説明

引き戸式ドア装置

【課題】引き戸式ドア装置の戸尻側躯体に沿って保護パネルを設けて、戸尻側躯体と保護パネルとにより戸袋を構成するものにおいて、戸袋の清掃を容易に行なえるようにすると共に、意匠性のよいものにする。
【解決手段】保護パネル10を、該保護パネル10の戸先部分とドア体2の戸先部分とがすれ違い可能となる状態でドア体2の開閉方向にスライド移動自在に設ける一方、保護パネル10の上端部に設けた第二走行ローラ11が移動自在に走行する第二走行レール14を、ドア体2と開閉機9とを連動連結する駆動、従動スプロケット9a、9bの下方のスペースに配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商店や公共施設等の建築物の出入り口部等に設けられる引き戸式ドア装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、引き戸式ドア装置のなかには、躯体開口部に設けられるドア体と、ドア体の上端部に設けられる複数の第一走行ローラと、開口部上方の躯体(無目材)における屋内外方向一方(例えば屋内側)の面に固定され、第一走行ローラを支持してドア体をスライド移動自在に吊持する第一走行レールとを備えて構成し、ドア体がスライド移動することで開口部を開閉するようにしたものが知られている。このようなものでは、開口部上方の躯体にカバー体を設けて、ドア体の走行レールへの吊持部を、カバー体により覆蓋して外部に露出しないようにすることが提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のものにおいて、ドア体は屋内外方向一方の空間において剥き出しの状態であるため、ドア体のスライド開閉作動の過程で、戸尻側躯体の近傍に近付いた人や物体がドア体に当接することが想定される。特に、従来のもののように、走行ローラに駆動装置が連動連結され、通行者が躯体開口部に近付いたことの検知で自動的にドア体が開閉作動するように構成したものでは、開閉作動するドア体が人や物体に当接するような前記事態が発生しやすいと考えられる。そこで、戸尻側躯体に沿って保護パネルを設けて、開閉移動するドア体が人や物体に当接するのを防止することが提唱されている。しかるに、このものにおいて、保護パネルを戸尻側躯体に対して固定状に設置した場合では、戸尻側躯体と保護パネルとのあいだ(戸袋内)の隙間に入り込んだゴミ等を取出す等の清掃作業が難しいという問題があるばかりでなく、前記戸尻側躯体を例えばガラス材で形成したものでは、戸尻側躯体の屋内外方向一方側面を払拭清掃することができないという不具合がある。この不具合に対しては、保護パネルを戸尻側端部を枢支点として屋内外方向一方に開放揺動する構成とする、あるいは、ドア体の開閉方向にスライド移動自在な構成とすることで対応できるが、前者のものでは揺動スペースが必要になるため設置環境によっては採用できないという問題がある。また、後者のものでは、保護パネル専用の走行レールを戸袋配設部位となる戸尻側躯体部位から開口部に至る部位に一帯に設ける必要があり、このような走行レールをカバー体に設ける場合に、走行レールが外部に露出するような構成とすると意匠性に劣るばかりでなく、設置環境によっては突出状に配される走行レールが邪魔になって採用できないという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、躯体開口部に設けられるドア体と、ドア体の上端部に設けられる複数の第一走行ローラと、開口部上方の躯体における屋内外方向一方の面に固定され、第一走行ローラを支持してドア体をスライド移動自在に吊持する第一走行レールと、ドア体の吊持部を覆うカバー体と、カバー体内に配設され、ドア体に駆動スプロケットおよび従動スプロケットを介して連動連結される開閉機とを備え、該開閉機の駆動に伴うドア体のスライド移動で開口部の開閉がなされる引き戸式ドア装置において、開口部戸尻側の戸尻側躯体に沿って設けられ、戸尻側躯体とともに戸袋を構成する保護パネルを、該保護パネルの戸先部分とドア体の戸先部分とがすれ違い可能となる状態でドア体の開閉方向にスライド移動自在に設ける一方、保護パネルは、下端部に戸車が設けられ、上端部に複数の第二走行ローラが設けられると共に、該第二走行ローラが移動自在に走行する第二走行レールを、前記カバー体内における駆動スプロケットおよび従動スプロケットの下方のスペースに配設したことを特徴とする引き戸式ドア装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、設置箇所を限定することなく開閉移動自在な保護パネル付きの引き戸式ドア装置を設けることができ、しかも、意匠性に優れた保護パネル付きの引き戸式ドア装置となるうえ、既設の引き戸式ドア装置を保護パネル付きに容易に仕様変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】引き戸式自動ドア装置の屋内側からの正面図である。
【図2】図1の右半部の引き戸式自動ドア装置の要部を説明する一部切欠き拡大正面図である。
【図3】図1における一部を切欠いた横断面図である。
【図4】引き戸式自動ドア装置の構成を説明する縦断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】参考図であって、保護パネルが設けられない場合の引き戸式自動ドア装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図面において、1は建築物の開口部に設けられた引き戸式自動ドア装置であって、本実施の形態では、図1に示すように、左右一対の引き戸式自動ドア装置1が左右方向に並設されており、これら各引き戸式自動ドア装置1を構成するドア体2同士は、それぞれ同期し、かつ、左右対称状に左右方向にスライド移動するように構成されている。本実施の形態の開口部は、ガラス材で構成される躯体に囲繞されており、開口部の戸尻側(左右側部位)に隣接し、各ドア体2の戸袋として機能する左右の戸尻側躯体3もそれぞれガラス材を用いて構成されている。そして、各ドア体2は、それぞれ左右の戸尻側躯体3の屋内側に沿ってそれぞれ配されており、後述するように、戸尻側躯体3の屋内側面に沿ってスライド移動することにより、開口部の半部を閉鎖する全閉姿勢と、戸尻側躯体3に並列して開口部を開放する全開姿勢とに変姿するように構成されている。
【0009】
前記各引き戸式自動ドア装置1のドア体2は、ガラス材の四周を框材2aにより囲繞される構成となっており、図2に示す開口部右側半部に設けられる引き戸式自動ドア装置1のように、上側框材2aの左右方向二箇所に位置して一対のローラユニット4が設けられている。これらローラユニット4は、それぞれ支持ブラケット5と、一対のローラ6(本発明の第一走行ローラに相当する)とにより構成されており、支持ブラケット5は上側框材2aの上端面に固定される固定片5aと、該固定片5aから上方に突出し、一対のローラ6がそれぞれ軸承される軸承片5bとを備えて構成されている。さらに、戸先側(右側)の支持ブラケット5の軸承片5bには、屋内側に突出する連結片5cが形成されている。
また、各ローラユニット4の軸承片5bに軸承される一対のローラ6は、それぞれ軸承片5bから屋外側に向けて突出する支軸6aに回転自在に軸承されており、上下方向において回転するように構成されており、外周面には凹部6bが形成されている。
【0010】
一方、開口部、および、戸尻側躯体3の上部を構成する躯体側部材は、本実施の形態では、戸尻側躯体3を構成するガラス材と、該戸尻側躯体3および開口部上方の躯体を構成するガラス材とを連結する金属製の枠体(無目)7により構成されている。ここで、本実施の形態の枠体7は、左右一対の引き戸式自動ドア装置1の戸袋となる左右の戸尻側躯体3上部を含むこれら対向間一帯に設けられるよう左右方向長尺状に形成されている。そして、前記枠体7の屋内側片7aに、左右の引き戸式自動ドア装置1用の第一走行レール8が左右方向に並列して設けられている。前記第一走行レール8は、枠体屋内側片7aに固定される固定片8aと、該固定片8aから屋内側に突出する突出片8bとにより構成されており、該突出片8bの突出端部に上方に膨出するレール片8cが形成されている。そして、第一走行レール8のレール片8cに前記ローラユニット4の各ローラ6外周面の凹部6bを上側から外嵌せしめることにより、それぞれのローラ6がレール片8cに対して抜止め状に支持され、これによって、ドア体2は、第一走行レール8にスライド移動自在に吊持され、戸尻側躯体3の屋内側面に沿って開口部を開閉移動するように構成されている。
この吊持状態において、ドア体2の上側框材2aの上端部が枠体7の下端部よりも上方に位置していて、上側框材2aとローラユニット4との連結部であるドア体2の吊持部が屋外側から目視できないように構成されている。
さらに、2bはドア体2の下側框材2aの下端面から下方に向けて突出配設される振れ止め体であって、該振れ止め体2bは、下端部が床面に埋設されたガイド溝部Gにスライド移動自在に嵌入するように構成されている。また、2cはドア体2の全閉姿勢でドア体2を施錠する施錠具である。
【0011】
さらに、前記枠体屋内側片7aの左右両端部であって、各ドア体2の戸尻側部位には、駆動装置を構成するべく電動モータを備えた開閉機9がそれぞれ固定されている。前記各開閉機9は、屋内側に向けて突出する出力軸に駆動スプロケット9aが連動連結されている。さらに、枠体7の左右方向中間部であって、全閉姿勢の各ドア体2の戸先上方に位置して従動スプロケット9bがそれぞれ軸承されており、それぞれ対応する駆動スプロケット9aと従動スプロケット9bとのあいだに動力伝導体(例えば作動チエン)9cが懸回されている。そして、前記各動力伝動体9cは、各ドア体2の戸先側に位置するローラユニット4の連結片5cにそれぞれ連動連結されている。そして、左右の開閉機9の駆動に伴う対応する駆動、従動スプロケット9a、9bの回転により、動力伝動体9cが左右方向に変位するように構成されており、該動力電動体9cの変位に追随する状態で戸先側のローラユニット4が強制的に移動するように構成されている。これによって、開口部上方の屋内外(枠体7の屋外側面、および、後述するカバー体Cの屋内側面)に設けられたセンサDからの信号を受けて各開閉機9が駆動した場合に、各ドア体2が互いに同期し、かつ、左右対称となる状態で、第一走行レール8に沿ってスライド移動して開口部の開閉をするように構成されている。
ここで、駆動、従動スプロケット9a、9bは、ドア体2のローラユニット4と第一走行レール8との吊持部よりも屋内側に偏寄して配設されていて、図4、5に示すように、駆動、従動スプロケット9a、9bの直下であって、ドア体2の吊持部の屋内側部位は空いたスペースとなっている。
【0012】
10は本発明が実施された保護パネルであって、該保護パネル10は、左右の戸尻側躯体3に沿って(対向して)それぞれ設けられているが、これら保護パネル10は、各ドア体2の屋内側であって、前記駆動、従動スプロケット9a、9b配設部位の下方部位に位置してそれぞれ設けられるように構成されている。そして、各保護パネル10は屋内外方向に対向する戸尻側躯体3とともにドア体1の戸袋として機能するように構成されており、ドア体2が開放方向にスライド移動して全開姿勢となることに伴い、ドア体2が戸尻側躯体3と保護パネル10との間に引込まれるように構成されている。
前記保護パネル10は、ガラス材の四周を框材10aにより囲繞される構成となっている。そして、保護パネル10は、ドア体2の開閉方向にスライド移動自在となるよう、上側の框材10aの左右方向二箇所に本発明の第二走行ローラ11が設けられている。これら第二走行ローラ11は上側框材10aの上端面から上方に突出する支軸11aに回転自在に軸承されていて、水平方向において回転するように構成されている。
【0013】
一方、Cは枠体屋内側片7aを屋内側から覆うカバー体であって、本実施の形態のカバー体Cは、主、副カバー体12、13により構成されている。これら主、副カバー体12、13はそれぞれ枠体7と同様に左右方向長尺状に形成されている。そして、主カバー体12は、枠体7の屋内側片7aに設けられる第一走行レール8、開閉機9等の駆動装置配設部を上方から覆蓋する上側覆蓋片12aと、該上側覆蓋片12aの屋内側端縁から下方に向けて延出され、第一走行レール8と開閉機9等の駆動装置、さらには、ドア体2の上側框材2aとローラユニット4との連結部であるドア体2の吊持部とを屋内側から覆蓋する主屋内側覆蓋片12bとを備えて構成されており、前記各部材がカバー体12に覆われて外部に露出することがないように構成されている。
そして、主カバー体12は、上側覆蓋片12aを枠体7側の部材に固定することにより躯体側部材(枠体7)に一体化されるが、本実施の形態では、枠体屋内側片7aに固定される第一走行レール8の上端縁部に、屋内側に向けてカバー体支持片8dが一体形成されており、該カバー体支持片8dの上面に上側覆蓋片12aを宛てがって螺着等の一体化手段を実施することにより、上側覆蓋片12aがカバー体支持片8dに固定され、主カバー体12の躯体(枠体7)への一体化がなされている。
【0014】
前記主カバー体12の主屋内側覆蓋片12bは駆動、従動スプロケット9a、9bに近接して配され、かつ、枠体7の屋内側片7aに平行状に設けられている。そして、主屋内側覆蓋片12bの下端部であって、ドア体2の吊持部の屋内側部位は屋外側に向けて段差状に折曲されて、主屋内側覆蓋片12bの下端縁から屋外側に延出する支持受け片12cと、該支持受け片12cの屋外側端縁から下方に延出し、ドア体2の吊持部に近接対向する屋外側レール片12dとが形成されている。これら支持受け片12cと屋外側レール片12dとは、駆動、従動スプロケット9a、9bの下方に形成される空いたスペースを迂回するように折曲することにより空いたスペースを屋内側に露出させるように構成されている。そして、前記屋内側に露出する空いたスペースを屋内側から覆うように副カバー体13を設けることにより、駆動、従動スプロケット9a、9bの下方部位に、ドア体2の吊持部とカバー体C(副カバー体13)とのあいだに屋内外方向の隙間が形成され、該隙間を、保護パネル10の第二走行ローラ11が走行するためのレール用スペースSとして用いるように構成されている。
【0015】
つまり、前記副カバー体13は、取付け凹部12cの支持受け片12dに下側から突当てられる支持片13aと、該支持片13aの屋内側端縁部から下方に延出し、主カバー体12の主屋内側覆蓋片12bと屋内外方向同位置において連続し、かつ、屋外側レール片12dに対向する副屋内側覆蓋片13bとを備えて構成されている。そして、副カバー体13は、支持片13aを支持受け片12cに下側から突当てて、下方から螺入される螺子13cを緊締することにより、主カバー体12に一体化されるように構成されている。この主、副カバー体12、13の一体化状態において、前記駆動、従動スプロケット9a、9bの下方の空いたスペースが、主カバー体12側の屋外側レール片12dと副カバー体13側の支持片13aと副屋内側覆蓋片13bとにより下方が開放された状態で囲繞され、該囲繞されたスペースがレール用スペースSに設定されている。
【0016】
そして、このレール用スペースSに、保護パネル10の上側框材10aの上端部を嵌入したとき、上端面から突出する第二走行ローラ11の外周面が、屋外側レール片12dとこれに対向する副屋内側覆蓋片13bとの対向面間の上方部を転動面として転動走行するように構成されている。これによって、保護パネル10は、ドア体2の屋内側の駆動、従動スプロケット9a、9bの下方に設けられ、レール用スペースSの上方部位となる屋外側レール片12dと副屋内側覆蓋片13bと(主、副カバー体12、13の屋内外方向に対向する対向片に相当する)の上部対向面を第二走行レール14としてスライド移動自在となるように構成されている。
このように構成される第二走行レール14は、左右の戸尻側躯体3から開口部の上方にわたる枠体7の左右方向一帯を覆蓋するカバー体C(主、副カバー体12、13)に長尺状に形成されており、各保護パネル10は、戸尻側躯体3に沿う戸袋姿勢から開口部側に位置して戸袋内を開放する開放姿勢にそれぞれ移動することができるように構成されている。そして、保護パネル10の開放姿勢では、戸袋内の清掃や、戸尻側躯体3の払拭作業等のメンテナンスを容易に行なうことができるように構成されている。さらに、このものにおいて、第二走行ローラ11が走行する第二走行レール14は、主屋内側覆蓋片13bに面一状に配される副屋内側覆蓋片13bの屋外側面に形成されていて、カバー体C(副カバー体13)から第二走行レール14部位が屋内側に突出することがなく、しかも、屋内側から第二走行レール14を目視することができないように構成することができ、引き戸式自動ドア装置1を設置可能な環境であれば何れの設置環境であっても保護パネル10を設けることが可能となるうえ、意匠性にも優れた引き戸式自動ドア装置1とすることができるように構成されている。
【0017】
さらに、第二走行レール14の屋外側レール片12dとこれに対向する副屋内側覆蓋片13bとの対向面(内側面)には、上下方向中間部に位置してレール用スペースS側(内方)に向けて突出する抜止め片12e、13dが突出形成されていて、第二走行ローラ11が第二走行レール14から抜出すことを防止できるように構成されている。また、屋外側レール片12d屋内側面の上端部には、副カバー体13の支持片13aの屋外側端部13eを係止して、副カバー体13を主カバー体12により仮保持するための係止片12fが突出形成されている。これによって、予め躯体側に固定された主カバー体12に副カバー体13を一体化して、第二走行レール14を形成しつつカバー体Cの組込みを実施する工程において、主カバー体係止片12fに支持片13aを係止させる一方、抜止め片12e、13d同士に第二走行ローラ11を抜止め状に支持させることで、副カバー体13を主カバー体12に仮保持されるとともに、保護パネル10を主、副カバー体12、13に仮保持させることができるように構成されている。そしてこの仮保持状態において、保護パネル10を第二走行レール14に沿って適宜スライド移動させつつ螺子13cを緊締することにより、カバー体Cと保護パネル10とを組込めるように構成されている。また、前記工程と逆の工程を行なうことで、容易に主カバー体12から副カバー体13を取外すことができ、保護パネル10のメンテナンス(例えば第二走行ローラ11の交換)等の作業を容易に行なえるように構成されている。
【0018】
また、保護パネル10の下側框材10aには左右方向二箇所において戸車10bが設けられている。これら戸車10bは、戸尻側躯体3配設部に対向して床面上に固定された凹溝状のガイド体15にスライド移動自在にガイドされるように構成されている。さらに、保護パネル10の戸先側框材10aの上下端部にはそれぞれフランス落し錠10cが設けられており、通常の使用状態において、フランス落し錠10cが施錠されていて、保護パネル10を戸袋姿勢に保持し、戸尻側躯体3とともに戸袋としての機能を維持するように構成されている。
そして、戸袋部の清掃を実施するべく保護パネル10を開口部側にスライド移動する場合では、フランス落し錠10cを解錠し、保護パネル10を開口部側に押しやることで開放することができるように構成されている。このとき、保護パネル10は、戸車10bがガイド体15および開口部を構成する床面を転動し、第二走行ローラ11が第二走行レール14である屋外側レール片12dと副屋内側覆蓋片13bとの対向面を転動することにより、軽快に開放操作できるように構成されている。
尚、図中、10dは保護パネル10の戸先側からドア体2側に向けて設けられる封止材である。
【0019】
叙述の如く構成された本形態において、引き戸式自動ドア装置1のドア体2は戸尻側躯体3と保護パネル10とを戸袋として、これら戸尻側躯体3と保護パネル10との間から引出されたり、引込まれることにより、ドア体2の開閉作動の過程でドア体2が戸尻側躯体3近傍の人や障害物との当接を回避することができる。このものにおいて、保護パネル10は、第二走行ローラ11が第二走行レール14を走行することにより、戸尻側躯体3に沿う戸袋姿勢と開口部側に移動して戸袋内を開放する開放姿勢とに変姿可能となっているが、第二走行レール14はカバー体C配設部の左右方向全域に設けられていて、保護パネル10を戸尻側躯体3に沿う位置から開口部側に移動させることができて、戸袋内の清掃や、戸尻側躯体3の屋内側面の払拭作業等を容易に行なうことができる。しかも、第二走行レール14は、駆動装置を構成する駆動、従動スプロケット9a、9b配設部の下方の空いたスペースであって、ドア体2の吊持部とカバー体Cとの間に形成される屋内外方向の隙間(レール用スペースS)を利用して、副屋内側覆蓋片13bの屋外側面に設ける構成としたので、主、副屋内側覆蓋片12b、13bが面一状となって、カバー体Cの屋内側部位に突出部を形成することがなく、保護パネル10付きの引き戸式自動ドア装置1を設置するための設置条件(環境)が限定されるような不具合を回避できる。そのうえ、第二走行レール14はカバー体Cにより覆われた状態で形成されるので屋内側から目視されることがなく、意匠性にも優れた引き戸式自動ドア装置1とすることができる。
【0020】
さらに、このものでは、ドア体2の吊持部とカバー体Cとの間に形成されるレール用スペースSに第二走行レール14が設けられる構成となっている。この結果、図6に示すように、保護パネルが設けられない既存の引き戸式自動ドア装置16において、駆動装置17とドア体18の吊持部とを覆うカバー体19が、ドア体18の吊持部とのあいだに屋内外方向の隙間が形成されているものでは、カバー体19を取外すことにより、前述の主、副カバー体12、13と保護パネル10とを組込むことが可能であり、これによって、保護パネルのない既存の引き戸式自動ドア装置16を、前記意匠性のよい保護パネル付きの引き戸式自動ドア装置に容易に仕様変更することができる。
【0021】
このように、本発明が実施されたものにあっては、保護パネル10をドア体2の開閉方向にスライド移動自在に設ける場合に、保護パネル10用の第二走行レール14を、カバー体Cに突出部を形成することなく、しかも、カバー体Cにより覆蓋された状態で形成することができて、設置環境が限定されず、しかも、意匠性に優れるようにしたものであるが、このものでは、さらに、カバー体Cが主、副カバー体12、13により構成され、屋内外方向に対向する屋外側レール片12dと副屋内側覆蓋片13bとの対向面が第二走行レール14を構成しているので、保護パネル10を組込みつつカバー体Cを組込む作業が容易に行なえるうえ、副カバー体13、保護パネル10の取外しが容易で、保護パネル10のメンテナンスを容易に行なえるという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、駆動装置を用いてドア体が自動的に開閉する引き戸式自動ドア装置に保護パネルを設ける場合、既設の引き戸式自動ドア装置に保護パネルを後付けするような場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 引き戸式自動ドア装置
2 ドア体
2a 框材
3 戸尻側躯体
4 ローラユニット
6 ローラ
7 枠体
8 第一走行レール
8c レール片
9 開閉機
9a 駆動スプロケット
10 保護パネル
10a 框材
11 第二走行ローラ
12 主カバー体
12c 支持受け片
12d 屋外側レール片
13 副カバー体
13b 副屋内側覆蓋片
14 第二走行レール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体開口部に設けられるドア体と、ドア体の上端部に設けられる複数の第一走行ローラと、開口部上方の躯体における屋内外方向一方の面に固定され、第一走行ローラを支持してドア体をスライド移動自在に吊持する第一走行レールと、ドア体の吊持部を覆うカバー体と、カバー体内に配設され、ドア体に駆動スプロケットおよび従動スプロケットを介して連動連結される開閉機とを備え、該開閉機の駆動に伴うドア体のスライド移動で開口部の開閉がなされる引き戸式ドア装置において、開口部戸尻側の戸尻側躯体に沿って設けられ、戸尻側躯体とともに戸袋を構成する保護パネルを、該保護パネルの戸先部分とドア体の戸先部分とがすれ違い可能となる状態でドア体の開閉方向にスライド移動自在に設ける一方、保護パネルは、下端部に戸車が設けられ、上端部に複数の第二走行ローラが設けられると共に、該第二走行ローラが移動自在に走行する第二走行レールを、前記カバー体内における駆動スプロケットおよび従動スプロケットの下方のスペースに配設したことを特徴とする引き戸式ドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92048(P2013−92048A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−28776(P2013−28776)
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2010−20841(P2010−20841)の分割
【原出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(391008582)昭和フロント株式会社 (12)
【Fターム(参考)】