説明

建物開口部の遮蔽構造

【課題】屋内のプライバシーを保護できるとともに、防犯性を高めた建物開口部の遮蔽構造を提供する。
【解決手段】建物の外壁に形成された開口部と、建物の外部において、前記開口部に向き合って立設された直立板状のフェンスとを具え、前記開口部には、屋内空間及び屋外の間で透視可能な第1の偏光性透光板が用いられるとともに、前記フェンスには、前記第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第2の偏光性透光板が用いられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の開口部を通して、外部からの覗き込みを有効に防止しうる建物開口部の遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、ケアーハウス或いはグループホームなどの福祉施設、ホテル或いは旅館など宿泊施設においては、プライバシーを保護するとともに、防犯性を高める必要から、外壁に設けられた開口部にレースカーテン、ブラインドなどを装着することにより、外部からの覗き込み防止を図っている。しかしながら、夜間内部が明るく照明される場合は、レースカーテンを透かして内部の人影が映るため、プライバシーが損なわれるという問題がある。しかもカーテン、ブラインドは、使用状況に合せて、その都度開閉操作する必要があることから、取扱いが面倒であり、またそのために操作忘れを生じ易い。
【0003】
そこで、建物の周囲をコンクリートブロック塀、アルミ製フェンス、生垣などで囲むことにより、外部領域からの視線を遮ってプライバシーを確保する方法が多く採られている。そして、敷地の境界を囲んで内側を完全に遮蔽できることから、空き巣などの不法侵入を防止できる一次効果がある。しかしながら、一度敷地内に入った侵入者は、反対に外部から見付け難くなるため、パトロール者の警戒の目を逃れる結果を招くことから、防犯上逆効果となる場合が見受けられる。
【0004】
このような状況を鑑み、略下半分をコンクリートブロックを用いて堅牢な塀を構築するとともに、その上に格子状の木製パネルを設けて、敷地内の侵入者を見つけ易くした住宅建物の塀構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−220327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蹲った不法侵入者が下半分のコンクリートブロックに隠れてしまうと、パトロールの警戒が見逃し易くなるという問題は依然残っている。逆に、格子状の木製パネルが、敷地外の通行人の目の高さに配置されることから、屋内の様子が覗き見され易くなるため、プライバシーを損なうという問題も生じている。
【0007】
本発明は、開口部に、屋内空間及び屋外の間で透視可能な第1の偏光性透光板を用い、フェンスには、前記第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第2の偏光性透光板が用いることを基本とし、屋内のプライバシーを保護できるとともに、防犯性を高めた建物開口部の遮蔽構造の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、建物の外壁に形成された開口部と、建物の外部において、前記開口部に向き合って立設された直立板状のフェンスとを具え、前記開口部には、屋内空間及び屋外の間で透視可能な第1の偏光性透光板が用いられるとともに、前記フェンスには、前記第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第2の偏光性透光板が用いられることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明において、前記フェンスは、建物の敷地と外部領域の境界線上に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記フェンスの上端部と、前記外壁の開口部の上部との間に、屋根が架け渡され、この屋根には、第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第3の偏光性透光板が用いられ、また請求項4に係る発明において、前記第3の偏光性透光板は、屋根面に沿って方向転換可能に取り付けられ、採光位置に方向転換した第3の偏光性透光板は、第1の偏光性透光板と偏光方向が一致することにより、第1の偏光性透光板、及び第3の偏光性透光板を通して開口部から採光できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明においては、開口部に設けた第1の偏光性透光板と、フェンスに設けた第2の偏光性透光板の偏光方向が異なることから、フェンスの外側から開口部を介して建物内部を見通すことができないため、プライバシーを確実に守ることができる。しかしながら、開口部とフェンスの間に身を潜める不審者の存在は、建物の内側、フェンスの外側何れの側からも即座に発見することができることから、高い防犯効果を得ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明のように、フェンスを、建物の敷地と外部領域の境界線上に配置すると、外部の道路、或いは隣接する敷地内から建物の内部を覗き見することができなくなるため、高いプライバシーを維持できる。しかしながら、庭など建物外の敷地からは、フェンスの第2の偏光性透光板を通じて、敷地外部の領域を見通すことができるため、開放的な雰囲気を損なうことがなく、広さを感じることのできる高感性なエクステリアを構成できる。
【0013】
請求項3に係る発明のように、フェンスの上端部と、前記外壁の開口部の上部との間に、第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第3の偏光性透光板を用いた屋根を架け渡すと、開口部からの日射が遮られて、建物内部の眩しさを防止できるとともに、夏季においては太陽熱が遮断されることから空調効率を高めることができる。他方開口部とフェンスに挟まれた空間には、上部に屋根に設けられた閉空間が形成され、かつ屋根に用いた第3の偏光性透光板を通して日射が差し込むため、冬季には暖かいサンルームが形成される結果、観葉植物などの育成栽培に好適に使用できる。
【0014】
請求項4に係る発明のように、第3の偏光性透光板を、屋根面に沿って方向転換可能に取り付けると、第3の偏光性透光板は、第1の偏光性透光板と偏光方向が一致することにより、太陽光を屋根面及び開口部を通じて建物内部へ採りいれることができるため、特に太陽高度が低くなる冬季において、開口部内側に陽だまりが形成されることから、快適な空間が形成できる。しかも夏季には、再度第3の偏光性透光板を方向転換することによって、簡単に遮光への切替ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、建物開口部の遮蔽構造1は、建物2の外壁3に形成された開口部4と、この開口部4に向き合って立設されたフェンス5とを具えている。
【0016】
前記建物2としては、住宅、ケアーハウス或いはグループホームなどの福祉施設、ホテル或いは旅館など宿泊施設の他、事務所オフィス或いは店舗など商業施設、学校、図書館或いは公民館など公共施設も含まれる。但し本発明の建物2は、その外壁と道路、或いは隣地との間に、例えば600mm以上のゆとりが設けられている。
【0017】
前記開口部4は、居室などに形成される腰高の窓、テラスなどに形成される出入り口を含む。そしてその内周縁にはアルミサッシ開口枠が取り付けられ、更にこの開口枠にアルミ枠を有する開口建具11が開閉可能に装着されている。開口建具11は、本形態では、引き違い戸の場合が例示されるが、回転戸、滑り出し戸、上下スライド戸、或いは嵌め殺し戸を採用することもできる。
【0018】
前記開口建具11のアルミ枠内部には、第1の偏光性透光板H1が嵌合され、これによって、開口部4に第1の偏光性透光板H1が設けられる。偏光性透光板とは、特定の単一方向の波長の光のみが透過しうる板をいい、偏光性透光板を通過した光は、同一の方向性を有する偏光性透光板を透過しうるが、異なる方向性の偏光性透光板は透過できず、遮光される性質を有するものであり、従って屋内空間6と、屋外との間が透視可能となる。この種の偏光性透光板は、偏光ガラスとして形成されがものを使用できるが、本形態では、透明ガラス12に、偏光フィルム13を貼着して形成したものを用いている。
【0019】
なお本明細書において、偏光性透光板は、その偏光方向を区別するため、特定の偏光方向のものを第1の偏光性透光板H1とし、断面図上では模式図的に偏光フィルム13を破線で図示している。他方この第1の偏光性透光板H1と偏光方向が異なるものを、第2の偏光性透光板H2とし、断面図上では模式図的に偏光フィルム13を連続した実線で図示している。
【0020】
前記フェンス5は、建物2外側の敷地内に設けられるものであり、本形態では、隣地及び、道路などの外部領域との境界線上に立設されたものが例示され、平面視略矩形状に、建物2の全周を囲んで配置されている。そして本形態のフェンス5は、図2に示すように、地盤面14に載置固定された布基礎状の土台15と、この土台15から垂直に立上り、等間隔で隔設された支柱16と、この支柱16の上端部を連続的に繋いで水平にのびる上枠17とを含み構成されたものを例示している。土台15は、コンクリートブロックを1乃至2段積み上げて構成される。また支柱16、及び上枠17は、例えばアルミ押出材が用いられ、専用金物(図示せず)を用いて、土台15に固着されると共に、縦横に枠状に組み立てられる。
【0021】
隔設された支柱16の間には、前記第2の偏光性透光板H2が配され、上枠17と土台15との間で取り付けられている。しかして、この第2の偏光性透光板H2は、開口部に設けた第1の偏光性透光板と偏光方向が異なることから、フェンスの外側から開口部内側の建物内部を見通すことができないため、プライバシーを保護することができる。特に本形態のフェンス5は、前記の如く建物2の敷地と外部領域の境界線上に配置されることから、外部の道路、或いは隣接する敷地内から建物2の内部を覗き見することができなくなり、そのため高いプライバシーを維持することができる。
【0022】
一方建物2から外に出た場合には、敷地の内部から、フェンスの第2の偏光性透光板を通して、道路、外部の風景などの外部領域を見通すことができることから、開放的な雰囲気が維持され、広がりを感じることのできる高感性なエクステリアが構成される。しかしながら、開口部4とフェンスの間に不審者が身を潜める場合には、建物の内側、フェンスの外側何れの側からも即座に発見することができるため、高い防犯効果を得ることができる。
【0023】
図3は、他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本形態では、外壁3の開口部4の上部に横L字状の基受け金具18が取り付けられるとともに、フェンス5の上端部に横V字状の先受け金具19が取り付けられ、この基受け金具18、及び先受け金具19の間に屋根7が架け渡される。この屋根7には、矩形状の屋根フレーム21と、偏光方向の異なる第3の偏光性透光板H3とを含む屋根パネル20が用いられ、屋根フレーム21を基受け金具18、及び先受け金具19に取り付けることによって屋根7が構成される。
【0024】
しかも前記第3の偏光性透光板H3は、第1の偏光性透光板H1と偏光方向が異なるものが用いられる。その結果、屋根7を透過した日射は開口部4において遮られるため、建物内部において眩しさを防止できるとともに、夏季には太陽熱が遮断されることから空調効率を高めることができる。また屋根7を設けることによって、開口部4とフェンスとの間に閉空間が形成されるとともに、屋根7に用いた第3の偏光性透光板H3を通って日射が差し込むため、特に冬季において暖かいサンルームが形成されることから、観葉植物などの育成栽培に好適に使用できる。
【0025】
また図4に示すように、ビス、ボルトなどを用いて、屋根パネル20を、基受け金具18、及び先受け金具19に着脱可能に取り付けることによって、屋根勾配面に沿って、屋根パネル20を90度回転できるように構成し、しかも回転した第3の偏光性透光板H3は、第1の偏光性透光板H1と偏光方向が一致するように構成すると、太陽光を第3の偏光性透光板H3、第1の偏光性透光板H1を通して、建物2の内部に採りいれることができる。その結果、特に冬季には太陽高度が低くなって、開口部4の内側に陽だまりが形成されることから、快適な生活空間が形成される。しかも夏季には、屋根パネル20を90度回転させて、第3の偏光性透光板H3をもと方向に戻すと、簡単に遮光への切替ができる。
【0026】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する斜視図である。
【図2】その使用状態を示す、要部縦断面図である。
【図3】他の実施形態を例示する縦断面図である。
【図4】その屋根を方向転換した使用状態を例示する縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 建物開口部の遮蔽構造
2 建物
3 外壁
4 開口部
5 フェンス
6 屋内空間
7 屋根
H1 第1の偏光性透光板
H2 第2の偏光性透光板
H3 第3の偏光性透光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に形成された開口部と、建物の外部において、前記開口部に向き合って立設された直立板状のフェンスとを具え、
前記開口部には、屋内空間及び屋外の間で透視可能な第1の偏光性透光板が用いられるとともに、前記フェンスには、前記第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第2の偏光性透光板が用いられることを特徴とする建物開口部の遮蔽構造。
【請求項2】
前記フェンスは、建物の敷地と外部領域の境界線上に配置されることを特徴とする請求項1記載の建物開口部の遮蔽構造。
【請求項3】
前記フェンスの上端部と、前記外壁の開口部の上部との間に、屋根が架け渡され、
この屋根には、第1の偏光性透光板と偏光方向が異なる第3の偏光性透光板が用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の建物開口部の遮蔽構造。
【請求項4】
前記第3の偏光性透光板は、屋根面に沿って方向転換可能に取り付けられ、
採光位置に方向転換した第3の偏光性透光板は、第1の偏光性透光板と偏光方向が一致することにより、第1の偏光性透光板、及び第3の偏光性透光板を通して開口部から採光できることを特徴とする請求項3記載の建物開口部の遮蔽構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−308970(P2007−308970A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139247(P2006−139247)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】