説明

弁体の弁座シート当り確認用ガイド治具

【課題】軽量であって実装時と同様の状況を再現でき、確実な当たりと確認作業を行う。
【解決手段】弁ハウスの上面中央をまたいで設置され、かつ中央に弁ロッド挿通孔を、その周囲にボルト挿通孔を開口したプレートと、プレート中央孔位置に立設されて弁ロッドを貫通状態に挿通するガイドスリーブと、マウントプレート周囲孔位置に立設されて複数のボルトに挿通されるガイドスリーブとからなり、ロッドをスリーブに挿通し、弁体に光明丹を塗布し、ロッドを上位置に保ちながらプレートをハウス上に設置しスリーブをボルトに挿通し、ナット締付け後ロッドを下降させて弁体を弁座シートに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の加減弁に用いられる弁体の弁座シート当り確認用ガイド治具に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用タービンでは、負荷の変動に応じて供給蒸気量及び圧力を調整して稼動速度を極力一定に保つ必要があるため、調速機構に連動させた加減弁をタービンの蒸気入口に設けている。
【0003】
図1、2はその一例として本発明が適用されるアングル型蒸気加減弁を示す。図において、この加減弁は、弁室1の側方に給気ポート2を開口し、下部にタービンの蒸気入口に連通する弁座シート3を設けた弁ハウジング4と、弁ハウジング4の上面開口にフランジ結合され、かつ弁ハウジング4上に突出する8本の植込みボルト5,及びこれに締結されるナット6を介して固定された弁ヘッド7と、弁ヘッド7の中心を昇降可能に貫通した弁ロッド8と、弁ロッド8の先端に一体化され、前記弁座シート3に対向させた下部半球型の弁体9と、前記弁ヘッド7の上部側に揺動可能に支持され、かつ前記弁ロッド8の上端に連繋してこれを昇降動作させるためのレバー10と、レバー10の揺動端にそのカムリード面を摺接し、かつ図示しないサーボシステムなどの調速機構に連動するレバー10の駆動用カム11などを備えている。
【0004】
以上の加減弁では、定期点検時に各部を分解して、それぞれの損耗状態が検査され、その状態に応じた各部品の補修や交換がなされた後、再組立を行うようにしている。この検査項目のうちで大きな重要度を占める項目の1つとして、弁体9と弁座シート3との当たり具合の確認と調整の項目がある。
【0005】
この項目における確認方法は、弁体9に光明丹等のマーキング材を塗り、これを弁座シート3につき当てることで、光明丹を弁座シート3に転写させ、その転写形状によって当たり具合を確認している。この当りは真円が望ましいが、当たり具合が悪い場合にはすりあわせ治具により調整後再度当たり確認作業を繰返す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の検査において、検査員が弁ロッド8を手に持って弁体9を弁座シート3につき当てたのでは、測定が不正確である。他方、弁ヘッド7に弁ロッド8及び弁体9そのものを実装した状態でつき当て検査する場合には、弁ヘッド7の全体重量は極めて重く、高さも高いため、チェーンホイストなどで上げ下げしなければならず、位置決め作業や8箇所あるナット6の脱着も面倒であり、検査−調整作業を何回も繰返す場合には検査者に加わる手間や負担が大きなものとなる。
【0007】
そこで本発明は、以上の課題を解決するものであって、軽量であって実装時の状況を忠実に再現でき、確実な当たりとその確認作業を行うことができるようにした弁体の弁座シート当たり確認用ガイド治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、弁室の側方に給気ポートを開口し、下部にタービンの蒸気入口に連通する弁座シートを設けた弁ハウジングと、弁ハウジングの上面に突出する複数本の植込みボルト,及びこれに締結されるナットを介して固定された弁ヘッドと、弁ヘッドの中心を貫通し、かつ弁ヘッドの上部に設けた調速機構と連動して昇降する弁ロッドと、弁ロッドの先端に一体化され、前記弁座シートに対向させた弁体とを備えたアングル型加減弁の点検時において、前記弁体と弁座シートとの当たりを確認するためのガイド治具であって、該ガイド治具は、前記弁ヘッドを除去した弁ハウジングの上面にその中央をまたいで設置され、かつ中央に前記弁ロッドの挿通孔を、その周囲にボルトの挿通孔を貫通形成したマウントプレートと、マウントプレートの中央孔位置に立設され、かつ前記弁ロッドを挿通するロッドガイドスリーブと、マウントプレート周囲の孔位置に立設され、かつ前記ボルトのうち対向する複数のボルトに挿通される複数のボルトガイドスリーブとからなり、前記弁ロッドを前記ロッドガイドスリーブに挿通し、かつ前記弁体の外周に光明丹等のマーキング材を塗布した状態で弁ロッドを上位置に保ちながらマウントプレートを弁ハウジング上に設置してロッドガイドスリーブを前記ボルトに挿通し、その突出端にナットを締付け後、弁ロッドを下降させて前記弁体を弁座シートに当接するものであることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明では、請求項1において、前記マウントプレートは細長長方形状をなし、その両側に一対のボルトガイドスリーブを立設したものであってもよいし、前記マウントプレートは凸状をなし、その周縁に3つのボルトガイドスリーブを立設したものであってもよいし、前記マウントプレートは十字形に形成され、その周縁に4つのボルトガイドスリーブを突設したものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、軽量であって実装時と同様の状況を再現でき、確実な当たりと確認作業を行うことができる。
【0011】
また、請求項2発明では、ナットの取付取外しが2箇所でよいため操作が最も簡単である。これに対し、請求項3,4の発明ではナットの取付取外しが3または4箇所となるが、取付精度がその分さらに高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態につき図3以降の図面を用いて説明する。図3〜図5は本発明の第1の実施形態を示すものである。図3におけるガイド治具20は、弁ヘッド7を除去した弁ハウジング4の上面に直接固定されるものであって、図4に示すように弁ハウジング4の上面にその中央をまたいで設置され、かつ中央に前記弁ロッド8の挿通孔を、その左右にボルト5の挿通孔を貫通形成した所定厚みの細長い長方形状のマウントプレート21と、マウントプレート21の中央孔位置に立設され、かつ前記弁ロッド8を貫通状態に挿通するロッドガイドスリーブ22と、プレート21の左右の孔位置に立設され、かつ前記植込みボルト5のうち対向する二本のボルト5に挿通される一対のボルトガイドスリーブ23とからなっている。
【0013】
ロッドガイドスリーブ22の内径は弁ロッド8の外径にほぼ等しく、スムーズに摺動ガイドできるとともに、がたつき(ふれ)を最小に押えた寸法となっている。
【0014】
また、各ボルトガイドスリーブ23の内径はボルト5の雄ネジ部外径にほぼ等しく、かつ前記弁ヘッド7の弁ハウジング4に対する接合面の厚みより高く設定され、これによってボルトガイドスリーブ23の上端からのボルト5の突出量を小さくし、ナット6のねじ込み長さを少なくすることによって、ナット脱着時の作業負担を軽減できるようにしている。
【0015】
以上の構成における当たり確認手順は、まず弁ヘッド7より取外した弁ロッド8をロッドガイドスリーブ22に挿通し、また弁体9の先端球面に光明丹を均一に塗布する。
【0016】
その後図5(a)に示すように、弁ロッド8を上昇位置に保持した状態で、マウントプレート21を弁ハウジング4の上面に設置してボルトガイドスリーブ23をボルト5に挿通し、ナット6で締付ける。
【0017】
その後、(b)に示すように、弁ロッド8を下降させると弁体9は実装状態と同様の精度により弁座シート3につき当たる。
【0018】
その後は、ナット6をゆるめて、ガイド治具20を弁ロッド8ごと弁ハウジング4から取外せば、弁座シート3に転写模様が見えるので、この形状が真円であるか否かを判定し、調整が必要であれば、すりあわせ治具により弁体9及び弁座シート3双方の当り調整を行い、再度前記と同様の当たり確認の操作を繰返せばよい。
【0019】
本実施形態では、ガイド治具20と弁ロッド8・弁体9のみでは軽量で、2つのナット6の脱着作業により弁体9の脱着を直接人手で行うことができるため、当たりの確認、調整作業が簡単であり、かつ実装時と同様な精度で当たりの確認を行うことができる。
【0020】
図6は本発明の第2の実施形態を示し、(a)はガイド治具30の斜視図、(b)は同装着状態の平面図である。このガイド治具30は凸型をなし、かつ中央に弁ロッド8の貫通孔を形成し、かつその左右及び凸型箇所に前記ボルト5の貫通孔を形成した所定厚みのマウントプレート31と、中央の貫通孔位置に立設されたロッドガイドスリーブ32と、周囲の3つの孔位置に立設され、各ボルト5のうち左右対向する2つのボルト5及びこれと90°対向する1つのボルト5に挿通される計3本のボルトガイドスリーブ33を備えている点以外は前記第1実施形態と同じである。
【0021】
本実施形態ではナット6の締付け箇所が3箇所となり、より実装状態に忠実に弁ロッド8を弁ハウジング4の中央に取り付けることができるため、その分脱着の手数がかかるが、より精度よく弁体9の当たりの確認を行うことができる。
【0022】
図7は本発明の第3の実施形態を示し、(a)はガイド治具40の斜視図、(b)は同装着状態の平面図である。このガイド治具40は十字型をなし、かつ中央に弁ロッド8の貫通孔を形成し、かつその前後左右箇所に前記ボルト5の貫通孔を形成した所定厚みのマウントプレート41と、中央の貫通孔位置に立設されたロッドガイドスリーブ42と、周囲の4つの孔位置に立設され、各ボルト5のうち前後左右に対向する4つのボルト5に挿通される計4本のボルトガイドスリーブ43を備えている点以外は前記第1実施形態と同じである。
【0023】
本実施形態ではナット6の締付け箇所が4箇所となり、さらに実装状態に忠実に弁ロッド8を弁ハウジング4の中央に取り付けることができるため、その分脱着の手数がかかるが、さらに精度よく弁体9の当たりの確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用される加減弁の側断面図である。
【図2】(a)〜(c)は図1のA−A線、B−B線及びC−C線における平断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による当たり確認用ガイド治具の斜視図である。
【図4】同ガイド治具を弁ハウジングの取付けた状態を示す平断面図である。
【図5】(a),(b)は同治具による実際の当たり確認手順を示す側断面図である。
【図6】(a),(b)は第2実施形態による治具の斜視図及び弁ハウジングに取付けた状態を示す平面図である。
【図7】(a),(b)は第3実施形態による治具の斜視図及び弁ハウジングに取付けた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 弁室
2 給気ポート
3 弁座シート
4 弁ハウジング
5 植込みボルト
6 ナット
7 弁ヘッド
8 弁ロッド
9 弁体
20,30,40 ガイド用治具
21,31,41 マウントプレート
22,32,42 ロッドガイドスリーブ
23,33,43 ボルトガイドスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室の側方に給気ポートを開口し、下部にタービンの蒸気入口に連通する弁座シートを設けた弁ハウジングと、
弁ハウジングの上面に突出する複数本の植込みボルト,及びこれに締結されるナットを介して固定された弁ヘッドと、
弁ヘッドの中心を貫通し、かつ弁ヘッドの上部に設けた調速機構と連動して昇降する弁ロッドと、
弁ロッドの先端に一体化され、前記弁座シートに対向させた弁体とを備えたアングル型加減弁の点検時において、前記弁体と弁座シートとの当たりを確認するためのガイド治具であって、
該ガイド治具は、前記弁ヘッドを除去した弁ハウジングの上面にその中央をまたいで設置され、かつ中央に前記弁ロッドの挿通孔を、その周囲にボルトの挿通孔を貫通形成したマウントプレートと、
マウントプレートの中央孔位置に立設され、かつ前記弁ロッドを挿通するロッドガイドスリーブと、
マウントプレート周囲の孔位置に立設され、かつ前記ボルトのうち対向する複数のボルトに挿通される複数のボルトガイドスリーブとからなり、
前記弁ロッドを前記ロッドガイドスリーブに挿通し、かつ前記弁体の外周に光明丹等のマーキング材を塗布した状態で弁ロッドを上位置に保ちながらマウントプレートを弁ハウジング上に設置してロッドガイドスリーブを前記ボルトに挿通し、その突出端にナットを締付け後、弁ロッドを下降させて前記弁体を弁座シートに当接するものであることを特徴とする弁体の弁座シート当たり確認用ガイド治具
【請求項2】
請求項1において、前記マウントプレートは細長長方形状をなし、その両側に一対のボルトガイドスリーブを立設したものであることを特徴とする弁体の弁座シート当たり確認用ガイド治具。
【請求項3】
請求項1において、前記マウントプレートは凸状をなし、その周縁に3つのボルトガイドスリーブを立設したものであることを特徴とする弁体の弁座シート当たり確認用ガイド治具。
【請求項4】
請求項1において、前記マウントプレートは十字形に形成され、その周縁に4つのボルトガイドスリーブを突設したものであることを特徴とする弁体の弁座シート当たり確認用ガイド治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−144708(P2006−144708A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337957(P2004−337957)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】