説明

建築物の構成部材及び同構成部材を用いた構造物

【課題】 家屋等の構造物の構造材や内装材として用いる部材を他の素材の収納容器としても利用する。
【解決手段】 家屋等の構造物の一部を成す構造材の一つのとしての柱構造材1の内部を上部空間1Aと下部空間1Bに仕切り、上部空間1Aには水収納容器2を配置し、この水収納容器2内に、上部の注水口2aを介して水Wを注入する。下部空間1Bには缶詰15a、乾パン15b、医薬品15c等の非常食や非常時持ち出し品等を収納する。地震等の非常時にはハッチ3bを開け、蛇口4を開いて充填してある水Wを所望量取り出し、飲用その他生活用水等として利用する。またハッチ3cを開けて非常食、薬品等の非常持ち出し品を取り出し利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家屋等の建築物の構成素材となる建築用構造材或いは内装材としても利用可能で、災害発生時には被災者の延命に寄与できる機能を有する構造材及び、同構造材を用いた構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋をはじめとする建築物は木造、コンクリート造、木造プレハブ、コンクリートプレハブ等各種の建築方法より建築されているが、このような建築物を構成するための建築物用構造材(以下実施例も含めて単に「構造材」とする)については、建築作業の簡便化、構造体としての強度向上等々の観点から下記のような構造材が提案されている。
【特許文献1】特開2000−104335
【特許文献2】特開2000−110303
【特許文献3】特開2004−332532
【特許文献4】特開2003−166306
【0003】
このうち特許文献1に記載の発明は中空管を構造材として用いることにより建築物の製造コストの低減を目指すものであり、特許文献2に記載の発明は中空管を用いて建築物の強度を高めるよう構成したものであり、特許文献3の発明は長尺の構造材の強度を保持する構成を提案したものであり、特許文献4に記載の発明は複数の中空部を構成した構造材により建築物の強度を保持しつつ軽量化を図ることを目的としたものである。
【0004】
上記各特許文献に記載の発明は建築物としての強度向上、軽量化、建築コスト低減等、建築物に対して本来要求されている事項を建築構造材の観点から実現するための発明であり、構造材に要求されているそれぞれの課題に対して直接対応しようとしたものであるといえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各文献に示されるとおり、建築物の構造材は建築物としての強度、軽量化、コストダウン等、当然のことながら建築物に対して本来要求される事項を実現することがその技術的解決事項となる。
【0006】
逆に言えば、上記各特許文献記載の発明においては、建築構造材として本来要求されている課題以外の技術事項を達成するものとしての技術的提案は、これも当然のことながらなされていない。
これに対して本発明は軽量、強度、経済性等の構造材に本来要求される技術事項に関する機能とは全く異なる機能を付加して構造材や内装材等の建築物の構成部材を多機能化し、或いは構成部材としての機能を向上させるよう構成した建築物の構成部材を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に対して、本願発明は柱、床、壁、梁等の建築物用の構成部材をアルミニウム等の金属或いは繊維強化プラスチック(FRP)等の材料により形成し、かつ構成部材の内部は、当該構成部材を構成する素材以外の材料を収納する空間が形成され、この空間に収納する材料の種類により、当該構成部材を構成部材本来の目的以外に使用する所定の材料の収納空間として利用し、或いは他の種類の材料により断熱性の向上、熱容量の向上等の構成部材自体の特性を向上或いは変化させるよう構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
構成部材の空間部に水若しくはこれと同効の材料を充填すれば、地震等の災害時にこの充填水を取り出すことよにり飲用やその他の生活水として利用可能であり、且つ構成部材を壁面構成材や床材として構成した場合には比熱の大きな水が充填されていることにより構成部材の熱容量が大幅に増加し、特に冬場では太陽光により温められた壁面や床面が適当な温度を保つことにより電気、ガス、灯油等による人工的な暖房エネルギーを低減することができる。
【0009】
また、空間部に発泡スチロール等の断熱材を充填することにより構造材或いは内装材としての構成部材の断熱効果を大幅に向上させることができる。特に構成部材をアルミニウム等の金属材料で形成した場合、これら金属材料は比熱が小さく断熱効果はかなり低いが、このような断熱材を充填することにより構成部材としての断熱効果を大幅に向上させることができる。
【0010】
さらに、構成部材を柱等の比較的大型の構造材として構成した場合、この構造材の空間部を、非常食、缶詰等の保存食、薬品、或いはその他の非常持ち出し物の収納場所としておけば、常時はこれらのものの配置が邪魔になることがなく、しかも非常時には容易に取り出し利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
構成部材をアルミニウムにより一体形成し、構成部材の空間部に水を充填し、かつこの空間部に連通するよう水の取出口を設け、常時は充填した水により構成部材全体の熱容量を向上させ、非常時はこの取出口を介して充填した水を飲用やその他の生活用水として利用する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の第1の実施例を示す。
図示される建築物の構成部材は家屋等の構造物の柱として、つまり構造物の構造材として好適な構成部材である。以下図示の構成部材を柱構造材として説明する。矢印1は柱構造材を示し、この柱構造材1は例えばアルミニウムにより一体的に構成されている。柱構造材1の内部は中空となっており、柱構造材1全体が一体的な箱型構造となっている。
【0013】
図1(B)に示すように柱構造材1の内部は仕切り壁1aにより上下二つの空間に仕切られている。このうち上部の空間部1Aには水Wを収納する容器2が収納され、この水収納容器2内に水(例えば水道水)Wが充填されている。水収納容器2の構成材料としてはアルミ箔と合成樹脂層を何層が重ね合わせた可撓性を有する袋が好適であり、この袋に水Wを充填することにより水収納容器2自体が柱構造材1の上部空間1Aに密着し、この上部空間1Aの体積に匹敵する容量の水Wを水収納容器2内に収納することが可能となる。
【0014】
水収納容器2に対する水Wの充填は柱構造材1の工場出荷時に行ってもよいが、柱構造材1が水の重量により重くなって柱構造材1の移動に負担がかかるので、できれば建築現場において充填するのが望ましい。
【0015】
符号2aは水収納容器2の注水口を示している。後述するように柱構造材1を所定の位置に配置し、他の構造材、例えば梁等との接続が可能な状態で当該配置位置に固定されたならば、ハッチ3aを開放して柱構造材1の上部空間に位置する水収納容器2の注水口2aを柱構造材1の外部に露出させ、ネジ栓を開放してホース等により例えば水道水をこの水収納容器2内に注入する。
【0016】
水道水の注入が終了したならばネジ栓により注水口2aを密閉し、密閉した注水口2aを再度柱構造材1の上部空間1Aに戻し、この状態でハッチ3aを閉める。一方水収納容器2の下部には充填した水Wを取り出す排水部として蛇口4が取り付けられている。蛇口4は水収納容器2に密着形成された金属製或いはプラスチック製等の比較的剛性の高い材料により形成された空間確保部材5を挿通して水収納容器2内に水流入口が開口した構造となっている。
【0017】
上記空確保部材5により蛇口4は柱構造材1の上部空間1A内に位置し、且つ蛇口4には可撓性を有するホース部4aが連接している。この構成により常時は蛇口4本体はもとよりホース部4aもハッチ3bを閉止しておくことによって全体が柱構造材1内に収納されている。この状態で地震等により柱構造材1内の水Wが必要となった場合には、ハッチ3bを開けると、柱構造材1内の蛇口4のホース4aは符号4a´に示すように柱構造材1の外部に露出する。従ってこの状態で蛇口4を開けば所望の量の水Wを得ることができる。
【0018】
次に符号1Bで示す下部空間は、本実施例の場合には地震等の非常時用の食料、非常時持ち出し品等の収納空間として構成されている。例えば缶詰15a、乾パン15b、医薬品15cなどである。またこの下部空間1B等に飲用のミネラルウォータボトルを収納しておき、前記上部空間1A内の水Wは洗顔、用便等に利用する中水として利用するようにしてもよい。符号3cは下部空間Bに設けられたハッチである。
【0019】
上記ハッチ3a乃至3cは取り外し型、開閉式のドア型等その構成を問うものではない。またハッチ3a乃至3cを柱構造材1と同じアルミニウムで形成する必要は必ずしもない。激しい地震により柱構造材1に歪みが生じた場合等を考慮するとハッチ3a乃至3cを柱構造材1と同じ高い剛性を有するアルミニウムで形成しておくと、かえってハッチが開かなくなる可能性もある。従って、ハッチは柱構造材1よりも強度の低いプラスチック材料或いは木材等で構成しておけば、例えハッチが開かなくなってもハッチ自体を破壊することにより所期の目的を達成することができる。因みにハッチを形成した部分は柱構造材1としての強度を担う部分ではないので強度の低い材料によりハッチを構成しても柱構造材1の強度上の問題はない。
【0020】
また図示の構成では上部空間1Aを水収納用の空間、下部空間1Bを非常食等の収納空間としているが、下部空間1Bを水収納空間、上部空間1Aを非常食等の収納空間としたり、或いは上下の空間を無くし、柱構造材1内の全ての空間を水収納用の空間として構成することも可能である。
【0021】
また柱構造材1の内部空間をインテグラルタンクとして、即ち水収納容器2を用いず直接水収納用のタンクとして利用することもできる。この場合にはアルミニウム材からなる柱構造材1の内面が水と直接接触するため、柱構造材1のうち少なくとも水と直接接触する面は陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)を形成し耐食性を高めておくことが望ましい。
【0022】
次に図2は図1に示した柱構造材1の、構造材としての構成例を示す。
図中符号6は柱構造材1の頂部に装着したブラケットであり、ボルト(図示せず)等の強固な固定手段により柱構造材1に対して固定されている。
例えばこのブラケット6を装着した状態で、前述の注水を行う。即ちブラケット6の梁挿通用開口6a或いは6bを介して柱構造材1のハッチ3aを開放し、前述の手順で水収納容器2内に水Wを注入し、水注入後ハッチ3aを閉止する。この状態で梁7をブラケット6のそれぞれの梁挿通用開口6a、6bに挿通し、やはり図示しないボルト等の固定手段で強固に相互を固定する。
【0023】
なお、柱構造材1における注水口用ハッチ3aの形成位置をブラケット6の配置部よりも下に形成しておけば、梁を固定した後でも注水が可能であるし、また建築物完成後に何回でも注水するように構成することも可能である。
【実施例2】
【0024】
図3は第2の実施例を示す。
図中符号8は建築物の構成部材を、建築物の壁面等を構成する板状の構造材(以下「壁構造材」と称する)として構成したものを示す。壁構造材8は家屋等の建築物の壁面を構成する構造材であるため、図示3(A)に示すように平板状に構成されている。
【0025】
壁構造材8においても、構造材の内部は中空に構成され、壁構造材8の構成素材以外の素材をその内部空間に対して収納可能に構成されている。なお壁構造材8がコンクリート構造物の壁面のように構造物の強度の一部を担う場合には前記柱構造材1のように高い剛性を有するようアルミニウム等物理的強度の高い素材により構成される。また構造物の強度を担う枠体に対して壁面としてはめ込む構造など、内装材として構成する場合には、FRP等アルミニウムよりも剛性が低い材料により構成することも可能である。
【0026】
図3のうち、図(B1)で示す構成は、壁構造材8の空間部8aに対して水Wを充填した構成を示している。同図(A)の符号9で示すものは、ウレタンゴム等の可撓性を有する材料から構成された蓋体であって壁構造材8に対して形成した注排水口8b〔図(C)参照〕を密閉するためのものである。
【0027】
水Wが注入されかつ建物等の構造物に組み込まれた壁構造材8は次のような機能を発揮する。先ず、前記柱構造材1と同様に、充填された水Wを地震等の災害発生時に飲料水或いは生活用水として利用することが可能である。より具体的には、充填された水Wが必要となった場合には蓋体8を取り外し、注排水口にホースを挿し込みサイフォンの原理により内部の水Wを排出し利用する。この場合蓋体9は前述のようりウレタンゴム等の可撓性を有する材料により構成されているため、常時は高い密閉性を有し、取り外し時には中央の摘まみ9aを摘んで、蓋体9を容易に引き抜くことができる。
【0028】
次に壁構造材8に対して水Wを注入しておくことにより壁構造材8自体の熱容量をアルミニウム材に比較して大幅に向上させることができる。
因みに比熱(Cal/g ・℃) については、アルミニウムが0.215であり比熱1.0の水の約1/5強であって、水に対して非常に小さな比熱となっている。このためアルミニウム製の壁構造材8に対して水Wを注入することにより壁構造材8全体の熱容量を大幅に増大させることができる。
【0029】
壁構造材8に対して上記のように水Wを注入して熱容量を増大させることにより、例えば冬場に、この壁構造材8に対して差し込んだ太陽光の熱エネルギーを壁構造材8に蓄え、かつこれを放熱することによって、昼間はもとより夜間でも人工的な暖房エネルギーの消費をその分低減させることができる。またアルミニウムの熱伝導率(Cal/g ・℃・秒)は0.53であってかなり良好であるので、充填水Wの吸熱、放熱は壁構造材8のアルミニウム材層を介してかなり良好に行われる。なお、夏場は冬場に比較して日が高くなるため、建築物の庇の長さを適切に設定しておけば壁構造材8に対する日光の照射を防止でき、壁構造材8内の水の温度上昇を避けることができる。
【0030】
次に図3(B2)示す構成は壁構造材8の内部空間8aに対して発泡スチロール等の断熱材10を充填したものである。この構成では内部空間8aは言わば出し入れ不可能な素材の収納空間として構成されるものであり、断熱材10を充填することによりアルミニウム製の壁構造材8の断熱性能を大幅に向上させることができる。因みに、前述の如くアルミニウムの熱伝導率はかなり高く、断熱性という観点からはみればアルミニウムは非常に性能の悪い素材である。この点に関して断熱材10を充填することによりアルミニウム製の壁構造材8の断熱性能を飛躍的に向上させることができる。なお壁構造材8の素材がFRPである場合には、炭素繊維の配合量等にもよるが、総じてアルミニウムに比較して熱伝導率はかなり低く、従って断熱性能はアルミニウムよりもかなり良好である。
【実施例3】
【0031】
図4は第3の実施例を示す。
符号11は円柱状の構造材として形成された構成部材であって、壁面や天井面を構成したり、或いは床面を構成する等の多目的な用途に利用可能な構造材として構成されたものである。以下この構造材を多目的構造材と称する。
【0032】
この多目的構造材11は、基本的には内部に充填された素材の種類によってこの多目的構造材11の機能が特定されるよう構成されたものであり、基本的には充填された素材を当該多目的構造材11から取り出して別途利用するものではない。
【0033】
図4(B1)はこの多目的構造材11の内部空間11aに対し発泡スチロール等の断熱材10を充填して多目的構造材11としての断熱機能を向上させるようしたものである。また(B2)は内部空間11aに対して水Wを充填して多目的構造材11の熱容量を向上させるよう構成したものである。この水Wを充填した構成は、多目的構造材11を構成する円柱の一方の端部をネジ蓋として内部空間11aに対して水Wを充填した後このネジ蓋を密閉する等の方法により構成することが可能である。また必要であれば図3(C)に示すような蓋体をこの多目的構造材11に対して設けることにより内部の水Wを利用するよう構成することも可能である。
【0034】
図4の構成では多目的構造材11は円柱であるが、この構成以外に6角柱、4角柱、3角柱などの断面が多角形のもの等であってもよく、その形状を限定するものではない。
またこれらの多目的構造材11と前記図3に示す壁構造体とを組み合わせて、方形、多角形等のカプセルを構成し、このカプセルを例えば通常の家屋内に配置して地震発生時、或いは火災発生時で、屋外に脱出できない場合にこのカプセルを防災用シェルターとして利用する等の方法も可能である。因みに図3に示す壁構造材8は長方形であるが、正方形、三角形、その他の多角形として構成することによりカプセル全体を方形や多面体等所望の形状に構成することが可能である。またこの場合、前記多目的構造材11、壁構造体8は高い断熱性を有するため、火災発生時でもカプセル内に避難した者の安全を確保することができる。
【0035】
なお、通常は上記カプセルの出入口は開放しておき、このカプセル内にインターネットと接続するパソコンや電話等、外部との通信手段を配置して常時はこの通信手段をを用いて外部との連絡をとるよう構成しておけば、上述の地震、火事等の緊急自体発生時にこのカプセルに避難した際にもこれらの手段を用いて外部と連絡がとれる可能性が高い。またカプセルの一部に強化ガラス等をはめ込んだ窓等の外部確認手段を設置しておけば、カプセル内にあっても、外部の状況が確認でき、以後の適切な対応がとりやすくなる。
【0036】
更に、このように直接外部を光学的に視認できる窓に代わって赤外線、電磁波等により外部の状況の概略を確認できる手段、例えば赤外線暗視装置等をカプセル内に配置しておき、この装置を用いて外部を確認するようにしてもよい。特に赤外線暗視装置はカプセルがビル内に配置されており、災害の発生による停電によってビル内の照明が完全に落ちて真っ暗闇になった場合等において、外部を視認し、カプセルから出ることが可能か否かを判断する場合等に非常に有効である。
【0037】
上記構成のシェルターの場合、構成したシェルターの周囲をモルタルで固めて一体化して強度、耐熱性を向上させることも当然可能である。またこのシェルターを家屋やビル内に配置する場合にはシェルター外面に壁紙を貼ったり、適宜の彩色をする等の意匠を施して違和感なくする等の処理も当然可能である。
【0038】
図5及び図6は図4に示す円柱状の多目的構造材11自体のの構造物に対する利用例を示す。
図5(A)において、符号12は多目的構造材11の下端部が嵌挿位置するよう構成した多目的構造材の下端支持部材(以下単に「下端支持部材」とする)である。13は各下端支持部材12の間において介在立設された介在板であって、その下端部側縁はは隣接する二つの下端支持部材12と接続している。接続は各下端支持部材12が、例えば直線状に位置するよう下端支持部材12と介在板13とが強固に接続固定される構成の外、各下端支持部材12と介在板13の接続部は取付角変更可能なキー係合等の嵌合構造(図示せず)として、各下端支持部材12の位置を図6に示すような自由な曲線あるいは折れ線状に配置することが可能なよう構成することもできる。
【0039】
以上の構成において、例えば図6の如く緩やかなカーブを描くような平面形状に配列された各下端支持部材12に対して多目的構造材11の下端を嵌挿しこの多目的構造材11を立設させる。また隣接する各多目的構造材11の間の空間部には介在板13が密着配置されるため、多目的構造材11と介在板13とにより一連の壁面が形成されることになる。
【0040】
図5(B)及び(C)は上述のように各下端支持部材12により立設支持された多目的構造材11と、各多目的構造材11の間に介在位置する介在板13とをその上端部において支持固定する上端支持部材14を示す。
【0041】
上端支持部材14は多目的構造材11の上端が嵌挿位置してこの多目的構造材11の上端を支持する多目的構造材支持部14aと、この多目的構造材支持部14aに連接してこの多目的構造材11に隣接する2枚の介在板13のうち一方の介在板13の上端を支持する介在板支持部14bが形成されている。
【0042】
下端支持部材12により立設された各多目的構造材11及び介在板13の頂部には順次上端支持材14が嵌挿され、これら上端支持材14が連接することにより多目的構造材111と介在板13の上端部が支持される。因みに上端支持部材14は多目的構造材支持部14aと、一方の介在板13を支持する構成となっているため、個々の多目的構造材11は当該多目的構造材11により支持されない側の介在板に対しては接触角度が自由に変更できるので、例えば図6に示す下端支持部材12の配列状態に対して支障無く追随して配列することができる。また、この上部支持材14を介して構造物の荷重を多目的構造材11で支持する場合にはこの上部支持部材14もアルミニウムなどの剛性の高い材料により構成し、天井面等に固定することにより多目的構造材11及び介在板13を強固に支持すると共に、天井面側の荷重を多目的構造材11側に伝達することができる。
【0043】
なお下端支持部材12は図示の如くリング状に形成しておけば、多目的構造材11を含む構造体の荷重は全て多目的構造材11により直接支持されることになるため、下端支持部材12自体としては大きな強度は要求されない。同様に上部支持部材14aを、下端支持部材12と同様リング状に構成し、荷重を多目的構造材11側で直接受ける構成とした場合には下端支持部材12と同様大きな強度要求されない。従ってこれら上下の支持部材や、介在部材をプラスチック或いは木材等で構成することも可能である。
【0044】
図6は下端支持部材12と介在板13との配置状態の一例を概念的に示したものである。図示の構成では全体が柔らかくS字状を描くよう配置されているが、他の曲線を描いたり、或いは幾つかの接続部以外は直線状に配置させることにより、平面形状が複数の直線が角を成すよう配置する等、その配置構成は自由に設定することができる。
【0045】
以上、図5及び図6に示す構造材により、或いはこれらの構造材の外に図1乃至図4に示す構造材を適宜選択して、前述の防災用シェルターを所望の大きさおよび所望の形状で成形できることは当業者おいては容易に想到できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、本発明に係る建築用構成部材を、主として家屋等の構造体の一部を担う構造材として説明したが、例えば構造物の少なくとも一部を従来の木造、鉄筋コンクリート造りとし、本願発明の建築用構成部材を例えば建築物の空間部を仕切る仕切り材や壁面の内装材等として利用する等、構造材以外の用途にも利用可能である。
【0047】
また、前記各実施では建築物用構成部材を構造材として用いる場合、これら構造材を室内空間側或いは外部空間側に対して所謂剥き出しで構成する場合を前提として説明しているが、これら構造材の表面にコンクリートモルタル等の別の素材を施したり、パネル等の別の素材を配置するなどの方法は、建築物の設計、施工時において当業者が容易に想到するものであり、本願発明の建築物用構成部材はその設計、施工において設計者、施工者の目的に応じた態様で適宜利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例を示し(A)は柱として構成された構造材の斜視図、(B)は図1(A)のA−A線による断面図である。
【図2】図2は図1に示す柱構造材の組み立て状態の一例を示し、柱構造材と梁の取り合わせ状態を示す斜視図である
【図3】本発明の第2の実施例を示し、図3(A)は壁構造材として構成された部材の斜視図、図3(B1)及び図3(B2)は何れも図3(A)のA−A線による断面図であり、図3(B1)は壁構造材に水を充填した状態の断面図、図3(B2)は断熱材を充填した状態の断面図、図3(C)は図3(A)のA−A線による断面拡大図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示し、図4(A)は柱構造材として構成された部材の一部省略斜視図、図4(B1)及び図4(B2)は何れも図4(A)のA−A線による断面図であり、図4(B1)は柱構造材に断熱材を充填した状態の断面図、図4(B2)は水を充填した状態の断面図、図4(C1)及び図4(C2)は何れも図4(A)のB−B線による断面図であり、図4(C1)は柱構造材に断熱材を充填した状態の断面図、図4(B2)は水を充填した状態の断面図である。
【図5】柱構造材の配置状態の例を示し、図5(A)は下端支持部材による柱構造材の支持状態を示す斜視部分図、図5(B)は上端支持部材の斜視図、図5(C)は図5(B)のA−A線による断面図である。
【図6】図5に示す柱構造材の配列状態の平面を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 柱構造材
1A(柱構造材の)上部空間
1B(柱構造材の)下部空間
2 水収納容器
2a(水収納容器の)注水口
3a、3b、3c ハッチ
4 蛇口
4a(蛇口用)可撓性ホース
5 空間確保部材
6 ブラケット
6a(ブラケットの)梁挿通用開口
7 梁
8 壁構造材
8a(壁構造材の)内部空間
9(壁構造材)の蓋体
10 断熱材
11 柱構造材
11a(柱構造材の)内部空間
12 下端支持部材
13 介在板
14 上部支持部材
14a(上部支持部材の)多目的構造材支持部
14b(上部支持部材の)介在板支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の構造材として柱、梁、壁、床等を構成し、或いはこれら構造材に対する内装材として用いられる建築物の構成部材であって、当該構成部材は1以上の内部空間部を有する中空体として構成され、内部空間に対しては構成部材を形成する素材とは異なる材料が収納・充填されていることを特徴とする建築物の構成部材。
【請求項2】
1以上の空間部の少なくとも一部の空間部に対して注入、抽出可能に水が充填されていることを特徴とする請求項1記載の建築物の構成部材。
【請求項3】
空間部には袋状の水収納容器が配置され、当該水収納容器には蛇口等、充填水の所望量を排出可能な手段が設けられていることを特徴とする請求項2記載の建築物の構成部材。
【請求項4】
1以上の空間部のうち少なくとも一つの空間部は、非常食、薬品、携帯ラジオ等非常時に用いる物品の収納空間として用いられるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の建築物の構成部材。
【請求項5】
内部に水が充填された建築物の構成部材を建築物の構造材として形成し、かつ充填された水により当該構造材の熱容量を当該構造材の構成素材が有する熱容量よりも大きく設定するよう構成したことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の建築物の構成部材。
【請求項6】
内部に発泡スチロール等の断熱材が充填された構成部材を建築物の構造材として形成し、かつ充填された断熱材により当該構造材の断熱効果を当該構造材の構成素材が有する断熱効果よりも高めるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の建築物の構成部材。
【請求項7】
構成部材は水を充填した柱状の密閉容器として構成され、かつこれら柱状の密閉容器を連接することより建築物の壁面、床面、天井面等を形成するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の建築物の構成部材。
【請求項8】
構成部材は断熱材を充填した柱状の密閉容器として構成され、かつこれら柱状の密閉容器を連接することにより建築物の壁面、床面、天井面等を形成するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の建築物の構成部材。
【請求項9】
建築物の構成部材はアルミニウムにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の建築物の構成部材。
【請求項10】
水はアルミニウムの構成部材の内部空間に直接注入されていることを特徴とする請求項2、請求項4、請求項5、請求項7、請求項9の何れかに記載の建築物の構成部材。
【請求項11】
1以上の内部空間のうち少なくとも水を直接注入する空間内面には酸化アルミ皮膜が形成されていることを特徴とする請求項10記載の建築物の構成部材。
【請求項12】
建築物の構造材として柱、梁、壁、床等を構成する構成部材でかつ1以上の内部空間部を有する中空体として構成され、内部空間に対しては構成部材を形成する素材とは異なる材料が収納・充填された構成部材の複数により構成された構造物。
【請求項13】
前記構造物は避難シェルターとして構成されていることを特徴とする請求項12記載の構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−74257(P2009−74257A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242041(P2007−242041)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(501265847)株式会社 アイ・アイ・イー 国際環境研究所 (1)
【出願人】(594077219)
【Fターム(参考)】