説明

建設機械のシール構造

【課題】紐状体または棒状体をシール用グロメットに取り付ける際における取り付け作業性等を向上させる。
【解決手段】ホース挿通孔12〜15を有し、該ホース挿通孔12〜15にホース6a〜6dを挿通させた弾性体からなるグロメット9を、建設機械の運転室と室外とを仕切る隔壁7の貫通孔8に装着してなるシール構造あって、分割ラインLをホース挿通孔12〜15内に通して、グロメット9を2つに分割し、この2つに分割されているグロメット半体9A,9B同士を、ホース6a〜6dを間に挟んで突き合わせると、ホース挿通孔12〜15にホース6a〜6dが挿通された1つのグロメット9が組み立てられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械のシール構造に関するものであり、特に、建設機械の運転室と室外とを仕切る隔壁の貫通孔に弾性体のグロメットを装着し、該グロメットの挿通孔に紐状体または棒状体を挿通させてなる建設機械のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルのような建設機械においては、運転室内の操作レバーから延びる油圧ホース等の棒状体や電気ハーネス等の紐状体が、床面および隔壁を貫通して室外に配管もしくは配線されている。この場合、床面あるいは隔壁等には貫通孔が穿設され、該貫通孔に弾性材のグロメットが嵌められ、該グロメットで前記棒状体や紐状体等を保持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記グロメットは、紐状体または棒状体を挿通させる挿通孔を設けた1つの平板状の部材で形成されている。また、グロメットは、防塵および防音効果を持たせるために、挿入孔に挿入された紐状体または棒状体を、グロメットとの間に隙間を設けずに密着した状態で保持している。
【特許文献1】特開2001−176346号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の発明におけるシール構造等で使用されているグロメットは、紐状体または棒状体を挿通孔に取り付ける場合、グロメットの外周面から設けられている切り込み部分を弾性変形させて一時的に拡開し、この切り込み部分を通して、グロメットの側方から紐状体または棒状体を挿通孔に差し込むようにしているので、取り付けが面倒であった。特に、取り付け本数が多いときには、この差し込み作業を一本ずつ、順に行うことになるので、さらに作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、紐状体または棒状体をシール用グロメットに取り付ける際に、取り付け作業性等を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、挿通孔を有し、該挿通孔に紐状体または棒状体を挿通させた弾性体からなるグロメットを、建設機械隔壁の貫通孔に装着してなるシール構造において、前記グロメットを、分割ラインを前記挿通孔内に通して2分割した建設機械のシール構造を提供する。
【0007】
この構成によれば、2つに分割されているグロメット半体同士を、紐状体または棒状体を間に挟んで突き合わせると、紐状体または棒状体が挿通孔に挿通された1つのグロメットが容易に組み立てられる。また、この状態でグロメットを隔壁の貫通孔に取り付けると、このグロメットを介して紐状体または棒状体を隔壁に保持することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1において、上記挿通孔を、ほぼ真円形状で、かつ、その中心を上記分割ラインからずらして設け、上記グロメットの一方の半体側に前記挿通孔を形成している半円以上の平面視C字形状の切欠部を設けた建設機械のシール構造を提供する。
【0009】
この構成によれば、一方のグロメット半体側に設けた半円以上の平面視C字形状の切欠部内に紐状体または棒状体を嵌め込み、一方のグロメット半体と紐状体または棒状体との間を仮固定した状態で、該一方のグロメット半体に他方のグロメット半体を突き合わせると、紐状体または棒状体が挿通孔に挿通された1つのグロメットとして組み立てることができる。また、この状態でグロメットを隔壁の貫通孔に取り付けると、このグロメットを介して紐状体または棒状体を隔壁に保持することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2において、上記挿通孔の内周縁に、内側に向かって延出された薄肉状の縁取り部をほぼ全周に亘って設けた建設機械のシール構造を提供する。
【0011】
この構成によれば、挿通孔に挿通された紐状体または棒状体の周面に薄肉状の縁取り部を弾発的に押し付けて抱持し、該紐状体または棒状体と挿通孔との間の隙間や、該隙間によるズレを吸収して、隙間を実効的に無くすことができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3において、上記グロメットに、上記挿通孔内と切り込みを介して通じているとともに上記紐状体または棒状体が挿通されていないときには孔を閉じている薄肉膜状の蓋片部を有する目隠し孔を設けた建設機械のシール構造を提供する。
【0013】
この構成によれば、挿通させる紐状体または棒状体の本数が増えた場合に、通常は蓋片部で閉じられている目隠し孔内に通じている切り込みを通して、該挿通孔側から、紐状体または棒状体を目隠し孔内に挿通させることができる。また、紐状体または棒状体が挿通されると、薄肉膜状の蓋片部をめくり上がらせて逃がし、該薄肉膜状の蓋片部を紐状体または棒状体の周面に弾発的に押し付けて、該紐状体または棒状体を抱持することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4において、上記挿入孔と上記目隠し孔との間に、上記蓋片部よりも肉厚で、かつ上記切り込みにより2つに分割されている1対のリブ部を設けた建設機械のシール構造を提供する。
【0015】
この構成によれば、薄肉膜状の蓋片部が紐状体または棒状体の周面に弾発的に押し付けられて該紐状体または棒状体を抱持するとき、リブ部は弾性変形されずに、蓋片部だけが弾性変形してめくれ上がり、紐状体または棒状体と挿通孔との間の隙間を実効的に無くすことができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項4または5において、上記蓋片部を、上記目隠し孔の中心から該目隠し孔の内周縁に向かって放射状に設けられている切り込みにより分割された複数の小片で形成した建設機械のシール構造を提供する。
【0017】
この構成によれば、複数の小片で紐状体または棒状体の周面を弾発的に抱持し、紐状体または棒状体と挿通孔との間の隙間や該隙間によるズレを吸収して、隙間を実効的に無くすことができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項5において、上記リブ部と上記蓋片部との間に、上記挿通孔に通じる切り込みと連通し、かつ前記目隠し孔の内周に沿って半円以上形成された内周切り込みを設け、該内周切り込みにより前記蓋片部と前記リブ部とを分離してなる建設機械のシール構造を提供する。
【0019】
この構成によれば、薄肉膜状の蓋片部とリブ部との間を切り込みにより分離させることで、リブ部が蓋片部と一緒にめくれ上がるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明は、紐状体または棒状体を間に挟んで、2つに分割されているグロメット半体同士を突き合わせると、挿通孔に紐状体または棒状体が挿通された1つのグロメットとして容易に組み立てることができる。さらに、この状態でグロメットを隔壁の貫通孔に取り付けると、紐状体または棒状体をグロメットと共に隔壁に容易に保持することができるので、取付作業性が向上する。
【0021】
請求項2記載の発明は、挿入孔の中心を分割ラインからずらすことで、一方の半体側に半円以上の平面視C字形状の切欠部が残り、該切欠部に紐状体または棒状体を嵌め込ませると、一方の半体と紐状体または棒状体との間を位置決めした状態で、該一方の半体に対して他方の半体を組み付けることができるので、請求項1の発明の効果に加えて、さらに取付作業性が向上する。
【0022】
請求項3記載の発明は、薄肉状の縁取り部により、紐状体または棒状体と挿通孔との間の隙間や該隙間によるズレを吸収して隙間を実効的に無くすことができるので、請求項1または2の発明の効果に加えて、防音及び防塵性が向上する。
【0023】
請求項4記載の発明は、挿通させる紐状体または棒状体の本数が増えた場合に、目隠し孔を使用して紐状体または棒状体を追加配置することができるので、変更に対する自由度が利く。また、目隠し孔に紐状体または棒状体を取り付けた状態では、薄肉膜状の蓋片部をめくれ上がらせて逃がし、挿入後は薄肉膜状の蓋片部を弾性圧接させた状態で抱持することができる。これにより、請求項1,2または3の発明の効果に加えて、拡張性と防音及び防塵性が向上する。
【0024】
請求項5記載の発明は、薄肉膜状の蓋片部が紐状体または棒状体を弾発的に抱持するとき、蓋片部だけが弾性変形してめくれ上がり、紐状体または棒状体と挿通孔との間の隙間を実効的に無くすことができるので、請求項4の発明の効果に加えて、さらに防音及び防塵性が向上する。
【0025】
請求項6記載の発明は、複数の小片により、紐状体または棒状体と目隠し孔との間の隙間や該隙間によるズレを吸収して、隙間を実効的に無くすことができるので、請求項4または5の発明の効果に加えて、さらに防音及び防塵性が向上する。
【0026】
請求項7記載の発明は、薄肉膜状の蓋片部が紐状体または棒状体を弾発的に抱持するとき、蓋片部だけが弾性変形してめくれ上がり、紐状体または棒状体と挿通孔との間の隙間を実効的に無くすことができるので、請求項5の発明の効果に加えて、さらに防音及び防塵性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
紐状体または棒状体をシール用グロメットに取り付ける際における取り付け作業性等を向上させるという目的を達成するために、挿通孔を有し、該挿通孔に紐状体または棒状体を挿通させた弾性体からなるグロメットを、建設機械の運転室と室外とを仕切る隔壁の貫通孔に装着してなる建設機械の運転室シール構造において、前記グロメットを、分割ラインを前記挿通孔内に通して2分割したことにより実現した。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の建設機械のシール構造について、好適な実施例をあげて説明する。図1は、本発明を適用した建設機械である油圧ショベルにおける運転室内の構造を示す斜視図である。運転室1の内部に運転者用の着座シート2を設置し、該着座シート2の左右両側にコンソールボックス3,3を配設してある。
【0029】
コンソールボックス3,3の上面前部には、操作用ノブ4が設けられている。この操作ノブ4は、図示していない油圧ショベルの上部旋回体や作業機のブーム,アーム,バケット等を作動させるための各種の油圧シリンダを操作する。
【0030】
図2に示すように、操作用ノブ4はリモコンバルブ5の一端部に取り付けられており、該リモコンバルブ5の他端部には、運転室1と室外とを仕切る床面あるいは側壁等の隔壁7に設けた貫通孔8を貫通して、運転室1と室外とに延びる複数本(本実施例の場合では4本)のパイロットホース等の棒状体または電気ハーネス等の紐状体(以下、これら棒状体または紐状体を総称して、ホース6a,6b,6c,6dという)が連結されている。これらのホース6a〜6dは、シール用のグロメット9により結束され、該グロメット9を貫通孔8に嵌着することによって隔壁7に保持されている。
【0031】
図3〜図6に前記グロメット9を詳細に示す。グロメット9は、例えばゴム若しくは軟質プラスチック等の弾性材にて平面視で略長円状に成形されている。該グロメット9は、中央の分割ラインLを境にして、グロメット半体9Aと9Bの2つに分割されており、この2つに分割されたグロメット半体9A,9Bの各対向面10,10を互いに突き合わせて、1つの上記略長円状のグロメット9に組み合わせて使用される。
【0032】
前記グロメット9は、中央部9aが比較的厚肉(例えば12ミリ)に形成されているとともに、この中央部9aに対して外周部9bがさらに厚肉(例えば21ミリ)に形成されている。また、グロメット9の外周部9bには、隔壁7の貫通孔8に嵌り合う溝部11が形成されている。
【0033】
前記グロメット9の中央部には、前記ホース6a〜6dを挿通させるために、そのホース6a〜6dの本数(4本)と同数のホース挿通孔12,13,14,15とが設けられている。また、ホース挿通孔12,13,14,15の内周縁には、内側に向かって延出された薄肉(例えば2ミリ)の縁取り部16を全周に亘って設けられている。
【0034】
なお、ホース挿通孔12の中心は前記分割ラインL上に設けられ、ホース挿通孔12の半円部がグロメット半体9Aと9Bにそれぞれ対称な形で形成されている。他方、前記ホース挿通孔13〜15の中心は、前記分割ラインLとずらされて、グロメット半体9Aまたは9B上の位置に設けられている。
【0035】
この中心のずれにより、一方のグロメット半体9Aまたは9B側に、半円以上の平面視C字形状の切欠部としてホース挿通孔13〜15の一部13a〜15aが形成され、他方のグロメット半体9Bまたは9A側に、ホース挿通孔13〜15の残りの一部13b〜15bが形成された状態になっている。なお、グロメット半体9Aまたは9B側のC字形状の大きさは、好ましくはホース6b〜6dがグロメット半体9Aまたは9Bの側方から嵌入できる大きさとする。
【0036】
図7及び図8は、グロメット9を用いてホース6a〜6dを隔壁7に取り付ける手順を示す図である。図7及び図8を用いてその取付手順を説明する。まず、図7に示すように、隔壁7の貫通孔8を貫通して配管されているホース6a〜6dを間に挟んで、2つに分割されたグロメット半体9A,9B同士を突き合わせ、グロメット半体9Aの対向面10とグロメット半体9Bの対向面10とを当接させる。
【0037】
これにより、図8に示すように、グロメット9のホース挿通孔12〜15にホース6a〜6dが各々挿入された状態となる。また、このとき前記薄肉の縁取り部16は、ホース6a〜6dの周面に弾発的に接触して抱持し、ホース6a〜6dと挿通孔12〜15との間の隙間や該隙間によるズレを吸収する。
【0038】
続いて、グロメット9を隔壁7の貫通孔8に嵌め込み、貫通孔8の内周縁部をグロメット9の溝部11に嵌合させると、グロメット9がホース6a〜6dと共に隔壁7に保持される。図2は、この取付後の状態を示す。
【0039】
したがって、この第1実施例の構造によれば、2つに分割されているグロメット半体9A,9B同士を、ホース6a〜6dを間に挟んで突き合わせると、該ホース6a〜6dがホース挿通孔12〜15に挿通された1つのグロメット9として組み立てることができる。さらに、この状態でグロメット9を隔壁7の貫通孔8に取り付けると、ホース6a〜6dを隔壁7にグロメット9と共に容易に取り付けることができる。
【0040】
また、ホース挿入孔13〜15の中心を分割ラインLからずらすことで、一方のグロメット半体9Aまたは9B側に半円以上の平面視C字形状の切欠部13a〜15aが残り、該切欠部13a〜15aにホース6b〜6dの周面を嵌め込ませることで、一方のグロメット半体9Aまたは9Bとホース6b〜6dとを位置決めして、グロメット9を容易に取り付けることができる。
【0041】
さらに、挿通孔12〜15の内周縁に薄肉状の縁取り部16を設け、該縁取り部16をホース6a〜6dの周面に弾発的に押し付けて抱持し、ホース6a〜6dとホース挿通孔12〜15との間の隙間や該隙間によるズレを吸収して、隙間を実効的に無くしているので、防音及び防塵効果を高めることができる。
【実施例2】
【0042】
図9は、本発明に係る運転室シール構造の第2の実施例を示す。なお、図9において、図1〜図8に示した運転室の構造と対応する部材には、図1〜図8に示した符号と同じ符号を付して説明すると、この図9では、パイロットホース等の棒状体または電気ハーネス等の紐状体(以下、これらを総称してホース6e,6fという)を図7及び図8で示した貫通孔8に通し、かつグロメット19を用いて該隔壁7に保持する構造を示している。
【0043】
図10〜図13に前記グロメット19を詳細に示す。グロメット19は、例えばゴム若しくは軟質プラスチック等の弾性材にて平面視で略長円状に成形されている。該グロメット19は、中央の分割ラインLを境にして、互いに対称形を成すグロメット半体19Aと19Bの2つに分割されており、この2つに分割されたグロメット半体19A,19Bの各対向面20,20を互いに突き合わせて、1つの上記略長円状のグロメット19に組み合わせて使用される。
【0044】
前記グロメット19は、中央部19aが比較的厚肉(例えば12ミリ)に形成されるとともに、この中央部19aに対して外周部19bがさらに厚肉(例えば21ミリ)に形成されている。また、グロメット19の外周部19bには、隔壁7の貫通孔8に嵌り合う溝部21が形成されている。
【0045】
前記グロメット19の中央部には、前記ホース6eを挿通させるためのホース挿通孔22が設けられている。また、該ホース挿入孔22を挟んだ前後の位置には、目隠し孔23,23が設けられている。なお、ホース挿通孔22の中心は前記分割ラインL上に設けられ、ホース挿通孔22の半円部がグロメット半体9Aと9Bにそれぞれ対称な形で形成されている。
【0046】
目隠し孔23は、薄肉(例えば3ミリ)の膜状をした蓋片部24により閉じられている孔である。蓋片部24は、目隠し孔23の中心を通る十字形の切り込み、すなわち目隠し孔23の中心から内周縁に向かって放射状に延びる切り込み25により、4つの小片24a,24a…に分割されており、各小片24a,24a…の先端側が弾性変形により上下方向に揺動できるようになっている。なお、各小片24a,24a…は、目隠し孔23にホース6fが挿入されていないとき、自己弾性復帰力で目隠し孔23を閉じ、外部からの塵埃や音の侵入を防ぐ。
【0047】
また、グロメット19の裏面側における中央部には、図12に示すように、ホース挿入孔22と目隠し孔23との間に、比較的薄肉(例えば4ミリ)のリブ部27,27が、目隠し孔23の切り込み25に通じる切り込み26で左右に分割された状態にして形成されている。この1対のリブ部27,27は、薄肉膜状の蓋片部24がホース6fの周面に弾発的に当接されて該ホース6fを抱持するとき、変形されずに薄肉の蓋片部24だけがめくれ上がるようにする役目をする。
【0048】
このような構成において、隔壁7の貫通孔8を貫通して配管されているホース6eとホース6fをそれぞれ1本ずつ隔壁7に固定する場合は、隔壁7の貫通孔8を貫通して配管されているホース6e,6fのうち、まずホース6fをグロメット半体19Aに取り付ける。該ホース6fの目隠し孔23への取り付けは、リブ部27,27との間の切り込み26を拡げて、グロメット半体19Aの側方からホース26fを挿入することにより取り付けることができる。
【0049】
また、このホース6fの挿入により蓋片部24の小片24a,24a…は、図9及び図13中に2点鎖線で示すように、上方向に逃がされ、ホース6fの周面に弾発的に当接して該ホース6fを抱持し、該ホース6fと目隠し孔23との間の隙間や該隙間によるズレを吸収する。これにより、一方のグロメット半体19Aがホース6fに取り付けられる。
【0050】
次いで、グロメット半体19Aのホース挿入孔22にホース6eを対応させ、さらに該グロメット半体19Aの対向面20にグロメット半体19Bの対向面20を突き合わせる。これにより、図9に示すように、ホース挿通孔22にホース6eが挿入された1つのグロメット19が組み立てられる。
【0051】
続いて、グロメット19を隔壁7の貫通孔8にはめ込み、貫通孔8の内周縁部を溝部21に嵌合させると、グロメット19がホース6e,6fと共に隔壁7に保持される。
【0052】
なお、挿通させるホース6fの本数が増えた場合には、グロメット半体19B側の目隠し孔23を使用してホース6fを1本だけ追加させることができる。
【0053】
図14〜図17は、上記実施例2のグロメット半体19A,19Bでなるグロメット19における目隠し孔23の変形例を示すものである。図14〜図17において、図9〜図13に示した構成と対応する部分は、同じ符号を付して説明する。この変形例では、リブ部27,27との間に設けた切り込み28と連続した形で、蓋片部24に目隠し孔23を横切る1本の切り込み29を設けるとともに、さらにリブ部27,27と蓋片部24との間に目隠し孔23の内周に沿って半円以上の切り込み30を設けて、リブ部27,27と蓋片部24との間を分離させたものである。このような構造にしても、目隠し孔23にホース6fを挿通させた際に、蓋片部24の小片24b,24bだけがめくれるようにすることもできる。
【0054】
なお、本発明は上記以外にも、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を適用した油圧ショベルにおける運転室内の構造を示す斜視図。
【図2】本発明に係る運転室シール構造の第1実施例を示す要部斜視図。
【図3】第1実施例で使用しているグロメットを上面側から見た平面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】図4のB部拡大断面図。
【図6】図2に示すグロメットの分解斜視図。
【図7】グロメットを使用してホースを隔壁に取り付ける作業手順を示す図で、ホースをグロメットのホース挿入孔に挿入させる前の状態図。
【図8】グロメットを使用してホースを隔壁に取り付ける作業手順を示す図で、ホースをグロメットのホース挿入孔に挿入した後の状態図。
【図9】本発明に係る運転室シール構造の第2実施例を示す要部斜視図。
【図10】図9に示すグロメットの斜視図。
【図11】図10に示したグロメットにおけるグロメット半体を上面側から見た斜視図。
【図12】図10に示したグロメットにおけるグロメット半体を下面側から見た斜視図。
【図13】図11のC−C線断面図。
【図14】第2実施例におけるグロメット半体の一変形例を上面側から見た斜視図。
【図15】図14に示したグロメット半体を下面側から見た斜視図。
【図16】図15に示したグロメット半体の要部拡大平面図。
【図17】図16のD−D線断面図。
【符号の説明】
【0056】
6a〜6f ホース(紐状体または棒状体)
7 隔壁
8 貫通孔
9 グロメット
9A,9B グロメット半体
9a 中央部
9b 外周部
10 対向面
11 溝部
12〜15 ホース挿通孔
13a〜15b 切欠部
16 縁取り部
19 グロメット
19A,19B グロメット半体
22 ホース挿通孔
23 目隠し孔
24 蓋片部
24a 小片
24b 小片
25 切り込み
26 切り込み
27 リブ部
28 切り込み
29 切り込み
30 切り込み
L 分割ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を有し、該挿通孔に紐状体または棒状体を挿通させた弾性体からなるグロメットを、建設機械の隔壁の貫通孔に装着してなるシール構造において、
前記グロメットを、分割ラインを前記挿通孔内に通して2分割したことを特徴とする建設機械のシール構造。
【請求項2】
上記挿通孔を、ほぼ真円形状で、かつ、その中心を上記分割ラインからずらして設け、上記グロメットの一方の半体側に前記挿通孔を形成している半円以上の平面視C字形状の切欠部を設けたことを特徴とする請求項1記載の建設機械のシール構造。
【請求項3】
上記挿通孔の内周縁に、内側に向かって延出された薄肉状の縁取り部をほぼ全周に亘って設けたことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械のシール構造。
【請求項4】
上記グロメットに、上記挿通孔内と切り込みを介して通じているとともに、上記紐状体または棒状体が挿通されていないときには孔を閉じている薄肉膜状の蓋片部を有する目隠し孔を設けたことを特徴とする請求項1,2または3記載の建設機械のシール構造。
【請求項5】
上記挿入孔と上記目隠し孔との間に、上記蓋片部よりも肉厚で、かつ上記切り込みにより2つに分割されている1対のリブ部を設けたことを特徴とする請求項4記載の建設機械のシール構造。
【請求項6】
上記蓋片部を、上記目隠し孔の中心から該目隠し孔の内周縁に向かって放射状に設けられている切り込みにより分割された複数の小片で形成したことを特徴とする請求項4または5記載の建設機械のシール構造。
【請求項7】
上記リブ部と上記蓋片部との間に、上記挿通孔に通じる切り込みと連通し、かつ前記目隠し孔の内周に沿って半円以上形成された切り込みを設け、該内周切り込みにより前記蓋片部と前記リブ部とを分離してなることを特徴とする請求項5記載の建設機械のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−171595(P2008−171595A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1658(P2007−1658)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】