説明

建築板

【課題】数種類の抗菌性複合体で外壁材の塗膜に長期間防藻や防カビの薬剤を保持し、外壁材に汚れを流れ落とす防汚機能も兼ね備え、その防藻や防カビ塗料の色や塗膜状態に左右され意匠が大きく限定されず、最終工程でも塗装工程の意匠に影響せず、透明であり、抗菌機能をもった機能性建築板を得る。
【解決手段】表面に塗膜が形成された建築板であって、更に該塗膜の表面に抗菌性複合体を含み、コロイダルシリカを主成分とする被覆層が形成されていることを特徴とする建築板であり、前記抗菌性複合体は、藻、カビの発生を抑制することを特徴とし、前記建築板は、木質セメント板であることを特徴とした機能性建築板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防藻、防カビ性の機能を有する建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅など建築物の外壁部に使用される外壁材の表面には塗装が施され、風雨、光や熱から住人を保護しているが、経年によって外壁材表面に変退色、チョーキング、汚れ、生物汚染などの劣化・不具合現象を生じることは避けられない。一方近年では、塗料の耐候性能力がかなり向上されてきており、変退色、チョーキングの不具合よりも、むしろ、藻、カビによる生物汚染が美観を損ねさせる事が、大きな問題になってきている。かかる生物汚染は、外壁材の全面に発生するわけではなく、日が当たらず温湿度が高く、じめじめした藻類・カビ類の生育環境に適した、ごく一部の箇所(北面が多い)に繁殖する場合が多い。
【0003】
これまでは、外壁材の一部に発生した生物汚染は、大掛かりな塗替えを行うか、洗浄で対応せざるをえなかった。具体的に生物汚染された箇所を洗浄する際は、生物汚染の再発を遅らせるために、防藻剤あるいは防カビ剤の希釈液を噴霧していたが、この薬剤の保持性は一時的なもので、雨で洗い流された後は、防藻・防カビ効果も期待できなかった。また、藻やカビの種類は、数百種類にのぼり、住宅に発生する種類だけでも20〜30種類あるため、すべてに効果のある薬剤はなく、対応は多種類の薬剤でするので不経済であった。更に、外壁材は、ほこりや風雨や紫外線の影響を受け、表面が汚れ、この汚れの付着物が藻やカビの発生の原因となっていた。
【0004】
ところで、防藻効果を付与する方法としては防藻剤を塗料中に配合する方法(例えば、特許文献1)があり、外壁材に防汚機能を付与する方法としては、塗料中に親水化させる目的で、シリカ微粒子を光触媒として酸化チタンを塗布して表面を親水化させる方法がある。(例えば、特許文献2)
【特許文献1】特開平9−235491
【特許文献2】特開2002−338943
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、防藻、防カビ性能を発揮でき、しかも防汚機能も備えた建築板を提供することを目的とする。更に、本発明は、かかる建築板の安定的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的を達成するために、本請求項1に記載の発明は、抗菌性複合体を含み、コロイダルシリカを主成分とする塗膜が形成されていることを特徴とする建築板である。また、本請求項2に記載の発明は、前記抗菌性複合体は、藻、カビの発生を抑制する機能を有することを特徴とする請求項1記載の建築板である。また、前記建築板は、木質セメント板であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の建築板である。また、水とアルコールとからなる混合溶媒に界面活性剤を添加し、コロイダルシリカを分散させた第1の処理液を調製する第1の工程と、前記第1の工程によって得られた第1の処理液に、抗菌性複合体を添加して第2の処理液を調製する第2の工程と、前記第2の工程によって得られた第2の処理液を予め塗装が施された建築板表面に塗布する第3の工程と前記第3の工程によって得られた建築板を乾燥して表面塗膜を形成する第4の工程とからなる、ことを特徴とする建築板の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
〔作用〕 本発明にかかる製造法で使用する第2の処理液は、コロイダルシリカ水性分散液中に抗菌性複合体を添加したものであり、樹脂を主成分とする塗料等は使用していないから、抗菌性複合体は樹脂によって阻害されることなくコロイダルシリカ表面の微小凹凸に定着し、該コロイダルシリカは基材表面の塗膜に水素結合を介して固定される。
【0008】
〔効果〕 その結果、建築板の塗膜表面にコロイダルシリカを媒体として抗菌性複合体が高濃度で存在するようになるので、抗菌性複合体の抑制効果が効率良く発揮され、少量の抗菌性複合体の使用でも大きな抑制効果を有する機能性建築板が得られる。また該抗菌性複合体はコロイダルシリカを媒体として塗装表面に強固に固定されるから、耐久性のある抗菌性複合体の抑制効果が得られる。また、防汚処理剤としては、シリカ微粒子が定着被覆された表面には、超親水性が付与され、水が接触すると該シリカ微粒子が水を吸収し、表面に付着している汚れが浮上って水と共に流れ落ちるセルフクリーニング機能が発揮される。更に、非常に超微細な微粒子のため、表面は透明のまま意匠性を阻害しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を以下に詳細に説明する。〔基材〕 本発明にかかる建築板の基材は、木片、木質パルプ、木質繊維やパルプ等の木質補強材を添加したセメント板(木質セメント板)、セメント押出成形板、パルプセメント板、石膏板、ケイ酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、セメント板等である。
【0010】
〔塗装〕 上記基材表面には塗装が施されるが、具体的には、下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装、クリアー塗装の多重塗装が行われる。上記下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装、クリアー塗装共にアクリル樹脂水性エマルジョン塗料、シリコン−アクリル樹脂水性エマルジョン塗料等の水性エマルジョン塗料を使用することが望ましいが、例えばアクリル樹脂クリアー溶剤型塗料等の溶剤型塗料を使用してもよく、また水性エマルジョン塗料と溶剤型塗料とを併用してもよい。
【0011】
〔抗菌性複合体〕
抗菌性複合体の成分としては、有機系抗菌剤を2種類以上と、無機質系抗菌剤を1種以上を配合したものを使用する。有機系抗菌剤としては、ニトリル系抗菌剤、ピリジン抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、イミダゾール系抗菌剤等がある。無機質系抗菌剤としては、 結晶性アルミノケイ酸銀及びナトリウム(銀置換ゼオライト)、銀/亜鉛ゼオライト、銀/ゼオライト、リン酸ジルコニウム、酸化銀リン酸ジルコニウム、酸化銀、銀担持リン酸ジルコニウム、酸化亜鉛、リン酸チタン、酸化亜鉛及び酸化チタンのゲル混合物、リン酸チタン銀担持ゲルと酸化亜鉛の混合物、銀担持二酸化珪素、酸化銀、トリリン酸アンモニウム及びリン酸ナトリウムの混合物、塩化銀、銀、銅、銅化合物テトラアミン銅イオン燐酸系の硝子金属酸化物を含む親水性アミノシリコンポリマーがある。
好ましくは、イミダゾール系の有機系抗菌剤から選ばれた2種と、無機系抗菌剤とからなる抗菌性組成物で、有機系抗菌剤として2 − ( 4 − チアゾリル) −
1 H − ベンゾイミダゾールと、2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルを使用でき、無機系抗菌剤として銀担持リン酸ジルコニウムおよび酸化亜鉛を使用する。また、貝殻を800℃以上で加熱した酸化カルシウムや茶粉末、茶殻粉末を使用しても良い。
【0012】
中でも、イミダゾール系の有機系抗菌剤として、例えばベンゾイミダゾールカルバミン酸化合物、イオウ原子含有ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾールの環式化合物誘導体などが使用できる。
ベンゾイミダゾールカルバミン酸化合物としては、1 H − 2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、1 − ブチルカルバモイル− 2 −
ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、6 − ベンゾイル− 1 H − 2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、6 − ( 2 − チオフェンカルボニル)
− 1 H − 2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルなどが使用でき、 イオウ原子含有ベンゾイミダゾール化合物としては、1 H − 2 − チオシアノメチルチオベンゾイミダゾール、1
− ジメチルアミノスルフォニル− 2 − シアノ− 4 − ブロモ− 6 −トリフロロメチルベンゾイミダゾールなどが使用できる。 ベンゾイミダゾールの環式化合物誘導体としては、2
− ( 4 − チアゾリル) − 1 H − ベンゾイミダゾール、2 − ( 2 − クロロフェニル) − 1 H − ベンゾイミダゾール、2 − ( 1
− ( 3 , 5 − ジメチルピラゾリル)
) − 1 H − ベンゾイミダゾール、2 − ( 2 − フリル)− 1 H − ベンゾイミダゾールなどが使用できる。
【0013】
そして、イミダゾール系の有機抗菌剤としては、イミダゾール系の有機系抗菌剤のみから選ばれた少なくとも2
種のものを併用する。同一のイミダゾール系でも、異なる2種を併用することにより、微生物に対して抗菌作用の相乗効果が得られ、特に、ベンゾイミダゾール環にチアゾリル基を有するものと、ベンゾイミダゾール環にカーバメート基を有するものとを使用することが、顕著な相乗効果が得られることから好ましい。
チアゾリル基としては、例えば2 − チアゾリル、4 − チアゾリル、5 − チアゾリルなどが使用できる。また、カーバメート基としては、このカーバメート基における炭化水素基が、例えば、メチル、エチル、n
− 2 プロピル、i s o − プロピル、などのアルキル基が好ましく、特にメチル基あるいはエチル基を有するものが特に好ましい。 具体的には、チアゾリル基を有するものとして、2
− ( 4 − チアゾリル) − 1 H − ベンゾイミダゾール( チアベンダゾール: T h i a b e n d a
z o l e (T B Z )) などが使用できる。また、カーバメート基を有するものとして、メチル− 2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル( カルベンダジム:
C a r b e n d a z i m (B C M )) 、エチル− 2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルなどが使用できる。特に、2 − ( 4
− チアゾリル) − 1 H − ベンゾイミダゾールと、2 − ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチルとは、熱的安定性が比較的に高く、特に樹脂成形体として利用することが容易であり、また例えばグレープフルーツやオレンジ、バナナなどの防かび剤(
食品添加物) としても既に利用され、人体への影響が比較的に小さい材料として確認されたものであることから、特に好ましい。
【0014】
一方、無機系抗菌剤としては、特に、金属として銀または銅を担持したリン酸ジルコニウムが好ましく、より好ましくは抗菌性の高い銀系抗菌剤である銀を担持したリン酸ジルコニウムを使用する。なお、銀系抗菌剤としては、担持した形態に限らず、金属単体の銀なども対象とすることができる。銀や銅といった金属を担持したリン酸ジルコニウムやゼオライトは、人体への安全性に優れ、抗菌速度も速く抗菌性能に優れているとともに、リン酸ジルコニウムやゼオライトに貴金属である銀を担持させることによるコストの低減などが得られるために好ましい。
特に、銀担持リン酸ジルコニウムやゼオライトを利用する場合、酸化亜鉛を併用することがより好ましい。銀担持リン酸ジルコニウムと酸化亜鉛との併用により、銀担持リン酸ジルコニウム自体および酸化亜鉛自体の抗菌作用とともに、同一の無機系である無機系抗菌剤でも併用による抗菌作用の相乗効果が得られ、より顕著な抗菌性が得られることから好ましい。さらに、酸化亜鉛との併用により、銀担持リン酸ジルコニウムやゼオライトの含有量を低減でき、貴金属である銀の使用量の低減によりコストの低減も容易に得られるので好ましい。また、銀の酸化による変色を防ぐこともできる。
【0015】
貝殻としては、ほたて貝、あさり、はまぐり、牡蠣、さざえ、あわび及びムール貝等の貝殻が挙げられる。このうち、工業的に処理されている割合が高いほたて貝及び牡蠣の貝殻が、入手しやすい点から好適であり、さらに、不純物の含有量が少なく、かつ大量の廃棄物を有効利用する観点から、ほたて貝の貝殻が好適である。貝殻を焼成して得られる酸化カルシウムには、亜鉛、鉄、マグネシウム等の微量金属が含まれているので、抗菌性付与の点で好適である。 貝殻の焼成は、貝殻を水で洗浄した後、8
0 0 〜 1 3 0 0 ℃ で、3 〜 6 時間行う。焼成後、焼成物から細かい砂等を除去し、水を加えて酸化カルシウムを水和させる。水和後、5 〜 4 0 ℃
程度に冷却して沈殿物を得、この沈殿物を遠心分離機又はろ過機により分離し、得られた分離物を乾燥させ、分級することにより、所定の平均粒径を有する酸化カルシウム水和物が得られる。上記焼成は、得られる酸化カルシウムの消臭・抗菌性能を向上させる点から、高温で行うことが重要であり、焼成温度が8
0 0 ℃ 未満であると、焼成が十分に行われないため消臭・抗菌性能が低下するおそれがある。1 3 0 0 ℃ を超える温度で焼成しても、消臭・抗菌性能がより向上するものでもなく、エネルギーが無駄に消費されるだけである。焼成条件は、好ましくは9
0 0 〜 1 2 0 0 ℃ で3 〜 5 時間である。焼成物は、砂等を取り除いた後に粒径1 0 0 μ m 以下に粉砕することが好ましい。粉砕には、ボールミル及びジェットミル等を用いることができる。また、上記水和の際に加える水の量は、焼成物1
k g に対して0 . 2 〜 1 リットルの割合とすることが好ましい。
【0016】
茶粉末又は茶殻粉末は、茶又は茶殻を乾燥させた後、ボウルミルやジェットミルで粉砕することにより得ることができる。これらの粉末は、平均粒径が1
〜 4 0 μ m であることが好ましく、分散性及び消臭・抗菌性能向上の点から、5 〜 3 5 μ m が好ましい。茶粉末又は茶殻粉末の平均粒径の調整は、上記酸化カルシウム水和物粉末における平均粒径の調整と同様に行うことができる。
【0017】
〔コロイダルシリカ分散液〕 本発明の処理液に使用するコロイダルシリカとは粒径5〜10nmの一次微粒子が10個程度会合して二次微粒子を形成したものであり、表面に微小凹凸が形成されており、酸化ケイ素の他酸化アルミニウム等他の成分を若干含有してもよい。また、コロイダルシリカはOHラジカルの親水性を示し、この二次微粒子の隙間に抗菌性複合体が吸着し定着すると考えられる。その他バインダーとしてケイ素化合物やケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのケイ酸塩を若干含有してもよい。

【0018】
〔アルコール〕 上記コロイダルシリカの分散媒体としては、水にアルコールを添加することが望ましい。使用するアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性のものが望ましい。該アルコールは、処理液の表面張力を低下せしめ、更に下側の塗膜との親和性を高めて該処理液の濡れ性を向上させる。
【0019】
〔界面活性剤〕 コロイダルシリカの分散液としては、分散剤として界面活性剤を添加することが望ましい。上記界面活性剤としては、通常のアニオン性、ノニオン性、カチオン性の界面活性剤のいずれも用いられ、例えばアニオン性界面活性剤としては高級アルコールサルフェート(Na塩またはアミン塩)、アルキルアリルスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩縮合物、アルキルフォスフェート、ジアルキルスルフォサクシネート、ロジン石鹸、脂肪酸塩Na塩またはアミン塩)等があり、ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキロールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアマイド、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等があり、カチオン性界面活性剤としてはオクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体またはその塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等が使用できる。また界面活性剤は二種以上混合使用されてもよい。 該界面活性剤はアルコールと共に本発明の処理液の表面張力を低下せしめ、更にコロイダルシリカを処理液中に良好に分散せしめ、そして下の塗膜との親和性も高める。
【0020】
本発明の製造方法における第2の処理液において、通常該コロイダルシリカは0.1〜6.0質量%、アルコールは2〜10質量%、界面活性剤は0.01〜0.5質量%配合され、残余は水とする。上記アルコールが2質量%よりも少なく含有されている場合には該抗菌性複合体の濡れ性が悪くなり、また10質量%を越えて含有されている場合には、溶媒の揮発性が大きくなり、塗装作業に悪影響がもたらされる。また上記界面活性剤が0.01質量%よりも少なく添加されている場合には界面活性剤による表面張力の低下効果やコロイダルシリカの分散効果が顕著でなくなり、また0.5質量%を越えて添加されている場合には形成される抗菌性複合体の強度、耐水性、耐久性等に悪影響がもたらされる。
【0021】
〔処理液の塗布方法〕 上記基材表面に下塗り層、中塗り層、上塗り層、クリアー層を形成するための塗装を施した後、最終乾燥工程では塗膜は通常100〜150℃の温度で加熱乾燥される。最終のクリアー層の塗膜の加熱乾燥後は常温下に基材を放置し冷却する。処理液の塗布は該塗膜の温度が望ましくは80℃以下、更に望ましくは70℃以下に下がった状態で行なう。上記温度以下においては、処理液の熱変性のおそれがない。通常上記処理液の塗布はスプレー塗布が適用されるが、その他フローコーター塗布、ロールコーター塗布等周知の方法が適用される。
【0022】
塗布量は特に限定されないが、通常処理液塗布後乾燥して得られる処理液層の厚みが30〜80nm程度になるような塗布量とする。
【0023】
上記処理液において、上記したようにコロイダルシリカは一次微粒子が複数個会合凝集した二次微粒子となっており、したがって粒子表面に微小凹凸が形成されているから、該抗菌性複合体はコロイダルシリカ表面の微小凹凸に捕捉され吸着される。そして該抗菌性複合体を吸収したコロイダルシリカは、水素結合によって基材の塗膜(クリヤ塗膜)表面に定着されると考えられる。
【0024】
以下に本発明を具体的な実施例を説明する。 始めに、第1及び第2の処理液を構成する2つの溶液A.Bを調製する。A:コロイダルシリカ水性分散液。コロイダルシリカ(二次粒子径50〜100nm)4質量%、エタノール4質量%、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル)0.25質量%、残余 水 91.75質量%B:溶液Aに抗菌性複合体としての、コーキンマスター(出光テクノファイン社製 有効成分量20質量%)を分散させた溶液。
【0025】
(実施例1) パルプ混入スラグセメントパーライト板である無塗装基材のモエンサイディング12mmのシャトーウォール調(ニチハ製)にアクリル樹脂水性エマルジョン塗料によって下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装、およびアクリル樹脂溶液型塗料によってクリアー塗装を施し、100℃〜110℃の加熱炉で20分間加熱乾燥した。 上記加熱乾燥後該塗装基材を加熱炉から取出し室温に放置して冷却した。クリヤー塗膜表面温度が65℃にまで下がった時、上記溶液Bをスプレー塗装し、その後常温に放置してクリヤー塗膜の余熱によって該処理液塗膜を乾燥させ、厚み50nmのコーキンマスターを含む被覆層を形成した。ここでは、コロイダルシリカ水性分散液とコーキンマスター分散液を100:0.4(分散液)の割合で混合したものを40g/m2でもって塗布した。
【0026】
(実施例2)上記のコロイダルシリカ水性分散液とコーキンマスター分散液を100:0.2(分散液)の割合で混合したものを使用した。それ以外は実施例1と同様とした。
【0027】
(実施例3)上記のコロイダルシリカ水性分散液とコーキンマスター分散液を100:0.1(分散液)の割合で混合したものを使用した。それ以外は実施例1と同様とした。
【0028】
(比較例1)該塗装基材に上記処理液を塗布しないもの、即ち、通常の塗装したモエンサイディング12mmのシャトーウォール調の塗装建築板を比較例1とした。
【0029】
(比較例2)該塗装基材表面に純水とコーキンマスター分散液を100:0.4(分散液)の割合で混合して40g/m2を塗布したものを比較例2とした。
【0030】
上記実施例1.2.3.と上記比較例1.2について、出光方式の藻抵抗性、カビ抵抗性試験法に従って試験を実施した。得られた結果を表1と表2に示す。
【0031】
(試験方法)
抗菌性能試験としては、上記実施例1,2,3および上記比較例1 , 2 で得られた塗装建築板の表面に塗布し、藻抵抗は、下記の試験方法に従って実施した。
(1)試験菌:藻は、微生物に発生するため、実用的方法としてカビ抵抗性試験に使用する微生物(77菌)と27種の藻を試験菌(藻)として用いた。
(2)培地・試験液の調整
ポテト・デキストロース(PD)寒天培地
市販乾燥培地(顆粒Difco Labortories)39gを蒸留し121℃15分間高圧蒸気減菌後、シャーレに分注して使用した。
(3)培養法と培養条件
藻は微生物に発生、育成することから77菌の試験菌をまきかけた後、27藻の懸濁液をまきかけ培養した。
温度 28〜30℃ 湿度 85%R・H以上 培養期間 28日間 培養期間中は、一日の内、8時間は1800Luxの陽光蛍光灯を照射し残り16時間は消灯して培養した。
カビ抵抗性は、下記の試験方法に従って実施した。
(1)試験菌:カビ菌の77菌は、一般住宅に存在するとされる菌と生活環境中の上位検出菌にて構成した。
(2)無機塩寒天培地:寒天15g純水1000mlとその他塩類を121℃120分加熱蒸気減菌処理後使用した。
(3)試験菌数は、混合胞子液を培地から寒天を除いた水溶液に胞子を加え、1×106±2×105個/mlに調整して等量混和させた。
(4)培養条件は、温度28〜30℃、湿度85%R・H以上で28日間培養した。
評価判定基準は、0:まったく菌が育成しない、1:10%以下の育成、2:
10〜30%以下の育成、3:30〜60%以下の育成、4:60%以上の完全育成とした。
【0032】
(カーボン汚し試験) カーボン粒子を3〜5%程度配合したケイ砂を茶さじで塗装建築板の表面塗膜に塗布する。その後に霧吹きにより水を吹きかけ、ケイ砂を洗い流すようにする。するとカーボンの付着の程度により防汚性(親水性)が確認できる。目視で、カーボンが洗い流されたものを○とし、一部カーボンが付着しているものを×とした。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表1、2より、コロイダルシリカ水性分散液に、コーキンマスター液が比較例2よりも抗菌性複合体が少なく混合した被覆層の実施例2.3は、28日間経過しても、藻やカビの発生はなく、カーボン汚し試験でもカーボンは流れ落ち良好な藻抵抗とカビ抵抗を示したが、なにも塗布していない比較例1は、藻やカビの発生がありカーボン汚し試験でも汚れの付着があった。また、コーキンマスター液だけ塗布した比較例2は、28日間経過後、藻やカビの発生が見られなかったが、カーボン汚し試験で汚れの付着があった。実施例に基づき相乗効果で、防汚性を保ちながら、防藻、防カビに抗菌性複合体が少ない量でも効果があることが実証確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、建築板に耐久性のあるかつ効率の良い抗菌性複合体の効果を与えることが出来、更に防汚性を付与することも出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性複合体を含み、コロイダルシリカを主成分とする塗膜が形成されていることを特徴とする建築板。
【請求項2】
前記抗菌性複合体は、藻、カビの発生を抑制する機能を有することを特徴とする請求項1記載の建築板。
【請求項3】
前記建築板は、木質セメント板であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の建築板。
【請求項4】
水とアルコールとからなる混合溶媒に界面活性剤を添加し、コロイダルシリカを分散させた第1の処理液を調製する第1の工程と、前記第1の工程によって得られた第1の処理液に、抗菌性複合体を添加して第2の処理液を調製する第2の工程と、前記第2の工程によって得られた第2の処理液を予め塗装が施された建築板表面に塗布する第3の工程と前記第3の工程によって得られた建築板を乾燥して表面塗膜を形成する第4の工程とからなる、ことを特徴とする建築板の製造方法。

【公開番号】特開2008−229498(P2008−229498A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72855(P2007−72855)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】