにし、通気口514、516を開く。これによって、ソーラエンジン302による部屋の自然換気ができ、換気扇512によって、空気がコア108に吸い込まれることを促進することができる。この場合、換気扇512だけがエネルギを消費し、一方、部屋は、外気によって、換気され、暖められ、又は冷やされる。あるいは、換気扇512をオフにして、部屋を、ソーラエンジン302の吸気力だけを使って冷やし、及び換気することができ、エネルギ消費をゼロにすることができる。
【0030】
一実施の形態において、圧力センサ518を用いて、室内圧力をモニタし、あるいは部屋とコア108の圧力差を求めることができる。室内圧力が、所定の閾値以下、あるいはコア108の圧力レベル以下になった場合、圧力センサ518は、機械通風装置504に信号を送って、機械通風装置504をオンにし、空気を強制的に部屋内に送ることができる。これにより、コア108に対して正圧(positive pressure)を形成し、煙突効果を促進する。あるいは、機械通風装置504は、その速度を上下させて、部屋の圧力を、コア108内の圧力よりも高い特定の圧力に維持することができる。
【0031】
また、居住空間102は、コア108から空気を、内側換気口316を介して居住空間102に吸い込むことによって、換気することもできる。これは、建物100の表面(facade)が閉じられているときであって、例えば冬季に行うことができる。この場合、換気扇512又は機械通風装置504のうちの少なくとも1つは、コア108内を上昇している空気を、居住空間102内に吸い込むことができる。コア108からの空気は、居住空間102を換気して、建物100の外側又は機械通風装置504に排出される。
【0032】
建物100のより低い部分の居住空間102は、高い負圧を発生するとともに、内部ゾーン(interior zones)を冷房する必要がある。コア108からの空気が居住空間102の内面に沿って流れるときに、空気は、周囲の調和空間(conditioned space)とのエネルギ伝達によって予熱される(preheated)。建物100の外側からでなく、コア108を通じて空気を吸い込むことにとって、空気を予調和(preconditioning)することにより、暖房エネルギをかなり節約できる。さらに、建物100の外壁に設けられたルーバは、変化する風況(changing wind conditions)の影響を受けやすく、風の吸気力(suction forces)がルーバファンの外向きの定常圧力(external static pressure)を上回る場合もあり、この場合、空気を吸い込むことができないので、コア108からの空気は、ルーバを介して吸い込まれる空気と比較して、より安定した換気(more consistent ventilation)を行うことができる。
【0033】
図6に示すように、煙突効果は、建物100の迫頭104に1つ以上の太陽反射器(solar reflector)602を設けることによって、高めることができる。太陽輻射は、迫頭104の表面から太陽反射器602に反射され、太陽反射器602は、太陽輻射をコア108に向ける。したがって、通常はコア108に入射できない方向に迫頭104で反射された太陽輻射は、太陽反射器602で反射することによって、コア108に向けられる。したがって、太陽反射器602は、迫頭104の反射面と組み合わせることにより、ヘリオスタット装置(heliostatic system)を形成し、太陽輻射をコア108に向ける。
【0034】
太陽反射器602は、1つ以上の反射材料、例えば1つ以上の鏡、ガラス、金属等からなる反射面604を有する。図6に示す実施の形態における反射面604は、通常、放物線形状を有し、互いに適合して反射面604を形成する複数の鏡部(mirror sections)からなる。反射面は、他の形状又は配置、例えば図7に示す配置等を有していてもよい。太陽反射器602の反射面604は、特定の反射角度を有するように選択される。例えば、太陽反射器は、太陽輻射をコア108内のより深い所に向けることができるより大きな角度を有する反射面を有する。これを、図7の実施の形態に示す。図7に示すように、太陽反射器702は、図6に示す実施の形態の太陽反射器602よりも深く、太陽輻射をコア108内に向ける反射面704を有する。
【0035】
迫頭104の表面は、1つ以上の反射材料、例えば1つ以上の鏡、ガラス、金属等で処理されている。迫頭104の更なる1つ以上表面は、手動で、又は制御装置を用いて自動で調節可能であり、太陽反射器602がより多くの太陽光(light)を反射できるように、迫頭104の表面の角度を調節される。
【0036】
太陽輻射は、太陽反射器602で下方に向かって反射され、暖気室308及びコア108に入射される。太陽輻射は、コア108内に1つ以上の更なる反射器又は反射面を設けることによって、コア108のより下方に向けることができる。例えば、居住空間(以下、居室(habitable chambers)ともいう。)102のコア108に面した1つ以上の壁に、太陽光をコア108の下方に向かって反射する窓、すなわち又は鏡面の窓(windows or mirrored surfaces)を設けてもよい。他の実施の形態において、太陽光をコア108の下方に向けて反射するために、コア108の壁の少なくとも一部を、反射色、例えば白色、銀色又は金色に塗装してもよい。コア108に太陽エネルギを導入することにより、コア108内での空気は更に暖められ、その結果、ソーラエンジン302内を介する空気速度が高くなり、煙突効果は高くなる。
【0037】
また、コア108に太陽光を導入することにより、コア108の周りに配置された居住空間102の内側の部分を照明するのにも役に立つことができる。例えば、1つ以上の居住空間102に、窓を有するか、それが居住空間102に太陽光を入れる窓、又はコア108に隣接した通路を開けてもよい。これにより、居住空間102を照明するためのエネルギ消費量を削減することができる。
【0038】
空気は、コア108の上部に向けて上昇するにつれて、暖かい空気と混合されて、速度を増す。図8に示すように、コア108の最上部出口の周りに風力タービン802を配置し、この移動する空気で風力タービン802を回転させて、発電機を駆動し、機械的な回転エネルギを電気に変換する。一実施の形態において、風力タービン802は、フィンランドのWindside社製である。なお、他の風力タービンを用いてもよい。
【0039】
一実施の形態において、風力タービン802は、水平に配置されており、その一端でコア108の上端の側壁に接続され、その他端でコア108の最上部に配置された天井804に接続されている。天井804は、それを介して太陽輻射がコア108に透過できるように、少なくとも部分的に透明であり、あるいはそれを貫通した1つ以上の通路を有する。一実施の形態において、天井804は、太陽光がコア108に透過できるように、支持された板ガラス(glass plates)からなる。
【0040】
各風力タービン802は、その水平軸の回りを回転する羽根を備える。暖気が風力タービン802の羽根上を通過するとき、風力タービン802は、その水平軸の回りを回転する。風力タービン802は、発電機806に機械的に連結された回転軸を有する。風力タービン802が回転し、その回転軸が回転すると、発電機806は、その回転軸の機械エネルギを電気に変換する。
【0041】
図9は、コア108の上部の周りに配置された複数の風力タービン802を上から見た平面図である。図9に示すように、各風力タービン802は、その一端で、コア108の上端の側壁の近くに搭載された発電機806に接続されており、その他端で天井804に接続されている。一実施の形態の天井804は、実質的に固い。したがって、空気は、コア108内を上昇したとき、居住空間102の内壁106、すなわちコア108の側壁と、天井804との間の間隙を通過することを強制される。したがって、少なくとも空気の一部は、1つ以上の風力タービン802を横切って移動し、それによって、風力タービン802が回転し、発電機806で電気を発生する。発生された電気は、建物100のエネルギ源として用いることができる。したがって、本発明に基づく建物換気方法及びシステムにより、建物100を換気するために必要なエネルギ量を削減するとともに、建物100に電力を供給するのに用いることができる電気を発生する。
【0042】
本発明を説明する目的のために、実施の形態を説明した。実施の形態は、本発明の全てを含むものではなく、また、本発明を説明した形態に限定するものではない。上述した教示に基づいて、実施の形態を変更又は修正できることは明らかであり、実施の形態は、発明を実施することから、得ることもできる。例えば、説明した実施の形態は、ソフトウェアを含むが、本実施の形態は、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、又はハードウェアのみで実現することができる。発明は、オブジェクト指向及び非オブジェクト指向プログラミングシステムよって実行される。発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部に配置され、その底部に暖気室吸気口と、その最上部に暖気室排気口とを有し、その上部の少なくとも一部が透明材料からなり、該透明材料を透過した太陽輻射によってその内部の空気が暖められる暖気室と、
上記暖気室吸気口から下方に、該建物の内側の部分に沿って垂直に延び、その側壁の少なくとも一部が居住空間の内壁によって画定され、該建物の外側の部分に延びる外気ダクトに連結した第1のコア開口と、該居住空間の内壁を介して該居住空間に連結した第2のコア開口を有する中空のコアとを備え、
上記コア内の空気の温度は、上記暖気室内の空気よりも低く、それによって、該コア内の空気が、上昇し、上記暖気室吸気口を介して該暖気室に流入することにより、上記建物の外の圧力に対する負圧を該コア内に発生するとともに、該建物の外から上記外気ダクトを介して外気を吸気する吸気力を生じ、該コアからの空気は、該暖気室内に上昇し、該暖気室内の空気と混合され、該混合空気の少なくとも一部は、該暖気室から上記暖気室排気口を介して排出されることを特徴とする建物換気システム。
【請求項2】
上記建物の外の圧力に対するコアの負圧は、上記建物の外から、外気を上記居住空間及び上記第2のコア開口を介して上記コアに吸気する吸気力を生じることを特徴とする請求項1記載の建物換気システム。
【請求項3】
上記コア内の空気の一部は、上記第2のコア開口を介して上記居住空間に流入し、該居住空間を換気するとともに、温風を該居住空間に入れることを特徴とする請求項1記載の建物換気システム。
【請求項4】
上記建物の最上部に配置され、太陽輻射を上記暖気室に反射する反射器を更に備え、
上記反射器によって上記暖気室に反射された太陽輻射は、該暖気室の空気の温度を上昇させることを特徴する請求項1記載の建物換気システム。
【請求項5】
上記反射器は、太陽輻射を上記コア内に反射し、該反射器によってコア内に反射された太陽輻射は、該コア内の空気の温度を上昇させることを特徴する請求項4記載の建物換気システム。
【請求項6】
上記暖気室は、太陽輻射を上記反射器に反射する暖気室反射器を備えることを特徴とする請求項4記載の建物換気システム。
【請求項7】
上記暖気室吸気口に沿って水平に配置された回転軸と、上記コアからの空気が途中でそれに接触して、上記暖気室に流入するときに、該回転軸によって回転する少なくとも1つの羽根とを有する、該暖気室吸気口に配置された少なくとも1つの風力タービンと、
上記風力タービンの回転軸からの機械エネルギを電気エネルギに変換して、上記建物に電力を供給する発電機とを更に備える請求項1記載の建物換気システム。
【請求項8】
上記コアの側壁の少なくとも一部は、太陽輻射を該コアの下方に反射する反射面を有することを特徴とする請求項1記載の建物換気システム。
【請求項9】
建物を換気する建物換気方法において、
上記建物は、当該建物の上部に配置され、その底部に暖気室吸気口と、その最上部に暖気室排気口とを有する暖気室と、該暖気室吸気口から下方に、当該建物の内側の部分に沿って垂直に延び、その側壁の少なくとも一部が居住空間の内壁によって画定され、第1のコア開口と、該居住空間の内壁を介して該居住空間に連結した第2のコア開口を有する中空のコアとを備え、
上記暖気室の透明な上部を介して入射される太陽輻射を用いて、該暖気室内の空気を暖めるステップと、
上記建物の外側の部分に延びる第1の開口と、上記第1のコア開口に連結された第2の開口とを有する外気ダクトを用い、上記コア内の空気の温度は、上記暖気室内の空気よりも低く、それによって、該コア内の空気が、上昇し、上記暖気室吸気口を介して該暖気室に流入することにより、上記建物の外の圧力に対する負圧を該コア内に発生させるとともに、該建物の外から該外気ダクトを介して外気を吸気する吸気力を生じさせ、該コアからの空気が、該暖気室内に上昇し、該暖気室内の空気と混合され、該混合空気の少なくとも一部を、該暖気室から上記暖気室排気口を介して排出するステップとを有する建物換気方法。
【請求項10】
上記建物の外の圧力に対するコアの負圧は、上記建物の外から、外気を上記居住空間及び上記第2のコア開口を介して上記コアに吸気する吸気力を生じることを特徴とする請求項9記載の建物換気方法。
【請求項11】
上記コア内の空気の一部は、上記第2のコア開口を介して上記居住空間に流入し、該居住空間を換気するとともに、温風を該居住空間に入れることを特徴とする請求項9記載の建物換気方法。
【請求項12】
上記建物は、当該建物の最上部に配置され、太陽輻射を上記暖気室に反射する反射器を更に備え、
上記反射器によって上記暖気室に反射された太陽輻射は、該暖気室の空気の温度を上昇させることを特徴する請求項9記載の建物換気方法。
【請求項13】
上記反射器は、太陽輻射を上記コア内に反射し、該反射器によってコア内に反射された太陽輻射は、該コア内の空気の温度を上昇させることを特徴する請求項12記載の建物換気方法。
【請求項14】
上記暖気室は、太陽輻射を上記反射器に反射する暖気室反射器を備えることを特徴とする請求項12記載の建物換気方法。
【請求項15】
上記暖気室吸気口に沿って水平に配置された回転軸と、上記コアからの空気が途中でそれに接触して、上記暖気室に流入するときに、該回転軸によって回転する少なくとも1つの羽根とを備える、該暖気室吸気口に配置された少なくとも1つの風力タービンと、
上記風力タービンの回転軸からの機械エネルギを電気エネルギに変換して、上記建物に電力を供給する発電機とによって、電気を発生するステップを更に有する請求項9記載の建物換気方法。
【請求項16】
上記コアの側壁の少なくとも一部は、太陽輻射を該コアの下方に反射する反射面を有することを特徴とする請求項9記載の建物換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−523009(P2011−523009A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508578(P2011−508578)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/042719
【国際公開番号】WO2009/137409
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(509311850)スキッドモア オーウィングス アンド メリル リミテッド ライアビリティ パートナーシップ (8)
【出願人】(510292766)
【Fターム(参考)】