説明

建設機械用のテーラード溶接パネルからなるビーム及びその製造方法

【課題】高強度、低重量、低コストのビーム構造の提供。
【解決手段】建設機械において使用するためのビームは、テーラード溶接パネルによって作られたモジュール型の構造からなる。クレーン用の伸縮式ブームを形成する際に使用するためのブーム部分は、少なくとも第一のパネル部材と第二のパネル部材とを備えており、少なくとも第二のパネル部材は、ブーム部分の長さに沿って延びている溶接部によって相互に溶接された少なくとも2つの鋼製部片を備えている。該2つの鋼製部片は、軸線を横断する方向に異なる単位長さ当たりの強度を有している。2つのパネル部材は、該ブーム部分の長手軸線に対して平行に延びている継ぎ目に沿って相互に溶接されてブーム部分を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械特にクレーン及び該建設機械において使用されるビームを形成するためにテーラード溶接パネルを使用する方法に関する。一つの実施形態においては、テーラード溶接パネルが、移動式巻き上げクレーン上の伸縮式ブームのためのブーム部分を形成するために使用されている。
【背景技術】
【0002】
建設機械におけるビームは荷重を支えるように設計されている。ビームの重量は、該ビームが使用される建設機械の他の設計及び使用構成部品に関して重大な考慮すべき点である場合が多い。例えば、伸縮式ブームの構成部分の重量は、クレーンの残りの部分を設計する際の重要なファクタである。伸縮式ブームの構造強度は、主に座屈荷重及び曲げ荷重に耐えなければならない。該構造強度は、典型的には、ブームが取り付けられるクレーンの最大吊り上げ能力を増すために、最小重量のブーム断面で最大にされる。ブーム部分の重量が減じられると、クレーンの吊り上げ能力は、通常は車両総重量(GVW)、キャリアの強度、及び車軸容量を増す必要なく増大させることができる。従って、ブームが処理できる荷重を維持しつつ、伸縮式ブームの各構成部分の重量を減じる多くの試みがなされて来た。このような試みの多くは、ビームが高い強度対重量比を有するようにビームを作るために高力鋼又はその他の材料を使用することを含んでいる。
【0003】
建設機械において使用されるビームの大半においては、ビーム上の荷重はビームの全ての部分を通して均一ではない。例えば、伸縮式ブームにおいて使用されるビームは、ビームの構成部分に高い曲げモーメントを生じさせる角度で動作せしめられる場合が多い。その結果、ビームの頂部は引っ張られ、ビームの底部は圧縮される。建設機械内のビームの種々の部分に荷重がかかるという形態により、重量を減少させる努力はまた、荷重が比較的高い領域で厚みが比較的厚くなり且つ荷重が比較的低い領域では比較的薄い材料が使用されるようにビームを形成し且つビームの軸線から比較的距離が離れている位置に比較的多くの材料を配置してビームが圧縮されるときにビームの座屈に対する抵抗力を増すことに向けられて来た。例えば、米国特許第3,620,579号及び第4,016,688号においては、クレーンは、コーナーがコーナー間の比較的薄いプレート材料よりも厚い鋼によって作られて強度が最大にされ且つ重量が最小にされている互いに嵌合している箱型のブーム部分によって作られている。該’579特許におけるブーム部分は、そのコーナーの各々に細長いコーナー部材を備えており、該コーナー部材の各々は、概ね一般的な配置であって細長い直線状のポケットを形成している外側端部に沿った細長い内方を向いた直線状の段部を有している部分を有している。該ブーム部分はまた、コーナーに概ね平行に且つ隣接して延びている端縁を備えている細長いプレートをも備えており、これらの端縁は前記の段部上に重なるように前記部分内のポケット内に配置されている。前記の’688特許には、アングル鋼部材とプレート鋼部材とを溶接することによって、矩形のブーム部分を形成して伸縮式ブームの各部分を形成する方法が記載されている。該ブームの種々の部分が相互に嵌合する。
【0004】
ビームを設計する際に考慮しなければならない別の点は、そのコストである。コストは、ビームを作るために使用される材料と材料をビームに作り上げるステップとの関数である。複合材料を使用することによって、比較的高い強度対重量比がもたらされるが、これは材料コストが比較的高い。金属を多数回折り曲げることによって作られた湾曲部分を備えている。金属を多数回曲げることによって作られた伸縮式ブーム部分用のビームは、単純な平らなシートよりも高い強度を提供するけれども、曲げのための高いコストが生じる。これは、ブーム部分が極めて長く、従って、多数回の曲げ動作を行うためには熟練技能による特別なコンピュータ制御設備が必要とされるからである。
【0005】
製造コストに加えて、操作コストもまた考慮に入れなければならない。比較的多くの費用を使って比較的軽いブームを最初の場所で製造することはコスト的に有利である。なぜならば、クレーンはその寿命期間に亘って比較的低い操作コストを有し、該低い操作コストは比較的高いイニシャルコストを補って余りあるからである。製造及び操作コスト、重量、並びに強度に関する考慮すべき点の均衡をとることは難しい。更に、幾つかの機能範囲においては、比較的高いイニシャルコストが適切であるかも知れず、一方、他の機能範囲においては比較的低コストのブーム構造は適切で且つクレーンの寿命期間を通じて最もコスト効率が良い。
【特許文献1】米国特許第3,620,579号
【特許文献2】米国特許第4,016,688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、高強度、低重量、低コストのビーム構造が必要とされている。更に、高強度が必要とされる一方で製造されるビームのコストを低く保つことが必要とされる用途において使用できるようにビームの強度を増すように設計変更できる自由度を許容するビーム構造も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、多くの従来技術によるビームよりも強度が高く、重量が小さく、コストが低いビームを作ることができる。更に、本発明の概念を使用すると、ビームの設計者は、類似した構造であるが必要とされるときに強度が比較的高く且つコストが比較的低いビームを実現するために、比較的迅速且つ簡単に所与の設計変更を施すことができる高い融通性を有する。該ビームは、伸縮式ブームの伸縮部分、クレーン上のアウトリガ、シャシ部品、及びその他の用途において使用することができる。
【0008】
壁の中心部分ではなく矩形のコーナー部分の断面が比較的厚い矩形のビームを発明した。しかしながら、4つのアングル材と4つの側方材とを相互に溶接する代わりに、該ビームは“テーラード溶接パネル”(TWP)によって作られたモジュール構造である。一つの好ましい実施形態においては、矩形のブーム区分の4つの側壁を形成している4つのパネルの各々は、3つの鋼製部片すなわち1つの薄い中央部分と2つの比較的厚みのある周縁部材とによって作られている。これらは長手方向に沿って相互に溶接されて矩形の箱状構造の一つの壁を形成している。次いで、該4つの側部が相互に溶接されて箱が作られる。
【0009】
第一の特徴によると、本発明は、建設機械の一部品において使用するためのビームに関し、該ビームは、長手軸線を有し且つ2つの頂部コーナーと2つの底部コーナーとによって相互に結合されて本体とされる頂部パネルと、底部パネルと、2つの側方パネルとを備えている。これらのパネルのうちの少なくとも1つは、相互に結合されている少なくとも2つの材料部片によって作られており、該2つの材料片は、長手軸線を横断する方向の単位長さ当たりの強度が異なっており、前記頂部パネルは、前記2つの側方パネルに溶接されてビームの2つの頂部コーナーを形成しており、前記底部パネルは、前記2つの側方パネルに溶接されてビームの2つの底部コーナーを形成している。
【0010】
第二の特徴においては、本発明は、クレーンのための伸縮式ブームを作る際に使用するための長手軸線を備えているブーム部分に関する。該ブーム部分は、2つの頂部コーナーと2つの底部コーナーとによって相互に結合されて本体とされている頂部パネルと、底部パネルと、2つの側方パネルとを備えており、少なくとも前記底部パネルは、少なくとも第一、第二、第三の鋼製部片によって作られており、これらの鋼製部片は、前記第一の鋼製部片が前記第二の鋼製部片と第三の鋼製部片との間に配置された状態で互いに溶接されており、前記第一の鋼製部片は前記第二の鋼片及び第三の鋼片よりも薄く、前記底部パネルは前記第一の鋼片内に湾曲した領域を含むように形成されており、該湾曲した領域は底部部分の長手軸線の方向に延びている。
【0011】
第三の特徴においては、本発明はビームを形成する方法に関する。該方法は、第一の側方パネルを準備するステップと、第二の側方パネルを準備するステップと、頂部パネルを準備するステップと、底部パネルを準備するステップとを含んでおり、前記底部パネルが、該底部パネルを形成するために高エネルギ密度の溶接プロセスを使用して少なくとも3つの鋼製部片を相互に溶接して作られ、更に、高エネルギ密度の溶接プロセスを使用して、前記第一の側方パネルが前記頂部パネルと底部パネルとに溶接され且つ前記第二の側方パネルが前記頂部パネル及び底部パネルに溶接されて4つのパネルからなるビームが形成される。コーナー部の溶接は完全溶け込み溶接であるのが望ましい。
【0012】
第四の特徴においては、本発明はビームを形成する方法である。該方法は、a)第一の側方パネルを、前記頂部パネルの第一の端縁面が前記第一の側方パネルの側面に突き当るように前記頂部パネルに隣接させて配置し且つ前記第一の側方パネルと頂部パネルとを、組み合わせられた第一の側方パネルと頂部パネルとの外側から前記第一の側方パネルの側面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって相互に溶接するステップと、b)第二の側方パネルを、前記頂部パネルの第二の端縁面が前記第二の側方パネルの側面に突き当るように前記頂部パネルに隣接させて配置し且つ前記第二の側方パネルと頂部パネルとを、組み合わせられた第二の側方パネルと頂部パネルとの外側から前記第二の側方パネルの側面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって相互に溶接するステップと、c)底部パネルを、前記第一及び第二の側方パネルの各々の端縁面が前記底部パネルの上面に突き当った状態で、前記第一及び第二の側方パネルに隣接させて配置するステップと、d)第一の側方パネルを、組み合わせられた第一の側方パネルと底部パネルとの外側から前記底部パネルの上面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって前記底部パネルに溶接するステップと、e)前記第二の側方パネルを、組み合わせられた前記第二の側方パネルと底部パネルとの外側から前記底部パネルの上面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって前記底部パネルに溶接するステップと、を含んでいる。
【0013】
もう一つ別の特徴においては、本発明は、伸縮式クレーンブームのためのブーム部分を作る際に使用するためのパネル部材の組み合わせに関する。該パネル部材の組み合わせは、頂部パネルと、各々が底部パネルの長辺の長さに亘って延びている溶接部によって相互に溶接されている少なくとも3つの鋼製部片からなる底部パネルと、第一の側方パネルの長辺の長さに亘って延びている溶接部によって相互に溶接されている少なくとも2つの鋼製部片からなる前記第一の側方パネルと、各々が第二の側方パネルの長辺の長さに亘って延びている互いに隣接している部片間の突き当て溶接によって相互に溶接されている少なくとも2つの鋼製部片からなる前記第二の側方パネルと、を備えている。
【0014】
更に別の特徴においては、本発明は、少なくとも第一のパネル部材と第二のパネル部材とを備えているクレーン用伸縮式ブームを作る際に使用するための長手軸線を有するブーム部分である。該ブーム部分は、互いに隣接している部片間の突き当て溶接によって相互に溶接された少なくとも2つの鋼製部片を備えており、該2つの鋼製部片は、前記長手軸線を横断する方向の単位長さ当たりの圧縮強度が相互に異なっており、前記2つのパネル部材は、該ブーム部分の長手軸線と平行に延びている継ぎ目に沿って相互に溶接されて該ブーム部分を形成している。
【発明の効果】
【0015】
テーラード溶接パネルによって作られたビームは、比較的低コストで製造することができ、依然として高い強度及び低い重量を提供することができる。本発明のビーム構造を使用することによって、クレーンの設計者は、ある種の用途に対して経済的であるクレーン用ブームを設計することができる。本発明の好ましい実施形態の一つの利点は、標準的なプロセスを使用し、TWPの周縁部分の厚みを変えるか又は周縁部分上に比較的高い降伏強度の鋼を使用することによって、種々の能力の種々のブーム区分を作ることができる点である。従って、同じ基本的な設計及び製造プロセスを改造して、異なる能力の他のクレーンモデルのための異なるブーム部分を容易に作ることができる。
【0016】
座屈強度を維持しつつ重量の低減を可能にする一つの極めて重要な構造は、底部のTWPを、湾曲した領域を有しているブーム部分の底部側壁を形成している中央部分に成形パネルによって作ることである。薄い底部プレートを曲げることによって該部片の座屈抵抗力が増大する。(ブーム部分の底部は、伸縮式ブームからなるクレーン内での圧縮荷重を担っており、一方、ブーム部分の頂部は、引っ張り荷重を担っている。)本発明の好ましい実施形態はまた、底部部片内の湾曲領域を改造することによって、ブーム部分内の種々の強度が達成できるある程度の可撓性を提供する。しかしながら、TWPの一部に湾曲した領域を作ることはブーム部分全体を湾曲した部分に形成するよりもかかる費用が少ない。
【0017】
TWPは、完全溶け込み用のレーザービームをMIG(ミグ)溶接プロセスを組み合わせて使用する方法のような複合溶接プロセスを使用して製造することができる。従来のブーム部分同士は、コーナー部に部材を重ねた状態で相互に溶接され、隅肉溶接は該重ね合わせによって空間内に作られる。複合レーザー・MIG溶接を使用した本発明の好ましい実施形態は、コーナーに完全溶け込みを作ることができ、従って、矩形の溝の突き当て結合溶接を使用している。
【0018】
本発明のこれらの及びその他の利点並びに本発明自体は、添付図面に参照することによって更に容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明を使用しているビームによって作られた伸縮式ブームを備えた移動式吊り上げクレーンの斜視図である。
【0020】
【図2】図2は、収縮状態にある図1のクレーンの伸縮式ブーム側方立面図である。
【0021】
【図3】図3は、伸長状態にある図1のクレーンの伸縮式ブーム側方立面図である。
【0022】
【図4】図4は、図2のブームのノーズ部の拡大斜視図である。
【0023】
【図5】図5は、図2のブームの一区分として使用されている1つのビームの斜視図である。
【0024】
【図6】図6は、輸送のために束として包装されている図5のビームを作るために使用されるテーラード溶接パネル同士の組み合わせの斜視図である。
【0025】
【図7】図7は、図5のビームを形成するために溶接される前の図6のパネルの分解端面図である。
【0026】
【図8】図8は、図5の線8−8に沿って断面された断面図である。
【0027】
【図9】図9は、図3のブームの拡大部分側方立面図である。
【0028】
【図10】図10は、図9の線10−10に沿って断面された断面図である。
【0029】
【図11】図11は、図9の線11−11に沿って断面された断面図である。
【0030】
【図12】図12は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第一の代替的な設計の断面図である。
【0031】
【図13】図13は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第二の代替的な設計の断面図である。
【0032】
【図14】図14は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第三の代替的な設計の断面図である。
【0033】
【図15】図15は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第四の代替的な設計の断面図である。
【0034】
【図16】図16は、図5のビームの部分側方率面図である。
【0035】
【図17】図17は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第五の代替的な設計の断面図である。
【0036】
【図18】図18は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第六の代替的な設計の断面図である。
【0037】
【図19】図19は、伸縮式ブームを作るために使用されるビームの第七の代替的な設計の断面図である。
【0038】
【図20】図20は、図2のブームの代替な設計のための第一の部分として使用されるビームの斜視図である。
【0039】
【図21】図21は、図20のビームの側方立面図である。
【0040】
【図22】図22は、図21の線22−22に沿って断面された断面図である。
【0041】
【図23】図23は、図21の線23−23に沿って断面された断面図である。
【0042】
【図24】図24は、図2のブームの代替的な構造を作るために図20のビームに沿った第二の部分として使用されるビームの斜視図である。
【0043】
【図25】図25は、図24のビームの側方立面図である。
【0044】
【図26】図26は、図25の線26−26に沿って断面された断面図である。
【0045】
【図27】図27は、図25の線27−27に沿って断面した断面図である。
【0046】
【図28】図28は、図9と似た拡大部分側方立面図であるが、図20及び24のビームが代替的な構造のブームを作るために組み立てられるときの部分同士の重なり状態を示している。
【0047】
【図29】図29は、図28の重なっている部分の部分内方斜視図である。
【0048】
【図30】図30は、図1のクレーン上で使用されているアウトリガアセンブリの斜視図である。
【0049】
【図31】図31は、図30のアウトリガアセンブリの1つのビームとジャッキとの側方立面図である。
【0050】
【図32】図32は、図31の線32−32に沿って断面された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を更に説明する。以下の段落においては本発明の種々の特徴が更に詳細に規定されている。このように規定されている各特徴は、対照的なものとして明確に示されていない限り、何らかの他の特徴と組み合わせることができる。特に、好ましいか又は有利なものであるとして示されている特徴は、好ましいか又は有利なものとして示されている何らかの他の特徴と組み合わせることができる。
【0052】
本発明書及び特許請求の範囲において使用されている以下の用語は、以下に規定されている意味を有している。
【0053】
“高エネルギ密度溶接プロセス”という用語は、レーザービーム、電子ビーム、又はプラズマアーク溶接のうちの少なくとも1つを含んでいる溶接プロセスを指している。
【0054】
“複合溶接プロセス”という用語は、高エネルギ密度溶接プロセスを一般的な不活性ガス金属アーク溶接(GMAW)又はガス−タングステン・アーク溶接(GTAW)プロセスと組み合わせた溶接プロセスを指している。GMAWは金属不活性ガス(MIG)溶接又は金属活性ガス(MAG)溶接とすることができる。レーザーを使用する典型的な複合溶接プロセスにおいては、レーザーが先導し、GMAW又はGTAWがこれに続く。
【0055】
建設機械におけるビームは、一般的には、特定の重力位置関係で使用できるように設計される。例えば、伸縮式ブームのブーム部分は、水平に対して0°より大きく90°より小さい角度で使用されるという考えの下に設計されている。従って、ブームが90°に近い角度に持ち上げられたときでさえ、ブーム部分の一部は常に頂部にあり一部は常に底部にある。従って、ここで使用されている“頂部”、“底部”及び“側部”という用語は、ひとたび建設機械の部片内に設置されると、ビームが意図されている使用方法に関して言及されているものとして理解される。例えば、ビームが相互に溶接されているときのようなビームの製造中においては、“底部”は、時には“頂部”の上に配置されるかも知れない。
【0056】
“〜の長さに亘って延びている”という句は、距離ではなく方向であると解釈されるべきである。例えば、“底部パネルの長辺の長さに亘って延びている溶接”とは、溶接の方向が底部パネルの長辺の方向にあることを意味している。この句は、溶接部が底部パネルの長辺の全長と同じ長さであることは意味していないけれども、該溶接はその長さとすることができる。更に、該語句は、溶接が直線であることは意味していないけれども、該溶接部は概ね指示された方向に延びていることを意味している。
【0057】
本発明は、多くのタイプの建設機械に対する適用性を有するけれども、図1に移送形態で示されている移動式の吊り上げクレーン10に関連付けて説明する。(クレーン10の幾つかの構成要素、例えば、ブームの頂部滑車、荷吊り上げワイヤーロープ、運転室構成部品等は、明確化のために含まれていない。)移動式吊り上げクレーン10は、キャリア12とも称されるタイヤ14の形態の可動の接地部材を備えている下部構造を備えている。もちろん、他のタイプの可動の接地部材例えばクローラをクレーン10に使用することができる。クレーン10はまた、以下に更に詳細に説明するアウトリガアセンブリ38の一部としてのアウトリガビーム上のジャッキ16の形態の固定の接地部材をも備えている。
【0058】
回転床20がキャリア12に取り付けられており、該回転床は垂直軸線を中心として接地部材14及び16に対して回転することができる。該回転床は該回転床上に枢動可能な形態で取り付けられているブーム22を支持している。油圧シリンダ24がブーム持ち上げ機構(時には、ブームホイスト機構と称される)として使用され、該ブーム持ち上げ機構は、クレーンの動作中に水平軸線に対するブームの角度を変えるために使用することができる。クレーン10はまたカウンタウエイトユニット34をも備えている。カウンタウエイトは支持部材上の個々のカウンタウエイト部材の多重積層体の形態をしている。
【0059】
通常のクレーン動作中において、荷吊り上げワイヤーロープ(図示せず)は、通常はブーム22上の一組のブームの頂部滑車に通されることによってプーリーの外周を這わされてフックブロック(図示せず)を支持している。荷吊り上げワイヤーロープの他端は、ターンテーブルに結合されている荷巻き上げドラム26上に巻き付けられている。回転床20は、一般的に移動式吊り上げクレーン上に見ることができる運転室28のような他の構成要素を備えている。補巻きロープ用の第二の巻き上げドラム30も設けられている。クレーン10のその他の細部は、本発明の理解のためには重要ではなく且つ一般的な伸縮ブーム式クレーンにおけるものと同じにすることができる。
【0060】
ブーム22は、多数のブーム部分を伸縮可能な形態で相互に結合させることによって作られる。図2及び3において最も良くわかるように、ブーム22は4つの部分、すなわち、基部42、基部42内に嵌合している第一の伸縮部分44、第一の伸縮部分44内に嵌合している第二の伸縮部分46、及び第二の伸縮部分46内に嵌合している第三の伸縮部分48によって作られている。もちろん、本発明は、ブームを伸縮させるこれより少ない又は多い部分、例えば2つ、3つ、5つ、6つ、更には7つのブーム部分によってブームを形成するために使用することができる。図3においてわかるように、第三の伸縮部分48は、第二の伸縮部分46の頂端から延び且つブーム頂部がこれに嵌合する設計とされている。
【0061】
ブーム部分を相互に取り付ける方法、及びブーム部分42,44,46,48を相対的に伸縮させる方法は、現存の伸縮ブーム式クレーンにおける場合と同じである。クレーン10は、主としてブーム部分42,44,46,48として機能する中空ビーム構造が従来の伸縮ブーム式クレーンと異なっている。
【0062】
図5〜8において最も良くわかるように、個々のブーム部分44はビームによって作られている。該ビームは、長手軸線43と概ね矩形の横断断面とを有しており、頂部パネル50と底部パネル60と2つの側方パネル70,80とを備えており、これらのパネルは、2つの頂部コーナー57,58と2つの底部コーナー76,86とによって相互に結合されて本体とされている。これらのパネルのうちの少なくとも1つ好ましくは少なくとも3つ、ビーム44の場合には4つのパネル全てが、相互に溶接された少なくとも2つの材料部片によって作られている。これらのパネルはテーラード溶接パネル(TWP)と称される。なぜならば、パネルを形成するために相互に溶接される部片は、寸法、材料等級、成形形状等に関して、これらのパネルによって作られるビームの特別な部品用に“特別にあつらえられており”且つビームが使用される用途用としても特別にあつらえられているからである。この実施形態においては、各パネルの個々の部片間の溶接はビームの長手軸線と平行に延びているが、このことは、図20〜29に関して以下に説明するように常に当て嵌まる訳ではない。
【0063】
TWPにおいては、パネルの種々の部分は、通常は長手軸線43を横断する方向における単位長さ当たりの強度が異なっている。ビーム44においては、パネルの各々は、鋼製部片特に少なくとも3つの鋼製部片によって作られており、この場合に該鋼製部片のうちの少なくとも2つは相互に異なる厚みを有している。該3つの鋼製部片は、各パネル上の2つの側部と中央部分とを形成しており、この場合に図7及び8に示されているように、パネルの各々の側部に使用されている鋼は、3つの鋼製部片の各組における中央の部片が外側の部片よりも厚みが小さくなるように、同じパネルの中央部分に使用されている鋼よりも厚みが大きい。別の方法として、パネルの各々は少なくとも3つの鋼製部片によって作ることができ、この場合に、鋼製部片のうちの少なくとも2つは互いに異なる降伏強度を有しており、降伏強度が高い方の鋼がパネルの側方部分に使用されている。もちろん、該側方部分は、中央部分の厚みと異なる厚みを有し且つ同じく中央部分に対して使用される鋼の降伏強度と異なる降伏強度の鋼によって作ることができる。
【0064】
従って、上の記載からわかるように、好ましいブーム部分は、長手軸線を有しており且つ少なくとも第一のパネル部材と第二のパネル部材とを有しており、少なくとも前記第二のパネル部材は相互に溶接された少なくとも2つの鋼製部片からなり、この場合に、溶接部は該ブーム部分の長手軸線に対して平行に延びている。該2つの鋼製部片は軸線43を横断する方向に異なる単位長さ当たりの圧縮強度を有している。該2つのパネル部材は、ブーム部分の長手軸線に対して平行に延びている継ぎ目に沿って相互に溶接されてブーム部分を形成している。
【0065】
ビーム44の場合には、頂部パネル50は、第一、第二及び第三の鋼製部片によって作られており、この場合に、これらの鋼製部片は、第一の鋼製部片53が第二の鋼製部片52と第三の鋼製部片54との間に位置し、各溶接部がビーム44の長手軸線43に対して平行に延びるようにして相互に溶接される。同様に、底部パネル60は、第一の鋼製部片63が第二の鋼製部片62と第三の鋼製部片64との間に配置されることによって形成されている。側方パネル70,80は、各々、部片73,72,74及び83,82,84によって作られている。
【0066】
パネル50,60,70、80が相互に溶接されると、コーナーの各々は二次加工された補強コーナーを構成する。図示されている実施形態においては、頂部コーナー57は、頂部パネル50の側方部分52と側方パネル70の側方部分72とによって作られている。同様に、頂部コーナー58は、頂部パネル50の側方部分54と側方パネル80の側方部分82とによって作られている。底部コーナー76は、底部パネル60の側方部分62と側方パネル70の側方部分74とによって作られており、底部コーナー86は、底部パネル60の側方部分64と側方パネル80の側方部分84とによって作られている。これらのパネルは、如何なる開先加工又は面取りもすることなくなされる形グルーブ突き当て溶接によって相互に溶接されている。パネル間の溶接は、パネルの単一の側辺からの溶接によってなされる完全溶け込み溶接である。
【0067】
頂部パネル50においては、2つの外側の鋼製部片52,54は互いに同じ厚みを有している。底部パネル60内の外側の鋼製部片も同様である。しかしながら、所与のパネル上の外側部片は相互に異なる厚みを有することができる。例えば、側方パネル70及び80の下方の外側部片74,84は、上方の側方部片72,82より厚くすることができる。該外側部片の厚みもまたパネル間で同じである必要はない。別の言い方をすると、側方部分64は側方部分54又は84と同じ厚みである必要はない。同じ降伏強度の鋼が1つのパネル内の全ての部片に対して使用されるときには、62,64のような2つの隣接している外側部片は、中央の部片63の厚みの少なくとも1.5倍の厚みを有しているのが好ましい。該2つの隣接している外側部片の厚みは、中央の部片の厚みの少なくとも2倍であるのが更に好ましい。
【0068】
パネル60は、長手軸線43を横断する方向に第一の単位長さ当たりの圧縮強度を有している中央部片63と、各々が前記長手軸線を横断する方向に前記第一の圧縮強度よりも大きな単位長さ当たりの圧縮強度を有している2つの隣接している外側部片62,64とを含んでいる3つの鋼製部片を備えている。この単位長さ当たりの圧縮強度は、鋼の厚みに鋼の圧縮降伏強度をかけ算することによって決まる。例えば、厚みが1/2インチ(1.27センチメートル)で80ksi(平方インチ当たり80,000ポンド)(552N/mm)の圧縮降伏強度を有している鋼製部片は、1インチ当たり40,000ポンド(460トン/mm)の単位長さ当たりの圧縮強度を有している。従って、2つの外側部片62,64の単位長さ当たりの圧縮強度は、中央の部片63の単位長さ当たりの圧縮強度よりも高い。これは、1)中央の部片63の厚みよりも厚みのある鋼を外側部片62,64に使用し、3つの部片全ての鋼が同じ圧縮降伏強度を有するようにすることによって、又は2)部片62,64,63の各々に対して同じ厚みの鋼を使用するが、中央の部片63に対して使用されているものよりも高い圧縮降伏強度の鋼を2つの外側部片62,64に使用することによってなされる。他の降伏強度の鋼を使用することができるけれども、底部パネル内の3つの鋼製部片は全て約100ksi〜約120ksi(約689〜約827N/mm)の圧縮降伏強度を有しているのが好ましい。
【0069】
パネル60は、第一の鋼製部片63内にビーム44の長手軸線43の方向に延びている湾曲領域65を備えるように形成されている点で他のパネルとは異なっている。湾曲領域65は、底部パネル60の長辺に対して平行に延びている複数の屈曲部を備えているのが好ましい。図7及び8において最も良くわかるように、第二及び第三の鋼製部片62,64は、各々、底部コーナー76,86に隣接して比較的平らな領域を提供している。更に、第一の鋼製部片63自体は、湾曲領域65の外側に比較的平らな部分67,68を有し且つ部片62,64の外面と同じ面上にある外側面をも有している。
【0070】
頂部パネル50は概ね平らであり且つ底部パネル60は湾曲した領域65を備えているのに対して、側方パネル70,80は、概ね平らであるが、各々、複数のエンボス78,88を含んでいる。側方パネル70,80の中央部分73,83を形成している鋼には、該側方パネルの剛性を高めるために複数のエンボスが型押しされている。ビーム44上の型押しされたエンボス78,88は、図16に見ることができるように形状が円形である。しかしながら、該エンボスは他の形状、例えば、図17及び19においてビーム542,742上に示されている互いに平行な斜めの矩形578,778及び図18においてビーム642上に示されている互い違いの角度で傾けられている矩形678のような形状を有することができる。同じく、全てのブーム部分がエンボスを必要とする訳ではない。図3においてわかるように、伸縮式ブーム部分46,48は、側方パネル上にエンボスがない状態で作られている。更に、幾つかのクレーン実施形態においては、標準的な4プレート型のブーム構造が第三の伸縮部分48のために使用することができる。
【0071】
ビーム44は、最初に個々のパネル50,60,70,80が作られ、次いでこれらのパネルを相互に溶接することによって作られる。底部パネルは、高エネルギ密度溶接プロセスを使用して少なくとも3つの鋼製部片を相互に溶接して作られるのが好ましい。同じく高エネルギ密度溶接プロセスが使用されて、少なくとも2つの鋼製部片(この場合には、3つの鋼製部片)を相互に溶接して第一の側方パネル70が形成され、少なくとも2つ(好ましくは3つ)の付加的な鋼製部片を相互に溶接して第二の側方パネル80が形成されるのが好ましい。同じく高エネルギ密度溶接プロセスが使用されて、少なくとも3つの追加の鋼製部片を相互に溶接して頂部パネル50が形成されるのが好ましい。各パネル内の第一の鋼製部片と第二の鋼製部片との間の溶接及び第一の鋼製部片と第三の鋼製部片との間の溶接は突き当て溶接からなるのが好ましい。鋼製部片同士は、如何なる開先加工又は面取りもなされることなくなされる形グルーブ突き当て溶接によって相互に溶接される。鋼製部片間の溶接は、パネルの単一の側辺から溶接することによってなされる完全溶け込み溶接であるのが好ましい。
【0072】
個々のパネルが作られた後に、好ましくは高エネルギ密度溶接プロセスが使用されて、第一の側方パネル70が頂部パネル50及び底部パネル60に溶接され、第二の側方パネル80が頂部パネル50及び底部パネル60に溶接されて4つのパネルからなるビームが形成される。好ましい高エネルギ密度溶接プロセスは、レーザーとGMAW(不活性ガス金属アーク溶接)との両方を使用しており、GMAWはMIG(ミグ)溶接であるのが好ましいけれども、MAG溶接をレーザー溶接と共に使用することもできる。
【0073】
コーナーを形成するためのパネル部材を相互に隣接させる配置及びコーナーを形成するために使用される溶接の形式は、図8に示されているものが好ましい。第一の側方パネル70は、頂部パネル50の第一の端縁面が第一の側方パネル70の側面に突き当たるように頂部パネル50に隣接せしめられて配置される。次いで、第一の側方パネル70と頂部パネル50とが、組み合わせられた第一の側方パネルと頂部パネルとの外側からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって、第一の側方パネル70の内側面の面が含まれる方向から相互に溶接される。次に、第二の側方パネル80が、頂部パネル50の第二の端縁面が第二の側方パネル80の側面に突き当たるようにして頂部パネル50に隣接せしめられて配置される。次いで、第二の側方パネル80と頂部パネル50とが、組み合わせられた第二の側方パネルと頂部パネルの外側からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって、第二の側方パネルの内側面の面が含まれる方向から相互に溶接される。最後に、底部パネル60が、第一及び第二の側方パネル70,80の各々の端縁面が底部パネル60の上面に突き当たるように第一及び第二の側方パネル70、80に隣接するように配置される。次いで、第一の側方パネル70が、組み合わせられた第一の側方パネル及び底部パネルの外側からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって、底部パネル60の上面の面が含まれる方向から底部パネル60に溶接され、次いで、第二の側方パネル80が、組み合わせられた第二の側方パネルと底部パネル60との外側からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって、底部パネル60の上面が含まれる面が含まれる方向から底部パネル60に溶接される。このように、頂部コーナーと底部コーナーとの継ぎ目は、クレーンのブーム部分として使用されるときにビーム上の荷重状態を補助するために、各々垂直方向及び水平方向に配置されている。図8に示されている面と根元との溶接継ぎ目は、頂部の溶接が剪断荷重及び曲げ荷重をより良好に処理できる一方で底部の溶接が圧縮荷重をより良好に処理することができるように配慮した配向とされている。この配向は好ましいけれども、該溶接はまた二次加工が容易な種々の方法で配向させることもできる。溶接部の根元は、典型的には溶接部の面よりもプロセスの不完全性に敏感であり、従って、ビームが頂部パネルに張力がかけられ且つ底部パネルが圧縮される曲げ力を受けたときに、頂部パネルのための溶接部の根元が溶接部の面と比較して比較的弱い引っ張り荷重を有するように溶接部を配向させることが好ましい。ビーム44が基部42から伸長せしめられるときに、個々の溶接部の最も高い荷重は、ビーム同士が重なっている差し込み領域における荷重である。図8においてわかるように、コーナー57及び58の溶接部の各々の根元は、溶接部の向きが異なっている場合より小さな引っ張り荷重を有する場所に溶接部の根元が配置されるように配向されている。第二の側方パネル80と底部パネル60との間の溶接を最後になされる溶接として上記したけれども、該溶接は、第一の側方パネル70と底部パネル60との間の溶接より前になすことができる。
【0074】
完全溶け込み溶接を達成するためには、底部パネル60に対する溶接部における第一及び第二の側方パネル70,80の厚みは約10mm以下であるのが好ましく、第一及び第二の側方パネル70,80に対する溶接部における底部パネル60の厚みは約12mm以下であるのが好ましい。他の寸法を使用することができるけれども、ビーム44のための一つの例示的な構造においては、1)中央プレート53の厚みが4mmで且つ側方部分52,54の各々の幅が76.2mmで厚みが10mmである頂部パネル50と、2)中央プレート63の厚みが4mmで且つ側方部分62,64の各々の幅が101.6mmで厚みが12.7mmである底部パネル60と、3)中央部分73,83の厚みが5mmである側方プレート70,80とが使用されている。側方部分72,74,82,84は全て厚みが10mmである。側方部分72,82の幅は76.2mmであり、一方、側方部分74,84の幅は101.6mmである。この例におけるエンボスの深さは中央部分73,83の厚みに等しい。
【0075】
ビーム44は、概ね矩形の横断断面を有しているので、上記の方法で溶接するためには、第一の側方パネル70は頂部パネル50に90°の角度で隣接しめられて配置され、第二の側方パネル80もまた頂部パネル50に90°の角度で隣接せしめられて配置されている。同様に、上記の溶接プロセスのためには、底部パネル60は、側方パネルの各々に対して90°の角度で第一及び第二の側方パネル70,80に隣接せしめられて配置されている。
【0076】
別々のパネル部材が一つの製造設備において製造され、次いで、これらが組み合わせた束として一緒に輸送されて別の製造設備においてビームとして製造される。このようなTWPの束が図6に示されており、これはパネルキットと称される。図6におけるパネルキットは、伸縮式クレーンブーム用のブーム部分を作る際に使用するためのパネル部材を含んでいる。該組み合わせは、上記した頂部パネル50、底部パネル60、第一の側方パネル70、及び第二の側方パネル80を備えている。底部パネル60内の溶接と側方パネル70、80の各々の溶接とは、各々、互いに隣接している鋼製部片間の突き当て溶接からなるのが好ましい。このときまでは、パネルはキットとして相互に束ねられているのが好ましく、第一及び第二の側方パネル70,80は、側方パネルにエンボスを有するブーム部分用としてエンボス78,88を既に備えているのが好ましい。ビーム44がパネルによって作られる場合には、嵌合部、結合部材、及び端部の補強部材もまた、一般的な伸縮式ブーム部分と同様にしてビームに溶接される。しかしながら、パネル上に比較的厚みのある外側部分52,54,62,64,72,74,82,84を使用することにより、矩形の伸縮式ブーム部分において一般的に使用されているように重ね板を付加する必要がない。
【0077】
ひとたびビーム44が作られると、該ビームは伸縮式ブーム22を作るために使用することができる。上記したように、伸縮式ブーム22は、第一、第二、第三の伸縮部分と基部とを備えており、一つの伸縮部分が別の伸縮部分の内側に摺動可能な形態で嵌合している。ビーム44はブーム22用の第一の伸縮部分として記載されているけれども、部分42,44,46,48のいずれか一つ或いは好ましくは全てをTWPによって作ることができる。図9〜11においてわかるように、ビーム42は、ビーム44において使用されているものとちょうど同じようにTWPによって作られているが、ビーム44がビーム42の内側に嵌ることができるように比較的大きな寸法に作られている。
【0078】
従来のブーム部分と同様に、第一のブーム部分42は図9〜11において最も良くわかるように、頂部パネル50に結合されている2つの頂部前方摩耗パッド92と、底部パネル60に結合されている2つの底部前方摩耗パッド94と、各側方パネル70,80に結合されている側方前方摩耗パッド95とを備えている。もちろん、更に多数の個々の摩耗パッドを使用することができる。基部部分42はまた、上方プレート50に取り付けられている上方の後方摩耗パッド96をも備えており、第一の伸縮部分44は、その底部プレートの底部を横断して取り付けられている後方の下方摩耗パッド98を備えている。図11においてわかるように、頂部の摩耗パッド96は、これらのパッドがビーム44の幅を越えて延びていて側方摩耗パッドをも提供することができるように配置されている。基部部分42と第一の伸縮ビーム44とを形成するプレート用としてTWPを使用することの利点の一つは、頂部及び底部のパネル50,60内の比較的厚い部分52,54,62,64が底部のブーム部分間の摩耗パッドと接触するためのレールを提供している点である。摩耗パッド92,94,95は、共通の横断面(図9において線99によって表わされている)がこれらの摩耗パッドの長手中心軸線において交わるように位置決めされるのが好ましい。摩耗パッド92,94,95と交わる共通の横断面は、ビームが図9に見ることができる一杯まで伸ばされた設計位置にあるときにビーム44の側方プレート70,80の各々に設けられている互いに隣接したエンボス78と88との間で等間隔位置にあることもまた好ましい。上記したエンボスの配置によって、側方パネル上の座屈に対する抵抗力が改良されることがわかった。
【0079】
ビーム44は4つのTWPを備えているけれども、他の実施形態においては、少なくとも底部パネルと2つの側方パネルとを各々少なくとも2つの鋼製部片によって作り、頂部パネルを図12に示されているように単一の鋼製部片によって作ることができる。ビーム142は底部パネル160を備えており、この底部パネル160は、パネル上の2つの側部と1つの中央部分とを形成している少なくとも3つの鋼製部片によって作られており、該底部パネルの側部上に使用されている鋼は、該底部パネルの中央部分に使用されている鋼よりも厚みがある。しかしながら、頂部パネル150は真に単一の鋼製部片であり、2つの側方パネル170,180は2つの鋼製部片によって作られている。
【0080】
矩形である以外に、本発明のビームは他の横断断面形状を有することができる。例えば他の実施形態においては、ビーム242は、図13に見ることができるように概ね台形の横断面を有している。
【0081】
図14には、TWPによって作られたビーム342のためのもう一つ別の代替的な構造が示されている。パネル350,360,370,380の各々は、ちょうどパネル50,60,70,80のように3つの鋼製部片によって作られている。しかしながら、ビーム342は、コーナーに種々の継ぎ目を使用して作られている。コーナーが同面であるのではなく、底部パネル360が側方パネル370,380を通り越して外方へ延びている。更に、頂部パネル350は側方パネル370と380との間に溶接されており、これらの側方パネルは頂部パネルを通り越して上方へ延びている。この実施形態においては、パネル同士は、コスト及び資源の利用可能性に関する製造上の融通性を有しているので、一般的な溶接方法によって相互に溶接される。
【0082】
伸縮式ブームを作るために使用できる別の代替的なビーム構造は、図15に示されているように、曲率が変化している断面部分を備えたビーム442を有するようになされている。この実施形態においては、ビームは、少なくとも第一のパネル部材と第二のパネル部材とによって作られている。第一のパネル部材450は、湾曲形状に作られていてブーム部分のための頂部の曲面板を提供している。第二のパネル部材は、少なくとも2つ、この場合には3つの鋼製部片460,470,480からなり、これらの鋼製部片は互いに隣接している部片間の突き当て溶接によって相互に溶接されており、該突き当て溶接部の各々はブーム部分の長手軸線に平行に延びている。3つの鋼製部片460,470,480は、湾曲形状に作られてブーム部分の底部の曲面板を提供している。該3つの鋼製部片460,470,480は、第一の厚みの中央の部片460と2つの隣接している外側部片470,480とからなり、該2つの外側部片は各々前記第一の厚みよりも大きな厚みを有している。従って、鋼製部片のうちの少なくとも2つは、ビームの軸線を横断する方向に異なる単位長さ当たりの圧縮強度を有している。部片470,480は、各々、完全溶け込み突き当て溶接によって、溶接部475,485においてパネル450に溶接されている。このようにして、該2つのパネル部材は、該部分の長手軸線に対して平行に延びている継ぎ目に沿って相互に溶接されてブーム部分を形成している。これら3つの鋼製部片460,470,480は平らなパネル内で相互に溶接することができ、該平らなパネルは、その後折り曲げられて図15に見られる形状を形成するか、又は該3つの個々の鋼製部片460,470,480を最初に曲げ、次いで相互に溶接することができる。
【0083】
別の代替的なブームは、図20〜29に見られるビーム212,262によって作られている。ビーム44に対するビーム212,262の主要な違いは、パネルのうちの少なくとも幾つかにおいては、個々のパネルを形成している鋼製部片間の溶接部はビームの長手軸線に平行ではない点である。むしろ、該溶接部は長手軸線に対して小さな角度を有しており、その結果、厚い方の鋼製部片は、ビームの基部において幅がより広くビームの頭部において幅がより狭くなっている。もちろん、厚い方の鋼製部片の間にある薄い方の鋼製部片は、ビームの基部から頂部に向かって幅がより広くなっている。
【0084】
図20〜23には、ブームの第一の伸縮部分として使用できるビーム212が示されている。ビーム44と同様に、ビーム212は長手軸線213を有しており且つ概ね矩形の横断面を有している。ビーム212は、頂部パネル220と2つの側方パネル230,240と底部パネル250とを備えており、これらのパネルは、2つの頂部コーナー223,224と2つの底部コーナー253,254とによって相互に結合されて本体をなしている。これらのパネルの4つ全てが、相互に溶接された3つの鋼製部片によって作られている。これらのパネルもまたテーラード溶接パネル(TWP)として言及されている。なぜならば、パネルを形成するために相互に溶接された部片は、寸法、材料等級、成形形状等に関して、パネルが作られるビームの特定部分に対して“特別に誂えられたものである”からである。
【0085】
ビーム212においては、側方パネル230は、第一の鋼製部片235が第二の鋼製部片236と第三の鋼製部片237との間に配置されている状態で互いに溶接されている第一、第二、第三の鋼製部片によって作られている。しかしながら、隣接している部片間の溶接部は、ビームの長手軸線213に平行な線からある角度で逸れるように延びている。この角度は、パネル230の長さ及び幅に応じて0.1°〜2°であり、0.3°〜0.5°であるのが好ましい。長さが30フィート(9.14メートル)で幅が20インチ(50.8センチメートル)のパネル30の場合には、この角度は約0.33°であるのが好ましい。図20においては、線215は鋼製部片235と237との間の溶接方向に沿って延びている。この角度を示す補助とするために、長手軸線213に平行な別の線214が描かれている。従って、角度216は、溶接部と該溶接部に交差しており且つビーム212の長手軸線213に平行な線との間の角度である。
【0086】
底部パネル250は、第一の鋼製部片255が第二の鋼製部片256と第三の鋼製部片257との間に位置せしめられて作られている。側方パネル240は、部片245,246,247によって作られている。これらのパネルの各々においては、パネルの側部の比較的厚みのある鋼製部片は、図23においても最も良くわかるように、図22に見られるビームの頂端部にあるときよりもビームの基部の幅が広い。部片236,237,246,247,256,257は、各々、図23においては図22におけるよりも幅が広い。この実施形態においては、頂部パネル220は鋼製部片225,226,227によって作られており、これらの鋼製部片は、ビーム212の長手軸線と平行に延びている溶接部によって相互に溶接されており、従って、部片225,226,227はビームの長さに亘って幅が変わらない。比較的厚みのある側方部片226,227は摩耗パッドと係合するために、それらの全長に亘って幅が広いことが必要なので、頂部パネル220はこのようにして作られているのが好ましい。ビーム212内のパネルのうちの3つが最適化されたテーパーが付けられている側方部片(これらはまた、時にはテーパーが付けられているレールと称される)をそれらのパネル内に有することによって、矩形の平行なレールの重量の節約が達成されている。
【0087】
パネル220,230,240,250においては、2つの外側の鋼製部片は厚みが互いに同じであり、中央の部片の圧縮強度よりも大きい長手軸線213を横断する方向の単位長さ当たりの圧縮強度を有している。しかしながら、ビーム44と同様に、所与のパネル上の外側部片は厚みが互いに異なっている。
【0088】
パネル250は、パネル60と同様に、第一の鋼製部片255内にビーム212の長手軸線213の方向に延びている湾曲領域を有するように形成されている点で他のパネルとは異なっている。該湾曲領域は、底部パネル250の長辺と平行に延びている複数の屈曲部を鋼内に備えているのが好ましい。
【0089】
ビーム44における対応部品と同様に、側方パネル230,240は、概ね平らであるが各々複数のエンボス238,248を備えている。エンボス型押し部238,248は、形状が円形であるが他の形状とすることができる。更に、全てのブーム部分がエンボスを必要とするわけではない。
【0090】
ビーム212は、個々のパネル220,230,240,250を最初に作り、次いで、これらのパネルが相互に溶接されることによって作られている。高エネルギ密度溶接プロセスを使用することができ、該プロセスは、ビームの長手軸線と平行でない経路に沿って移動して、3つの鋼製部片を相互に溶接するときに個々のパネル内の部片間に角度が付けられた溶接部が形成されるように制御することができる。各パネル内の第一の鋼製部片と第二の鋼製部片との間の溶接部及び第一の鋼製部片と第三の鋼製部片との間の溶接部は、突き当て溶接からなるのが好ましい。これらの鋼製部片は、如何なる開先加工又は面取りの必要無くなされる形グルーブ突き当て溶接によって相互に溶接される。該鋼製部片間の溶接は、パネルの単一の側部からの溶接によってなされる完全溶け込み溶接であるのが好ましい。
【0091】
個々のパネルが製造された後に、好ましくは高エネルギ密度溶接プロセスが使用されて、第一の側方パネル230が頂部パネル220及び底部パネル250に溶接され且つ第二の側方パネル240が頂部パネル220及び底部パネル250に溶接されて4つのパネルからなるビームが形成される。パネル220,230,240,250が相互に溶接されるとき、コーナーの各々は、ちょうどビーム44と同様に二次加工された補強コーナーを備えることになる。パネル同士は、如何なる開先加工又は面取りの必要なくなされる形グルーブ突き当て溶接によって相互に溶接される。パネル間の溶接はパネルの単一の辺から溶接することによってなされる完全溶け込み溶接である。パネル同士が相互に溶接された後に、輪郭切断鍔298がビーム212の頭部においてパネルに溶接される。ビーム212の脚部にも鍔を形成するためのプレート299が付加されている。
【0092】
図24〜27に示されているビーム262は、側方パネルがエンボス無しで作られている点以外はビーム212と似ている。側方パネル270を形成している3つの鋼製部片275,276,277は、ビーム262の長手軸線263に対して小さな角度をなしている溶接部によって相互に溶接されている。該3つの鋼製部片275,276,277は、比較的厚みのある外側部片276,277がビームの基部において幅がより広く且つビームの頂部において比較的幅がより狭く、一方、中央の部片275はビームの基部において幅がより狭く且つビームの頂部において幅がより広くなるようにテーパーが付けられている。同様に、側方パネル280を形成している3つの鋼製部片285,286,287も同じようにテーパーが付けられており、底部パネル290を形成している3つの鋼製部片295,296,297も同様である。このことは、図27の断面図(ビーム262の基部近く)を図26の断面図(ビームの頂部近く)と比較することによって最も良くわかる。ビーム212の場合と同様に、ビーム262の頂部パネル260を形成している鋼製部片265,266,267間の溶接部はビーム262の長手軸線に平行である。
【0093】
ビーム同士が組み立てられて伸縮式ブームとされるときのビーム212と262との重なりは、図28及び29において見ることができる。摩耗パッドは、図9に見られるビーム42,44上に配列されている場合とちょうど同じようにビーム212,262上に配列されている。図29にはまた、ビーム212と262とが伸縮式ブームを作る際に使用されるときにビームの先端を形成するためにテーラード溶接されたパネルに付加される補強部材299も示されている。これらの補強部材299は一般的なものであり、単一部材からなるパネルによって作られたビーム上で使用される補強部材に極めて似ている。
【0094】
パネルを形成している鋼製部片間に直線状の溶接部を備えるのではなく、溶接線は、浅い湾曲パターン又は長い段階的なパターン又は傾斜が異なる溶接線の組み合わせに従うことができる。
【0095】
本発明の好ましい実施形態のビームは、特に、トラック搭載型クレーン、オールテレーンクレーン、及びラフテレーンクレーン用のブームを形成するのに特に適している。矩形ビームは、特に、約30〜70U.S.トンの能力を有しているクレーンに好適である。この範囲を超えるクレーン用として、図15に示されているもののような部分によって作られているブームは、必要とされる曲げの所為で形成するのに費用がより多くかかるけれども、クレーン寿命に優るコスト上の利点を提供する。多数の湾曲した領域を有しているブーム部分を備えている本発明の特徴を使用することによって、モジュール型の設計の融通性が可能になる。
【0096】
伸縮式ブームの伸縮部分として使用される場合に有する利点に加えて、本発明の好ましい実施形態によるビームは、移動式クレーン用のキャリア20のような車両用のシャシ内のビームのような建設機械上の他の構成要素として使用されるときに利点を有する。本発明の好ましい実施形態のビームはまた、アウトリガアセンブリ38のようなアウトリガアセンブリの側方伸長ビームとして有利に使用することもできる。図30〜32にはこの使用方法が更に詳細に示されている。
【0097】
図30においてわかるように、アウトリガアセンブリ38は、2つのアウトリガビーム842,844を支持している中心フレーム39を備えている。ビーム842,844は、これらのビームが搬送形態(図1に見られる)から伸長状態(図30に見られる)まで伸長させることができるように中心フレーム39内に取り付けられている。ビーム842,844が中心フレーム39に取り付けられる方法と、これらのビームが伸長する方法とは、現在の一般的なアウトリガアセンブリ内での方法と同じにすることができる。ビーム842,844の各々には、従来と同様にジャッキ用シリンダ16が備えられている。ジャッキ用シリンダ16に動力を付与するために及び液圧流体を戻すために使用される液圧ラインは図31及び図32の断面図に見ることができる。
【0098】
図32において最も良くわかるように、ビーム842,844はTWPを使用して作られている。ビーム842及び844は、両方とも類似の構造を有しており、従ってビーム842のみを詳しく説明する。ビーム842は、ビーム44とちょうど同じように、概ね矩形の横断断面を有しており且つ各々が3つの鋼製部片によって作られている4枚のパネル850,860,870,880によって作られている。頂部パネル850は厚い鋼製部片852と854と間に溶接されている薄い鋼製部片853を備えており、底部パネル860は厚い鋼製部片862と864との間に溶接されている薄い鋼製部片863を備えている。側方パネル870,880は、各々、厚い鋼製部片872と874との間及び882と884との間に溶接されている薄い鋼製部片873及び鋼製部片883を備えている。ビーム44とは異なり、ビーム842においては、頂部パネルは中央の湾曲領域855を備えており、底部パネル860は比較的平らである。鋼製部片853内の湾曲領域855はビーム842の長手軸線方向に延びている。湾曲領域855は、頂部パネル850の長辺と平行に延びている鋼内に複数の屈曲部を備えているのが好ましい。該湾曲領域が頂部パネル850に含まれている理由は、ビーム842,844が伸長せしめられ且つクレーン10によって持ち上げられた荷がジャッキ16上で支持されているときに、ビーム842内の荷重によって頂部パネル850を圧縮された状態とし且つ底部パネル860に張力がかけられた状態とするためである。湾曲領域855は、平らなパネルよりも大きい圧縮下での座屈に対する抵抗力を付与する。
【0099】
本発明の好ましい実施形態は多くの利点を提供する。矩形ブームの補強されたコーナーにおける比較的厚みのある材料とその他の場所の比較的薄い材料とによって有効に使用されない不必要な材料を排除することによって、ブームの最適化された重量が提供される。例えば、上記した図5の例示的な構造は、マニトワック(Manitowoc)社製のNBT50型クレーン上で使用されるブームと強度が極めて似ているが重量が20%少ない。この結果、比較的軽いブームによる安定化(傾斜)領域に高い荷重曲線容量がもたらされる。本発明の好ましいブーム部分は、これに匹敵する能力の他の矩形形状のブーム部分と比較してコストが低く且つメガフォーム(MEGAFORM)型ブームよりも製造コストが低い。
【0100】
該TWP構造は、部品を一体化し且つ製造中に付加される必要がある補強及び補強材を排除する。該ブーム部分は100ksi(689N/mm)材料を使用するように設計することができ、このことにより、比較的入手容易性が低く且つ輸入しなければならない高級材料への依存度が減じられる。TWP概念は、厚み、材料の等級、形成される形状が、荷重曲線容量によって必要とされるように変えることを可能にする。
【0101】
個々のパネルからなるモジュール型の設計による本発明の概念は、クレーンの能力に応じた工学技術規模の拡大及び縮小を可能にする。該構造は、比較的低い能力のクレーン及び比較的高い能力のクレーン用として、ある程度まで規模を縮小又は拡大することができる。これは、補強コーナー、底部/頂部/側部プレートの厚み及び材料等級を独立に制御して荷重曲線容量に適合させる機能によるものである。
【0102】
本発明の好ましい実施形態においては、初期段階における技術の開発によって、他のクレーン設計ステップがなされる前に重要な概念及び構造上の決定を行うことが可能になる。
【0103】
該ブーム部分は、性能−費用の利点のために伸縮式ブーム用途のために使用される如何なる形状にも作ることができ、図8及び12〜15に示されている形状に限定されない。該ブーム部分は座屈荷重に耐えるために領域65内に成形された形状を使用しているので、該形状は、重量を増加させることなく座屈荷重に応じて変えることができる。全体的な設計もまた融通性があり、TWPにおいて使用される個々の部片の材料の等級及び厚み及び成形形状の変更を可能にしている。
【0104】
TWP側部の厚い部分は、摩耗パッドを収容できる補強されたコーナーを形成している。この構造によって、荷重を伝達するための一般的な摩耗パッドの使用が可能になる。プレートの比較的厚みのある部分は、隣接のブーム部分からの集中したパッド荷重の全てを取り去る。摩耗パッドとエンボスとの位置の好ましい配列によって、荷重の均一な伝達が可能になる。
【0105】
該TWP設計概念は製造上の融通性を可能にする。パネルは、その時点での製造容量及び製造能力に応じてキットとして製造され且つ輸送されるか又は完成されたブーム部分が供給者現場において作ることができる。これによって、ブームのコスト低減のためのサプライチェーンのてこ入れがされ、これによって製品コストが下がる。個々のパネルの材料等級、厚み、及び製造プロセス(曲げ、ロール成形、レーザー溶接)を変更する設計上の融通性が存在する。各パネルは、ブーム部分内の他のパネルと異なる方法で設計し且つ製造することができる。
【0106】
もう一つ別の融通性は、該方法がレーザーハイブリッド溶接又は何らかの一般的な自動MIG溶接のような製造方法の使用が許容される点である。レーザーハイブリッド溶接によるTWPは、速い溶接速度と低い熱の入力を提供し、これによって歪み及び側方プレートの捲縮が少なくなる。溶接部は幅が狭く且つ深い溶け込みを有していて溶接の質が改良される。溶接部完全溶け込みの単一側部レーザー溶接を使用してなされるので、歪み及び熱影響部(HAZ)の面積が狭くなる。これによって、ブーム構造の寸法安定性の維持が補助され且つ鋼の必要な機械的特性の維持が補助されるであろう。
【0107】
本発明の好ましい実施形態を使用することによって、ブーム設計者は、少ない重量の一般的な平らなプレートの矩形形状の構造的限界を広げて吊り上げ能力を増大させることができる。補強が必要とされる場合には、矩形ボックス形状を製造した後に補強材を付加する代わりに該補強材をTWP内に組み込むことができる。これによって頂部プレート及び側部プレートにおける重ね板要件が排除され、これによって、次いで、フレームの切断、溶接等のような二次加工が排除され且つ重ね板溶接中の高い熱入力による構造の歪みが排除される。
【0108】
湾曲領域65は圧延成形によって作ることができる。圧延成形された底部プレートは、平らなプレートよりも底部プレート60の座屈抵抗力を増大させる。
【0109】
本明細書に記載されている現在のところ好ましい実施形態に対する種々の変更及び改造は当業者に明らかであることがわかるはずである。本発明は、伸縮ブーム式クレーンに加えて他のタイプの建設機械に適用可能であり且つクレーン用の一段階式のブーム上及び高所作業台内で使用することができる。所与のビーム内のパネルの全てではないが大部分は、テーラード溶接されたパネルによって作る必要がある。伸縮ブーム式クレーンにおいては、伸縮部分の全てをテーラード溶接されたパネルによって作る必要はない。鋼によって作られたテーラード溶接されたパネルを開示したけれども、該テーラード溶接パネルは複合材料によって作ることができる。このようなパネルは、(部片52,54のような)2つの外側鋼製部片と、(部片53の等価物を形成している)鋼製部片間に作り上げられた複合材料とを備え、該複合材料と鋼との間の継ぎ目をビームの長さに亘って有しているのが好ましい。外側鋼製部片は、次いで、やはり高密度溶接プロセスによって他のパネルに溶接されて補強コーナーを形成することができる。このような変更及び改造は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく且つ意図されている利点を減らすことなく行うことができる。従って、このような変更及び改造は特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【符号の説明】
【0110】
10 クレーン、 12 キャリア、
14 タイヤ、 16 ジャッキ、ジャッキ用シリンダ、
22 ブーム、 24 油圧シリンダ、
26 巻き上げドラム、 28 運転室、
30 第二の巻き上げドラム、 34 カウンタウエイト、
38 アウトリガアセンブリ、 39 中心フレーム、
42 基部(ブーム部分)、ビーム、 43 長手軸線、
44 第一の伸縮部分(ブーム部分)、ビーム、
46 第二の伸縮部分(ブーム部分)、
48 ブーム部分、 50 頂部パネル、
52 側方部分、第二の鋼製部片、外側鋼製部片、
53 第一の鋼製部片、
54 第三の鋼製部片、側方部分、外側鋼製部片、
57 頂部コーナー、 58 頂部コーナー、
60 底部パネル、 62 第二の鋼製部片、側方部分、
63 第一の鋼製部片、中央部片、
64 第三の鋼製部片、外側部片、側方部分、
65 湾曲領域、 67 平らな領域、
68 平らな領域、 70 側方パネル、
72 側方パネルの側方部分、部片、上方の外側部片、
73 中央部分、部片、
74 下方の外側部片、部片、側方パネルの側方部分、
76 底部コーナー、 78 エンボス、
80 側方パネル、
82 部片、側方部分、上方の外側鋼製部片、
83 部片、中央部分、
84 側方パネルの側方部分、部片、下方の外側鋼製部片、
86 底部コーナー、 88 エンボス、
92 頂部前方摩耗パッド、 94 底部前方摩耗パッド、
95 側方後方摩耗パッド、側方前方摩耗パッド、
96 上方後方摩耗パッド、 98 下方摩耗パッド、
99 共通の横断面、 142 ビーム、
150 頂部パネル、 160 底部パネル、
170 側方パネル、 180 側方パネル、
212 ビーム、 213 ビームの長手軸線、
214 線、 215 線、
216 角度、 220 頂部パネル、
223 頂部コーナー、 224 頂部コーナー、
225 鋼製部片、 226 鋼製部片、
227 鋼製部片、
230 側方パネル、第一の側方パネル、 235 第一の鋼製部片、
236 第二の鋼製部片、 237 第三の鋼製部片、
238 エンボス、 240 パネル、第二の側方パネル、
242 ビーム、 245 部片、
246 部片、 247 部片、
248 エンボス、 250 パネル、
253 底部コーナー、 254 底部コーナー、
255 第一の鋼製部片、 256 部片、
257 第三の鋼製部片、 260 頂部パネル、
262 ビーム、 263 ビームの長手軸線、
265 鋼製部片、 266 鋼製部片、
267 鋼製部片、 270 側方パネル、
275 鋼製部片、 276 鋼製部片、
277 鋼製部片、 280 側方パネル、
285 鋼製部片、 286 鋼製部片、
287 鋼製部片、 290 底部パネル、
295 鋼製部片、 296 鋼製部片、
297 鋼製部片、 298 輪郭切断鍔、
299 プレート、補強部材、 342 ビーム、
350 パネル、 360 パネル、
370 パネル、 380 パネル、
442 ビーム、 450 第一のパネル部材、
460 鋼製部片、 470 鋼製部片、
475 溶接部、 480 鋼製部片、
485 溶接部、 578 斜め矩形のエンボス、
542 ビーム、 642 ビーム、
678 交互角度のエンボス、 742 ビーム、
778 斜め矩形のエンボス、 842 アウトリガビーム、
844 アウトリガビーム、 850 頂部パネル、
852 厚い鋼製部片、 853 薄い鋼製部片、
854 厚い鋼製部片、 855 湾曲領域、
860 底部パネル、 862 厚い鋼製部片、
863 薄い鋼製部片、 864 厚い鋼製部片、
870 側方パネル、 872 厚い鋼製部片、
873 薄い鋼製部片、 874 厚い鋼製部片、
880 側方パネル、 882 厚い鋼製部片、
883 薄い鋼製部片、 884 厚い鋼製部片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に使用するための長手軸線を有するビームであり、
a)2つの頂部コーナーと2つの底部コーナーとによって相互に結合されて本体とされている頂部パネル、底部パネル、及び2つの側方パネルと、
b)前記パネルのうちの少なくとも1つが、相互に結合されている少なくとも2つの材料部片によって形成されており、該2つの材料部片は、前記長手軸線を横断する方向において異なる単位長さ当たりの圧縮強度を有しており、
c)前記頂部パネルは、前記2つの側方パネルに溶接されて該ビームの前記2つの頂部コーナーを形成しており、
d)前記底部パネルは、前記2つの側方パネルに溶接されて該ビームの前記2つの底部コーナーを形成している、ことを特徴とするビーム。
【請求項2】
少なくとも前記底部パネルが少なくとも2つの鋼製部片によって作られており、該少なくとも2つの鋼製部片は、前記長手軸線を横断する方向において異なる単位長さ当たりの圧縮強度を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のビーム。
【請求項3】
少なくとも前記底部パネルと前記2つの側方パネルとが、各々、各パネルの2つの側方部分及び1つの中間部分を形成している少なくとも3つの鋼製部片によって形成されており、前記底部パネル及び2つの側方パネルの各々の側方部分に使用されている鋼が、同じパネルの中央部分に使用されている鋼よりも厚みが厚く、その結果、前記パネルが相互に溶接されたときに、前記コーナーの各々が二次加工された補強コーナーを形成している、ことを特徴とする請求項2に記載のビーム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの材料部片の各々が鋼からなり、前記継ぎ目が溶接継ぎ目である、ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項5】
前記底部パネルが、前記第一の鋼製部片内に湾曲領域を含むように形成されており、該湾曲領域は前記ブーム部分の長手軸線の方向に延びている、ことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項6】
前記底部パネルが3つの鋼製部片からなり、中心の部片は前記長手軸線を横断する方向に第一の単位長さ当たりの圧縮強度を有しており、2つの隣接している外側部片の各々が前記第一の圧縮強度よりも大きい前記長手軸線を横断する方向の単位長さ当たりの圧縮強度を有している、ことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項7】
前記2つの隣接している外側部片の各々が前記中心の部片よりも厚い、ことを特徴とする請求項6に記載のビーム。
【請求項8】
前記2つの隣接している外側部片の厚みが同じである、ことを特徴とする請求項6に記載のビーム。
【請求項9】
前記少なくとも2つの材料部片が、前記ビームの長手軸線と平行に延びている継ぎ目によって相互に結合されている、ことを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項10】
前記少なくとも2つの材料部片が、前記溶接部に交差しており且つ前記ビームの長手軸線に平行な線に関して0.1°〜2°の角度で延びている継ぎ目によって相互に結合されている、ことを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項11】
前記パネルの各々が少なくとも3つの鋼製部片によって作られており、これらの鋼製部片のうちの少なくとも2つが互いに異なる圧縮強度を有している、ことを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項12】
前記パネルの各々が少なくとも3つの鋼製部片によって作られており、これらの鋼製部片のうちの少なくとも2つが互いに異なる厚みを有している、ことを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項13】
該ビームが概ね矩形の横断断面を有している、ことを特徴とする請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項14】
該ビームが概ね台形の横断断面を有している、ことを特徴とする請求項1〜13のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項15】
前記底部パネルが少なくとも3つの鋼製部片によって作られており、これらの鋼製部片のうちの少なくとも2つが互いに異なる圧縮強度を有している、ことを特徴とする請求項2〜3のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項16】
前記底部パネルが少なくとも3つの鋼製部片によって作られており、これらの鋼製部片のうちの少なくとも2つが互いに異なる厚みを有している、ことを特徴とする請求項2〜3のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項17】
互いに隣接する鋼製部片間の溶接が突き合わせ溶接からなる、ことを特徴とする請求項4に記載のビーム。
【請求項18】
伸縮式ブームの伸縮部分として使用される、ことを特徴とする請求項1〜17のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項19】
前記建設機械の部片がクレーンである、ことを特徴とする請求項1〜17のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項20】
前記2つの隣接している外側部片の厚みが、前記中心の部片の厚みの少なくとも1.5倍である、ことを特徴とする請求項7に記載のビーム。
【請求項21】
前記2つの隣接している外側部片の厚みが、前記中心の部片の厚みの少なくとも2倍である、ことを特徴とする請求項7に記載のビーム。
【請求項22】
前記頂部パネル、底部パネル、及び側方パネルの各々が3つの鋼製部片によって作られており、これら3つの鋼製部片の各組内の前記中心に位置している部片の厚みが、前記外側の部片の厚みよりも小さい、ことを特徴とする請求項1〜21のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項23】
前記側方パネルの両方に複数のエンボスが型押しされていて、該側方パネルの剛性が高められている、ことを特徴とする請求項1〜22のうちのいずれか一項に記載のビーム。
【請求項24】
前記エンボスの型押しが、円形、傾斜した平行四辺形、及び互いに交互の角度で傾斜している矩形からなる群から選択された形状である、ことを特徴とする請求項23に記載のビーム。
【請求項25】
クレーン用の伸縮式ブームを作る際に使用するための長手軸線を有しているブーム部分であり、
a)2つの頂部コーナーと2つの底部コーナーとによって相互に結合されて本体とされている、頂部パネルと、底部パネルと、2つの側方パネルと、からなり、
b)少なくとも前記底部パネルが、相互に溶接された少なくとも第一、第二、及び第三の鋼製部片によって作られており、前記第一の鋼製部片は前記第二の鋼製部片と前記第三の鋼製部片との間に配置されており、前記第一の鋼製部片は前記第二及び第三の鋼製部片より薄く、
c)前記底部パネルは、前記第一の鋼製部片内に湾曲領域を含むように形成されており、該湾曲領域は、該ブーム部分の長手軸線の方向に延びている、ことを特徴とするブーム部分。
【請求項26】
前記少なくとも第一、第二、及び第三の鋼製部片が、前記継ぎ目が該ブーム部分の長手軸線と平行に延びている状態で相互に接合されている、ことを特徴とする請求項25に記載のブーム部分。
【請求項27】
前記少なくとも第一、第二、及び第三の鋼製部片が、継ぎ目が溶接部と交差する線に対して0.1°〜2°の角度で且つ該ブーム部分の長手軸線と平行に延びた状態で相互に接合されている、ことを特徴とする請求項25〜26のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項28】
前記第二及び第三の鋼製部片の各々が、前記底部コーナーに隣接した位置に比較的平らな領域を提供している、ことを特徴とする請求項25〜27のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項29】
前記本体が概ね矩形の横断断面を有している、ことを特徴とする請求項25〜28のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項30】
前記本体が概ね台形の横断断面を有している、ことを特徴とする請求項25〜29のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項31】
前記第一の鋼製部片と前記第二の鋼製部片との間の溶接及び前記第一の鋼製部片と第三の鋼製部片との間の溶接が共に突き当て溶接からなる、ことを特徴とする請求項25〜30のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項32】
前記頂部パネルが概ね平らである、ことを特徴とする請求項25〜31のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項33】
前記側方パネルが、概ね平らであるが各々が複数のエンボス部を含んでいる、ことを特徴とする請求項25〜32のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項34】
ビームを形成する方法であり、
a)第一の側方パネルを準備するステップと、
b)第二の側方パネルを準備するステップと、
c)頂部パネルを準備するステップと、
d)高エネルギ密度溶接プロセスを使用して少なくとも3つの鋼製部片を相互に溶接して作られた底部パネルを準備するステップと、
e)高エネルギ密度溶接プロセスを使用して前記第一の側方パネルを前記頂部パネル及び底部パネルに溶接し且つ前記第二の側方パネルを前記頂部パネル及び前記底部パネルに溶接して4枚のパネルからなるビームを形成するステップと、を含む方法。
【請求項35】
前記底部パネルが、前記ブーム部分の長手軸線に対して平行に延びている継ぎ目によって相互に結合された少なくとも第一、第二、第三の鋼製部片によって形成される、ことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記底部パネルが、前記溶接部と交差し且つ前記ブーム部分の長手軸線と平行に延びている線に対して0.1°〜2°の角度をなして延びている継ぎ目によって相互に結合された少なくとも第一、第二、第三の鋼製部片によって形成される、ことを特徴とする請求項34〜35のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
高エネルギ密度溶接プロセスが使用されて少なくとも2つの鋼製部片が相互に溶接されて第一の側方パネルが形成され、高エネルギ密度溶接プロセスが使用されて少なくとも2つの付加的な鋼製部片が相互に溶接されて第二の側方パネルが形成される、ことを特徴とする請求項34〜36のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
高エネルギ密度溶接プロセスを使用して少なくとも3つの鋼製部片を相互に溶接して前記第一の側方パネルを形成し、高エネルギ密度溶接プロセスを使用して少なくとも3つの付加的な鋼製部片を相互に溶接して前記第二の側方パネルを形成し、高エネルギ密度溶接プロセスを使用して少なくとも3つの鋼製部片を相互に溶接して前記頂部パネルを形成する、ことを特徴とする請求項34〜37のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
概ね矩形の横断断面を有するビームが製造される、ことを特徴とする請求項34〜38のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ビームが伸縮式ブームの伸縮部分を備えている、ことを特徴とする請求項34〜39のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記高エネルギ密度溶接プロセスがレーザーとGMAW溶接との両方を使用する、ことを特徴とする請求項34〜40のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記GMAW溶接が、MIG溶接及びMAG溶接とからなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記底部パネルの中央の鋼製部片の厚みが、該底部パネルの他の2つの鋼製部片の厚みよりも薄い、ことを特徴とする請求項34〜42のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記頂部パネル、底部パネル、並びに第一及び第二の側方パネルの各々の中央の鋼製部片の厚みが、同じパネル内の他の2つの鋼製部片の厚みよりも薄い、ことを特徴とする請求項34〜43のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記頂部パネル及び底部パネルにおける前記厚い方の部片が、ブーム部分間に、摩耗パッドの接触のためのレールを提供する、ことを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記底部パネルにおける前記2つの厚い方の部片の幅が、前記頂部パネルにおける前記厚い方の部片の幅よりも広い、ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ステップd)において、前記少なくとも3つの鋼製部片が突き当て溶接を使用して相互に溶接される、ことを特徴とする請求項34〜46のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
ビームを形成する方法であり、
a)第一の側方パネルを頂部パネルの第一の端縁面が前記第一の側方パネルの内側面に突き当るように前記頂部パネルに隣接させて配置し且つ該第一の側方パネルと頂部パネルとを該組み合わせられた第一の側方パネルと頂部パネルとの外側から該第一の側方パネルの側面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって相互に溶接するステップと、
b)第二の側方パネルを、前記頂部パネルの第二の端縁面が前記第二の側方パネルの内側面に突き当るように前記頂部パネルに隣接させて配置し、且つ該第二の側方パネルと頂部パネルとを、これらの組み合わせられた第二の側方パネルと頂部パネルとの外側から前記第二の側方パネルの側面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって相互に溶接するステップと、
c)底部パネルを、前記第一及び第二の側方パネルの各々の端縁面が前記底部パネルの上面に突き当る状態で、前記第一及び第二の側方パネルに隣接させて配置するステップと、
d)第一の側方パネルを、組み合わせられた該第一の側方パネルと底部パネルとの外側から前記底部パネルの上面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって前記底部パネルに溶接するステップと、
e)前記第二の側方パネルを、組み合わせられた該第二の側方パネルと底部パネルとの外側から前記底部パネルの上面の面が含まれる方向からの完全溶け込み高エネルギ密度溶接によって前記底部パネルに溶接するステップと、を含んでいる方法。
【請求項49】
前記ビームが伸縮ブーム式のクレーンのためのブーム部分を構成する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ビームが概ね矩形の横断断面を有しており、前記第一の側方パネルが、前記ステップa)において溶接するために相互に90°の角度で頂部パネルに隣接せしめられて配置され、前記第二の側方パネルが、前記ステップb)において溶接するために相互に90°の角度で前記頂部パネルに隣接せしめられて配置され、前記底部パネルが、前記ステップc)において前記側方パネルの各々に対して90°の角度で第一及び第二の側方パネルに隣接せしめられて配置される、ことを特徴とする請求項48〜49のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記第二の側方パネルと前記底部パネルとの間の溶接が、前記第一の側方パネルと前記底部パネルとの間の溶接の前になされる、ことを特徴とする請求項48〜50のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記高エネルギ密度溶接プロセスがレーザー溶接とMIG溶接との両方を使用する、ことを特徴とする請求項48〜51のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記底部パネルに対する溶接部における前記第一及び第二の側方パネルの厚みが約10mmであり、前記第一及び第二の側方パネルに対する溶接部における前記底部パネルの厚みが約12mmである、ことを特徴とする請求項48〜52のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
伸縮式のクレーン用ブームのためのブーム部分を作る際に使用するためのパネル部材の組合せであり、
a)頂部パネルと、
b)相互に溶接されている少なくとも3つの鋼製部片を含む底部パネルであって、各溶接部が前記底部パネルの長辺の長さに亘って延びている底部パネルと、
c)相互に溶接されている少なくとも2つの鋼製部片を含む第一の側方パネルであって、各溶接部が前記第一の側方パネルの長辺の長さに亘って延びている第一の側方パネルと、
d)互いに隣接している部片間の突き当て溶接によって相互に溶接された少なくとも2つの鋼製部片を含む第二の側方パネルであって、各突き当て溶接部が前記第二の側方パネルの長辺の長さに沿って延びている前記第二の側方パネルと、を備えているパネル部材の組合せ。
【請求項55】
前記頂部パネル内の3つの鋼製部片間の溶接が前記底部パネルの長辺と平行に延びている、ことを特徴とする請求項54に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項56】
前記側方パネルの各々が、少なくとも第一、第二、及び第三の鋼製部片によって作られており、これらの鋼製部片は、前記溶接部と交差し且つ前記ブーム部分の長手軸線に平行な線に対して0.1°〜2°の角度で延びている継ぎ目によって相互に接合されている、ことを特徴とする請求項54〜55のうちのいずれか一項に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項57】
前記第一及び第二の側方パネルの各々が、相互に溶接されている少なくとも3つの鋼製部片からなる、ことを特徴とする請求項54〜56のうちのいずれか一項に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項58】
前記頂部パネルが少なくとも3つの相互に溶接された鋼製部片をも備えている、ことを特徴とする請求項57に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項59】
前記底部パネルにおける溶接部と前記側方パネルの各々における溶接部との各々が、互いに隣接している部片間の突き当て溶接からなる、ことを特徴とする請求項54〜58のうちのいずれか一項に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項60】
前記底部パネルが3つの鋼製部片を備えており、これらの鋼製部片の中央の鋼製部片の厚みが隣接する2つの鋼製部片の厚みよりも薄い、ことを特徴とする請求項54〜59のうちのいずれか一項に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項61】
前記底部パネルの前記中央の部片が、該底部パネルの長辺と平行に延びている複数の屈曲部を鋼製部片内に含んでいる、ことを特徴とする請求項60に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項62】
前記第一及び第二の側方パネルが複数のエンボスを含んでいる、ことを特徴とする請求項54〜61のうちのいずれか一項に記載のパネル部材の組合せ。
【請求項63】
クレーンのための伸縮式ブームを形成する際に使用するための長手軸線を有しているブーム部分であり、
a)少なくとも第一のパネル部材と第二のパネル部材とを含み、
b)少なくとも前記第二のパネル部材は、互いに隣接している部片間の突き当て溶接によって相互に溶接されている少なくとも2つの鋼製部片を備えており、該2つの鋼製部片が前記長手軸線を横断する方向の単位長さ当たりの圧縮強度が異なっており、
c)前記2つのパネル部材は、該ブーム部分の長手軸線と平行に延びている継ぎ目に沿って相互に溶接されて該ブーム部分を形成している、ことを特徴とするブーム部分。
【請求項64】
前記第二のパネル内の前記少なくとも2つの鋼製部片が、該ブーム部分の長手軸線と平行に延びている継ぎ目によって相互に溶接されている、ことを特徴とする請求項63に記載のブーム部分。
【請求項65】
前記第二のパネル内の少なくとも2つの鋼製部片が、前記溶接部と交差おり且つ該ブーム部分の長手軸線と平行な線に対して0.1°〜2°の角度で延びている継ぎ目によって相互に溶接されている、ことを特徴とする請求項63〜64のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項66】
前記2つのパネルが、開先加工又は面取りしないで作られた直角の突き当て継ぎ目によって相互に溶接されており、前記パネル間の溶接が、パネルの単一の側部からの溶接によってなされる完全溶け込み溶接である、ことを特徴とする請求項63〜65のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項67】
該ブーム部分が概ね矩形の横断断面を有している、ことを特徴とする請求項63〜66のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項68】
前記第二のパネル部材が3つの鋼製部片によって作られた底部パネルからなり、前記異なる圧縮強度が、該底部パネルの中心に第一の厚みの鋼を使用し且つ該底部パネルの互いに隣接している側方部分に前記第一の厚みよりも大きい第二の厚みの鋼を使用することによって提供されている、ことを特徴とする請求項63〜67のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項69】
前記底部パネル内の前記3つの鋼製部片が、全て、約100ksi〜約120ksi(約689〜約827N/mm)の圧縮降伏強度を有している、ことを特徴とする請求項68に記載のブーム部分。
【請求項70】
曲率が変化している断面部分を有している、ことを特徴とする請求項63〜66のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項71】
前記第一のパネル部材が、湾曲形状に形成されており且つ該ブーム部分のための頂部の外殻を提供しており、前記第二のパネル部材が、互いに隣接している部片間の突き当て溶接によって相互に溶接された少なくとも3つの鋼製部片を備えており、該3つの鋼製部片は、該ブーム部分の底部の外殻を提供する湾曲形状に形成されており、前記3つの鋼製部片が、第一の厚みの中心部片と、各々の厚みが前記第一の厚みより大きい2つの隣接している外側部片とを備えている、ことを特徴とする請求項70に記載のブーム部分。
【請求項72】
各突き当て溶接部が該ブーム部分の長手軸線と平行に延びている、ことを特徴とする請求項63〜71のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項73】
各突き当て溶接部が、該溶接部と交差し且つ該ブーム部分の長手軸線と平行な線に対して0.1°〜2°の角度で延びている、ことを特徴とする請求項63〜72のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項74】
該ブーム部分が概ね台形の横断断面を有している、ことを特徴とする請求項63〜73のうちのいずれか一項に記載のブーム部分。
【請求項75】
請求項1〜24のうちのいずれか一項に記載のビーム、又は請求項25〜33及び請求項63〜74のうちのいずれか一項に記載のブーム部分、又は請求項34〜53のうちのいずれか一項に記載の方法によって作られたビーム、によって作られたクレーンのための伸縮式ブーム。
【請求項76】
請求項1〜24のうちのいずれか一項に記載のビーム、又は請求項34〜53のうちのいずれか一項に記載の方法によって作られたビーム、によって作られたクレーン用のアウトリガ。
【請求項77】
請求項1〜24のうちのいずれか一項に記載のビーム、又は請求項34〜53のうちのいずれか一項に記載の方法によって作られたビーム、によって作られたクレーン用のシャシ。
【請求項78】
請求項1〜24のうちのいずれか一項に記載のビーム、又は請求項25〜33及び63〜74のうちのいずれか一項に記載のブーム部分、又は請求項34〜53のうちのいずれか一項に記載の方法によって作られたビーム、によって作られた伸縮式ブームを備えているクレーン。
【請求項79】
前記クレーンが車両搭載クレーンからなる、ことを特徴とする請求項78に記載のクレーン。
【請求項80】
前記クレーンが、トラック搭載クレーン、オールテレーンクレーン、及びラフテレーンクレーンからなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項78に記載のクレーン。
【請求項81】
約34〜70U.S.トンの能力を有している、ことを特徴とする請求項78に記載のクレーン。
【請求項82】
伸縮式ブームを備えているクレーンであり、
前記伸縮式ブームが少なくとも第一及び第二のブーム部分を備えており、該第二のブーム部分が前記第一のブーム部分の内側に摺動可能形態で嵌合しており、前記ブーム部分の両方が、請求項1〜24のうちのいずれか一項によるビーム、又は請求項25〜33及び請求項63〜74のうちのいずれか一項によるブーム部分、又は請求項34〜53のうちのいずれか一項による方法によって作られたビームによって作られており、前記第一のブーム部分が、前記頂部パネルに結合されている少なくとも2つの頂部摩耗パッド、前記底部パネルに結合されている少なくとも2つの底部摩耗パッド、及び各側方パネルに結合された少なくとも1つの側方摩耗パッドを備えており、前記摩耗パッドの全てが、共通の横断面が前記摩耗パッドの長手方向中心線において交差するように位置決めされている、ことを特徴とするクレーン。
【請求項83】
前記第二のブーム部分の側方パネルが複数のエンボスを含んでおり、前記第二のブーム部分が、該ブームが設計されている最大伸長状態に等しい状態まで伸ばされたときに、前記共通の横断面が、前記第二のブーム部分上の前記側方パネルの各々の上に設けられているエンボス間で等距離である、ことを特徴とする請求項82に記載のクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−40045(P2013−40045A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−161078(P2012−161078)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(510051082)マニタウォック クレイン カンパニーズ, エルエルシー (13)
【氏名又は名称原語表記】MANITOWOC CRANE COMPANIES, LLC
【Fターム(参考)】