説明

建設機械

【課題】下部走行体または上部旋回体に対して異なる仕様のセンタジョイントを取付可能とし、下部走行体または上部旋回体を構成する部品を共通化する。
【解決手段】下部走行体をなすセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに小型センタジョイント31を取付けるときに用いる中継プレート36を備える構成とした。従って、大型センタジョイントは、センタフレーム13に対して直接的に取付けることができる。また、小型センタジョイント31は、センタジョイント挿通孔13Cと小型センタジョイント31との間に中継プレート36を介在させることにより、センタフレーム13に間接的に取付けることができる。これにより、異なるセンタジョイント31を取付ける場合でも、下部走行体を共通して用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下部走行体と上部旋回体との間で作動油を流通するためのセンタジョイントが設けられた油圧クレーン、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設現場等で地上から高所に資材を運搬する場合には油圧クレーン等の建設機械が用いられる。この油圧クレーンは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に設けられた作業装置とにより構成されている。また、下部走行体は、中央部に旋回装置が取付けられるトラックフレームと、該トラックフレームの左,右両側に設けられたクローラ装置とにより大略構成され、各クローラ装置は、走行用油圧モータで駆動される駆動輪と、従動輪と、該駆動輪と従動輪とに亘って巻回された履帯とを備えている。
【0003】
一方、上部旋回体は、下部走行体のトラックフレーム上に旋回装置を介して取付けられた旋回フレームを有し、該旋回フレーム上には、その前部右側にキャブが設けられ、後側にはカウンタウエイトが搭載されている。また、旋回フレームには、油圧ポンプを駆動するエンジンが搭載されている。
【0004】
また、下部走行体と上部旋回体とは相対的に旋回動作するものであるから、下部走行体または上部旋回体の旋回中心には、下部走行体上で上部旋回体が旋回動作するのを許しつつ、油圧ポンプと走行用油圧モータとの間で作動油を流通させるセンタジョイントが取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】実開昭60−186369号公報
【0006】
この特許文献1による従来技術では、上部旋回体の旋回フレームにセンタジョイント挿通孔を設け、このセンタジョイント挿通孔にセンタジョイントを取付ける構成としている。この場合、センタジョイント挿通孔の周囲には、取付けるセンタジョイントに設けられた各ボルト孔のピッチ円直径に合せて複数のボルト孔が形成されている。これにより、センタジョイントを旋回フレームにボルト止めすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まず、下部走行体に設けられた各種の油圧アクチュエータの型式が異なる場合や、油圧アクチュエータをオプションとして取付けた場合には、油圧配管の本数、作動油の流量等の仕様が異なるために、センタジョイントを他のセンタジョイントに変更する必要がある。
【0008】
ところで、特許文献1による従来技術では、旋回フレームには、取付けるセンタジョイントに合せて専用の位置にボルト孔を形成しているから、センタジョイントの変更に対応することができない。
【0009】
このために、センタジョイントを変更する場合には、旋回フレーム全体を取換えなくてはならず、上部旋回体の仕様が同じ場合でも、旋回フレームを共通化することができない。また、センタジョイントを下部走行体に設けた場合には、同様の理由により下部走行体を共通化することができないという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、下部走行体または上部旋回体に対して異なる仕様のセンタジョイントを取付けることができ、下部走行体または上部旋回体を共通化できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による建設機械は、走行用油圧モータによって自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載され油圧源を駆動する原動機が設けられた上部旋回体とを備え、前記下部走行体または上部旋回体の旋回中心にはセンタジョイント挿通孔を有し、該センタジョイント挿通孔には前記下部走行体と上部旋回体とが相対的に旋回動作するのを許しつつ前記油圧源と前記走行用油圧モータを含むアクチュエータとの間で作動油を流通させるセンタジョイントを取付ける構成としてなる。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記センタジョイントは、前記センタジョイント挿通孔に直接取付けることができる大型センタジョイントと、この大型センタジョイントと比較して形状の小さな小型センタジョイントとを含む複数種類を有し、前記センタジョイント挿通孔に前記小型センタジョイントを取付けるときに用いる中継プレートを備え、前記小型センタジョイントを取付けるときには、前記センタジョイント挿通孔に前記中継プレートを介在させる構成としたことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記センタジョイント挿通孔の周囲には、前記大型センタジョイントを取付けるためのボルト孔を大きなピッチ円直径をもって複数設け、前記中継プレートには、前記センタジョイント挿通孔の周囲の前記各ボルト孔に対応する外側ボルト孔を複数設けると共に、該各外側ボルト孔よりも内周側に前記小型センタジョイントを取付けるための内側ボルト孔を小さなピッチ円直径をもって複数設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項3の発明は、前記各外側ボルト孔と各内側ボルト孔とは、前記中継プレートに対して周方向に位置をずらして配置する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、センタジョイントとして、センタジョイント挿通孔に直接取付けることができる大型センタジョイントと、この大型センタジョイントと比較して形状の小さな小型センタジョイントとを含む複数種類を有し、前記センタジョイント挿通孔に前記小型センタジョイントを取付けるときに用いる中継プレートを備えている。従って、前記センタジョイント挿通孔に前記中継プレートを介在させることにより前記小型センタジョイントをセンタジョイント挿通孔に取付けることができる。
【0016】
これにより、下部走行体または上部旋回体のセンタジョイント挿通孔に対して大型センタジョイントを取付ける場合には、該大型センタジョイントをセンタジョイント挿通孔に対して直接取付けることができる。一方、小型センタジョイントを取付けるときには、センタジョイント挿通孔と小型センタジョイントとの間に中継プレートを介在させることにより、該中継プレートを介して小型センタジョイントをセンタジョイント挿通孔に取付けることができる。
【0017】
この結果、同一の下部走行体または上部旋回体に対して大型センタジョイントと小型センタジョイントの両方を取付けることができる。しかも、小型センタジョイントよりもさらに小さなセンタジョイントを取付ける場合には、このセンタジョイントに対応した中継プレートを用意することにより、同様にして下部走行体または上部旋回体のセンタジョイント挿通孔に取付けることができる。これにより、取付けるセンタジョイントが異なる場合でも、下部走行体または上部旋回体を共通化して用いることができるから、生産性の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、センタジョイント挿通孔の周囲には、大型センタジョイントを取付けるためのボルト孔を大きなピッチ円直径をもって複数設け、中継プレートには、センタジョイント挿通孔の周囲の各ボルト孔に対応する外側ボルト孔を複数設けると共に、該各外側ボルト孔よりも内周側に前記小型センタジョイントを取付けるための内側ボルト孔を小さなピッチ円直径をもって複数設ける構成としている。
【0019】
これにより、センタジョイント挿通孔に対して大型センタジョイントを取付ける場合には、該センタジョイント挿通孔の周囲の各ボルト孔に大型センタジョイントを直接ボルト止めすることができる。
【0020】
一方、センタジョイント挿通孔に対して小型センタジョイントを取付けるときには、該センタジョイント挿通孔の周囲の各ボルト孔に中継プレートの各外側ボルト孔を合わせてボルト止めする。また、中継プレートの各内側ボルト孔に小型センタジョイントをボルト止めする。
【0021】
この結果、共通の下部走行体または上部旋回体に対して大型センタジョイントと小型センタジョイントの両方を選択的に取付けることができる。また、内側ボルト孔のピッチ円直径の寸法が異なる他の中継プレートを用意することにより、これらのセンタジョイントと異なる複数種類のセンタジョイントを取付けることもできる。
【0022】
請求項3の発明によれば、各外側ボルト孔と各内側ボルト孔とは、中継プレートに対して周方向に位置をずらして配置しているから、各外側ボルト孔と各内側ボルト孔とを離間して配置でき、工具を取扱うためのスペースを確保することができる。また、各内側ボルト孔のピッチ円直径を各外側ボルト孔のピッチ円直径に接近した大きな寸法とすることができ、より多くの種類のセンタジョイントを選択的に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態による建設機械として、クローラ式の下部走行体を備えた油圧クレーンを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0024】
まず、図1ないし図15は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は例えば資材等の荷物を高所に運搬するために用いられるクローラ式の油圧クレーンを示している。この油圧クレーン1は、自走可能な後述の下部走行体11と、該下部走行体11上に旋回装置2を介して旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。また、作業装置4の先端部には、荷物を掛けるためのフック4Aが上,下方向に移動自在に垂下されている。
【0025】
また、上部旋回体3は、図1、図2に示す如く、支持構造体をなす旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の右前側に設けられオペレータが搭乗するキャブ6と、前記旋回フレーム5の後部に搭載されたカウンタウエイト7と、前記旋回フレーム5の中央に位置して前,後方向に列設された複数台、例えば4台のウインチ8A〜8Dと、前記旋回フレーム5の左後側に搭載された原動機としてのエンジン9と、該エンジン9に取付けられた油圧ポンプ10とにより大略構成されている。
【0026】
ここで、旋回フレーム5は、その底板5A(図4参照)の旋回中心に後述する大型センタジョイント21のボディ23または小型センタジョイント31のボディ33が挿通するセンタジョイント挿通孔5Bが形成されている。また、油圧ポンプ10は、作動油タンク(図示せず)等と共に油圧源を構成するもので、エンジン9に駆動されることにより、作動油を圧油として各ウインチ8A〜8Dの油圧モータ、下部走行体11の油圧シリンダ16、走行用油圧モータ17等に供給するものである。
【0027】
次に、11は油圧クレーン1の下側部分を構成する自走可能な下部走行体を示している。この下部走行体11は、図1、図3に示す如く、後述のトラックフレーム12、油圧シリンダ16、走行用油圧モータ17、駆動輪18、従動輪19、履帯20等により構成されている。
【0028】
12は下部走行体11のトラックフレームである。このトラックフレーム12は、中央に位置してボックス状に形成されたセンタフレーム13と、該センタフレーム13の左,右両側に配設されて前,後方向に延びた左,右のサイドフレーム14(図1中に右側のみ図示)等とにより構成されている。
【0029】
また、センタフレーム13は前,後方向に延びる直方体状に形成され、その上面板13A上には、旋回中心Oを中心として旋回装置2が取付けられている。また、上面板13Aの中央には、円板状の取付板13Bが一体的に固着され、該取付板13Bの中央には、図5、図7に示すように、後述する大型センタジョイント21のスピンドル22または小型センタジョイント31のスピンドル32が挿通して取付けられる花弁状のセンタジョイント挿通孔13Cが開口している。さらに、センタジョイント挿通孔13Cの周囲には、前記大型センタジョイント21のスピンドル22に設けた各ボルト孔22Bと同じ配置で4個のボルト孔13Dが形成されている。
【0030】
ここで、センタジョイント挿通孔13Cは、例えば90度の間隔をもって径方向の内側に突出した4個の突部13C1と、該各突部13C1間に位置して円弧状に湾曲した凹部13C2とによって花弁状に形成されている。そして、4個の突部13C1は、図7、図11に示す如く、大型センタジョイント21のスピンドル22のフランジ22Aまたは中継プレート36を載せるもので、それぞれに前述したボルト孔13Dが形成されている。また、4個の凹部13C2は、取付板13Bに中継プレート36を取付けるときに、後述の小型センタジョイント31を固定して中継プレート36から下向きに突出したボルト37の先端が当接しないように避ける凹湾曲面となっている。
【0031】
一方、センタフレーム13の各ボルト孔13Dは、例えば雌ねじとして形成され、後述のボルト24が螺着されるものである。また、各ボルト孔13Dは、図5に示す如く、例えば90度間隔で4個設けられ、そのピッチ円直径は寸法D1となっている。このピッチ円直径寸法D1は、大型センタジョイント21のスピンドル22に設けられた4個のボルト孔22Bのピッチ円直径と同じ寸法になっている。
【0032】
さらに、センタフレーム13の四隅には、左,右方向に延びる4本の脚体15が設けられ、該各脚体15にはサイドフレーム14が左,右方向に移動可能に取付けられている。また、センタフレーム13とサイドフレーム14との間には、該サイドフレーム14を各脚体15に沿って左,右方向に移動して車幅を拡大、縮小する油圧シリンダ16が設けられている。
【0033】
17は左,右のサイドフレーム14の一端に設けられた走行用油圧モータで、該走行用油圧モータ17には駆動輪18が設けられている。また、19は左,右のサイドフレーム14の他端に設けられた従動輪、20は前記駆動輪18と従動輪19とに亘って巻回された履帯(それぞれ左側のみ図示)を示している。そして、走行用油圧モータ17、駆動輪18、従動輪19、履帯20によってクローラ装置を構成している。
【0034】
次に、下部走行体11のセンタフレーム13には、複数種類のセンタジョイントを取付けることができるが、第1の実施の形態では、後述する大型センタジョイント21と小型センタジョイント31との2種類を選択的に取付けた場合を代表例として述べる。この場合、大型センタジョイント21は、センタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに直接取付けることができ、小型センタジョイント31は、大型センタジョイント21と比較して形状が小さく形成されている。
【0035】
そこで、大型センタジョイント21と小型センタジョイント31の構成と、センタジョイント挿通孔13Cに小型センタジョイント31を取付けるときに使用する中継プレート36の構成について述べる。
【0036】
まず、下部走行体11に大型センタジョイント21を取付けた場合について説明すると、21は下部走行体11を構成するトラックフレーム12のセンタフレーム13の中央に取付けられた大型センタジョイントを示している(図4、図6参照)。この大型センタジョイント21は、後述の小型センタジョイント31よりも大きく形成されている。また、大型センタジョイント21は、下部走行体11に対して上部旋回体3が旋回動作するのを許しつつ、例えば上部旋回体3の油圧ポンプ10と下部走行体11の油圧シリンダ16、走行用油圧モータ17等との間で作動油を流通させるものである。
【0037】
また、大型センタジョイント21は、図8、図9に示す如く、下側に位置して下部走行体11側のセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに取付けられる内側のスピンドル22と、該スピンドル22の上側部位を取囲むように設けられ、上部旋回体3側に回転不能に固定される外側のボディ23とにより大略構成されている。また、ボディ23は、スピンドル22に対して回転自在な有蓋円筒体として形成され、スピンドル22とボディ23との間には回転位置に関係なく作動油を流通することができる複数本の作動油通路(図示せず)が形成されている。
【0038】
一方、スピンドル22には、図9に示すように鍔状のフランジ22Aが設けられ、該フランジ22Aには複数個のボルト孔22Bが貫通して形成されている。ここで、ボルト孔22Bは、例えば90度間隔で4個設けられ、そのピッチ円直径は下部走行体11を構成するセンタフレーム13の各ボルト孔13Dと同じ寸法D1となっている。これにより、センタフレーム13の各ボルト孔13Dにフランジ22Aの各ボルト孔22Bを合わせることにより、ボルト24を用いて大型センタジョイント21をセンタジョイント挿通孔13Cの周囲に取付けることができる。
【0039】
そして、大型センタジョイント21は、そのスピンドル22(作動油通路)が複数本の油圧ホース25を介して下部走行体11のアクチュエータをなす油圧シリンダ16、走行用油圧モータ17等に接続されている。また、ボディ23(作動油通路)が複数本の油圧ホース26と制御弁(図示せず)を介して油圧ポンプ10、作動油タンクに接続されている。
【0040】
次に、下部走行体11に大型センタジョイント21よりも小さな小型センタジョイント31を取付けた場合について、図10ないし図15を参照して説明する。
【0041】
図10において、31はセンタフレーム13の中央に取付けられた小型センタジョイントを示している。この小型センタジョイント31は、前述した大型センタジョイント21と比較して形状が小さく形成されている。従って、小型センタジョイント31は、センタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに直接的に取付けることができないため、図10、図11に示す如く、別個に用意した後述の中継プレート36を用いて取付けている。
【0042】
なお、小型センタジョイント31は、全体の大きさ、接続される後述の油圧ホース34,35の本数等の仕様が異なるが、回転を許しつつ作動油を流通させる構成については、大型センタジョイント21と同様となっている。
【0043】
即ち、小型センタジョイント31は、図12に示す如く、下側に位置する内側のスピンドル32と、該スピンドル32の上側部位に回転自在に取付けられると共に、上部旋回体3側に回転不能に固定される外側のボディ33と、スピンドル32とボディ33に亘って設けられた複数本の作動油通路(図示せず)とにより大略構成されている。そして、小型センタジョイント31は、そのスピンドル32が油圧ホース34を介して下部走行体11の走行用油圧モータ17等に接続されている。また、ボディ33が油圧ホース35、制御弁(図示せず)を介して油圧ポンプ10等に接続されている。
【0044】
また、スピンドル32には、図11、図12に示す如く、鍔状のフランジ32Aが設けられ、該フランジ32Aは、図13に示すように略四角形状をなし、その四隅には複数個のボルト孔32Bが貫通して形成されている。ここで、ボルト孔32Bは、例えば90度間隔で4個設けられ、そのピッチ円直径は前述したセンタフレーム13の各ボルト孔13Dのピッチ円直径D1よりも小さな寸法D2となっている。
【0045】
従って、スピンドル32の各ボルト孔32Bは、センタフレーム13の各ボルト孔13Dと適合しないため、小型センタジョイント31は、各ボルト孔13Dを用いてセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに取付けることはできない。
【0046】
そこで、第1の実施の形態では、センタフレーム13と小型センタジョイント31との間に後述の中継プレート36を介在させることにより、下部走行体11のセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに対して小型センタジョイント31を取付ける構成としている。
【0047】
36はセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに小型センタジョイント31を取付けるときに用いる第1の実施の形態による中継プレートを示している。この中継プレート36は、図10、図11に示す如く、大型センタジョイント21に代えて下部走行体11を構成するセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13C(旋回中心Oの位置)に取付けられるものである。また、中継プレート36には、小型センタジョイント31を取付けることができる。これにより、中継プレート36は、センタフレーム13に小型センタジョイント31を間接的に取付けるアタッチメントを構成している。そして、中継プレート36は、円形をした環状板からなり、図15に示すように十分な厚さ寸法をもった強度部材として形成されている。
【0048】
また、中継プレート36は、中央が小型センタジョイント31のスピンドル32が挿通して取付けられるセンタジョイント挿通孔36Aとなっている。また、中継プレート36の外周側には、図14に示すように、センタフレーム13の各ボルト孔13Dに対応する外側ボルト孔36Bが複数設けられ、該各外側ボルト孔36Bよりも内周側には、小型センタジョイント31を構成するスピンドル32の各ボルト孔32Bに対応する内側ボルト孔36Cが複数設けられている。
【0049】
ここで、中継プレート36の外側ボルト孔36Bは、例えば90度間隔で4個設けられ、そのピッチ円直径は、下部走行体11を構成するセンタフレーム13の各ボルト孔13Dと同じ寸法D1となっている。これにより、センタフレーム13の各ボルト孔13Dに各ボルト孔36Bを合わせることにより、ボルト24を用いて中継プレート36を下部走行体11側に取付けることができる。
【0050】
また、中継プレート36の内側ボルト孔36Cは、例えば90度間隔で4個設けられ、そのピッチ円直径は、各外側ボルト孔36Bのピッチ円直径D1よりも小さく、小型センタジョイント31のスピンドル32に設けられた各ボルト孔32Bのピッチ円直径と同じ寸法D2となっている。これにより、各内側ボルト孔36Cにスピンドル32の各ボルト孔32Bを合わせることにより、ボルト37を用いて小型センタジョイント31を中継プレート36に取付けることができる。
【0051】
さらに、各外側ボルト孔36Bと各内側ボルト孔36Cとは、中継プレート36に対して周方向に位置をずらし、例えば隣合う外側ボルト孔36Bのほぼ真ん中に内側ボルト孔36Cが位置するように、約45度位置をずらして中継プレート36に配置されている。これにより、各外側ボルト孔36Bと各内側ボルト孔36Cとは離間して配置できるから、ボルト24,37を着脱するときに、スパナ等の工具を取扱うためのスペースを確保することができる。また、各内側ボルト孔36Cのピッチ円直径D2を、各外側ボルト孔36Bのピッチ円直径D1に接近した大きな寸法とすることができる。
【0052】
第1の実施の形態による油圧クレーン1は上述の如き構成を有するもので、次に、下部走行体11のセンタフレーム13に対して大型センタジョイント21と小型センタジョイント31とを選択的に取付けるための作業について説明する。
【0053】
まず、センタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに対して大型センタジョイント21を取付ける場合について述べる。この場合には、下部走行体11のトラックフレーム12を構成するセンタフレーム13の各ボルト孔13Dに、大型センタジョイント21のスピンドル22の各ボルト孔22Bを位置合せし、ボルト24をセンタフレーム13の各ボルト孔13Dに螺着する。これにより、下部走行体11のセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに大型センタジョイント21を直接的に取付けることができる。
【0054】
次に、センタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに対して小型センタジョイント31を取付ける場合について述べる。この場合には、下部走行体11のセンタフレーム13の各ボルト孔13Dに、中継プレート36の各外側ボルト孔36Bを位置合せし、ボルト24を用いてセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに中継プレート36を取付ける。また、中継プレート36の各内側ボルト孔36Cに小型センタジョイント31を構成するスピンドル32の各ボルト孔32Bを位置合せし、ボルト37を用いて中継プレート36に小型センタジョイント31を取付ける。これにより、下部走行体11のセンタフレーム13に対し小型センタジョイント31を中継プレート36を介在させて間接的に取付けることができる。なお、中継プレート36に小型センタジョイント31を取付けた後に、この中継プレート36を下部走行体11のセンタフレーム13に取付ける構成としてもよい。
【0055】
次に、上述のように構成された油圧クレーン1の動作について説明する。オペレータは、上部旋回体3のキャブ6に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ10を駆動する。これにより、油圧ポンプ10からの圧油は、制御弁を介して各種アクチュエータに供給される。そして、キャブ6に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(図示せず)を操作したときには、制御弁から大型センタジョイント21または小型センタジョイント31の作動油通路を介して走行用油圧モータ17に圧油を供給することができ、駆動輪18によって履帯20を周回駆動して下部走行体11を前進または後退させることができる。一方、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置4により地上から高所に資材を運搬することができる。
【0056】
このように、第1の実施の形態によれば、下部走行体11をなすセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに小型センタジョイント31を取付けるときに用いる中継プレート36を備えているから、前記小型センタジョイント31を取付けるときには、前記センタジョイント挿通孔13Cと小型センタジョイント31との間に前記中継プレート36を介在させる。
【0057】
従って、下部走行体11のセンタフレーム13に対し大型センタジョイント21を取付ける場合には、該大型センタジョイント21をセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに対して直接取付けることができる。一方、下部走行体11に対し小型センタジョイント31を取付ける場合には、下部走行体11のセンタフレーム13と小型センタジョイント31のスピンドル32のフランジ32Aとの間に中継プレート36を介在することにより、該中継プレートを36介して小型センタジョイント31をセンタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cに間接的に取付けることができる。
【0058】
この結果、1台の下部走行体11に対して大型センタジョイント21と小型センタジョイント31の両方を選択的に取付けることができ、複数機種の油圧クレーン1で下部走行体11を共通化することができる。これにより、油圧クレーン1の生産性の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0059】
また、内側ボルト孔のピッチ円直径の寸法が異なる他の中継プレートを用意した場合には、大型センタジョイント21、小型センタジョイント31以外の複数種類のセンタジョイントを下部走行体11側に間接的に取付けることができ、共通化の範囲を広めることができる。
【0060】
また、中継プレート36に設けた各外側ボルト孔36Bと各内側ボルト孔36Cとは、周方向に例えば約45度位置をずらして配置している。これにより、各外側ボルト孔36Bと各内側ボルト孔36Cとを離間して配置できるから、ボルト24,37を着脱するときに、スパナ等の工具を取扱うためのスペースを確保することができ、作業性を高めることができる。
【0061】
しかも、隣合う外側ボルト孔36Bのほぼ真ん中に内側ボルト孔36Cを配置できるから、各内側ボルト孔36Cのピッチ円直径D2を、各外側ボルト孔36Bのピッチ円直径D1に接近した大きな寸法とすることができる。これにより、中継プレート36に取付けることができるセンタジョイントの種類を多くすることができる。
【0062】
次に、図16および図17は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、センタジョイントを上部旋回体に取付ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0063】
図16において、41は第2の実施の形態による下部走行体で、該下部走行体41は、第1の実施の形態による下部走行体11とほぼ同様に、トラックフレーム42のセンタフレーム43等により構成されている。また、センタフレーム43の上面板43Aには、後述の大型センタジョイント46または小型センタジョイント49を通すためのセンタジョイント挿通孔43Bが形成されている。
【0064】
44は第2の実施の形態による上部旋回体で、該上部旋回体44は、旋回フレーム45等を備えている。また、旋回フレーム45の底板45Aの旋回中心には、円板状の取付板45Bが一体的に固着され、該取付板45Bの中央には、後述する大型センタジョイント46のボディ48または小型センタジョイント49のボディ51が挿通して取付くセンタジョイント挿通孔45Cが開口している。
【0065】
46は上部旋回体44をなす旋回フレーム45のセンタジョイント挿通孔45Cに取付けられた第2の実施の形態による大型センタジョイントを示している。この大型センタジョイント46は、相対回転可能なスピンドル47とボディ48とからなり、該ボディ48の下部にはフランジ48Aが形成されている。そして、大型センタジョイント46は、そのボディ48のフランジ48Aが上部旋回体44の旋回フレーム45の取付板45Bに直接的にボルト止めされている。
【0066】
また、図17において、49は大型センタジョイント46に代えて上部旋回体44に取付けられた第2の実施の形態による小型センタジョイントを示している。この小型センタジョイント49は、相対回転可能なスピンドル50とボディ51とからなり、該ボディ51の下部にはフランジ51Aが形成されている。そして、小型センタジョイント49は、そのボディ51のフランジ51Aが後述の中継プレート52を介して上部旋回体44の旋回フレーム45の取付板45Bに間接的にボルト止めされている。
【0067】
52は旋回フレーム45と小型センタジョイント49との間に介在して設けられた第2の実施の形態による中継プレートを示している。この中継プレート52は、前述した第1の実施の形態による中継プレート36とほぼ同様に、上部旋回体44の旋回フレーム45に小型センタジョイント49のボディ51を間接的に取付けるアタッチメントとして構成されている。
【0068】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、上部旋回体44を構成する旋回フレーム45を共通化して用いることができる。
【0069】
なお、第1の実施の形態では、センタフレーム13のセンタジョイント挿通孔13Cにに1枚の中継プレート36を取付けることにより、大型センタジョイント21よりも小さな小型センタジョイント31を取付ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す変形例のように、中継プレート36に他の中継プレート61を取付けることにより、小型センタジョイント31に比較して形状の小さな他のセンタジョイント62を取付ける構成としてもよい。この構成は第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0070】
また、第1の実施の形態では、センタフレーム13のボルト孔13Dを90度間隔で4個設けた場合を例示し、その他のボルト孔22B,32B,36B,36Cも同様に4個設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ボルト孔を3個または5個以上設ける構成としてもよく、各部位によってボルト孔の数を使い分ける構成としてもよい。
【0071】
さらに、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体11を備えた油圧クレーン1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、油圧ショベル等の旋回式構造を有する他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態による油圧クレーンを示す正面図である。
【図2】図1の油圧クレーンを拡大して示す平面図である。
【図3】下部走行体を拡大して示す平面図である。
【図4】下部走行体に対する大型センタジョイントの取付状態を図3中の矢示IV−IV方向からみた要部拡大の断面図である。
【図5】センタフレームの中央部位を拡大して示す平面図である。
【図6】センタフレームの要部と大型センタジョイントを組立てた状態で示す組立斜視図である。
【図7】センタフレームの要部と大型センタジョイントを分解してた状態で示す分解斜視図である。
【図8】大型センタジョイントを単体で示す正面図である。
【図9】大型センタジョイントを単体で示す平面図である。
【図10】センタフレームの要部と小型センタジョイントと中継プレートを組立てた状態で示す組立斜視図である。
【図11】センタフレームの要部と小型センタジョイントと中継プレートを分解してた状態で示す分解斜視図である。
【図12】小型センタジョイントを単体で示す正面図である。
【図13】小型センタジョイントのスピンドルを図12中の矢示XIII−XIII方向からみた横断面図である。
【図14】中継プレートを単体で示す平面図である。
【図15】中継プレートを単体で示す正面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態による下部走行体と旋回フレームと大型センタジョイントを図4と同様位置からみた要部拡大の断面図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態による下部走行体と旋回フレームと小型センタジョイントと中継プレートを図4と同様位置からみた要部拡大の断面図である。
【図18】本発明の変形例による他のセンタジョイント、他の中継プレート等を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
1 油圧クレーン(建設機械)
2 旋回装置
3,44 上部旋回体
5,45 旋回フレーム
5A,45A 底板
5B,13C,36A,45C センタジョイント挿通孔
9 エンジン(原動機)
10 油圧ポンプ(油圧源)
11,41 下部走行体
12,42 トラックフレーム
13,43 センタフレーム
13A,43A 上面板
13B,45B 取付板
13D,22B,32B ボルト孔
16 油圧シリンダ(アクチュエータ)
17 走行用油圧モータ(アクチュエータ)
18 駆動輪
21,46 大型センタジョイント
22,32,47,50 スピンドル
22A,32A,48A,51A フランジ
23,33,48,51 ボディ
24,37 ボルト
31,49 小型センタジョイント
36,52 中継プレート
36B 外側ボルト孔
36C 内側ボルト孔
61 他の中継プレート
62 他のセンタジョイント
O 旋回中心
D1,D2 ピッチ円直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用油圧モータによって自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載され油圧源を駆動する原動機が設けられた上部旋回体とを備え、
前記下部走行体または上部旋回体の旋回中心にはセンタジョイント挿通孔を有し、該センタジョイント挿通孔には前記下部走行体と上部旋回体とが相対的に旋回動作するのを許しつつ前記油圧源と前記走行用油圧モータを含むアクチュエータとの間で作動油を流通させるセンタジョイントを取付ける構成としてなる建設機械において、
前記センタジョイントは、前記センタジョイント挿通孔に直接取付けることができる大型センタジョイントと、この大型センタジョイントと比較して形状の小さな小型センタジョイントとを含む複数種類を有し、
前記センタジョイント挿通孔に前記小型センタジョイントを取付けるときに用いる中継プレートを備え、
前記小型センタジョイントを取付けるときには、前記センタジョイント挿通孔に前記中継プレートを介在させる構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記センタジョイント挿通孔の周囲には、前記大型センタジョイントを取付けるためのボルト孔を大きなピッチ円直径をもって複数設け、
前記中継プレートには、前記センタジョイント挿通孔の周囲の前記各ボルト孔に対応する外側ボルト孔を複数設けると共に、該各外側ボルト孔よりも内周側に前記小型センタジョイントを取付けるための内側ボルト孔を小さなピッチ円直径をもって複数設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記各外側ボルト孔と各内側ボルト孔とは、前記中継プレートに対して周方向に位置をずらして配置する構成としてなる請求項2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−51591(P2009−51591A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218473(P2007−218473)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】