説明

建築物の防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法

【課題】建築物周囲の土壌に対し効果的な防蟻バリアー層を形成でき、経年減退した防蟻効果の復活処理を容易に行うことができ、新築時だけでなく既設の建築物に対しても容易に施工することができる建築物の防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法を提供すること。
【解決手段】一端11aに防蟻剤Rを内部に供給するための供給口12を、供給口12から他端11bに向かって周壁11cに防蟻剤Rを外部に流出させる複数の散布口13を有し、複数の散布口13から流出する防蟻剤Rの流出量が供給口12から他端11bに向かうに連れて減少する第1及び第2の防蟻剤散布パイプ10A、10B、10C、10D、10E、10Fを有する。第1及び第2の防蟻剤散布パイプ10A、10B、10C、10D、10E、10Fは、一方の他端11bが他方の供給口12に、他方の他端11bが一方の供給口12にそれぞれ向かった状態で、互いに並行に対向して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法に関し、特に木造建築物周囲の土壌に対し均一に必要十分な量の防蟻剤を散布することのできる建築物の防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物を白蟻被害から守るための防蟻処理は、建築時に防蟻剤を浸漬処理した木材を使用するか、防蟻剤を建築物の基礎及び土台等に塗布、或いは床下の土中、及び必要に応じて建築物外周の土中に注入散布することによって行われている。防蟻剤が良好に防蟻・殺蟻効果を持続するのは5年間程度であり、継続的に建築物を白蟻被害から守るためには、この期間経過毎に防蟻処理を行う必要がある。このような防蟻処理は、加圧送給ポンプにより建築物周辺、床下に防蟻剤を注入・散布することによって行われている。しかしながら、建築後に床下にある土台、支柱、地中等に均一且つ十分に防蟻剤を塗布又は散布することは困難であり、しかも低くて狭い空間のため面倒な作業となる。
【0003】
この問題に対処するための防蟻処理工法が、特許第3323000号、特許第4275755号、オーストラリア特許第583405号に提案されている。これらの関連技術では、図10に示すように、建築時に、地中を含む建築物100の床下、建築物100の周辺の地上や地中に、防蟻剤Rを地中に流出させるための散布口210が等間隔で設けられたパイプ200が、外部、例えば送液装置300から防蟻剤Rを供給できるように予め配管される。このようにすることで、建築後でも外部から防蟻剤Rをパイプ200に送り込み、地中に散布することができる。また、新築時だけでなく、経年による防蟻効果低下時にも、防蟻剤Rの送液装置300を建築物100の外部に設けたパイプ200の給液口220に接続することで、防蟻剤Rの地中への再散布処理を行うことができる。また、一箇所への防蟻剤散布は一本の配管から行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3323000号公報
【特許文献2】特許第4275755号公報
【特許文献3】オーストラリア特許第583405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記関連技術では、特に建築物の床下部は面積が大きく、必要部又は全体に均一且つ十分な防蟻剤散布を行うことが困難であり、配管も複雑となる。
【0006】
また、多数の散布口を設けたパイプを一本に配管して防蟻剤の散布を行う場合、パイプの防蟻剤供給口付近の散布口と当該供給口から離れた散布口とでは防蟻剤の流出量に差があり、供給口から離れるに従って散布口での防蟻剤の流出量は小さくなり、防蟻バリアー層に防蟻剤濃度の低い部分或いは防蟻剤の無い空白部分が発生し、防蟻効果の低い部分ができる問題がある。これは、各散布口からの防蟻剤の流出量は、ベルヌイの定理により、散布口の直径、散布口での圧力で決まり、各散布口での圧力は、流体力学の理論(Hazen-Williamsの公式)にしたがい、配管の内径、流量、給液口から散布口までの長さで決まる圧力損失があるため、給液口から遠くなるほど低下するからである。隣接する散布口間の圧力損失は、給液口に近いほど末端までの各散布口からの流出量が累積されるため急増し、給液口近くと比較して末端の流出量は著しく小さくなる。また、末端に十分な防蟻剤を散布するためには、給液時間を延ばす必要があるが、この場合、給液口付近の散布量が著しく過大となる。よって、上記関連技術では、一箇所への防蟻剤散布は一本の配管により行われているので、防蟻効果の低い部分ができる可能性が高く、また、流出量の少ない部分でも十分な防蟻効果を得るためには、全体として過大な量の防蟻剤を注入しなければならない。
【0007】
さらに、既設の建築物では、床下の配管が困難でコストが掛かるため、上記関連技術の工法による施工を行うことは現実的ではなく、防蟻処理に多大な手間、時間、費用を要する。
【0008】
本発明は、建築物周囲の土壌に対し均一に必要十分な量の防蟻剤を散布して効果的な防蟻バリアー層を形成することができ、経年減退した防蟻効果の復活処理を容易に行うことができ、新築時だけでなく既設の建築物に対しても容易に施工することができる建築物の防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、建築物の基礎周辺の地中に少なくとも一部が埋設されて白蟻防除のために使用される防蟻剤散布装置において、一端に防蟻剤を内部に供給するための供給口が形成され、前記供給口から供給された防蟻剤を外部に流出させるための複数の散布口が前記供給口から他端に向かって周壁に設けられ、前記複数の散布口から流出する防蟻剤の流出量が前記供給口から前記他端に向かうに連れて減少する第1及び第2の防蟻剤散布パイプを備え、前記第1の防蟻剤散布パイプと前記第2の防蟻剤散布パイプとは、前記第1の防蟻剤散布パイプの他端が前記第2の防蟻剤散布パイプの供給口に、前記第2の防蟻剤散布パイプの他端が前記第1の防蟻剤散布パイプの供給口にそれぞれ向かった状態で、互いに並行に対向して配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施形態は、地中に防蟻剤を散布することにより建築物の白蟻被害を防ぐ防蟻処理方法において、一端に防蟻剤を内部に供給するための供給口が形成され、前記供給口から供給された防蟻剤を外部に流出させるための複数の散布口が前記供給口から他端に向かって周壁に設けられ、前記複数の散布口から流出する防蟻剤の流出量が前記供給口から前記他端に向かうに連れて減少する第1及び第2の防蟻剤散布パイプを用意し、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを、前記第1の防蟻剤散布パイプの他端が前記第2の防蟻剤散布パイプの供給口に、前記第2の防蟻剤散布パイプの他端が前記第1の防蟻剤散布パイプの供給口にそれぞれ向かった状態で、互いに並行に対向するように配管し、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの供給口に防蟻剤を供給可能な状態で、建築物の基礎周辺の地中に埋設し、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの供給口に防蟻剤を供給して建築物の基礎周辺の地中に防蟻剤を散布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、建築物外周に近接した地中に防蟻剤の空白部分のない均一で効果的な防蟻バリアー層を容易に且つ効率良く形成することができる。そのため、建築物の床下に配管した場合は勿論、床下に配管しない場合であっても、建築物の床下部を含めて地中の白蟻を駆除することができ、また、散布後も長期にわたって白蟻を忌避することができる。面積の大きい建築物の床下に配管する必要がないので、複雑な配管が不要となり、配管時及びメンテナンス時の手間、時間、費用等を大幅に削減することができる。また、床下に厚くコンクリートを打設したベタ基礎の側面を発泡スチロール等の断熱剤で覆った高気密な建築物、外断熱工法を採用した建築物等では、床下からの白蟻の侵入は防げるが、断熱剤が白蟻の好物のため、断熱剤が白蟻の被害を受けることが多い。しかしながら、上記構成によれば、効果的に形成された防蟻バリアー層によって、このような断熱材の白蟻による被害をも防止することができる。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法は、建築物外周に設置するので、新築の場合だけでなく、既設の建築物に対しても施工、適用が容易であり、適用対象が非常に広い。
【0013】
また、地中に散布した防蟻剤の効果が薄れた或いは無くなった場合、防蟻剤の送液装置等を防蟻剤散布パイプの供給口に接続し、防蟻剤を当該防蟻剤散布用パイプ内に供給して散布口を介して地中に防蟻剤を散布することができる。したがって、容易且つ確実に防蟻バリアー層を再構築することができ、これを定期的に繰り返すことにより半永久的に防蟻効果を維持することができる。
【0014】
また、本発明の実施形態に係る防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法では、移動可能な専用車等に積載した防蟻剤貯留タンク及び送給ポンプを使用して防蟻剤を散布することができるので、防蟻剤散布装置が多数の設置場所に散在していたとしても、専用車等により当該設置個所を巡回することによって非常に容易に且つ短時間で防蟻処理を行うことができる。
【0015】
また、本発明の実施形態に係る防蟻剤散布装置及び防蟻処理方法では、定期的に白蟻検知器具の内部を点検することで、白蟻の到来有無、白蟻の到来数、到来頻度等を確認し把握することができる。そして、この白蟻検知器具による検知結果から、防蟻バリアー層の防蟻剤の残留濃度等を推測することができる。したがって、防蟻剤の再注入・散布を行う適切な時期を予測、把握することができ、よって、建築物が白蟻の被害に遭う前に防蟻バリアー層を適切な時期に効果的に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る防蟻剤散布装置を建築物に適用した場合の配管等を示す概略図である。
【図2】地中に埋設した本発明の第1実施形態に係る防蟻剤散布装置と建築物とを示す断面図である。
【図3】図2及び図3の防蟻剤散布装置の防蟻剤散布パイプに布の筒を設けた場合の防蟻剤散布パイプの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る防蟻剤散布装置を建築物に適用した場合の配管等を示す概略図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る防蟻剤散布装置を建築物に適用した場合の配管等を示す概略図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る防蟻剤散布装置を建築物に適用した場合の配管等を示す概略図である。
【図7】本発明の各実施形態に係る防蟻剤散布装置の防蟻剤散布パイプの散布口が設けられた部分の断面図であり、(a1)及び(a2)は1本の防蟻剤散布パイプの散布口を示し、(b1)乃至(b3)は2本の防蟻剤散布パイプの散布口を示す図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る防蟻剤散布装置を建築物に適用した場合の配管等を示す概略図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る防蟻剤散布装置の白蟻検知器具の構成を示す概略図である。
【図10】関連する防蟻処理工法による建築物への配管等を示す概略図であり、地中から地表に向かって見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1を建築物50に適用した場合の配管等を示す概略図であり、地中から地表に向かって見た図である。図2は、地中に埋設した防蟻剤散布装置1と建築物50とを示す断面図である。
【0019】
第1実施形態の防蟻剤散布装置1は、液体状の防蟻剤(防蟻剤散布液)Rを散布するための同一仕様の2本の防蟻剤散布パイプ10A、10Bを備える。防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、パイプ状の形状を有し、その一端11aには防蟻剤Rを外部からパイプ内部に導入するための供給口12が設けられ、他端11bは図示しない蓋14により閉塞されている。また、防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、周壁11cを有し、周壁11cの内部を防蟻剤Rが流れるようになっている。防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、金属や合成樹脂によって形成されるが、これらの材料に限定されない。
【0020】
供給口12は、防蟻剤散布パイプ10A、10B内に防蟻剤Rを供給する供給装置2が接続可能な構成となっている。例えば、供給口12は、防蟻剤散布パイプ10A、10Bが木造建築物等の建築物50の基礎51周辺の地中に埋設された場合に供給装置2と接続可能なように、地上に出るような構成となっている。また、例えば、供給口12は、防蟻剤散布パイプ10A、10Bが建築物50の基礎51周辺の地中に埋設された場合に、地中に埋設された蓋付きの箱の内部に置かれて、必要時にこの箱の蓋を開いて供給装置2を接続できるような構成となっている。
【0021】
防蟻剤散布パイプ10A、10Bの周壁11cには、散布剤Rを外部に流出させるための同一口径を有する散布口13が、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの延伸方向に沿って等間隔で複数設けられている。防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、複数の散布口13から流出する防蟻剤Rの流出量が供給口12から他端11bに向かうに連れて減少するようになっている。
【0022】
上記のような構成を持つ防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、大量生産され、安価で、寸法や配管用継ぎ手類が規格化されていて種類が豊富で、入手容易で、強度や耐久性に優れている水道用塩化ビニールパイプに、等間隔で散布口13を穴開け加工することでも作成することができる。
【0023】
図1及び図2に示すように、一方の防蟻剤散布パイプ10Aは、取外し可能な防蟻剤Rの供給装置2に接続可能な位置に供給口12が配置され、建築物50の基礎51周辺の地中に、図示上時計回りで建築物50を取り囲むように配管されている。他方の防蟻剤散布パイプ10Bは、取外し可能な防蟻剤Rの供給装置2に接続可能な位置に供給口12が配置され、建築物50の基礎51周辺の地中に、図示上反時計回りで建築物50を取り囲むように配管されている。防蟻剤散布パイプ10Bは、防蟻剤散布パイプ10Aと並行に対向して、防蟻剤散布パイプ10Aの外側を取り囲むように配管されている。防蟻剤散布パイプ10Aの他端11bは防蟻剤散布パイプ10Bの供給口12に、防蟻剤散布パイプ10Bの他端11bは防蟻剤散布パイプ10Aの供給口12にそれぞれ向かうように配管されている。また、防蟻剤散布パイプ10Aの供給口12と防蟻剤散布パイプ10Bの供給口12とは、近接して配置され、1つの供給装置2に接続可能となっている。防蟻剤散布パイプ10Aと防蟻剤散布パイプ10Bとは、隙間無く密着して配管されてもよいし、所定の距離をあけて配管されてもよい。
【0024】
防蟻剤散布パイプ10Aに設けられた複数の散布口13と防蟻剤散布パイプ10Bに設けられた複数の散布口13とは、防蟻剤散布パイプ10A、10Bに沿った方向において、それぞれ同位置に位置する。また、防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、散布口13が地下に向かう方向(例えば、重力方向)に向くように配管されている。
【0025】
図3に示すように、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの2本のパイプ全体を、布、不織布、フェルト等の筒30で覆ってもよい。これにより、散布口13から流出した防蟻剤Rをさらに均一に地中に分散させることができる。この構成は、特に防蟻剤散布装置1の施工直後に効果が期待できる。この筒30が長期間地中におかれ、バクテリア等により劣化した場合は、必要に応じて新しいものに交換する。
【0026】
次に、上記のように構成された防蟻剤散布装置1を使用した防蟻剤の散布方法について説明する。
【0027】
まず、防蟻剤散布装置1の防蟻剤散布パイプ10A、10Bの両方の供給口12に供給装置2を接続する。次に、供給装置2から防蟻剤散布パイプ10A、10Bのパイプ内に防蟻剤Rを送り込み、周壁11cに設けられた複数の散布口13から散布剤Rをパイプ外部の地中に流出させる。このとき、複数の散布口13から流出する防蟻剤Rの流出量は、供給口12から他端11bに向かうに連れて減少する。なお、図中の矢印は防蟻剤Rの送り込み方向を示す。以上の散布処理は、防蟻剤散布装置1の設置初期だけでなく、その後も任意の時期に回数制限無く行うことができる。例えば、防蟻剤Rの効果が無くなる5年くらいの期間毎に繰返し行ってもよい。
【0028】
次に、防蟻剤散布装置1の建築物50(周辺の地中)への施工方法について説明する。建築物50は、これから建てる新築でも、建築中でも、既に建っている既設でもよい。防蟻剤散布装置1と建築物50との位置関係の説明上、まだ建っていない建築部50であっても図示している。図2に示すように、建築物50は、例えば、基礎51の間(床下)と側方に打設されたコンクリート等の不浸透性材料52、基礎51間に打設された不浸透性材料52と地盤との間に敷かれた砕石層53、基礎51の下に敷かれた砕石・玉石54を備える。
【0029】
まず、建築物50の基礎51外周部の土を外周に沿って所望の深さ幅で掘り、防蟻剤散布パイプ10A、10Bを配管するためのスペースを用意する。次に、用意したスペースにおいて、防蟻剤散布パイプ10A、10Bを、防蟻剤散布パイプ10Aの他端11bが防蟻剤散布パイプ10Bの供給口12に、防蟻剤散布パイプ10Bの他端11bが防蟻剤散布パイプ10Aの供給口12にそれぞれ向かった状態で互いに並行になるように配管する。この際、防蟻剤散布パイプ10A、10Bを所定の距離をあけて配管する。また、散布口13が地下に向かう方向(例えば、重力方向)に向くように防蟻剤散布パイプ10A、10Bを配管する。そして、このように配管した防蟻剤散布パイプ10A、10Bの周囲に土を戻して、掘った穴を埋める。ここで、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの埋設の際には、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの供給口12を、供給装置2と接続可能なように地上に出したり、地中に埋設された蓋付きの箱の内部に置いて必要時にこの箱の蓋を開いて供給装置2を接続できるようにする。
【0030】
防蟻剤散布パイプ10A、10Bは建築物50の外部に埋設されるため、雨水が防蟻剤散布パイプ10A、10Bにより形成される防蟻バリアー層Bに侵入して、土壌に吸着された防蟻剤Rの有効成分が流出、希釈されることがある。これを考慮して、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの上部に合成樹脂製シート、フィルム等の水等の液体を通さない不浸透性材料の防水シート3を載せた後、その上をコンクリート、敷石、人工芝等の不浸透性材料52で覆ってもよい。
【0031】
既に述べたように、上記関連技術では、多数の散布口を設けた一本のパイプを配管して防蟻剤の散布を行っている。したがって、圧力損失によりパイプの防蟻剤供給口付近の散布口と当該供給口から離れた散布口とでは防蟻剤の流出量に差があり、供給口から離れるに従って散布口での防蟻剤の流出量は小さくなり、防蟻バリアー層に防蟻剤濃度の低い部分或いは防蟻剤の無い空白部分が発生し、防蟻効果の低い部分ができる問題がある。或いは、流出量の少ない部分でも十分な防蟻効果を得るために、全体として過大な量の防蟻剤を注入しなければならないという問題がある。パイプは、強度及び製作能率の点から、散布口は等間隔に配置し、且つその間隔はあまり小さくはできない。このため、上記関連技術では、防蟻バリアー層、特に散布口の中間部で所望の防蟻効果が得られないことが多い。
【0032】
しかしながら、本発明の第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1では、防蟻剤散布パイプ10Aと防蟻剤散布パイプ10Bの2本のパイプがそれぞれ並行に対向して配管され、且つ、防蟻剤散布パイプ10Aの他端11bが防蟻剤散布パイプ10Bの供給口12に、防蟻剤散布パイプ10Bの他端11bが防蟻剤散布パイプ10Aの供給口12にそれぞれ向かうように配管されているため、複数の散布口13のそれぞれの位置における2個の散布口13からの防蟻剤Rの流出量の合計は、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの全長にわたって平準化される。よって、パイプ1本単独の場合よりも少ない量の防蟻剤Rで、防蟻剤Rの切れ目がなく空白部分のない均一で有効且つ十分な防蟻剤濃度と厚みと深さのある防蟻バリアー層Bを建築物50の外周の地中に容易に形成することができる。このような効力のある防蟻バリアー層Bにより、建築物50外部からの白蟻の侵入を効果的に防ぐことができ、また、内部の白蟻やその巣についても、白蟻がこの防蟻バリアー層Bを通過するときに防蟻剤に接触し、巣に持ち帰ることにより、建築物50の床下部の白蟻をも絶滅させることができる。また、効果的な防蟻バリアー層Bを形成できるので、防蟻剤散布装置1を建築物50の床下に配管せずとも、建築物50の床下部を含めて地中の白蟻を駆除することができ、また、散布後も長期にわたって白蟻を忌避することができる。面積の大きい建築物50の床下に配管する必要がないので、複雑な配管も不要となり、配管時及びメンテナンス時の手間、時間、費用等を大幅に削減することができる。
【0033】
防蟻剤Rとして、非忌避性、遅効性殺虫剤(例えば、フィプロニル(バイエル)を有効成分とする水性製剤)を使用した場合、白蟻は巣を地中に作り主に地中を移動するので、防蟻バリアー層を通過し防蟻剤に接触した白蟻が巣に戻り、他の白蟻に連鎖的に作用し、巣全体を駆除することができる。このため、建築物50内部の白蟻に対しても駆除効果があり、基礎を覆う断熱剤の保護にも有効である。これにより、半永久的に防蟻効果を持続させることができる。
【0034】
防蟻剤散布装置1は、建築物50外周のみに設置すればよく、建築物50の床下に設置する必要がないので、新築の場合の他、既設建築物に対しても容易に低コストで設置・施工することができ、適用対象が非常に広い。
【0035】
防蟻剤散布装置1では、経年により防蟻剤効果が低下したときの防蟻剤の再注入・散布も容易に低コストで実施することができる。
【0036】
防蟻剤散布装置1では、地中に散布した防蟻剤Rの効果が薄れる或いは無くなる時期、例えば5年毎に簡単に防蟻剤Rを再注入・散布して、防蟻バリアー層を再構築することができるので、これを定期的に繰り返すことにより半永久的に防蟻効果を維持することができる。
【0037】
供給装置2は、防蟻剤タンク等から送給ポンプを用いて防蟻剤Rを供給するものでもよいし、高位置に置いたタンクのヘッド差を利用して防蟻剤Rを供給するものでもよい。また、供給装置2は、移動可能な専用車等に積載されていてもよい。これにより、防蟻剤散布装置が多数の設置場所に散在していたとしても、専用車等により当該設置個所を巡回することによって非常に容易に且つ短時間で防蟻処理を行うことができる。
【0038】
図4は、本発明の第2実施形態に係る防蟻剤散布装置1Aを建築物50に適用した場合の配管を示す概略図であり、地中から地表に向かって見た図である。
【0039】
第2実施形態に係る防蟻剤散布装置1Aは、防蟻剤散布パイプ10Aに設けられた複数の散布口13と防蟻剤散布パイプ10Bに設けられた複数の散布口13との位置関係のみ第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1と異なり、その他の構成は第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1と同じであるので、同様の構成についての説明は省略する。
【0040】
図4に示すように、防蟻剤散布パイプ10Aに設けられた複数の散布口13の各々は、防蟻剤散布パイプ10A、10Bに沿った方向において、防蟻剤散布パイプ10Bに設けられた複数の散布口13それぞれの中間位置に位置する。
【0041】
散布口13からの液体の流出は、開口方向の流出エネルギーが最大で、側方に対しては開口方向からの角度が広がるに連れて減少する。このため、隣接する散布口13の中間部分、特に散布口13の間隔が広い場合、液体状の防蟻剤Rを浸透、吸着させる地中部の性状によっては、パイプに近い部分に防蟻剤Rの空白部或いは低濃度部が発生する恐れがある。
【0042】
しかしながら、第2実施形態に係る防蟻剤散布装置1Aは、防蟻剤散布パイプ10A、10Bの片方がずらされて、散布口13が互いに相手のパイプの散布口13間のほぼ中央部に来るように配管されているので、隣接する散布口13の中間部分にも十分に防蟻剤Rを散布することができ、よって土壌の防蟻剤濃度をより一層均一化することができる。
【0043】
第2実施形態に係る防蟻剤散布装置1Aを使用した防蟻剤の散布方法は、第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1を使用した防蟻剤の散布方法と同様なので、説明を省略する。
【0044】
第2実施形態に係る防蟻剤散布装置1Aの建築物50への施工方法は、防蟻剤散布装置1の建築物50への施工方法と次の点のみ異なる。即ち、防蟻剤散布装置1Aの防蟻剤散布パイプ10A、10Bは、防蟻剤散布パイプ10Aに設けられた複数の散布口13の各々が、防蟻剤散布パイプ10A、10Bに沿った方向において、防蟻剤散布パイプ10Bに設けられた複数の散布口13それぞれの中間位置に位置するように配管する。
【0045】
図5は、本発明の第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bを建築物50に適用した場合の配管を示す概略図であり、地中から地表に向かって見た図である。
【0046】
第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bは、建築物50の外周を2以上のパイプ群に分割して配管した点のみ第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1と異なり、その他の構成は第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1と同じであるので、同様の構成についての説明は省略する。
【0047】
第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bは、建築物50の外周を第1及び第2パイプ群G1、G2に分割して配管されている。第1パイプ群G1は、防蟻剤散布パイプ10C、10Dから構成され、第2パイプ群G2は、防蟻剤散布パイプ10E、10Fから構成されている。防蟻剤散布パイプ10C、10D及び防蟻剤散布パイプ10E、10Fは、それぞれ第1実施形態の防蟻剤散布装置1で使用する防蟻剤散布パイプ10A、10Bと同様の構成を有するものである。
【0048】
第1パイプ群G1の防蟻剤散布パイプ10Cの供給口12と第2パイプ群の防蟻剤散布パイプ10Eの供給口12と、第1パイプ群G1の防蟻剤散布パイプ10Dの供給口12と第2パイプ群の防蟻剤散布パイプ10Fの供給口12とが、それぞれ1箇所に集まるように、第1及び第2パイプ群G1、G2の防蟻剤散布パイプ10C、10D、10E、10Fが配管されている。また、第1パイプ群G1の防蟻剤散布パイプ10Cの供給口12と第2パイプ群の防蟻剤散布パイプ10Eの供給口12と、第1パイプ群G1の防蟻剤散布パイプ10Dの供給口12と第2パイプ群の防蟻剤散布パイプ10Fの供給口12とは、それぞれ別の供給装置2に接続可能となっている。
【0049】
内径が小さく、長さが長いパイプの場合、配管の摩擦損失のため、必要な防蟻剤供給口での圧力が上昇し、パイプの許容圧力(例えば、水道用塩化ビニールパイプの場合、2.5MPa)を超えることがある。しかしながら、第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bでは、必要な全長を、長さを短縮した2つの第1及び第2パイプ群G1、G2に分割しているので、パイプの許容圧力を超えないようにすることができる。
【0050】
第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bを使用した防蟻剤の散布方法は、第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1を使用した防蟻剤の散布方法と次の点のみ異なる。即ち、供給装置2を2台用意し、それぞれを防蟻剤散布パイプ10C、10E及び防蟻剤散布パイプ10D、10Fの供給口12に接続し、2台の供給装置2から防蟻剤Rを防蟻剤散布パイプ10C、10D、10E、10F内に供給し、散布口13から防蟻剤Rを散布する。
【0051】
第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bの建築物50への施工方法は、防蟻剤散布装置1の建築物50への施工方法と次の点のみ異なる。即ち、第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bは、建築物50の外周を4本の防蟻剤散布パイプ10C、10D、10E、10Fを使用して第1及び第2パイプ群G1、G2に分割して配管する。
【0052】
図6は、本発明の第4実施形態に係る防蟻剤散布装置1Cを建築物50に適用した場合の配管を示す概略図であり、地中から地表に向かって見た図である。
【0053】
第4実施形態に係る防蟻剤散布装置1Cは、2本の防蟻剤散布パイプ10A、10Bの一方の他端と他方の供給口12とが、継ぎ手20等で液密に連結されている点が第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1と異なり、その他の構成は第1実施形態に係る防蟻剤散布装置1と同じであるので、同様の構成についての説明は省略する。
【0054】
図6に示すように、第4実施形態に係る防蟻剤散布装置1Cでは、防蟻剤散布パイプ10Aの他端11bと防蟻剤散布パイプ10Bの供給口12とが、Uベント状継ぎ手等の継ぎ手20で液密に連結されている。連結の仕方はこれに限定されず、両パイプが液密に連結できるような方法であればよい。例えば、1本のパイプを折り曲げ加工してこのような配管のパイプとしても良い。
【0055】
第4実施形態に係る防蟻剤散布装置1Cは、施工の関係で長さの短い部分の処理が必要な場合に特に有用である。
【0056】
図7は、本発明の上記第1乃至第4実施形態に係る防蟻剤散布装置1、1A、1B、1Cにおける、防蟻剤散布パイプ10A〜10Fの散布口13の設けられた部分の断面図を示す。図7(a1)及び(a2)は、1本の防蟻剤散布パイプの散布口13を示す。図7(b1)乃至(b3)は、2本の防蟻剤散布パイプの散布口13を示す。
【0057】
図7(a1)では、防蟻剤散布パイプ10A〜10Fの周壁11c周りにおいて、散布口13が1つ設けられている。図7(a2)では、防蟻剤散布パイプ10A〜10Fの周壁11c周りにおいて、散布口13が互いに離れる方向(例えば、斜め下外側方向)を向いて2つ設けられている。散布口13を2つ設けることで、防蟻剤Rの流出量を増加させ、防蟻バリアー層Bの厚さを増大させることができる。散布口13を設ける位置での穴の数は3個以上でもよく特に限定されないが、穴の数の増加による防蟻剤散布パイプ10A〜10Fの強度低下も考慮して、適当な数の穴を設けるようにする。
【0058】
図7(b1)では、図7(a1)で示した周壁11c周りにおいて1つの散布口13が設けられている防蟻剤散布パイプが2本並行に配管され、それぞれの散布口13が同じ下方(地下に向かう方向)を向いている。また、これら2個の散布口13のうち1つは下方に、もう1つは斜め外側(例えば、斜め下方向)に向くようにしてもよい。図7(b2)では、図7(a1)で示した周壁11c周りにおいて1つの散布口13が設けられている防蟻剤散布パイプが2本並行に配管され、それぞれの散布口13が互いに離れる方向(例えば、斜め下外側方向)を向いている。斜め外側に向くようにすることで、防蟻バリアー層Bの厚さをさらに広げることもできる。図7(b3)では、図7(a2)で示した周壁11c周りにおいて2つの散布口13が設けられている防蟻剤散布パイプが2本並行に配管されている。そして、両防蟻剤散布パイプの1つ目の散布口13は同じ下方(地下に向かう方向)を向いており、2つ目の散布口13は互いに離れる方向(例えば、斜め下外側方向)を向いている。
【0059】
図8は、本発明の第5実施形態に係る防蟻剤散布装置1Dを建築物50に適用した場合の配管等を示す概略図である。第5実施形態に係る防蟻剤散布装置1Dは、白蟻検知器具4を備える点のみ第3実施形態に係る防蟻剤散布装置1Bと異なり、その他の構成は防蟻剤散布装置Bと同じであるので、同様の構成についての説明は省略する。また、第1、第2及び第4実施形態に係る防蟻剤散布装置1、1A、1C付近に白蟻検知器具4を設置してもよい。
【0060】
図8に示すように、防蟻剤Rの散布量が平均より少ない第1及び第2パイプ群G1、G2それぞれの全長の中間点近くに、第1及び第2パイプ群G1、G2に近接して、白蟻の到来の有無、到来数、到来頻度等を検知するための白蟻検知器具4が合計2台設置されている。第1及び第2パイプ群G1、G2からの防蟻剤Rの散布により形成された防蟻バリアー層Bの白蟻への影響は防蟻バリアー層B内部だけでなくその周辺まで及ぶため、白蟻検知器具4における白蟻の到来の有無、到来数、到来頻度等から、防蟻バリアー層Bの防蟻剤Rの残留濃度等を推測することができる。
【0061】
第1及び第2パイプ群G1、G2それぞれの全長の中間点近くに白蟻検知器具4を設置したのは、防蟻剤Rの散布量が平均より少ない防蟻バリアー層Bを基準に防蟻剤Rの残留濃度を推測すれば、より確実で適切な再防蟻処理のタイミングを把握することができるからである。ただし、白蟻検知器具4の設置場所や設置台数は、建築物50の大きさ、構造、敷地の広さ、状態により任意に決めることができ、図8の例に限定されない。例えば、建築物50に対し第1及び第2パイプ群G1、G2の内側に白蟻検知器具4を配置してもよいし、第1及び第2パイプ群G1、G2の一端11a(供給口12)側又は他端11b側に配置してもよい。また、台数を増やして4台の白蟻検知器具4を設置してもよい。
【0062】
図9は、本発明の第5実施形態に係る防蟻剤散布装置1Dの白蟻検知器具4の構成を示す概略図である。白蟻検知器具4は、下部が地中に埋設され、当該下部の少なくとも一部に、土壌は侵入し難いが、白蟻は自由に出入りできるような構成を持つ多数の開口部4dを有する、耐久性のある金属又は合成樹脂製の容器4eを備える。また、白蟻検知器具4は、容器4eの内部に、白蟻の好む餌4c、例えば木片等を備えている。容器4eと餌4cとで検知器具本体4aを構成する。さらに、白蟻検知器具4は、検知器具本体4aの上部に、雨水侵入を防ぎ、内部の確認、白蟻の餌4cの点検、交換が容易にできる開閉可能の蓋4bを備える。餌4cを定期的に外観目視し、餌4cの侵食度合により、白蟻の到来有無、白蟻の到来数、到来頻度等を確認し把握する。この白蟻検知器具4による検知結果から、防蟻バリアー層Bの防蟻剤Rの残留濃度等を推測する。
【0063】
上記では、容器4eの内部に、木片等の白蟻の好む餌4cを入れる例としたが、誘引剤や即効性殺虫剤、遅効性殺虫剤、防蟻剤Rを配合したペレットや成形物、ベイト剤を併用して容器4eの内部に入れてもよい。また、白蟻を検知するのに、電気的なセンサーを用いるような構成としてもよい。ベイト剤は、遅効性で連鎖的に作用して白蟻の巣ごと根絶することができ、防蟻効果を補強することができる。
【0064】
第5実施形態に係る防蟻剤散布装置1Dによれば、定期的に白蟻検知器具4の内部を点検することで、白蟻の到来有無、白蟻の到来数、到来頻度等を確認し把握することができる。そして、この白蟻検知器具4による検知結果から、防蟻バリアー層Bの防蟻剤Rの残留濃度等を推測することができる。したがって、防蟻剤Rの再注入・散布を行う適切な時期を予測、把握することができ、よって、建築物50が白蟻の被害に遭う前に防蟻バリー層Bを適切な時期に効果的に再生することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0066】
例えば、防蟻剤散布パイプの長さ、内径、散布口の直径、散布口の間隔、1つの防蟻剤供給口に対応する防蟻剤散布パイプの全長等は任意に設定可能である。また、上記実施形態では、散布口13が防蟻剤散布パイプ10A、10Bの延伸方向に沿って等間隔で設けられているが、本発明はこれに限定されず、異なる間隔で散布口13を周壁11cに設けてもよい。また、上記実施形態では、複数の散布口13の口径をそれぞれ同一寸法としたが、本発明はこれに限定されず、複数の散布口13の口径をそれぞれ異なる寸法としてもよい。また、上記実施形態では、散布口13の向きを地下に向かう方向としたが、本発明はこれに限定されず、散布口13の向きを地上に向かう方向としてもよい。また、2本の防蟻剤散布パイプの間隔を広げたり、水平、垂直、斜めに配置してもよい。これにより、防蟻バリアー層Bの防蟻剤分布を調整することができる。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B、1C、1D 防蟻剤散布装置
2 供給装置
3 防水シート
4 白蟻検知器具
4a 検知器具本体
4b (検知器具)蓋
4c 餌
4d 開口部
4e 容器
10A、10B、10C、10D、10E、10F 防蟻剤散布パイプ
11a 一端
11b 他端
11c 周壁
12 供給口
13 散布口
14 (防蟻剤散布パイプ)蓋
20 継ぎ手
30 筒
50 建築物
51 基礎
52 不浸透性材料
53 砕石層
54 砕石・玉石
B 防蟻バリアー層
G1 第1パイプ群
G2 第2パイプ群
R 防蟻剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎周辺の地中に少なくとも一部が埋設されて白蟻防除のために使用される防蟻剤散布装置において、
一端に防蟻剤を内部に供給するための供給口が形成され、前記供給口から供給された防蟻剤を外部に流出させるための複数の散布口が前記供給口から他端に向かって周壁に設けられ、前記複数の散布口から流出する防蟻剤の流出量が前記供給口から前記他端に向かうに連れて減少する第1及び第2の防蟻剤散布パイプを備え、
前記第1の防蟻剤散布パイプと前記第2の防蟻剤散布パイプとは、前記第1の防蟻剤散布パイプの他端が前記第2の防蟻剤散布パイプの供給口に、前記第2の防蟻剤散布パイプの他端が前記第1の防蟻剤散布パイプの供給口にそれぞれ向かった状態で、互いに並行に対向して配置されている
防蟻剤散布装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの他端は、それぞれ閉塞されている
請求項1に記載の防蟻剤散布装置。
【請求項3】
前記第1の防蟻剤散布パイプの他端と前記第2の防蟻剤散布パイプの供給口とは、互いに連通している
請求項1に記載の防蟻剤散布装置。
【請求項4】
前記第1の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口と前記第2の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口とは、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプに沿った方向において、それぞれ同位置に位置する
請求項1乃至3の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項5】
前記第1の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口の各々は、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプに沿った方向において、前記第2の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口それぞれの中間位置に位置する
請求項1乃至3何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項6】
前記複数の散布口の口径は、同一である
請求項1乃至5の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項7】
前記複数の散布口は、前記防蟻剤散布パイプに沿った方向において等間隔に設けられている
請求項1乃至6の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項8】
前記複数の散布口は、同一方向を向いている
請求項1乃至7の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項9】
前記第1の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口と前記第2の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口とは、それぞれ異なる方向を向いている
請求項1乃至7の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項10】
前記複数の散布口は、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプそれぞれにおいて、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプに沿った方向において同位置に複数設けられ、
前記同位置に設けられた複数の散布口は、
同一方向を向いた散布口と、
前記第1の防蟻剤散布パイプと前記第2の防蟻剤散布パイプとで異なる方向を向いた散布口と、を含む
請求項1乃至7の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項11】
前記複数の散布口を覆う、防蟻剤を均一分散するための布をさらに備えた
請求項1乃至10の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項12】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプは、防蟻剤の影響を受けた白蟻が巣に帰ってから死亡し、当該死亡した白蟻を食べた他の白蟻が死亡する連鎖作用を有する防蟻剤を散布する
請求項1乃至11の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項13】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプ周辺に配置された、白蟻を検知するための白蟻検知器具をさらに備え、
前記白蟻検知器具は、
白蟻の好む餌と、
誘引性、即効性、遅効性の少なくとも1つを含む薬剤と、
前記餌及び前記薬剤を内部に収容し、下部が地中に埋設され、当該下部の少なくとも一部に土は侵入し難いが白蟻は自由に出入りできるような構成を持つ複数の開口部を有する容器と、
前記容器の上部を覆う蓋と、を有する
請求項1乃至12の何れかに記載の防蟻剤散布装置。
【請求項14】
地中に防蟻剤を散布することにより建築物の白蟻被害を防ぐ防蟻処理方法において、
一端に防蟻剤を内部に供給するための供給口が形成され、前記供給口から供給された防蟻剤を外部に流出させるための複数の散布口が前記供給口から他端に向かって周壁に設けられ、前記複数の散布口から流出する防蟻剤の流出量が前記供給口から前記他端に向かうに連れて減少する第1及び第2の防蟻剤散布パイプを用意し、
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを、前記第1の防蟻剤散布パイプの他端が前記第2の防蟻剤散布パイプの供給口に、前記第2の防蟻剤散布パイプの他端が前記第1の防蟻剤散布パイプの供給口にそれぞれ向かった状態で、互いに並行に対向するように配管し、
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの供給口に防蟻剤を供給可能な状態で、建築物の基礎周辺の地中に埋設し、
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの供給口に防蟻剤を供給して建築物の基礎周辺の地中に防蟻剤を散布する
防蟻処理方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの他端は、それぞれ閉塞されている
請求項14に記載の防蟻処理方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプの供給口が1箇所に集まるように前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを配管する
請求項14又は15に記載の防蟻処理方法。
【請求項17】
前記第1の防蟻剤散布パイプの他端と前記第2の防蟻剤散布パイプの供給口とは、互いに連通している
請求項14に記載の防蟻処理方法。
【請求項18】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを1組として、2組以上の防蟻剤散布パイプの組みで建築物の基礎の全周を囲う
請求項14、15及び17の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項19】
第1組の防蟻剤散布パイプの一方の供給口と第2組の防蟻剤散布パイプの一方の供給口とが1箇所に集まるように、前記第1組及び第2組の防蟻剤散布パイプを配管する
請求項18に記載の防蟻処理方法。
【請求項20】
前記第1の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口と前記第2の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口とが、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプに沿った方向において、それぞれ同位置に位置するように前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを配管する
請求項14乃至19の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項21】
前記第1の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口の各々が、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプに沿った方向において、前記第2の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口それぞれの中間位置に位置するように前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを配管する
請求項14乃至19の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項22】
建築物の基礎の全周を囲うように前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプを配管する
請求項14乃至21の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項23】
前記複数の散布口の口径は、同一である
請求項14乃至22の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項24】
前記複数の散布口は、前記防蟻剤散布パイプに沿った方向において等間隔に設けられている
請求項14乃至23の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項25】
前記複数の散布口は、同一方向を向いている
請求項14乃至24の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項26】
前記第1の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口と前記第2の防蟻剤散布パイプに設けられた複数の散布口とは、それぞれ異なる方向を向いている
請求項14乃至24の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項27】
前記複数の散布口は、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプそれぞれにおいて、前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプに沿った方向において同位置に複数設けられ、
前記同位置に設けられた複数の散布口は、
同一方向を向いて形成された散布口と、
前記第1の防蟻剤散布パイプと前記第2の防蟻剤散布パイプとで異なる方向を向いた散布口と、を含む
請求項14乃至24の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項28】
前記複数の散布口を、防蟻剤を均一分散するための布で覆う
請求項14乃至27の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項29】
埋設配管した前記防蟻剤散布パイプ上部の地表面を水を通さない不浸透性材料で覆う
請求項14乃至28の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項30】
防蟻剤の注入後、防蟻剤の効果が低下したとき、前記供給口より再度防蟻剤を注入して防蟻効果を復活させる
請求項14乃至29の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項31】
前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプは、防蟻剤の影響を受けた白蟻が巣に帰ってから死亡し、当該死亡した白蟻を食べた他の白蟻が死亡する連鎖作用を有する防蟻剤を散布する
請求項14乃至30の何れかに記載の防蟻処理方法。
【請求項32】
白蟻を検知するための白蟻検知器具を少なくとも1つ前記第1及び第2の防蟻剤散布パイプ周辺に配置し、
前記白蟻検知器具を用いて常時又は定期的に白蟻の存在を監視し、
白蟻の存在の監視結果に基づいて防蟻剤を再度散布する時期を決定し、
決定した時期に防蟻剤を散布する
請求項14乃至31の何れかに記載の防蟻処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−102511(P2012−102511A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251052(P2010−251052)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(510297211)フリージアソリューション株式会社 (1)
【Fターム(参考)】