説明

建設機械の旋回輪取付構造

【課題】旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付ける締結具の損傷を軽減できる建設機械の旋回輪取付構造の提供。
【解決手段】走行体2と、この走行体2の上部に設けられ、旋回輪3bを介して旋回可能な旋回体3とを備えた油圧ショベル1に設けられ、旋回体3の旋回フレーム3aに雄螺子を有するボルト12Aを介して旋回輪3bの外輪3cを取付ける油圧ショベル1の旋回輪取付構造において、旋回フレーム3aの上部に固着され、ボルト12Aの雄螺子が螺合する雌螺子9aを有するボス9と、旋回体3の旋回フレーム3a及び旋回輪3bの外輪3cにボルト12Aの雄螺子を通す貫通孔3a3,3c1とを備え、ボルト12Aを旋回輪3bの外輪3cの下方からこれらの貫通孔3a3,3c1に通してボス9に螺合させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の旋回輪取付構造に係り、特に旋回体の旋回フレームに雄螺子を有する締結具を介して旋回輪の外輪を取付ける建設機械の旋回輪取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の建設機械の旋回輪取付構造を示す図、図4は図3の要部拡大図である。
【0003】
油圧ショベル等の旋回式の建設機械は、履帯等を有して走行する走行体と、走行体の上方に旋回フレームを介して連結されて左右方向に旋回する旋回体と、この旋回体の前方に設けられ、各アクチュエータを有して掘削等の作業を行うフロント作業機とを備えている。具体的には、旋回体は走行体に備えられた旋回輪の外輪を旋回フレームに雄螺子を有する締結具、すなわちボルト等で取り付けることによって走行体に対して旋回可能となっている。
【0004】
このような旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付ける建設機械の旋回輪取付構造の一例として、特許文献1に示すように、ボルトを旋回輪の外輪に設けられた貫通孔に下方から通し、旋回フレームに設けられた雌螺子に螺合させることによって旋回フレームに旋回輪の外輪を取付けるようにしたものがある。
【0005】
この特許文献1に示される建設機械の旋回輪取付構造では、ボルトの雄螺子が螺合する雌螺子の嵌め合い長さが旋回フレームの厚さに制限されるので、十分な締め付けトルクが得られず、ボルトが緩むことが問題となっていた。また、ボルトの長さも旋回フレームと旋回輪の外輪の厚さに制限されるので、ボルトに掛かる負荷が過大となることが問題となっていた。
【0006】
そこで、これらの問題を解決するために、図3及び図4に示すように締結具、すなわちボルト12と旋回輪3bの外輪3cとの間にスペーサ11を挿入して十分な長さのボルト12を用い、このボルト12を旋回輪3bの外輪3cの貫通孔3c1に下方から通して旋回フレーム3aの底板3a1の雌螺子3a2に螺合させることにより、ボルト12の緩みを防止すると共に、ボルト12に掛かる負荷を軽減した建設機械の旋回輪取付構造が従来より知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−306466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の図3及び図4に示す従来の建設機械の旋回輪取付構造では、ボルト12と旋回輪3bの外輪3cとの間にスペーサ11を挿入しているので、ボルト12と走行体に備えられる履帯との間隔が狭くなっている。そのため、動作中の建設機械の振動で履帯に堆積した石や泥等が飛び跳ねた際にボルト12と当接し易く、ボルト12が折れるなどの損傷を生じる虞がある。この場合、損傷したボルト12を取り外すことが困難であり、このボルト12の交換に多大な労力とコストがかかる。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付ける締結具の損傷を軽減できる建設機械の旋回輪取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械の旋回輪取付構造は、走行体と、この走行体の上部に設けられ、旋回輪を介して旋回可能な旋回体とを備えた建設機械に設けられ、前記旋回体の旋回フレームに雄螺子を有する締結具を介して前記旋回輪の外輪を取付ける建設機械の旋回輪取付構造において、前記旋回フレームの上部に固着され、前記締結具の前記雄螺子が螺合する雌螺子を有するボスと、前記旋回体の前記旋回フレーム及び前記旋回輪の前記外輪に前記締結具の前記雄螺子を通す貫通孔とを備え、前記締結具を前記旋回輪の前記外輪の下方から前記貫通孔に通して前記ボスに螺合させることを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、締結具の雄螺子を旋回輪の外輪の下方から旋回輪の外輪の貫通孔及び旋回体の旋回フレームの貫通孔に順に通してボスの雌螺子に螺合させるようにしてあり、旋回フレームの上部に固着されるボスの長さは適宜選定可能であることにより、締結具の雄螺子が螺合する雌螺子の嵌め合い長さ及び締結具の長さが旋回フレームと旋回輪の外輪の厚さに制限されることがない。従って、旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付けるのに十分な長さの締結具を用いることができると共に、旋回フレームから下方に突出する締結具の部分の長さ寸法を短くすることができ、締結具と走行体に備えられる履帯との間隔を十分に得ることができる。これにより、締結具が動作中の建設機械の振動で履帯から飛び跳ねた石や泥等を回避し易くなり、旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付ける締結具が履帯から飛び跳ねた石や泥等で損傷することを軽減することができる。
【0012】
また、本発明に係る建設機械の旋回輪取付構造は、前記発明において、前記ボスは、円筒形状から成り、内側の一部に前記締結具の前記雄螺子が螺合する前記雌螺子を有することを特徴としている。このように構成すると、円筒形状のボスの内側の雌螺子の嵌め合い長さを自由に調整することにより、締結具をボスに締結するために十分な締め付けトルクを容易に得ることができる。また、ボスを旋回フレームの上部に固着した後でもボスの雌螺子の嵌め合い長さを調整することができ、締結具を別の大きさの締結具に自由に交換することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建設機械の旋回輪取付構造は、旋回フレームの上部に固着され、締結具の雄螺子が螺合する雌螺子を有するボスと、旋回体の旋回フレーム及び旋回輪の外輪に締結具の雄螺子を通す貫通孔とを備え、締結具の雄螺子を旋回輪の外輪の下方から貫通孔に通してボスの雌螺子に螺合させることにより、旋回フレームの下方に突出する部分の寸法を短くしながらも十分な長さの締結具を用いることができ、締結具と走行体に備えられる履帯との間隔を十分に得ることができる。これにより、締結具が動作中の建設機械の振動で履帯から飛び跳ねた石や泥等を回避し易くなり、これらの石や泥等がスペーサに当接して締結具が衝撃を受けることもないので、旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付ける締結具が履帯から飛び跳ねた石や泥等で損傷することを軽減することができる。
【0014】
また、上述したようにボスを旋回フレームの上部に固着することにより、従来技術で行った締結具にスペーサを挿入する工程を要しないので、旋回体の旋回フレームに旋回輪の外輪を取付ける工程数を従来よりも減らすことができ、締結具の取付又は取外しを容易に行うことができる。これにより、締結具の交換等のメンテナンス作業が簡便になり、建設機械の旋回輪の取付作業の労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る旋回輪取付構造の一実施形態が適用される建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示す旋回輪取付構造の要部を示す側面図である。
【図3】従来の建設機械の旋回輪取付構造を示す図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る建設機械の旋回輪取付構造を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0017】
本発明に係る建設機械の旋回輪取付構造の一実施形態は、例えば図1に示すように油圧ショベル1に設けられる。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とを備えている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5を備えている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態は、旋回体3の旋回フレーム3aの底板3a1に雄螺子を有する締結具、すなわちボルト12Aを介して旋回輪3bの外輪3cを取付けるものである。具体的に本実施形態は、旋回体3の旋回フレーム3aの底板3a1の上部に溶接で固着したボス9を備えている。また、このボス9は、円筒形状から成っており、内側の上部にボルト12Aの雄螺子が螺合する雌螺子9aと、内側の下部にボルト12Aの雄螺子が通る貫通孔9bとを有している。
【0019】
さらに、旋回体3の旋回フレーム3aの底板3a1にボルト12Aの雄螺子を通す貫通孔3a3を設けている。同様に、旋回輪3bの外輪3cにもボルト12Aの雄螺子を通す貫通孔3c1を設けている。
【0020】
そして、ボルト12Aの雄螺子を旋回輪3bの外輪3cの下方からこの外輪3cの貫通孔3c1、旋回フレーム3aの底板3a1の貫通孔3a3、ボス9の貫通孔9bの順に通してボス9の雌螺子9aに螺合させている。なお、ボス9の大きさ及びボス9の雌螺子9aの嵌め合い長さはボルト12Aの大きさ及び締め付けトルクに応じて予め設定されている。
【0021】
このように構成した本実施形態によれば、ボルト12Aの雄螺子を旋回輪3bの外輪3cの下方からこの外輪3cの貫通孔3c1、旋回フレーム3aの底板3a1の貫通孔3a3、ボス9の貫通孔9bの順に通し、旋回フレーム3aの底板3a1の上部に溶接で固着されたボス9の雌螺子9aに螺合させるようにしてあり、このボス9の大きさ及びボス9の雌螺子9aの嵌め合い長さを予め選定することにより、ボルト12Aの長さが旋回フレーム3aと旋回輪3bの外輪3cの厚さに制限されることがない。従って、十分な長さのボルト12Aを用いることができると共に、旋回フレーム3aから下方に突出するボルト12Aの部分の長さ寸法を短くすることができ、ボルト12Aと走行体2に備えられる履帯との間隔を十分に得ることができる。これにより、ボルト12Aが動作中の油圧ショベル1の振動で履帯から飛び跳ねた石や泥等を回避し易くなり、旋回体3の旋回フレーム3aの底板3a1に旋回輪3bの外輪3cを取付けるボルト12Aが履帯から飛び跳ねた石や泥等で折れたりするなどの損傷が生じることを軽減することができる。
【0022】
また、ボス9の雌螺子9aの嵌め合い長さをボルト12Aの雄螺子の嵌め合い長さに応じて予め設定しているので、ボルト12Aをボス9に締結するために必要な締め付けトルクを確保することができ、螺合したボルト12Aが動作中の油圧ショベル1の振動等で緩むことを防止することができる。
【0023】
また、本実施形態は、雌螺子9aを有するボス9が旋回フレーム3aの底板3a1の上部に溶接で固着されているので、ボルト12Aの取付又は取外しを容易に行うことができる。これにより、ボルト12Aの交換等のメンテナンス作業が簡便になり、旋回輪3bの取付作業の労力を軽減することができる。
【0024】
なお、上述の本実施形態において、必要に応じて円筒形状のボス9の内側の下部の貫通孔9bに雌螺子を新たに形成してボス9の雌螺子9aの嵌め合い長さを自由に調整することにより、十分な締め付けトルクを容易に得ることができる。これにより、螺合したボルト12Aが動作中の油圧ショベル1の振動等で緩むことをより防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0025】
さらに、ボス9を旋回フレーム3aの上部に固着した後でもボス9の内側の貫通孔9bに雌螺子を新たに形成してボス9の雌螺子9aの嵌め合い長さを調整することができ、ボルト12Aを別の長さのボルト12Aに自由に交換することができる。これにより、例えばボルト12Aが旋回フレーム3aの上部に固着したボス9に適合しない場合に別の長さのボルト12Aに交換したり、あるいはボス9の雌螺子9aの嵌め合い長さを調整することにより、旋回フレーム3a又は旋回輪3bの設計を変更せずに済むので、製造コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 走行体
3 旋回体
3a 旋回フレーム
3a1 底板
3a3 貫通孔
3b 旋回輪
3c 外輪
3c1 貫通孔
4 フロント作業機
9 ボス
9a 雌螺子
9b 貫通孔
12A ボルト(締結具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、この走行体の上部に設けられ、旋回輪を介して旋回可能な旋回体とを備えた建設機械に設けられ、前記旋回体の旋回フレームに雄螺子を有する締結具を介して前記旋回輪の外輪を取付ける建設機械の旋回輪取付構造において、
前記旋回フレームの上部に固着され、前記締結具の前記雄螺子が螺合する雌螺子を有するボスと、前記旋回体の前記旋回フレーム及び前記旋回輪の前記外輪に前記締結具の前記雄螺子を通す貫通孔とを備え、
前記締結具を前記旋回輪の前記外輪の下方から前記貫通孔に通して前記ボスに螺合させることを特徴とする建設機械の旋回輪取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の旋回輪取付構造において、
前記ボスは、円筒形状から成り、内側の一部に前記締結具の前記雄螺子が螺合する前記雌螺子を有することを特徴とする建設機械の旋回輪取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−43026(P2011−43026A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193315(P2009−193315)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】