説明

建築物管理システム及びその方法

【課題】その場に赴くことなく建築物の経時情報を蓄積し、建築物の改修時期を容易に見積れる建築物管理システム及び方法の提供。
【解決手段】複数の建築物から情報を集積し、改修時期を判定するシステム建築物Aに配置された無線チップ100より、リーダライタ装置(R/W)110(A)を用いて、初期情報及び経時情報を取得し、リーダライタ装置110(A)から建築物の管理者等が所有する情報処理装置120へ取得した情報を送信する。管理者が所有する情報処理装置120は、リーダライタ装置とのインターフェース部121、演算処理部122、およびデータベース123を少なくとも有する。インターフェース部121を介して取得した情報は、必要に応じて演算処理部122により処理された後、データベース123へ格納される。また、演算処理部122は、データベース123へ格納された情報を処理して、改修を行う必要性の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いて建築物の経時状態を管理し、建築物の改修を促すための建築物管理システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路やビル等の建築物の耐久性、耐震性を高めることは重要な課題である。近年、さまざまな技術によって、耐震性や耐久性の高い材質や技術が開発されている。しかし道路やビル等の建築物は、時間の経過とともに老朽化が生じてしまう。老朽化は周辺環境にも大きな影響を受けるため、同性能の材料を用いる場合であっても、建築物毎にその状態判断及び管理が必要とされる。
【0003】
建物の生涯ケアとして、建物内の設備機器を総合的に管理、診断するシステムが提案されている(特許文献1参照)。このシステムを用いると、建築物や設備機器毎に設置の位置、年月日、耐用年数等を含む機器情報データからなる台帳と、データを基に建築物等の点検を管理するメンテナンススケジュール管理手段と、メンテナンス履歴管理手段と、建築物等の残存寿命を算出する残存寿命診断手段と、故障診断手段とを備え、建築物等の診断及び不具合持の故障診断を行うことができる。
【0004】
また建築物についての改修及び改修に関する判定を容易且つ正確に行うためのシステムが提案されている(特許文献2参照)。このシステムは、判定のためのデータを専用ソフトに入力しておき、調査データを入力した後、入力データの集計を行って判定結果を出力するものである。
【特許文献1】特許第3025818号公報
【特許文献2】特開2003−228612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシステムでは、建築物の経時情報を得るためには、その場へ赴く必要があった。また建築物に関する情報をシステムへ手入力する必要があり、入力時のミスも懸念される。そしてこれらを行うための人員が必要とされ、時間やコストを浪費してしまった。
【0006】
そこで本発明は、その場に赴くことなく建築物の経時情報を蓄積することを可能とし、建築物の改修時期を容易に見積もることができる建築物管理システム及びその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を鑑み本発明は、建築物に配置された無線チップを有する建築物管理システム及びその方法を特徴とする。無線チップは無線通信を可能とする。このような無線チップから情報を入手することができるため、その場に赴くことなく当該情報を無線通信によって得ることができる。そして、当該情報を手入力する必要がない。そのため、これらに要する人員や当該作業に伴う入力ミスを低減することができる。
【0008】
本発明において、建築物に配置された無線チップはメモリ装置及びセンサーが設けられている。無線チップは、無線通信によって電力が供給され、また命令(コマンド)を受信することで、メモリ装置への書き込み、読み出しを行い、またセンサーを動作させることができる。そしてメモリ装置に、センサーからの情報を蓄積することが可能となる。蓄積された情報は、無線通信によって管理者へ送信することができる。
【0009】
このようなセンサーとして、温度センサー、圧力センサー、湿度センサー等の建築物の状態を把握するために必要なセンサーを挙げることができる。建築物は温度変化により膨張と収縮を繰り返し、これに影響を受けながら老朽化してゆく。そのため温度の情報は、建築物の老朽化を把握する上で重要な情報ということができる。また、湿度や圧力も同様に老朽化に影響を与える要因と考えることができる。このように建築物の老朽化に影響を与える要因をストレスと呼ぶことにする。そして温度、圧力又は湿度といった情報をストレス情報と呼ぶ。
【0010】
なお、内部に電池等を有して電力供給を行うことができ、無線通信で情報の送受信のみを行うことも可能である。
【0011】
本発明のメモリ装置は、無線チップが設けられた基板上に一体形成することができる。そのため、無線チップの低コスト化を図ることができる。
【0012】
本発明において、メモリ装置は一度だけ書込みができ消去が不可能な構造を有するメモリ(以下、ライトワンスメモリと呼ぶ)を有することを特徴とする。ライトワンスメモリは、書き換え不能であって追記可能な不揮発性メモリである。
ライトワンスメモリの素子は上部電極、メモリ材料層、下部電極を有する。抵抗値の高い初期状態と、電気的作用、又は熱的作用によって、メモリ材料層の状態を変化させることで得られる抵抗値の低い状態からなる「0」「1」の状態を有し、これらによって情報を格納することができる。
【0013】
以下に本発明の具体的な構成を示す。
【0014】
本発明は、無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、無線チップを建築物に配置するステップと、無線通信を用いて、メモリに建築物に関する経時情報を、一定期間毎に書き込むステップと、メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、情報に基づき、建築物の改修時期を決定するステップと、を有することを特徴とする建築物管理方法である
【0015】
無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、無線チップを建築物に配置するステップと、電波に基づき実行されるコマンドにより、メモリに建築物に関する経時情報を、一定期間毎に書き込むステップと、リーダライタ装置により、メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、を有することを特徴とする建築物管理方法。
【0016】
別の形態の本発明は、無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、無線チップを建築物に配置するステップと、無線通信を用いて、無線チップが有するセンサー装置を動作させ、当該センサー装置から得られた建築物に関する経時情報をメモリに、一定期間毎に書き込むステップと、メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、情報に基づき、建築物の改修時期を決定するステップと、を有することを特徴とする建築物管理方法である。
【0017】
別の形態の本発明は、無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、無線チップを建築物に配置するステップと、電波に基づき実行されるコマンドにより、無線チップが有するセンサー装置を動作させ、当該センサー装置から得られた建築物に関する経時情報をメモリに、一定期間毎に書き込むステップと、リーダライタ装置により、メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、情報に基づき、建築物の改修時期を決定するステップと、を有することを特徴とする建築物管理方法である。
【0018】
別の形態の本発明は、無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、無線チップを建築物に配置するステップと、無線通信を用いて、無線チップが有する共振回路を介して電源回路に電力が供給されるステップと、無線通信によりコマンドを実行し、センサー装置を動作させ、当該センサー装置から得られた建築物に関する経時情報をメモリに、一定期間毎に書き込むステップと、メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、情報に基づき、建築物の改修時期を決定するステップと、を有し、センサー装置は一定期間毎に動作させることを特徴とする建築物管理方法である。
【0019】
また本発明は、以下に示す建築物管理システムを提供することができる。
【0020】
本発明の建築物管理システムは、建築物に配置された無線チップと、無線チップが有する、建築物に関する初期情報、及び経時情報が記憶されたメモリと、無線通信によりメモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、リーダライタ装置を介してメモリから収集された情報が格納される情報処理装置とを有し、情報処理装置を用いて、情報に基づき建築物の改修時期を決定することを特徴とする。
【0021】
別の形態の本発明の建築物管理システムは、建築物に配置された無線チップと、無線チップが有するセンサー装置と、建築物に関する初期情報、及びセンサー装置によって得られた経時情報が記憶されたメモリと、無線通信によりメモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、リーダライタ装置を介してメモリから収集された情報が格納される情報処理装置とを有し、情報処理装置を用いて、情報に基づき建築物の改修時期を決定することを特徴とする。
【0022】
別の形態の本発明の建築物管理システムは、特定の第1領域に設けられた建築物に配置された第1の無線チップと、第1の無線チップが有するセンサー装置と、建築物に関する初期情報及びセンサー装置によって得られた経時情報が記憶されたメモリと、無線通信によりメモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、リーダライタ装置を介してメモリから収集された情報が格納される第1の情報処理装置と、特定の第2領域に設けられた建築物に配置された第2の無線チップと、第2の無線チップが有するセンサー装置と、建築物に関する初期情報及びセンサー装置によって得られた経時情報が記憶されたメモリと、無線通信によりメモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、リーダライタ装置を介してメモリから収集された情報が格納される第2の情報処理装置と、第1の情報処理装置及び第2の情報処理装置と、通信ネットワークを介して情報の送受信を行うことができる第3の情報処理装置と、
を有することを特徴とする建築物管理システムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、建築物へ赴くことなく、ストレス情報を得ることができる。また当該情報の入力に伴うミスを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、改修時期を把握する必要のある道路を建築物の例とし、当該道路に関するストレス情報を、本発明の無線チップにより得る形態について説明する。
【0026】
図5には、道路を有する高架橋を示す。高架橋の骨格部、柱、コンクリート、アスファルト等に温度用のセンサー付の無線チップ100を配置することができる。複数の無線チップ100(a)〜100(d)を設ける場合、高架橋に不規則に配置されても、規則的に配置されていても構わない。高架橋に無線チップを配置するとは、高架橋の壁や柱表面に貼り付けたり、道路を構成するアスファルトやコンクリート等に埋め込む形態がある。本実施の形態の温度用のセンサー付無線チップ100、又は湿度センサー付無線チップを適用する場合は、道路の表面に貼り付けてもよいし、建築物を構成する部材に埋め込んでもよい。なお、圧力センサー付無線チップを適用する場合には、埋め込んだ形態が好ましい。
【0027】
無線チップ100(a)〜100(d)には、無線チップの固体番号と、道路の位置情報とが対応付けられていればよく、これらは無線チップ100が有するメモリ装置に記憶される。さらに無線チップのメモリ装置101には、初期情報として建設年月日、建築部材、建築物の用途、建築業者、所有者、環境情報等を記憶させておく。このような初期情報は削除の必要がないため、ライトワンスメモリに格納するとよい。
【0028】
また、道路周辺には、特定の範囲の道路を電波送信可能領域としてカバーする基地局や基地局アンテナが設けられている。
【0029】
無線チップ100は基地局からアンテナを介して電波を受信すると、電源を生成することができる。また受信した電波から命令を復調し、命令に従って、所定の処理を行うことができる。所定の処理とは、例えば、命令1、命令2、命令3の命令セットに基づく処理である。命令1を受信した場合には、温度センサーから温度情報を取得し、チップ内部のメモリ装置101が有する不揮発性メモリに温度情報を格納する。命令2を受信した場合には、メモリ装置101に蓄積された温度情報を送信する。命令3を受信した場合には、メモリ装置101に蓄積された情報を削除する。なお、命令3は、メモリ装置が書き換え可能な不揮発性メモリを有する場合のみ有効である。書き換え可能な不揮発性メモリとしては、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等が挙げられる。メモリ装置101が有するライトワンスメモリのメモリ容量が、用途上十分であれば、このような書き換え可能な不揮発性メモリを有する必要はなく、命令3も不要である。メモリ装置101に設けられるライトワンスメモリを使用すればよい。
【0030】
一般に、1メートル以上の通信距離を得るためにはUHF帯以上の周波数帯の電波を用いる必要がある。その場合、電波を送信できる範囲は比較的大きく(キロメートルのオーダ)することも可能であるが、パッシブ型の無線チップから情報を受信可能な範囲は、送信可能範囲と比較して小さい。ただし、無線チップが電池を内蔵する場合には、情報の送受信可能な距離は、送信可能範囲と同程度に大きくすることが可能である。このような電池を内蔵する無線チップをアクティブ式無線チップと呼び、内蔵しない無線チップをパッシブ式無線チップと呼ぶ。
【0031】
1つの基地局が管理する領域が狭い場合、基地局は、無線チップ100への電力供給と、無線チップ100との情報送受信と、を行うことが可能である。その結果、1つの基地局からの電波によって、無線チップ100への電力供給および命令送信を行い、無線チップ100から情報を受信することができる。
【0032】
一方、1つの基地局が管理する領域が広範囲に渡る場合、基地局は、無線チップ100からの情報の受信を行うことが難しくなる。このような場合には、基地局は、無線チップ100に対して、電力供給と、命令(例えば命令1)の送信を行えばよい。無線チップからの受信は、後述するような手段を用いて行う必要がある。
【0033】
このように基地局が管理する領域に応じて、基地局と無線チップ100間で行う処理を適宜選択することができる。
【0034】
また、基地局からの電波以外に、無線チップ100からの情報を送受信する手段としては、近距離で情報の送受信を可能とするリーダライタ装置110を挙げることができる。例えば、自動車にリーダライタ装置110を実装し、センサー付無線チップ100が埋め込まれた道路を通行することで、当該無線チップ100との情報送受信を行うことが可能となる。このときリーダライタ装置110から無線チップ100へ電力供給を行うこともできる。勿論、自動車は、リーダライタ装置110が無線チップ100からの情報を得ることができる速度で走行する。
【0035】
以下に本発明を、フローチャートを用いて説明する。図1(A)に示すように、道路内に無線チップ100を配置され開始される。無線チップ100には、道路に関する初期情報が入力される(S1)。このとき無線チップ100のメモリ装置101には、図2(A)に示すように建設年月日、建築部材等の初期情報が格納されている。
【0036】
そして、基地局から命令1を乗せた電波を周期的に発信することで、道路内の無線チップ100は、周期的に電力供給を受けることができる。命令1に従って、そのときセンサー装置102が感知した、温度情報をメモリ装置101に格納する。このようにして道路内の無線チップ100は、温度情報を蓄積することができる(S2)。このとき無線チップ100のメモリ装置101には、図2(B)に示すように、センサー装置102から得られる温度に関する情報が書き込まれていく。温度以外に、圧力や湿度等を感知するためのセンサーを設けることによって、これに関する情報を加えてもよい。
【0037】
定期的に、無線チップ100との送受信を行う手段(例えば、リーダライタ装置110を実装した自動車)を用いて、無線チップ100に命令2を送信し、温度情報を収集する。このようにして蓄積された情報を取得することができる(S3)。こうして、メモリ装置101から得られる道路に関する温度の経時情報を取得・収集することが可能となる。このとき、必要に応じて、命令3を送信して、無線チップ100内の情報を消去しても構わない。
【0038】
収集された初期情報、及び経時情報に基づき、道路の状態を判断することができ、改修時期を判定することができる(S4)。
【0039】
そして建築物の管理者等が有する情報処理装置106に、経時情報等が収集され、情報処理装置によって演算処理を行うことができる。例えば、劣化状態の高いものから順に改修時期を決定することができる。このとき、初期情報を考慮してもよく、同程度の劣化状態であれば、建築年数の遅いものを先に、公共性の高い建築物を先にといった優先順位をつけることができる。さらに、管理者が有するサーバでは、改修にかかる費用や日程の見積もりを算出することができ、依頼業者の候補の選定を行うことができる。そして、費用、日程、業者等を考慮して、改修時期の決定を行うことができる。このようにして改修が必要と判断された場合、道路全体やその一部の改修を行う(S5)。
【0040】
道路全体やその一部の改修後、改修情報が無線チップ100は再び経時情報を蓄積し(S2)、これを繰り返す。このとき改修箇所には、新たな無線チップを配置してもよい。
【0041】
そして、建築物の破壊や消滅等により終了する。
【0042】
道路のみならず建築物の壁や天井、床にセンサー付無線チップを配置することで、建築物の温度の経時情報を収集することも可能である。例えば図6に示すように建築物の外壁、階段に無線チップを配置することができる。配置するとは、道路の場合と同様に、壁内部や柱内部に埋め込むことも含まれる。但し、温度用のセンサー付無線チップ100、あるいは湿度センサー付無線チップを適用する場合は、建築物の表面に貼り付けてもよいし、建築物を構成する部材に埋め込んでもよい。一方、圧力センサー付無線チップを適用する場合には、埋め込んだ形態が好ましい。そして、建築物の老朽化を判断することができる。建築物内に設けられたセンサー付無線チップは、リーダライタ装置を各建築物に1つんもしくは複数設けることで、送受信可能な領域内に存在させることが可能である。その結果、リーダライタ装置によって、無線チップ100への電力供給および命令送信を行い、かつ、無線チップ100から情報を受信することができる。
【0043】
また改修時には、使用者からの要求を求める機会を設けてもよい。例えば図1(B)に示すように、改修要と判断された場合、管理者から当該建築物を使用している者(使用者)に改修案内書を送信するようにする。案内書には、改修にあたり、使用者の要求を問い合わせる内容が記載されている。使用者から要求情報を取得した後、これを反映させた改修を行うことができる。
【0044】
建築物を製造する業者は、温度、湿度、又は圧力ストレスに対する信頼性試験を十分に行い、改修が必要となる温度、湿度、又は圧力ストレス条件を見積もっておくのがよい。情報処理装置では、これらの見積もられた条件と、収集された情報との比較を行い、建築物の改修が必要となるかどうかを判定する。
【0045】
このような建築物管理システムにより、経時情報を逐次得ることができ、建築物の現場へ赴く必要がない。そして、建築物の改修に関する一括管理を行うことができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態では、複数の建築物から得られた情報が集積され、改修時期を判定するためのシステムを示す。
【0047】
本発明のシステムは、図3に示すように、建築物Aに配置された無線チップ100より、リーダライタ装置(R/W)110(A)を用いて、初期情報及び経時情報を取得する。そして、リーダライタ装置110(A)から建築物の管理者等が所有する情報処理装置120へ取得した情報を送信する。管理者が所有する情報処理装置120は、リーダライタ装置とのインターフェース部121、演算処理部122、およびデータベース123を少なくとも有する。インターフェース部121を介して取得した情報は、必要に応じて演算処理部122により処理された後、データベース123へ格納される。また、演算処理部122は、データベース123へ格納された情報を処理して、改修を行う必要性の判定を行う。
【0048】
各リーダライタ装置110(A)から110(C)はハンディー型であれば、これを回収し、情報処理装置120にUSB端子等を用いて情報を提供することができる。赤外線通信等によって、リーダライタ装置と情報処理装置との情報のやり取りを行ってもよい。またリーダライタ装置から通信ネットワークを用いて情報を得る場合、情報処理装置120は送受信部を要すればよい。
【0049】
同様に建築物B及びCに配置された無線チップ100より、リーダライタ装置110(B)、110(C)を用いて、初期情報及び経時情報を取得し、該情報を、建築物の管理者等が所有する情報処理装置120へ送信する。
【0050】
このように本発明の一システムは、各建築物の情報を、各建築物に配置された無線チップ100から、リーダライタ装置を用いて取得する。管理者が有する情報処理装置120は、インターフェース部121を介して各建築物の情報を、直接得ることができる。
【0051】
また別のシステムとして、図4に示すように、特定の範囲を有する領域AからC毎に情報処理装置120(A)から120(C)を設置し、当該情報処理装置の送受信部を介し通信ネットワークによって、管理者の情報処理装置120へ経時情報等を送る形態がある。この場合、管理者の情報処理装置120は、各情報処理装置120(A)から120(C)との情報送信を行うための送受信部124を有する。通信ネットワークとして、インターネットシステムを利用することができ、その他電話回線、携帯電話などの公衆回線、LAN(ローカルエリアネットワーク)が挙げられる。通信ネットワークを用いた通信手段には、電子メールが挙げられる。情報処理装置120(A)から120(C)はそれぞれ、各リーダライタ装置110(A)から110(C)とのインターフェース部121(A)から121(C)、演算処理部122(A)から122(C)、データベース123(A)から123(C)及び送受信部124(A)から(C)を少なくとも有する。インターフェース部121(A)から121(C)を介して取得した情報は、必要に応じて演算処理部122(A)から122(C)により処理された後、データベース123(A)から123(C)へ格納される。
【0052】
例えば領域AからCに、それぞれ建築物AからCが建設されているとする。建築物AからCに関する情報は、それぞれ配置された無線チップ100に記憶される。そして無線チップ100からの情報をリーダライタ装置によって得ることができ、それを情報処理装置120(A)から120(C)が有するインターフェース部121(A)から121(C)を介して、データベース123(A)から123(C)へ格納する。そして、当該情報は送受信部124(A)から124(C)を介し、通信ネットワークシステムを用いて、管理者の情報処理装置120へ送信することができる。管理者へ送信する情報は、各情報処理装置120(A)から120(C)の演算処理部122(A)から122(C)によって編集することもできる。
【0053】
勿論、領域AからCには、それぞれ複数の建築物が設けられていてもよい。
【0054】
このように特定の範囲に分け、それぞれに情報処理装置を配置することによって、多くの建築物の情報の管理を簡便なものとすることができる。
【0055】
(実施の形態3)
本実施の形態では、無線チップの構成について説明する。また本発明の無線チップのような半導体素子を用いた装置を半導体装置と呼ぶことができる。
【0056】
図7に示すように本発明の半導体装置701はアンテナと共振容量からなる共振回路702、電源回路703、クロック発生回路704、復調回路705、制御回路706、ライトワンスメモリが設けられるメモリ装置707、変調回路709、A/D変換回路708、センサー装置713を有する。半導体装置701は上記構成に制限されず、中央処理演算装置(CPU)、輻輳制御回路等を有することもある。不揮発性メモリとしてライトワンスメモリ以外にも書き換え可能な不揮発性メモリを有していてもよい。
【0057】
また半導体装置701は、一体形成されたアンテナに代えて、アンテナを接続する配線を有してもよい。この場合は半導体装置を使用する時に、別途作製されたアンテナを当該配線に接続する。
【0058】
また半導体装置701は、一体形成されたセンサー装置713に代えて、センサー装置を接続する配線を有してもよい。この場合は半導体装置を使用する時に、別途作製されたセンサー装置713を当該配線に接続する。
【0059】
本発明の半導体装置701は、共振回路702で、リーダライタ装置710より発せられる電波を受信すると、電源回路703で電源電位が生成される。また、復調回路705にて受信した電波から情報を復調する。情報の送信は、変調回路709によって行われる。このようにしてリーダライタ装置710と無線通信で情報の送受信を行うことができる。また、復調した情報に従って、命令1乃至3を実行することができる。
【0060】
リーダライタ装置710は通信回線711を介して情報処理装置712と接続され、当該情報処理装置712の制御のもとに半導体装置701との情報の送受信を行うことができる。なお、リーダライタ装置710と情報処理装置712とは赤外線通信等の無線通信によって情報のやり取りを行ってもよい。
【0061】
共振回路702はリーダライタ装置710より発せられる電波を受信し、アンテナ両端に交流信号を発生する。発生した交流信号は、半導体装置701の電力になるほか、リーダライタ装置710から送信される命令等の情報を含んでいる。電源回路703は共振回路702に発生した交流信号をダイオードで整流し、容量を用いて平滑化することで、電源電位を生成し、各回路へ供給する。クロック発生回路704は共振回路702に発生した交流信号を基に、様々な周波数のクロック信号を生成する。復調回路705は共振回路に発生した交流信号に含まれる情報を復調する。
【0062】
制御回路706は、復調した信号から命令を抽出し、センサー装置713、メモリ装置707、およびA/D変換回路708を制御することで、命令に従った一連の動作を実行する。また、復調した信号に誤りが無いかをチェックする回路を有してもよい。例えば、抽出した命令が、“センサー装置713から情報を取得し、メモリ装置707に該情報を格納する”という内容であれば、制御回路706はセンサー713、およびA/D変換回路708へ情報を読み出す命令を送り、読み出した情報をレジスタなどに格納する。次に、メモリ装置707へ書き込み命令を送り、レジスタなどに格納した情報をメモリ装置707の所定の記憶領域に該情報を格納する。勿論、レジスタを介さずに行っても良い。また例えば、“メモリ装置707に蓄積された温度情報を送信する”という内容であれば、制御回路706は、メモリ装置707へ読み出し命令を送り、データを読み出す。そして制御回路706内の符号化回路によって符号化した信号を生成し、変調回路709へ出力する。
【0063】
メモリ装置707には、ライトワンスメモリが設けられている。必要に応じて書き換え可能な不揮発性メモリが設けられていてもよい。また、メモリ装置707は半導体装置701固有の情報を保持する。また変調回路709は符号化信号を基に搬送波を変調する機能を有する。
【0064】
本実施の形態は半導体装置701がリーダライタ装置710から電力供給を受ける例を示したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば半導体装置701は、内部に電池等を有して電力供給を行うことができ、リーダライタ装置710とは無線で情報の送受信のみを行うことも可能である。建築物に配置する半導体装置701は、その厚みの制約がさほど無いため、電池等を半導体装置701の内部に有することができる。
【0065】
(実施の形態4)
本実施の形態では、センサー付無線チップの形態について説明する。チップの構成は、図7に示した通りで、センサー装置の出力はA/Dコンバータに入力される。制御回路により、センサーからA/Dコンバータを介してデジタル信号に変換されたデータが読み出され、メモリ装置に格納される。また、可否の2値で判定する場合など、A/Dコンバータを用いない構成も可能である。
【0066】
代表的な形態として、センサー装置がチップに貼り付けられた形態をあげることができる。センサー装置はアナログ電位を出力し、チップ内部に設けられたA/Dコンバータがデジタル信号に変換する構成を考えることができる。勿論、A/Dコンバータはチップ内部ではなく、センサー装置に設けられていてもよい。近年、様々な小型センサーが開発されており、これらのセンサーを外付けとすることで、小型のセンサー付無線チップを実現することができる。例えば、温度センサーとしてサーミスタ(温度によって抵抗値の変化する抵抗体)やIC化温度センサー(NPNトランジスタのベース−エミッタ間電圧の温度特性を利用)を用いることができる。
【0067】
また別の代表的な形態として、本発明においてもっとも好ましい形態であるが、センサー装置が無線チップと一体形成された形態をあげることができる。そのようなセンサー装置の構成例としては、図12に示すような、静電容量式のセンサー装置の構成例をあげることができる。
【0068】
図12において、容量素子1201はセンシングの対象となるパラメータの変化によって容量が変化する素子であり、容量素子1202は比較用に参照される素子であり、積分回路1203はオペアンプと容量素子とスイッチ素子からなる積分回路であり、回路1204はA/Dコンバータである。積分回路やA/Dコンバータは公知の回路構成を用いることができる。
【0069】
容量素子1201と容量素子1202は直列に接続され、接続された点の電位V3は積分回路1203に入力される。また、両端の電位をV1、V2とする。積分回路1203のスイッチをオンとしてゼロ点調整を行った後、電位V1と電位V2を、中点電位(V1+V2)/2を変えずに、電位差が大きくなるように一定期間変化させる。電位V3は、電位V1と電位V2の変化に伴い、容量素子1201と容量素子1202の容量に従った電位となり、積分回路1203は電位V3を増幅した電位V4を出力する。そして、A/Dコンバータ1204は電位V4をデジタル信号に変換する。以上のようにして、容量素子1201の微小な容量値の変化を読み取ることができる。
【0070】
容量素子1201は、センシングの対象となるパラメータの値によって容量が変化する素子であり、容量素子1201の容量を正確に読み取ることによって、そのパラメータの値をセンシングすることが可能となる。例えば、湿度センサーでは、2つの電極間に感湿膜を形成することで、湿度に応じて容量値の変化する素子を形成することができる。感湿膜としては、吸湿性の高分子有機材料などを用いることが可能である。また、圧力センサーでは、2つの電極間を空気、又は液晶材料のようなやわらかい材料で充填することで、圧力が加わると2つの電極間距離が変化して容量値が変化する素子を形成することができる。
【0071】
センサー装置が無線チップと一体形成された形態として、静電容量式のセンサー装置以外の形態とすることも可能である。例えば、センシングの対象となるパラメータの値によって抵抗値が変化する抵抗体を用い、ブリッジ回路(図13)を構成することで抵抗値をアナログ電位の変化に変換して出力することができる。また例えば、サーミスタに用いられるような、温度によって抵抗値が変化する抵抗体を用いることで温度センサーを構成することができる。また、半導体のピエゾ抵抗効果を利用して、圧力による抵抗体の変位を、半導体の不純物拡散領域の抵抗値の変化として読み取ることで圧力センサーを構成することができる。
【0072】
センサー装置が無線チップと一体形成された別の形態として、NPNトランジスタ、又はそのダーリントン接続(図14)によって、ベース−エミッタ間電圧を出力する温度センサーを構成することができる。
【0073】
本発明は、以上のような形態のセンサー付無線チップを用いることができる。
【0074】
(実施の形態5)
本実施の形態では、無線チップたる半導体装置701が有するメモリ装置707、及びその動作方法について説明する。
【0075】
図8に示すように、メモリ装置707はメモリ素子が形成されたメモリセルアレイ756及び駆動回路を有する。駆動回路は、カラムデコーダ751、ローデコーダ752、読み出し回路754、書き込み回路755、セレクタ753を有する。
【0076】
メモリセルアレイ756はビット線Bm(m=1〜x)、ワード線Wn(n=1〜y)、ビット線とワード線とそれぞれの交点にメモリセル757を有する。なお、メモリセル757はトランジスタが接続されたアクティブ型であっても、パッシブ素子だけで構成されるパッシブ型であってもよい。またビット線Bmはセレクタ753により制御され、ワード線Wnはローデコーダ752により制御される。
【0077】
カラムデコーダ751は、任意のビット線を指定するアドレス信号を受けて、セレクタ753に信号を与える。セレクタ753は、カラムデコーダ751の信号を受けて指定のビット線を選択する。ローデコーダ752は、任意のワード線を指定するアドレス信号を受けて、指定のワード線を選択する。上記動作によりアドレス信号に対応する一つのメモリセル757が選択される。読み出し回路754は選択されたメモリセルが有する情報を読み出して出力する。書き込み回路755は書き込みに必要な電圧を生成し、選択されたメモリセルに電圧を印加することで、情報の書き込みを行う。
【0078】
本発明は、メモリ装置707を有する半導体装置を建築物に配置した、建築物管理システム及びその方法を提供することができる。
【0079】
次に、メモリセル757の回路構成を説明する。本実施の形態では、下部電極、上部電極を有し、当該一対の電極間にメモリ材料層が介在したメモリ素子783を有するメモリセルについて説明する。
【0080】
図9(A)に示すメモリセル757は、トランジスタ781とメモリ素子783とを有するアクティブ型のメモリセルである。トランジスタ781は、薄膜トランジスタを適用することができる。トランジスタ781が有するゲート電極は、ワード線Wyに接続される。また当該トランジスタ781が有するソース電極及びドレイン電極の一方は、ビット線Bxに接続され、他方はメモリ素子783と接続される。メモリ素子783の下部電極は、トランジスタ781のソース電極及びドレイン電極の一方と電気的に接続している。またメモリ素子783の上部電極(782に相当)は、共通電極として、各メモリ素子で共有することができる。
【0081】
また図9(B)に示すように、メモリ素子783がダイオード784に接続された構成を用いてもよい。ダイオード784は、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方と、ゲート電極とが接続された所謂ダイオード接続構造を採用することができる。またダイオード784として、メモリ材料層と下部電極とのコンタクトによるショットキーダイオードを用いたり、メモリ材料の積層によって形成されるダイオードなどを利用することもできる。
【0082】
メモリ材料層としては、電気的作用、光学的作用又は熱的作用等により、その性質や状態が変化する材料を用いることができる。例えば、ジュール熱による溶融、絶縁破壊等により、その性質や状態が変化し、下部電極と、上部電極とが短絡することができる材料を用いればよい。そのためメモリ材料層の厚さは、5nmから100nm、好ましくは10nmから60nmとするとよい。このようなメモリ材料層は、無機材料又は有機材料を用いることができ、蒸着法、スピンコーティング法、液滴吐出法等により形成することができる。
【0083】
無機材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素等がある。このような無機材料であっても、その膜厚を制御することによって、絶縁破壊を生じさせ、下部電極と上部電極とを短絡させることができる。
【0084】
有機材料としては、例えば、4、4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物、ポリビニルカルバゾール(略称:PVK)やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等を用いることができる。これら材料は、正孔輸送性の高い物質である。
【0085】
また、他にも有機材料として、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。これら材料は、電子輸送性が高い物質である。
【0086】
さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用いることができる。
【0087】
またメモリ材料層は単層構造であっても、積層構造であってもよい。積層構造の場合、上記材料から選び、積層構造することができる。また上記有機材料と、発光材料とを積層してもよい。発光材料として、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等がある。
【0088】
また、上記発光材料を分散してなる層を用いてもよい。発光材料分散してなる層において、母体となる材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いることができる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。
【0089】
このような有機材料は、熱的作用等によりその性質を変化させるため、ガラス転移温度(Tg)が50℃から300℃、好ましくは80℃から120℃であるとよい。
【0090】
また、有機材料や発光材料に金属酸化物を混在させた材料を用いてもよい。なお金属酸化物を混在させた材料とは、上記有機材料又は発酵材料と、金属酸化物とが混合した状態、又は積層された状態を含む。具体的には複数の蒸着源を用いた共蒸着法により形成された状態を指す。このような材料を有機無機複合材料と呼ぶことができる。
【0091】
例えば正孔輸送性の高い物質と、金属酸化物を混在させる場合、当該金属酸化物にはバナジウム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、レニウム酸化物、タングステン酸化物、ルテニウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物を用いると好ましい。
【0092】
また電子輸送性の高い物質と、金属酸化物を混在させる場合、当該金属酸化物にはリチウム酸化物、カルシウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、マグネシウム酸化物を用いると好ましい。
【0093】
メモリ材料層には、電気的作用、光学的作用又は熱的作用により、その性質が変化する材料を用いればよいため、例えば光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いることもできる。共役高分子として、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンエチニレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤としては、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、Fe−アレン錯体PF6塩等を用いることができる。
【0094】
次に、図9(A)に示したようなアクティブ型のメモリセル757に情報の書き込みを行うときの動作について説明する。なお本実施の形態では、初期状態のメモリ素子が格納する値を「0」、電気的作用等によって特性を変化させたメモリ素子が格納する値を「1」とする。また、初期状態のメモリ素子は抵抗値が高く、変化後のメモリ素子は抵抗値は低いものとする。
【0095】
書き込みを行う場合、カラムデコーダ751、ローデコーダ752、セレクタ753により、m列目のビット線Bmと、n行目のワード線Wnが選択され、m列目n行目のメモリセル757に含まれるトランジスタ781がオンとなる。
【0096】
続いて、書き込み回路755により、m列目のビット線Bmに、所定の電圧が所定の期間印加される。この印加電圧および印加時間は、メモリ素子783が初期状態から抵抗値の低い状態へと変化するような条件を用いる。m列目のビット線Bmに印加された電圧は、メモリ素子783の下部電極に伝達され、上部電極との間には電位差が生じる。すると、メモリ素子783に電流が流れ、メモリ材料層の状態に変化が生じ、メモリ素子特性が変化する。そして、メモリ素子783が格納する値を「0」から「1」へ変化させる。
【0097】
このような書き込み動作は、制御回路706に従って行われる。
【0098】
次に、情報の読み出しを行う動作について説明する。図10に示すように読み出し回路754は、抵抗素子790とセンスアンプ791を有する。情報の読み出しは、下部電極と上部電極の間に電圧を印加して、メモリ素子が、初期の状態か変化後の低い状態であるかを判定することで行う。具体的には、抵抗分割方式によって、情報の読み出しを行うことができる。
【0099】
例えば、メモリセルアレイ756が含む複数のメモリ素子783から、m列目n行目のメモリ素子783の情報の読み出しを行う場合について説明する。まずカラムデコーダ751、ローデコーダ752、セレクタ753により、m列目のビット線Bmと、n行目のワード線Wnが選択される。すると、m列目n行目に配置されたメモリセル757が有するトランジスタ781がオン状態になり、メモリ素子783と、抵抗素子790とが直列に接続された状態となる。その結果、メモリ素子783の電流特性に応じて図10に示したP点の電位が決まる。
【0100】
メモリ素子が初期状態である場合のP点の電位をV1、メモリ素子が変化後の低抵抗状態である場合のP点の電位をV2とし、V1>Vref>V2となる参照電位Vrefを用いることで、メモリ素子に格納されている情報を読み出すことができる。具体的には、メモリ素子が初期状態である場合、センスアンプ791の出力電位はLoとなり、メモリ素子が低抵抗状態である場合、センスアンプ791の出力電位はHiとなる。
【0101】
上記の方法によると、メモリ素子783の抵抗値の相違と抵抗分割を利用して、電圧値で読み取っている。しかしながら、メモリ素子783が有する情報を、電流値により読み取ってもよい。なお本発明の読み出し回路754は、上記構成に限定されず、メモリ素子が有する情報を読み出すことができればどのような構成を有していてもよい。
【0102】
このような構成を有するメモリ素子は、「0」から「1」の状態へ変化させ、「0」から「1」の状態へ変化は不可逆的であるためライトワンスメモリ素子となる。
【0103】
このようなメモリ素子783へ初期情報を書き込むことができ、またセンサー装置からの情報を逐次書き込むことができる。そして書き込まれた情報は、無線通信により読み出すことができる。
【0104】
このように建築物の情報を逐次メモリ装置に保存しておくことができるため、建築物の現場に赴くことなく、センサー装置からの情報をメモリ装置に保存し、ある程度蓄積された情報をリーダライタ装置によって読み出すことができる。
【0105】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて実施することができる。
【0106】
(実施の形態6)
本実施の形態では、メモリ装置707の断面図について説明する。
【0107】
図11(A)は、絶縁基板310上にメモリセル部301と駆動回路部302とが一体形成されたメモリ素子の断面図を示す。絶縁基板310には、ガラス基板、石英基板、珪素からなる基板、金属基板等を用いることができる。
【0108】
絶縁基板310上には下地膜311が設けられている。駆動回路部302では下地膜311を介して薄膜トランジスタ320、321が設けられ、メモリセル部301には下地膜311を介して薄膜トランジスタ781が設けられている。各薄膜トランジスタは、島状にパターニングされた半導体膜312、ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極314、ゲート電極側面に設けられた絶縁物(所謂サイドウォール)313、ゲート電極314が設けられている。半導体膜312は、膜厚が0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmとなるように形成する。さらに、サイドウォール313、及び半導体膜312を覆う絶縁膜316、半導体膜312に形成された不純物領域に接続する電極315を有する。なお電極315は不純物領域と接続するため、ゲート絶縁膜及び絶縁膜316にコンタクトホールを形成し、当該コンタクトホールに導電膜を形成し、当該導電膜をパターニングして形成することができる。
【0109】
なお平坦性を高めるため、絶縁膜317、318が設けられているとよい。このとき絶縁膜317は有機材料から形成し、絶縁膜318は無機材料から形成するとよい。絶縁膜317、318が設けられている場合、電極315は、これら絶縁膜317、318にコンタクトホールを介して不純物領域と接続するように形成することができる。
【0110】
さらに絶縁膜325が設けられ、電極315と接続するように下部電極327を形成する。下部電極327の端部を覆い、下部電極327が露出するように開口部が設けられた絶縁膜328を形成する。開口部内に、メモリ材料層329を形成し、上部電極330を形成する。このようにして、下部電極327、メモリ材料層329、上部電極330を有するメモリ素子783が形成される。メモリ材料層329は、有機材料又は無機材料から形成することができる。下部電極327又は上部電極330は、導電性材料から形成することができる。例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)もしくはシリコン(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜等から形成することができる。またインジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム等の透光性材料を用いることができる。
【0111】
さらに平坦性を高め、不純物元素の侵入を防止するため、絶縁膜331を形成するとよい。
【0112】
本実施の形態で説明した絶縁膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。無機材料は、酸化珪素、窒化珪素を用いることができる。有機材料はポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。ポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を出発原料として形成される。
【0113】
図11(B)は、図11(A)と異なり、電極315のコンタクトホール351内にメモリ材料層を形成したメモリ素子の断面図を示す。図11(A)と同様に、下部電極として電極315を用い、電極315上にメモリ材料層329、上部電極330を形成し、メモリ素子783を形成することができる。その後絶縁膜331を形成する。その他の構成は図11(A)と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
このようにコンタクトホール351にメモリ素子を形成すると、メモリ装置の小型化を図ることができる。またメモリ用の電極が不要となるため製造工程を削減し、低コスト化されたメモリ装置を提供することができる。
【0115】
このように本発明の案内方法及びそのシステムに適用することができるメモリ装置は絶縁基板上に作製され、駆動回路を一体形成することができるため、製造コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明のシステムフローを示した図である
【図2】本発明のメモリ装置の記憶状態を示した図である
【図3】本発明のシステムを示した図である
【図4】本発明のシステムを示した図である
【図5】本発明の無線チップが設置された道路を示した図である
【図6】本発明の無線チップが設置されたビルを示した図である
【図7】本発明の無線チップを示した図である
【図8】本発明のメモリ装置を示した図である
【図9】本発明のメモリ素子を示した図である
【図10】本発明のメモリ素子を示した図である
【図11】本発明のメモリ装置の断面を示した図である
【図12】本発明のセンサー装置を示した図である
【図13】本発明のセンサー装置を示した図である
【図14】本発明のセンサー装置を示した図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、
前記無線チップを前記建築物に配置するステップと、
無線通信を用いて、前記メモリに前記建築物に関する経時情報を、一定期間毎に書き込むステップと、
前記メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、
前記情報に基づき、前記建築物の改修時期を決定するステップと、
を有することを特徴とする建築物管理方法。
【請求項2】
無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、
前記無線チップを前記建築物に配置するステップと、
電波に基づき実行されるコマンドにより、前記メモリに前記建築物に関する経時情報を、一定期間毎に書き込むステップと、
リーダライタ装置により、前記メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、
を有することを特徴とする建築物管理方法。
【請求項3】
無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、
前記無線チップを前記建築物に配置するステップと、
無線通信を用いて、前記無線チップが有するセンサー装置を動作させ、当該センサー装置から得られた前記建築物に関する経時情報を前記メモリに、一定期間毎に書き込むステップと、
前記メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、
前記情報に基づき、前記建築物の改修時期を決定するステップと、
を有することを特徴とする建築物管理方法。
【請求項4】
無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、
前記無線チップを前記建築物に配置するステップと、
電波に基づき実行されるコマンドにより、前記無線チップが有するセンサー装置を動作させ、当該センサー装置から得られた前記建築物に関する経時情報を前記メモリに、一定期間毎に書き込むステップと、
リーダライタ装置により、前記メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、
前記情報に基づき、前記建築物の改修時期を決定するステップと、
を有することを特徴とする建築物管理方法。
【請求項5】
無線チップが有するメモリに、建築物に関する初期情報を書き込むステップと、
前記無線チップを前記建築物に配置するステップと、
無線通信を用いて、前記無線チップが有する共振回路を介して電源回路に電力が供給されるステップと、
前記無線通信によりコマンドを実行し、センサー装置を動作させ、当該センサー装置から得られた前記建築物に関する経時情報を前記メモリに、一定期間毎に書き込むステップと、
前記メモリに書き込まれた情報を読み出すステップと、
前記情報に基づき、前記建築物の改修時期を決定するステップと、
を有し、
前記センサー装置は一定期間毎に動作させることを特徴とする建築物管理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記メモリは、一対の電極間にメモリ材料層を介在させたメモリ素子を有し、電気的作用によって前記電極間を短絡させて前記情報を書き込むことを特徴とする建築物管理方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記追記型メモリは、書き換え不可能となる構造を有するメモリ素子を備えたことを特徴とする建築物管理方法。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一において、
前記センサー装置は、温度、圧力、及び湿度のいずれかに関するセンサー装置であることを特徴とする建築物管理方法。
【請求項9】
建築物に配置された無線チップと、前記無線チップが有する、前記建築物に関する初期情報、及び経時情報が記憶されたメモリと、
無線通信により前記メモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、
前記リーダライタ装置を介して前記メモリから収集された情報が格納される情報処理装置と
を有し、
前記情報処理装置を用いて、前記情報に基づき前記建築物の改修時期を決定することを特徴とする建築物管理システム。
【請求項10】
建築物に配置された無線チップと、前記無線チップが有するセンサー装置と、
前記建築物に関する初期情報、及び前記センサー装置によって得られた経時情報が記憶されたメモリと、
無線通信により前記メモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、
前記リーダライタ装置を介して前記メモリから収集された情報が格納される情報処理装置と
を有し、
前記情報処理装置を用いて、前記情報に基づき前記建築物の改修時期を決定することを特徴とする建築物管理システム。
【請求項11】
特定の第1領域に設けられた建築物に配置された第1の無線チップと、前記第1の無線チップが有するセンサー装置と、前記建築物に関する初期情報及び前記センサー装置によって得られた経時情報が記憶されたメモリと、無線通信により前記メモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、前記リーダライタ装置を介して前記メモリから収集された情報が格納される第1の情報処理装置と、
特定の第2領域に設けられた建築物に配置された第2の無線チップと、前記第2の無線チップが有するセンサー装置と、前記建築物に関する初期情報及び前記センサー装置によって得られた経時情報が記憶されたメモリと、無線通信により前記メモリに記憶された情報を得ることができるリーダライタ装置と、前記リーダライタ装置を介して前記メモリから収集された情報が格納される第2の情報処理装置と、
前記第1の情報処理装置及び前記第2の情報処理装置と、通信ネットワークを介して情報の送受信を行うことができる第3の情報処理装置と、
を有することを特徴とする建築物管理システム。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一において、
前記無線チップが複数設けられたことを特徴とする建築物管理システム。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一において、
前記メモリは、メモリ素子と、前記メモリ素子に接続されたトランジスタとを有し、
前記メモリ素子及び前記トランジスタは絶縁基板上に設けられた
ことを特徴とする建築物管理システム。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか一において、
前記メモリ素子は、絶縁基板上に形成されたトランジスタに接続され、
前記トランジスタは、膜厚が0.2μm以下の半導体膜を有することを特徴とする建築物管理システム。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか一において、
前記追記型メモリは、一対の電極間にメモリ材料層を介在させたメモリ素子を有することを特徴とする建築物管理システム。
【請求項16】
請求項9乃至14のいずれか一において、
前記追記型メモリは、書き換え不可能となる構造を有するメモリ素子を備えたことを特徴とする建築物管理システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−274768(P2006−274768A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100268(P2005−100268)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】