説明

建築物の開口部装置

【課題】 開窓時の開放感や換気性を向上させ、採光や眺めにおいても良好な建築物の開口部装置を提供すること。
【解決手段】 左右の縦サッシ(14)と、この左右の縦サッシ(14)内に支持された窓障子(20)と、該窓障子(20)より室外側又は室内側で左右の縦サッシ(14)内に支持された網戸(30)を備え、窓障子(20)及び網戸(30)は左右の縦サッシ(14)に沿ってそれぞれ独立して上下方向にスライド移動自在に設けられ、窓障子(20)及び網戸(30)が外壁(51)と内壁(52)との間に収納可能である構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓障子と網戸を備えた住宅等の建築物における開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の窓には引き違いにされた一対のガラス障子を有するものがある。このような窓は、外壁部分に設けた窓開口に嵌め込まれた窓枠内を、ガラス障子がスライドするようになっている。
ガラス障子は窓枠内を左右にスライド移動するものが主流であるが、上下方向にスライド移動するタイプも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−241743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の引き違いタイプの窓では、ガラス障子が窓枠内を移動するため、ガラス障子をいっぱいに開いても窓開口の面積の半分以下しか開放できないというものであった。
また、閉窓時では、網戸がガラス越しに見えるともに召し合わせ框もあるため、室内から室外の景色を眺める際に、景観が損なわれるものであった。更に、この網戸や召し合わせ框は、採光時に影となってしまうのもであった。
【0004】
それゆえ、本発明は、以上の事情を背景になされたものであり、開窓時の開放感や換気性を向上させ、採光や眺めにおいても良好な建築物の開口部装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した技術的課題を解決するため、本発明は、左右の縦サッシ(14)と、この左右の縦サッシ(14)内に支持された窓障子(20)と、該窓障子(20)より室外側又は室内側で左右の縦サッシ(14)内に支持された網戸(30)を備え、窓障子(20)及び網戸(30)は左右の縦サッシ(14)に沿ってそれぞれ独立して上下方向にスライド移動自在に設けられ、窓障子(20)及び網戸(30)が外壁(51)と内壁(52)との間に収納可能である建築物の開口部装置(1)とした。
【0006】
本発明に係る開口部装置によれば、窓障子20と網戸30が外壁51と内壁52との間の壁内に収納されるので窓開口が全開でき、開放感・換気性が向上する。また、召し合わせ框が見えないので、開口部のフル景観の眺めが得られる。更に、召し合わせ框が光を遮らないので採光性が向上する。
【0007】
好ましくは、窓障子(20)及び網戸(30)の室外側で左右の縦サッシ(14)内に支持されたシャッタ(40)を備え、このシャッタ(40)は左右の縦サッシ(14)に形成されたガイド(17)に沿って昇降自在に設けられ、窓障子(20)、網戸(30)、及びシャッタ(40)は駆動装置(61、62、63)により昇降作動可能であり、シャッタ(40)が窓障子(20)及び網戸(30)と重なって外壁(51)と内壁(52)との間に収納可能とするのがよい。
【0008】
このように駆動装置によって電動式に開閉可能であるので、スイッチ操作だけで開閉できるので開閉操作が容易である。また、窓から離れた場所からでも開閉できる。
手動式のような閉窓時の指はさみの危険が少なく、防犯性も高い。(手動式のクレセントによる施錠では、外部から窓を割ってクレセントが外されると窓が開けられてしまう恐れがある。) 更に、シャッタ40と網戸30を壁内に収納して窓障子20のみを閉めた採光状態や、シャッタ40と窓障子20を壁内に収納して網戸30のみを閉めた換気状態を容易に行うことができる。
【0009】
好ましくは、窓障子(20)又は網戸(30)の上下方向のスライド移動に伴って、その室外側又は室内側の面を掃除する掃除手段(71、72)を備える構成とするのがよい。この掃除手段(71、72)によって、窓障子20又は網戸30のスライド開閉操作に伴って窓障子20又は網戸30が自動的に掃除されるので、常に綺麗な状態に保つことができる。
【0010】
好ましくは、窓開口(2)の周縁に位置する上下の横サッシ(11、13)及び左右の縦サッシ(14)の少なくとも1つのサッシに中空部(66)を形成し、この中空部(66)を空調ダクトとして構成し、窓障子(20)の室内側の面に送風可能とするのがよい。空気の対流が滞るような窓開口2の隅の部分では結露が発生しやすいが、送風することで隅のほうまで空気の対流を保てるので、窓障子20のガラス面の防露性が向上する。ダクト66に繋がっている吸気部分に、室内の空調システムを接続すれば、冬季に窓から発生する下降冷気によって生じるコールドドラフトを抑制することができる。
【0011】
好ましくは、外壁(51)及び内壁(52)には、透明パネルが構成されているのがよい。このように、外壁51及び内壁52を透明化することで、窓開口2の窓障子20と併せて掃出窓サイズの大きな景観を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、窓開口を全開することが可能であり、フル景観を得ることができる。また、窓開口内に召し合わせ框等の内柱が無いので、見栄えや採光性にも優れた開口部となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
[実施例1]
図1は、本実施形態の開口部装置1を示す上方から見た概略斜視図である。図2は、図1に示す開口部装置1の構造を示す概略斜視図であり、図2(a)は室内側下方から見た図であり、図2(b)は室外側上方から見た図である。
図1及び図2に示すように、開口部装置1は、住宅等の建物の外壁における掃出サイズの開口部(取り付け口)に取付けられ、建物の室内空間と室外空間とを仕切るものである。掃出サイズの開口部(取り付け口)の下側半分は、外壁51及び内壁52によって覆われおり、実際の視界としての開口(窓開口2)は上側半分になる。即ち、窓開口2の下端位置が床面より高い位置(例えば、800〜1400mm)に設けられた腰付サイズの腰窓である。
開口部装置1は、サッシ枠10、窓障子20、網戸30、及びシャッタ40を備えて構成されている。
【0014】
図3は、開口部装置1の横断面図を示す図1のA−A断面図である。図4は、開口部装置1の縦断面図を示す図1のB−B断面図である。図4は、図1の状態から窓障子20、網戸30、及びシャッタ40が完全に閉じた閉窓状態を示している。
外壁51は、外壁材が貼ってあり、室外側の補強材53によって固定されている。
内壁52は、石膏ボードにクロス貼りが施してあり、室内側の補強材54によって固定されている。この補強材54の室外側には防水板55が配設されている。
【0015】
サッシ枠10は、アルミニウム合金製の押出形材からなる上サッシ11、下サッシ12、及び左右の縦サッシ14を四周枠組みして構成されている。サッシ枠10の横サッシとしては、上下サッシ11、12の他に、左右の縦サッシ14の中間をつなぐ中間サッシ13が構成されている。
サッシ枠10は、そのフランジ部で、開口部装置1周辺の柱や壁パネル等の建物躯体4に固定されている。サッシ枠10は、室外側には外壁51、室内側には内壁52が貼り付けられている。従って、壁に完全な垂直方向(見込み方向、室内外方向)では、室内、室外からサッシ枠10が見えることがない。
【0016】
左右の縦サッシ14には、窓障子20及び網戸30がそれぞれスライド移動するための縦溝(レール)15、16が断面形状に設けられているとともに、縦溝15、16よりも室外側に、シャッタ40がスライド移動するための溝(ガイド)17が加工されている。左右の縦サッシ14は、シャッタ40用の溝17が形成されている部位を別部材で構成してもよい。
【0017】
窓障子20は、サッシ枠10内に支持されるとともに、アルミニウム合金製の押出形材からなる上框21、下框22、及び左右の縦框24を四周框組みした内部に、ガラスパネル(複層のペアガラス)25を嵌め込んで構成されている。
窓障子20の室外側には、シャッタ40が設けられ、窓障子20とシャッタ40との間には網戸30が取付けられている。即ち、室内側より窓障子20、網戸30、シャッタ40の順となっている。この順序は、窓障子20と網戸30を入れ替えることも可能である。
【0018】
網戸30は、サッシ枠10内に支持されるとともに、アルミニウム合金製の押出形材からなる上框31、下框32、及び左右の縦框34と、これら上下左右の框31、32、34に四周を囲まれた内部に設けられたネット35とを備えて構成されている。網戸30のネット35は、プライバシー保護用のレース等を使用してもよい。
【0019】
シャッタ40は、サッシ枠10内に支持されるとともに、シャッタ本体骨組みに外側パネル41と内側パネル42が貼り付けられる。外側パネル41は、外壁51と同じ外壁調としているが、スラット調や装飾ガラス調としてもよい。
シャッタ40の左右の側部には、上側ピン43と下側ピン44の計4つのピンが設けられ、左右の縦サッシ14に形成されたガイド溝17内に挿入されている。
【0020】
窓障子20、網戸30、及びシャッタ40は、それぞれ左右の縦サッシ14の縦溝15、16、及びガイド溝17に案内されて上下にスライド移動可能に支持されている。
窓障子20及び網戸30の左右の縦框21、31は、それぞれ左右の縦サッシ14の縦溝15、16内に納まっており、常に室内外からの視野からは見えない。
【0021】
窓障子20の上框21及び下框22が、それぞれ上サッシ11と中間サッシ13と見込み方向(室内外方向)に重なって、窓障子20が閉じられるようになっている。同様に、網戸30の上框31及び下框32が、それぞれ上サッシ11と中間サッシ13と見込み方向(室内外方向)に重なって、網戸30が閉じられるようになっている。
窓障子20は、その上框21が上サッシ11に当接した閉鎖状態から、中間サッシ13に上框21が重なる開放状態までの間を、開閉移動可能に構成されている。同様に、網戸30は、その上框31が上サッシ11に当接した閉鎖状態から、中間サッシ13に上框21が重なる開放状態までの間を、開閉移動可能に構成されている。
【0022】
図3及び図4に示すように、窓障子20が完全に閉じた状態では、その上下左右の框21、22、24が、それぞれ上サッシ11、中間サッシ13、左右の縦サッシ14と見込み方向で重なり、室内側及び室外側からの視野からは見えない。同様に、網戸30が完全に閉じた状態では、その上下左右の框31、32、34が、それぞれ上サッシ11、中間サッシ13、左右の縦サッシ14と見込み方向で重なり、室内側及び室外側からの視野からは見えない。
【0023】
窓開口2の周縁は、上サッシ11、中間サッシ13、及び左右の縦サッシ14の上半分で四周が形成されている。窓開口2の下側には、外壁51と内壁52との間に収納部56が設けられ、中間サッシ13、下サッシ12、及び左右の縦サッシの下半分で四周が囲まれている。
窓障子20、網戸30、及びシャッタ40は、見込み方向に重なって収納部56に完全に収納することが可能(完全収納パターン)となっている。即ち、窓障子20、網戸30、及びシャッタ40が完全に開いた状態では、室内側及び室外側から見込み方向の視野からは見えない。
【0024】
次に、開口部装置1の駆動機構について説明する。
図1に示すように、上サッシ11の上部には、窓障子20駆動用モータ(駆動装置)61、網戸30駆動用モータ(駆動装置)62、及びシャッタ40駆動用モータ(駆動装置)63が設置されている。
窓障子20駆動用モータ61には、シャフト61aを介して左右にスプロケット61bが接続されている。スプロケット61bには、チェーン61cが巻き付いており、チェーン61cは窓障子20の左右両側(下框22の両端)に接続されている。
【0025】
網戸30駆動用モータ62には、シャフト62aを介して左右に巻き取りドラム62bが接続されている。巻き取りドラム62bには、ワイヤ62cが巻き付いており、ワイヤ62cは網戸30の左右両側(上框31)に接続されている。
シャッタ40駆動用モータ63には、シャフト63aを介して左右にスプロケット63bが接続されている。スプロケット63bには、チェーン63cが巻き付いており、チェーン63cはシャッタ40の左右両側(下側ピン44)に接続されている。
【0026】
チェーン61c、63c、及びワイヤ62cは、左右の縦サッシ14の中空断面内に垂らされている。従って、室内外から見込み方向の視野から見えない。これらチェーン61c、63c、及びワイヤ62cを左右の縦サッシ14の中空断面外に配置して見えるようにしても、機能上は問題ない。
【0027】
窓障子20、網戸30、及びシャッタ40は、それぞれ駆動用モータ61、62、及び63の駆動により、各々のシャフト61a、62a、及び63aが回転すると、それぞれ独立して上下方向に昇降する。即ち、窓障子20、網戸30、及びシャッタ40は、それぞれ独立して開閉可能となっている。
【0028】
次に、掃除機能について説明する。
図5は、開口部装置1の縦断面図を示す図1のC−C拡大断面図であり、中間サッシ13の高さにおける断面図である。
窓障子20のガラス25の室内外側に、掃除手段としてのワイパ71が接している。ガラス25の室内側にあるワイパ71は、中間サッシ13に形成された溝にスライド勘合して固定されている。ガラス25の室外側にあるワイパ71は、内側ブラケット73に形成された溝にスライド勘合して固定されている。
【0029】
網戸30のネット35の室内外側に、掃除手段としてのブラシ72が接している。網戸30の室内側にあるブラシ72は、内側ブラケット73に形成された溝にスライド勘合して固定されている。網戸30の室外側にあるブラシ72は、外側ブラケット74に形成された溝にスライド勘合して固定されている。
内側ブラケット73、及び外側ブラケット74は、中間サッシ13の室外側で順に、左右両側にある縦サッシ14に固定されている。
【0030】
窓障子20が上下方向に昇降すると、ワイパ71は昇降せずに固定されているので、ガラス25の内外面がワイパ71で磨かれる。同様に、網戸30が上下方向に昇降すると、ブラシ72は昇降せずに固定されているので、ネット35の内外面がブラシ72で磨かれる。このことにより、ガラス25に内外面及び網戸30のネット35の内外面は、自動的に掃除が行われる。
【0031】
次に、防露・送風機能について説明する。
図6は、開口部装置1の送風機能の概略を示す説明図であり、図6(a)は概略斜視図、図6(b)、(c)及び(d)は、それぞれ図6(a)の上サッシ11、中間サッシ13、及び縦サッシ14における断面図である。
上サッシ11の上部には、送風装置としてのファン65が配置されている。
窓開口2の周縁に位置する上サッシ11、中間サッシ13、及び左右の縦サッシ14には、空調ダクトとしての中空部66が形成されている。
【0032】
上サッシ11及び中間サッシ13の中空部66が、左右の縦サッシ14内側の側面(上サッシ11及び中間サッシ13の突き当て面)に開けられた穴を介して縦サッシ14の中空部66と繋がっている。上サッシ11及び中間サッシ13の左右両端と左右の縦サッシ14の付け当て面にはパッキンが挟まっており、縦サッシ14の側面に開けられた穴の周りはシールされている。
【0033】
上サッシ11の上面に開けられた穴から、ファン65で送風することで、繋がっている中空部(ダクト66)内にはエアー(空気)が流れる。エアーは、上サッシ11及び中間サッシ13に開けられた吐出口(穴)67より吐出される。
窓障子20の室内側の面に送風可能であるので、空気の対流が滞りやすい入隅部を中心に、空気を吐出させて空気の対流を促すことで結露が防止される。
【0034】
上記のように構成された本発明に係る開口部装置1によれば、以下のような効果がある。
窓障子20、網戸30、及びシャッタ40が外壁51と内壁52との間の壁内(収納部56)に収納されるので、窓開口2がフルに全開でき、開放感・換気性が向上する。また、従来の引き違い窓には召し合わせ框が窓開口の中央部を横切っているが、本発明では召し合わせ框が見えないので、開口部のフル景観の眺めが得られる。即ち、幅1.5m以上、高さ1m以上の横長のワイドな眺めが、支柱等の遮りが全くない状態で得ることができる。
更に、召し合わせ框による光の遮りがないので、支柱等の影が床に映ることなく、採光性が向上する。
【0035】
また、窓障子20、網戸30、及びシャッタ40が駆動装置61、62、63によって電動式に開閉可能であるので、スイッチ操作だけで開閉できるので開閉操作が容易である。また、窓から離れた場所からでも開閉できる。
手動式のような閉窓時の指はさみの危険が少なく、防犯性も高い。(手動式のクレセントによる施錠では、外部から窓を割ってクレセントが外されると窓が開けられてしまう恐れがある。)
更に、窓障子20、網戸30、及びシャッタ40が全て開いた全開状態(全開モード)、シャッタ40と網戸30を壁内の収納部56に収納して窓障子20のみを閉めた採光状態(採光モード)や、シャッタ40と窓障子20を壁内の収納部56に収納して網戸30のみを閉めた換気状態(換気モード)を容易に行うことができる。
【0036】
掃除手段であるワイパ71によって、窓障子20のスライド開閉操作に伴って窓障子20のガラス25が室内外から挟み込まれながら自動的に掃除されるので、常に綺麗な状態に保つことができる。また、掃除手段であるブラシ72によって、網30のスライド開閉操作に伴って網戸30のネット35が室内外から挟み込まれながら自動的に掃除されるので、常に綺麗な状態に保つことができる。
また、このワイパ71及びブラシ72によって、収納部56内に塵や埃が入り込むことを防止できる。
【0037】
また、空気の対流が滞るような窓開口2の隅の部分では結露が発生しやすいが、送風することで隅のほうまで空気の対流を保てるので、窓障子20のガラス25の表面における防露性が向上する。
住宅側の天井に設置されている空調ダクト(通常は天井に細長い形状や円形状の送風口が多くつけられているが、見栄えが悪い)を廃止し、住宅側の送風口を本発明のダクト66に繋がっている吸気部分に接続すれば、窓が空調の送風口となる。その結果、天井の室内景観が良くなるとともに、窓からのサーマルドラフト(冬季に窓から冷気を感じる:コールドドラフト、夏季に窓から熱気を感じる:ヒートドラフト)を抑制できる。
【0038】
また、シャッタ40が一体型(閉じる時にも変形しない1枚のパネルタイプ)であるので、防犯上、室外側から攻撃されても破壊されにくい。特に、上開きタイプのシャッタ40なので、シャッタ40が半開時であっても、高いところが開いている状態なので外部より進入しにくい。即ち、本実施例では、窓開口2の上端が室内床から2m以上、室外の路面からは2.2m以上となり、防犯性が高まる。
従来の下開きタイプのシャッタは、落下すると床面との間に手が挟まれてけがをする恐れがあるが、上開きなので、シャッタ40を閉じる際に手が挟まれにくい。
更に上開きの良い点としては、半開時として使用する際、雨が降っても雨が室内には入ってこず、プライバシーも保ちつつ換気を行え、採光もできる。
【0039】
また、モータ61、62、63等の駆動部を、外壁51と内壁52との間に備えるので、壁から突出することがなく見栄えが良い。
これら駆動部を、窓開口2(上サッシ11)の上に配置したので、駆動部が水や埃、落ち葉等が入り込んで壊れることを低減することができる。
【0040】
[実施例2]
次に、実施例2の開口部装置101について説明する。本実施例2の開口部装置101の基本的な構成については、実施例1の開口部装置1と同じである。実施例2が上記した実施例1と大きく異なる点は、シャッタ140が閉じた状態で外壁51と面一(フラット)な状態になることである。
図7は、開口部装置101の縦断面図を示し、実施例1の縦断面図を示す図4
(図1のB−B拡大断面図)に対応する。なお、本実施例2において上記した構成と同じ構成については実施例1と同じ符号を付してある。また、本実施例2は、実施例1の変形例であり、実施例1の構成と同じ部分について得られる作用・効果は同一である。(実施例3以降についても同様である。)
【0041】
図8は、実施例2の開口部装置101におけるシャッタ140の開閉動作を模式的に説明する概略図であり、図1のD−D断面を示す縦断面図である。図8(a)はシャッタ140の全閉状態、図8(b)は上側を少し開けた半開状態、図8(c)は全閉状態を示す。
シャッタ140の構成は、実施例1と大きく異なる点はなく、シャッタ140の左右の側部には、上側ピン143と下側ピン144の計4つのピンが設けられ、左右の縦サッシ14に形成されたガイド溝117、118内に挿入されている。
【0042】
図8に示すように、左右の縦サッシ14には、上下に二つのガイド溝117、118が形成されている。上下のガイド溝117、118は、下端から中間部は上下方向に平行に形成されたストレート部となってとり、上端にいくに従って室外側に向かって湾曲した円弧状となっている。
下側ガイド溝118の上端は、上側ガイド溝117の下端よりも垂直方向で上側になるように構成されている。
【0043】
図8(a)に示すようなシャッタ140の全閉状態から、実施例1と同様に駆動用モータ63の駆動により、シャフト61a、が回転すると、シャッタ140が上昇する。シャッタ140は、上下側のガイド溝117、118のストレート部に沿って、しばらくは垂直にスライド移動する。上側ピン143及び下側ピン144が、ガイド溝117、118の上端の湾曲部に来ると、その湾曲部に案内されて、図8(b)、(c)に示すように、シャッタ140は上昇しながら室外側方向にも移動する。
即ち、上側へ引き上げた際に、上下側のガイド溝117、118に沿ってオフセット動作し、周辺の外壁51とシャッタ室外面141が面一な状態となる(全閉状態)。
【0044】
シャッタ140の室外面141のデザインは、装飾ガラス調やスラット調など様々なバリエーションを持たせることができるが、周辺外壁51と同じ外壁調とすることで、全閉状態での室外側からの視野において、一体感を得ることができる。つまり、意匠性が向上するとともに、一見しただけでは窓があることが気付かないようになる。
シャッタ140を下側へ下げた際に、ガイド溝117、118に沿ってオフセット動作し、室内側へ移動しながら壁内(収納部56)へ収納される(全開状態)。
【0045】
図7に示すように、シャッタ140の室内側上部(上サッシ11)に、蛍光灯等の光源181を設けるとよい。
夜間に、シャッタ140を全閉状態とした際、光源181を点灯させると、シャッタ140の室内面(内側パネル)142が反射面となって反射し、日中の採光のような雰囲気で窓開口2から照明することができる。建物は、もともと窓から採光するように設計されているので、照明機能としてよい。
シャッタ140の室内面142に風景等の写真やデザイン画を貼っておくと、シャッタ140を閉じていても、窓開口2から意匠性のある眺めを得ることが可能となる。このとき、窓障子20も上げて閉窓して、網戸30のみを下げて収納した状態とするのがよい。
【0046】
[実施例3]
次に、実施例3の開口部装置201について説明する。本実施例3の開口部装置201が、上記した実施例と大きく異なる点は、開口部装置201自体が扉として機能することである。
図9は、実施例3の開口部装置201の斜視図である。図9(a)は全開状態、図9(b)はシャッタ40が半開の状態を示している。どちらとも窓障子20や網戸30は全開の状態である。
図9に示すように、開口部装置201(サッシ枠10)が、出入口の扉となっている。ただし、扉が閉じた状態では、上記した実施例と同様に建物の壁と同様に機能する。
【0047】
開口部装置201は、図10に示すようなシャッタ40用の駆動装置263が、下側(収納部56)に設けられている。図示してないが、窓障子20用及び網戸30用の駆動装置261、262も同様に設けられている。
このように、駆動部を壁内に有するので、壁から突出することがなく見栄えが良い。更に、駆動部を窓開口2の下に配置したので、窓開口2(上サッシ11)の上側スペースを極限までコンパクトにすることができ見栄えが良い。
図9に示すような開き扉だけでなく、スライド式の扉(ドア)に適用してもよい。
【0048】
[実施例4]
次に、実施例4の開口部装置301について説明する。本実施例4の開口部装置301は、上記した実施例1において収納部56の外壁51及び内壁52を、透明化したものである。このとき、補強材53や防水板55も使用しない(内壁52に防水機能を持たせる)。
このように、腰壁(収納部56の外壁51及び内壁52)をガラス化するだけで、掃出窓サイズの大きな景観を得ることができる。
【0049】
なお、本発明の具体的構成は、上記した実施形態に限定されることなく、種々に変更可能であり、上記した実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記した実施形態では、窓障子20、網戸30、シャッタ40の3つが上下に昇降するが、シャッタ40は非装着であってもよい。
上記した実施形態では、窓障子20や網戸30が外壁51と内壁52の間の収納部56に完全に収納(完全収納パターン)されるが、上下方向の長さが窓開口2より収納部56を小さくすることで、壁51、52でカバーされた範囲に収納しきれず、部分的に窓障子20や網戸30の上端が残って見える部分収納パターンとしてもよい。これにより、窓開口2を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る開口部装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す開口部装置の構造を示す概略斜視図であり、(a)は室内側下方から見た図であり、(b)は室外側上方から見た図である。
【図3】開口部装置の横断面図を示す図1のA−A拡大断面図である。
【図4】開口部装置の縦断面図を示す図1のB−B拡大断面図である。
【図5】開口部装置の縦断面図を示す図1のC−C拡大断面図である。
【図6】開口部装置の送風機能の概略を示す説明図である。
【図7】実施例2の開口部装置の縦断面を示す拡大断面図である。
【図8】実施例2におけるシャッタの開閉動作を説明する概略図である。
【図9】実施例3の開口部装置の斜視図である。
【図10】実施例3の駆動装置の概略を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1、101、201、301 開口部装置
2 窓開口
10 サッシ枠
11 上サッシ(横サッシ)
12 下サッシ
13 中間サッシ(横サッシ)
14 縦サッシ
15、16 縦溝
17、117、118 溝(ガイド)
20 窓障子
21 上框
22 下框
24 縦框
25 ガラス
30 網戸
35 ネット
40、140 シャッタ
41、141 外側パネル
42、142 内側パネル
43、44、143、144 ピン
51 外壁
52 内壁
53、54 補強材
55 防水板
56 収納部
61、62、63 モータ(駆動装置)
65 ファン(送風装置)
66 ダクト(中空部)
67 吐出口
71 ワイパ(掃除手段)
72 ブラシ(掃除手段)
73、74 ブラケット
181 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦サッシと、この左右の縦サッシ内に支持された窓障子と、該窓障子より室外側又は室内側で前記左右の縦サッシ内に支持された網戸を備え、前記窓障子及び前記網戸は前記左右の縦サッシに沿ってそれぞれ独立して上下方向にスライド移動自在に設けられ、前記窓障子及び前記網戸が外壁と内壁との間に収納可能である建築物の開口部装置。
【請求項2】
前記窓障子及び前記網戸の室外側で前記左右の縦サッシ内に支持されたシャッタを備え、このシャッタは前記左右の縦サッシに形成されたガイドに沿って昇降自在に設けられ、前記窓障子、前記網戸、及び前記シャッタは駆動装置により昇降作動可能であり、前記シャッタが前記窓障子及び前記網戸と重なって前記外壁と前記内壁との間に収納可能である請求項1に記載の建築物の開口部装置。
【請求項3】
前記窓障子又は前記網戸の上下方向のスライド移動に伴って、その室外側又は室内側の面を掃除する掃除手段を備える請求項1に記載の建築物の開口部装置。
【請求項4】
窓開口の周縁に位置する上下の横サッシ及び前記左右の縦サッシの少なくとも1つのサッシに中空部を形成し、この中空部を空調ダクトとして構成し、前記窓障子の室内側の面に送風可能である請求項1に記載の建築物の開口部装置。
【請求項5】
前記外壁及び前記内壁には、透明パネルが構成されている請求項1に記載の建築物の開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−127966(P2008−127966A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317850(P2006−317850)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】