説明

建物構造体

【課題】容易に組むことができ、しかも強度に優れた建物構造体を提供する。
【解決手段】略鉛直方向に固定される直立柱体110と、この直立柱体と直交して固定される第一水平架構体120と、直立柱体及び第一水平体に直交して固定される第二水平架構体130とを備える。また直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130は、それぞれ複数の柱状の部材101から構成されており、第一水平架構体120及び第二水平架構体130が、少なくとも2つの部材101を鉛直方向に積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造体に関し、詳しくは木材で組み立てられた木組みの建物構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
木造の建物は、柱と梁等の線材と壁とを組み合わせて骨組とする軸組構法により建築される。なかでも木造軸組工法は、昔から日本の木造住宅に採用されてきた建築方法で、柱と梁で建物を支えるものである。伝統工法の木造住宅は木を組んだものであるから、組み直しが可能であり、組んだ後も外すことで移築したり再生したりできる。したがって金物や接着材を大量に使用しながら規格木材を釘打ち接合で組み立てる工法と比較して、伝統工法は長い期間にわたって使い回しができ、耐用年数も長いため環境に優しい工法といえる。また木組の家は大きく傾いても復元する力があり、変形は大きくても倒れにくい架構とできるため、耐震性・耐風性に富む。加えて無垢材等の天然素材は、人工素材と異なりシックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドを発散しない利点もある。
【0003】
図21、図22は伝統的な木造軸組工法を説明する説明図である。一般的に木造軸組工法は釘やボルト等の金物を使用せず、木材同士の接合部において互いの木材を嵌合し合う形状に加工した後、これを連結する方向に木槌等で叩き込んで組み上げる。具体的には図に示すように、片方の材の端に造り出した突起状のほぞ501を設け、一方、他の材に、内形をほぞ501の外形と略一致するよう彫ったほぞ穴502を設け、このほぞ穴502にほぞ501を差し込み、かつ組み締めることによって、木材を接ぐことできる。また、木と木とを同一線上で接ぐ技術を継手と呼び、直角あるいは斜め等に交差して組む技術を仕口と呼ぶ。
【0004】
ほぞ501とほぞ穴502の形状は種々に渡る。例えば図21(a)は「あり継ぎ」と呼ばれる継手の一例であり、接合部における一方の木材にほぞ501として、「あり」と称される扇形の突出部分を加工する。また他方の木材にはほぞ穴502として、ありを嵌合する略同形状のあり溝を彫って加工する。さらに図21(b)は「鎌継ぎ」、図21(c)は「目違い」とそれぞれ呼ばれる加工技術であり、いずれも独特の形状に仕立てたほぞ501と、ほぞ穴502とを組み合わせて木材同士を継ぐ。
【0005】
また図22は仕口の一例を示しており、図22(a)は「相欠き」と呼ばれる加工技術である。相欠きとは、2つの木材において互いに材の高さ(成)の半分ずつを欠き取って、この切り欠き部同士を重ね合わせ、2つの木材を交差方向に組み合わせる基本形の一つである。図22(b)は「留め」と呼ばれるL字形の接合を、また図22(c)は「四方差し」と呼ばれる四方からの接合をそれぞれ示す。
【0006】
この四方差しは、梁が柱の四方から集中する場合に採用され、太い柱503を抜き通すために長い竿504を通し、車知といわれる栓505で梁506同士を引き合うように接ぐ。柱503は、竿504を挿通させるための貫通孔を設けるさいに、欠損が集中して大きくならないよう仕口や継手を上下に振り分ける工夫が必要になる。さらに仕口を組むときには「ゆるぎ」が出ないように鋸目を合わせてノミで仕上げ、木槌で叩いて接合する。したがって、ほぞやほぞ穴の細工、また柱と梁とを継ぐ技術は熟練を要する。なぜなら複雑な形状を正確に加工することが難しいからである。さらに熟練した職人が不足している実状と相俟って、伝統的な技術の継承が困難となっている。
【0007】
ところで独特の形状に加工された木材を組み合わせる例として、特許文献1に記載される組木を図23に示す。図23(a)は組んだ際の組木600の斜視図であり、図23(b)は、組木を構成する基本材の斜視図である。この組木600は、建築材ではなく教育玩具であり、「児童の好奇心と興味により知能の錬磨をなすに適切なる教育資料」と記載される。部材を組む順については特に開示されていないが、知育を目的とする点から、組立てやすいというよりもむしろ組みごたえがあるものと示唆される。また基本材は、図23(b)に示すように矩形状の凹部601のみならず、断面を半円形とする半円状凸部602を有するよう加工されており、具体的には凹凸状の入り組んだ場所に、曲面を伴う半円状凸部602を設けて複雑に形成される。したがって加工に手間と時間がかかるため、これらの基本材を建築材として利用することは難しい。
【0008】
また木造軸組工法は、上述のように木材の加工形状を形成するのに手間がかかる問題に加えて、材料に係る問題もある。木造軸組工法では、柱等の軸組みを太い木材で構成することが好ましい。一の木材に貫通させるほぞ穴により欠損量が大きくなって、強度が低減することを回避するためである。したがって一般的に線の細い間伐材は、柱等の構造材として採用するには径が不十分とされ、合板屋根の野地板、壁の木ずり板、畳の荒板等の下地材として使用可能な杉板等に利用されるに留まる。ところがこのように間伐材の利用範囲が制限されることで間伐の停滞を招き、ひいては森林が荒廃して樹木の健全な成長を阻害することが社会問題となっている。成長が不十分な木材は用途が限定されるため、一層伐採が滞る悪循環が生じる。
【0009】
森林の荒廃は、間伐材の販路が少なく、あるいは間伐しても売値が安すぎるために、そのまま山に放置されたり、また間伐自体が滞ったりすることに起因する。間伐ができない山は、日光が林床まで届かないため木材の生育が促進されない。さらに日照が確保されない山は、下草が生えず土がむき出しのため、少しの風雨で立木が倒れやすく、この結果土砂崩れを起こして山全体が荒廃する例も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭14−014269号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】松井郁夫著、「「木組」でつくる日本の家 むかしといまを未来につなぐ家づくり」、社団法人農山漁村文化協会発行
【非特許文献2】辻垣正彦著、「やっぱり昔ながらの木の家がいい」、株式会社晶文社発行
【非特許文献3】齊藤祐子著、「建築のしくみ」、株式会社ナツメ社発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来のこのような問題点を解消するためになされたものである。すなわち本発明の主な目的は、単純な加工形状としながら容易に組むことができ、しかも強度に優れた建物構造体を提供することにある。加えて、間伐材を使用した建物構造体として、間伐材の活用を積極的に促進させることを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0013】
本願発明の建物構造体は、略鉛直方向に固定される直立柱体110と、この直立柱体と直交して固定される第一水平架構体120と、直立柱体及び第一水平体に直交して固定される第二水平架構体130とを備える。また直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130は、それぞれ複数の柱状の部材101から構成されており、第一水平架構体120及び第二水平架構体130が、少なくとも2つの部材101を鉛直方向に積層してなることを特徴とする。
【0014】
直立柱体と直交する第一水平架構体及び第二水平架構体が、少なくとも2つの部材を鉛直方向に積層してなる建物構造体は、特に鉛直方向にかかる荷重をしっかりと支持できる強靱な架構とできる。なぜなら、直立柱体と直交する水平面を、少なくとも2層の第一水平架構体及び第二水平架構体でしっかりと支持できるからである。
【0015】
また本願発明の建物構造体は、直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130が互いに直交方向に交差される交差部1、1’を有しており、交差部1、1’において、直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130をそれぞれ構成する少なくとも一の部材101は、部材の厚み方向に切り欠いた切り欠き状に形成されており、略同一の方向にかつ対称な姿勢に接面された複数の部材101同士は、交差部1、1’における切り欠き状同士が繋がって形成された開口部を、この複数の部材と直交方向に交差する他の部材101の外面によって嵌合されて、開口部を閉塞していることを特徴とする。
【0016】
複数の部材の切り欠き状でもって一の開口部を構成し、この開口部に他の部材を嵌合させる木組みは、加工が容易であるうえ強靱な構造とできる。これは単一の部材の中央近傍に貫通孔を設ける場合と比較して、側面側に切り欠き状を設けることができるからである。中央に貫通孔を設けない部材は高い強度を維持できる。また側面を開口する切り欠き状は、周囲を残しながら貫通孔を形成する場合と比較して、加工が著しく容易である。また切り欠き状は、複数の部材で構成する開口部の一部のみを担えばよく、言い換えると一の開口部を複数の切り欠き状に分担できるため、比較的径の小さい部材であっても切り欠き状を設けることができ、この結果、種々のサイズの樹木を積極的に利用することができる。また交差部において、複数の部材の切り欠き状を繋げて形成した開口部に、他の部材を嵌合させてこの開口部を閉塞する建物構造体は、互いの部材を強固に連結できる。これは複数の部材でもって他の部材を挟持しつつ、さらに配向が異なる別の部材を開口部に順に嵌合させることで、部材が互いの切り欠き状を補足しあいながら固定されるためである。これにより交差部における互いの切り欠き状が複雑に組み合いながら、部材同士がしっかりと支持しあう構造体とできる。
【0017】
また本願発明の建物構造体は、第一水平架構体120が、角柱状の寸胴角材を有しており、交差部1、1’において形成される開口部が、内面形状を寸胴角材の外面形状と略同一として、この寸胴角材によって閉塞されていることを特徴とする。
【0018】
交差部において切り欠きを形成していない角柱状の寸胴角材を有することで、容易に組立てられる建物構造体を得られる。なぜなら角柱状の寸胴角材は外形がシンプルなため、所定の形状に加工された部材と区別しやすく、したがって組立て後の配置位置を理解しやすいからである。この結果、予め組立て後の寸胴角材の配置位置を予測でき、これを目印として他の部材の配置位置や組立て順を容易に理解することができる。
【0019】
また本願発明の建物構造体は、少なくとも1方向を、同一の形状の部材で構成することを特徴とする。これにより加工パターンを少なくできるため、加工にかかる時間や手間を削減し生産性を高めることができる。
【0020】
また本願発明の建物構造体は、第二水平架構体130は所定の形状に加工された形状部材bs−dd、up−ddから構成される。この形状部材bs−dd、up−ddは、第一主面bs−dm1、up−dm1と第二主面bs−dm2、up−dm2とが隣接しながら直交する角材であって、かつ第一主面bs−dm1、up−dm1側から角材の厚み方向に凹状に切り欠いた第一凹部bs−do1、up−do1と、さらに第一凹部bs−do1、up−do1の底面bs−du、up−duを第二主面bs−dm2、up−dm2側から凹状に切り欠いた第二凹部bs−do2、up−do2とを形成しており、第一凹部bs−do1、up−do1の開口長さは、第二凹部bs−do2、up−do2の開口長さよりも大きいことを特徴とする。
【0021】
上述の形状に加工された部材を備える建物構造体は、組立の際の姿勢を変更するだけで、直立柱体、第一水平架構体及び第二水平架構体の相対位置を変更することができる。つまり同じ種類の形状部材を使用して、複数の架構を得られる。
【0022】
また本願発明の建物構造体は、直立柱体110を構成する部材が、第一主面bs−am1、up−am1を有する角材であり、かつ第一主面bs−am1、up−am1側から角材の厚み方向に切り欠いた少なくとも第一凹部bs−ao1、up−ao1及び第二凹部bs−ao2、up−ao2とを形成される。この第二凹部bs−ao2、up−ao2は、第一凹部bs−ao1、up−ao1と離間して配設されており、第二凹部bs−ao2、up−ao2の開口長さは、第一凹部bs−ao1、up−ao1の開口長さよりも大きいことを特徴とする。
【0023】
第一主面側からのみ厚みの略半分だけ切り欠いた凹部とすることで、直立柱体の欠損部を抑制でき、強靱な構造とできる。
【0024】
また本願発明の建物構造体は、第一水平架構体120の下面12a、252a及び第二水平架構体130の下面13a、253aが、略同一平面に位置するよう構成されてなることを特徴とする。この構造により、第一水平架構体及び第二水平架構体の下面と、これに対向する他の基体との接面領域を稼ぐことができるため、建物構造体が他の基体にしっかりと固定される。
【0025】
また本願発明の建物構造体は、第二水平架構体130を構成する部材が、第二凹部bs−do2、up−do2が鉛直方向に開口する姿勢に構成されてなることを特徴とする。
【0026】
また本願発明の建物構造体は、第一水平架構体52の下面52a及び第二水平架構体53の下面53aが、略平行を維持しながら段違いに位置するよう構成されてなることを特徴とする。これにより空間的な広がりを造り出して意匠性を向上させる。
【0027】
また本願発明の建物構造体は、第二水平架構体25を構成する部材が、第二凹部up−do2が上方に開口する姿勢に構成されてなることを特徴とする。
【0028】
また本願発明の建物構造体は、第二水平架構体130が、長尺方向を同一としながら並列した2本の角材を下段として、さらに別の並列した2本の角材を、この下段の上に積層させて上段とした合計4本の角材から構成されており、並列した角材同士は交差部1、1’を中心として対称に接面してなることを特徴とする。第二水平架構体を4本の角材で構成する建物構造体は、強固な軸組みとできる。
【0029】
また本願発明の建物構造体は、第一水平架構体120が、長尺方向を同一としながら鉛直方向に積層された3段の角材から構成されており、直立柱体110は、交差部1、1’を中心として対称に接面した2本の角材から構成されていることを特徴とする。
【0030】
また本願発明の建物構造体は、直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130を構成するそれぞれの角材の径が略同一であることを特徴とする。これにより加工が容易となる。
【0031】
また本願発明の建物構造体は、直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130が間伐材で構成されてなることを特徴とする。この建物構造体は、間伐材の利用を高めることができるため、間伐が適正に行われるようになり健全な森林が育まれる。ひいては木材の循環が促進されて、育成目的に応じて生長した種々の樹木が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】建物構造体100を示す斜視図である。
【図1B】建物構造体100の変形例を示す斜視図である。
【図2】図1Aの一部拡大図であり、建物構造体100を斜め上方から見た斜視図である。
【図3】図1Aの一部拡大図であり、建物構造体100を斜め下方から見た視図である。
【図4】実施例2に係る建物構造体200を斜め上方から見た斜視図である。
【図5】実施例2に係る建物構造体200を斜め下方から見た視図である。
【図6】実施例3に係る土台構造体10を構成する各部材の斜視図である。
【図7A】実施例3に係る土台構造体10の組立て方法を説明する説明図である。
【図7B】実施例3に係る土台構造体10の組立て方法を説明する説明図である。
【図7C】実施例3に係る土台構造体10の組立て方法を説明する説明図である。
【図7D】実施例3に係る土台構造体10の組立て方法を説明する説明図である。
【図7E】実施例3に係る土台構造体10の組立て方法を説明する説明図である。
【図7F】実施例3に係る土台構造体10の組立て方法を説明する説明図である。
【図8】実施例4及び実施例5に係る上階構造体50、250を構成する各部材の斜視図である。
【図9A】実施例4に係る上階構造体50の組立て方法を説明する説明図である。
【図9B】実施例4に係る上階構造体50の組立て方法を説明する説明図である。
【図9C】実施例4に係る上階構造体50の組立て方法を説明する説明図である。
【図9D】実施例4に係る上階構造体50の組立て方法を説明する説明図である。
【図9E】実施例4に係る上階構造体50の組立て方法を説明する説明図である。
【図9F】実施例4に係る上階構造体50の組立て方法を説明する説明図である。
【図10A】実施例5に係る上階構造体250の組立て方法を説明する説明図である。
【図10B】実施例5に係る上階構造体250の組立て方法を説明する説明図である。
【図10C】実施例5に係る上階構造体250の組立て方法を説明する説明図である。
【図10D】実施例5に係る上階構造体250の組立て方法を説明する説明図である。
【図10E】実施例5に係る上階構造体250の組立て方法を説明する説明図である。
【図10F】実施例5に係る上階構造体250の組立て方法を説明する説明図である。
【図11A】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図11B】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図11C】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図11D】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図11E】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図11F】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図11G】実施例6に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図12】実施例3に係る土台構造体10の分解斜視図である。
【図13】実施例6に係る建物構造体を補強する様子を示す説明図である。
【図14】実施例7及び実施例8に係る上階構造体350、450を構成する各部材の斜視図である。
【図15A】実施例7に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図15B】実施例7に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図15C】実施例7に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図15D】実施例7に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図15E】実施例7に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図15F】実施例7に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図16A】実施例8に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図16B】実施例8に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図16C】実施例8に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図16D】実施例8に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図16E】実施例8に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図17】実施例9に係る上階構造体550を構成する各部材の斜視図である。
【図18A】実施例9に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図18B】実施例9に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図18C】実施例9に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図18D】実施例9に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図18E】実施例9に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図18F】実施例9に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図18G】実施例9または実施例10に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図19】実施例10に係る上階構造体650を構成する各部材の斜視図である。
【図20A】実施例10に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図20B】実施例10に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図20C】実施例10に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図20D】実施例10に係る建物構造体の組立て方法を説明する説明図である。
【図21】伝統的な木造軸組工法を説明する説明図である。
【図22】伝統的な木造軸組工法を説明する説明図である。
【図23】図23(a)は従来の教育玩具に係る組木の斜視図であり、図23(b)は組木を構成する基本材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、建物構造体を例示するものであって、本発明は、建物構造体を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また対称に配置される部材については、別個の部材であっても同一の符号を付す場合がある。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。また図面において特に注釈がない場合は、図面の上下方向を鉛直方向とする。
【実施例1】
【0034】
図1Aは建物構造体100の一部もしくは全体を示す斜視図である。建物構造体100は建築用の骨組みであり、建物の1階部分または上階部分、あるいは1階及び上階部分を一体とした架構とする。建物構造体100は、三次元方向(図1Aに示すx方向、y方向、z方向)を長尺方向とする木材を交差して組まれる。なお本明細書でいう「建物構造体」とは、互いに直交する木材が交差する交差部1、1’、1’’を少なくとも1つ備える構造体を差す。また建物構造体100は、交差部1、1’、1’’において、x方向、y方向、z方向の各方向を基準として線対称に構成されており、したがって一の木組みパターンを単位ユニットとして、これを繰り返すように連結させることで建物構造体100全体の規模を大きくすることもできる。また建物構造体100は、交差部を節として、この節から延伸する線材が対称に配置されており、意匠性が高い。
【0035】
建物構造体100は、図1Aに示すように略鉛直方向に固定される直立柱体110と、この直立柱体110と直交して固定される第一水平架構体120と、さらに直立柱体110及び第一水平体110に直交して固定される第二水平架構体130とを備える。直立柱体110、第一水平架構体120及び第二水平架構体130は、それぞれ複数の柱状の部材101から構成されており、特に第一水平架構体120及び第二水平架構体130は、少なくとも2つの部材101を鉛直方向に積層される。また直立柱体110、第一水平架構体120、及び第二水平架構体130には間伐材を利用できる。間伐材はスギやヒノキが好ましい。杉やヒノキの間伐材からなる天然木の無垢材は、高い強度を備え、さらに意匠的にも美しく、触感や木の香りに優れるからである。
【0036】
本願発明の建物構造体において重要なことは、三方向に組まれる建物構造体の各方向を複数の部材で構成することである。特に直立柱体110に直交する第一水平架構体120及び第二水平架構体130は、複数の部材を上下に積層されてなる。また各部材の交差部におけるほぞ穴は、複数の部材の交差部における凹凸形状を組み合わせて構成され、このほぞ穴に他の部材を嵌合させることで、交差する各部材を互いに連結しあう強固な構造体とできる。
【0037】
また図1Aでは、建物構造体100を構成する一対の第一水平架構体120を平行に配置し、さらに対向するこの一対の第一水平架構体120間を、3以上の第二水平架構体130でもって直交方向に組み合わせる構成を例示している。ただ、建物構造体はこの構成に限定されるものではなく、他の構造、例えば変形例として図1Bに示すように、建物構造体100を一対の第二水平架構体130で構成し、対向するこの一対の第二水平架構体130間を、3以上の第一水平架構体120でもって横木状に架橋させる形態としてもよい。このように架橋部分を構成する部材を適宜選択することで、部材101の総数や鉛直方向における断面積を変化させることができ、この結果、異なる強度仕様や形状、意匠などを実現できる。
【0038】
また図2及び図3は図1Aに係る建物構造体100の一部拡大図であり、各三次元方向における骨組みの記載を一部省略して端面図として示される。また図2は建物構造体100を斜め上方から見た斜視図であり、一方図3は建物構造体100を下方から見た斜視図である。図2及び図3の建物構造体100は、1階部分と上階部分での組み方が異なっており、したがって便宜上、地盤に固着された基礎FDによって支持される構造体を土台構造体10とし、また土台構造体10の上方に組まれる構造体を上階構造体50として区別する。
【0039】
図2の建物構造体100は、交差部1を独特の形状に加工した角材を組み合わせて連結される。建物構造体は少なくとも1方向を、同一の形状の部材で構成する。図2の土台構造体10は、総数8本の角材からなり、詳しくはz方向に2本の角材からなる土台柱体11、y方向に2本の角材からなる土台梁体12、及びx方向に4本の角材からなる土台桁体13を備える。一方上階構造体50は、総数9本の角材からなり、詳しくはz方向に2本の角材からなる上階柱体51、y方向に3本の角材からなる土台梁体52、及びx方向に4本の角材からなる土台桁体53を備える。土台構造体10と上階構造体50は、鉛直方向の柱体11、51を共通として、すなわち1階及び上階を1本で通す通(とおし)柱として一体に構成できる。あるいは土台構造体10と上階構造体50は、それぞれの柱体11、51を1階と上階とで別々に立てる管(くだ)柱として、互いに離間して配置してもよい。
【0040】
土台構造体10は、図3に示すように下面を略水平とする。つまり土台構造体10は、土台梁体12の下面12a及び土台桁体13の下面13aとが実質上同一面を構成するよう組まれる。一方、基礎FDは建築構造物の自重による鉛直方向の荷重や、地震や風によって構造物に加わる水平方向の荷重を地盤に伝えるための工作物であり、コンクリートを帯状に形成して、水平面とした上面に土台構造体10の下面12a、13aと接面させて固定する。特に土台構造体10の下面を水平面とできる建物構造体100は、全体が帯状に連なる基礎FDとの接触面積を十分に稼ぐことができる。この結果、建物全体の重みを基礎FDによって均等に支持できるため、強度に優れた構造となり好ましい。
【0041】
また図3の例では土台柱体11の下端面11aが露出しており、したがって土台構造体10は、土台梁体12の下面12a及び土台桁体13の下面13aに加え、土台柱体11の下端面11aもこれらと略水平に構成する。土台柱体11の下端面11aは基礎FDの上面に接面しており、鉛直方向に直立する土台柱体11と基礎FDとを直接接触させることで、土台構造体10は、基礎FDとの連結強度を高められる。一方で、土台柱体11の下端面11aを下方に露出させない形態としてもよく、すなわち土台構造体10の下端面を土台梁体12の下面12a及び土台桁体13の下面13aのみで構成してもよい。この場合、土台梁体12と土台桁体13の少なくとも下段部材を赤色材で構成することが好ましく、これにより下面12a、13aを含む基礎近傍における土台構造体10の耐蟻性を高められる。
【0042】
(上階構造体)
一方図2の上階構造体50は、所定の方向に延伸する一の角材を単一の無垢材で構成しており、直交する他の角材と交差部1’で交差して連結される。つまり延伸方向において継手架構を施しておらず、また角材の端面を交差部に配置させない。したがって柱の四方に梁の端部を接合させる四方差しとは異なり、詳しくは後述するが上階構造体50は連続した単独の木材における途中部位を、他の角材との組合せ部位として木組みされる。一方向に延伸する角材を単一の無垢材で構成する構造体は、強靱な骨組みとでき好ましい。ただ、継手架構を施した角材を使用してもよく、これにより複数の無垢材でもって角材の長さを所望の長さに調整できる。また上階構造体50は、金物等の連結部材を使用しない場合でも、各部材を組み合わせることで互いを一体に連結できる。ただし、所望の位置に連結部材を配設して各部材の固定を補強してもよい。
【0043】
また実施例1の上階構造体50で重要なことは、図3に示すように上階柱体51に直交する上階梁体52及び上階桁体53のそれぞれの下面52a、53aが同一水平面上になく、つまりの各下面52a、53aが平行を維持しながら段違いに構成される点である。各下面52a、53aの位置を上下に段違いに設ける上階構造体50は、天井方向の奥行きが深まり意匠性を向上させる。
【0044】
また上階構造体50は、上階柱体51と直交する上階梁体52や上階桁体53を、鉛直方向に積層された複数の角材で構成する。図2、図3の例ではx方向の上階桁体53を縦に2層積層しており、y方向の上階梁体52では縦に3層積層している。このように鉛直方向に積層された複数の角材でもって、これに直交する上階柱体51を固定する建物構造体100は、鉛直方向にかかる荷重をしっかりと支持でき好ましい。部材を鉛直方向に積層させて上階梁体52や上階桁体53とした構造体は、縦方向への厚みが増すため、曲げ応力による凸側の圧縮と凹側での引っ張りに対する耐性を高められる。
【実施例2】
【0045】
実施例2の建物構造体200を図4、図5に示す。図4は実施例2の実施例2の建物構造体200を斜め上方から見た斜視図であり、図5は建物構造体200を斜め下方から見た視図である。建物構造体200は、実施例1の建物構造体100と比較して、上階構造体のみが異なる。したがって実施例1と同一の機能を有する部材については実施例1と同一の符号を付して適宜詳細な説明を省略する。
【0046】
実施例2の上階構造体250は、実施例1の上階構造体50と同数の角材からなる。すなわち上階構造体250は、z方向に2本の角材からなる上階柱体251、y方向に3本の角材からなる土台梁体252及びx方向に4本の角材からなる土台桁体253を備える。ただ上階構造体250は、図4、図5に示すように、上階柱体251に直交する上階梁体252及び上階桁体253のそれぞれの下面252a、253aが略同一面となる姿勢に構成される。これにより、下面252a、253a全体に別部材を貼着する等加工を施す場合、上階構造体250の水平な下面252a、253aとこの別部材との接触面積を大きくしてしっかりと固定できる。実施例2の上階構造体250は、下面が段違いに組まれる実施例1の上階構造体50と比較して、この下面の段差分を補うためのスペーサを不要として、天井材の添付等の作業を容易に施すことができる。以下、実施例1及び実施例2の建物構造体100、200を構成する各部材及びその組み方について詳しく説明する。
【実施例3】
【0047】
まず実施例1及び実施例2で共通する土台構造体10の組み方を、実施例3として説明する。図6は、土台構造体10を構成する各部材の斜視図であり、また図7は図6の各部材を組立てて土台構造体10とする様子を示す説明図である。土台構造体10は、図6に示すように、種々のパターンに加工された角材からなる。これら独特の形状に加工された複数の角材を組み合わせることで、加工形状がほぞ穴を形成し、このほぞ穴に嵌合する形状に加工された他の角材をさらに組み合わせることで、土台構造体10を得る。
【0048】
実施例3の土台構造体10は、図6に示すように交差部において4種類の形状に加工された合計8の部材からなる。すなわち2つの第一形状部材bs−aaと、1つの第二形状部材bs−bbと、1つの第三形状部材bs−cc、4つの第四形状部材bs−ddからなる。第一形状部材bs−aaは土台柱体11を構成し、第二形状部材bs−bbと第三形状部材bs−ccで土台梁体12を構成し、さらに第四形状部材bs−ddで土台桁体13を構成する。また各部材の基本形状は、同一の径からなる直方体状の木質の角材であり、図では説明の便宜上全ての角材を実質上同一サイズとしているが、実際の使用に際しては、以下に説明する各部材の交差部における加工形状をそのままとして、長さや幅をを変更してもよい。
【0049】
(形状)
土台構造体10の土台柱体11を構成する第一形状部材bs−aaは、主角材の一の主面側からのみ、厚みの略半分だけ切り欠いた切り欠き状を有する。つまり第一形状部材bs−aaは、少なくとも主角材の略半分の厚みを鉛直方向に連続して有する。具体的に第一形状部材bs−aaは、角材の一の角部を厚み方向に略半分ほど段差状に切り欠いた第一凹部bs−ao1を設け、さらにこの第一凹部bs−ao1と離間した位置であって、かつこの第一凹部bs−ao1を設けた第一主面bs−am1側から同じく厚み方向において略半分ほど凹状に切り欠いた第二凹部bs−ao2を有する。第二凹部bs−ao2は、その開口長さを、第一凹部bs−ao1の開口長さよりも大きくする。また第一凹部bs−ao1と第二凹部bs−ao2との間には未加工領域が設けられており、この未加工領域は、言い換えるとこれを上下に挟む切り欠いた底面から突出した突出部bs−atを構成する。部材の交差部における切り欠き状を段差状あるいは凹状とする建物構造体は、切り欠き状が単純であるため容易に加工できる。
【0050】
また第二形状部材bs−bbは、角材の端部から離間した位置に、厚み方向に切り欠いた切り欠き状を有しており、この切り欠き状は凹状に形成される。第二形状部材bs−bbは凹部bs−bo1、bs−bo2を2つ設けており、この凹部bs−bo1、bs−bo2同士は離間して配置される。また2つの凹部bs−bo1、bs−bo2は角材の同じ一の第一主面bs−bm1から厚み方向において略半分ほど切り欠いた略同一の凹状とする。したがって第二形状部材bs−bbは、2つの凹部bs−bo1、bs−bo2と、その間に位置する未加工領域とで凹凸形状に加工される。この未加工領域は両側の凹部bs−boの底面から突出した突出部bs−btを構成する。
【0051】
また第三形状部材bs−ccは、同じく厚み方向に切り欠いた切り欠き状を有しており、この切り欠き状は凹状に形成される。第三形状部材bs−ccは、端部から離間した位置に1つの凹部bs−coを設けており、この凹部bs−coは、同じく角材の一の面から厚み方向において略半分の深さの凹状に形成される。ただ凹部bs−coの切り欠けの長さ(図における上下方向の長さ)は、第二形状部材bs−bbに設けられる凹部bs−bo1、bs−bo2よりも大きく、詳しくはこの第二形状部材bs−bbの2つの凹部bs−bo1、bs−bo2の端部から端部までをつなげた領域に等しい。
【0052】
第四形状部材bs−ddは、第三形状部材bs−ccを基材として、さらに第三形状部材bs−ccにおける凹部bs−coの底面bs−cuを横側面からコの字状に切り欠いた第二凹部bs−do2を備える。つまり第四形状部材bs−ddは、第一主面bs−dm1を角材の厚みの半分程度切り欠いた第一凹部bs−do1を有し、さらに第一凹部bs−do1の底面bs−duに、第一主面bs−dm1と直交する第二主面bs−dm2側から角材の厚みの略半分まで切り欠いた凹状の第二凹部bs−do2を設けて段差を形成している。部材の長尺方向において、第二凹部bs−do2の切り欠けの長さは第一凹部bs−do1よりも短く、第二凹部bs−do2は第一凹部bs−do1の底面bs−du内に設けられる。
【0053】
以上のように各部材の加工形状は、その内周面を段差状あるいは矩形状とする単純な形状であるため、加工が容易である。また少なくとも一方向の架構体を、複数の同一形状のパーツで構成するため、加工パターンを少なくできる。加工の形状がシンプルでその種類を低減できる部材は、加工の効率性を著しく高めることができる。例えば加工の場所を限定せず、組立て現場と別の場所で施工できる他、機械による作業も可能となる。
【0054】
(木組み)
上述の各形状部材を以下のようにして組立てて土台構造体10を得る。なお、図7は土台構造体10の組立て方法を説明する説明図であるため、基礎FDの図示を省略しているが、実際の建築においては基礎FDの上に土台構造体10を固定する(図2〜図5参照)。土台構造体10は、まず図7Aに示すように土台梁体12を構成する一の土台梁体一段目部材bh1を水平に固定する。この際、凹部bs−coを設けた第一主面bs−cm1側が上方を向く姿勢とする。図7ではこの土台梁体一段目部材bh1の長尺方向をy方向とする。
【0055】
続いて土台柱体11を構成する一の第一形状部材bs−aa、すなわち土台柱体第一部材bp1を鉛直方向(z方向)の姿勢として、土台梁体一段目部材bh1に交差させる。この際、土台柱体第一部材bp1は、段差状の第一凹部bs−ao1を下方に配置する向きとし、この第一凹部bs−ao1の段差状を、土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coの角に沿わせながら、土台梁体一段目部材bh1と直交方向に嵌合する。これにより土台柱体第一部材bp1は、直立した姿勢で土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coにおける中央域に組まれる(図7B)。続いて、土台桁体13の下段を構成する一の第四形状部材bs−dd、すなわち土台桁体一段目第一部材bk11を交差して組む。
【0056】
まず土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coは、図7Bに示すように、直立した土台柱体第一部材bp1によってその凹部を分割されて、分割凹部bs−co2、bs−co2’を形成される。この分割凹部bs−co2’に、土台桁体13の下段を構成する土台桁体一段目第一部材bk11を嵌合させる。土台桁体一段目第一部材bk11は、延伸方向をx方向としながら、第一凹部bs−do1を内側にかつ第二凹部bs−do2を下方とする姿勢で組まれる(図7C)。
【0057】
続いて土台桁体13の下段を構成する他の第四形状部材bs−dd、すなわち土台桁体一段目第二部材bk12を、土台構造体10の交差部1に組む。土台桁体一段目第二部材bk12は、土台梁体一段目部材bh1と直交する姿勢としながら、同様に分割凹部bs−co2に嵌合される。これにより土台桁体一段目第二部材bk12の第二凹部bs−do2と、土台梁体一段目部材bh1の分割凹部bs−co2が相欠き状に嵌合されて、土台梁体12及び土台桁体13は、その底面を略同一としながら十文字に連結される。この際、土台桁体一段目第二部材bk12は、土台桁体一段目第一部材bk11と対称な姿勢で固定される。すなわち土台桁体一段目第一部材bk11と土台桁体一段目第二部材bk12は、その第一主面bs−dm1同士が接面されて、互いの第一凹部bs−do1同士を連通させながら、その開口内部に土台柱体11を配置させる。土台構造体10は、図7Dに示すように土台梁体12及び土台桁体13によって底面及び上面を面一としながら十文字状にかつ一段に組まれており、この十文字状でもって交差部1から直立した土台柱体11を支持する。
【0058】
すなわち図7Cに示すように、土台桁体13の下段と略同時に、土台柱体11を構成する他の第一形状部材bs−aa、つまり土台柱体第ニ部材bp2を交差部1に連結させる。土台柱体第ニ部材bp2は、土台柱体第一部材bp1と対称な姿勢に配置されて、すなわち長尺方向をz方向としながら、第一凹部bs−ao1を下端かつ内側とする。土台柱体第ニ部材bp2は、第一凹部bs−ao1の段差状が、土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coに角に沿うように、交差させながら連結される。これにより図7Dに示すように、土台柱体第一部材bp1と土台柱体第ニ部材bp2は、互いに対称な姿勢で対向し、土台柱体11を構成する。対称に対向する土台柱体第一部材bp1と土台柱体第ニ部材bp2は、第一主面bs−am1同士が接面しており、これにより第二凹部bs−ao2同士が連通してy方向に貫通した開口部、すなわち貫通孔bs−h2を構成する。貫通孔bs−h2は内面が矩形状であって、続いて組み込まれる土台梁体二段目部材bh2の外面の形状と略等しい。
【0059】
土台梁体12の上段を構成する土台梁体二段目部材bh2は、延伸方向をy方向として、上述の貫通孔bs−h2に挿通される。組まれた土台梁体二段目部材bh2は、突出部bs−btでもって貫通孔bs−h2を閉塞する。土台梁体二段目部材bh2は、第一主面bs−bm1を上方に向く姿勢とし、その突出部bs−btの外周面が、貫通孔bs−h2の内周面に接面される。また土台梁体二段目部材bh2は、土台梁体一段目部材bh1の上に積層され、すなわち第一主面bs−bm1と対向する第二主面bs−bm2すなわち下面が、土台梁体一段目部材bh1、土台桁体一段目第一部材bk11及び土台桁体一段目第二部材bk12の各上面bs−cm1、bs−dm3に接面しながら固定される。
【0060】
土台梁体二段目部材bh2が組まれると、図7Eに示すように、y方向における土台柱体11の両側に、土台梁体二段目部材bh2の凹部bs−bo1、bs−bo2が配置される。この凹部bs−bo1、bs−bo2は、その底面bs−buを、土台桁体一段目第一部材bk11及び土台桁体一段目第二部材bk12のそれぞれの上面bs−dm3よりも一段高くなるように構成しており、これによりx方向において段差状bs−s1を形成する。
【0061】
この段差状bs−s1に嵌合するよう土台桁体二段目第一部材bk21を組む。土台桁体二段目第一部材bk21は、長尺方向をx方向とし、かつ第二凹部bs−do2を鉛直方向に開口する姿勢としながら、すなわち第二凹部bs−do2を下向きとしながら、土台桁体一段目第一部材bk11上に載置される。この際、土台桁体二段目第一部材bk21は、第一凹部bs−do1を形成する第一主面bs−dm1を内側側面として、土台柱体11の外面に接面する。土台桁体二段目第一部材bk21は交差部1において、第一凹部bs−do1の凹状内面が、土台柱体11の角形外周面を囲む姿勢に嵌合し、土台柱体11と交差する。また土台桁体二段目第一部材bk21は、第一凹部bs−do1に隣接して厚みを細くするくびれ部bs−dnを、交差部1における土台柱体11横の凹部bs−bo2に嵌合する。この際、土台桁体二段目第一部材bk21における、下方に開口する第二凹部bs−do2と、交差部1の段差状bs−s1とは、互いに相欠き形状を補い合うように嵌合しながら交差する。
【0062】
同様に土台桁体二段目第二部材bk22が組まれる。土台桁体二段目第二部材bk22は、土台桁体二段目第一部材bk21とx方向を基準に線対称な姿勢とする。つまり土台桁体二段目第二部材bk22は、土台桁体二段目第一部材bk21と第一主面bs−dm1同士を対向させる向きとしながら、下方に開口する第二凹部bs−do2を、交差部1の土台柱体11横の凹部bs−bo1に嵌合させる。この際、土台桁体二段目第一部材bk21と土台桁体二段目第二部材bk22は、それぞれの内側方向に開口する第一凹部bs−do1同士が連通して、z方向に貫通する矩形状の開口部、すなわち貫通孔bs−h3を構成する(図7F)。ただ、交差部1に組まれた際の貫通孔bs−h3は、土台柱体11によって閉塞された状態とする。言い換えると、第一凹部bs−do1を連接させて形成される貫通孔bs−h3は、2本の第一形状部材bs−aaの外面を囲む姿勢に配置される。
【0063】
上述のように、交差部1において独特の形状に加工された各形状部材を組み合わせることで、各方向を複数の形状部材で構成される土台構造体10を得る。土台構造体10は、互いの形状部材を埋め合わせるように組まれて、交差部1に空洞を設けない密な構造とする。図7Fの土台構造体10は、xy平面において十文字状に組まれた土台梁体12と土台桁体13とを、z軸方向に2段積層してなる。具体的に土台桁体13は、横に2本並列させた第四形状部材bs−ddを上下に積層させて合計4本の第四形状部材bs−ddで構成される。また土台構造体10は、土台梁体12と土台桁体13のそれぞれの上下面を面一とし、交差部1からz軸方向に土台柱体11を突出してなる。下面を面一とする土台構造体10は、上述の通り下面全体を基礎FDに接面できるため、しっかりと固定できる。
【0064】
(上階構造体50、250)
次に上階構造体50、250の組み方について以下に説明する。上述の通り、実施例1と実施例2の建物構造体100、200において、上階構造体50、250は、上階梁体52、252及び上階桁体53、253のそれぞれの下面52a、252a、53a、253aの配置位置が異なる。しかしながら、重要なことはこれらの上階構造体50、250が、同じ種類の形状部材を使用して、組み方のみを相違させている点である。つまり組立の際の部材の姿勢を変更するだけで、柱体、梁体及び桁体のそれぞれの相対位置を変更できる。同じ形状部材を利用して上階梁体52、252及び上階桁体53、253のそれぞれの下面52a、252a、53a、253aを、段違いにあるいは面一として組み立てることができる。以下、実施例1の上階構造体50に係る下面を段違いとする組み方を実施例4として、また実施例2の上階構造体250に係る下面を面一とする組み方を実施例5として、それぞれ以下に説明する。
【実施例4】
【0065】
図8は、上階構造体50を構成する各部材の斜視図であり、また図9は図8の各部材を組立てて上階構造体50とする様子を示す説明図である。ただし上述の通り、実施例5で説明する上階構造体250は実施例4の上階構造体50と同じ部材から構成されるため、図8は上階構造体250を構成する各部材の斜視図でもある。
【0066】
上階構造体50に組まれる各部材は、土台構造体10を構成する各部材の加工形状とほぼ同じ形状に加工される。実質上同一の形状に加工される木材は、土台構造体10にも上階構造体50にも併用できるため、加工形状の種類を少なくできる。またいずれの加工形状も凹状とすることで容易に加工でき、したがって材料の大量生産が可能となってコストを削減できる。具体的に上階構造体50は、交差部1’の加工形状において、土台構造体10を構成する各部材と、これに加えて木組み用に加工されない、すなわち延伸方向に略同じ太さとする角材とで構成される。ただし、上階柱体51を構成する角材については、土台柱体11を構成する角材の加工形状を一部変形した形状に加工される。また上階柱体51は土台柱体11と共通の部材を使用できる。この場合、詳しくは実施例6で説明するが、柱体を構成する角材の長尺方向において離間した位置に、土台柱体11用と上階柱体51用のそれぞれの交差部1、1’に対応した形状に加工される。なお実施例4では、上階構造体50の交差部1’に注目して、上階柱体51の形状や組み方を説明する。
【0067】
上階構造体50は、図8に示すように交差部において4種類の形状に加工された8本の部材と、1本の角柱状の寸胴角材up−eeとの合計9本で組まれる。4種類の形状とする8本の部材は、2本の第一形状部材up−aaと、1本の第二形状部材up−bbと、1本の第三形状部材up−cc、4本の第四形状部材up−ddからなる。2本の第一形状部材up−aaは上階柱体51を構成し、第二形状部材up−bbと第三形状部材up−ccと寸胴角材up−eeとで上階梁体52を構成し、さらに4本の第四形状部材up−ddで上階桁体53を構成する。また各部材の基本形状は、同一の径からなる直方体状の木質の角材とし、図では説明の便宜上全ての角材を実質上同一サイズとするが、実際の使用に際しては、以下に説明する各部材の交差部における加工形状をそのままとして、長さや幅を変更してもよい。
【0068】
(形状)
上階構造体50を構成する第一形状部材up−aaは、角材の端面から離間した位置であって、すなわち角材の途中に、同一方向に開口した第一凹部up−ao1と第二凹部up−ao2を設ける。第一凹部up−ao1と第二凹部up−ao2は、第一主面up−am1側から、それぞれ角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた凹部であって、互いに離間して形成される。つまり第一形状部材up−aaは、少なくとも主角材の略半分の厚みを鉛直方向に連続して有する。離間した第一凹部up−ao1と第二凹部up−ao2との間は未加工領域とし、この該未加工領域は両側の凹部up−ao1、up−ao2の底面から突出した突出部up−atを構成する。また第一凹部up−ao1の上方に、突出部up−atを介して設けられる第二凹部up−ao2は、開口長さが第一凹部up−ao1よりも大きく、具体的には約4倍とする。
【0069】
上階構造体50を構成する第二形状部材up−bb、第三形状部材up−cc及び第四形状部材up−ddは、土台構造体10を構成する第二形状部材bs−bb、第三形状部材bs−cc及び第四形状部材bs−ddとそれぞれ形状を略同じとする。
【0070】
(木組み)
上述の各形状部材を以下のようにして組立てて上階構造体50を得る。まず図9Aに示すように、上階柱体51を構成する上階柱体第一部材up1と上階柱体第二部材up2は、第一形状部材up−aaに相当し、その長尺方向をz方向とする。鉛直方向に直立する2本の上階柱体第一部材up1と上階柱体第二部材up2は、上階梁体一段目部材uh1に相当する第三形状部材up−ccを直交方向に交差させながら固定する。具体的に上階柱体第一部材up1と上階柱体第二部材up2は、交差部1’を中心として対称に接面しながら、すなわち互いの第一主面up−am1同士を接面させて上階柱体51を構成し、この際、第一凹部up−ao1同士及び第二凹部up−ao2同士とを連通させる。連通した第一凹部up−ao1同士は、y方向に貫通しながら開口断面を矩形状とする開口部、すなわち第一貫通孔up−h1を形成し、この第一貫通孔up−h1内に、上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1の外面が嵌合する。同様に連通した第二凹部up−ao2同士も、y方向に貫通しながら開口断面を矩形状とする第二貫通孔up−h2を形成しており、この第二貫通孔up−h2は、第一貫通孔up−h1よりも縦に大きく開口する。
【0071】
この際、長尺方向をy方向とする上階梁体一段目部材uh1は、上階梁体52の最下段を構成する。上階梁体一段目部材uh1は、図9Aに示すように凹部up−co1を設けた第一主面up−cm1を上向きとする姿勢で交差部1’に組まれる。さらに、凹部up−co1の底面up−cuにおける中央域を、直交する両側から上階柱体第一部材up1と上階柱体第二部材up2の各第一凹部up−ao1でもって挟持される。言い換えると上階柱体第一部材up1と上階柱体第二部材up2の第一貫通孔up−h1は、図9Bに示すように上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1でもって閉塞される。また上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1は、中央を挟持する第一形状部材up−aaの突出部up−atによって凹状を分断されており、すなわちこの突出部up−atの両側に分割凹部up−co2、up−co2’を形成する。引き続き、この分割凹部up−co2、up−co2’に、上階桁体53の下段を構成する上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12をそれぞれ嵌合させる。
【0072】
(上階桁体53の下段)
上階桁体53の下段を組む際には、その姿勢が重要となる。まず実施例4の上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、第四形状部材up−ddから構成される。上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、第一凹部up−do1を内側とし、かつ第二凹部up−do2を上方とする姿勢として交差部1’に組まれる。これにより上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、第一主面up−dm1同士が接面し、x方向を基準として対称に配置される。この際、第一凹部up−do1同士が連通して矩形状の内周面を構成し、この内周面でもって第一形状部材up−aaの外周面を包囲しながら接面する(図9C)。上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12の各くびれ部up−dnは、外側下面に角部を配置されて、分割凹部up−co2、up−co2’の角面に沿うように嵌合する。
【0073】
組まれた上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、図9Cに示すように、上階桁体53の下段を構成する。上階桁体53の下段は、上方に開口する第二凹部up−do2の底面up−duを、上階柱体51の突出部up−atの上面とで水平面を構成する。一方、上階桁体53の下段の下面は、上階梁体52の最下段の下面と段差を形成しており、詳しくは上階梁体52の最下段の下面よりも、角材の厚みの半分だけ上昇した位置に組まれる。
【0074】
続いて上階梁体二段目部材uh2を組む。上階梁体二段目部材uh2は、上階梁体一段目部材uh1上に、かつ同一方向の姿勢としてこれに積層される。上階梁体二段目部材uh2は、開口部、すなわち第二貫通孔up−h2を挿通して交差部1’に組まれ、上階梁体52の中段を構成する。組まれた上階梁体二段目部材uh2は、図9Dに示すように第二貫通孔up−h2の一部を閉塞しながら、中央の突出部up−btの外面を、上階柱体51の第二貫通孔up−h2の内面と接面させる。この際、上階梁体二段目部材uh2の凹部up−bo1、up−bo2は、上階柱体51の両側に配置され、この凹部up−bo1、up−bo2に、上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22をそれぞれ嵌合させる。
【0075】
(上階桁体53の上段)
上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、上階桁体53の上段を構成する。上階桁体53の上段は、上階桁体53の下段と同じく第四形状部材up−ddを使用し、下段とそれぞれ同じ姿勢としながら、かつ方向を同じくしてこの上に積層される。上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、交差部1’を中心として対称に接面される。すなわち上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、第一凹部up−do1を内側とし、かつ第二凹部up−do2を上方とする姿勢として交差部1’に組まれる。この際、上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22の各くびれ部up−dnを、交差部1’の凹部up−bo1、up−bo2にそれぞれ嵌合させる。これにより上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、第一主面up−dm1同士が接面し、x方向を基準として対称に配置される。さらに第一凹部up−do1同士が連通して矩形状の内周面を構成し、この内周面でもって上階柱体51の外周面を包囲しながら接面する(図9E)。上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、その第二凹部up−do2の底面を、上階梁体二段目部材uh2における突出部up−btの上面と水平面に構成する。
【0076】
上階桁体53の上段は図9Eに示すように、上階柱体51と上階梁体二段目部材uh2とともに、互いの凸凹形状を組み合わせた交差部1’において、y方向に貫通した開口部、すなわち貫通孔up−h3を形成する。貫通孔up−h3の内面形状は図9Eに示すように矩形状に構成されて、上階梁体三段目部材uh3に相当する寸胴角材up−eeの外周面形状に略合致する。上階梁体三段目部材uh3は、貫通孔up−h3を挿通して交差部1’に連結され、図9Fに示すように上階梁体52の最上段を構成する。上階梁体三段目部材uh3は、上階梁体二段目部材uh2と同一方向となる姿勢で、その底面を上階梁体二段目部材uh2の上面に接面させる。これにより、上階梁体52は、長尺方向を同一としながら鉛直方向に積層された3段の角材から構成される。また貫通孔up−h3は上階梁体三段目部材uh3によって閉塞されており、部材同士で密着させた交差部1’を得られる。図9Fの上階構造体50は、上述の通り複数の角材でもって各3次元方向を構成する。また上階梁体52と上階桁体53のそれぞれの下面は、z方向に差td分だけ段差を構成しており、図9Fの例ではこの差tdが角材の略半分の厚みに相当する。
【実施例5】
【0077】
実施例5の上階構造体250は上述の通り、実施例4の上階構造体50と比較して組み方のみが相違しており、これを構成する各部材の交差部における加工形状は略同一とする。したがって図8の各部材を使用して、実施例5の上階構造体250を組立てる様子を図10に示す。上階構造体250は、図9に示す実施例4の上階構造体50と比較して、上階桁体を組立てる際の姿勢が異なっており、上階柱体及び上階梁体の姿勢については同一とする。以下、図10を用いて上階構造体250の組み方を説明する。
【0078】
まず図10Aに示すように、実施例4と同様、上階柱体251を構成する上階柱体第一部材up1は第一形状部材up−aaで構成されており、この第一形状部材up−aaの第一凹部up−ao1でもって、第三形状部材up−ccを直交方向に支持する。この第三形状部材up−ccは、上階梁体一段目部材uh1を構成し、その凹部up−co1の中央域を、上階柱体第一部材up1の第一凹部up−co1に嵌合される。引き続き上階柱体251を構成する上階柱体第二部材up2を、上階柱体第一部材up1と対称に接面させながら、上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1の中央域を挟持する。これにより上階梁体252の最下段を構成する上階梁体一段目部材uh1は、図10Bに示すように、上階柱体251の第一凹部up−ao1同士が連通した矩形状の開口部、すなわち貫通孔up−h1に嵌合しながら交差して固定される。この際、上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1は、上階柱体251によって分割されて、上階柱体251の両側に分割凹部up−co2、up−co2’を形成される。
【0079】
(上階桁体253の下段)
続いて上階桁体253の下段を構成する上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12を、分割凹部up−co2’、up−co2にそれぞれ嵌合させる。実施例5の上階桁体253の下段は、実施例4の場合と比較して、第四形状部材up−ddを、z方向における上下面を反対にして組まれる。すなわち上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、図10Bに示すように、第一凹部up−do1を内側とし、かつ第二凹部up−do2を下方とする姿勢として交差部1に組まれる。これにより上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、第一主面up−dm1同士が接面し、x方向を基準として対称に配置される。この際、第一凹部up−do1同士が連通して矩形状の内周面を構成し、この内周面でもって上階柱体251の外周面を包囲しながら接面する(図10C)。また上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12の各くびれ部up−dnは、外側上面に角部を配置されて、上階梁体一段目部材uh1の上面と略水平面を構成する。
【0080】
組まれた上階桁体一段目第一部材uk11及び上階桁体一段目第二部材uk12は、図10Cに示すように、y方向に並列に配置されて上階桁体253の下段を構成する。この際、上階桁体253の下段は、下方に開口する各第二凹部up−do2を、交差部1’の分割凹部up−co2、up−co2’に仕口状に交差しながらそれぞれ組み合わせる。これにより上階桁体253の下段の下面と、上階梁体252の最下段の下面とが水平面を構成するよう配置される。
【0081】
一方、上階柱体251は、第二凹部up−ao2同士が連通したy方向に貫通する開口部、すなわち貫通孔up−h2を形成される。この貫通孔up−h2に上階梁体二段目部材uh2を挿通させて、実施例4と同じく、上階梁体252の中段を構成する。上階梁体二段目部材uh2は第二形状部材up−bbにより構成されており、その上面に二つの凹部up−bo1、up−bo2を配置する姿勢とする。上階梁体二段目部材uh2が上階梁体一段目部材uh1の上方に積層されると、凹部up−bo1、up−bo2は、図10Dに示すようにy方向における上階柱体251の両側に配置される。これらの凹部up−boに上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22をそれぞれ嵌合させる。
【0082】
(上階桁体253の上段)
上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、上階桁体253の上段を構成する。上階桁体253の上段は、実施例4と同様、上階桁体253の下段とそれぞれ同じ姿勢としながら、かつ方向を同じくしてこの上に積層される。すなわち実施例5の上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、第一凹部up−do1を内側とし、かつ第二凹部up−do2を下方とする姿勢として交差部1’に組まれる。具体的には、上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22の各くびれ部up−dnを、交差部1’の凹部up−bo2、up−bo1にそれぞれ嵌合させる。これにより上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、第一主面up−dm1同士が接面し、x方向を基準として対称に配置される。この際、第一凹部up−do1同士が連通して矩形状の内周面を構成し、この内周面でもって上階柱体251の外周面を包囲しながら接面する(図10E)。さらに上階桁体二段目第一部材uk21及び上階桁体二段目第二部材uk22は、第二凹部up−do2を、交差部1’の凹部up−bo2、up−bo1と仕口状に交差して嵌合し、図10Eに示すように、上階桁体253の上段の上面と、これに直交する上階梁体252の中段との上面を略水平に配置する。
【0083】
この際、それぞれの角材の凹凸形状を組み合わせた交差部1’において、y軸方向に貫通した開口部、すなわち貫通孔up−h3が形成される。貫通孔up−h3の内周は図10Eに示すように矩形状に構成されており、上階梁体三段目部材uh3を構成する寸胴角材up−eeの外周形状に略合致する。上階梁体三段目部材uh3は、実施例4と同様、貫通孔up−h3を挿通されて交差部1’に連結され、図10Fに示すように上階梁体252の最上段を構成する。上階梁体三段目部材uh3は、上階梁体二段目部材uh2と同一方向となる姿勢で、その底面を上階梁体二段目部材uh2の上面に接面させる。貫通孔up−h3は上階梁体三段目部材uh3によって閉塞されており、角材同士で密着させた交差部1’を得られる。図10Fの上階構造体250は、上述の通り複数の角材でもって各3次元方向を構成する。また上階梁体252と上階桁体253のそれぞれの下面は略面一に配置される。
【実施例6】
【0084】
上述の実施例では土台構造体10と上階構造体50、250とを別個に組む方法について説明したが、実施例6では、土台構造体10と上階構造体50、250とを略同時に木組みする方法について図11を用いて説明する。また実施例6の建物構造体は、一例として図2及び図3に示す建物構造体100を挙げており、土台構造体10と、下面を段差状に配置させる上階構造体50とから構成される。ただ実施例6の建物構造体は、上述の通り同一の部材を使用して組み方のみを変更することにより、完成時における上階構造体の外観を変更できるため、上方の構造体を上階構造体50に限定せず、上階構造体250としてその下面を面一とすることもできる。
【0085】
建物構造体100は、図11Aに示すように、土台構造体10と上階構造体50とを一体に連結する連続柱体21を採用する。連続柱体21は、2本の第一形状部材rz−aaからなる連続柱体第一部材rp1及び連続柱体第二部材rp2を、対称に接面して得られる。第一形状部材rz−aaは、土台柱体11と上階柱体51とを連続させた単一の部材であって、土台柱体11及び上階柱体51との両方の加工形状を備える。具体的に第一形状部材rz−aaは、連続する単一の角材の下端近傍に、土台柱体11の第一形状部材bs−aaに相当する加工形状を施し、この上方に、上階柱体51の第一形状部材up−aaと対応する加工形状を備える。したがって第一形状部材rz−aaは、一の主面側から段差状、あるいは凹状に厚みの半分ほど切り欠いた凹部を少なくとも4つ形成しており、それぞれの凹部は互いに離間して同一の主面側に開口される。図11Aの第一形状部材rz−aaは、土台柱体11の第一形状部材bs−aaと同一形状の各凹部に対応した第一凹部rz−ao1、第二凹部rz−ao2と、さらに上階柱体51の各凹部に対応する第三凹部rz−ao3、第四凹部rz−ao4とを備える。
【0086】
また実施例6の建物構造体100は、連続柱体21を除く他の部材については、実施例1〜実施例5と同一のものを使用でき、したがって同一の形状部位には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0087】
建物構造体100は、まず図11Aに示すように、土台構造体10を構成する土台梁体一段目部材bh1を固定する。土台梁体一段目部材bh1は、土台梁体12の最下段に位置し、その凹部bs−coを上方に開口した姿勢とする。続いて連続柱体21を構成する連続柱体第一部材rp1を、土台梁体一段目部材bh1に直交する姿勢に組み込む。連続柱体第一部材rp1は、段差状に切り欠いた第一凹部rz−ao1を、土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coの角に沿わせながら、直交方向に嵌合させる。これにより連続柱体第一部材rp1は、直立した姿勢で土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coにおける中央域に組まれる(図11B)。
【0088】
続いて、土台桁体13の下段を構成する土台桁体一段目第一部材bk11を交差して組む。まず土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coは、図11Bに示すように、直立した連続柱体第一部材rp1によってその凹部を分割されて、分割凹部bs−co2、bs−co2’を形成される。この分割凹部bs−co2’に、土台桁体13の下段を構成する土台桁体一段目第一部材bk11を嵌合させる。土台桁体一段目第一部材bk11は、延伸方向をx方向としながら、第一凹部bs−do1を内側にかつ第二凹部bs−do2を下方とする姿勢で組まれる(図11C)。
【0089】
次に直立する連続柱体第一部材rp1に、上階梁体一段目部材uh1を交差しながら組む。具体的に、直立連続柱体第一部材rp1は、その第三凹部rz−ao3に、上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1を仕口状に嵌合させる。この際の上階梁体一段目部材uh1は、長尺方向をy方向とし、かつその凹部up−co1を上方に開口する姿勢とする。引き続き図11Dに示すように、連続柱体第二部材rp2を組み込む。連続柱体第二部材rp2は、連続柱体第一部材rp1と同一の形状に加工されており、連続柱体第一部材rp1と対称となる向きに接面される。この際、連続柱体第二部材rp2の下端では、第一凹部rz−ao1及び突出部rz−atが、土台梁体一段目部材bh1の凹部bs−coの角に沿いながら土台用交差部1に嵌合する。一方、上階構造体50の上階用交差部1’では、連通した第三凹部rz−ao3同士でもって、上階梁体一段目部材uh1の凹部up−co1を直交方向に挟持する(図11E)。
【0090】
続いて図11Eに示すように、土台桁体13の下段を構成する他の第四形状部材bs−dd、すなわち土台桁体一段目第二部材bk12が、土台構造体10の交差部1に組まれる。土台桁体一段目第二部材bk12は、土台桁体一段目第一部材bk11と対称な姿勢でこれに接面される。図11Fの土台構造体10は、土台梁体12及び土台桁体13によって底面を面一としながら十文字状にかつ一段に組まれており、この土台構造体10から直立する姿勢に嵌合された連続柱体21が、上方で上階梁体52の最下段を固定する。これを基本構造として、他の部材をさらに組み合わす。
【0091】
ところで図11Fの基本構造において、下方の土台構造体10は、図7Dと同一の形状であり、また上階構造体では、図9B、図10Bと同一の状態を示す。したがって、以後の木組みにおいては他の実施例と同様、土台構造体10と上階構造体20、250のそれぞれを個々に組立てていけばよく、その組立て順については特に限定しない。言い換えると、土台構造体10及び上階構造体50、250を略同時に組立てる際には、図11Fに示す基本構造を基準とし、以降は土台構造体10や上階構造体50、250の組み方を自由に選択して、種々の建物構造体100、200を得ることができる(例えば図11G)。基本構造を共通とする建物構造体100、200は、覚える工程手順を低減して容易に組立てられるため、木組みの手間と時間を著しく縮減することができる。
【0092】
(複数の上階構造体)
また、図11の例では土台構造体10と上階構造体50、250とで構成される2階分の建物構造体100における組み方を説明したが、これに加えてさらに上階の構造体を略同時に組み合わせることができることは言うまでもない。この場合は、予め複数の階層に対応する各交差部1、1’、1’’・・・に対応したそれぞれの加工形状を備える第一形状部材rz−aaを用意する。そして2本の第一形状部材rz−aaを連続柱体第一部材rp1及び連続柱体第二部材rp2として、これらの連続柱体でもって各上階の梁体の下段を挟持し、これを基本構造とする。以降の各階における交差部の組み方は上述と同様とする。
【0093】
図1Aに示す建物構造体100は、z方向に1階、2階、屋根部分をそれぞれ支持する交差部1、1’、1’’を下段、中段、上段の3段に有する。建物構造体は、その構造体全体の外周に位置する交差部において、少なくとも一方向の部材の端面を、交差部1、1’、1’’から外方に配置させる。例えば図1Aの円で囲まれた交差部1’’に注目すると、直立柱体110、第一水平架構体120、及び第二水平架構体130は、交差部1’’から外方に突出しており、詳しくは直立柱体110の上端面110a、第一水平架構体120の横側端面120a、及び第二水平架構体130の横側端面130aが交差部1’’の外方に配置される。交差部から突出した各部材の形状は特に限定しない。例えば図1Aに示すように、上段の交差部1’’から上方に突出したそれぞれの直立柱体110は、断面と平行な矩形面や傾斜面あるいは曲面等に加工できる。
【0094】
ところで、直立柱体と直交する第一水平架構体及び第二水平架構体が、少なくとも2つの部材を鉛直方向に積層してなる建物構造体は、上述の通り鉛直方向にかかる荷重をしっかりと支持できる。さらに上方向へのひっぱりに対する耐性も高められる。この理由について土台構造体10を例に説明する。図12は土台構造体10の分解斜視図である。土台梁体12と土台桁体13の上段に注目すると、これらは、土台柱体11の下端から離間した位置でもって、土台柱体11に固定される。さらに土台柱体11は、その下端に、土台梁体12及び土台桁体13の各上段の下面から下方に突出した下端突出部bs−atkを構成する。一方、土台柱体12と土台桁体13の下段は十文字に組まれており、上方へ開口する開口部、すなわち貫通孔bs−h1、bs−h1’を形成する。この貫通孔bs−h1、bs−h1’に、土台梁体12及び土台桁体13の各上段の下端突出部bs−atkを嵌合させた状態で、土台構造体10は組まれる。つまり土台構造体10は、土台梁体12及び土台桁体13の上段と下段との嵌合部において、互いの形状を段差状としてその接触面積を大きくする。
【0095】
さらに土台梁体12あるいは土台桁体13の上段と下段とを、連結部材2でもって連結することで、土台構造体10全体を一体に連結できる。これにより、土台柱体11に交差して組まれた2方向の土台梁体12及び土台桁体13が、連結された上段と下段とでもって土台柱体11の引き抜きを阻止できる。上下2段に積層された土台梁体12及び土台桁体13は、上述の通り互いの接触面積を大きくした状態で、土台柱体11の上方への引っ張り力にしっかりと抵抗できる。また土台構造体10は、例えば図12に示すように、基礎FDにあらかじめ埋め込まれた連結部材2でもって、2段の部材を連結させる形態として、建物構造体自体のみならず建物構造体と基礎FDとの連結強度を高めることができる。
【0096】
(補強)
また建物構造体100、200は、図1Aに示すように上述の通り交差部1、1’、1’’において、3方向の各方向を構成する角材を交差しながら一体に連結できる。ただし、隣接する交差部間に連結部材を配置して、構造体を補強してもよい。連結部材は、構造用の補強金物として釘やボルト等が採用できる。連結部材による補強は、第一水平架構体120や第二水平架構体130を構成する複数の角材同士を、接近させる方向に固定して、さらに連結強度を高められる。
【0097】
また建物構造体100、200は、交差部1、1’、1’’を補強して、特に鉛直方向の荷重に対する耐性を高めることができる。図13は交差部を補強する様子を説明する説明図であり、図13(a)は、建物構造体100と、これに連結されて建物構造体100を補強する構造体補強部3とを示した分解斜視図である。また図13(b)は、構造体補強部3によって建物構造体100が補強された様子を示す斜視図である。構造体補強部3は、図13(a)に示すように角材を主材としており、この角材は、建物構造体100の連続柱体21を構成する角材と長さを略等しくする。構造体補強部3は、隣接する2つの直交面側からそれぞれ切り欠いた補強用切り欠け部4、4’を複数備えており、それぞれの補強用切り欠け部4、4’は鉛直方向に離間して配置される。補強用切り欠け部4、4’の形成位置は、建物構造体100の交差部1、1’の配置位置に対応し、かつ補強用切り欠け部4、4’の内面は、建物構造体100の交差部1、1’の外面と略同一の形状とする。
【0098】
構造体補強部3は、長尺方向を鉛直方向とし、かつ補強用切り欠け部4、4’を内側とする姿勢で、建物構造体100の外面に嵌合される(図13(b))。なお図13(b)では、嵌合された構造体補強部3の様子をわかりやすく示すため、構造体補強部3にハッチングを付して記す。構造体補強部3は図13(b)に示すように、その補強用切り欠け部4、4’が、建物構造体100の交差部1、1’の外面の凸凹形状に沿いながら嵌合し、一体に固定される。構造体補強部3が連結された建物構造体100は、交差する梁体12、52及び桁体13、53で構成される略直角の隅部に嵌合され、柱体21に接面される。柱体21は、連結された構造体補強部3の分だけ、その全幅を増加させることができため、鉛直方向の荷重に対する耐性を強化できる。図13の例では、一の構造体補強部3を、交差部1、1’における一の隅部に嵌合させているが、複数の構造体補強部3を他の隅部に嵌合させて一層の補強を図ることもできる。この構造体補強部3は、建物構造体100の完成後に、これに添えて補強する形態とできるため、設置場所を適宜選択することができる。
【実施例7】
【0099】
実施例7の上階構造体350は、実施例4に係る上階構造体50の変形例である。上階構造体350は、実施例4の上階構造体50と比較して、組まれた際の外観は一致するが、これを構成する部材の加工形状が一部異なる。図14にこの上階構造体350を構成する各部材の斜視図を示す。上階構造体350は、図14に示されるように、3種類の形状に加工される8本の角材と、1本の角柱状の寸胴角材up2−eeとの合計9本で組まれる。すなわち実施例7の上階構造体350は実施例4の上階構造体50に比べて加工パターンが少ない。3種類の加工パターンとする8本の角材は、2本の第一形状部材up2−aaと、2本の第二形状部材up2−bbと、4本の第三形状部材up2−ddからなる。2本の第一形状部材up2−aaは上階柱体351を構成し、第二形状部材up2−bbと寸胴角材up2−eeとで上階梁体352を構成し、さらに第三形状部材up2−ddで上階桁体353を構成する。また各部材の基本形状は直方体からなる角材とし、図では説明の便宜上、全ての角材を実質上同一サイズとするが、実際の使用に際しては、以下に説明する各部材の交差部における加工形状をそのままとして、長さや幅を変更してもよい。
【0100】
(形状)
上階構造体350を構成する第一形状部材up2−aaは、角材の端面から離間した位置であって、すなわち角材の途中に、第一主面up2−am1側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up2−ao1を備える。同様に第二形状部材up2−bbも、その第一主面up2−bm1側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up2−bo1を備える。第二形状部材up2−bbの第一凹部up2−bo1の切り欠けの長さ(図における上下方向の長さ)は、第一形状部材up2−aaの第一凹部up2−ao1の切り欠けの長さよりも小さい。さらに第三形状部材up2−ddは、隣接する第一主面up2−dm1と第二主面up2−dm2とが直交する角材を主材とし、この第一主面up2−dm1側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up2−do1と、さらにこの第一凹部up2−do1の両側に、第二主面up2−dm2側から厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第二凹部up2−do2及び第三凹部up2−do3をそれぞれ備える。第一凹部up2−do1の底部up2−dm3は、矩形状に形成されており、第一主面up2−dm1側から角材の厚みの半分の深さの位置に奥まって配置される。
【0101】
(木組み)
上述の各形状部材を以下のようにして組立てて上階構造体350を得る。まず図15Aに示すように、上階柱体351を構成する上階柱体第一部材u2p1と上階柱体第二部材u2p2は、第一形状部材up2−aaから構成され、その長尺方向をz方向とする。一方、上階梁体352の下段を構成する上階梁体一段目部材u2h1は、第二形状部材up2−bbから構成され、その長尺方向をy方向とし、かつ第一凹部up2−bo1を上方に向く姿勢とする。直立させた上階柱体第一部材u2p1の第一凹部up2−ao1と、水平方向の上階梁体一段目部材u2h1の第一凹部up2−bo1とを仕口状に組合せ、これら上階柱体第一部材u2p1及び上階梁体一段目部材u2h1とを直交方向に交差させる。続いて上階柱体第二部材u2p2を、上階柱体第一部材u2p1と対称に対向する姿勢としながら交差部1に組む(図15B)。互いの第一主面up2−am1を接面させながら対向する上階柱体第一部材u2p1と上階柱体第二部材u2p2は、図15Bに示すように第一凹部up2−ao1同士を連通させ、y方向に貫通する開口部、すなわち第一貫通孔up2−h1を形成する。水平方向に配置される上階梁体一段目部材u2h1は、その底面を第一貫通孔up2−h1の内周底面に嵌合して、上階柱体351に挟持される。
【0102】
次に上階桁体353を構成する4本の第三形状部材up2−ddの内、その下段に相当する上階桁体一段目第一部材u2k11及び上階桁体一段目第二部材u2k12を組む。実施例7の上階桁体一段目第一部材u2k11及び上階桁体一段目第二部材u2k12は、長尺方向をx方向とし、かつ第一凹部up2−do1が上方に開口する姿勢とする。上階桁体一段目第一部材u2k11及び上階桁体一段目第二部材u2k12は、底部up2−dm3を内側とする向きとしながら対称に接面されて、上階梁体一段目部材u2h1と交差しながら交差部1’に組まれる。この際、底部up2−dm3は、第一貫通孔up2−h1に嵌合されて、その上面と上階梁体一段目部材u2h1の上面とで水平面を構成する(図15C)。
【0103】
続いて上階梁体352の中段を構成する上階梁体二段目部材u2h2を組む。上階梁体二段目部材u2h2は、第二形状部材up2−bbから構成されており、下段の上階梁体一段目部材u2h1と同じ姿勢としながら第一貫通孔up2−h1を挿通し、上階梁体一段目部材u2h1上に積層される(図15D)。
【0104】
さらに上階桁体353の上段に相当する上階桁体二段目第一部材u2k21及び上階桁体二段目第二部材u2k22が組まれる。上階桁体二段目第一部材u2k21及び上階桁体二段目第二部材u2k22はそれぞれ下段と同じ姿勢としながら、直交する上階梁体352の中段に形成された第一凹部up2−bo1に嵌合する(図15E)。
【0105】
最後に上階梁体352の上段を構成する寸胴角材up2−eeの上階梁体三段目部材u2h3が組まれる。上階梁体三段目部材u2h3は、長尺方向をy方向としながら第一貫通孔up2−h1を挿通し、上階梁体二段目部材u2h2上に積層される(図15F)。
【0106】
図15Fに示す実施例7の上階構造体350は、実施例4と同様、上階梁体352と上階桁体353の下面の高さが一致しておらず、すなわち平行を維持しながら段違いに配置される。
【実施例8】
【0107】
実施例8の上階構造体450は、実施例7と比較して上階梁体と上階桁体の下面の高さを一致させたものであり、実施例7と同一の角材を使用しながら組み方を相違させて得る。図16は実施例8の上階構造体450の組み方を説明する説明図である。すなわち上階構造体450は、図16Aに示すように、実施例7と同様の手順で上階梁体452の下段に相当する上階梁体一段目部材u2h1を、上階柱体451でもって交差しながら挟持する。続いて上階桁体453の下段に相当する上階桁体一段目第一部材u2k11及び上階桁体一段目第二部材u2k12を組む。実施例8の上階構造体450は、4本の第三形状部材up2−ddから構成されており、この第三形状部材up2−ddを組む際の姿勢を、実施例7の場合と比較して天地逆とする。すなわち第三形状部材up2−ddは、長尺方向をx方向とし、かつ第一凹部up2−do1が下方に開口する姿勢とする。上階桁体一段目第一部材u2k11及び上階桁体一段目第二部材u2k12は、底部up2−dm3を内側上方とする向きとしながら対称に接面されて、上階梁体一段目部材u2h1と交差しながら交差部1’に組まれる。この際、底部up2−dm3の外周側面は、第一貫通孔up2−h1の内周面に接面される。第一貫通孔up2−h1に嵌合された上階桁体453の下段は、その上面と下面とを上階梁体一段目部材u2h1の上面及び下面とで略水平面を構成する(図15B)。
【0108】
続いて上階梁体452の中段に相当する上階梁体二段目部材u2h2を組む。上階梁体二段目部材u2h2は、下段の上階梁体一段目部材u2h1と同じ姿勢としながら第一貫通孔up2−h1を挿通し、上階梁体一段目部材u2h1上に積層される(図15C)。
【0109】
さらに上階桁体453の上段に相当する上階桁体二段目第一部材u2k21及び上階桁体二段目第二部材u2k22が組まれる。上階桁体二段目第一部材u2k21及び上階桁体二段目第二部材u2k22はそれぞれ下段と同じ姿勢としながら、直交する上階梁体452の中段に形成された第一凹部up2−bo1に嵌合する(図15D)。
【0110】
最後に上階梁体452の上段を構成する上階梁体三段目部材u2h3を組む。上階梁体三段目部材u2h3は寸胴角材up2−eeに相当し、長尺方向をy方向とする。上階梁体三段目部材u2h3は第一貫通孔up2−h1を挿通され、上階梁体二段目部材u2h2上に積層されて上階構造体450を得る(図15E)。実施例8の上階構造体450は、上階梁体452と上階桁体453の下面の高さがz方向において略一致しており、すなわち略水平面に配置される。
【実施例9】
【0111】
また実施例9の上階構造体550について説明する。この上階構造体550は、実施例4に係る上階構造体50と比較して、組まれた際の外観は一致するが、これを構成する部材の加工形状が一部異なる。詳しくは、一部の部材については実施例4と共通の形状とし、その組み方についても同一工程を有する。したがって、共通する形状や組み方については詳細な説明を適宜省略する。
【0112】
図17はこの上階構造体550を構成する各部材の斜視図であり、図18はこれらの各部材を組立てる様子を示す説明図である。上階構造体550は、図17に示されるように交差部において5種類の形状に加工される8本の角材と、1本の角柱状の寸胴角材up3−eeとの合計9本で組まれる。5種類の加工パターンとする8本の角材は、1本の第一形状部材up3−aa、1本の第二形状部材up3−bb、4本の第三形状部材up3−cc、1本の第四形状部材up3−dd及び1本の第五形状部材up3−ffからなる。
【0113】
また1本の第一形状部材up3−aaと1本の第二形状部材up3−bbとで上階柱体551を構成し、1本の第三形状部材up3−cc、1本の第四形状部材up3−dd及び寸胴角材up3−eeで上階梁体552を構成し、さらに1本の第五形状部材up3−ffと3本の第三形状部材up3−ccとで上階桁体553を構成する。また各部材の基本形状は直方体からなる角材とし、図では説明の便宜上、全ての角材を実質上同一サイズとするが、実際の使用に際しては、以下に説明する各部材の交差部における加工形状をそのままとして、長さや幅を変更してもよい。
【0114】
(形状)
上階柱体551を構成する第一形状部材up3−aaは、角材の端面から離間した位置であって、すなわち角材の途中に、同一方向に開口した第一凹部up3−ao1と第二凹部up3−ao2を設ける。第一凹部up3−ao1と第二凹部up3−ao2は、第一主面up3−am1側から、それぞれ角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた凹部であって、互いに離間して形成される。つまり第一形状部材up3−aaは、少なくとも主角材の略半分の厚みを鉛直方向に連続して有する。離間した第一凹部up3−ao1と第二凹部up3−ao2との間は未加工領域とし、この該未加工領域は両側の凹部up3−ao1、up3−ao2の底面から突出した突出部up3−atを構成する。また第一凹部up3−ao1の上方に、突出部up3−atを介して設けられる第二凹部up3−ao2は、開口長さが第一凹部up3−ao1よりも大きく、具体的には約4倍とする。
【0115】
上階柱体551を構成する第二形状部材up3−bbは、隣接する第一主面up3−bm1と第二主面up3−bm2とが直交しており、この第一主面up3−bm1側から、角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up3−bo1と、第二主面up3−bm2側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第二凹部up3−bo2とを有する。第一凹部up3−bo1は、第二凹部up3−bo2よりも縦に大きく開口する。また部材の長尺方向において、第一凹部up3−bo1と第二凹部up3−bo2の切り欠き位置は一部重複しており、詳しくは第一凹部up3−bo1の隅を欠く位置に第二凹部up3−bo2を設けて、第一凹部up3−bo1と第二凹部up3−bo2とが連通する。第一主面up3−bm1側からの平面視において、この連通部分は段差状を構成する。
【0116】
上階梁体552または上階桁体553を構成する第三形状部材up3−ccは、交差部において、実施例4の上階構造体50における第四形状部材up−ddと同一形状とする。すなわち第三形状部材up3−ccは、隣接する第一主面up3−cm1と第二主面up3−cm2とが直交しており、この第一主面up3−cm1側から、角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up3−co1と、第二主面up3−cm2側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第二凹部up3−co2とを有する。なお第一凹部up3−co1は、第二凹部up3−co2よりも角材の長尺方向に大きく開口する。したがって第一凹部up3−co1の底面up3−cuは、第一主面up3−cm1からの平面視において、第二凹部up3−co2によって側方から凹状に切り欠かれ、コの字状に形成される。
【0117】
上階梁体552を構成する第四形状部材up3−ddは、交差部において、実施例4の上階構造体50における第二形状部材up−bbと同一形状とする。第四形状部材up3−ddは、第一主面up3−dm1側から厚み方向において略半分ほど切り欠いた2つの凹部up3−do1、up3−do2を設けており、この第一凹部up3−do1及び第二凹部up3−do2は互いに離間して配置される。また2つの凹部up3−do1、up3−do2の間は、凹部up3−do1、up3−do2の底面から突出した突出部up3−dtを構成する。
【0118】
上階桁体553を構成する第五形状部材up3−ffは、隣接する第一主面up3−fbm1と第二主面up3−fm2とが直交しており、この第一主面up3−fm1側から、角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up3−fo1と、第二主面up3−fm2側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第二凹部up3−fo2とを有する。つまり第一凹部up3−fo1は、第二凹部up3−fo2と横に略90°ずれた位置であって、かつ縦方向に一部重複して配置される。詳しくは、部材の長尺方向において、第一凹部up3−fo1と第二凹部up3−bo2は、その開口大きさを略同一とし、第一凹部up3−fo1の開口大きさの略半分ずれた位置に、第二凹部up3−fo2を配置する。第五形状部材up3−ffは、これらの凹部が重複する領域で幅を小さくしたくびれ部up3−fnを有する。くびれ部up3−fnの幅は、部材の全幅の略1/4とする。
【0119】
(木組み)
上述の各形状部材を以下のようにして組立てて上階構造体550を得る。まず図18Aに示すように、第一形状部材up3−aaをz方向に直立させ、これを上階柱体第一部材u3p1とする。この上階柱体第一部材u3p1の第一凹部up3−ao1に、上階梁体一段目部材u3h1を交差して組む。上階梁体一段目部材u3h1は第三形状部材up3−ccを使用し、長尺方向をy方向とする姿勢で、その第一凹部up3−co1の略中央域を上階柱体第一部材u3p1の第一凹部up3−ao1の内周面に嵌合させる。上階梁体一段目部材u3h1の第一凹部up3−co1は、その底面up3−cuに交差するよう組まれた上階柱体第一部材u3p1によって両側に分断され、分割凹部up3−co3、up3−co3’を形成する。
【0120】
続いてこの分割凹部up3−co3に、上階桁体一段目第一部材u3k11を嵌合させる。まず上階桁体一段目第一部材u3k11は、第五形状部材up3−ffを使用し、長尺方向をx方向として交差部1’に組まれる。上階桁体一段目第一部材u3k11は、第一主面up3−fm1を上方とし、かつ第二主面up3−fm2を内側とする向きで、くびれ部up3−fnの下方隅部を、分割凹部up3−co3の内周隅部に沿わす。図18Bに示すように、分割凹部up3−co3に嵌合された上階桁体一段目第一部材u3k11は、上階梁体一段目部材u3h1に交差しながら、その下面同士を段違いに配置される。
【0121】
次に上階柱体第一部材u3p2を組む。上階柱体第二部材u3p2は、第二形状部材up3−bbを使用する。上階柱体第二部材u3p2は、その長尺方向をz方向とし、かつ第一主面up3−bm1を内側とする姿勢とする。上階柱体第二部材u3p2は、上階柱体第一部材u3p1と第一主面同士up3−bm1、up3−am1を対向させる向きに接面されて、上階柱体551を構成する。この際、上階柱体第二部材u3p2はその第二凹部up3−bo2の内周面を、上階桁体一段目第一部材u3k11の外周面に沿わした状態でx方向に移動させ、交差部1’に嵌合される(図18C)。さらに組まれた上階柱体551は、その凹部同士up3−ao2、up3−bo1を連通させてy方向に貫通した開口部、すなわち貫通孔up−h1を形成する。
【0122】
続いて図18Cに示すように、上階桁体一段目第二部材u3k12を組む。上階桁体一段目第二部材u3k12は、第三形状部材up3−ccを使用する。上階桁体一段目第二部材u3k12は、第一主面up3−cm1を内側、かつ第二主面up3−cm2を上方とする姿勢で交差部1’に組まれる。この際、上階桁体一段目第二部材u3k12は、図18Bに示す分割凹部up3−co3’に嵌合されつつ、その第一凹部up3−co1の内面でもって、上階柱体551の外面を囲む姿勢に接面する。
【0123】
図18Dの上階構造体は、上階柱体551と、これに直交する上階梁体552及び上階桁体553の下段を組んだ状態を示す。これは実施例4に係る図9Cと同一の外観であり、また以降の組立てに要する各部材の形状や順番についても実施例4と同一とする。
【0124】
すなわち実施例9の上階構造体550は、第四形状部材up3−ddからなる上階梁体二段目部材u3h2を、貫通孔up−h1に挿通させて、上階梁体一段目部材u3h1上に積層させる。さらに図18Eに示すように、上階桁体353の上段を構成する上階桁体二段目第一部材u3k21及び上階桁体二段目第二部材u3k22を組む。上階桁体二段目第一部材u3k21及び上階桁体二段目第二部材u3k22は、第三形状部材up3−ccを使用し、上階桁体553の下段上にそれぞれ積層されて上階桁体553を構成する。続いて図18Eに示すように、上階梁体三段目部材u3h3を組む。上階梁体三段目部材u3h3は寸胴角材up3−eeを使用し、その外面を貫通孔up−h1に挿通させて上階梁体二段目部材u3h2上に積層させる。これにより上階構造体550を得る(図18G)。
【実施例10】
【0125】
さらに実施例10の上階構造体650について説明する。この階構造体650は、実施例9に係る上階構造体550と比較して、部材の加工形状を一部のみ変形したものであり、他の部材については実施例9と共通の形状であって、その組み方についても同一工程を有する。したがって、共通する形状や組み方については詳細な説明を適宜省略する。
【0126】
図19はこの上階構造体650を構成する各部材の斜視図であり、図20はこれらの各部材を組立てる様子を示す説明図である。上階構造体650は、図19に示されるように交差部において6種類の形状に加工される8本の角材と、1本の角柱状の寸胴角材up4−eeとの合計9本で組まれる。6種類の加工パターンとする8本の角材は、1本の第一形状部材up4−aa、1本の第二形状部材up4−bb、1本の第三形状部材up4−cc、1本の第四形状部材up4−dd、1本の第五形状部材up4−ff及び3本の第六形状部材up4−ggからなる。
【0127】
また1本の第一形状部材up4−aaと1本の第二形状部材up4−bbとで上階柱体651を構成し、1本の第三形状部材up4−cc、1本の第四形状部材up4−dd及び寸胴角材up4−eeで上階梁体652を構成し、さらに1本の第五形状部材up4−ffと3本の第六形状部材up4−ggとで上階桁体653を構成する。また各部材の基本形状は直方体からなる角材とし、図では説明の便宜上、全ての角材を実質上同一サイズとするが、実際の使用に際しては、以下に説明する各部材の交差部における加工形状をそのままとして、長さや幅を変更してもよい。
【0128】
(形状)
実施例10の上階構造体650は、実施例9の上階構造体550と比較して、上階柱体651を構成する1本の第二形状部材up4−bbと、上階梁体652を構成する1本の第三形状部材up4−ccの形状が異なり、他を構成する部材の形状は同一とする。具体的に、実施例10の第二形状部材up4−bbは、第一形状部材up4−aaをさらに加工した形状であって、第一凹部up4−bo1と第二凹部up4−bo2とを設けた第一主面up4−bm1と直交する第二主面up4−bm2側から、さらに角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第三凹部up4−bo3を備える。離間した第一凹部up4−bo1と第二凹部up4−bo2との間に位置する突出部up4−atは、この第三凹部up4−bo3によって厚みの半分ほどに切り欠かれており、断面が略正方形状の突起を構成する。また第三形状部材up4−ccは、角材の端面から離間した位置であって、すなわち角材の途中に、第一主面up4−cm1側から角材の厚みの半分ほどまで凹状に切り欠いた第一凹部up4−co1を備える。
【0129】
(木組み)
上述の各形状部材を以下のようにして組立てて上階構造体650を得る。まず図20Aに示すように、第一形状部材up4−aaをz方向に直立させ、これを上階柱体第一部材u4p1とする。この上階柱体第一部材u4p1の第一凹部up4−ao1に、上階梁体一段目部材u4h1を交差して組む。上階梁体一段目部材u4h1は第三形状部材up4−ccを使用し、長尺方向をy方向とする姿勢で、その第一凹部up4−co1の略中央域を上階柱体第一部材u4p1の第一凹部up4−ao1の内周面に嵌合させる。上階梁体一段目部材u4h1の第一凹部up4−co1は、その底面up4−cuに交差するよう組まれた上階柱体第一部材u4p1によって両側に分断され、分割凹部up4−co2、up4−co2’を形成する。
【0130】
続いてこの分割凹部up4−co2に、上階桁体一段目第一部材u4k11を嵌合させる。まず上階桁体一段目第一部材u4k11は、第五形状部材up4−ffを使用し、長尺方向をx方向として交差部1’に組まれる。上階桁体一段目第一部材u4k11は、第一主面up4−fm1を上方とし、かつ第二主面up4−fm2を内側とする向きで、くびれ部up4−fnの下方隅部を、分割凹部up4−co2の内周隅部に沿わす。図20Bに示すように、分割凹部up4−co2に嵌合された上階桁体一段目第一部材u4k11は、上階梁体一段目部材u4h1に交差しながら、その下面同士を段違いに配置される。
【0131】
次に上階柱体第一部材u4p2を組む。上階柱体第二部材u4p2は、第二形状部材up4−bbを使用する。上階柱体第二部材u4p2は、その長尺方向をz方向とし、かつ第一主面up4−bm1を内側とする姿勢とする。上階柱体第二部材u4p2は、上階柱体第一部材u4p1と第一主面同士up4−bm1、up4−am1を対向させる向きに接面されて、上階柱体651を構成する。この際、上階柱体第二部材u4p2はその第三凹部up4−bo3の内周面を、上階桁体一段目第一部材u4k11の外周面に沿わした状態でx方向に移動させ、交差部1’に嵌合される(図20C)。さらに組まれた上階柱体651は、その凹部同士up4−ao2、up4−bo2を連通させてy方向に貫通した貫通孔up−h1を形成する。
【0132】
続いて図20Cに示すように、上階桁体一段目第二部材u4k12を組む。上階桁体一段目第二部材u4k12は、第六形状部材up4−ggを使用する。上階桁体一段目第二部材u4k12は、第一主面up4−gm1を内側、かつ第二主面up4−gm2を上方とする姿勢で交差部1’に組まれる。この際、上階桁体一段目第二部材u4k12は、図20Bに示す分割凹部up4−co2’に嵌合されつつ、その第一凹部up4−go1の内面でもって、上階柱体651の外面を囲む姿勢に接面する。
【0133】
図20Dの上階構造体は、上階柱体651と、これに直交する上階梁体652及び上階桁体653の下段を組んだ状態を示す。これは実施例9に係る図18Dと同一の外観であり、また以降の組立てに要する各部材の形状や順番についても実施例9と同一とする。すなわち上階桁体653の上段を構成する他の第六形状部材up4−gg及び上階梁体652の最上段を構成する寸胴角材up4−eeを順に組合せ、図18Gに示す上階構造体650を得る。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の建物構造体は、木造住宅、仮設住宅、避難施設等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0135】
1、1’、1’’…交差部
2…連結部材
3…構造体補強部
4、4’…補強用切り欠け部
10…土台構造体
11…土台柱体
11a…下端面
12…土台梁体
12a…下面
13…土台桁体
13a…下面
21…連続柱体
50、250、350、450、550、650…上階構造体
51、251、351、451、551、651…上階柱体
52、252、352、452、552、652…上階梁体
52a、252a…下面
53、253、353、453、553、653…上階桁体
53a、253a…下面
100、200…建物構造体
101…部材
110…直立柱体
110a…上端面
120…第一水平架構体
120a…横側端面
130…第二水平架構体
130a…横側端面
501…ほぞ
502…ほぞ穴
503…柱
504…竿
505…栓
506…梁
600…組木
601…凹部
602…半円状凸部
bs−aa…第一形状部材
bp1…土台柱体第一部材
bp2…土台柱体第ニ部材
bh1…土台梁体一段目部材
bh2…土台梁体二段目部材
bs−am1…第一主面
bs−ao1…第一凹部
bs−ao2…第二凹部
bs−at…突出部
bs−atk…下端突出部
bs−bb…第二形状部材
bs−bm1…第一主面(上面)
bs−bm2…第二主面(下面)
bs−bo1、bs−bo2…凹部
bs−bt…突出部
bs−bu…底面
bs−cc…第三形状部材
bs−cm1…第一主面(上面)
bs−cm2…第二主面
bs−co…凹部
bs−co2、bs−co2’…分割凹部
bs−cu…底面
bs−dd…第四形状部材
bk11…土台桁体一段目第一部材
bk12…土台桁体一段目第二部材
bk21…土台桁体二段目第一部材
bk22…土台桁体二段目第二部材
bs−dm1…第一主面(内側側面)
bs−dm2…第二主面
bs−dm3…第三主面(上面)
bs−dn…くびれ部
bs−do1…第一凹部
bs−do2…第二凹部
bs−du…底面
bs−h1、bs−h1’、bs−h2、bs−h3…開口部(孔)
bs−s1…段差状
up−aa…第一形状部材
up1…上階柱体第一部材
up2…上階柱体第二部材
uh1…上階梁体一段目部材
uh2…上階梁体二段目部材
uh3…上階梁体三段目部材
up−am1…第一主面
up−ao1…第一凹部
up−ao2…第二凹部
up−at…突出部
up−bb…第二形状部材
up−bm1…第一主面(上面)
up−bm2…第二主面(下面)
up−bo1、up−bo2…凹部
up−bt…突出部
up−cc…第三形状部材
up−cm1…第一主面(上面)
up−co1…凹部
up−co2、up−co2’…分割凹部
up−cu…底面
up−dd…第四形状部材
uk11…上階桁体一段目第一部材
uk12…上階桁体一段目第二部材
uk21…上階桁体二段目第一部材
uk22…上階桁体二段目第二部材
up−dm1…第一主面(内側側面)
up−dm2…第二主面
up−dn…くびれ部
up−do1…第一凹部
up−do2…第二凹部
up−du…底面
up−ee…寸胴角材
up−h1、up−h2、up−h3…開口部(孔)
up2−aa…第一形状部材
u2p1…上階柱体第一部材
u2p2…上階柱体第二部材
up2−am1…第一主面
up2−ao1…第一凹部
up2−bb…第二形状部材
u2h1…上階梁体一段目部材
u2h2…上階梁体二段目部材
u2h3…上階梁体三段目部材
up2−bm1…第一主面
up2−bo1…第一凹部
up2−dd…第三形状部材
u2k11…上階桁体一段目第一部材
u2k12…上階桁体一段目第二部材
u2k21…上階桁体二段目第一部材
u2k22…上階桁体二段目第二部材
up2−dm1…第一主面
up2−dm2…第二主面
up2−dm3…底部
up2−do1…第一凹部
up2−do2…第二凹部
up2−do3…第三凹部
up2−ee…寸胴角材
up2−h1…開口部(孔)
up3−aa…第一形状部材
up3−ao1…第一凹部
up3−ao2…第二凹部
up3−am1…第一主面
up3−at…突出部
up3−bb…第二形状部材
up3−bm1…第一主面
up3−bm2…第二主面
up3−bo1…第一凹部
up3−bo2…第二凹部
up3−cc…第三形状部材
up3−cm1…第一主面
up3−cm2…第二主面
up3−co1…第一凹部
up3−co2…第二凹部
up3−co3、up3−co3’…分割凹部
up3−cu…底面
up3−dd…第四形状部材
up3−dm1…第一主面
up3−do1…第一凹部
up3−do2…第二凹部
up3−dt…突出部
up3−ee…寸胴角材
up3−ff…第五形状部材
up3−fn…くびれ部
up3−fm1…第一主面
up3−fm2…第二主面
up3−fo1…第一凹部
up3−fo2…第二凹部
u3p1…上階柱体第一部材
u3p2…上階柱体第二部材
u3h1…上階梁体一段目部材
u3h2…上階梁体二段目部材
u3h3…上階梁体三段目部材
u3k11…上階桁体一段目第一部材
u3k12…上階桁体一段目第二部材
u3k21…上階桁体二段目第一部材
u3k22…上階桁体二段目第二部材
up−h1…孔
up4−aa…第一形状部材
up4−ao1…第一凹部
up4−ao2…第二凹部
up4−am1…第一主面
up4−at…突出部
up4−bb…第二形状部材
up4−bo1…第一凹部
up4−bo2…第二凹部
up4−bo3…第三凹部
up4−bm1…第一主面
up4−bm2…第二主面
up4−bt…突出部
up4−cc…第三形状部材
up4−cm1…第一主面
up4−co1…第一凹部
up4−co2、up4−co2’…分割凹部
up4−cu…底面
up4−dd…第四形状部材
up4−dm1…第一主面
up4−do1…第一凹部
up4−do2…第二凹部
up4−dt…突出部
up4−ee…寸胴角材
up4−ff…第五形状部材
up4−fn…くびれ部
up4−fm1…第一主面
up4−fm2…第二主面
up4−fo1…第一凹部
up4−fo2…第二凹部
up4−gg…第六形状部材
up4−gm1…第一主面
up4−gm2…第二主面
up4−go1…第一凹部
up4−go2…第二凹部
u4p1…上階柱体第一部材
u4p2…上階柱体第二部材
u4h1…上階梁体一段目部材
u4h2…上階梁体二段目部材
u4h3…上階梁体三段目部材
u4k11…上階桁体一段目第一部材
u4k12…上階桁体一段目第二部材
u4k21…上階桁体二段目第一部材
u4k22…上階桁体二段目第二部材
rz−aa…第一形状部材
rp1…連続柱体第一部材
rp2…連続柱体第二部材
rz−ao1…第一凹部
rz−ao2…第二凹部
rz−ao3…第三凹部
rz−ao4…第四凹部
rz−at…突出部
FD…基礎
td…差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直方向に固定される直立柱体(110)と、
前記直立柱体(110)と略直交する姿勢に固定される第一水平架構体(120)と、
前記直立柱体(110)及び第一水平架構体(120)に略直交する姿勢に固定される第二水平架構体(130)と、
を備える建物構造体であって、
前記直立柱体(110)、第一水平架構体(120)及び第二水平架構体(130)はそれぞれ複数の柱状の部材(101)から構成されており、
前記第一水平架構体(120)及び第二水平架構体(130)は、2以上の部材(101)を略鉛直方向に積層してなることを特徴とする建物構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の建物構造体において
前記直立柱体(110)、第一水平架構体(120)及び第二水平架構体(130)が互いに直交方向に交差される交差部(1; 1'...)を有しており、
該交差部(1; 1'...)において、前記直立柱体(110)、第一水平架構体(120)及び第二水平架構体(130)をそれぞれ構成する少なくとも一の部材(101)は、部材の厚み方向に切り欠いた切り欠き状に形成されており、
略同一の方向にかつ対称な姿勢に接面された複数の部材(101)同士は、前記交差部(1; 1'...)における該切り欠き状同士が繋がって形成された開口部を、該複数の部材と直交方向に交差する他の部材(101)の外面によって嵌合されて、前記開口部を閉塞していることを特徴とする建物構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の建物構造体において、
第一水平架構体(120)は、角柱状の寸胴角材を有しており、
前記交差部(1; 1'...)において形成される前記開口部が、内面形状を該寸胴角材の外面形状と略同一として、該寸胴角材によって閉塞されていることを特徴とする建物構造体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一に記載の建物構造体において、
少なくとも1方向を、同一の形状の部材で構成することを特徴とする建物構造体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一に記載の建物構造体において、
前記第二水平架構体(130)は所定の形状に加工された形状部材(bs-dd; up-dd)から構成されており
該形状部材(bs-dd; up-dd)は、第一主面(bs-dm1; up-dm1)と第二主面(bs-dm2; up-dm2)とが隣接しながら直交する角材であって、かつ前記第一主面(bs-dm1; up-dm1)側から該角材の厚み方向に凹状に切り欠いた第一凹部(bs-do1; up-do1)と、さらに該第一凹部(bs-do1; up-do1)の底面(bs-du; up-du)を第二主面(bs-dm2; up-dm2)側から凹状に切り欠いた第二凹部(bs-do2; up-do2)とを形成しており、
前記第一凹部(bs-do1; up-do1)の開口長さは、前記第二凹部(bs-do2; up-do2)の開口長さよりも大きいことを特徴とする建物構造体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一に記載の建物構造体において、
前記直立柱体(110)を構成する部材は、第一主面(bs-am1; up-am1)を有する角材であり、かつ該第一主面(bs-am1; up-am1)側から該角材の厚み方向に切り欠いた少なくとも第一凹部(bs-ao1; up-ao1)及び第二凹部(bs-ao2; up-ao2)とを形成されており、
前記第二凹部(bs-ao2; up-ao2)は、前記第一凹部(bs-ao1; up-ao1)と離間して配設されており、前記第二凹部(bs-ao2; up-ao2)の開口長さは、前記第一凹部(bs-ao1; up-ao1)の開口長さよりも大きいことを特徴とする建物構造体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一に記載の建物構造体において、
前記第一水平架構体(120)の下面(12a; 252a)及び第二水平架構体(130)の下面(13a; 253a)が、略同一平面に位置するよう構成されてなることを特徴とする建物構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の建物構造体において、
前記第二水平架構体(130)を構成する部材は、第二凹部(bs-do2; up-do2)が鉛直方向に開口する姿勢に構成されてなることを特徴とする建物構造体。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一に記載の建物構造体において、
前記第一水平架構体(52)の下面(52a)及び第二水平架構体(53)の下面(53a)が、略平行を維持しながら段違いに位置するよう構成されてなることを特徴とする建物構造体。
【請求項10】
請求項9に記載の建物構造体において、
前記第二水平架構体(25)を構成する部材は、第二凹部(up-do2)が上方に開口する姿勢に構成されてなることを特徴とする建物構造体。
【請求項11】
請求項2ないし10のいずれか一に記載の建物構造において、
前記第二水平架構体(130)は、長尺方向を同一としながら並列した2本の角材を下段として、さらに別の並列した2本の角材を該下段の上に積層させて上段とした合計4本の角材から構成されており、
前記並列した角材同士は前記交差部(1; 1'...)を中心として対称に接面してなることを特徴とする建物構造体。
【請求項12】
請求項11に記載の建物構造体において、
前記第一水平架構体(120)は、長尺方向を同一としながら鉛直方向に積層された3段の角材から構成されており、
前記直立柱体(110)は、前記交差部(1; 1'...)を中心として対称に接面した2本の角材から構成されていることを特徴とする建物構造体。
【請求項13】
請求項12に記載の建物構造体において、
前記直立柱体(110)、前記第一水平架構体(120)及び前記第二水平架構体(130)を構成する前記それぞれの角材の径が略同一であることを特徴とする建物構造体。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一に記載の建物構造体において、
前記直立柱体(110)、第一水平架構体(120)及び第二水平架構体(130)が間伐材で構成されてなることを特徴とする建物構造体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図18G】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−231530(P2011−231530A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102994(P2010−102994)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(310009476)
【出願人】(310009465)
【出願人】(310009432)
【Fターム(参考)】