説明

建築物倒壊防止装置

【課題】安価な手法で建築物の倒壊を少しでも長く防ぐことのできるような倒壊防止の装置を提案する。
【解決手段】本発明で提案する建築物倒壊防止装置は、建築物1の外壁に基端部11がヒンジ接続されて垂下した支柱体10を含んで構成され、当該建築物が傾いたときに、支柱体10がヒンジ接続を軸に外壁から離れる方へ揺動すると共にその先端部15が伸長して接地し、該伸長状態を維持する支柱体10が建築物の傾きに抵抗することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の建築物への設置に適した倒壊防止用補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等、異常な外部の影響で個人住宅などの建築物が倒壊し始めたときに生存空間を確保する目的で、建築物中の一部屋を補強してシェルター化する倒壊防止技術が公開されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3020095号公報
【特許文献2】実用新案登録第3129376号公報
【特許文献3】特開2007−016573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記倒壊防止技術は確かに優れた技術であるが、部屋の軸組や壁の改造を伴うため、個人住宅で施工に踏み切るには、未だ大がかりでコスト的に見直す余地があり、広く普及するには至っていない。本発明はこの点に鑑みたもので、より安価な手法で建築物の倒壊を少しでも長く防ぐことのできるような倒壊防止の装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明で提案する建築物倒壊防止装置は、建築物の外面に基端部がヒンジ接続されて垂下した支柱体を含んで構成され、当該建築物が傾いたときに、前記支柱体が前記ヒンジ接続を軸に前記外面から離れる方へ揺動すると共にその先端部が伸長して接地し、該伸長状態を維持する支柱体が前記建築物の傾きに抵抗することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
上記提案に係る建築物倒壊防止装置は、建築物が地震等の異常な外部の影響で傾くときには、支柱体が揺動且つ伸長して建築物に対するつっかい棒のように働き、建築物の傾きに抵抗して倒壊を防ぐ機能を発揮する。当該建築物倒壊防止装置は、建築物の外面において支柱体を揺動可能にヒンジ接続するといった簡素な施工で設置可能であり、建築物の外側からの施工だけで済み、内壁や天井を剥がしたりといった作業が不要である。すなわち、上述のシェルター化するような倒壊防止技術に比べて簡素且つ安価に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜4に建築物倒壊防止装置の実施形態につき図示して説明する。
【0007】
本例の建築物1は木造軸組式で、その外壁2に、建築物倒壊防止装置における支柱体10の基端部11をヒンジ接続してある。具体的には、ヒンジ接続をなすための断面コ字状のブラケット12を、外壁2を貫通して柱3及び桁4へ達する木ねじ5で固定し、該ブラケット12の内側に、支柱体10の基端部11をボルト等にて揺動可能に軸支している。これにより支柱体10は、正常時は外壁2に沿って垂下した状態にキープされる。
【0008】
耐候性に優れた金属や樹脂製の支柱体10は、外筒13と、該外筒13内に摺動可能に挿入された突出棒14と、を備えたテレスコピック型であり、外筒13に基端部11を有すると共に突出棒14に先端部15を有する。突出棒14は、例えば特開平10−096237号公報や特開平10−318327号公報にあるようなラチェット機構によって、一度外筒13から飛び出ると引っ込む方へは戻れない仕組みで外筒13に組み入れてあり、これにより支柱体10は、一旦伸長すると、その伸長状態を維持できるようになっている。ただし、ラチェット爪の係合を解除することで、元の長さに縮めることができるようにしてあると、再利用できるので好ましい。また、突出棒14は、自重による落下で外筒13から飛び出すもの、あるいは、外筒13内に組み込まれたコイルバネによる付勢力で強制的に飛び出させるものとすることができる。
【0009】
このような支柱体10を、正常時には外壁2に沿って垂下した状態に保持するために、平板状の係止部材16が設けられている。係止部材16は、外壁2における地面から所定の高さ、本例の場合では土台の高さに設けられている。この係止部材16は、突出棒14が外筒13から飛び出す前の、すなわち伸長する前の縮んでいる支柱体10の先端(=突出棒14の先端)を載せ、摩擦力で係止する。したがって、地震などで建築物1が傾き、支持体10を揺動させる力が加わって摩擦力を上回ると、係止が解除され、支柱体10は、係止部材16を外れて外壁2から離れる方へ揺動する。ただし、当該手法に限らず、建築物1が傾いたときに係止が外れる仕組みは、他にも各種存在する。
【0010】
このようにして支柱体10は、ヒンジ接続を軸にして、建築物1が傾いたときに外壁2から離れる方へ揺動し、該揺動と共に突出棒14が外筒13から飛び出すので先端部15が伸長して接地する。そして、ラチェット機構により支柱体10は伸長状態を維持するので、該支柱体10が建築物1の傾きに抵抗するつっかい棒となる。つっかい棒として地面に当接する突出棒14の先端形状は、地面上を滑ることのないように、スキーストックの先端形状のようにしておくとよい。
【0011】
建築物の耐震補強構造として、例えば特開平09−137609号公報のように、柱に沿わせて金属製補強部材を固定する耐震補強構造がある。しかし、これら耐震補強構造の考え方は、建築物が傾かないように踏ん張る剛性をもたせようという矯正の思想に基づくもので、地震の揺れの力が上回って建築物が倒壊し始めると、補強構造もろとも崩れてしまう。つまり、地震の揺れに耐えて建築物が倒壊しないように踏ん張ることはできるが、一旦倒壊の始まった建築物を支えることはできない。これに対し、本実施形態の建築物倒壊防止装置は、地震に耐えるように最初から建築物を支えているのではなく、建築物が傾き始めたときに出現して(初めて機能を発揮して)支柱体10がつっかい棒となり、生存空間を保持するべく倒壊を遅らせるという発想のものである。したがって、従来の耐震補強構造と併用するといっそう好ましいと言える。
【0012】
当該建築物倒壊防止装置は、建築物1の外面において支柱体10を揺動可能にヒンジ接続する(つまりブラケット12を固定する)といった簡素な施工で設置可能であり、建築物1の外側からの施工だけで済み、内壁や天井を剥がしたりといった作業が不要である。すなわち、従来技術に比べて簡素且つ安価に施工することができるし、工期も短い。
【0013】
支柱体10は、上記構造の他、揺動方向へ付勢しておくこともできる(図3)。この場合、自重で揺動する方式よりも外壁1との角度θを開いてより斜めにつっぱる形態とすることができる。その付勢は、ヒンジ軸に設けたねじりコイルバネ等で付与するようにすればよい。
【0014】
支柱体10を設ける本数は、図4に示すように複数とすることができる。
【0015】
図4(A)の場合は、建築物1の角部、すなわち外壁2の出隅部に、二本の支柱体10を設けている。出隅部に設けることにより、二本の支柱体10は、それぞれ異なる揺動方向へ揺動するように設けることができ、二方向の建築物1の傾きに対してつっかい棒として機能することができる。また、図4(B)の場合は、同じく外壁2の出隅部に設けた例であるが、図4(A)の二本の支柱体10の間にさらにもう一本の支柱体10を設け、計三本の支柱体10としている。このように本数を増やすことで、建築物1が傾いたときの荷重を分散させて受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を示した説明図。
【図2】支柱体基端部について拡大した図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示した説明図。
【図4】支柱体の設置本数について例示した図。
【符号の説明】
【0017】
10 支柱体
11 基端部
12 ブラケット
13 外筒
14 突出棒
15 先端部
16 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外面に基端部がヒンジ接続されて垂下した支柱体を含んで構成され、
当該建築物が傾いたときに、前記支柱体が前記ヒンジ接続を軸に前記外面から離れる方へ揺動すると共にその先端部が伸長して接地し、
該伸長状態を維持する支柱体が前記建築物の傾きに抵抗することを特徴とする建築物倒壊防止装置。
【請求項2】
伸長前の前記支柱体の先端を係止し且つ前記支柱体の揺動時には前記係止を解除する係止部材が、前記建築物の外面における地面から所定の高さに設けられていることを特徴とする請求項1記載の建築物倒壊防止装置。
【請求項3】
前記支柱体は、前記揺動方向へ付勢されていることを特徴とする請求項2記載の建築物倒壊防止装置。
【請求項4】
前記支柱体は、前記建築物における出隅部分に複数本設けられ、該各支柱体の前記揺動方向が相互に異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の建築物倒壊防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−144379(P2009−144379A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321782(P2007−321782)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(596061694)グランデータ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】