説明

引き込み用ポリエチレン絶縁電線

【課題】相間短絡等の絶縁体破壊を防止することが可能であり、また、絶縁体表面の炎の燃え広がりを防止し消炎が可能な引き込み用ポリエチレン絶縁電線を提供する。
【解決手段】引き込み用ポリエチレン絶縁電線としての低圧引き込み電線11は、ポリエチレンに金属水酸化物を配合し且つ黒色に着色された絶縁体15を導体14に被覆してなる第1の電線12と、黒色に着色されたポリエチレンからなる内層17とポリエチレンに金属水酸化物及び紫外線吸収剤を配合し且つ黒色以外の色彩に着色された外層18とで構成される絶縁体19を導体16に被覆してなる第2の電線13と、を撚り合わせてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き込み用ポリエチレン絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電線を撚り合わせてなる低圧引き込み電線は、屋外の電柱から各家の軒先へ電線の引き込みをするものとして知られている。下記特許文献1には三本の電線を撚り合わせてなる低圧引き込み電線の技術が開示されている。
【0003】
図2において、下記特許文献1の低圧引き込み電線(DVR電線)1は、第1の電線2と、二本の第2の電線3とを撚り合わせることによりなっている。三本の電線は、各々表面がポリ塩化ビニル系樹脂からなる絶縁体を有している。各電線について具体的に説明すると、第1の電線2は、ポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色の絶縁体4を導体5に被覆することによりなっている。一方、第2の電線3は、内側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色の内層6、外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる色彩の異なる着色外層7とを有する絶縁体8を導体9に被覆することによりなっている。下記特許文献1の低圧引き込み電線1は、三本の電線それぞれを識別することができるようになっている。
【特許文献1】特開2006−54056号公報 (第4頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリ塩化ビニルはハロゲン含有ポリマーであることから、火災の際の燃焼時に、塩化水素等の有害なガスが発生してしまうという問題点を有している。このため、有害なハロゲン化水素ガスの発生がないポリエチレンを絶縁体に適用することが考えられる。しかしながら、絶縁体がポリエチレンであると端末部にてトラッキングが発生した場合には、発火してしまうという問題点を有している。
【0005】
ポリエチレンを絶縁体に適用する場合の問題点を更に挙げると、ポリエチレンは耐候性が良くないことが知られている。特に電線を撚り合わせる引き込み電線にあっては、長時間の使用により緑や青色の絶縁体が紫外線劣化によって脆くなり、また、薄くなる。そして、最終的には亀裂が生じて相間短絡などによる絶縁体破壊に至り、これが上記の問題点よりも大きなものとなってしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、相間短絡等の絶縁体破壊を防止することが可能であり、また、絶縁体表面の炎の燃え広がりを防止し消炎が可能な引き込み用ポリエチレン絶縁電線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の引き込み用ポリエチレン絶縁電線は、ポリエチレンに金属水酸化物を配合し且つ黒色に着色された絶縁体を導体に被覆してなる第1の電線と、黒色に着色されたポリエチレンからなる内層とポリエチレンに金属水酸化物及び紫外線吸収剤を配合し且つ黒色以外の色彩に着色された外層とで構成される絶縁体を導体に被覆してなる第2の電線と、を撚り合わせてなることを特徴としている。
【0008】
このような特徴を有する本発明によれば、第1の電線及び第2の電線は共に耐候性のある電線となる。従って、紫外線劣化による絶縁体の脆さや薄肉になることが避けられる。これにより、第1の電線及び第2の電線を撚り合わせても相間短絡などによる絶縁体破壊が避けられる。第2の電線は、複数使用の場合、識別可能である。
【0009】
また、本発明によれば、例えばトラッキングが発生して炎が絶縁体表面を燃え広がろうとしても、ポリエチレンに配合された金属水酸化物に含まれる結晶水が噴出して自己消化を行い、燃焼がし難くなる。
【0010】
ポリエチレンは、成形性、機械的性質、熱安定性、耐薬品性などが良く、且つ安価な樹脂である。本発明では耐候性も持たせた樹脂である。金属水酸化物は無機難燃剤であり、金属水和物が用いられる。
【0011】
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのいずれか一種類、或いは二種類以上の混合物が一例として挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、相間短絡等の絶縁体破壊を防止することが可能な耐候性を有する引き込み用ポリエチレン絶縁電線を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、絶縁体表面の炎の燃え広がりを防止し消炎が可能な難燃性を有する引き込み用ポリエチレン絶縁電線を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態を示す引き込み用ポリエチレン絶縁電線の端面図である。
【0014】
図1において、本発明の引き込み用ポリエチレン絶縁電線(DE電線)は、耐候性及び難燃性を有する低圧引き込み電線11であって、特に数を限定するものでないが、一本の第1の電線12と、二本の第2の電線13とを撚り合わせてなっている。
【0015】
低圧引き込み電線11の第1の電線12は、導体14と、この導体14の外周を被覆する絶縁体15とを備えて構成されている。また、各第2の電線13は、導体16と、この導体16の外周を被覆する、内層17と外層18の二層構造となる絶縁体19とを備えて構成されている。
【0016】
第1の電線12及び第2の電線13は、三本とも同じ所定の直径を有している。導体14及び16は、銅又は硬アルミからなっている。
【0017】
第1の電線12の絶縁体15は、金属水酸化物を配合し且つ黒色に着色されたポリエチレンからなっている。第2の電線13の絶縁体19における内層17は、黒色に着色されたポリエチレンからなっている。また、第2の電線13の絶縁体19における外層18は、金属水酸化物及び紫外線吸収剤を配合し且つ黒色以外の色彩に着色されたポリエチレンからなっている。
【0018】
金属水酸化物は、自己消化作用と絶縁体の機械的特性とに配慮してポリエチレンに対する配合量が設定されている。本形態においては、特に限定するものでないが、ポリエチレン100重量部に対して金属水酸化物50〜200重量部を配合するようになっている。金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのいずれか一種類、或いは二種類以上の混合物であるものとする。
【0019】
ポリエチレンを黒色に着色することに関しては、カーボンブラックを添加することが一例として挙げられる。これにより、耐候性の面から紫外線劣化を避けることができるようになる。第2の電線13の外層18に係る紫外線吸収剤の配合は、耐候性に配慮してポリエチレンに対する配合量が設定されている。第2の電線13は、この外層18を黒色以外の色彩に着色することによって識別をすることが可能になっている。
【0020】
上記構成において、低圧引き込み電線11における第1の電線12及び第2の電線13は共に耐候性のある電線となっている。従って、紫外線劣化による絶縁体の不具合を避けることができる。すなわち、第1の電線12及び第2の電線13を撚り合わせても相間短絡などによる絶縁体破壊を避けることができる。
【0021】
低圧引き込み電線11は、この端末にて例えばトラッキングが発生し炎が絶縁体15の表面を燃え広がろうとしても、或いは、炎が絶縁体19の外層18の表面を燃え広がろうとしても、絶縁体15、外層18のポリエチレンに配合された金属水酸化物に含まれる結晶水が噴出して自己消化が行われるようになっている。従って、低圧引き込み電線11は燃焼し難いものとなっている。また、低圧引き込み電線11は、塩化水素等の有害なガスの発生がない環境に優しいものとなっている。
【0022】
以上、本発明によれば、相間短絡等の絶縁体破壊を防止することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、絶縁体表面の炎の燃え広がりを防止し消炎することができるという効果を奏する。
【0023】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0024】
一例を挙げるとすると、上記説明では三本の電線を撚り合わせてなる例になっているが、これに限らないものとする。すなわち、第1の電線12及び第2の電線13の撚り合わせであれば二本や四本以上で構成したりしても良いものとする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す引き込み用ポリエチレン絶縁電線の端面図である。
【図2】従来例の低圧引き込み電線の端面図である。
【符号の説明】
【0026】
11 低圧引き込み電線(引き込み用ポリエチレン絶縁電線)
12 第1の電線
13 第2の電線
14 導体
15 絶縁体
16 導体
17 内層
18 外層
19 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンに金属水酸化物を配合し且つ黒色に着色された絶縁体を導体に被覆してなる第1の電線と、黒色に着色されたポリエチレンからなる内層とポリエチレンに金属水酸化物及び紫外線吸収剤を配合し且つ黒色以外の色彩に着色された外層とで構成される絶縁体を導体に被覆してなる第2の電線と、を撚り合わせてなる
ことを特徴とする引き込み用ポリエチレン絶縁電線。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−262881(P2008−262881A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106641(P2007−106641)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】