説明

弁補強器具

【課題】修理が困難な箇所においてもヨーク式弁のヨークやグランド押さえを補強でき、しかも弁の開閉操作を円滑に行える弁補強器具を提供することである。
【解決手段】ヨーク式のヨーク23より弁体側のパイプ15にベースプレート24を固定し、ヨーク23から突出した弁棒14を貫通してヨーク23を覆うようにベースプレート24にスタンド25を立設し、弁棒14の雄ねじと螺合する雌ねじを有しハンドル16で操作されるネジ体26を弁棒14がスタンド25を貫通する部分に設ける。また、グランド押さえ20の上部にグランド押さえ20を保持するグランド押さえ保持部28を設け、垂直ボルト29にてグランド押さえ20を跨いでグランド押さえ保持部28をベースプレート24に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーク式弁のヨークやグランド押さえを補強する弁補強器具に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、液体や高圧ガスなどの流体を流す配管には弁が設けられ、弁の開閉により、流体の供給先を変更したり流体の供給を停止したりしている。例えば、LNG設備においては、LNG(液化天然ガス)を貯蔵するLNG貯槽から複数系統の配管を通してLNG消費施設にLNGを供給するように構成されている。
【0003】
LNG設備に使用されるヨーク式弁には、弁棒を操作するハンドルと弁体を収納した弁箱との間が長いロングネックのヨーク式弁と、ハンドルと弁箱との間が短いショートネックのヨーク式弁とがある。ロングネックのヨーク式弁は低温用であり、ショートネックのヨーク式弁は常温用である。
【0004】
図6はロングネックのヨーク式弁の一例の正面図、図7は図6のA−A線での断面図である。ロングネックのヨーク式弁11は、後述するグランドパッキン18が低温では性能を発揮できないため、グランドパッキン18近傍を常温に保つ目的で、弁棒14を貫通するパイプ15に冷熱を放熱するための放熱板17が設けられ、この放熱板17から下方は弁箱13を包むように保冷材が配置されている。すなわち、弁体12が収納される弁箱13からパイプ15が引き出され、このパイプ15に弁棒14が挿入される。弁棒14の一方端には弁体12が接続され、他方端には弁棒14を操作して弁の開閉を行うためのハンドル16が取り付けられている。
【0005】
また、弁棒14のシール性を保つためのグランドパッキン18がパッキン箱19に設けられ、このグランドパッキン18はグランド押さえ20で押圧され、弁棒14のシール性を保つようにしている。グランド押さえ20はパッキン箱19の上部のヨーク23に設けられたアイボルト21にナット22で締め付けられてパッキン箱19に固定される。これにより、グランド押さえ20は、アイボルト21及びナット22により押圧される。この場合の荷重はヨーク23にかかることになる。
【0006】
また、パッキン箱19の上部に設けられたヨーク23は、パッキン箱19から突出した弁棒14を保持するものであり、突出した弁棒14に形成された雄ねじとヨーク23の雌ねじとが螺合して弁棒14を保持する。すなわち、ハンドル16を弁の閉方向に操作したときは、弁棒14には先端部の弁体12から上方に圧力が加わる。その弁棒14に加わる圧力は、弁棒14の雄ねじとヨーク23の雌ねじとの螺合にてヨーク23にかかる。
【0007】
このようなLNG設備で使用されているヨーク式弁11は、設計にあった仕様の製品を取り付けているため、現在までに外観や機能等に特別の不具合は発生していない。
【0008】
ここで、ヨーク式弁としては、グランドパッキンの交換を可能にするために、パッキン押さえを弁棒から取り外せるように複数部分に分割した構造にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、バルブ補修治具として、ヨーク式弁の弁棒に溝を有しない開閉バルブの修理を多大な労力と時間をかけずに行うことができるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。これは、開閉バルブの操作部を内側に囲むようにして開閉バルブに支持本体を取り付け、これに取り付けられて開閉バルブの弁棒と同軸上に配置された第1軸部材を弁棒の先端部に当接して弁棒の移動を規制し、弁棒に嵌合しているパッキン押えの側面に第2軸部材を当接してパッキン押えの移動を規制し、パッキン押えから延びる弁棒に取り付けられてパッキン押えと当接してパッキン押えの移動を規制し、パッキン押えから延びる弁棒に取り付けた板部材を支持本体を介して開閉バルブに固定して弁棒の移動を規制し、これにより、開閉バルブのヨークを取り替えて修理するものである。
【0010】
最近になってヨーク式弁11のヨーク23に経年劣化や配管内の局部的な圧力上昇等による割れや腐食による減肉が発生する事象が発生していることが判明した。ヨーク23の割れや減肉が発生していると弁棒の保持ができなくなり閉止操作が困難になり、ヨーク23のアイボルト21を取り付ける部分の割れが進行すると、ヨーク式弁11のグランド押さえ20が脱落することが考えられる。グランド押さえ20が脱落すると、最終的にはグランドパッキン18よりLNGが漏れ出す危険性があるので早期の対策が必要である。
【0011】
この場合、特許文献2のバルブ修理治具を用いてヨークの取り替えをすることも可能であるが、LNG設備の配管の周囲の状況、例えば配管を流れる流体の条件によっては修理作業が限定される場合がある。ヨーク式弁11の部品やそのもの自体の取り替えを行うには、ヨーク式弁の配置箇所によっては、LNG設備自体を停止しなければならない事態となる。
【0012】
そこで、出願人は、修理が困難な箇所においてもヨーク式弁のヨークやグランド押さえを補強できる弁補強器具及び方法を開発し、特願2007−285365号として出願した。これは、ヨークより弁体側のパイプにベースプレートを取り付け、弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有した弁棒を保持する弁棒押さえをヨークのハンドル側に配置し、ヨークを跨いで弁棒押さえをベースプレートに通しボルトで固定するとともに、グランド押さえを跨いでグランド押さえ保持部をベースプレートに垂直ボルトで固定するものである。
【0013】
これにより、弁棒の荷重はベースプレートに固定された弁棒押さえで保持し、ヨークに荷重をかけることがなく、しかも、弁棒は弁棒押さえとねじで螺合しているので、弁の開閉のハンドル操作を行うこともでき、ヨーク式弁の機能を損なうことなくヨークの補強ができるものである。
【特許文献1】特開平7−248065号公報
【特許文献2】特開2005−288656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、弁の開閉操作を円滑に行えるようにするには、弁の開閉操作に伴う捻り剛性を確保する必要がある。また、出願人による先の出願では、弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有した弁棒押さえを設けて弁棒を保持するので、ヨークが破断していない状態では、弁棒押さえによる弁棒の保持力と、ヨークによる弁棒の保持力とが干渉することがあり、円滑に弁の開閉操作を行えない場合がある。
【0015】
本発明の目的は、修理が困難な箇所においてもヨーク式弁のヨークやグランド押さえを補強でき、しかも弁の開閉操作を円滑に行える弁補強器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明に係わる弁補強器具は、弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、前記ヨークから突出した弁棒を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、前記弁棒が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有し前記ハンドルにより操作されるネジ体とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明に係わる弁補強器具は、弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、前記ヨークから突出した弁棒を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、前記弁棒が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有し前記ハンドルにより操作されるネジ体と、前記グランド押さえの上部に設けられ前記グランド押さえを保持するグランド押さえ保持部と、前記グランド押さえを跨いで前記グランド押さえ保持部を前記ベースプレートに固定する垂直ボルトとを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明に係わる弁補強器具は、弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、前記ヨークから突出した弁棒と連結され前記弁棒を延長するための延長軸と、前記延長軸を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、前記延長軸が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記ハンドルの回動により前記延長軸を回動させるためのスリーブと、前記延長軸を貫通し前記スリーブの内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有し前記延長軸をジャッキアップ及びジャッキダウンさせるための緊急時開閉用ボルトとを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明に係わる弁補強器具は、弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、前記ヨークから突出した弁棒と連結され前記弁棒を延長するための延長軸と、前記延長軸を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、前記延長軸が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記ハンドルの回動により前記延長軸を回動させるためのスリーブと、前記延長軸を貫通し前記スリーブの内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有し前記延長軸をジャッキアップ及びジャッキダウンさせるための緊急時開閉用ボルトと、前記グランド押さえの上部に設けられ前記グランド押さえを保持するグランド押さえ保持部と、前記グランド押さえを跨いで前記グランド押さえ保持部を前記ベースプレートに固定する垂直ボルトとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヨークより弁体側のパイプにベースプレートを固定し、ヨークから突出した弁棒を貫通してヨークを覆うようにベースプレートにスタンドを立設し、弁棒がスタンドを貫通する部分に弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有したネジ体を設け、ハンドルを操作することにより弁棒を駆動するので、ハンドル操作に伴う捻り剛性はベースプレートに立設されたスタンドで確保することができ、弁の開閉操作を円滑に行うことができる。また、グランド押さえの上部にグランド押さえを保持するグランド押さえ保持部を設け、グランド押さえを跨いでグランド押さえ保持部をベースプレートに垂直ボルトで固定するので、ヨークだけでなくグランド押さえも適切に補強できる。
【0021】
一方、弁棒を延長するための延長軸を弁棒に連結し、延長軸がスタンドを貫通する部分にハンドルの回動により延長軸を回動させるためのスリーブを設け、延長軸を貫通しスリーブの内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有した緊急時開閉用ボルトを設けた場合には、ヨークが破断していない状態では、ハンドルの回動によりスリーブを回動させてヨークによる弁棒の保持力で弁棒を操作し、ヨークが破断している状態では、緊急時開閉用ボルトにより延長軸のジャッキアップ及びジャッキダウンさせるので、緊急時開閉用ボルトによる弁棒の保持力と、ヨークによる弁棒の保持力とが干渉することがなく、円滑に弁の開閉操作を行える。さらには、弁棒を延長軸で延長するので、弁棒が短い場合であっても、弁棒補強器具と弁のハンドルとが干渉することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる弁補強器具の構成図であり、図1(a)はロングネックのヨーク式弁に適用した場合の弁補強器具の正面図、図1(b)は図1(a)のB−B線での断面図、図1(c)は図1(b)のC−C線での平面図である。図1(b)ではヨーク23の部分を断面とし手前側のヨーク23の図示を省略している。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、ヨーク23より弁体側、つまり放熱板17側のパイプ15にはベースプレート24が固定されている。このベースプレート24には、スタンド25がヨーク23から突出した弁棒14を貫通してヨーク23を覆うように立設されている。ヨーク23から弁棒14が突出する部分には雌ねじを有したネジハメ輪27が設けられ、弁棒14の雄ねじは、ヨーク23のネジハメ輪27の雌ねじと螺合して弁棒14を保持する。また、弁棒14がスタンド25を貫通する部分にはネジ体26が設けられている。ネジ体26の内側には弁棒14の雄ねじと螺合する雌ねじを有し、ハンドル16により操作されることにより弁棒14を保持して駆動する。
【0024】
グランド押さえ20は、弁棒14のシール性を保つためのグランドパッキン18を押さえるものであり、グランド押さえ保持部28はグランド押さえ20の上部に設けられ、グランド押さえ20を保持する。グランド押さえ保持部28は、グランド押さえ20を跨いでベースプレート24に垂直ボルト29で取り付けられる。グランド押さえ20はパッキン箱19の上部のヨーク23に設けられたアイボルト21にナット22で締め付けられてパッキン箱19に固定される。これにより、グランド押さえ20は、アイボルト21及びナット22により押圧される。この場合の荷重はヨーク23にかかることになる。そこで、グランド押さえ保持部28によりグランド押さえ20を保持し、グランド押さえ保持部28はベースプレート24で荷重を受けることになる。
【0025】
図1(c)に示すように、グランド押さえ保持部28は、2つのグランド押さえ保持部片28a、28bからなり、この2つのグランド押さえ保持部片28a、28bは、対面して接合されたときに、弁棒14及びグランド押さえ20の締付ネジ30に干渉しないように間隔を保つとともに、垂直ボルト29を貫通させるための間隔を保って配置される。そして、取付ボルト31で2つのグランド押さえ保持部片28a、28bを固定する。このように、グランド押さえ保持部28は、グランド押さえ保持部片28a、28bにて弁棒14及びグランド押さえ20の締付ネジ30に干渉しない間隔を保つように複数部分に分割された構造を有している。
【0026】
次に、ベースプレート24に立設された垂直ボルト29を、グランド押さえ保持部片28a、28bの間隙に通し、端部をナット32で締め付ける。これにより、ヨーク23を跨いでグランド押さえ保持部28をベースプレート24に固定する。従って、グランド押さえ20への押圧は、ベースプレート24に固定されたグランド押さえ保持部28で行うことになるので、ヨーク23に荷重をかけることなくグランド押さえ20を押圧できる。これにより、グランドパッキンの締め付けをヨーク23に荷重をかけることなく行え、グランド押さえ20の補強ができる。
【0027】
ベースプレート24は、ヨーク23より下部のパイプ15に連結ボルト33で固定される。図1(c)に示すように、ベースプレート24は、2つのベースプレート片24a、24bからなり、この2つのベースプレート片24a、24bは、対面して接合されたときに、パイプ15(弁棒14)を貫通させるためのパイプ貫通孔と、垂直ボルト29を貫通させるための通しボルト貫通孔とが形成されるように成型されている。また、2つのベースプレート片24a、24bには、グランド押さえ保持部28を固定するための垂直ボルト29を立設するための垂直ボルト立設ねじ部が設けられている。
【0028】
さらに、2つのベースプレート片24a、24bには、スタンド25の脚部ボルトを貫通させるための貫通孔34が設けられている。図1(c)では、スタンド25の脚部ボルトは、2つのベースプレート片24a、24bの連結板35を介してベースプレート片24a、24bの貫通孔34に挿入され、スタンド25がベースプレート24に固定される場合を示している。
【0029】
このように、第1の実施の形態では、ヨーク23より弁体側のパイプ15にベースプレート24を固定し、このベースプレート24に、ヨーク23を補強するスタンド25と、グランド押さえ20を補強するグランド押さえ保持部28とを取り付けるので、ヨーク23だけでなくグランド押さえ20も適切に補強できる。また、スタンド25は、ヨーク23から突出した弁棒14を貫通してヨーク23を覆うようにベースプレート24に立設され、弁棒14がスタンド25を貫通する部分に弁棒14の雄ねじと螺合する雌ねじを有したネジ体26を設けているので、ヨーク23のネジハメ輪27による弁棒14の保持力に加え、ネジ体26で弁棒14の保持力を分担することになる。この場合、ネジ体26による弁棒14の保持力と、ヨーク23のネジハメ輪27による弁棒14の保持力とが干渉しないように、ネジ体26の雌ねじを形成する。
【0030】
以上の説明では、グランド押さえ20を補強するグランド押さえ保持部28を垂直ボルト29でベースプレート24に取り付けた場合を示したが、グランド押さえ保持部28の取り付けを省略するようにしてもよい。 第1の実施の形態によれば、ハンドル16を操作することにより弁棒14を駆動する際の弁棒14の保持力はスタンド25のネジ体26で分担するので、ヨーク23が破断してヨーク23のネジハメ輪27による弁棒14の保持力が確保できなくなった場合であっても、ハンドル操作に伴う捻り剛性は、ベースプレート24に立設されたスタンド25で確保することができる。従って、ヨーク23が破断した場合であっても、弁の開閉操作を円滑に行うことができる。
【0031】
図2は本発明の第2の実施の形態に係わる弁補強器具の構成図であり、図2(a)はロングネックのヨーク式弁に適用した場合の弁補強器具の正面図、図2(b)は図2(a)のD−D線での断面図である。
【0032】
この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、弁棒14がスタンド25を貫通する部分のネジ体26に代えて、弁棒14を延長するための延長軸36と、延長軸36がスタンド25を貫通する部分にハンドル操作により延長軸36を回動させるためのスリーブ37と、延長軸36をジャッキアップ及びジャッキダウンさせるための緊急時開閉用ボルト39とを設け、ヨーク23による弁棒の保持力と緊急時開閉用ボルト39による弁棒14の保持力とが干渉することがないようにしたものである。
【0033】
図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。ヨーク23から弁棒14が突出する部分には、雌ねじを有したネジハメ輪27が設けられ、弁棒14の雄ねじはヨーク23のネジハメ輪27の雌ねじと螺合して弁棒14を保持している。この弁棒14の先端部に延長軸36が軸連結部36aにて連結されている。
【0034】
そして、延長軸36がスタンド25を貫通する部分にはスリーブ37が設けられている。スリーブ37はハンドル16に固定され、また、延長軸36と勘合して、ハンドル16の回動により延長軸36を回動させる。また、緊急時開閉用ボルト39は延長軸36の主軸36bを貫通して主軸36bに挿入され、その外周面にはスリーブ37の内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有し、スリーブ37に取り付けられている。また、延長軸36の主軸36bには雄ねじが形成されており、主軸36bの先端部にはその雄ねじと螺合する六角ナット40が装着されている。
【0035】
ヨーク23が破断していないときは、ハンドル16の回動でヨーク23のネジハメ輪27で弁棒14を保持し、ヨーク23が破断したときは、緊急時開閉用ボルト39及び六角ナット40により弁棒14を保持し、延長軸36をジャッキアップ及びジャッキダウンさせて弁の開閉操作を行う。
【0036】
図3はヨーク23が破断していないときのハンドル操作による弁補強器具の可動部の説明図であり、図3(a)は弁補強器具の一部切り欠き断面図、図3(b)は図3(a)のE−E線の断面図である。また、図4は図3のハンドル操作により延長軸36が動いたときの弁補強器具の可動部の説明図であり、図4(a)は弁補強器具の一部切り欠き断面図、図4(b)は図4(a)のF−F線の断面図である。図3及び図4では、ベースプレート24、スタンド25、グランド押さえ保持部28の図示は省略している。
【0037】
図3(a)において、ハンドル16が回動すると、塗りつぶし部分が連動して回動する。すなわち、ハンドル16が回動すると、ハンドル16に固定されているスリーブ37、外周面の雄ねじがスリーブ37の内面の雌ねじと螺合して取り付けられている緊急時開閉用ボルト39が連動して回動する。図3(b)に示すように、延長軸36はスリーブ37の四角孔に勘合しており、スリーブ37が回動すると延長軸36も回動するようになっている。
【0038】
図4(a)において、延長軸36が回動すると、塗りつぶし部分が連動して回動する。すなわち、延長軸36が回動すると、軸連結部36aを介して弁棒14が回動し、弁棒14はヨーク23に取り付けられたネジハメ輪27とネジ接続されているので、ヨーク23のネジハメ輪27で弁棒14を保持し、弁棒14(延長軸36)は上下方向に移動する。この場合、延長軸36は、図4(b)に示すようにスリーブ37の四角孔に勘合しており、スリーブ37の回動力により延長軸36に回動力が加わって延長軸36が回動する。このように、ヨーク23が破断していないときはハンドル16の操作で弁の開閉を行うことができる。
【0039】
次に、ヨーク23が破断したときの弁の開閉操作について説明する。図5はヨーク23が破断したときの弁の開閉操作の説明図であり、図5(a)は弁の閉操作の説明図、図5(b)は弁の開操作の説明図である。
【0040】
図5(a)において、ヨーク23が破断しているので、弁棒14が移動したときにヨーク23に取り付けられたネジハメ輪27で弁棒14を保持することができない。そこで、緊急時開閉用ボルト39を回動させる。緊急時開閉用ボルト39は、その外周面の雄ねじがハンドル16に固定されたスリーブ37の内面の雌ねじと螺合しているので、ハンドル16を固定して緊急時開閉用ボルト39を回動させると、緊急時開閉用ボルト39は上下に動くことになる。そこで、緊急時開閉用ボルト39を回動させて、図5(a)の下方に動かし、延長軸36を押し下げる。これにより、塗りつぶし部分が連動して図5(a)の下方に動き、弁の閉操作を行う。
【0041】
一方、弁の開操作は、図5(b)に示すように、延長軸36の主軸36bに螺合している六角ナット40を回動させる。六角ナット40は延長軸36の主軸36bに螺合しているので、六角ナット40を回動させると延長軸36の主軸36bを移動する。逆に、六角ナット40の位置を固定して六角ナット40を回動すると延長軸36の主軸36bが移動する。そこで、緊急時開閉用ボルト39を固定して、六角ナット40を緊急時開閉用ボルト39の位置で回動させる。これにより、延長軸36の主軸36bをジャッキアップの要領で図5(b)の上方に移動させ、弁の開操作を行う。
【0042】
このように、第2の実施の形態では、弁棒14を延長するための延長軸36を弁棒14に連結し、延長軸36がスタンド25を貫通する部分にハンドル16の回動により延長軸36を回動させるためのスリーブ37を設け、また、延長軸36を貫通するとともにスリーブ37の内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有した緊急時開閉用ボルト39を設ける。そして、ヨーク23が破断していない状態では、ハンドル16の回動によりスリーブ37を回動させて、ヨーク23に取り付けられたネジハメ輪27よる弁棒14の保持力で弁棒14を操作する。一方、ヨーク23が破断している状態では、緊急時開閉用ボルト39及び六角ナット40により延長軸36のジャッキアップ及びジャッキダウンさせて弁の開閉操作を行う。
【0043】
以上の説明では、グランド押さえ20を補強するグランド押さえ保持部28を垂直ボルト29でベースプレート24に取り付けるようにしたが、グランド押さえ保持部28を省略してもよい。 第2の実施の形態によれば、ヨーク23が破断していない状態では、ヨーク23に取り付けられたネジハメ輪27よる弁棒14の保持力で弁棒14を操作し、ヨーク23が破断している状態では、緊急時開閉用ボルト39及び六角ナット40により弁棒14を操作するので、緊急時開閉用ボルト39による弁棒14の保持力と、ヨーク23のネジハメ輪27による弁棒14の保持力とが干渉することがなく、円滑に弁の開閉操作を行える。さらには、弁棒14を延長軸36で延長するので、弁棒14が短い場合であっても、弁棒補強器具と弁のハンドル16とが干渉しない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる弁補強器具の構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係わる弁補強器具の構成図。
【図3】本発明の第2の実施の形態においてヨークが破断していないときのハンドル操作による弁補強器具の可動部の説明図。
【図4】図3のハンドル操作により延長軸が動いたときの弁補強器具の可動部の説明図。
【図5】本発明の第2の実施の形態においてヨークが破断したときの弁の開閉操作の説明図。
【図6】ロングネックのヨーク式弁の一例の正面図。
【図7】図6のA−A線での断面図。
【符号の説明】
【0045】
11…ヨーク式弁、12…弁体、13…弁箱、14…弁棒、15…パイプ、16…ハンドル、17…放熱板、18…グランドパッキン、19…パッキン箱、20…グランド押さえ、21…アイボルト、22…ナット、23…ヨーク、24…ベースプレート、25…スタンド、26…ネジ体、27…ネジハメ輪、28…グランド押さえ保持部、29…垂直ボルト、30…締付ネジ、31…取付ボルト、32…ナット、33…連結ボルト、34…貫通孔、35…連結板、36…延長軸、36a…軸連結部、36b…主軸、37…スリーブ、39…緊急時開閉用ボルト、40…六角ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、
前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、
前記ヨークから突出した弁棒を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、
前記弁棒が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有し前記ハンドルにより操作されるネジ体とを備えたことを特徴とする弁補強器具。
【請求項2】
弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、
前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、
前記ヨークから突出した弁棒を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、
前記弁棒が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記弁棒の雄ねじと螺合する雌ねじを有し前記ハンドルにより操作されるネジ体と、
前記グランド押さえの上部に設けられ前記グランド押さえを保持するグランド押さえ保持部と、
前記グランド押さえを跨いで前記グランド押さえ保持部を前記ベースプレートに固定する垂直ボルトとを備えたことを特徴とする弁補強器具。
【請求項3】
弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、
前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、
前記ヨークから突出した弁棒と連結され前記弁棒を延長するための延長軸と、
前記延長軸を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、
前記延長軸が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記ハンドルの回動により前記延長軸を回動させるためのスリーブと、
前記延長軸を貫通し前記スリーブの内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有し前記延長軸をジャッキアップ及びジャッキダウンさせるための緊急時開閉用ボルトとを備えたことを特徴とする弁補強器具。
【請求項4】
弁体を収納した弁箱に弁棒を収納するパイプが接続され、前記弁棒のシール性を保つためのグランドパッキンを押さえるグランド押さえを通して前記パイプから前記弁棒を突出させ、突出した弁棒の雄ねじとヨークの雌ねじとが螺合して前記弁棒を保持し、前記ヨークを挟んで前記弁体と反対側のハンドルで前記弁棒を操作するヨーク式弁に設けられ、
前記ヨークより前記弁体側の前記パイプに固定されたベースプレートと、
前記ヨークから突出した弁棒と連結され前記弁棒を延長するための延長軸と、
前記延長軸を貫通して前記ヨークを覆うように前記ベースプレートに立設されたスタンドと、
前記延長軸が前記スタンドを貫通する部分に設けられ前記ハンドルの回動により前記延長軸を回動させるためのスリーブと、
前記延長軸を貫通し前記スリーブの内面の雌ねじと螺合する雄ねじを有し前記延長軸をジャッキアップ及びジャッキダウンさせるための緊急時開閉用ボルトと、
前記グランド押さえの上部に設けられ前記グランド押さえを保持するグランド押さえ保持部と、
前記グランド押さえを跨いで前記グランド押さえ保持部を前記ベースプレートに固定する垂直ボルトとを備えたことを特徴とする弁補強器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19335(P2010−19335A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180161(P2008−180161)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(391017713)平田バルブ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】