説明

建築物用無機質仕上塗材組成物

【課題】 耐熱性及び耐火性を備え、防水性及び吸放湿性に優れると共に、常温の固化で充分な強度が得られ、乾燥収縮が小さくヒビ割れのない、施工性を向上させた建築物用無機質仕上塗材組成物を提供する。
【解決手段】 焼成珪藻土、粘土、骨材、ポルトランドセメント、石膏プラスター、ドロマイトプラスター、膨張性セメント混和材を含み、焼成珪藻土と粘土の合計100重量部に対して、骨材が100〜400重量部及びポルトランドセメントが50〜100重量部である。また、石膏プラスターとドロマイトプラスターの合計は、ポルトランドセメント100重量部に対して2〜12重量部であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外装や屋上などにコテ塗り若しくは吹付け等で施工する無機質仕上塗材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の高気密化及び高断熱化に伴い、結露やカビ等による住環境の悪化が問題となっている。一方、珪藻土を含む建材は、湿度を調節することで結露やカビの発生を抑制する効果を有することで知られているが、この吸放湿性能に加え、適度な強度と防水性能を有することから、内壁のみならず外壁や屋上の防水にも利用されている。
【0003】
例えば、特許第1842511号公報には、珪藻土を焼成して粉末としたものを高分子バインダーで固化させた塗材について、多孔質で吸水及び保水作用を有する珪藻土が防水材として機能することが記載されている。しかし、高分子バインダーを固化剤として用いる方法では、塗布量を厚くして防水性を高めるために骨材を配合すると、基材との付着性やコテ塗りの作業性が悪くなるという問題点があった。
【0004】
特開2002−80752号公報には、焼成珪藻土、骨材、セメント、繋ぎ材及びセルロースファイバーを原材料とする外壁用又は内壁用の塗料組成物、並びに、焼成珪藻土、骨材、石膏プラスター、及び繋ぎ材を原材料とする内壁用の塗料組成物が記載されている。これらの塗料組成物は、セメント又は石膏プラスターを固化剤の主体とするため、骨材を配合することによって塗布量を厚くすることが可能となり、また、骨材の一部に球状のパーライトを用いることで、コテ塗りの施工性が容易となる利点がある。
【0005】
しかしながら、上記特開2002−80752号公報記載のセメントを含む塗料組成物は、乾燥収縮によるヒビ割れが発生し易く、そのため防水性の低下や基材から剥落する危険性を有している。これを防止するため、上記組成物にはセルロースファイバーを配合しているが、有機物を含むことによって耐熱性や耐火性を低下させるという問題点があった。また、セメントの代りに石膏プラスターを固化剤とする上記組成物では、ヒビ割れ防止にセルロースファイバーを配合する必要はないが、石膏は水溶性であるため防水性に劣るという問題があった。
【0006】
更に、特開2002−316861号公報には、珪藻土や軽量コンクリートで代表される多孔質物質に、Si、Na、Li、Al、Mgの1種以上の化合物からなるバインダーを混合して得られる調湿建材が記載されている。この調湿建材の代表的なバインダーのひとつである珪酸ソーダのような水溶性バインダーは、常温の固化では水との接触によってバインダーが溶出して防水性が低下するため、固化条件として40℃以上での乾燥を必要としている。しかし、コテ塗り又は吹付けの作業現場では、40℃以上の乾燥条件を与えることは難しいため、所定の性能が得られないという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特許第1842511号公報
【特許文献2】特開2002−80752号公報
【特許文献3】特開2002−316861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、耐熱性及び耐火性を備え、防水性及び吸放湿性に優れると共に、常温での固化により充分な強度が得られ、乾燥収縮が小さくヒビ割れを低減することができ、コテ塗り若しくは吹付けの施工性を向上させた建築物用無機質仕上塗材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明が提供する建築物用の無機質仕上塗材組成物は、焼成珪藻土、粘土、骨材、ポルトランドセメント、石膏プラスター、ドロマイトプラスター、膨張性セメント混和材を含み、該焼成珪藻土と粘土の合計100重量部に対して、骨材が100〜400重量部及びポルトランドセメントが50〜100重量部であることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の建築物用無機質仕上塗材組成物においては、前記粘土の配合比が、粘土/(焼成珪藻土+粘土)で5〜30重量%であることが好ましい。前記石膏プラスターとドロマイトプラスターの合計の配合比が、ポルトランドセメント100重量部に対して2〜12重量部であることが好ましい。また、前記膨張性混和材の配合比が、ポルトランドセメント100重量部に対して5〜30重量部であることが好ましい。
【0011】
更に、上記本発明の建築物用無機質仕上塗材組成物においては、前記骨材が粒径0.01〜5.0mmの珪砂とパーライトからなり、且つ骨材全体の30〜50重量%がパーライトであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コテ塗り若しくは吹付けの施工性に優れ、建築物の内外壁等に厚塗りが可能であって、しかも常温の固化で充分な強度が得られ、乾燥収縮が小さく、ヒビ割れの低減が可能な建築物用の無機質仕上塗材組成物を提供することができる。この無機質仕上塗材組成物を用いることによって、建築物の内外壁や屋上などに、優れた耐熱性及び耐火性を有し、防水性及び吸放湿性に優れた仕上げ塗装を簡単に施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の無機質仕上塗材組成物は、焼成珪藻土、粘土、骨材、ポルトランドセメント、石膏プラスター、ドロマイトプラスター、及び膨張性セメント混和材を組み合わせて構成され、水を混合することによって施工性に優れた塗材混練物となる。この塗材混練物は、通常のごとくコテ塗りや吹付けなどによって、建築物の内外装や屋上などに塗付けることができる。塗付けられた塗材混練物は常温で固化し、その際の乾燥収縮が小さいためヒビ割れがなく、耐火性及び耐熱性、防水性、吸放湿性、及び強度に優れた仕上げ塗装となる。
【0014】
本発明において、無機質仕上塗材組成物に用いる焼成珪藻土は、珪藻土を例えば1000℃以下の温度で焼成したものであり、微小な細孔を有する多孔質材料であって、防水性と吸放湿性に優れている。
【0015】
粘土は多孔質材料であり、水で混練することにより増粘作用を発揮するので、コテ塗り時の伸びが良くなり、吹付け時のダレを低減することができる。また、粘土の適量の使用は塗材の乾燥時間の調整や強度の向上に寄与すると共に、微小な細孔を有する粘土が珪藻土粒子間を埋めることにより、塗材の吸放湿性能も向上することが分った。使用する粘土としては、結晶の層間に水が入ることにより膨張する膨張性粘土鉱物、特にモンモリロナイトを主成分とするベントナイトや、バーミキュライト、ハロイサイトなどが望ましい。
【0016】
粘土の配合比を、粘土/(焼成珪藻土+粘土)で5〜30重量%とすることによって、コテ運びが格段に楽になるだけでなく、吹付け時のダレも少なくなるので好ましい。上記粘土の配合比が5重量%未満ではコテ塗り性などの施工性の顕著な改善が見られず、また30重量%を超えると塗材の乾燥収縮が大きくなり、クラックが発生しやすくなると共に、相対的に焼成珪藻土の配合量が減るために吸放湿性が低下する。
【0017】
骨材は、強度及び比重を制御するために添加するものであり、珪砂やパーライト等の天然及び人工の骨材を用いることができる。これらの骨材は、その粒径が0.01〜5.0mmの範囲が好ましく、粒径毎に市販されている左官用珪砂などを用いて、粒径分布を適宜変化させて用いることができる。骨材の粒径が5.0mmを超えると、基材と塗材の付着性が損なわれ、剥落の恐れが生じやすくなる。また、骨材の粒径が0.01mm未満では、必要な混合水量が増大するため、乾燥時の収縮が大きくなり、施工性や強度が低下する。
【0018】
また、骨材の配合比は、焼成珪藻土と粘土の合計100重量部に対して、100〜400重量部の範囲とする。この骨材の配合比が100重量部未満では、塗材の比重が低くなり且つ強度が低下する。逆に骨材の配合比が400重量部を超えると、焼成珪藻土の配合量が相対的に低下するため、吸放湿性や防水性が低下する。また、骨材は好ましくは珪砂とパーライトからなり、その場合の骨材全体の30〜50重量%がパーライトであることが好ましい。パーライトは施工時のコテ運びを良好にすると共に、発泡体であるために断熱性も期待できる。しかし、パーライト量が50重量%を超えると比重が低くなると共に強度が低下し、30重量%未満では塗付け時のコテ運びが悪くなる。
【0019】
ポルトランドセメントは、水和反応によりCSHゲルを生成し、これが珪藻土と骨材の結合材として作用し、中長期の強度発現に寄与する。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどが使用できる。また、ポルトランドセメントの配合比は、焼成珪藻土と粘土の合計100重量部に対して、50〜100重量部とする。この配合比が100重量部を超えると、施工時のコテ運びが重くなり、ダレを生じやすくなるうえ、乾燥収縮によるヒビ割れが発生しやすくなる。逆に配合比が50重量部未満では、塗材の強度と防水性が低下する。
【0020】
石膏プラスターは、急速な水和反応により嵩の大きい二水セッコウの針状結晶を生成することにより、施工時の塗材のダレを防止し、塗材の初期強度を発現させると共に、セメントの水和収縮に対する収縮低減材としても作用する。かかる石膏プラスターとしては、通常の左官用の材料であってよく、α型半水セッコウ品、β型半水セッコウ品、及び無水セッコウ品が使用できる。
【0021】
また、ドロマイトプラスターは、施工後に空気中の炭酸ガスと反応して炭酸塩の結晶を生成し、長期の強度を発現する結合材として作用する。ドロマイトプラスターとしては、左官用の材料を用いることができる。通常の場合、石膏プラスターとドロマイトプラスターを混合して使用するが、石膏プラスターと消石灰とドロマイトプラスターからなる混合石膏プラスターを使用することもできる。
【0022】
上記石膏プラスターとドロマイトプラスターを合わせた合計の配合量は、ポルトランドセメント100重量部に対して2〜12重量部が好ましい。両者の合計配合量が12重量部を超えると、必要な混合水分量が多くなると共に、施工性が悪化する。また、2重量部未満では施工時に塗材のダレが生じやすく、また乾燥収縮が大きくなると共に、長期強度が低下する傾向となる。尚、石膏プラスターとドロマイトプラスターの割合は特に制限されないが、通常は等量とすることが望ましい。
【0023】
膨張性セメント混和材は、水和反応により嵩の大きいエトリンガイトの針状結晶や消石灰の板状結晶を生成させることにより、収縮低減材及び防水材として作用する。膨張性セメント混和材の配合量は、ポルトランドセメント100重量部に対して5〜30重量部が好ましい。この配合量が30重量部を超えると、膨張圧が大きすぎるために、塗材の強度が低下する。また、5重量部未満では、乾燥収縮が大きくなる傾向があるため好ましくない。
【0024】
上記した本発明の無機質仕上塗材組成物は、各原料の組み合わせによって、建築物用の仕上塗材として必要な特性をバランスよく備えている。即ち、有機質材料を含まず、全て無機質材料を使用することで耐熱性及び耐火性を向上させ、且つ焼成珪藻土、粘土、膨張性セメント混和材の使用により、防水性と吸放湿性を向上させている。また、珪砂、ポルトランドセメント、ドロマイトプラスターの使用で常温固化と充分な強度を発現させ、同時に石膏プラスターと膨張性セメント混和材の使用により乾燥収縮率を小さくし、仕上塗面のヒビ割れの低減を図っている。更には、粘土、パーライト、石膏プラスターの使用によって、コテ塗り若しくは吹付けの施工性を向上させている。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
焼成珪藻土として昭和化学(株)製のラジオライトファインフローA(商品名)、粘土としてベントナイトからなる(株)ホージュン製の榛名(商品名)を用いた。骨材としては、左官用珪砂3号、4号及び5号を等量混合した珪砂と、粒径0.5〜1.5mmと粒径0.01〜0.5mmのものを等量混合したパーライトを用いた。石膏プラスターは吉野石膏(株)製のB−YNプラスター(商品名)を、ドロマイトプラスターは田源石灰工業(株)製のドロマイトプラスターを用い、両者を等量混合して使用した。また、膨張性セメント混和材としては、電気化学工業(株)製のデンカCSA♯10(商品名)を使用した。
【0026】
上記の各原料を用いて、焼成珪藻土85重量部と粘土15重量部(合計100重量部)を混合し、これに骨材として珪砂200重量部とパーライト200重量部(合計400重量部)を加えた。更に、市販の普通ポルトランドセメント50重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターをプラスター合計で1重量部、及び膨張性セメント混和材3重量部を加えて混合した。この無機質仕上塗材組成物について、配合を下記表1にまとめて示した。
【0027】
次に、上記組成物に水を加えて混練し、試験用型枠に成形し、そのまま常温で固化させて試験体を得た。試験体は試験実施まで20℃、相対湿度90%で養生した後、下記の各試験に供した。即ち、曲げ強度、圧縮強度、及び長さ変化についてはJIS A 6916に規定された方法により、また防水性についてはJIS A 6909に規定された透水試験A法により評価した。吸放湿性については、縦20cm×横20cm×厚さ10mmの試験体を20℃及び相対湿度40%で恒量とした後、20℃及び相対湿度80%で24時間保持した時の平方メートル当たりの重量増加量を吸湿量とした。また、この吸湿後の試験体を更に20℃及び相対湿度40%で24時間保持し、その時の平方メートル当たりの重量減少量を放湿量として評価した。
【0028】
上記試験体の試験結果について、下記表2に示した。更に、上記した無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した塗材混練物を、実際に左官職人の手でコンクリート壁にコテ塗りし、施工性を評価した。即ち、塗材混練物をコテ塗りした際の伸び、粘り、ダレの有無などから、施工性を総合的に評価した。その結果を、施工性が良い(○)、普通(△)、及び悪い(×)の3段階で評価して、下記表2に併せて示した。
【0029】
[実施例2]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土95重量部、粘土5重量部、珪砂240重量部、パーライト160重量部、普通ポルトランドセメント100重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計8重量部、及び膨張性セメント混和材20重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0030】
この実施例2の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0031】
[実施例3]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土85重量部、粘土15重量部、珪砂168重量部、パーライト104重量部、普通ポルトランドセメント83重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計6重量部、及び膨張性セメント混和材15重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0032】
この実施例3の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0033】
[実施例4]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土70重量部、粘土30重量部、珪砂130重量部、パーライト80重量部、普通ポルトランドセメント73重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計5重量部、及び膨張性セメント混和材12重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0034】
この実施例4の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0035】
[実施例5]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土80重量部、粘土20重量部、珪砂68重量部、パーライト32重量部、普通ポルトランドセメント97重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計11重量部、及び膨張性セメント混和材24重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0036】
この実施例5の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0037】
[比較例1]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土95重量部、粘土5重量部、珪砂300重量部、パーライト120重量部、普通ポルトランドセメント120重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計10重量部、及び膨張性セメント混和材20重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0038】
この比較例1の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0039】
[比較例2]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土90重量部、粘土10重量部、珪砂50重量部、パーライト20重量部、普通ポルトランドセメント40重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計4重量部、及び膨張性セメント混和材5重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0040】
この比較例2の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0041】
[比較例3]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土100重量部、珪砂130重量部、パーライト80重量部、普通ポルトランドセメント73重量部、石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計5重量部、及び膨張性セメント混和材12重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0042】
この比較例3の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0043】
[比較例4]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土85重量部、粘土15重量部、珪砂130重量部、パーライト80重量部、普通ポルトランドセメント78重量部、及び膨張性セメント混和材12重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0044】
この比較例4の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0045】
[比較例5]
実施例1と同様にして、焼成珪藻土85重量部、粘土15重量部、珪砂130重量部、パーライト80重量部、普通ポルトランドセメント85重量部、及び石膏プラスターとドロマイトプラスターを合計5重量部からなる無機質仕上塗材組成物を作製した。
【0046】
この比較例5の無機質仕上塗材組成物の配合を、下記表1にまとめて示した。また、この無機質仕上塗材組成物に水を加えて混練した後、実施例1と同様に試験体の作製及び評価を実施すると共に、コテ塗りによる施工性を評価して、得られた結果を下記表2に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
以上の結果から分るように、本発明による実施例1〜5の各無機質仕上塗材組成物については、施工性に若干のバラツキはあるが、建築物用の仕上塗材として十分とされる物性値、即ち曲げ強度3.0MPa以上、圧縮強度5.0MPa以上、長さ変化0.15%以下、防水性(試験体を取り付けた試験装置のシリンダ内の水柱の試験前と60分後の高さの差)2.0cm以下、並びに吸放湿性での吸湿量60g/m以上及び放湿量58g/m以上を、全て満たしている。特に実施例3は、原料の配合が最も望ましい範囲内にあるため、全ての物性値が優れ且つコテ塗りの施工性も良好であることが分った。
【0050】
一方、比較例1の無機質仕上塗材組成物は、骨材(特に珪砂)と普通ポルトランドセメントが多いため、吸放湿性が低下し、コテ塗りが重くなって施工性が非常に悪かった。比較例2は、骨材が少ないため、吸放湿性は向上するが、強度が低下し、またコテ塗り時の粘りが強くなった。比較例3では、粘土を使用していないため、吸放湿性が低下し、コテ塗り時の伸びも非常に悪かった。
【0051】
また、比較例4は、石膏プラスターとドロマイトプラスターを使用していないため、強度及び長さ変化が悪化すると同時に、吸放湿性が低下し、コテ塗り時にダレが生じた。比較例5では、膨張性セメント混和材を使用していないため、防水性、吸放湿性、並びに長さ変化が悪化し、コテ塗りが重くなって施工性が悪かった。総じて比較例1〜5の無機質仕上塗材組成物は、物性や施工性が不十分なため、建築物用の仕上塗材として使用出来ないことが分った。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成珪藻土、粘土、骨材、ポルトランドセメント、石膏プラスター、ドロマイトプラスター、膨張性セメント混和材を含み、該焼成珪藻土と粘土の合計100重量部に対して、骨材が100〜400重量部及びポルトランドセメントが50〜100重量部であることを特徴とする建築物用無機質仕上塗材組成物。
【請求項2】
前記粘土の配合比が、粘土/(焼成珪藻土+粘土)で5〜30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物用無機質仕上塗材組成物。
【請求項3】
前記石膏プラスターとドロマイトプラスターの合計の配合比が、ポルトランドセメント100重量部に対して2〜12重量部であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の建築物用無機質仕上塗材組成物。
【請求項4】
前記膨張性混和材の配合比が、ポルトランドセメント100重量部に対して5〜30重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の建築物用無機質仕上塗材組成物。
【請求項5】
前記骨材が粒径0.01〜5.0mmの珪砂とパーライトからなり、且つ骨材全体の30〜50重量%がパーライトであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の建築物用無機質仕上塗材組成物。



【公開番号】特開2006−28339(P2006−28339A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209337(P2004−209337)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【出願人】(504274790)ディ・イー・ピー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】